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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】走行装置及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20230912BHJP
   B61G 1/32 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B61B13/00 S
B61G1/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020015938
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123157
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】中浦 正貴
(72)【発明者】
【氏名】安住 真一
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043324(JP,A)
【文献】特開2017-119451(JP,A)
【文献】特開2011-240781(JP,A)
【文献】特開2009-113650(JP,A)
【文献】特開2019-142417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61G 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪を備える台車の下部に挿入され、前記台車に接続されて前記台車を牽引しながら走行する走行装置であって、
前記走行装置の底面に設けられる駆動車輪と、
前記走行装置の上面に設けられ、前記台車の底面を上方に加圧する加圧部と、
第1構成部材が前記走行装置に固定され、第2構成部材が前記走行装置に対して昇降可能に設けられ、かつ、前記第2構成部材が上方から下方に移動して前記台車に接続される接続部と、
を備え
前記第2構成部材は、下方に開口する開口部を有する係合部と、前記係合部の上方を覆うカバーとを含み、
前記走行装置が前記台車の下部に挿入された状態において、前記係合部及び前記カバーが前記走行装置の上面から上方へ移動して所定の第1位置に停止した後、前記カバーが前記第1位置に停止した状態で前記係合部が前記第1位置から下方の第2位置に移動し、前記第2位置において前記台車の被接続部が前記開口部に受容される、走行装置。
【請求項2】
前記加圧部は、前記接続部により前記走行装置及び前記台車が互いに接続された状態において、前記台車の底面を加圧する、
請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記加圧部は、前記走行装置の内部に固定される加圧シリンダと、前記加圧シリンダの上端に設けられるプレートと、前記プレートの上面に設けられる突出部とを備える、
請求項1又は請求項2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記突出部は、角錐状、円錐状、円柱状、角柱状、凹凸状、又は鋸状に形成されている、
請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
前記接続部は、前記走行装置の進行方向に直交する方向の両端部のそれぞれに設けられており、前記加圧部は、前記走行装置の進行方向に直交する方向の中央部に設けられている、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項6】
走行車輪を備える台車と、前記台車の下部に挿入され、前記台車に接続されて前記台車を牽引しながら走行する走行装置とを備える搬送システムであって、
前記走行装置は、
前記走行装置の底面に設けられる駆動車輪と、
前記走行装置の上面に設けられ、上方に突出する突出部を有し、前記台車の底面から上方に加圧する加圧部と、
第1構成部材が前記走行装置に固定され、第2構成部材が前記走行装置に対して昇降可能に設けられ、かつ、前記第2構成部材が上方から下方に移動して前記台車に接続される接続部と、
を備え、
前記台車は、
前記台車の底面に設けられ、前記突出部を受容する受容部を有し、前記加圧部から圧力が加えられる被加圧部と、
前記第2構成部材に接続される被接続部と、
を備える搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車を牽引可能な自立走行型の走行装置及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動部及び駆動車輪を有する走行装置と、走行装置に連結される台車とを備え、走行装置が台車を牽引しながら自立走行する自立走行型ロボット(搬送システム)が知られている(例えば特許文献1参照)。前記搬送システムでは、走行装置が台車の下に潜り込むように収容されて台車に接続され、走行装置が台車を牽引しながら移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-24415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の搬送システムでは、特に台車の重量が重い場合等に、台車を牽引する際に走行装置の車輪がスリップしてしまう問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、台車を牽引する際に車輪のスリップを防ぐことが可能な走行装置及び搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る走行装置は、走行車輪を備える台車の下部に挿入され、前記台車に接続されて前記台車を牽引しながら走行する走行装置であって、前記走行装置の底面に設けられる駆動車輪と、前記走行装置の上面に設けられ、前記台車の底面を上方に加圧する加圧部と、第1構成部材が前記走行装置に固定され、第2構成部材が前記走行装置に対して昇降可能に設けられ、かつ、前記第2構成部材が上方から下方に移動して前記台車に接続される接続部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係る搬送システムは、走行車輪を備える台車と、前記台車の下部に挿入され、前記台車に接続されて前記台車を牽引しながら走行する走行装置とを備える搬送システムであって、前記走行装置は、前記走行装置の底面に設けられる駆動車輪と、前記走行装置の上面に設けられ、上方に突出する突出部を有し、前記台車の底面から上方に加圧する加圧部と、第1構成部材が前記走行装置に固定され、第2構成部材が前記走行装置に対して昇降可能に設けられ、かつ、前記第2構成部材が上方から下方に移動して前記台車に接続される接続部と、を備え、前記台車は、前記台車の底面に設けられ、前記突出部を受容する受容部を有し、前記加圧部から圧力が加えられる被加圧部と、前記第2構成部材に接続される被接続部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台車を牽引する際に車輪のスリップを防ぐことが可能な走行装置及び搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る走行装置の全体構成を示す斜視図である。
図6A図6Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す斜視図である。
図6B図6Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す断面図である。
図7A図7Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す斜視図である。
図7B図7Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す断面図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す斜視図である。
図8B図8Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す断面図である。
図9A図9Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す斜視図である。
図9B図9Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の接続部の構成を示す断面図である。
図10A図10Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の接続状態を示す図である。
図10B図10Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の接続状態を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す側面図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る搬送システムの全体構成を示す側面図である。
図13A図13Aは、本発明の実施形態に係る走行装置の構成を示す斜視図である。
図13B図13Bは、本発明の実施形態に係る走行装置の構成を示す斜視図である。
図14A図14Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図14B図14Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図15A図15Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図15B図15Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図16A図16Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図16B図16Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係る走行装置の他の構成を示す斜視図である。
図18A図18Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図18B図18Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図19A図19Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図19B図19Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図20A図20Aは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
図20B図20Bは、本発明の実施形態に係る走行装置及び台車の加圧方法を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格を有さない。
【0011】
[搬送システム10]
図1は、本発明の実施形態に係る搬送システム10の全体構成を示す斜視図である。図2は、搬送システム10の全体構成を示す側面図である。
【0012】
搬送システム10は、走行装置100、台車200、走行装置100の駆動を制御する制御部(不図示)、各種制御プログラム及びデータを記憶する記憶部(不図示)などを備えている。搬送システム10は、例えば、無人走行可能な搬送車(Automatic Guided Vehicle)である。走行装置100は、走行車輪201を備える台車200の下に潜り込んで台車200に接続される。具体的には、走行装置100の上面に設けられ、昇降可能な2つの接続部110が、台車200の前方の下枠210に接続されることにより、走行装置100と台車200とが互いに接続される。下枠210は、本発明の被接続部の一例である。走行装置100及び台車200の接続部分の具体的な構成は後述する。
【0013】
走行装置100に台車200が接続されると、走行装置100は、駆動車輪101を駆動させることにより、台車200を牽引しながら目的の場所に移動することが可能となる。搬送システム10は、搬送する荷物の場所、数量、重量等を管理したり、運行管理を行ったりする機能を備えてもよい。前記機能は、搬送システム10を管理する管理装置(不図示)、又は、搬送システム10を遠隔操作可能な操作端末(不図示)が備えてもよい。
【0014】
また搬送システム10は、作業者が操作可能な操作表示部(不図示)を備えてもよい。前記操作表示部は、例えば、搬送システム10を操作する操作部と、各種設定画面等を表示する表示部とを含むタッチパネルで構成される。前記操作表示部は、作業者から各種操作を受け付ける。例えば、前記操作表示部は、自動走行を開始させる操作、走行速度及び走行方向(進行方向)を指定して搬送システム10を手動で走行させる操作、バッテリーの充電を指示する操作、走行ルートを設定(予約、編集など)する操作などを受け付ける。また前記操作表示部は、前記操作を受け付ける操作画面、搬送システム10の走行状況を示す走行表示画面、走行ルートなどを設定する設定画面などの各種画面を表示する。
【0015】
[走行装置100]
図3は、走行装置100の具体的な構成を示す斜視図である。走行装置100は、装置本体の底面に設けられた駆動車輪101、装置本体の底面に回転自在に設けられた従動車輪(付図示)、搬送システム10の周囲の障害物を検出する距離測定装置(不図示)、装置本体に電源を供給するバッテリー(不図示)などを備える。
【0016】
ここで、前記記憶部は、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などを含む不揮発性の記憶部である。例えば前記記憶部には、前記制御部に走行処理を実行させるためのプログラムなどの制御プログラムが記憶されている。
【0017】
また前記記憶部には、ピッキング情報が記憶される。前記ピッキング情報は、搬送すべき各荷物が、どの保管棚のどの位置に置かれており、それらの荷物のうちどの荷物を何個、何処へ搬送すべきかを表す情報である。また前記記憶部には、荷物に関する荷物情報が記憶される。前記荷物情報は、保管棚に保管されている各荷物の数量、各荷物の重量、体積等を表す情報である。
【0018】
また前記記憶部には、搬送システム10の走行に必要な情報が記憶される。例えば前記記憶部には、搬送システム10が走行する走行ルートを表すルート情報が記憶される。前記走行ルートは、例えば、搬送システム10が走行する床面に磁気テープが貼られたルート、又は、作業者により設定(予約)されたルートに対応する。
【0019】
前記制御プログラムは、USB、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、搬送システム10が備えるUSBドライブ、CDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて前記記憶部に記憶される。また、前記制御プログラムは、外部機器から通信網を介してダウンロードされて前記記憶部に記憶されてもよい。
【0020】
また前記制御部は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、前記制御部は、前記ROM又は記憶部に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより搬送システム10を制御する。
【0021】
具体的には、前記制御部は、作業者が前記操作表示部に対して行った操作に対応する操作情報を取得する。また前記制御部は、前記操作情報に基づいて、搬送システム10の走行モードを切り替える。具体的には、作業者が前記操作表示部において自動走行を開始させる操作を行った場合に、前記制御部は、搬送システム10の走行モードを自動走行モードに設定する。また作業者が前記操作表示部において自動走行を終了させる操作又は手動走行を開始させる操作を行った場合に、前記制御部は、搬送システム10の走行モードを手動走行モードに設定する。
【0022】
また前記制御部は、前記走行モードに基づいて、搬送システム10の走行動作を制御する。例えば、前記走行モードが前記自動走行モードに設定された場合に、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたルート情報に対応する走行ルートに従って搬送システム10を走行させる。具体的には、前記制御部は、前記走行ルートに応じた走行指示を走行装置100に送信する。
【0023】
また前記走行モードが前記手動走行モードに設定された場合に、前記制御部は、操作表示部又は操作端末(不図示)に対する作業者の操作に基づいて搬送システム10を走行させる。例えば、前記制御部は、前記操作端末に対する作業者の操作に応じた走行指示を走行装置100に送信する。
【0024】
また前記制御部は、搬送システム10の走行状況などの現在の状況を表す情報を前記操作表示部などに通知する。例えば、前記制御部は、搬送システム10の現在の走行プラン、走行位置(現在走行位置)を表す情報を前記操作表示部に表示する。
【0025】
また前記制御部は、前記距離測定装置において測定された距離の情報に基づいて、搬送システム10の進行方向を制御する。例えば、前記距離測定装置により、搬送システム10の進行方向に障害物が検出された場合に、前記制御部は、搬送システム10を、障害物を回避するように進行方向を変更する。
【0026】
前記距離測定装置は、探査光を水平方向に所定角度に渡って照射し、その反射光を検出することにより障害物(対象物)の有無及び障害物までの距離を測定する。前記探査光は、例えばレーザー光である。前記距離測定装置は、例えば、搬送システム10の進行方向側(前方)の端部と、進行方向とは反対側(後方)の端部とに2個設置される。また前記各距離測定装置は、走行装置100を正面から見て、幅方向の中心位置に配置される。なお、前記距離測定装置の数は限定されず、少なくとも1つ設置されていればよい。例えば、前記距離測定装置は、走行装置100の前方及び後方に設置され、それぞれ270度の範囲に探査光を照射して照射範囲の障害物を検出する。これにより、搬送システム10の周囲の所定の範囲に存在する障害物を検出することが可能となる。
【0027】
また、走行装置100は、走行装置100の角部及び側面部の少なくともいずれか一方に、走行装置100が台車200の下部に挿入される際に台車200に接触可能なガイドローラー(不図示)を備えてもよい。
【0028】
また、走行装置100は、装置内部に収容され、上面から上方に突出可能な接続部110を備えている。接続部110は、走行装置100の装置内部と装置外部との間を昇降可能に設けられている。また接続部110は、走行装置100の進行方向に対して左右に設けられている。接続部110は、本発明の接続部の一例である。
【0029】
図3は、接続部110が、走行装置100の装置内部に収容された最低位置(収容位置)の状態を示し、図4は、接続部110が、走行装置100の装置内部から外部に突出された途中の位置(中間位置)の状態を示し、図5は、接続部110が、走行装置100の装置内部から外部に突出され、上端で停止した位置(最上位置)の状態を示している。接続部110は、前記最上位置において、台車200に接続され、また台車200との接続状態が解除される。接続部110は、例えば作業者の操作に基づいて、前記収容位置(図3参照)と前記最上位置(図5参照)との間を移動する昇降動作を行う。前記最上位置は、本発明の第1位置の一例である。
【0030】
なお、走行装置100は、台車200に対して双方向から挿入可能となっている。すなわち、図2において、走行装置100の左側から台車200を移動させて台車200の下部に走行装置100を収容してもよいし、走行装置100の右側から台車200を移動させて台車200の下部に走行装置100を収容してもよい。走行装置100が台車200の下部に挿入された場合に接続部110が上方に移動して台車200の下枠210に係合することにより、走行装置100と台車200とが互いに接続される。
【0031】
[台車200]
台車200は、荷物などを載せる棚(ワゴン車)であり、台車200の四隅の底面に回転自在に取り付けられた走行車輪201を備えている。台車200は、4個の走行車輪201により自立可能であり、作業者が手動で移動させることが可能に構成されている。
【0032】
図1に示すように、台車200は、荷物などを出し入れする開口部と、荷物などを載置する収納部と、収納部を囲う枠とにより構成されている。前記枠は、走行装置100の進行方向Aに対して前方と左右とに設けられている。前記枠の一部である下枠210は、走行装置100の接続部110が係合する被接続部として機能する。なお、本発明の被接続部は、下枠210に限定されず、台車200を構成する他の構成部材であってもよい。
【0033】
走行車輪201は、全てが旋回可能な車輪(旋回キャスター)で構成されてもよいし、2つの走行車輪201が旋回キャスターで構成され、かつ2つの走行車輪201が旋回不可能な車輪(固定キャスター)で構成されてもよい。
【0034】
例えば、作業者は、台車200を手で押しながら移動させて、床面で停止中の走行装置100を台車200の下部に収容する。そして、走行装置100の上面に設けられた接続部110が走行装置100から上方に移動して台車200の下枠210に係合することにより、走行装置100と台車200とが接続される。その後、走行装置100を駆動させることにより、台車200は、走行装置100に牽引されて目的の場所に移動する。
【0035】
[接続方法]
走行装置100及び台車200の接続部分の具体的な構成について説明する。図6Aは接続部110の構成を示す斜視図であり、図6Bは接続部110の断面図である。なお、図6A及び図6Bは、図3のB方向から見た収容状態(収容位置)の構成を示している。
【0036】
接続部110は、カバー110aと、カバー110aに収容される係合部110bと、係合部110bに接続固定される支柱110cと、支柱110cを支持する支持部110dと、駆動部とを備える。カバー110aは、係合部110bの上方を覆うように形成されている。係合部110bは、下方に開口部110t(スリット)を備え、下枠210の上方から下方にスライドさせて開口部110t内に下枠210を受容するようにして係合可能な構成を有する。カバー110a、係合部110b、及び支柱110cは、本発明の第2構成部材の一例である。なお、接続部110の筐体、外枠などの構成部材(本発明の第1構成部材の一例)は、走行装置100の筐体にネジ等により固定されている。すなわち、走行装置100は、第1構成部材が走行装置100に固定され、第2構成部材が走行装置100に対して昇降可能に設けられ、かつ、前記第2構成部材が上方から下方に移動して台車200に接続される接続部110を備えている。
【0037】
図7A及び図7Bは、図4のB方向から見た中間位置の構成を示している。例えば、台車200を走行装置100に接続する際に作業者が所定の操作を行うと、前記制御部の命令に応じて前記駆動部が駆動することにより、接続部110のカバー110a、係合部110b、及び支柱110cが、走行装置100の内部から上方に突出するように移動する(図7A及び図7B参照)。なお、係合部110bは、カバー110aに覆われた状態で情報に移動する。
【0038】
図8A及び図8Bは、図5のB方向から見た最上位置の構成を示している。接続部110のカバー110a、係合部110b、及び支柱110cは、前記制御部の命令に応じて、最上位置まで移動して停止する。
【0039】
その後、例えば、作業者は台車200を把持して下枠210(図1参照)が接続部110の支柱110cに近接するまで移動させる。その後、作業者が所定の操作(接続操作)を行うと、前記制御部の命令に応じて、支柱110c及び係合部110bが下方に移動し、係合部110bが台車200の下枠210に係合する係合位置で停止する(図9A及び図9B参照)。前記係合位置は、本発明の第2位置の一例である。
【0040】
より具体的には、図9A及び図9Bに示すように、カバー110aが最上位置に停止した状態で、支柱110c及び係合部110bがカバー110aから下方に突出しながら移動する。また、係合部110bは、開口部110tに台車200の下枠210を受容しながら下方に移動する。
【0041】
図10A及び図10Bには、係合部110b及び下枠210が係合する様子を示している。図10Aに示すように、台車200及び接続部110が近接する状態(図10A参照)において作業者が所定の操作(接続操作)を行うと、図10Bに示すように、係合部110bは下方に移動して、台車200の下枠210が開口部110tに受容される。例えば、作業者は、走行装置100の接続部110を最上位置の状態にした後、台車200を押して下枠210が支柱110cに接触するまで移動させる(図10A参照)。その後、作業者は前記接続操作を行って係合部110bを下枠210に係合させる(図10B参照)。
【0042】
このように、係合部110bは、台車200が走行装置100の下部に挿入された状態において、上方から下方に移動しながら台車200の下枠210(被接続部)を開口部110tに受容させる。また、係合部110b及びカバー110aが走行装置100の上面から上方へ移動して最上位置(本発明の第1位置の一例)に停止した後、カバー110aが前記最上位置に停止した状態で係合部110bが前記最上位置から下方の係合位置(本発明の第2位置の一例)に移動し、前記係合位置において下枠210が開口部110tに受容される。
【0043】
これにより、係合部110bが台車200に係合された状態となり、走行装置100及び台車200が互いに接続される。係合部110bが係合位置に停止した状態では、係合部110bの上方への移動が規制される。これにより、走行装置100及び台車200を確実に接続固定することができる。
【0044】
走行装置100及び台車200の接続状態を解除する場合には、作業者は所定の操作(解除操作)を行う。作業者が前記解除操作を行うと、支柱110c及び係合部110bが上方に移動して前記最上位置においてカバー110a内に収容され、接続部110は前記最上位置で停止する(図8A及び図8B参照)。その後、作業者が台車200を走行装置100から離れた位置に移動させて、さらに前記解除操作を行うと、接続部110のカバー110a、係合部110b、及び支柱110cが下方に移動して、走行装置100の装置内部に収容される(図3図6A及び図6B参照)。
【0045】
ここで、走行装置100は、さらに、台車200の底面を下方から上方に向けて加圧する加圧部120を備えている。図13A及び図13Bには、加圧部120の具体例を示している。なお、図13A及び図13Bには、加圧部120に接触して加圧される被加圧部220を示している。被加圧部220は、台車200の底面に設けられる。図13A及び図13Bでは、便宜上、台車200の図示を省略している。加圧部120は、本発明の加圧部の一例である。
【0046】
走行装置100の加圧部120は、プレート120x(図14等参照)と、プレート120xの上面に設けられた突出部120p(凸部)とを備えている。また、台車200の被加圧部220は、プレート220x(図14等参照)と、プレート220xの下面に設けられた受容部220p(凹部)とを備えている。被加圧部220は、本発明の被加圧部の一例である。また受容部220pは、本発明の受容部の一例である。
【0047】
加圧部120は、接続部110により走行装置100及び台車200が互いに接続された状態において、台車200の底面を加圧する。具体的な加圧方法は後述する。
【0048】
突出部120pは、図13A及び図13Bに示すように、角錐状、円錐状、円柱状、角柱状などに形成されてもよいし、その他の形状に形成されてもよい。受容部220pは、突出部120pを受容可能な形状に形成される。突出部120pは、本発明の突出部の一例である。
【0049】
[加圧方法]
走行装置100及び台車200の加圧部分の具体的な構成について説明する。図14Aは、走行装置100の加圧部120と、台車200の被加圧部220との非接触状態(非加圧状態)を示し、図14Bは、走行装置100の加圧部120と、台車200の被加圧部220との接触状態(加圧状態)を示している。ここで、加圧部120は、走行装置100の装置内部に収容され、装置内部に固定される加圧シリンダ120gを備えている。加圧シリンダ120gは、制御部の命令に応じてピストン120yを進退させてピストン120yの上部に取り付けられたプレート120xを昇降させる。プレート120xは、非接触状態において走行装置100の上面に配置され、接触状態において走行装置100の上面から上方に移動する。
【0050】
例えば、走行装置100及び台車200が前記接続方法により互いに接続された状態(図11参照)で作業者が所定の操作(加圧操作)を行うと、前記制御部の命令に応じて加圧シリンダ120gが駆動することにより、プレート120xが上方に移動して突出部120pが、被加圧部220のプレート220xの受容部220pに受容され、プレート120x及びプレート220xが面接触する。ここで、プレート220xと台車200の底面との間には弾性部材(バネ220s)が設けられている。加圧シリンダ120gは、所定の圧力に到達するまでプレート120xを上方に押し上げる(図12参照)。これにより、プレート120xとプレート220xとの間には圧力が生じる。また、走行装置100には前記圧力に応じた力(反力)が下方(床面方向)に働き、走行装置100の駆動車輪101と床面との間のトラクションが増加する。これにより、台車200を牽引する際に走行装置100の駆動車輪101のスリップを防ぐことが可能となる。
【0051】
また、搬送システム10では、図12に示すように、接続部110が台車200を上方から下方側へ押さえ込むようにして接続されるため、加圧部120が台車200の底面に上方へ押し上げる力を加えた場合に、台車200の上方への浮き上がりが防止されるとともに、走行装置100の駆動車輪101の前記トラクションをより増加させることができる。
【0052】
走行装置100及び台車200の接続状態を解除する場合には、作業者が所定の操作(加圧解除操作)を行うことにより、加圧シリンダ120gが駆動してプレート120xが下方に移動し、プレート120x及びプレート220xが非接触状態となる(図14A参照)。その後、接続部110の接続状態を解除する操作を行うことにより(図10A参照)、走行装置100及び台車200が分離される。
【0053】
他の実施形態として、図15A及び図15Bに示すように、台車200にバネ220sが設けられておらず、走行装置100にバネ120sが設けられてもよい。例えば、バネ120sは、ピストン120yとプレート120xとの間に設けられる。
【0054】
また他の実施形態として、図16A及び図16Bに示すように、台車200及び走行装置100のいずれにもバネ220s、バネ120sが設けられていなくてもよい。
【0055】
また他の実施形態として、図17図18A及び図18Bに示すように、プレート120xの突出部120p及びプレート220xの受容部220pは、プレート120xの上面に配置された凹凸状、鋸状などに形成されてもよい。また、プレート120xの上面が粗面加工されてもよい。
【0056】
なお、図18A及び図18Bには、台車200にバネ220sが設けられる構成を示している。また、図19A及び図19Bには、走行装置100にバネ120sが設けられる構成を示している。また、図20A及び図20Bには、走行装置100及び台車200のいずれにもバネ120s、220sが設けられていない構成を示している。
【0057】
また他の実施形態として、加圧部120が台車200に設置され、被加圧部220が走行装置100に設置されてもよい。また、他の実施形態として、加圧部120が走行装置100及び台車200のそれぞれに設置されてもよい。
【0058】
また他の実施形態として、前記制御部は、駆動車輪101のスリップ状態に応じてプレート120xとプレート220xとの間に生じる圧力を変化させてもよい。例えば、前記制御部は、駆動車輪101のスリップ発生率又はスリップ回転数が高い程、前記圧力が大きくなるように加圧シリンダ120gの駆動力を制御する。
【0059】
ここで、接続部110は、走行装置100の進行方向Aに直交する方向の両端部のそれぞれに設けられており(図1参照)、加圧部120は、走行装置100の進行方向Aに直交する方向の中央部に設けられている(図13参照)。また、加圧部120は、進行方向Aの前方側にのみ設けられてもよいし、前方側及び後方側の両方に設けられてもよい。また、接続部110及び加圧部120は、近接する位置に設けられていることが好ましい。これにより、台車200が加圧部120の加圧により上方へ押し上げられることを防止でき、かつ接続部110により当該加圧の反力を床面方向に確実に伝達することができる。
【0060】
また、走行装置100及び台車200の接続方法及び加圧方法は上述の方法に限定されない。他の実施形態として、走行装置100が制御部からの指示に従って、走行装置100が自律的に移動し、台車200の下部に進入して、接続部110が台車200に接続され、加圧部120が台車200に加圧してもよい。
【0061】
なお、駆動車輪101のスリップを考慮する必要がない場合には、搬送システム10は、加圧部120及び被加圧部220を備えていなくてもよい。
【0062】
本発明に係る走行装置及び搬送システムは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態を自由に組み合わせること、或いは各実施形態を適宜、変形又は一部を省略することによって構成されることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 :搬送システム
100 :走行装置
101 :駆動車輪
110 :接続部
110a :カバー
110b :係合部
110c :支柱
110d :支持部
110t :開口部
120 :加圧部
120g :加圧シリンダ
120p :突出部
120s :バネ
120x :プレート
120y :ピストン
200 :台車
201 :走行車輪
210 :下枠
220 :被加圧部
220p :受容部
220s :バネ
220x :プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B