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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】用紙搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20230911BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
B65H5/06 P
G03G21/16 195
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019184293
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021059419
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 大生
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171411(JP,A)
【文献】特開2008-164780(JP,A)
【文献】特開2019-064801(JP,A)
【文献】特開2019-112196(JP,A)
【文献】実開平05-061154(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 29/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置内の搬送路において用紙搬送を行う用紙搬送装置であって、
装置本体と、
前記装置本体に対して開閉可能に設けられ、開放時に前記搬送路を開放する開閉部材と、
前記装置本体に設けられる第1搬送ローラと、前記開閉部材に設けられる第2搬送ローラとを含む少なくとも1組の搬送ローラ対と、
前記開閉部材に設けられ、前記第2搬送ローラを前記第1搬送ローラ側へ付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力を調整する調整機構とを有し、
前記調整機構は、前記開閉部材の閉止動作に伴って、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2搬送ローラを前記第1搬送ローラ側とは反対側に位置する退避姿勢に保持することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙搬送装置において、
前記開閉部材には、前記第2搬送ローラを支持するローラ軸と、前記ローラ軸を支持する支持部材とが備えられ、
前記支持部材は、一端部に前記ローラ軸を支持するとともに他端部に前記付勢部材が接続されて、前記開閉部材に揺動自在に支持されており、
前記付勢部材は、前記支持部材を介して前記第2搬送ローラに付勢力を付与することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の用紙搬送装置において、
前記調整機構は、
前記開閉部材に回動可能に支持されて前記支持部材の他端部に当接可能な接続部材と、
前記接続部材に連動して回動変位し、前記開閉部材から前記装置本体側に突出して設けられた可動アームと、
前記可動アームに対向させて前記装置本体に設けられ、前記可動アームの先端部が摺動する案内部とを備え、
前記開閉部材の閉止動作に伴って、前記可動アームは先端部が前記案内部に沿って摺動して回動し、これに連動して前記接続部材が回動して前記支持部材を押圧し、前記第2搬送ローラを退避姿勢に保持することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の用紙搬送装置において、
前記可動アームは先端部にフック部を備え、前記案内部は下端部に前記フック部が係止する係止部を備えることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の用紙搬送装置において、
前記接続部材および前記可動アームは、前記第2搬送ローラのローラ軸に平行な接続軸を介して一体に設けられていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の用紙搬送装置において、
前記開閉部材には開閉操作用の引手が備えられ、前記接続軸は前記引手に接続して設けられ、前記引手の開閉操作に連動して前記接続部材および前記可動アームが回動変位することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つの請求項に記載の用紙搬送装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、画像形成過程において搬送路内で用紙を搬送する必要があり、用紙搬送装置をその内部に備えている。このような用紙搬送装置は、搬送路内で用紙の搬送ジャムが発生した場合に備えて、ジャム処理用のドアやカバーなどの開閉部材を備えたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、装置本体の側面に設けられた開閉部材と、用紙を搬送する搬送ローラ対とを備える用紙搬送装置が開示されている。この種の用紙搬送装置では、搬送ローラ対として装置本体側に設けられた駆動ローラと、開閉部材側に設けられた従動ローラとを有しており、開閉部材が閉じられた状態で駆動ローラおよび従動ローラ間にニップが形成されて用紙が搬送されるものとなっている。ジャム処理のために開閉部材を開くと駆動ローラと従動ローラとが離間し、容易にジャム処理を行うことができる。
【0004】
特許文献1に開示された用紙搬送装置では、開閉部材の内面に付勢部材が取り付けられており、この付勢部材によって従動ローラのローラ軸が支持されるとともに、従動ローラが駆動ローラ側に付勢されている。このため、従動ローラを駆動ローラに圧接させて、従動ローラと駆動ローラとの間のニップ力を確保することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-236033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような従来の用紙搬送装置は、付勢部材が従動ローラを駆動ローラ側に付勢しているので、開閉部材を完全に閉じたときにはニップ力として作用させることができる。しかしながら、開閉部材を閉じるときには、従動ローラが駆動ローラに当たり、付勢部材の付勢力が従動ローラと駆動ローラとの間で反発力となって、開閉部材を開く方向に力が作用するものとなる。
【0007】
そのため、開閉部材を十分な力で押さえて注意して閉じなければ完全に閉めることができず、開閉部材を閉じたつもりでも、完全には閉じられず、開閉部材と装置本体との間に隙間がある中途状態で固定されてしまうこともあった。開閉部材が完全に閉じられていないと、従動ローラと駆動ローラとのニップ力を確保することができなくなり、搬送力が不十分となって、用紙の搬送ジャムや斜め送りを誘発するという問題点があった。
【0008】
本発明は、前記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、付勢部材の付勢力によってニップ力を確保する一方、開閉部材を閉止するときにはその付勢力を調整し得て閉止動作の妨げにならないように構成した用紙搬送装置、およびそのような用紙搬送装置を備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である用紙搬送装置は、画像形成装置内の搬送路において用紙搬送を行う用紙搬送装置であって、装置本体と、前記装置本体に対して開閉可能に設けられ、開放時に前記搬送路を開放する開閉部材と、前記装置本体に設けられる第1搬送ローラと、前記開閉部材に設けられる第2搬送ローラとを含む少なくとも1組の搬送ローラ対と、前記開閉部材に設けられ、前記第2搬送ローラを前記第1搬送ローラ側へ付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力を調整する調整機構とを有し、前記調整機構は、前記開閉部材の閉止動作に伴って、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第2搬送ローラを前記第1搬送ローラ側とは反対側に位置する退避姿勢に保持することを特徴としている。
【0010】
前記の構成によれば、前記第2搬送ローラを前記第1搬送ローラ側へ付勢する付勢部材の付勢力が、開閉部材を閉じるときの妨げになるのを回避して、容易に開閉部材を完全に閉じることが可能となる。
【0011】
また、前記用紙搬送装置では、前記開閉部材には、前記第2搬送ローラを支持するローラ軸と、前記ローラ軸を支持する支持部材とが備えられ、前記支持部材は、一端部に前記ローラ軸を支持するとともに他端部に前記付勢部材が接続されて、前記開閉部材に揺動自在に支持されており、前記付勢部材は、前記支持部材を介して前記第2搬送ローラに付勢力を付与する構成とすることができる。
【0012】
また、前記用紙搬送装置では、前記調整機構は、前記開閉部材に回動可能に支持されて前記支持部材の他端部に当接可能な接続部材と、前記接続部材に連動して回動変位し、前記開閉部材から前記装置本体側に突出して設けられた可動アームと、前記可動アームに対向させて前記装置本体に設けられ、前記可動アームの先端部が摺動する案内部とを備え、前記開閉部材の閉止動作に伴って、前記可動アームは先端部が前記案内部に沿って摺動して回動し、これに連動して前記接続部材が回動して前記支持部材を押圧し、前記第2搬送ローラを退避姿勢に保持する構成とすることができる。
【0013】
また、前記用紙搬送装置では、前記可動アームは先端部にフック部を備え、前記案内部は下端部に前記フック部が係止する係止部を備える構成とすることができる。
【0014】
また、前記用紙搬送装置では、前記接続部材および前記可動アームは、前記第2搬送ローラのローラ軸に平行な接続軸を介して一体に設けられた構成とすることができる。
【0015】
また、前記用紙搬送装置では、前記開閉部材には開閉操作用の引手が備えられ、前記接続軸は前記引手に接続して設けられ、前記引手の開閉操作に連動して前記接続部材および前記可動アームが回動変位する構成とすることができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様である画像形成装置は、前記構成の用紙搬送装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る用紙搬送装置および画像形成装置は、付勢部材を備えて用紙搬送のためのニップ力を確保するとともに、開閉部材を閉じるときにはその付勢部材の付勢力が妨げにならないように構成し得て、開閉部材を確実に閉じることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る用紙搬送装置の開閉ドアを開ける様子を示す説明図である。
図3】前記用紙搬送装置における第2搬送ローラを含む開閉ドアの内部構造を模式的に示す斜視図である。
図4】前記用紙搬送装置において開閉ドアが開いているときの状態を示す内部構成図である。
図5】前記用紙搬送装置において開閉ドアを閉じるときの状態を示す内部構成図である。
図6】前記用紙搬送装置において開閉ドアを閉じたときの状態を示す内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用される画像形成装置10の一例を示す概略構成図である。なお、図1に示す画像形成装置10は、複数のプロセスユニットを有するカラー画像形成装置であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、単一のプロセスユニットを有するモノクロ画像形成装置に適用することもできる。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置10は、装置本体100の内部に画像形成部110、給紙カセット120を備えており、装置本体100の上部に排紙部130を備えている。画像形成装置10は、給紙カセット120から給紙される用紙に、画像形成部110にて画像形成を行い、画像形成された用紙を排紙部130に排出する。
【0021】
画像形成装置10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、または単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。このため、画像形成部110は、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応付けられた4つのプロセスユニット(画像形成ユニット)111~114を有している。
【0022】
各プロセスユニット111~114は、感光体ドラムの周囲に、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部および除電部を感光体ドラムの回転方向に沿って配置した構成である。各プロセスユニット111~114は、公知の電子写真法を用いて画像形成を行うものであるため、その詳細な説明は省略する。また、図1の各プロセスユニット111~114においても、図面の簡略化のため、感光体ドラムのみを記載し、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部および除電部は図示を省略している。
【0023】
各プロセスユニット111~114で形成された各トナー像は、中間転写ベルト115に順次転写して重ねられる。これにより、中間転写ベルト115上にカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト115上のカラーのトナー像は用紙上に転写され、定着装置116で用紙を加熱および加圧し、用紙上のカラーのトナー像を定着させる。
【0024】
画像形成装置10は、装置本体100の内部で用紙搬送を行うための搬送路P1~P3を有している。搬送路P1は、給紙カセット120からピックアップされた用紙を画像形成部110に向けて搬送する搬送路である。搬送路P2は、該搬送路内に画像形成部110を有しており、画像形成された用紙を排紙部130に搬送する搬送路である。搬送路P3は、用紙に両面印字を行う場合に用いられる反転搬送路であり、排紙ローラ131に後端を挟まれた用紙を反転搬送し、再び搬送路P2へ送り込む搬送路である。
【0025】
画像形成装置10は、搬送路P1~P3のそれぞれにおいて用紙搬送を行う用紙搬送装置を有している。また、それぞれの用紙搬送装置には、少なくとも1つの搬送ローラ対が設けられている。例えば、搬送路P1において用紙搬送を行う用紙搬送装置(以下、本装置という)は、搬送ローラ対140を有している。また、本装置は、装置本体100の側面に、搬送路P1におけるジャム処理用の開閉ドア(開閉部材)150を有している。搬送ジャム時には、開閉ドア150を開いて搬送路P1を開放することでジャム処理を行うことができるように構成されている。
【0026】
搬送路P1における搬送ローラ対140は、第1搬送ローラ140Aおよび第2搬送ローラ140Bによって構成されており、第1搬送ローラ140Aは装置本体100側に設けられ、第2搬送ローラ140Bは開閉ドア150側に設けられている。例えば、用紙が搬送ローラ対140に挟まれた状態で搬送ジャムが生じると、開閉ドア150を開くことで第2搬送ローラ140Bが第1搬送ローラ140Aから離間し、搬送ローラ対140のニップが解除されるため、ジャム処理が容易となる。
【0027】
本装置において、搬送ローラ対140は、第1搬送ローラ140Aが駆動ローラ、第2搬送ローラ140Bが従動ローラとされている。例えば、本装置においては、駆動ローラとしての第1搬送ローラ140Aは、給紙モータなどの図示しない駆動源により回転駆動される。従動ローラとしての第2搬送ローラ140Bは、開閉ドア150が閉じられて第1搬送ローラ140Aに圧接している状態(ニップが形成される状態)では、第1搬送ローラ140Aの回転により従動回転する。なお、本実施形態の説明において、画像形成装置10の装置本体100は、用紙搬送装置の装置本体でもある。
【0028】
本装置において、開閉ドア150を閉止するときには、力をかけて注意して押さえなくとも確実に開閉ドア150が装置本体100の側面に納まり、誰でも簡単に完全に閉じられるようにすることが求められる。このため、本装置では、開閉ドア150の閉止動作に伴って、第2搬送ローラ140Bを第1搬送ローラ140A側とは反対側に位置する退避姿勢に保持することを特徴としている。以下、この特徴点について、図2ないし図6を参照して説明する。
【0029】
図2は、本装置において開閉ドア150を開ける様子を示す説明図、図3は、第2搬送ローラ140Bを含む開閉ドア150の内部構造を模式的に示す斜視図、図4図6は、本装置において開閉ドア150を閉じるときの状態を順に示す内部構成図である。なお、図4は開閉ドア150が開いているときの状態を示し、図5は開閉ドア150を閉じているときの状態(閉じる途中の状態)を示し、図6は開閉ドア150が完全に閉じられたときの状態を示している。
【0030】
図2に示すように、開閉ドア150を開いて搬送路P1を開放するには、開閉ドア150に設けられた引手150Aを用いることができる。引手150Aは開閉ドア150の外面に設けられており、引手150Aに手をかけて手前に引くことにより、開閉ドア150を手前に回動させて開けることができる。開閉ドア150は、例えば下端部に設けられたヒンジピンを軸に装置本体100の側面に回動可能に取り付けられており、上端部に第2搬送ローラ140Bが配設されている。本装置では、2つの搬送ローラ対140(140A、140B)が開閉ドア150に並設されている。
【0031】
開閉ドア150には、これらの第2搬送ローラ140Bに加えて、それぞれ、第2搬送ローラ140Bを支持するローラ軸140C、そのローラ軸140Cを支持する支持部材170、および第2搬送ローラ140Bを第1搬送ローラ140A側へ付勢する付勢部材160が設けられている。
【0032】
図3に示すように、第2搬送ローラ140Bは、ローラ軸140Cを介して支持部材170に回転自在に設けられている。支持部材170は、一端部(例示の形態では上端部)に第2搬送ローラ140Bを回転可能に保持する凹部172を備えて、第2搬送ローラ140Bのローラ軸140Cを支持している。支持部材170の他端部(例示の形態では下端部)には、付勢部材160が接続されている。支持部材170は、一端部と他端部との略中間部に揺動軸171を備えて、開閉ドア150に揺動自在に支持されている。
【0033】
付勢部材160は、支持部材170を介して第2搬送ローラ140Bに付勢力を付与する。付勢部材160は、例えば圧縮ばねであり、第2搬送ローラ140Bが第1搬送ローラ140Aの方向に変位するように支持部材170を付勢する。
【0034】
具体的には、図4に示すように、付勢部材160は、開閉ドア150の内壁面と支持部材170の下端部との間に設けられており、支持部材170の下端部を矢符Q方向に付勢している。この場合、付勢部材160は、支持部材170の下端部を第1搬送ローラ140Aとは反対側の方向(図中矢符Q方向)に付勢することで、支持部材170の上端部の第2搬送ローラ140Bを第1搬送ローラ140A側へ近づける作用をなす。
【0035】
付勢部材160の付勢力によって、支持部材170の下端部は、第2搬送ローラ140Bの反対側に押圧されている。支持部材170には、揺動軸171を中心として、前傾する方向(図中矢符R方向)に回動する付勢力が作用する。これと同時に、支持部材170の上端部には、第1搬送ローラ140Aに近づく向き(矢符Q方向の反対方向)の付勢力が作用する。図4に示すように、付勢部材160が伸長した定常状態にあるとき、第2搬送ローラ140Bは、第1搬送ローラ140A側(矢符Q方向の反対方向)に付勢された基本姿勢の状態にある。
【0036】
なお、図4に示すように、開閉ドア150において第2搬送ローラ140Bが基本姿勢に位置する場合には、支持部材170の下端部と、開閉ドア150の内面(装置本体100に対向する面)との間にはクリアランスが存在する。また、支持部材170の下端部は、第1搬送ローラ140A側(装置本体100側)に変位する余地が残されている。このように、第2搬送ローラ140Bが基本姿勢に位置するとき、開閉ドア150の上端部には第2搬送ローラ140Bの一部が露出している。
【0037】
本装置には、このような付勢部材160の付勢力を調整する調整機構が設けられている。図3に示すように、調整機構として、開閉ドア150に回動可能に支持されて支持部材170の下端部に当接可能な接続部材180と、接続部材180に連動して回動変位し、開閉ドア150から装置本体100側に突出して設けられた可動アーム182とが備えられている。
【0038】
接続部材180は、2つの支持部材170の下端部にまたがるように配設され、支持部材170において付勢部材160が接続されている面とは反対側の面に対向して設けられている。例えば、接続部材180はローラ軸140Cに平行に配設された板状体であり、上端部が支持部材170に当接可能に配設され、下端部が接続軸184に固定されている。接続軸184は、ローラ軸140Cと平行に配設されて、開閉ドア150に回転可能に支持されている。接続部材180は、接続軸184が軸まわりに回転することで、接続軸184を回動中心として回動変位する。
【0039】
図3に示すように、接続部材180は、上端部に、支持部材170の下端部に対向して配設されて、支持部材170に当接可能な押圧部180Aを有する。接続部材180の下端部は、接続軸184に固定された固定部180Bとされている。固定部180Bは、接続軸184を貫通させて備えられている。
【0040】
可動アーム182は、接続部材180を差し挟んで接続軸184の両端部にそれぞれ設けられている。可動アーム182は、一方の端部である先端部にフック部182Aを備え、他方の端部が接続軸184に固定された固定端部182Bとされている。フック部182Aは、可動アーム182の先端部に鉤状に突設されている。接続部材180が、接続軸184に対して上下方向に延設される一方、可動アーム182は接続軸184から装置本体100方向に延設されて、先端部のフック部182Aが開閉ドア150から突出して設けられている。
【0041】
可動アーム182は、接続軸184が軸まわりに回転することで、固定端部182Bを回動中心として接続部材180とともに回動変位する。接続部材180および可動アーム182は、この接続軸184を介して一体に設けられている。
【0042】
図3に示すように、接続部材180には開閉ドア150の引手150Aが結合されている。接続軸184は、引手150Aにも接続して設けられて、引手150Aを操作することで、接続軸184を軸回りに回転させることができ、同時に、接続軸184に一体の接続部材180および可動アーム182を回動変位させることができる。
【0043】
本装置には、さらに、調整機構として、可動アーム182の先端部が摺動する案内部102が備えられている。図4に示すように、案内部102は、開閉ドア150と対向して設けられた装置本体100の内壁101に設けられ、開閉ドア150から遠ざかる方向に傾斜した下り勾配の傾斜面とされている。案内部102には、可動アーム182のフック部182Aが当接して摺動する。内壁101の下端部は、案内部102の傾斜面の下端部でもあり、回動変位した可動アーム182のフック部182Aが係止する係止部103とされている。係止部103は、装置本体100内に開放された凹部である。
【0044】
図6は、開閉ドア150が完全に閉じられて、装置本体100の側面に納まった状態を示している。このとき、フック部182Aは装置本体100の係止部103に係止しているので、可動アーム182は固定されている。付勢部材160は、支持部材170を介して第2搬送ローラ140Bに付勢力を付与している。第2搬送ローラ140Bは付勢部材160に付勢されて、装置本体100側の第1搬送ローラ140Aに圧接され、ニップを形成している。
【0045】
開閉ドア150を開けるとき、図2に示したように、引手150Aに手をかけて手前上方に引き上げる。これにより、引手150Aに結合された接続部材180が回動変位し、接続軸184介して可動アーム182のフック部182Aが係止部103から外れる。これにより、開閉ドア150を手前側に回動させて開けることができる。
【0046】
図4に示すように、開閉ドア150が開いた状態では、フック部182Aと係止部103との係止が外れて可動アーム182は可動状態にある。付勢部材160は定常状態に伸長し、支持部材170の下端部を矢符Q方向へ付勢する。支持部材170は、第2搬送ローラ140Bを基本姿勢に保持している。
【0047】
この状態から、開閉ドア150の閉止動作に入ると、図5に示すように、開閉ドア150が閉じられるにつれて、開閉ドア150から突出した可動アーム182のフック部182Aが装置本体100の案内部102に当接する。フック部182Aは、案内部102の傾斜面に沿って摺動する。これにより、可動アーム182は、固定端部182Bを中心に矢符S方向へ回動変位する。これに連動して、接続部材180は接続軸184を介して固定部180Bを中心に矢符S方向へ回動変位する。このため、接続部材180の押圧部180Aは支持部材170の下端部を押圧し、付勢部材160をその付勢力に抗して収縮させる。支持部材170は図4に示した前傾姿勢から図5に示す起立姿勢に変位し、この支持部材170に支持された第2搬送ローラ140Bは第1搬送ローラ140Aから離間する方向に変位する。これにより、図5に示すように、第2搬送ローラ140Bは退避姿勢に保持される。
【0048】
このように、本装置では、開閉ドア150の閉止動作に伴って、接続部材180を介して押圧された支持部材170が、付勢部材160の付勢力に抗して、第2搬送ローラ140Bを第1搬送ローラ140A側とは反対側に位置した退避姿勢に保持するものとなる。開閉ドア150を閉じるときには、第2搬送ローラ140Bが第1搬送ローラ140Aから離間し、またはニップ圧を低減した状態とすることができるとともに、退避姿勢で保持されている。このため、付勢部材160の付勢力が、開閉ドア150の閉止動作の妨げにはならない。すなわち、第1搬送ローラ140Aと第2搬送ローラ140Bとが当接して、付勢部材160の付勢力が開閉ドア150を開ける方向に作用するといった従来の問題点が解消される。
【0049】
したがって、開閉ドア150を閉じるときに抵抗力なく開閉ドア150を押さえることができ、確実に閉止することが可能となる。また、開閉ドア150の引手150Aを引いて開閉ドア150を閉じることによって、第2搬送ローラ140Bを退避位置に保持することができるので、さらに容易に、開閉ドア150を確実に閉止することが可能となる。その結果、画像形成装置10の使用時に第1搬送ローラ140Aと第2搬送ローラ140Bとのニップ力を確保することができ、搬送力が保持されて、用紙の搬送ジャムや斜め送りを防止することが可能となる。
【0050】
なお、前記実施形態では、図1に示す搬送路P1において用紙搬送を行う用紙搬送装置、すなわち、搬送ローラ対140と開閉ドア150とを備える用紙搬送装置に本発明を適用した場合を例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の搬送路において用紙搬送を行う用紙搬送装置に本発明を適用することも可能である。
【0051】
例えば、図1の例では、搬送路P3において用紙搬送を行う用紙搬送装置にも本発明を適用可能である。搬送路P3は、搬送ローラ対141~143を有しており、また、これらの各搬送ローラ対141~143に対応して開閉ドア151~153を有している。このため、各搬送ローラ対141~143において、装置本体100側に設けられるローラを駆動ローラとする場合に、本発明が適用可能である。
【0052】
また、付勢部材160として圧縮ばねを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、開閉ドア150に設けられて第2搬送ローラ140Bを第1搬送ローラ140A側へ付勢する部材であれば板ばね等のどのような部材であってもよい。第1搬送ローラ140Aと第2搬送ローラ140Bとの搬送ローラ対140にあっても、どちらが駆動・従動ローラとして構成されてもよい。
【0053】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 画像形成装置
100 装置本体
101 内壁
102 案内部(調整機構)
103 係止部
110 画像形成部
111~114 プロセスユニット
115 中間転写ベルト
120 給紙カセット
130 排紙部
140~143 搬送ローラ対
140A 第1搬送ローラ
140B 第2搬送ローラ
140C ローラ軸
150~153 開閉ドア(開閉部材)
150A 引手
160 付勢部材
170 支持部材
171 揺動軸
172 凹部
180 接続部材(調整機構)
180A 押圧部
180B 固定部
182 可動アーム(調整機構)
182A フック部
182B 固定端部
184 接続軸(調整機構)
P1~P3 搬送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6