(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】浄水装置および家庭用浄水器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230911BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230911BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230911BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/28 R
C02F1/42 A
(21)【出願番号】P 2020557586
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045388
(87)【国際公開番号】W WO2020110853
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018221710
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 宗郷
(72)【発明者】
【氏名】門馬 哲也
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-226255(JP,A)
【文献】特開2000-093752(JP,A)
【文献】特開2008-006393(JP,A)
【文献】特開平07-275663(JP,A)
【文献】中国実用新案第204369670(CN,U)
【文献】中国実用新案第204569585(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
C02F 1/28
C02F 1/42
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜と、不純物の吸着除去を行う吸着除去部材とを用いて水を浄化する浄水装置であって、
上記逆浸透膜から、当該逆浸透膜によって浄化された浄水の取出口に至る経路上に、上記吸着除去部材が配され、
上記逆浸透膜から上記吸着除去部材に至る通水経路上に、当該通水経路における水の往来を遮断する第1遮断機構が設けられ、
上記逆浸透膜から当該逆浸透膜の浄化処理によって生じる濃縮水の廃棄口に至る廃棄経路上に、電源オン状態よりも電源オフ状態の流量を少なくする流量制限弁を設け、
上記廃棄経路上に、当該廃棄経路の水の往来を遮断する第2遮断機構が設けられていることを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
逆浸透膜と、不純物の吸着除去を行う吸着除去部材とを用いて水を浄化する浄水装置であって、
上記逆浸透膜から、当該逆浸透膜によって浄化された浄水の取出口に至る経路上に、上記吸着除去部材が配され、
上記逆浸透膜から上記吸着除去部材に至る通水経路上に、当該通水経路における水の往来を遮断する第1遮断機構が設けられ、
上記逆浸透膜から上記第1遮断機構に至る経路上の水を排水するための排水経路が設けられ、
上記第1遮断機構により上記通水経路が遮断されていないとき、上記逆浸透膜から上記吸着除去部材および上記取出口を経て取出口開閉機構に浄水が至り、
上記第1遮断機構により上記通水経路が遮断されたとき、上記逆浸透膜から上記取出口に至る経路が遮断され、上記逆浸透膜から上記排水経路へ水が至り、上記取出口開閉機構へ水が至らずに排水されることを特徴とする浄水装置。
【請求項3】
上記第1遮断機構は、上記吸着除去部材よりも上記逆浸透膜に近い位置に設けられていることを特徴とする
請求項1または2に記載の浄水装置。
【請求項4】
上記第1遮断機構は、順方向にのみ通水可能な逆止弁であることを特徴とする
請求項1~3の何れか1項に記載の浄水装置。
【請求項5】
上記第1遮断機構および上記第2遮断機構は、浄化運転停止に連動して上記通水経路を遮断し、浄化運転再開時に連動して上記通水経路を開放することを特徴とする
請求項1に記載の浄水装置。
【請求項6】
上記吸着除去部材は、イオン交換樹脂を充填したフィルタであることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の浄水装置。
【請求項7】
上記逆浸透膜から上記第1遮断機構に至る経路上の水を排水するための排水経路が設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の浄水装置。
【請求項8】
上記第1遮断機構は、上記逆浸透膜から上記吸着除去部材に至る
上記通水経路に設けられた第1流路と、上記逆浸透膜から
上記吸着除去部材を経ずに上記排水経路に至る第2流路とを切替える流路切替機構であることを特徴とする請求項7に記載の浄水装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の浄水装置を備えることを特徴とする家庭用浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水装置および家庭用浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、逆浸透膜(RO膜)を用いた浄水装置が提案されている。
【0003】
RO膜によって、水分子と不純物とを完全に分離することは非常に難しいため、更なる浄化を求める場合には、例えば特許文献1には、RO膜を用いた複数の浄化機構を備え、浄化を繰り返すことで純度を高める技術が開示されている。
【0004】
浄水の純度を高める為の新たな手段として、近年、イオン交換樹脂を用いる方法が採用されている。具体的には、通水用のケースにイオン交換樹脂を充填したフィルタ(以下、DIフィルタ)をRO膜の後段に配し、RO膜を透過した浄水をDIフィルタに通水して残った不純物を更に除去することで高い浄化性能を得ている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国公開特許公報「特開2006-263542号公報」
【文献】日本国公開特許公報「特開2013-107031号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のDIフィルタを利用した浄水はRO膜を用いて浄化を繰り返す手法と比較して、その構造が簡便であるといった利点がある一方、DIフィルタの浄化機能には限界があり、一定量の不純物を除去するとその機能が失われてしまうという問題がある。このため、DIフィルタを用いた水の浄化では、その機能をより長く維持することが求められており、その性能の消費を抑えるための工夫が必要となっている。このことは、DIフィルタだけでなく、浄化機能に限界がある不純物の吸着除去を行う吸着除去部材一般に言える。
【0007】
本発明の一態様は、RO膜と不純物の吸着除去を行う吸着除去部材とを併用する場合、吸着除去部材の消耗を少なくし、機能の低下を抑制し得る浄水装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る浄水装置は、逆浸透膜と、不純物の吸着除去を行う吸着除去部材とを用いて水を浄化する浄水装置であって、上記逆浸透膜から、当該逆浸透膜によって浄化された浄水の取出口に至る経路上に、上記吸着除去部材が配され、上記逆浸透膜から上記吸着除去部材に至る通水経路上に、当該通水経路における水の往来を遮断する第1遮断機構が設けられ、上記逆浸透膜から当該逆浸透膜の浄化処理によって生じる濃縮水の廃棄口に至る廃棄経路上に、電源オン状態よりも電源オフ状態の流量を少なくする流量制限弁を設け、上記廃棄経路上に、当該廃棄経路の水の往来を遮断する第2遮断機構が設けられていることを特徴としている。
また、上記の課題を解決するために、本発明の別の一態様に係る浄水装置は、逆浸透膜と、不純物の吸着除去を行う吸着除去部材とを用いて水を浄化する浄水装置であって、上記逆浸透膜から、当該逆浸透膜によって浄化された浄水の取出口に至る経路上に、上記吸着除去部材が配され、上記逆浸透膜から上記吸着除去部材に至る通水経路上に、当該通水経路における水の往来を遮断する第1遮断機構が設けられ、上記逆浸透膜から上記第1遮断機構に至る経路上の水を排水するための排水経路が設けられ、上記第1遮断機構により上記通水経路が遮断されていないとき、上記逆浸透膜から上記吸着除去部材および上記取出口を経て取出口開閉機構に浄水が至り、上記第1遮断機構により上記通水経路が遮断されたとき、上記逆浸透膜から上記取出口に至る経路が遮断され、上記逆浸透膜から上記排水経路へ水が至り、上記取出口開閉機構へ水が至らずに排水されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、吸着除去部材の消耗を少なくし、機能の低下を抑制し得る浄水装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る浄水装置の概略的な構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る浄水装置の概略的な構成を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す浄水装置の変形例を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係る浄水装置の概略的な構成を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す浄水装置の変形例を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態4に係る浄水装置の概略的な構成を示す模式図である。
【
図7】
図6に示す浄水装置の変形例を示す模式図である。
【
図8】
図6に示す浄水装置の他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
(浄水装置の構成)
図1に示すように、浄水装置1は、逆浸透膜(RO膜)およびイオン交換樹脂を充填したフィルタ(DIフィルタ)を利用した生活用水の浄化装置である。この浄水装置1は、一端側の取込口50aより原水を取り込み、他端側の取出口50bより浄水を吐出する主経路(経路)50を備えている。浄水装置1が家庭用浄水器である場合、取込口50aは水道(原水)と接続され、取出口50bには蛇口等の取出口開閉機構が接続される。また、後述する第1排水経路(廃棄経路)51は、例えばシンク下の排水管に接続される。
【0013】
主経路50の最上流側から順に、圧力スイッチ10、電磁弁31、減圧弁11、PP(ポリプロピレン)フィルタ12、前側TDS13、水温計14、前側流量計15、AC(活性炭)フィルタ16、Pump17、RO膜(逆浸透膜)18、開閉機構(第1遮断機構)32、DIフィルタ(不純物吸着除去部材)19、後側流量計20、および後側TDS21が配置されている。
【0014】
圧力スイッチ10は、一定圧力以上でオンするスイッチであり、主経路50に原水が供給され、原水の圧(水道圧)が検出できる場合にオンする。減圧弁11は、主経路50を流れる水道水の水圧を一定にする。
【0015】
PP(ポリプロピレン)フィルタ12は、ポリプロピレン(PP)からなる比較的目の粗い不織布であり、原水に含まれる錆などの比較的大きな不純物を除去する。なお、材質は限定されず、ポリエチレン(PE)よりなるものであってもよい。比較的大きな不純物を到達前に除去しておくことで、後述する逆浸透膜(以下、RO膜)の劣化を抑制することができる。
【0016】
前側TDS13および後側TDS21は、水質を示す指標を測る水質センサであり、水の電気伝導率を測って水の不純物の濃度を検出する。前側TDS13は、取込口50aより取り込まれた原水の水質を測定し、後側TDS21は、取出口50bより取り出される浄水の水質を測定する。これらの測定結果は、図示しない制御部に送信され、制御部は、前側TDS13の測定値と後側TDS21の測定値から浄化率を算出する。
【0017】
水温計14は、前側TDS13および後側TDS21の較正に用いられる。前側TDS13および後側TDS21が測定する電気伝導率は、温度依存性を有しているためである。検出結果は制御部に出力される。
【0018】
ACフィルタ16は、原水に含まれる遊離塩素化合物などの遊離物を活性炭にて除去する。なお、RO膜18は、原水となる水道水に含まれる遊離塩素化合物(いわゆる塩素)で劣化する。このため、到達前にACフィルタ16で遊離塩素化合物を除いておくことで、RO膜18の劣化を抑制することができる。
【0019】
Pump17は、所定の圧力を掛けながら水を後段のRO膜18に送るためのものであり、後述するRO膜18によるクロスフロー方式を実現するために用いられる。
【0020】
前側流量計15および後側流量計20は、主経路50に流れる水の流量を測るセンサである。測定結果は、制御部に出力され、制御部は、前側流量計15の測定値である原水の取込量(使用量)と後側流量計20の測定値である浄水の生成量とから、回収率を算出する。
【0021】
前側流量計15の配置位置としては、
図1に示すように、前側流量計15をPPフィルタ12とACフィルタ16との間とすることが好ましい。これは、PPフィルタ12の後段(下流側)に配置することで、前側流量計15への汚れの付着を防止することができるためである。
【0022】
なお、上述した減圧弁11、PPフィルタ12、前側TDS13、水温計14、ACフィルタ16、後側流量計20、および後側TDS21は、必要に応じて備えられていればよい。
【0023】
RO膜18は、水分子と不純物とを分離する。ここでは、Pump17によって水圧を掛けながらRO膜18の表面に浄化対象水を流すことによって、当該RO膜18を透過した処理水と、透過しなかった排水とに分離する。所謂クロスフロー方式によりRO膜18が処理水(浄水)と排水(濃縮水)とに分離している。
【0024】
処理水は、主経路50を流れRO膜18の後段のDIフィルタ19に流され、排水は、第1排水経路51の廃棄口から排出される。廃棄口は、上述したように、例えばシンク下の排水管に接続される。
【0025】
第1排水経路51にはフラッシュ電磁弁22が設けられている。フラッシュ電磁弁22は、第1排水経路51に流れる排水の流量を制限する流量制限弁である。例えばフラッシュ電磁弁22は、閉じた状態(電源オフ状態(非通電時))では流量を制限し、開けた状態(電源オン状態(通電時))では可能な限り流路を解放して水を流すように機能する。
【0026】
(RO膜18による浄化)
RO膜18によれば、有害・無害を問わず水に溶解しているほぼ全ての不純物を取り除いて高純度の純水が得られる。RO膜18は、架橋による網の目状の高分子膜でできており、この網の目の大きさによって、基本的には水分子のみがこの高分子膜を透過することから、不純物との分離が行われ、先述の浄化性能を得ることができている。
【0027】
クロスフロー方式は、一定の水圧を掛けながらRO膜18の表面上に浄化対象の水を通液し、この際、水圧によりRO膜18を透過した水を浄水として取り出し、RO膜18を透過せず残った方の水を排水として廃棄する方式である。従って、クロスフロー方式は、常時、RO膜18の表面を通液させることで不純物と水分子との分離を行う。排水側の水は、RO膜18の表面上を流れていく過程で、水分子のみがRO膜18を透過して失われてゆく為、RO膜18の表面上を通水される前と比較して相対的に不純物が濃縮され、濃度が上がった状態となって廃棄される。このように、RO膜18を利用した浄水においては一定量の排水(濃縮水)を伴う。
【0028】
ここで、水圧を掛けながらRO膜18表面上を通水する為に、RO膜18の前段に配したPump17(電動ポンプ)と、RO膜18の後段となる第1排水経路51上に配した流量制限機構としてのフラッシュ電磁弁22が用いられる。Pump17が送液する水量に対してRO膜18の後段で流量を制限することで、Pump17からRO膜18表面を通じフラッシュ電磁弁22に至るまでの経路内がPump17の力を借りて増圧される。この圧力が高くなる程、RO膜18を透過する浄化水の水量も増加することから、実際には、これらのバランスを考慮して、目的の圧力および浄化水が得られるよう、Pump17の送液性能と流量制限量とを定める。
【0029】
そして、フラッシュ電磁弁22は、上述したように、閉じた状態では先述のように流量を制限し、開けた状態では可能な限り流路を解放して水を流すといった機能を備えている。これにより、RO膜18表面上に圧力を掛けて浄水を生成する機能に加え、必要に応じて大量の通水を行ってRO膜18の表面上を洗い流すという2つの機能を電気的に切り替える。
【0030】
また、先述のようにRO膜18は微細な構造を有する事から、この性能を維持することを目的として、浄化対象の水の前処理を行うことが一般となっている。例えば、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)等の繊維を主材料としたフィルタ(セディメントフィルタ等と呼ばれる:PPフィルタ12)による、堆積物や微粒子、粘着物質等の除去、活性炭を主材料としたフィルタ(ACフィルタ16)による、水道の殺菌処理等で用いられる塩素や有機物質等の吸着除去がこれにあたる。
【0031】
(DIフィルタ19による浄化)
DIフィルタ19は、通水用のケースにイオン交換樹脂を充填したフィルタである。イオン交換樹脂としては、水の浄化には不純物の成分となる陽イオンと陰イオンの両方を除去する機能を有したものを利用することが好ましい。すなわち、DIフィルタ19では、陽イオンを水素イオンに、陰イオンを水酸化物イオンにそれぞれ交換され、放出された水素イオンと水酸化物イオンが水中で中和して水に戻ることで、水の浄化がなされる。従って、DIフィルタ19は、RO膜18により浄化された水に含まれる不純物を吸着除去する不純物吸着除去部材とも言える。
【0032】
(開閉機構32の機能および効果)
開閉機構32は、RO膜18とDIフィルタ19とを繋ぐ経路(主経路50)の途上に設けられており、水に溶解している不純物の拡散を遮断する機構である。この場合、開閉機構32は、浄化運転時には主経路50を開放して通水可能な状態とし、浄化運転停止時には主経路50を遮断して当該開閉機構32を挟んだ水の行き来を遮断する。
【0033】
これにより、浄化運転を停止している期間に、DIフィルタ19が除去する不純物の総量が抑制され、不要な浄化性能の消費を防止することにより、DIフィルタ19の浄化機能をより長く利用することができる。
【0034】
通常、水の浄化運転を継続して実施している場合には、浄化された水と不純物が濃縮された排水とがRO膜18を挟んで分離されており、DIフィルタ19には不純物の少ないRO膜18による浄化水のみが供給されている。しかしながら、浄化運転を停止して浄水装置1内の通水が行われなくなると、RO膜18を透過する前段の領域に残された水中に含まれる不純物が、RO膜18を通過した浄水側にある水の中に、当該RO膜18を透過して時間と共に拡散するといった現象が生じる。そこで、上記のような経路の遮断機構(開閉機構32)を設けなかった場合には、このようにしてRO膜18を透過した不純物は次第にDIフィルタ19まで拡散し、当該DIフィルタ19内のイオン交換樹脂によって浄化される。この現象は、RO膜18を挟んだ水の中の不純物濃度が等しくなるまで続く為、最終的にはRO膜18の手前側の全ての領域に滞留している水の不純物がDIフィルタ19によって浄化されるまで継続されることとなる。このため、本来、RO膜18による濃縮水として廃棄されるべき不純物までDIフィルタ19で浄化することなり、DIフィルタ19の浄化性能が多大に消費されて無駄となってしまう。従って、上述したように、RO膜18とDIフィルタ19とを繋ぐ経路上に、水に溶解している不純物の拡散を遮断する為の開閉機構32を設けることで、上記のような物質拡散に伴う不純物がDIフィルタ19に至ることを防止することができる。
【0035】
なお、上記のようにRO膜18を挟んだ不純物の物質拡散の拡散範囲を極力狭くして浄化運転再開時にDIフィルタ19が浄化する不純物量を少なくするために、開閉機構32は出来る限りRO膜18に近いところに設置するのが望ましい。
【0036】
(効果)
上記構成によれば、浄化運転停止時に、RO膜18から染み出た不純物の拡散を開閉機構32によって抑制することができる。これにより、DIフィルタ19に到達する不純物が少なく、浄化運転停止時における不要な不純物の除去を行わなくて済むので、当該DIフィルタ19の劣化の抑制、すなわち長寿命化を図ることができる。すなわち、浄水装置1によれば、RO膜18で浄化した後、さらにDIフィルタ19で浄化を行う浄化機構において、そのDIフィルタ19の不要な浄化性能の消費を防止して、機能寿命を長く維持することができる。
【0037】
また、開閉機構32を出来る限りRO膜18に近いところ(直後の位置)に設置すれば、浄化運転停止時におけるRO膜18付近に漂う濃縮水の拡散をDIフィルタ19にできるだけ及ばないようにすることができる。これにより、よりDIフィルタ19の機能寿命を長くすることができる。
【0038】
なお、本実施形態において、RO膜18とDIフィルタ19との間を繋ぐ途上に設けた開閉機構32は、無電力で開閉するもの(例えば手動開閉機構(バルブ)、逆止弁)であってもよいし、電力で開閉するもの(例えば電磁弁等)であてもよい。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0040】
(浄水装置の構成)
図2に示すように、本実施形態にかかる浄水装置1Aは、前記実施形態1の浄水装置1と異なり、RO膜18とDIフィルタ19との間の開閉機構32の代わりに、順方向(ここでは、取出口50b側)にのみ通水可能な逆止弁33を用いている。浄水装置1Aは、開閉機構32の代わりに逆止弁33を用いる以外は、前記実施形態1の浄水装置1と同じ構成である。
【0041】
(効果)
開閉機構32として逆止弁33を用いた場合、浄化運転が行われている期間中は、その順方向の水圧により弁が開いて通水が行われる。しかしながら、運転停止中には水圧が失われて弁が閉じる為に、これを挟んでの不純物の拡散を遮断することができると共に、開閉機構の動作を浄化運転と自動的に連動できるという利便性が生まれる。
【0042】
しかも、逆止弁33は無電力で動作するため、停電時にも作動する。また、電磁弁のように高価でないため、安価に浄水装置1Aを作ることができる。
【0043】
〔変形例〕
図3に示すように、本変形例にかかる浄水装置1Bは、
図2に示す浄水装置1Aにおいて圧力スイッチ10と減圧弁11との間に配置された電磁弁(第2遮断機構)31をフラッシュ電磁弁22の下流側に配置した例を示している。なお、浄水装置1Bでは、主経路50の取出口50bに、当該取出口50bを開閉するための開閉機構の一種として蛇口が設けられている。この場合、蛇口を開ける動作によって、浄水装置1の電源をオンし、蛇口を閉める動作によって、浄水装置1の電源をオフするようにする。
【0044】
従って、蛇口を閉じることで浄化運転を停止させることが可能となる。これにより、浄化運転停止時において、電磁弁31をオフ状態にして第1排水経路51を閉じることができるので、フラッシュ電磁弁22から流れる濃縮水は廃棄されない。しかも、浄化運転停止時において、主経路50の取出口50bに設けられた蛇口が閉じているため、逆止弁33とオフ状態の電磁弁31とによってRO膜18付近の圧力が維持されることになる。これにより、浄化運転再開時には、タイムラグ無く浄水を取り出すことが可能となる。つまり、逆止弁33に加えて、取出口50bに取出口開閉機構の一種である蛇口を設け、この蛇口の開閉を浄化運転に連動させる。これにより、浄化運転再開時にタイムラグ無く浄水を取り出すことが可能となるという効果に加えて、浄化運転の停止と合わせて、直ちに浄水の吐出を止めることができるという効果も奏する。
【0045】
なお、電磁弁31は、RO膜18とフラッシュ電磁弁22の間に配置してもよい。この場合も、電磁弁31をフラッシュ電磁弁22の下流側に配置した場合と同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお、
図2に示す浄水装置1Aの逆止弁33を、浄化運転と連動した開閉機構として電磁弁を用いてよい。例えば、
図4に示す浄水装置1Cに示すように、RO膜18とDIフィルタ19との間に電磁弁34を設けてもよい。
【0047】
同様に、
図3に示す浄水装置1Bの逆止弁33を、
図5に示す浄水装置1Dに示すように、電磁弁34に置き換えてもよい。
【0048】
電磁弁34は、浄化運転時にはオン状態となり、主経路50を開いてRO膜18からDIフィルタ19に水を流すようにし、浄化運転停止時にはオフ状態となり、主経路50を閉じてRO膜18からDIフィルタ19に水が流れないようにする。つまり、電磁弁34は、浄化運転停止に連動して通水路を遮断し、浄化運転再開時に連動して通水路を開放する。
【0049】
なお、
図5に示す浄水装置1Dでは、浄化運転停止時に連動して電磁弁34がオフ状態となるので、
図3に示す浄水装置1Bのように取出口50bに蛇口を設けなくても、浄化運転停止時に圧力を維持することができる。
【0050】
つまり、逆止弁33の場合は経路内の水圧が失われるまで順方向の通水が継続してしまうことから、浄化運転の停止と共に浄水の吐出を時差なく止める為には、取水口に蛇口などを設け、その開栓機構と浄化運転とを連動させる必要があるためである。
【0051】
さらに、
図3に示す浄水装置1B、或いは、
図5に示す浄水装置1Dに示すように、浄化運転と連動する新たな開閉機構としての電磁弁31を、RO膜18の後段となる第1排水経路51上に設け、浄化運転中には第1排水経路51を開放し、浄化運転停止中には第1排水経路51を遮断する構成にしても良い。これにより、先述の効果に加えて、例えば水道水のように常時水圧の掛かった水を原水とする場合には、浄化運転停止時に当該第1排水経路51を通じて水が常時廃棄されることを防止すると共に、運転再開時の浄水の吐出を時間差なく即座に行うことができる。これは、浄化運転停止時に電磁弁31を閉じることで第1排水経路51内の水圧が維持されることによる。
【0052】
なお、前記実施形態1,2では、RO膜18とDIフィルタ19との間に設けた開閉機構として、逆止弁、電磁弁を用いた例について説明したが、下記の実施形態3では、流路を切替える流路切替機構を用いた例について説明する。
【0053】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0054】
(浄水装置の構成)
図6に示すように、本実施形態にかかる浄水装置1Eは、前記実施形態1の浄水装置1と異なり、RO膜18とDIフィルタ19との間の開閉機構32の代わりに流路切替機構35を用いている。浄水装置1Eは、開閉機構32の代わりに流路切替機構35を用いる以外は、前記実施形態1の浄水装置1と同じ構成である。
【0055】
流路切替機構35は、RO膜18からDIフィルタ19に至る第1流路(1)と、RO膜18から第2排水経路52に至る第2流路(2)とを切替えるようになっている。ここで、流路切替機構35は、浄化運転時にはRO膜18を透過した水がDIフィルタ19に流れるように第1流路(1)に切替え、浄化運転停止時にはRO膜18を透過した水がDIフィルタ19に流れ込まないように第2流路(2)に切替える。これにより、流路切替機構35は、逆止弁や電磁弁と同様の機能を奏する。
【0056】
従って、本実施形態にかかる浄水装置1Eは、前記実施形態1の浄水装置1、前記実施形態2の浄水装置1A、1Cと同じ効果を得ることができる。
【0057】
しかも、流路切替機構35は、浄化運転停止時にはRO膜18を透過した水がDIフィルタ19に流れ込まないように第2流路(2)に切替えることで、RO膜18を透過する濃縮水を第2排水経路52から廃棄することができる。これにより、浄化運転停止時に、RO膜18とDIフィルタ19との間で濃縮水が溜ることがないので、浄化運転再開時には、RO膜18からDIフィルタ19に流れる初期の水に含まれる不純物が少なく、当該DIフィルタ19への負担を軽減することができる。
【0058】
なお、浄化運転再開時に、流路切替機構35によって第2流路(2)から第1流路(1)に直ぐに切替えるのではなく、所定の時間経過後に第2流路(2)から第1流路(1)に切替えることが好ましい。この場合、浄化運転再開時に、DIフィルタ19に通水することなく、RO膜18近傍に滞留した水、とりわけ、RO膜18を透過した後段側の水(運転停止中に不純物濃度が上がった水)を第2流路(2)から廃棄する。その後、第1流路(1)に切替えることで、適正にRO膜18で浄化された水をDIファイルタ19に送ることができる。これにより、DIフィルタ19の更なる長寿命化を図ることができる。
【0059】
第2排水経路52から濃縮水をそのまま廃棄してもよいが、例えば
図7に示す浄水装置1Fのように、第2排水経路52を第1排水経路51のフラッシュ電磁弁22の後段に接続するようにしてもよい。この場合、廃棄すべき濃縮水を一本の経路にまとめて流すことができる。
【0060】
さらに、
図8に示す浄水装置1Gのように、第2排水経路を第1排水経路51のフラッシュ電磁弁22の後段に接続し、第1排水経路51と第2排水経路との合流部の後段に浄化運転と連動する新たな開閉機構としての電磁弁31を設ける。この電磁弁31によって、浄化運転中には第1排水経路51を開放し、浄化運転停止中には第1排水経路51を遮断する構成にしても良い。この場合、前記実施形態2の浄水装置1B、1Dと同様の効果を奏する。すなわち、例えば水道水のように常時水圧の掛かった水を原水とする場合には、浄化運転停止時に第1排水経路51を通じて水が常時廃棄されることを防止すると共に、運転再開時の浄水の吐出を時間差なく即座に行うことができる。
【0061】
なお、各実施形態において説明した浄水装置では、RO膜18の後段にDIフィルタ19を配置されている。しかしながら、DIフィルタ19に限定されるものではなく、AC(活性炭)フィルタであってもよいし、他の不純物を吸着除去できるフィルタであればどのようなものでもよい。今回の発明によって効果を特に奏するのは、浄化機能に限界がある吸着除去フィルタである。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G 浄水装置
10 圧力スイッチ
11 減圧弁
12 PPフィルタ
13 前側TDS
14 水温計
15 前側流量計
16 ACフィルタ
17 Pump
18 RO膜
19 DIフィルタ(吸着除去部材)
20 後側流量計
21 後側TDS
22 フラッシュ電磁弁
31、34 電磁弁
32 開閉機構
33 逆止弁
35 流路切替機構
50 主経路
50a 取込口
50b、51b 取出口
51 第1排水経路(廃棄経路)
52 第2排水経路