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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230907BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230907BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20230907BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20230907BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20230907BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20230907BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230907BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/0612
H01M8/2475
H01M8/2465
B60K1/00
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019189488
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021064575
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 幹弥
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-204909(JP,A)
【文献】特開2013-033658(JP,A)
【文献】特開2007-258164(JP,A)
【文献】特開2002-367665(JP,A)
【文献】特開2015-168308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/00
H01M 8/0612
H01M 8/2475
H01M 8/2465
B60K 1/00
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池及び前記燃料電池に燃料を供給する改質器の少なくとも一方を含む高温部品を収納する筐体を備える燃料電池システムであって、
前記筐体に固定され、一方向のみに変位可能な少なくとも一つの一軸性マウントと、
前記筐体に固定され、弾性変形により一方向にのみ変位可能な少なくとも一つの弾性体と、を備え、
前記筐体に収納される高温部品は、前記一軸性マウントおよび前記弾性体を介して前記筐体に固定され、
前記弾性体は、少なくとも一つの前記一軸性マウントの変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置され、
前記一軸性マウントおよび前記弾性体は、各一軸性マウントの変位可能な方向に伸ばした各マウント軸線と、各弾性体の変位可能な方向に伸ばした各変位方向線とが一点で交わるように配置される、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記一軸性マウントは前記高温部品に対し水平方向に変位可能に配置され、
前記弾性体は前記高温部品に対する水平方向であって、且つ少なくとも一つの前記一軸性マウントの変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置され、
前記高温部品は、前記弾性体により前記筐体に対する垂直方向および前記一軸性マウントの変位方向の動きが規制される、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記弾性体の変位可能方向が車両の前後方向と一致するように前記車両に搭載される、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記弾性体の変位可能方向が車両の幅方向と一致するように前記車両に搭載される、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記一軸性マウントは、前記筐体に収納される前記高温部品に固定されるシャフトと、前記シャフトを一方向に変位可能な状態で支持する可動軸受けと、から構成され、
前記可動軸受けは前記筐体に固定される、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記一軸性マウントおよび前記弾性体と前記高温部品との間を通り、前記高温部品の全体を覆う断熱材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記弾性体は、板ばねであり、
前記板ばねは、一端が前記高温部品に固定され、他端が前記筐体に固定されることで前記高温部品を前記筐体に固定する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記弾性体は、前記高温部品に固定される第1板材と、前記筐体に固定される第2板材とを含む複数の板材によりパンタグラフ形状に構成される、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記筐体に収納される前記高温部品は前記燃料電池及び前記改質器であって、
前記燃料電池及び前記改質器は、前記改質器から前記燃料電池へ燃料を供給するための連結配管により連結されるとともに、それぞれ少なくとも一つの前記一軸性マウントおよび少なくとも一つの前記弾性体を介して前記筐体に固定され、
前記燃料電池を前記筐体に固定する前記一軸性マウントおよび前記弾性体は、各マウント軸線と各変位方向線とが一点で交わるように配置され、
前記改質器を前記筐体に固定する前記一軸性マウントおよび前記弾性体は、各マウント軸線と各変位方向線とが一点で交わるように配置される、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記弾性体は、パンタグラフ形状に構成されるとともに、変位可能な方向と前記連結配管の長手方向とが一致するように配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記弾性体は、パンタグラフ形状に構成されるとともに、変位可能な方向が前記連結配管の長手方向に直角に交わる方向になるように配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記一軸性マウントおよび前記弾性体は、各マウント軸線と各変位方向線とが前記連結配管上の点で交わるように配置される、
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記燃料電池及び前記改質器を前記筐体に固定する前記一軸性マウントは、それぞれ一対ずつ配置され、
各一対の前記一軸性マウントは、互いに対向する位置に配置されるとともにマウント軸線の方向と前記連結配管の長手方向とが一致するように配置され、
前記燃料電池及び前記改質器を前記筐体に固定する前記弾性体は、それぞれ一対ずつ配置され、
各一対の前記弾性体は、互いに対向する位置に配置されるとともに変位方向線の方向と前記連結配管の長手方向に直角に交わる方向とが一致するように配置され、
前記一軸性マウントのマウント軸線と前記弾性体の変位方向線とは、一点で直角に交わる、
ことを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、改質器を用いて炭化水素系燃料を水蒸気改質処理した燃料ガスにより発電を行う固体酸化物型燃料電池を備えた燃料電池システムが知られている。固体酸化物型燃料電池は、天然ガスやエタノール等の入手容易な燃料で発電できるという利点がある。しかし、固体酸化物型燃料電池は反応温度が高いため、稼働時に燃料電池スタックや改質器等の部品が高温になる。
【0003】
燃料電池システムを車両に搭載する場合、防水性や耐チッピング性の観点から、金属等の筐体内に燃料電池や改質器などの部品を締結して配置することが好ましい。しかし筐体内に締結された固体酸化物型燃料電池のスタックや改質器などの部品が高温になると、熱による膨張応力により筐体や高温になった部品が変形し、締結部分の緩みや部品の破損、劣化を引き起こす恐れがある。また、燃料電池スタックや改質器などの部品が高温になると、高温部位に接続される配管等に過大な膨張応力がかかってしまい、応力吸収構造がないと、配管等が変形や破損、もしくは亀裂発生等により気密性が劣化してしまうという問題もある。
【0004】
特許文献1には、筐体内に配置された改質器を筐体に固定する改質器の支持構造が開示されている。この支持構造では、改質器の熱膨張による応力を緩和するため、改質器をブラケットによりゴム材等の弾性マウントを介して筐体の内壁に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-284506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された改質器の支持構造では、弾性マウントを設けた部分の膨張応力を緩和することはできるものの、その他の部分には依然として熱による膨張応力がかかる。そのため、改質器の一部や、改質器に燃料を供給するための配管等、予期しない部位に熱による膨張応力がかかってしまう。
【0007】
本発明の目的は、予期しない部位に高温部品の熱による膨張応力がかかることを抑制可能な燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、燃料電池及び燃料電池に燃料を供給する改質器の少なくとも一方を含む高温部品を収納する筐体を備える燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、筐体に固定され、一方向のみに変位可能な少なくとも一つの一軸性マウントと、筐体に固定され、弾性変形により一方向にのみ変位可能な少なくとも一つの弾性体と、を備える。筐体に収納される高温部品は、一軸性マウントおよび弾性体を介して筐体に固定され、弾性体は、少なくとも一つの一軸性マウントの変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置される。また、一軸性マウントおよび弾性体は、各一軸性マウントの変位可能な方向に伸ばした各マウント軸線と、各弾性体の変位可能な方向に伸ばした各変位方向線とが一点または所望の位置近傍の複数の点で交わるように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体に収納される高温部品は、一方向のみに変位可能な一軸性マウントおよび一方向にのみ変位可能な弾性体を介して筐体に固定される。また、一軸性マウントおよび弾性体は、各一軸性マウントの変位可能な方向に伸ばした各マウント軸線と、各弾性体の変位可能な方向に伸ばした各変位方向線とが一点または所望の位置近傍の複数の点で交わるように配置される。これにより、高温部品の熱膨張による変位方向を制御できるため、予期しない部位に膨張応力がかかることを防止でき、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の破損を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態による燃料電池システムの筐体内部を示す図である。
図2図2は、一軸性マウントの斜視図である。
図3a図3aは、変形例による一軸性マウントを正面から見た模式図である。
図3b図3bは、変形例による一軸性マウントを側面から見た模式図である。
図4a図4aは、板ばねの側面図である。
図4b図4bは、板ばねの斜視図である。
図5図5は、高温部品が膨張した場合の板ばねの変形を説明する図である。
図6図6は、一軸性マウント及び板ばねを設置した際の筐体内部を示す図である。
図7図7は、燃料電池システムを車両に搭載した際の図である。
図8図8は、第1実施形態の変形例1による燃料電池システムの筐体内部を示す図である。
図9図9は、高温部品が膨張した場合の板ばねの変形を説明する図である。
図10図10は、第1実施形態の変形例2による燃料電池システムの筐体内部を示す図である。
図11図11は、第1実施形態の変形例3による燃料電池システムの筐体内部を示す図である。
図12図12は、第1実施形態の変形例3による燃料電池システムの筐体内部を示す図である。
図13a図13aは、第2実施形態による燃料電池システムにおける一軸性マウントの模式図である。
図13b図13bは、第2実施形態による燃料電池システムにおける一軸性マウントの組立模式図である。
図14図14は、第3実施形態による燃料電池システムの筐体内部を示す図である。
図15a図15aは、第3実施形態による燃料電池システムにおける弾性体の側面図である。
図15b図15bは、第3実施形態による燃料電池システムにおける弾性体の上面図である。
図15c図15cは、第3実施形態による燃料電池システムにおける弾性体の斜視図である。
図16図16は、第4実施形態による燃料電池システム筐体内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による燃料電池システム100の筐体内部を示す図であり、筐体1の底面方向から見た図である。
【0013】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック2に対して発電に必要となる燃料ガス(アノードガス)及び酸化剤ガス(カソードガス)を供給し、燃料電池スタック2を車両走行用の電動モータ等の電気負荷に応じて発電させるシステムである。
【0014】
燃料電池システム100の筐体1内には、燃料電池スタック2と、燃料を改質して燃料電池スタック2にアノードガスを供給する改質器3とが配置されている。燃料電池スタック2と改質器3とは、改質された燃料ガスを改質器3から燃料電池スタック2に供給するアノードガス供給管(連結配管)21と、燃料電池スタック2から排出される排出ガスが流れる第1排気管(連結配管)22とにより連結されている。また、改質器3は、それぞれ改質器3に燃料を供給する燃料供給管31、空気を供給する吸気管32、及び改質器3から排出ガスを排出する第2排気管33を介して外部の補機類と連結されている。なお、この他に燃料電池システム100には、カソードガス供給管が配設されるが、本発明の効果の説明においては、アノードガス供給管と同様なので省略する。
【0015】
筐体1は金属等からなり、燃料電池スタック2及び改質器3を収納する。筐体1の内側には、反応温度の高い燃料電池スタック2や改質器3の熱が放熱されることによる熱損失を抑制するために断熱材6が設けられている。断熱材6は、燃料電池スタック2及び改質器3を収容可能な状態で筐体1内に設けられている。
【0016】
燃料電池スタック2は高温で稼働する高温部品であり、アノードガスとカソードガスの供給を受けて発電する。燃料電池スタック2は複数の燃料電池又は燃料電池単位セルを積層して構成され、発電源である個々の燃料電池は例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)である。
【0017】
改質器3は高温で稼働する高温部品であり、改質前燃料を燃料電池スタック2に供給するために適切な状態とすべく改質する。例えば、改質器3は、燃料供給管31から供給される燃料を触媒反応により水素を包含する燃料ガス(アノードガス)に改質する。
【0018】
また、改質器3には図示しない排気燃焼器が備えられている。排気燃焼器は、燃料電池スタック2から排出された排出ガスを触媒燃焼させて燃焼ガスを生成する。排気燃焼器で生成された燃焼ガスは、熱交換により改質器3を加熱する。
【0019】
アノードガス供給管21は、改質器3で改質されたアノードガスを燃料電池スタック2に供給する配管であり、改質器3と燃料電池スタック2とを連結する。アノードガス供給管21は、一端が改質器3に、他端が燃料電池スタック2に、溶接等によって接合されている。また、アノードガス供給管21は、配管の一部または全部に柔軟性を有するフレキシブル部211を備えるフレキシブル配管である。
【0020】
第1排気管22は、燃料電池スタック2から排出される排出ガスを改質器3内の排気燃焼器へ送る配管であり、燃料電池スタック2と改質器3とを連結する。第1排気管22は、一端が改質器3に、他端が燃料電池スタック2に、溶接等によって接合されている。また、第1排気管22は、配管の一部または全部に柔軟性を有するフレキシブル部221を備えるフレキシブル配管である。第1排気管22は、アノードガス供給管21と同一の向きに設置されている。なお、以下、アノードガス供給管21及び第1排気管22を連結配管21,22と総称する。
【0021】
燃料供給管31は改質器3と筐体1外部の補機とを連結する連結部材であり、改質器3に改質前燃料を供給する配管である。燃料供給管31は溶接等によって一端が改質器3に接合され、他端は例えばバルブ等の補機に連接している。
【0022】
吸気管32は改質器3と筐体1外部の補機とを連結する連結部材であり、例えばシステム起動時に改質器3を暖機する際、燃料を燃焼させるための空気を供給するなど、必要に応じて改質器3に空気を供給する配管である。吸気管32は溶接等によって一端が改質器3に接合され、他端は例えばバルブ等の補機に連接している。
【0023】
第2排気管33は改質器3と筐体1外部の補機とを連結する連結部材であり、排気燃焼器により生成された燃焼ガスを筐体1外部に排出する配管である。第2排気管33は溶接等によって一端が改質器3に接合され、他端は例えばバルブ等の補機に連接している。
【0024】
燃料供給管31、吸気管32及び第2排気管33は、それぞれ同一の方向に設置されている。なお、以下、燃料供給管31、吸気管32及び第2排気管33を連結部材31,32,33と総称する。連結部材31,32,33は、連結配管21,22と同一の方向に設置されている。
【0025】
このように構成された燃料電池システム100では、燃料供給管31から供給される燃料が改質器3によりアノードガスに改質され、改質されたアノードガスがアノードガス供給管21から燃料電池スタック2に供給される。なお、燃料電池スタック2には、図示しないカソードガス供給管を介して、筐体1外部からカソードガスが供給される。
【0026】
一方、燃料電池スタック2から排出された排出ガスは第1排気管22を介して改質器3内の排気燃焼器に送られ、排気燃焼器は排出ガスを触媒燃焼させて燃焼ガスを生成する。排気燃焼器で生成された燃焼ガスは、熱交換により改質器3を加熱した後、第2排気管33を介して筐体1外部に排出される。
【0027】
なお、改質器3とともに、液体燃料を加熱して改質前燃料ガスを生成する蒸発器や、排気燃焼器で生成された燃焼ガスと改質前燃料ガスを熱交換させて改質前燃料ガスを過熱する過熱器などを筐体1内に配置する構成にしてもよい。また、改質器3を蒸発器や過熱器などを含む改質器ユニットとする構成にしてもよい。
【0028】
また、燃費の観点から、燃料電池スタック2と改質器3とを排気管で連結してオフガスを利用することが好ましいが、必ずしもこれに限られず、燃料電池スタック2と改質器3とを連結する第1排気管22を設けない構成にしてもよい。
【0029】
次に、燃料電池スタック2及び改質器3の支持構造について説明する。
【0030】
図1に示すように、燃料電池スタック2及び改質器3は、それぞれ一対の一軸性マウント4及び板ばね(弾性体)5を介して筐体1に固定されている。
【0031】
筐体1には、燃料電池スタック2を筐体1に固定する一対の一軸性マウント4と、改質器3を筐体1に固定する一対の一軸性マウント4とが固定されている。各一軸性マウント4は、一方向(マウント軸線方向)のみに変位可能に構成されている。一軸性マウント4は、筐体1と燃料電池スタック2及び改質器3とが一軸性マウント4の変位方向に相対移動可能なように、下面が筐体1に固定され、上面が燃料電池スタック2及び改質器3に固定されている。このようにして、一軸性マウント4は燃料電池スタック2及び改質器3を筐体1に固定している。なお、一軸性マウント4の構造の詳細は後述する。
【0032】
また、筐体1には、燃料電池スタック2を筐体1に固定する一対の板ばね5と、改質器3を筐体1に固定する一対の板ばね5とが固定されている。板ばね5は例えば金属製の弾性体であり、一方向(弾性変形する方向)のみに変位可能に構成されている。板ばね5は、筐体1と燃料電池スタック2及び改質器3とが板ばね5の変位方向に相対移動可能なように、一端がブラケット51を介して筐体1に固定され、他端がブラケット52を介して燃料電池スタック2及び改質器3に固定されている。このようにして、一対の板ばね5は燃料電池スタック2及び改質器3を筐体1に固定している。なお、板ばね5の構造の詳細は後述する。
【0033】
燃料電池スタック2を筐体1に固定する一軸性マウント4及び板ばね5は、各一軸性マウント4の変位可能な方向に伸ばしたマウント軸線及び各板ばね5の変位可能な方向に伸ばした変位方向線どうしが一点Xで交わるように配置される。また、板ばね5は、一軸性マウント4の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置される。
【0034】
より詳細には、燃料電池スタック2を筐体1に固定する一対の一軸性マウント4は、互いに対向する位置に配置されるとともに、各マウント軸線が連結配管21,22の長手方向(以下、配管方向と称する)と同一の方向(図1のy方向)になるように、且つ各マウント軸線どうしが重なるように配置されている。また、燃料電池スタック2を筐体1に固定する一対の板ばね5は、互いに対向する位置に配置されるとともに、各変位方向線が配管方向と直角に交わる方向(図1のx方向)になるように、且つ各変位方向線どうしが重なるように配置されている。燃料電池スタック2を筐体1に固定する一軸性マウント4及び板ばね5は、一軸性マウント4の各マウント軸線と板ばね5の各変位方向線とが、点Xで直角に交わるように配置されている。
【0035】
同様に、改質器3を筐体1に固定する一軸性マウント4及び板ばね5は、各一軸性マウント4の変位可能な方向に伸ばしたマウント軸線及び各板ばね5の変位可能な方向に伸ばした変位方向線どうしが一点Yで交わるように配置される。また、板ばね5は、一軸性マウント4の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置される。
【0036】
より詳細には、改質器3を筐体1に固定する複数の一軸性マウント4は、互いに対向する位置に配置されるとともに、各マウント軸線が配管方向(図1のy方向)になるように、且つ各マウント軸線どうしが重なるように配置されている。また、改質器3を筐体1に固定する一対の板ばね5は、互いに対向する位置に配置されるとともに、各変位方向線が配管方向と直角に交わる方向(図1のx方向)になるように、且つ各変位方向線どうしが重なるように配置されている。改質器3を筐体1に固定する一軸性マウント4及び板ばね5は、一軸性マウント4の各マウント軸線と板ばね5の各変位方向線とが、点Yで直角に交わるように配置されている。
【0037】
一軸性マウント4の軸線及び板ばね5の変位方向線が交わる点は、筐体内部の高温部品が熱膨張した場合にも筐体1に対して相対変位しない点、即ち膨張中心を形成する。高温部品は熱膨張する際、膨張中心から放射状に膨張変位する。従って、マウント軸線が膨張中心を通る一軸性マウント4、及び変位方向線が膨張中心を通る板ばね5は、一軸性マウント4及び板ばね5の変位可能な方向と膨張変位の方向とが一致する。このため、一軸性マウント4及び板ばね5により、筐体1内部の高温部品の熱膨張を許容することができる。
【0038】
このように一対(2つ)の一軸性マウント4及び一対(2つ)の板ばね5を、各マウント軸線及び各変位方向線が一点で交わるように配置することで、筐体内部の高温部品が熱膨張した場合にも筐体1に対して相対変位しない点(膨張中心)を形成させることができる。
【0039】
また、板ばね5が、一軸性マウント4の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置されているため、板ばね5の引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)により、筐体1内部の高温部品がマウント軸線方向(図1のy方向)に移動することが規制される。同様に、一軸性マウント4は、板ばね5の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置されているため、筐体1内部の高温部品が板ばね5の変位方向線方向(図1のx方向)に移動することが規制される。筐体内部の高温部品が揺動すると、それにより一軸性マウント4が微動することで騒音が発生するという問題がある。一方本実施形態においては、板ばね5が高温部品のマウント軸線方向への移動を規制し、一軸性マウント4が高温部品の変位方向線方向への移動を規制するため、振動等が起こっても、筐体1に収納される高温部品が筐体1に対して水平方向に揺動することが抑制される。従って、高温部品の揺動により一軸性マウント4が微動することで発生する騒音を抑制することができる。
【0040】
なお、板ばね5のような弾性体のみにより高温部品を筐体1に固定しようとすると、高温部品の位置決めが難しくなるが、本実施形態においては、板ばね(弾性体)5だけではなく、一軸性マウント4も用いて高温部品を筐体1に固定している。このため、板ばね(弾性体)5のみを用いる場合に比べて、高温部品の位置決めが容易である。
【0041】
次に、図2を用いて、一軸性マウント4の構造を説明する。
【0042】
図2は、一軸性マウント4の斜視図である。
【0043】
図2に示すように、一軸性マウント4は、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)に締結される部品固定部材41と、筐体1に締結される筐体固定部材42とから構成される。
【0044】
部品固定部材41は、例えば耐熱性の金属材料から成り、筐体1に収納される高温部品の底面に平行な方向に延びる平行部411と、平行部411の中央から下方に延設される延設部412とを有する。平行部411の両端には、平行部411の上面から下面を貫通する孔413がそれぞれ設けられ、部品固定部材41は、孔413を通じてボルト等により上面側に高温部品が締結される。延設部412の先端にはアリ溝414が形成されている。
【0045】
筐体固定部材42は、例えば耐熱性の金属材料から成り、筐体1に平行な方向に延びる平行部421と、平行部421の中央から上方に延設される延設部422を有する。平行部421の両端には、平行部421の上面から下面を貫通する孔423がそれぞれ設けられ、筐体固定部材42は、孔423を通じてボルト等によりブラケット424(図6参照)を介して筐体1に締結される。延設部422は部品固定部材41のアリ溝414に対応するアリ型として形成されている。
【0046】
部品固定部材41のアリ溝414と、アリ型として形成される筐体固定部材42の延設部422とがスライド可能に係合されることで、一方向(スライド方向)にのみ変位可能なレール式の一軸性マウント4が構成される。
【0047】
前述のとおり、一軸性マウント4は、板ばね5の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置される。従って、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)に配管方向と直角に交わる方向(図1のx方向)の振動が加わった場合であっても、一軸性マウント4のレール(アリ型・アリ溝)により高温部品のx方向への移動が規制される。これにより高温部品のx方向への揺動が防止される。
【0048】
なお、一軸性マウント4は、必ずしもアリ型、アリ溝を用いたレール式の構成である必要はない。例えば図3a及び図3bに示すように、一軸性マウント4を、高温部品の底面に固定されるガイド43と、筐体1に固定されるレール44とから構成し、ガイド43によりレール44を抱え込むような構造にしてもよい。この場合、レール44に嵌合されるガイド43はレール方向に自由変位可能に構成される。これにより、一軸性マウント4が一方向のみに変位可能に構成される。また、ガイド43でレール44を抱え込むような構造であるため、垂直方向の振動に対してガイド43がレール44から外れないような構成になっている。
【0049】
また、一軸性マウント4を高温部品及び筐体1に固定する方法は、必ずしもボルト等による締結である必要はなく、例えば溶接等により高温部品及び筐体1に固定してもよい。
【0050】
次に、図4及び図5を用いて、板ばね5の構造を説明する。
【0051】
図4aは、板ばね5の側面図、図4bは板ばね5の斜視図である。
【0052】
板ばね5は、例えば耐熱性の金属材料から成る板状の弾性部材で、図4a、4bに示すように、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)に締結される部品締結部53と、筐体1に締結される筐体固定部54と、中央部55とを有する。
【0053】
部品締結部53は板ばね5の一端に形成され、部品締結部53には板ばね5の側面を貫通する孔531が設けられている。板ばね5は、部品締結部53において、孔531を通じてボルト等によりブラケット52(図1、6・参照)を介して一側面側が高温部品に締結される。
【0054】
筐体固定部54は板ばね5の他端に形成され、筐体固定部54には板ばね5の側面を貫通する孔541が設けられている。板ばね5は、筐体固定部54において、孔541を通じてボルト等によりブラケット51(図1、6参照)を介して反対側側面が筐体1に締結される。
【0055】
中央部55は弾性変形を発生する部分であり、部品締結部53と筐体固定部54を、角度θを設けて連結している。
【0056】
板ばね5は、筐体固定部54を支点として、中央部55が配管方向に直角に交わる方向(図1のx方向)に撓み変形(弾性変形)可能であり、これにより、一方向(弾性変形方向)にのみ変位可能に構成される。
【0057】
なお、板ばね5を高温部品及び筐体1に固定する方法は、必ずしもボルト等による締結である必要はなく、例えば溶接等により高温部品及び筐体1に固定してもよい。
【0058】
図5は、高温部品が膨張した場合の板ばね5の変形を説明する図である。
【0059】
板ばね5は、高温部品が膨張すると、高温部品が膨張していないときの位置からx方向(配管方向に直角に交わる方向)にそれぞれδxだけ弾性変形する。また、板ばね5は、筐体固定部54を支点として弾性変形するため、高温部品が膨張すると、y方向(配管方向)にもわずかにずれがおこり、δyだけ移動する。
【0060】
板ばね5が弾性変形した際のずれδyは、マウント軸線の方向がy方向(配管方向)になるように配置されたレール式の一軸性マウント4により、y方向への移動のみに規制される。y方向(配管方向)へ規制されたずれδyは、一軸性マウント4の配管方向への変位により許容される。このため、連結配管21,22及び連結部材31,32,33に曲げ応力が入ることが防止される。
【0061】
なお、一対の板ばね5は、弾性変形を発生する中央部55の長さl及び部品締結部53と筐体固定部54との間に設けられる角度θが、互いに等しいことが好ましい。また、一対の板ばね5は、膨張中心からの距離が互いに等しいことが好ましい。さらに、各板ばね5のばね定数は互いに等しいことが好ましい。これらの条件を満たすことにより、板ばね5が弾性変形した際のずれδyが互いの板ばね5間で等しくなり、熱膨張した際に高温部品が一軸性マウント4のレール上を移動しやすくなる。
【0062】
上記のとおり、板ばね5が弾性変形した際のずれδyが互いの板ばね5で等しくなることが好ましいが、必ずしもこれに限られない。高温部品の可動方向は、マウント軸線の方向がy方向(配管方向)になるように配置されたレール式の一軸性マウント4により、y方向への移動のみに規制される。このため、例えば各板ばね5のばね定数にばらつきがあっても、膨張中心がx方向(配管方向に直角に交わる方向)にずれることはない。即ち、板ばね5が弾性変形した際のずれδyが互いの板ばね5で異なっていても、連結配管21,22及び連結部材31,32,33に断面方向(x方向)の応力は発生しない。
【0063】
図6は、一軸性マウント4及び板ばね5を設置した際の筐体内部を示す図であり、筐体の側面方向から見た図である。
【0064】
図6に示すように、一軸性マウント4は高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の下部に配置され、筐体固定部材42がブラケット424を介して筐体1の底板にボルト等により締結されることで筐体1に固定される。また、一軸性マウント4は、部品固定部材41の上面側と、筐体1内の高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の底面とが、ボルト等により締結されている。これにより、一軸性マウント4は高温部品に対し水平方向に変位可能な状態で筐体1に固定される。
【0065】
また、図6に示すように、板ばね5は、板ばね5の側面の幅方向が筐体1に対する垂直方向(図6のz方向)と一致するように、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の下部に配置される。板ばね5は、部品締結部53が、ブラケット52を介してボルト等により筐体1内の高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の底面に固定される。また、板ばね5は、筐体固定部54が、ブラケット51を介してボルト等により筐体1の側壁に締結されることで筐体1に固定される。板ばね5は、高温部品に対する水平方向であって、且つ一軸性マウント4の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置されている。
【0066】
板ばね5は、側面に向かう方向(図1のx方向)に対しては弾性変形するが、垂直方向(図6のz方向)に対しては断面二次モーメントが大きい。このため、板ばね5により、高温部品が筐体1に対し垂直方向に揺動することが規制される。燃料電池システム100に垂直方向の振動が加わった場合、高温部品が垂直方向に揺動すると、一軸性マウントのアリ型・アリ溝間の浮き上がりや落下が起こり、騒音が発生する。一方、本実施形態においては、板ばね5により高温部品の垂直方向への揺動が規制されるため、一軸性マウント4のアリ型・アリ溝間の浮き上がりや落下が防止され、騒音が軽減される。
【0067】
なお、図1及び図6に示すように、一軸性マウント4及び板ばね5と高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)との間には、高温部品の全体を覆う断熱材6が設けられる。断熱材6には貫通孔を設けられ、一軸性マウント4及び板ばね5は貫通孔を通して高温部品及び筐体1に固定されている。
【0068】
このように一軸性マウント4及び板ばね5と高温部品との間に断熱材6を設け、一軸性マウント4及び板ばね5を断熱材6の外に配置しているため、最小限保温が必要な部位(高温部品)のみが保温される。このため、断熱材6の使用量を抑えることができる。また、高温部品を保温しつつ、一軸性マウント4や板ばね5が過度に高温化すること防止することができる。
【0069】
図7は、本実施形態の燃料電池システム100を車両7に搭載した際の図である。
【0070】
図7に示すように、燃料電池システム100は、板ばね5の変位可能な方向が車両7の前後方向(図7のx方向)と一致するように車両7に搭載される。
【0071】
前述のとおり、筐体1内部の高温部品は、板ばね5が高温部品のマウント軸線方向への移動を規制し、一軸性マウント4が高温部品の変位方向線方向への移動を規制する。しかしながら、本実施形態のレール式の一軸性マウント4や、後述する第2実施形態におけるシャフトと軸受を用いた一軸性マウント4の場合、レールと係合部材(アリ型・アリ溝)やシャフトと軸受との間に空隙があると、空隙で微振動して騒音が発生し得る。即ち、一軸性マウント4を構成する部材間に空隙があると、一軸性マウント4が振動した場合、空隙により騒音が発生する可能性がある。一方、板ばね5にはそのような騒音の問題がない。一般の車両においては、通常、車両の前後方向よりも車幅方向の振動が大きい。従って、燃料電池システム100を、板ばね5の変位可能な方向が車両7の前後方向(図7のx方向)と一致するように車両7に搭載することで、板ばね5により、高温部品の車幅方向(図7のy方向)の揺動を抑制する。即ち、燃料電池システム100を上記の方向に搭載することで、板ばね5の引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)による規制力により、車幅方向の振動による高温部品の揺動を抑制できる。これにより、一軸性マウント4の車幅方向(y方向)の移動を抑制でき、一軸性マウント4の騒音を軽減できる。
【0072】
なお、車両の種類によっては、車幅方向よりも車両の前後方向の振動が大きい場合がある。このような車両の場合、燃料電池システム100は、板ばね5の変位可能方向が車両7の幅方向(y方向)と一致するように車両7に搭載される。これにより、板ばね5の引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)による規制力により、車両7の前後方向(x方向)の振動による高温部品の揺動を抑制できる。従って、一軸性マウント4の車両7の前後方向の移動を抑制でき、一軸性マウント4の騒音を軽減できる。
【0073】
上記した第1実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0074】
燃料電池システム100においては、筐体1に収納される高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)は、一方向のみに変位可能な一軸性マウント4および一方向にのみ変位可能な板ばね(弾性体)5を介して筐体1に固定される。また、一軸性マウント4及び板ばね(弾性体)5は、各一軸性マウント4の変位可能な方向に伸ばした各マウント軸線と、各板ばね(弾性体)5の変位可能な方向に伸ばした各変位方向線とが一点で交わるように配置される。高温部品は各マウント軸線と各変位方向線が交わる点(膨張中心)から放射状に熱膨張するため、マウント軸線が膨張中心を通る一軸性マウント4及び変位方向線が膨張中心を通る板ばね(弾性体)5は、一軸性マウント4及び板ばね5の変位可能な方向と膨張変位の方向とが一致する。このため、一軸性マウント4及び板ばね5により、筐体1内部の高温部品の熱膨張を許容することができる。このように、一軸性マウント4及び板ばね(弾性体)5の配置によって高温部品の熱膨張による変位方向を制御できるため、予期しない部位に膨張応力がかかることを防止できる。その結果、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の変形や破損を回避することができる。
【0075】
また、板ばね(弾性体)5は、一軸性マウント4の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置されるため、板ばね(弾性体)5の引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)により、筐体1内部の高温部品がマウント軸線方向に移動することが規制される。これにより、高温部品に一軸性マウント4が変位可能な方向の振動が加わった場合にも、板ばね(弾性体)5の耐力により、高温部品の揺動を防止することができる。同様に、一軸性マウント4は、板ばね5の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置されているため、筐体1内部の高温部品が板ばね5の変位方向線方向に移動することが規制される。これにより、高温部品に板ばね(弾性体)5が変位可能な方向の振動が加わった場合にも、一軸性マウント4により高温部品の揺動を防止することができる。このように、板ばね5が高温部品のマウント軸線方向への揺動を規制し、一軸性マウント4が高温部品の変位方向線方向への揺動を規制するため、燃料電池システム100に振動が加わった場合でも筐体1に収納される高温部品の揺動を抑制できる。従って、高温部品の揺動により一軸性マウント4が微動することで発生する騒音を抑制することができる。
【0076】
燃料電池システム100においては、板ばね(弾性体)5が高温部品に対し水平方向に変位可能に配置される。従って、板ばね(弾性体)5は、高温部品に対する水平方向には弾性変形するが、垂直方向に対しては断面二次モーメントが大きい。このため、板ばね(弾性体)5により、高温部品が筐体1に対し垂直方向に移動することが規制される。従って、高温部品に垂直方向の振動が加わった場合にも、一軸性マウント4の高温部品の垂直方向への揺動が規制される。これにより、高温部品の垂直方向への揺動により引き起こされる一軸性マウント4の浮き上がりや落下が防止され、騒音が軽減される。
【0077】
燃料電池システム100においては、高温部品である燃料電池スタック(燃料電池)2及び改質器3が、改質器3から燃料電池スタック(燃料電池)2へ燃料を供給するためのアノードガス供給管(連結配管)21により連結されるとともに、それぞれ一軸性マウント4及び板ばね(弾性体)5を介して筐体1に固定される。そして、燃料電池スタック(燃料電池)2を筐体1に固定する一軸性マウント4および板ばね(弾性体)5は、各マウント軸線と各変位方向線とが一点で交わるように配置される。また、改質器3を筐体1に固定する一軸性マウント4および板ばね(弾性体)5は、各マウント軸線と各変位方向線とが一点で交わるように配置される。従って、燃料電池スタック(燃料電池)2と改質器3とは、それぞれ膨張中心を形成する。これにより、燃料電池スタック(燃料電池)2と改質器3とは、個々に熱膨張が許容され、筐体1と燃料電池スタック(燃料電池)2及び改質器3との間の熱膨張に膨張差が生じても熱応力が発生しない。これにより、筐体1や燃料電池スタック(燃料電池)2及び改質器3の変形、筐体1と燃料電池スタック2及び改質器3の締結部の緩みを抑制することができる。
【0078】
燃料電池システム100においては、燃料電池スタック(燃料電池)2及び改質器3を筐体1に固定する一軸性マウント4は、それぞれ一対ずつ配置される。各一対の一軸性マウント4は、互いに対向する位置に配置されるとともにマウント軸線の方向と連結配管21,22の長手方向(配管方向)とが一致するように配置される。また、燃料電池スタック(燃料電池)2及び改質器3を筐体1に固定する板ばね(弾性体)5は、それぞれ一対ずつ配置される。各一対の板ばね(弾性体)5は、互いに対向する位置に配置されるとともに変位方向線の方向と連結配管21,22の長手方向に直角に交わる方向とが一致するように配置される。そして、一軸性マウント4のマウント軸線と板ばね(弾性体)5の変位方向線とは、一点で直角に交わる。このように、一軸性マウント4のマウント軸線の方向と配管方向が一致するため、板ばね(弾性体)5が弾性変形した際のずれδyは、一軸性マウント4により配管方向への移動のみに規制される。配管方向へ規制されたずれδyは、一軸性マウント4の配管方向への変位により許容される。このため、連結配管21,22及び連結部材31,32,33に曲げ応力が入ることが防止される。その結果、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の変形や破損を回避することができる。
【0079】
また、板ばね(弾性体)5が弾性変形した際のずれδyは、一軸性マウント4により配管方向への移動のみに規制されるため、各板ばね(弾性体)5のばね定数や大きさ、形状にばらつきがあっても、膨張中心が配管方向と直角に交わる方向にずれることはない。即ち、板ばね(弾性体)5が弾性変形した際のずれδyが互いの板ばね(弾性体)5で異なっていても、連結配管21,22及び連結部材31,32,33に断面方向の応力は発生しない。従って、板ばね5のばね定数や大きさ、形状にばらつきがあっても、連結配管21,22及び連結部材31,32,33にかかる高温部品の熱膨張による膨張応力を緩和することができる。従って、板ばね5の選択自由度が向上するとともに、板ばね5の設計が容易になる。
【0080】
燃料電池システム100においては、一軸性マウント4及び板ばね5の配置によって、筐体1内部の高温部品の熱膨張を許容しているため、特許文献1のようにゴム材等の弾性マウントを用いる必要が無い。ゴム材等の容易に入手可能な材料からなる弾性マウントでは、マウントの耐熱性を確保できないため、システムに熱交換器等を設けて、ゴム材等の弾性マウントを冷却する必要がある。このように熱交換器を追加すると、システム構成が大型化してしまうという問題がある。一方、燃料電池システム100においては、金属製の一軸性マウント4及び板ばね5を用いているため、これらを冷却する必要が無い。従って、熱交換器を用いる必要が無く、システムの小型化、低コスト化を実現できる。
【0081】
燃料電池システム100においては、一軸性マウント4及び板ばね(弾性体)5と高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)との間を通り、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の全体を覆う断熱材を備える。このように一軸性マウント4及び板ばね(弾性体)5と高温部品との間に断熱材6を設け、一軸性マウント4及び板ばね5を断熱材6の外に配置しているため、最小限保温が必要な部位(高温部品)のみが保温される。このため、断熱材6の使用量を抑えることができる。また、高温部品を保温しつつ、一軸性マウント4や板ばね5が過度に高温化し、不具合が生じることを防止できる。
【0082】
燃料電池システム100は、車両7の幅方向の振動が、車両7の前後方向の振動よりも大きい場合、板ばね(弾性体)5の変位可能な方向が車両7の前後方向と一致するように車両7に搭載される。これにより、板ばね(弾性体)5の引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)による規制力により車幅方向の振動による高温部品の揺動を抑制できる。従って、一軸性マウント4の振動を抑制できる。従って、一軸性マウント4の車幅方向の移動を抑制でき、一軸性マウント4を構成する部材間の空隙によって引き起こされる騒音を軽減できる。よって、車両の防音材を軽減することができる。
【0083】
燃料電池システム100は、車両7の前後方向の振動が、車両7の幅方向の振動よりも大きい場合、板ばね(弾性体)5の変位可能な方向が車両7の幅方向と一致するように車両7に搭載される。これにより、板ばね(弾性体)5の引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)による規制力により車両7の前後方向の振動による高温部品の揺動を抑制できる。従って、一軸性マウント4の車両7の前後方向の移動を抑制でき、一軸性マウント4による騒音を軽減できる。よって、車両の防音材を軽減することができる。
【0084】
なお、本実施形態に記載のように、一軸性マウント4及び板ばね5は、マウント軸線がy方向、変位方向線がx方向になるように、且つマウント軸線と変位方向線が一点で直角に交わるように配置されることが好ましい。これにより、板ばね5が弾性変形した際のずれδyによる高温部品の移動を各配管方向(y方向)に規制することができる。但し、必ずしもこの構成に限られず、各一軸性マウント4のマウント軸線及び各板ばね5の変位方向線が一点(膨張中心)で交わるように一軸性マウント4及び板ばね5が配置されていれば、一軸性マウント4及び板ばね5の変位可能な方向と膨張変位の方向とが一致する。従って、例えば一軸性マウント4と板ばね5を、各一軸性マウント4のマウント軸線及び各板ばね5の変位方向線が一点(膨張中心)で交わるように放射状に配置してもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、2つ(一対)の一軸性マウント4および2つ(一対)の板ばね5を用いて燃料電池スタック2および改質器3をそれぞれ筐体1に固定しているが、一軸性マウント4および板ばねの個数はこれに限られない。各一軸性マウント4のマウント軸線及び各板ばね5の変位方向線が一点(膨張中心)で交わるように配置されていれば、例えば一軸性マウント4および/または板ばね5を3つ以上設置してもよく、また一軸性マウント4および/または板ばね5を1つのみ配置してもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、一軸性マウント4をマウント軸線が配管方向(図1のy方向)と一致するように配置し、板ばね5を変位方向線が配管方向に直角に交わる方向(図1のx方向)と一致するように配置しているが必ずしもこれに限られない。例えば一軸性マウント4をマウント軸線が配管方向に直角に交わる方向(図1のx方向)と一致するように配置し、板ばね5を変位方向線が配管方向(図1のy方向)と一致するように配置してもよい。
【0087】
また、板ばね5は、必ずしもすべての一軸性マウント4の変位可能な方向と異なる方向に変位可能に配置されている必要はなく、少なくとも一つの一軸性マウント4の変位可能な方向とは異なる方向に変位可能に配置されていればよい。
【0088】
また、弾性体として耐熱性のある板ばね5を用いることが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、板ばね5に代えて一方向にのみ変位可能なゴム製の弾性体を用いてもよい。特に本実施形態のように、断熱材の外に弾性体を配置する場合、耐熱性がそれ程高くない弾性体を用いることもできる。
【0089】
(第1実施形態の変形例1)
図8及び図9を参照して、第1実施形態の変形例1による燃料電池システム100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
図8は、第1実施形態の変形例1による燃料電池システム100の筐体内部を示す図であり、筐体1の底面方向から見た図である。本変形例1では、一軸性マウント4のマウント軸線に対して、板ばね5がオフセットして回転対称に配置されている点が第1実施形態と異なる。
【0091】
図8に示すように、一対の板ばね5は、一軸性マウント4のマウント軸線に直角に交わる変位方向線が互いに距離dだけずれた状態(オフセットした状態)で回転対称に配置されている。従って、燃料電池スタック2及び改質器3の膨張中心となる点は、それぞれ一対の板ばね5の各変位方向線の中間線M1,M2と一軸性マウント4のマウント軸線が直角に交わる位置(図7の点X,Y)近傍の2箇所にできる。
【0092】
図9は、高温部品が膨張した場合の板ばねの変形を説明する図である。
【0093】
板ばね5は、高温部品が膨張すると、高温部品が膨張していないときの位置からx方向(配管方向と直角に交わる方向)にそれぞれδxだけ弾性変形する。また、一対の板ばね5は、互いに距離dだけオフセットして配置されているため、高温部品が温度膨張すると、板ばね5の部品締結部53を高温部品に固定するブラケット51も、高温部品の膨張に伴ってδdだけy方向に変位する。また、板ばね5は、筐体固定部54を支点として弾性変形するため、高温部品が膨張すると、y方向(配管方向)にもδyだけずれがおこる。このずれδyと、オフセット量dによるブラケット51の変位量δdとが等しくなるように、予め実験等により、オフセット量dが調整されている。このように、予めオフセット量dを調整しておくことで、高温部品が膨張した際に、板ばね5には弾性変形可能な方向(変位可能な方向)の膨張力のみが作用する。即ち、膨張中心となる点が、それぞれ図8の点X,Y近傍の2箇所にできているが、高温部品の温度膨張を一軸性マウント4及び板ばね5により許容することができる。従って、予期しない部位(連結配管21,22及び連結部材31,32,33等)に膨張応力がかかることを防止でき、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の変形や破損を回避することができる。
【0094】
(第1実施形態の変形例2)
図10を参照して、第1実施形態の変形例2による燃料電池システム100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
図10は、第1実施形態の変形例2による燃料電池システム100の筐体内部を示す図であり、筐体1の底面方向から見た図である。本変形例2では、一対の板ばね5のばね定数が異なる点が第1実施形態と異なる。
【0096】
図10に示す通り、筐体1に収納される高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)は、y方向に対向して配置される一対の一軸性マウント4と、x方向に対向して配置されるとともに、それぞればね定数の異なる一対の板ばね5a,5bにより筐体1に固定されている。
【0097】
一方の板ばね5aは、ばね定数がkaであり、他方の板ばね5bは、ばね定数がkaよりも大きいkbである。高温部品が温度膨張した際、板ばね5bの撓みに伴う反力は板ばね5aの撓みに伴う反力よりも大きくなるため、高温部品はブラケット51を介してx方向に沿って板ばね5aの方向に押される。従って、一軸性マウント4における高温部品に固定されている部品固定部材41のアリ溝414が、筐体1に固定されている筐体固定部材42のアリ型(延設部)422を図10の矢印F方向に押し付ける。これにより、配管方向に直角に交わる方向(x方向)にアリ型・アリ溝(一軸性マウント4)が揺動することを抑制できる。即ち、上記の構成により、板ばね5は、引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)により、高温部品がマウント軸線方向(y方向)に移動することを規制するだけでなく、配管方向と直角に交わる方向(x方向)に一軸性マウント4が微動することも抑制する。従って、一軸性マウント4の微動による騒音を軽減することができる。
【0098】
なお、前述のとおり、高温部品の可動方向はy方向(配管方向)に配置されたレール式の一軸性マウント4によりy方向への移動のみに規制されるため、このようにばね5のばね定数にばらつきがあっても、膨張中心がx方向(配管方向に直角に交わる方向)にずれたり、回転したりすることはない。
【0099】
(第1実施形態の変形例3)
図11及び図12を参照して、第1実施形態の変形例3による燃料電池システム100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
図11及び図12は、第1実施形態の変形例3による燃料電池システム100の筐体内部を示す図であり、図11は筐体1の側面方向から見た図、図12は筐体1の上面方向から見た図である。本変形例3では、筐体1の上面と高温部品の上面に固定される板ばね5’をさらに備える点が第1実施形態と異なる。
【0101】
図11、12に示すように、筐体1の上面11の内面側には、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)を筐体1に固定する板ばね5’が固定されている。板ばね5’は、高温部品に対し垂直な方向(図11のz方向)に変位可能なように一端(筐体固定部54’)がボルト等により筐体1に締結され、他端(部品締結部53’)がブラケット52’を介してボルト等により高温部品の上面23,34に締結されている。なお、筐体1の垂直方向(z方向)を省スペース化するため、板ばね5’の一端(筐体固定部54’)はブラケットを介さずに筐体1に締結することが好ましいが、必ずしもこれに限られず、ブラケットを介して筐体1に締結してもよい。
【0102】
板ばね5’の変位可能な方向に伸ばした変位方向線は、高温部品に対し水平方向に配置された一対の板ばね5の変位方向線と一対の一軸性マウント4のマウント軸線とが交わる点X,Yと交わる。即ち、点X,Yは、本変形例3においても膨張中心を形成する。従って、板ばね5’は、中央部55’の弾性変形により高温部品の垂直方向(z方向)の熱膨張を許容することができる。また、板ばね5及び板ばね5’は、膨張中心からの距離Lがいずれも等しくなるように配置されている。これにより、板ばね5及び板ばね5’が弾性変形した際のずれδyがいずれも等しくなり、熱膨張した際に高温部品が一軸性マウント4のレール上を移動しやすくなる。
【0103】
なお、板ばね5及び板ばね5’は、膨張中心からの距離Lがいずれも等しくなるように配置するのが好ましいが、必ずしもこれに限られず、膨張中心からの距離が異なっていてもよい。
【0104】
上記の構成によっても、一軸性マウント4のマウント軸線、板ばね5及び板ばね5’の変位方向線が一点(膨張中心)で交わるため、高温部品が温度膨張した場合、一軸性マウント4、板ばね5及び板ばね5’は、高温部品の熱膨張を許容することができる。即ち、一軸性マウント4、板ばね5及び板ばね5’の配置によって高温部品の熱膨張による変位方向を制御できるため、本変形例3による構成においても予期しない部位に膨張応力がかかることを防止できる。その結果、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の変形や破損を回避することができる。
【0105】
また、板ばね5’は、高温部品に対し垂直方向(z方向)には弾性変形するが、水平方向(x、y方向)に対しては断面二次モーメントが大きい。このため、板ばね5’により、高温部品が筐体1に対し水平方向に揺動することが規制される。従って、高温部品が水平方向に揺動することにより、一軸性マウント4(アリ型・アリ溝)が水平方向に微動して発生する騒音を軽減することができる。一方、板ばね5は、高温部品に対し水平方向(x方向)には弾性変形するが、垂直方向(z方向)に対しては断面二次モーメントが大きい。このため、板ばね5により、高温部品が筐体1に対し垂直方向に揺動することが規制される。従って、高温部品が垂直方向に揺動することにより引き起こされる一軸性マウント4(アリ型・アリ溝)の垂直方向への浮き上がりや落下を抑制でき、一軸性マウント4による騒音を軽減することができる。
【0106】
(第2実施形態)
図13を参照して、第2実施形態による燃料電池システム100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
図13aは、第2実施形態による燃料電池システム100における一軸性マウント4’の模式図であり、図13bは一軸性マウント4’の組立模式図である。本実施形態においては、一軸性マウント4’が、シャフト45と軸受46とにより構成される点が第1実施形態と異なる。
【0108】
図13aに示すように、一軸性マウント4’はシャフト45、第1部品固定部材47、第2部品固定部材48、シャフト45を支持する軸受46、筐体固定部材49とから構成される。
【0109】
シャフト45は耐熱性の金属材料から成り、円柱状に構成され、筐体1に収納される高温部品の底面に平行な方向に延びている。シャフト45は軸受46により支持され、シャフト45の両端は、溶接等により第1部品固定部材47に接合される。
【0110】
軸受46は耐熱性の金属材料から成り、底面においてボルト等の締結部材により筐体固定部材49に固定される。軸受46は、筐体1に収納される高温部品の底面に平行な方向に変位可能な状態でシャフト45を支持する。このように軸受46は、高温部品の底面に平行な方向に変位可能な状態でシャフト45を支持するとともに、一軸性マウント4’を介して筐体1に固定される高温部品が筐体1に対して底面に平行な方向以外の方向に相対変位することを規制する。即ち、軸受46は、シャフト45を一方向に変位可能な状態で支持する。
【0111】
第1部品固定部材47は、例えばステンレス系の耐熱性材料等から成る板状の部材で、シャフト45に対して垂直な方向に延びており、貫通孔が設けられている。図13bに示すように、この貫通孔にシャフト45を貫通させて、シャフト45と第1部品固定部材47を接合する。第2部品固定部材48は、例えばステンレス系の耐熱性材料等から成る板状の部材で、シャフト45に平行な載置面481を有し、載置面481上には筐体1に収納される高温部品が載置され、高温部品はボルト等の締結部材により載置面481に固定される。第1部品固定部材47と第2部品固定部材48とは第1部品固定部材47の上端においてボルト等の締結部材により締結されている。
【0112】
筐体固定部材49は、例えばステンレス系の耐熱性材料等から成る板状の部材で、上面においてボルト等の締結部材により軸受46が締結される。筐体固定部材49の底面はボルト等の締結部材により筐体1に締結される。
【0113】
このように、一軸性マウント4’は、第1部品固定部材47及び第2部品固定部材48を介して筐体1内の高温部品に固定されるシャフト45と、シャフト45を一方向に変位可能な状態で支持する軸受46と、から構成される。また、軸受46は、筐体固定部材49を介して筐体1に固定される。これにより、一軸性マウント4’は一方向にのみ変位可能な状態で筐体1内の高温部品を筐体1に固定する。
【0114】
上記のとおり、一軸性マウント4’は、第1部品固定部材47の貫通孔にシャフト45を貫通させて、シャフト45と第1部品固定部材47を接合する。このため、図13bに示すように、シャフト45と、部品固定部材47,48と、軸受46及び筐体固定部材49とをそれぞれ分離して製造して組み立てることが可能となり、一軸性マウント4’をより容易に構成できる。また、シャフト45と軸受46とを予め組み込んだ状態で燃料電池システム100に設置することができるため、部品単位(個々の一軸性マウント4’)で管理可能であり、また部品製作段階で一軸性マウント4’の機能を事前検査することができる。
【0115】
上記した第2実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0116】
燃料電池システム100においては、一軸性マウント4’が、筐体1に収納される高温部品に固定されるシャフト45と、シャフト45を一方向に変位可能な状態で支持する軸受(可動軸受け)46と、から構成され、軸受(可動軸受け)46は筐体1に固定される。これにより、シャフト45と軸受(可動軸受け)46とを予め組み込んだ状態で燃料電池システム100に設置することができる。従って、部品単位(個々の一軸性マウント4’)で管理可能であり、また部品製作段階で一軸性マウント4’の機能を事前検査することができる。よって、燃料電池システム100に設置した際に不具合が発見されるという事態をより確実に防止することができる。
【0117】
なお、本実施形態では、シャフト45、第1部品固定部材47、第2部品固定部材48、軸受46及び筐体固定部材49を用いて一軸性マウント4’を構成したが、必ずしもこれに限られない。高温部品に固定されるシャフトと、シャフトを一方向に変位可能な状態で支持する軸受とを有する構造により一軸性マウント4’を構成すれば、他の構成が異なっていても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0118】
(第3実施形態)
図14及び図15を参照して、第3実施形態による燃料電池システム100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0119】
図14は、第3実施形態による燃料電池システム100の筐体内部を示す図であり、筐体1の底面方向から見た図である。本実施形態においては、配管方向に変位可能なパンタグラフ形状の弾性体5’’が用いられている点が他の実施形態と異なる。
【0120】
図14に示すように、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)には、配管方向(図14のy方向)及び配管方向に直角に交わる方向(図14のx方向)にそれぞれ一対の一軸性マウント4が配置されている。また、配管方向(y方向)の一軸性マウント4の外側には、更に配管方向(y方向)に変位可能なパンタグラフ形状の弾性体5’’が配置されている。
【0121】
上記のような配置により、一軸性マウント4の各マウント軸線と弾性体5’’の変位方向線は、それぞれ点X及びYの一点において直角に交わる。従って、一軸性マウント4及び弾性体5’’の変位可能な方向と膨張変位の方向とが一致するため、一軸性マウント4及び弾性体5’’により、筐体1内部の高温部品の熱膨張を許容することができる。
【0122】
なお、パンタグラフ形状の弾性体5’’は、変位可能な方向が完全な一方向ではない(複数の方向に変位可能な)場合もあり得るが、x方向及びy方向に配置された一軸性マウント4により、弾性体5’’と高温部品との締結点(ブラケット51)が膨張変位方向以外の方向に移動することが規制される。即ち、一軸性マウント4による変位方向の規制により、弾性体5’’の変位方向が規制されるため、高温部品が熱膨張した際にも膨張中心が移動してしまうことを抑制できる。
【0123】
図15aは弾性体5’’の側面図、図15bは弾性体5’’の上面図、図15cは弾性体5’’の斜視図である。
【0124】
弾性体5’’は、例えば耐熱性の金属材料から成る板状の弾性部材(板ばね)を組合わせてパンタグラフ形状に構成され、図15a~15cに示すように、第1板56と第2板57とを有する。
【0125】
第1板56は、高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)に締結される部分である部品締結部53’’、弾性部55a及び作用点58を有する。部品締結部53’’は第1板56の中央部に形成され、孔531’’が設けられている。弾性体5’’は、部品締結部53’’において、孔531’’を通じてボルト等によりブラケット51(図14参照)を介して高温部品に締結される。作用点58は第1板56と第2板57とを連結する部分であって、第1板56及び第2板57の両端に形成される。弾性部55aは部品締結部53’’と作用点58との間に形成される弾性変形を発生する部分である。
【0126】
第2板57は、筐体1に締結される部分である筐体固定部54’’、弾性部55b及び作用点58を有する。筐体固定部54’’は第2板57の中央部に形成され、孔541’’が設けられている。筐体1には、弾性体5’’が配置される箇所において、底板から高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の底面付近まで上方に延設される延設フレーム12(図14参照)が形成されている。弾性体5’’は、筐体固定部54’’において、孔541’’を通じてボルト等により筐体1の延設フレーム12に締結される。作用点58は第1板56と第2板57とを連結する部分であって、第1板56及び第2板57の両端に形成される。弾性部55bは筐体固定部54’’と作用点58との間に形成される弾性変形を発生する部分である。
【0127】
高温部品が熱膨張すると、弾性体5’’の両端の作用点58は部品締結部53’’から遠ざかるようにx方向(図15bの矢印B,Cの方向)に変位し、部品締結部53’’は弾性部55aの弾性変形によりy方向(図15bの矢印Aの方向)に変位する。このようにパンタグラフ形状の弾性体5’’においては、作用点58がx方向に変位するため、板ばね5を用いた場合のような変位のずれ(δy)が発生しない。このため、弾性体5’’を配管方向(y方向)に変位可能に配置しても、連結配管21,22及び連結部材31,32,33がせん断方向(図14のx方向)に変位しないため、連結配管21,22及び連結部材31,32,33への応力が緩和される。
【0128】
また、複数の板ばねを組合わせて構成される弾性体5’’は、配管方向と直角に交わる方向(x方向)については引っ張り方向及び座屈方向の耐力(剛性)により、筐体1内部の高温部品がx方向に揺動することを規制する。更に、弾性体5’’は、高温部品の垂直方向に対しては断面二次モーメントが大きい。このため、弾性体5’’は、高温部品が筐体1に対し垂直方向に揺動することを規制する。このように、弾性体5’’により高温部品の配管方向と直角に交わる方向(x方向)への揺動及び垂直方向への揺動が規制される。従って、一軸性マウント4を構成する部材間の空隙によって引き起こされる騒音や、一軸性マウント4のアリ型・アリ溝間の浮き上がりや落下による騒音が軽減される。よって、車両の防音材を軽減することができる。
【0129】
上記した第3実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0130】
燃料電池システム100においては、高温部品(燃料電池スタック2、改質器3)を筐体1に固定する一軸性マウント4および弾性体5’’が、各マウント軸線と各変位方向線とが一点で交わるように配置される。また、弾性体5’’は、パンタグラフ形状であるとともに、変位可能な方向と配管方向(連結配管の長手方向)とが一致するように配置される。このように、高温部品を筐体1に固定する弾性体5’’がパンタグラフ形状であるため、高温部品が熱膨張した際に弾性体5’’の変位方向線からの変位のずれが発生しない。これにより、弾性体5’’を配管方向に変位可能に配置しても、連結配管21,22及び連結部材31,32,33がせん断方向に変位しないため、配管への応力が緩和される。従って、連結部材31,32,33に接続される外部部品(補機類)側に変位吸収機構を設ける必要がなく、省スペース化、低コスト化を実現できる。
【0131】
なお、本実施形態においては、弾性体5’’を変位方向線と配管方向(y方向)とが一致するように配置したが、必ずしもこれに限られず、パンタグラフ形状の弾性体5’’を変位方向線が配管方向に直角に交わる方向(x方向)になるように配置してもよい。パンタグラフ形状の弾性体5’’は、高温部品が熱膨張して変位した場合に変位方向線からの変位のずれが発生しない。そのため、弾性体5’’を変位方向線がx方向になるように配置しても、連結部材31,32,33はせん断方向に変位しないため、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0132】
また、一軸性マウント4及び弾性体5’’は、各マウント軸線と各変位方向線とがそれぞれ点X及びYの一点において直角に交わるように配置することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。一軸性マウント4及び弾性体5’’は、各マウント軸線と各変位方向線が一点(膨張中心)で交わるように配置されていれば、一軸性マウント4及び弾性体5’’の変位可能な方向と膨張変位の方向とが一致し、予期しない部位に膨張応力がかかることを防止できる。その結果、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の変形や破損を回避することができる。従って、例えば一軸性マウント4及び弾性体5’’を、各マウント軸線と各変位方向線とがそれぞれ点X及びYの一点において交わるように、放射状に配置してもよい。
【0133】
(第4実施形態)
図16を参照して、第4実施形態による燃料電池システム100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0134】
図16は、第4実施形態による燃料電池システム100の筐体内部を示す図であり、筐体1の底面方向から見た図である。本実施形態においては、膨張中心が連結配管近傍に形成される点が他の実施形態と異なる。
【0135】
図16に示すように、各高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の底面には、マウント軸線が配管方向(図16のy方向)と一致する一つの一軸性マウント4aと、マウント軸線が配管方向に直角に交わる方向(図16のx方向)に一致する一対の一軸性マウント4bとがそれぞれ配置されている。一対の一軸性マウント4bは、マウント軸線が一致するように対向して配置されている。また、各高温部品(燃料電池スタック2及び改質器3)の底面には、配管方向(y方向)に変位可能な一対の弾性体5’’が配置されている。一対の弾性体5’’は、変位方向線が一致するように対向して配置されている。
【0136】
一軸性マウント4aは、マウント軸線が配管方向(図16のy方向)と一致するように、且つ一対(2つ)の弾性体5’’の間の位置に配置されている。一対の一軸性マウント4bは、マウント軸線の方向が配管方向に直角に交わる方向(x方向)になるように、且つマウント軸線が連結配管21,22近傍を通るように、高温部品における連結配管21,22寄りの位置に配置されている。従って、一対の一軸性マウント4aのマウント軸線と、一対の一軸性マウント4bのマウント軸線とは、連結配管21,22近傍の一点X’,Y’において交わる。
【0137】
一対の弾性体5’’は、それぞれパンタグラフ形状であり、第1板56がブラケット51を介して高温部品に固定され、第2板57が筐体1の延設フレーム12に固定されている。一対の弾性体5’’は、変位方向線が配管方向(y方向)と一致するように、一軸性マウント4aを挟むように対向して配置されている。また、一対の弾性体5’’は、変位方向線が一軸性マウント4aのマウント軸線と一致するように配置される。従って、弾性体5’’の各変位方向線と、一軸性マウント4aのマウント軸線と、一軸性マウント4bのマウント軸線とは、連結配管21,22近傍の一点X’,Y’において交わる。点X’,Y’は、それぞれ燃料電池スタック2及び改質器3の膨張中心となる。
【0138】
一対(2つ)の弾性体5’’は、それぞれ膨張中心(点X’,Y’)からの距離が異なるが、パンタグラフ形状であるため、弾性体5’’が変位した際に変位方向線からの変位のずれ(第1実施形態における板ばね5のずれδy)が発生しない。従って、膨張中心が連結配管21,22近傍の点になるように一軸性マウント4及び弾性体5’’を配置しても、高温部品が熱膨張して弾性体5’’が変位した際に膨張中心がずれてしまうことがない。従って、予期しない部位に膨張応力がかかることを防止できる。
【0139】
また、膨張中心が連結配管21,22近傍の位置にあるため、燃料電池スタック2と改質器3との連結部位における相対的な膨張変位が抑制され、連結配管21,22に高温部品の膨張応力がかかることが抑制される。このため、高温部品を連結する連結配管21,22にフレキシブル部211,221を設ける必要がなく、連結配管21,22を短縮することができる。
【0140】
上記した第3実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0141】
燃料電池システム100においては、一軸性マウント4および弾性体5’’は、各マウント軸線と各変位方向線とが連結配管21,22近傍の一点で交わるように配置される。これにより、膨張中心が連結配管21,22近傍に形成されるため、燃料電池スタック2と改質器3との連結部位における相対的な膨張変位が抑制され、連結配管21,22に高温部品の膨張応力がかかることが抑制される。このため、高温部品を連結する連結配管21,22にフレキシブル部211,221を設ける必要がなく、連結配管21,22を短縮することができる。従って、燃料電池システム100をより省スペース化、低コスト化できる。
【0142】
なお、変位した際の変位方向線からのずれがなくなるため、本実施形態における弾性体5’’は、パンタグラフ形状であることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、弾性体5’’は、例えば板ばねであってもよい。
【0143】
また、本実施形態においては、一軸性マウント4及び弾性体5’’を、マウント軸線と変位方向線が連結配管21,22近傍の一点(膨張中心)で直角に交わるように配置したが、必ずしもこれに限られない。一軸性マウント4及び弾性体5’’は、膨張中心が連結配管21,22近傍に形成されるように配置されていればよく、例えば一軸性マウント4及び弾性体5’’を連結配管21,22近傍の膨張中心から放射状に配置してもよい。
【0144】
また、本実施形態においては、膨張中心が連結配管21,22近傍に形成されるように一軸性マウント4及び弾性体5’’を配置したが、必ずしもこれに限られず、膨張中心が連結配管21,22上に形成されるように一軸性マウント4及び弾性体5’’を配置してもよい。
【0145】
また、いずれの実施形態においても、筐体1は燃料電池スタック2及び改質器3を収容し、筐体1内で燃料電池スタック2と改質器3とを連結する構成としているが、必ずしもこれに限られない。例えば、筐体1は各高温部品を個々に収容する構成とし、筐体1の外部の連結配管によって高温部品どうしを連結させてもよい。
【0146】
また、いずれの実施形態においても、燃料電池スタック2の膨張中心及び改質器3の膨張中心がそれぞれ異なる点に形成されるように一軸性マウント4及び弾性体(板ばね5,5’,弾性体5’’)を配置しているが、必ずしもこれに限られない。即ち、燃料電池スタック2及び改質器3の膨張中心が同一の一点に形成されるように一軸性マウント4及び弾性体(板ばね5,5’,弾性体5’’)を配置する構成としてもよい。
【0147】
また、いずれの実施形態においても、一軸性マウント4の各マウント軸線及び弾性体(板ばね5,5’,弾性体5’’)の各変位方向線が一点(膨張中心)で交わる構成としたが、必ずしもこれに限られない。即ち、各マウント軸線及び各変位方向線が所望の位置近傍で交わる構成としてもよい。このような構成であっても、膨張変位の方向と一軸性マウント4及び弾性体(板ばね5,5’,弾性体5’’)の変位可能な方向とがほぼ一致し、筐体1内部の高温部品の熱膨張を許容することができる。従って、一軸性マウント4及び弾性体(板ばね5,5’,弾性体5’’)の配置によって高温部品の熱膨張による変位方向を制御できるため、予期しない部位に膨張応力がかかることを防止でき、システム構成部品の劣化を抑制し、部品の破損を回避することができる。
【0148】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0149】
また、上述した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 筐体
2 燃料電池スタック(燃料電池)(高温部品)
3 改質器(高温部品)
4 一軸性マウント
5、5’ 板ばね(弾性体)
5’’ 弾性体
6 断熱材
7 車両
21 アノードガス供給管(連結配管)
100 燃料電池システム
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
図15c
図16