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特許7348755偏光板及び偏光板の製造方法並びにその偏光板を用いた画像表示装置
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  • 特許-偏光板及び偏光板の製造方法並びにその偏光板を用いた画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】偏光板及び偏光板の製造方法並びにその偏光板を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230913BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019110759
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020204641
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-315537(JP,A)
【文献】特開2008-102246(JP,A)
【文献】特開平03-064703(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108957616(CN,A)
【文献】特開2014-102353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素を吸着配向させてなるポリビニルアルコール系樹脂偏光フィルム、及び
前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に形成された保護フィルムを有する偏光板であって、
前記偏光フィルムが、尿素誘導体及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有し、
前記尿素誘導体は、メチル尿素、エチル尿素、プロピル尿素、ブチル尿素、イソブチル尿素、N-オクタデシル尿素、2-ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシ尿素、アセチル尿素、アリル尿素、2-プロピニル尿素、シクロヘキシル尿素、フェニル尿素、3-ヒドロキシフェニル尿素、(4-メトキシフェニル)尿素、ベンジル尿素、ベンゾイル尿素、o-トリル尿素、p-トリル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジエチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,3-tert-ブチル尿素、1,3-ジシクロヘキシル尿素、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)尿素、1-アセチル-3-メチル尿素、テトラメチル尿素、1,1,3,3-テトラエチル尿素、1,1,3,3-テトラブチル尿素、及び1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素からなる群より選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物であることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記尿素系化合物が、メチル尿素、エチル尿素、プロピル尿素、ブチル尿素、イソブチル尿素、N-オクタデシル尿素、2-ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシ尿素、アセチル尿素、アリル尿素、2-プロピニル尿素、シクロヘキシル尿素、フェニル尿素、3-ヒドロキシフェニル尿素、(4-メトキシフェニル)尿素、ベンジル尿素、ベンゾイル尿素、o-トリル尿素、及びp-トリル尿素からなる群より選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光板が、層間充填構成を有する画像表示装置に用いられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
保護フィルムを有する偏光板を製造する方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、膨潤工程、染色工程、架橋工程、洗浄工程の順に供して偏光フィルムを製造する工程を有し、
前記偏光フィルムを製造する工程は、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有する溶液と接触処理する工程を含み、
前記架橋工程は、前記接触処理する工程とともに行われることを特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項5】
保護フィルムを有する偏光板を製造する方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、膨潤工程、染色工程、架橋工程、洗浄工程の順に供して偏光フィルムを製造する工程を有し、
前記偏光フィルムを製造する工程は、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有する溶液と接触処理する工程を含み、
前記洗浄工程は、前記接触処理する工程とともに行われること特徴とする偏光板の製造方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、膨潤工程、染色工程、架橋工程、洗浄工程の順に供して偏光フィルムを製造する工程と、
前記偏光フィルムを製造する工程後に、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有する溶液と偏光フィルムとを接触処理する工程と、
前記接触処理する工程後の偏光フィルムに接着剤を用いて保護フィルムを貼合する工程とを有する偏光板の製造方法。
【請求項7】
請求項1~の何れかに記載の偏光板が画像表示セルの視認側表面に粘着剤層を介して貼り合わされている画像表示パネル、及び
前記画像表示パネルの視認側偏光板面に粘着剤層を介して貼り合わされた透明部材、を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
前記透明部材が、ガラス板または透明樹脂板であることを特徴とする請求項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記透明部材が、タッチパネルであることを特徴とする請求項に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法に関する。さらに、本発明は当該偏光板の一方の面が画像表示セルと貼り合せられ、他方の面がタッチパネルや前面板等の透明部材と貼り合せられた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶テレビだけでなく、パソコン、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途などで広く用いられている。通常、液晶表示装置は、液晶セルの両側に粘着剤で偏光板を貼合した液晶パネル部材を有し、バックライト部材からの光を液晶パネル部材で制御することにより表示が行われている。
また、有機EL表示装置も近年、液晶表示装置と同様に、テレビ、携帯電話等のモバイル、カーナビ等の車載用途で広く用いられて来ている。
有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射され鏡面のように視認されることを抑止するために、画像表示パネルの視認側表面に円偏光板(偏光素子とλ/4板を含む積層体)が配置される場合がある。
【0003】
偏光板は上記のように、液晶表示装置や有機EL表示装置の部材として、車に搭載される機会が増えて来ている。車載用の画像表示装置に用いられる偏光板は、それ以外のテレビや携帯電話等のモバイル用途に比較して、高温環境下に曝されることが多く、より高温での特性変化が小さいこと(高温耐久性)が求められる。
一方、外表面から衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、画像表示パネルの偏光板よりもさらに視認側に、透明樹脂板やガラス板等の前面板(「ウインドウ層」等とも称される。)を設ける構成が増えて来ている。また、タッチパネルを備える表示装置では、画像表示パネルの偏光板よりもさらに視認側にタッチパネルが設けられ、タッチパネルよりもさらに視認側に前面透明板を備える構成が広く採用されている。
【0004】
このような構成において、画像表示パネルと前面透明板やタッチパネル等の透明部材との間に空気層が存在すると、空気層界面での光の反射による外光の映り込みが生じ、画面の視認性が低下する傾向がある。そのため、画像表示パネルの視認側表面に配置される偏光板と前面透明部材との間の空間を、これらの材料と屈折率が近い材料で充填する構成(以下「層間充填構成」と称する場合がある)を採用する動きが広まっている。層間充填材としては、界面での反射による視認性の低下を抑止すると共に、各部材間を接着固定する目的で、粘着剤やUV硬化型接着剤が用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
上記の層間充填構成は、屋外で使用されることが多い携帯電話等のモバイル用途での採用が広がっている。また、近年の視認性に対する要求の高まりから、カーナビゲーション装置等の車載用途においても、画像表示パネル表面に前面透明板を配置し、パネルと前面透明板との間を粘着剤層等で層間充填された構成の採用が検討されている。
しかし、このような構成を採用する場合、加熱耐久試験(95℃で200時間等)の結果、偏光板面内中央部に、透過率の著しい低下が見られること、その一方、偏光板単独では95℃で1000時間でも著しい透過率の低下は見られないことが報告されており、これらの結果から、高温環境における偏光板の透過率の著しい低下は、偏光板の一方の面が画像表示セルと貼り合せられ、他方の面がタッチパネルや前面透明板等の透明部材と貼り合せられている層間充填構成を採用する画像表示装置が高温環境に暴露された場合に特有の問題であることも報告されている(特許文献2)。
【0006】
そして、上記特許文献2では、層間充填構成で透過率が著しく低下した偏光板は、ラマ
ン分光測定で1100cm-1付近(=C-C=結合に由来)および1500cm-1付近(-C=C-結合に由来)にピークを有していることから、ポリエン構造(-C=C)-を形成していると考え、偏光素子を構成するポリビニルアルコールが脱水によりポリエン化されて生じたものであると推定している(特許文献2、段落[0012])。
また、本発明者らは、層間充填構成で高温耐久試験を行ったサンプルのラマン分光測定を行い、透過率の低下に応じて、1100cm-1付近および1500cm-1付近のピーク面積の和が増加していることを観察している。
【0007】
特許文献2では、その問題の解決策として、偏光板の単位面積当たりの水分量を規定量以下とし、なおかつ偏光素子に隣接する透明保護フィルムの飽和吸水量を規定量以下とすることにより透過率の低下を抑制する方法を提案している。
しかし、本発明者等の追試の結果、上記解決策の低下抑制効果は必ずしも十分なものではなく、さらに、パネル作製時に偏光板の水分を減少させるために、偏光板や偏光板を貼合したパネルの加熱が必要となり、パネルの生産性を低下させる問題が新たに生じることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-174417号公報
【文献】特開2014-102353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況に鑑みて、本発明の課題、すなわち本発明が解決しようとする課題は、層間充填構成の画像表示装置に用いられた場合においても、高温環境下での透過率の低下が小さく、耐久性に優れる偏光板およびその製造方法を提供することである。更に本発明の別の目的は、高温環境下での表示特性が改善された耐久性を備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は鋭意検討の結果、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光フィルムに、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有させることで、その偏光フィルムを用いた偏光板の一方の面が画像表示セルと貼り合せられ、他方の面がタッチパネルや前面透明板等の透明部材と貼り合せられている層間充填構成において、高温環境下での透過率の低下を抑止できることを見出した。
【0011】
更に、ポリビニルアルコール系樹脂層にヨウ素を吸着配向させてなる偏光フィルムに尿素系化合物を含有させる方法として、尿素系化合物を含有する処理液で偏光フィルムを処理することが有効であることを見出した。
【0012】
また、層間充填構成を採用した装置において、本発明の尿素系化合物の中では、尿素誘導体またはチオ尿素誘導体が優れた高温環境下での透過率低下抑制効果だけでなく、高温環境下での偏光度低下抑制(クロス抜け抑止)効果においても優れた性能を示すことも見出した。
本発明者らは、このような新しく見出した事実に基づき、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、下記の手段により解決することができる。
(1)ヨウ素を吸着配向させてなるポリビニルアルコール系樹脂偏光フィルム、及び
前記偏光フィルムの少なくとも一方の面に形成された保護フィルムを有する偏光板であ
って、
前記偏光フィルムが、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有することを特徴とする偏光板、
(2)前記尿素系化合物が、尿素誘導体及び/又はチオ尿素誘導体であることを特徴とする(1)に記載の偏光板、
【0014】
(3)前記偏光板が、層間充填構成を有する画像表示装置に用いられるものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の偏光板、
(4)保護フィルムを有する偏光板を製造する方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有する溶液と接触処理する工程
を含むことを特徴とする偏光板の製造方法、
(5)前記尿素系化合物が、尿素誘導体及び/又はチオ尿素誘導体であることを特徴とする(4)に記載の偏光板の製造方法、
【0015】
(6)前記接触処理する工程が、染色処理する工程の後に行われることを特徴とする(4)又は(5)に記載の偏光板の製造方法、
(7)前記接触処理する工程が、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、前記尿素系化合物を含有する溶液中に浸漬する工程を含むことを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の偏光板の製造方法、
(8)前記接触処理する工程が、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに前記尿素系化合物を含有する溶液を塗布する工程を含むことを特徴とする(4)~(6)のいずれかに記載の偏光板の製造方法、
【0016】
(9)(1)~(3)の何れかに記載の偏光板が画像表示セルの視認側表面に粘着剤層を介して貼り合わされている画像表示パネル、及び
前記画像表示パネルの視認側偏光板面に粘着剤層を介して貼り合わされた透明部材、
を有することを特徴とする画像表示装置、
(10)前記透明部材が、ガラス板または透明樹脂板であることを特徴とする(9)に記載の画像表示装置、
(11)前記透明部材が、タッチパネルであることを特徴とする(9)に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、層間充填構成の画像表示装置に用いられた場合においても、高温環境下での透過率の低下が小さく、高温耐久性に優れる偏光板およびその製造方法を提供することが可能となり、さらに、本発明の偏光板を用いることで高温環境下での透過率低下が抑制された表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明に係る偏光フィルムの製造装置を模式的に示す断面図である。図1における矢印は、フィルムの搬送方向を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の偏光板に使用する偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着配向させたものであって、さらに、該偏光フィルムは尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも一種の尿素系化合物を含有するものである。
【0020】
[偏光フィルムの製造方法]
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000~10000、好ましくは約1500~5000程度である。
【0021】
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
【0022】
本発明では、偏光フィルム製造の原料素材として、厚みが65μm以下(例えば60μm以下)、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を用いる。これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光フィルムを得ることができる。原反フィルムの幅は特に制限されず、例えば400~6000mm程度であることができる。原反フィルムは、例えば長尺の未延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意される。
【0023】
また本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、これを支持する基材フィルムに積層されたものであってもよく、すなわち、当該ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、基材フィルムとその上に積層されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとの積層フィルムとして用意されてもよい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによって製造することができる。
【0024】
基材フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体例としては、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであり、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
【0025】
偏光フィルムは、上記の長尺の原反フィルムを原反ロールから巻出しつつ、偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送させて、処理液が収容された処理槽(以下、「処理浴」ともいう)に浸漬させた後に引き出す所定の処理工程を実施した後に乾燥工程を実施することにより長尺の偏光フィルムとして連続的に製造することができる。なお、処理工程は、フィルムに処理液を接触させて処理する方法であればフィルムを処理浴に浸漬させる方法に限定されることはなく、噴霧、流下、滴下等により処理液をフィルム表面に付着させてフィルムを処理する方法であってもよい。処理工程が、フィルムを処理浴に浸漬させる方法によってなされる場合、一つの処理工程を行う処理浴は一つに限定されることはなく、二つ以上の処理浴にフィルムを順次浸漬させて一つの処理工程を完成させてもよい。
【0026】
上記処理液としては、膨潤液、染色液、架橋液、洗浄液等が例示される。そして、上記処理工程としては、原反フィルムに膨潤液を接触させて膨潤処理を行う膨潤工程、膨潤処理後のフィルムに染色液を接触させて染色処理を行う染色工程、染色処理後のフィルムに架橋液を接触させて架橋処理を行う架橋工程、架橋処理後のフィルムに洗浄液を接触させて洗浄処理を行う洗浄工程などが例示される。また、これら一連の処理工程の間に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理を施す。必要に応じて他の処理工程を付加してもよい。
【0027】
本発明の偏光板で使用する偏光フィルムは、尿素系化合物を含有する。偏光フィルムに尿素系化合物を含有させる方法としては、前述の各処理工程と同様に、噴霧、流下、滴下等も採用可能であるが、尿素系化合物を含有した処理浴にフィルムを浸漬させ、処理する方法が好ましい。
尿素系化合物による処理浴は、従来の製造方法で用いられる処理浴とは別に設けても、従来の処理浴に尿素系化合物を添加することで、尿素系化合物処理機能を付加しても構わない。生産性の点では、尿素系化合物処理機能を従来の処理浴に付加する方法がより好ましい。
偏光フィルムに尿素系化合物を含有させる時機は、ヨウ素で染色した後に尿素系化合物を含有した処理液で処理することが好ましい。染色後に尿素系化合物を含有させる方が、色相変化が小さく、層間充填構成において、高温環境下での透過率低下をより抑止する傾向がある。
【0028】
以下、図1を参照しながら、本発明に係る偏光フィルムの製造方法の一例を詳細に説明する。図1は、本発明に係る偏光フィルムの製造方法及びそれに用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される偏光フィルム製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム10を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送させることにより、フィルム搬送経路上に設けられる膨潤浴13、染色浴15、第1架橋浴17a、第2架橋浴17b、及び洗浄浴19を順次通過させ、乾燥部21を通過させるように構成されている。得られた偏光フィルム23は、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光フィルム23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。図1における矢印は、フィルムの搬送方向を示している。
【0029】
上記の製造方法において、偏光フィルムに尿素系化合物を含有させる方法として、尿素系化合物を含有した処理浴にフィルムを浸漬する方法を採用する場合は、第1架橋浴、第2架橋浴または洗浄浴の何れかに尿素系化合物を含有させる方法が好ましく、第2架橋浴または洗浄浴の何れかに尿素系化合物を含有させる方法がより好ましく、第2架橋浴に含有させる方法が更に好ましい。
【0030】
以下、各工程について説明する。
(膨潤工程)
図1を参照して、膨潤工程は、原反フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、原反フィルム10を膨潤浴13に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。図1の例において、原反フィルム10を巻き出してから膨潤浴13に浸漬させるまでの間、原反フィルム10は、ガイドロール60,61及びニップロール50によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。膨潤処理においては、ガイドロール30~32及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。
【0031】
膨潤浴13の膨潤液としては、純水の他、ホウ酸(特開平10-153709号公報)、塩化物(特開平06-281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01~10重量%の範囲で添加した水溶液を使用することも可能である。
【0032】
図1に示される例において、膨潤浴13から引き出されたフィルムは、ガイドロール32、ニップロール51、ガイドロール33を順に通過して染色浴15へ導入される。
【0033】
(染色工程)
染色工程は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図1を参照して、染色工程は、ニップロール51、ガイドロール33~36及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
【0034】
本発明では二色性色素としてヨウ素を用いる。染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003~0.3/約0.1~10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴15とみなすことができる。
【0035】
図1に示される例において、染色浴15から引き出されたフィルムは、ガイドロール36、ニップロール52、及びガイドロール37を順に通過して架橋浴17へ導入される。
【0036】
(架橋工程)
架橋工程は、架橋による耐水化や色相調整などの目的で行う処理である。図1に示す例においては、架橋工程を行う架橋浴として二つの架橋浴が配置され、耐水化を目的として行う第1架橋工程を第1架橋浴17aで行い、色相調整を目的として行う第2架橋工程を第2架橋浴17bで行う。図1を参照して、第1架橋工程は、ニップロール52,ガイドロール37~40及びニップロール53aによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第1架橋浴17aに染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。第2架橋工程は、ニップロール53a,ガイドロール41~44及びニップロール53bによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第2架橋浴17bに第1架橋工程後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。以下、架橋浴という場合には第1架橋浴17a及び第2架橋浴17bいずれをも含み、架橋液という場合には第1架橋液及び第2架橋液いずれをも含む。
【0037】
架橋液としては、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1~20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0038】
架橋処理は複数回行ってもよく、通常2~5回行われる。この場合、使用する各架橋浴の組成及び温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
【0039】
図1に示される例において、第2架橋浴17bから引き出されたフィルムは、ガイドロール44、ニップロール53bを順に通過して洗浄浴19へ導入される。
【0040】
(洗浄工程)
図1に示される例においては、架橋工程後の洗浄工程を含む。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄工程は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬することによって行われる。
洗浄工程は状況に応じて省略されることもある。
【0041】
(延伸工程)
原反フィルム10は、上記一連の処理工程の間に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸工程は、原反フィルム10から偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
【0042】
原反フィルム10を基準とする、偏光フィルム23の最終的な累積延伸倍率は通常、4.5~7倍程度であり、好ましくは5~6.5倍である。延伸工程はいずれの処理工程で行ってもよく、2以上の処理工程で延伸処理を行う場合においても延伸処理はいずれの処理工程で行ってもよい。
【0043】
(乾燥工程)
洗浄工程の後に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことができる。フィルムの乾燥方法は特に制限されない。例えば、熱風乾燥機を備える乾燥炉を用いることができる。乾燥温度は、例えば3 0 ~100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30~600秒程度である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理は、遠赤外線ヒーターを用いて行うこともできる。以上のようにして得られる偏光フィルム23の厚みは、例えば約5~30μm程度である。
【0044】
[尿素系化合物]
本発明の偏光板に使用する偏光フィルムは、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも1種の尿素系化合物を含有する。
偏光フィルムに尿素系化合物を含有させる方法としては、尿素系化合物を含有させた上記処理浴で処理する方法が好ましいが、第1架橋浴、第2架橋浴または洗浄浴の何れかに尿素系化合物を含有させる方法が好ましく、第2架橋浴または洗浄浴の何れかに尿素系化合物を含有させる方法がより好ましく、第2架橋浴に含有させる方法が更に好ましい。
また、尿素系化合物には水溶性のものと難水溶性のものがあるが、水溶性のものがより好ましい。
【0045】
処理浴中の尿素系化合物の濃度は、0.0001~0.1重量%であることが好ましく、0.0005~0.05重量%であることがより好ましく、0.001~0.03重量%であることが更に好ましい。
【0046】
(尿素または尿素誘導体)
本発明において、尿素誘導体とは尿素の一部が置換基により置換された分子構造を有する化合物であることを意味する。尿素誘導体としては、尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物であることが好ましい。
この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子および酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
【0047】
尿素誘導体の具体例として、1置換尿素として、メチル尿素、エチル尿素、プロピル尿素、ブチル尿素、イソブチル尿素、N-オクタデシル尿素、2-ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシ尿素、アセチル尿素、アリル尿素、2-プロピニル尿素、シクロヘキシル尿素、フェニル尿素、3-ヒドロキシフェニル尿素、(4-メトキシフェニル)尿素、ベンジル尿素、ベンゾイル尿素、o-トリル尿素、p-トリル尿素が挙げられる。
2置換尿素として、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジエチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,3-tert-ブチル尿素、1,3-ジシクロヘキシル尿素、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)尿素、1-アセチル-3-メチル尿素が挙げられる。
4置換尿素として、テトラメチル尿素、1,1,3,3-テトラエチル尿素、1,1,3,3-テトラブチル尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素が挙げられる。
【0048】
(チオ尿素またはチオ尿素誘導体)
本発明において、チオ尿素誘導体とはチオ尿素の一部が置換基により置換された分子構造を有する化合物であることを意味する。チオ尿素誘導体としては、チオ尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物であることが好ましい。
この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子および酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
【0049】
チオ尿素誘導体の具体例として、1置換チオ尿素として、N-メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、プロピルチオ尿素、イソプロピルチオ尿素、1-ブチルチオ尿素、シクロヘキシルチオ尿素、N-アセチルチオ尿素、N-アリルチオ尿素、(2-メトキシエチル)チオ尿素、N-フェニルチオ尿素、(4-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(2-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(1-ナフチル)チオ尿素、(2-ピリジル)チオ尿素、o-トリルチオ尿素、p-トリルチオ尿素が挙げられる。
2置換チオ尿素として、1,1-ジメチルチオ尿素、1,3-ジメチルチオ尿素、1,1-ジエチルチオ尿素、1,3-ジエチルチオ尿素、1,3-ジブチルチオ尿素、1,3-ジイソプロピルチオ尿素、1,3-ジシクロヘキシルチオ尿素、N,N-ジフェニルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1-ベンジル-3-フェニルチオ尿素、1-メチル-3-フェニルチオ尿素、N-アリル-N’-(2-ヒドロキシエチル)チオ尿素が挙げられる。
3置換尿素として、トリメチルチオ尿素が挙げられ、4置換尿素として、テトラメチルチオ尿素、1,1,3,3-テトラエチルチオ尿素が挙げられる。
【0050】
上記化合物の中では、層間充填構成の画像表示装置に用いた時に、高温環境下での透過率の低下がなく、且つ偏光度の低下が少ない点で、尿素誘導体またはチオ尿素誘導体が好ましく、尿素誘導体がより好ましい。尿素誘導体の中でも、1置換尿素または2置換尿素であることが好ましく、1置換体であることがより好ましい。2置換尿素には1,1-置換尿素と1,3-置換尿素があるが、1,3-置換尿素がより好ましい。
なお、本発明では、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体を尿素系化合物という。
【0051】
[接着剤]
偏光フィルムに保護フィルムを貼合するための接着剤は、任意の適切な接着剤を用いることができる。具体的には、接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、活性エネルギー線硬化型などを用いることができるが、水系接着剤であることが好ましい。
偏光フィルムに尿素系化合物を含有させ、更に接着剤にも尿素系化合物を含有させることも好ましい態様の一つである。この場合、偏光フィルムに含有させる尿素系化合物と接着剤に含有させる尿素系化合物は同じであっても異なっていても構わない。
上記接着剤の塗布時の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。例えば、硬化後または加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定する。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm~7μmであり、より好ましくは0.01μm~5μmであり、さらに好ましくは0.01μm~2μmであり、最も好ましくは0.01μm~1μmである。
【0052】
(水系接着剤)
また、上記水系接着剤としては、任意の適切な水系接着剤が採用され得る。中でも、PVA系樹脂を含む水系接着剤(PVA系接着剤)が好ましく用いられる。水系接着剤に含まれるPVA系樹脂の平均重合度は、接着性の点から、好ましくは100~5500程度、さらに好ましくは1000~4500である。平均鹸化度は、接着性の点から、好ましくは85モル%~100モル%程度であり、さらに好ましくは90モル%~100モル%である。
【0053】
上記水系接着剤に含まれるPVA系樹脂としては、アセトアセチル基を含有するものが好ましく、その理由は、PVA系樹脂層と保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れているからである。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えば、PVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1モル%~20モル%程度である。
上記水系接着剤の樹脂濃度は、好ましくは0.1重量%~15重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%~10重量%である。
【0054】
(架橋剤、溶剤)
本発明で好ましく用いることが出来る水溶性PVA系接着剤は上記のPVA系樹脂の他に必要に応じて架橋剤を含有させることもできる。架橋剤としては公知の架橋剤を用いることができる。例えば、水溶性エポキシ化合物、ジアルデヒド、イソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
PVA樹脂がアセトアセチル基含有PVA系樹脂である場合は、架橋剤としてグリオキサール、グリオキシル酸塩、メチロールメラミンのうちの何れかであることが好ましく、グリオキサール、グリオキシル酸塩の何れかであることが好ましく、グリオキサールであることが特に好ましい。
【0056】
また、本発明の水溶性PVA系接着剤は有機溶剤を含有していても構わない。その場合、水と混和性を有する点でアルコール類が好ましく、アルコール類の中でもメタノールまたはエタノールであることがより好ましい。
【0057】
(活性エネルギー線硬化型接着剤)
上記活性エネルギー線硬化型接着剤としては、活性エネルギー線の照射によって硬化し
得る接着剤であれば、任意の適切な接着剤が用いられ得る。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化型の具体例としては、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、これらの組み合わせ(例えば、ラジカル硬化型とカチオン硬化型のハイブリッド)が挙げられる。
【0058】
上記活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、硬化成分として(メタ)アクリレート基や(メタ)アクリルアミド基などのラジカル重合性基を有する化合物(例えば、モノマーおよび/またはオリゴマー)を含有する接着剤が挙げられる。
上記活性エネルギー線硬化型接着剤およびその硬化方法の具体例は、例えば、特開2012-144690号公報に記載されている。
【0059】
[透明保護フィルム]
本発明において用いられる透明保護フィルム(以降、単に「保護フィルム」とも称す。)は、偏光フィルムの少なくとも片面側に接着剤層を介して貼り合わされることが好ましい。この透明保護フィルムは偏光フィルムの片面又は両面に貼り合わされるが、両面に貼り合わされていることがより好ましい。本発明では偏光フィルムの少なくとも片面側に保護フィルムを有するものを偏光板ともいう。
保護フィルムは、同時に他の光学的機能を有していてもよく、更に他の層が積層された積層構造に形成されていてもよい。
【0060】
この時の保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなる。適切な膜厚としては、5~100μmであり、好ましくは10~80μm、より好ましくは15~70μmである。
保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネンなどシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂系フィルムなどのフィルムを用いることができる。
偏光フィルムの両面に保護フィルムを有する構成の場合、PVA接着剤などの水系接着剤を用いて貼合する場合は透湿度の点で少なくとも片側の保護フィルムはセルロースアシレート系フィルムまたは(メタ)アクリル系重合体フィルムの何れかであることが好ましく、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0061】
少なくとも一方の保護フィルムとしては、視野角補償などの目的で位相差機能を備えていても良く、その場合、フィルム自身が位相差機能を有していても良く、位相差層を別に有していても良く、両者の組み合わせであっても良い。
なお、位相差機能を備えるフィルムは接着剤を介して、直接偏光フィルムに貼合される構成について説明したが、偏光フィルムに貼合された別の保護フィルムを介して粘着剤または接着剤を介して貼合された構成であっても構わない。
【0062】
[画像表示装置の構成]
本発明の偏光板、すなわち、尿素系化合物を含有する偏光フィルムの少なくとも片面側に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされた偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種画像表示装置に用いられる。特に、本発明の偏光板は、画像表示装置の視認側に前面板やタッチパネル等の透明部材が配置され、画像表示パネルと透明部材とが粘着剤層等により貼り合わせられた層間充填構成を有する画像表示装置に好適に用いられる。
【0063】
(画像表示セル)
画像表示セルとしては、液晶セルや有機ELセルが挙げられる。液晶セルとしては、外
光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、画像表示装置(液晶表示装置)は、画像表示セル(液晶セル)の視認側と反対側にも偏光板が配置され、さらに光源が配置される。光源側の偏光板と液晶セルとは、適宜の粘着剤層を介して貼り合せられていることが好ましい。液晶セルの駆動方式としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用いうる。
【0064】
有機ELセルとしては、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の層構成が採用され得る。
【0065】
(画像表示セルと偏光板の貼り合せ)
画像表示セルと偏光板との貼り合せには、粘着剤層(粘着シート)が好適に用いられる。中でも、偏光板の一方の面に粘着剤層が付設された粘着剤層付き偏光板を画像表示セルと貼り合わせる方法が、作業性等の観点から好ましい。偏光板への粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物または混合物からなる溶剤にベースポリマーまたはその組成物を溶解あるいは分散させた10~40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれを偏光板に移着する方式などが挙げられる。
【0066】
(粘着剤層)
粘着剤層については、特開2018-025765号公報の段落[0103]~[0143]に記載されており、本発明ではこれらの粘着剤を用いることができる。
【0067】
(前面透明部材)
画像表示セルの視認側に配置される前面透明部材としては、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。透明板の視認側には反射防止層などの機能層が積層されていても構わない。また、透明板が透明樹脂板の場合は、物理強度を上げるためにハードコート層や、透湿度を下げるために低透湿層が積層されていても構わない。
タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等の各種タッチパネルや、タッチセンサー機能を備えるガラス板や透明樹脂板等が用いられる。前面透明部材として静電容量方式のタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルよりもさらに視認側に、ガラスや透明樹脂板からなる前面透明板が設けられることが好ましい。
【0068】
(偏光板と前面透明部材の貼り合せ)
偏光板と前面透明部材との貼り合せには、粘着剤またはUV硬化型の接着剤が好適に用いられる。粘着剤が用いられる場合、粘着剤の付設は適宜な方式で行い得る。具体的な付設方法としては、例えば、前述の画像表示セルと偏光板の貼り合せで用いた粘着剤層の付設方法が挙げられる。
【0069】
UV硬化型の接着剤を用いる場合、硬化前の接着剤溶液の広がりを防止する目的で、画像表示パネル上の周縁部を囲むようにダム材が設けられ、ダム材上に前面透明部材を載置
して、接着剤溶液を注入する方法が好適に用いられる。接着剤溶液の注入後は、必要に応じて位置合わせおよび脱泡が行われた後、UV光が照射されて硬化が行われる。
【0070】
以上、偏光フィルムの製造方法、構成部材等で説明したように、偏光フィルムに尿素系化合物を含有させる方法としては、尿素系化合物を含有した処理浴にフィルムを浸漬させ、処理する方法を好ましく用いることができるが、前述のとおり、噴霧、流下、滴下等の方法による塗布処理も採用することができる。それらの方法では、ヨウ素が吸着配向された延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも一方の面に、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体から選ばれる少なくとも1種を含有する溶液を上記のいずれかの方法により塗布した後、この塗布液を乾燥することにより製造することもできる。
このような方法として、尿素化合物を含有しない偏光フィルムを作製し、乾燥工程を経た後に上記の何れかの方法により尿素系化合物を塗布することも好ましい態様として挙げられる。
【0071】
(尿素系化合物含有塗布液)
本発明の尿素系化合物含有塗布液の溶媒は水、有機溶媒または、それらの混合液であることが好ましく、水または水とアルコールの混合溶媒の何れかであることがより好ましい。また、水とアルコールの混合溶媒である場合、アルコールがメタノールまたはエタノールの何れかであることが好ましい。
尿素系化合物は前記の尿素系化合物を好ましく使用することができるが、乾燥後に尿素系化合物が偏光フィルムの表面に析出し難い点で、尿素系化合物は水溶性であることが好ましい。
また、必要に応じて、塗布液に界面活性剤などを含有させても構わない。
【実施例
【0072】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0073】
(比較例1:尿素系化合物未処理偏光フィルムの作製)
図1に示す製造装置を用いて、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから比較例1の偏光フィルムを製造した。具体的には、厚み60μmの長尺のポリビニルアルコール(PVA)原反フィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンVF-PE#6000」、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕をロールから巻き出しながら連続的に搬送し、30℃の純水からなる膨潤浴に滞留時間89秒で浸漬させた(膨潤工程)。その後、膨潤浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が2/0.3/100(重量比)であるヨウ素を含む30℃の染色浴に滞留時間156秒で浸漬させた(染色工程)。次いで、染色浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/4/100(重量比)である56℃の第1架橋浴に滞留時間67秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/3/100(重量比)である40℃の第2架橋浴に滞留時間11秒で浸漬させた(架橋工程)。染色工程及び架橋工程において、浴中でのロール間延伸により縦一軸延伸を行った。原反フィルムを基準とする総延伸倍率は5.69倍とした。
【0074】
次に、第2架橋浴17bから引き出し、ニップロール53bを通過したフィルムを5℃の純水からなる洗浄浴19に滞留時間3秒で浸漬させた(洗浄工程)。その後、高湿処理部21内で、温度75℃、絶対湿度147g/cm、相対湿度61%として、滞留時間60秒でフィルムを高湿環境下に晒した。このとき、併せて1.14倍の一軸延伸処理を行った。最後に、フィルムを乾燥炉内で、温度30℃、絶対湿度10g/cm、滞留時
間120秒でフィルムを乾燥させる乾燥工程を経て偏光フィルム12を得た。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。
【0075】
(実施例1~12の作製)
第2架橋浴に尿素系化合物を表1に示す値を添加した以外は同様にして、偏光フィルム1~11を得た。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。
上記で使用した、尿素、メチル尿素、エチル尿素、1,3-ジメチル尿素、テトラメチル尿素、フェニル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素は、何れも東京化成工業株式会社の試薬を使用した。
【0076】
(PVA系接着剤1の調製)
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(三菱ケミカル(株)社製:ゴーセネックスZ-410)50gを950gの純水に溶解し、90℃で2時間加熱後常温に冷却し、PVA溶液Aを得た。
次いで、夫々の化合物が下記の濃度になるように前記PVA溶液A、マレイン酸、グリオキサール、純水を配合しPVA系接着剤1を調製した。
PVA濃度 3.0 重量%
マレイン酸 0.5 重量%
グリオキサール 0.15重量%
【0077】
(セルロースアシレートフィルムの鹸化)
市販のセルロースアシレートフィルムTD40(富士フイルム(株)製:膜厚40μm)を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
【0078】
(偏光板1の作製)
偏光フィルム1の両面に、上記で作製した鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを、PVA系接着剤1を介し、乾燥後の接着剤層の厚みが両面共、100nmになるように調整し、ロール貼合機を用いて貼合した後に60℃で10分間乾燥し、両面セルロースアシレートフィルム付き偏光板1を得た。
【0079】
(偏光板2~12の作製)
偏光フィルム1を偏光フィルム2~12に代えた以外は偏光板1と同様に偏光板2~12を作製した。
【0080】
(積層体1の作製)
特開2018-025765号公報の実施例を参考に、上記で作製した偏光板1の両面にアクリル系粘着剤(製造元:リンテック(株)、品番:#7)を塗布することにより、両面に、厚みが25μmの粘着剤層を有する光学積層体1を作製した。
【0081】
(積層体2~12の作製)
光学積層体1と同様にして偏光板1を偏光板2~12に代えた以外は同様にして光学積層体2~12を作製した。
【0082】
(積層体13の作製)
光学積層体12に対して粘着剤層を片面にのみ積層した以外は光学積層体12と同様にして光学積層体13を作製した。
【0083】
(積層体の評価)
特開2014-102353号公報と特開2018-025765号公報の実施例を参考に、上記で作製した積層体を評価した。尚、高温耐久試験は、95℃と105℃で行い、95℃では1000時間まで高温耐久試験を行ったが、尿素系化合物を含有しない偏光フィルム12を用いた比較例1以外は透過率低下が見られなかった。表1には105℃の高温耐久性試験の結果のみを示した。
比較例1の試験結果では105℃×100時間の着色は95℃×1000時間の結果とほぼ一致した。
【0084】
[高温耐久試験後の単体透過率評価(105℃)]
上記で作製した光学積層体1~12を、それぞれ、50mm×100mmの大きさに裁断して、第一粘着剤層および第二粘着剤層それぞれの表面を無アルカリガラス〔商品名“EAGLE XG”、コーニング社製〕に貼合することによって、評価サンプルを作製した。また、光学積層体14を、50mm×100mmの大きさに裁断して、第一粘着剤層の表面を無アルカリガラス〔商品名“EAGLE XG”、コーニング社製〕に貼合することによって、評価サンプルを作製した。尚、これらのサンプルを作製する時、ガラス板貼合前に水分量を調整するための加熱処理は行わなかった。
【0085】
この評価サンプルに、温度50℃、圧力5kg/cm(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理を施した後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、透過率を測定し(初期値)、温度105℃の加熱環境下に保管し、100~200時間まで50時間おきに透過率を測定した。初期値に対し透過率低下が5%以上に達した時間を基に以下の基準で評価を行った。得られた結果を表1に示す。
尚、光学積層体13を含む評価サンプルは、片側にのみ無アルカリガラスが積層されている構造であるため、透過率は低下せず、評価結果はAであった。
200時間後に透過率の低下が5%以下のもの :A
150~200時間後に透過率の低下が5%以上に達したもの:B
100~150時間後に透過率の低下が5%以上に達したもの:C
100時間後に透過率の低下が5%以上のもの :D
【0086】
[高温耐久試験後のクロス抜けの評価]
光学積層体14を、30mm×30mmの大きさに裁断して、第一粘着剤層の表面を無アルカリガラス〔商品名“EAGLE XG”、コーニング社製〕に貼合し、クロス評価用サンプル20を作製した。
高温耐久後の単体透過率評価サンプルを100時間後の評価を行った後に、上記光学積層体とサンプル20でクロスニコル状態の光抜け(以降、単に「クロス抜け」とも称す。)を目視で、以下の基準に従って評価した。
クロス抜けが全く見られないもの :◎
クロス抜けが殆ど見られないもの :○
クロス抜けが僅かに見られるもの :△
クロス抜けがはっきり見られるもの :×
【0087】
【表1】
【0088】
表1の尿素系化合物の添加量について説明する。
第2架橋浴に添加される尿素系化合物の濃度は、0.0001~0.1重量%であることが好ましく、0.0005~0.05重量%であることがより好ましく、0.001~0.03重量%であることが更に好ましい。
本発明では、何れの尿素系化合物も、その濃度が高い程、高温耐久試験後の単体透過率変化が小さく、逆に、高温耐久試験後のクロス抜けは、その濃度が低いほど小さい傾向を示す。
実施例に記載した尿素系化合物は、何れの化合物も、高温耐久試験後の単体透過率変化がB以上で、同時にクロス抜けが△以上の効果を示し、両方の性能において優れた効果を有している。
【0089】
但し、上記化合物の配合量については、個々の化合物によって、好ましい性能、すなわち、単体透過率変化がB以上で、同時にクロス抜けが△以上の性能を示す濃度範囲が厳密には異なるが、いずれの化合物もその濃度は、前記好ましい濃度の範囲に適正範囲を有している。
表1に記載の濃度は、各尿素系化合物において、単体透過率が評価Aとなる最小濃度の値を示している。さらに、尿素、チオ尿素については、評価Aとなる最小濃度から濃度を徐々に減らし、クロス抜けが△から○となる濃度の値も示す(その時の単体透過率変化はBだった。)。また、メチル尿素については、評価Aとなる最小濃度から濃度を徐々に減らし、クロス抜けが○から◎となる濃度の結果も示す(その時の単体透過率変化はBだった。)。
【0090】
表1に示す結果から以下のことが明らかである。
1.尿素系化合物を含有する偏光フィルムを用いた、本発明の偏光板は層間充填剤構成の画像表示装置に用いられた場合においても、高温環境下で長時間さらされた場合でも単体透過率の低下を抑止できる。
2.特に、尿素またはチオ尿素を用いたものに対し尿素誘導体またはチオ尿素誘導体を用いたものは単体透過率の低下がないことに加え、クロス抜けもなく、特に良好である。
3.尿素系化合物を2種類含有する偏光フィルムを用いたものも、高温環境下で長時間さらされた場合でも単体透過率の低下を抑止でき、本発明の好ましい態様の一つである。
【0091】
次に尿素化合物を偏光フィルムと接着剤に含む態様の例を示すが、この態様においても
以下の例に限定され制限されるものではない。
(接着剤用PVA溶液の調製)
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂(三菱ケミカル(株)社製:ゴーセネックスZ-410)50gを950gの純水に溶解し、90℃で2時間加熱後常温に冷却し、接着剤用PVA溶液を得た。
【0092】
(メチル尿素溶液の調製)
純水90gにメチル尿素10gを添加し、メチル尿素10重量%水溶液を得た。
(PVA系接着剤2の調製)
上記で作製した、接着剤用PVA溶液、純水、メタノールを、PVA濃度3.0%、メタノール濃度20%、メチル尿素濃度0.0%(メチル尿素溶液の添加なし)になるように配合し、偏光板用接着剤2を得た。
【0093】
(PVA系接着剤3の調製)
上記で作製した、接着剤用PVA溶液、メチル尿素溶液、純水、メタノールを、PVA濃度3.0%、メタノール濃度20%、メチル尿素濃度0.2%になるように配合し、偏光板用接着剤3を得た。
【0094】
(偏光板21、22の作製)
偏光板3に対し、PVA系接着剤1を夫々、PVA系接着剤2、PVA系接着剤3に代えた以外は同様にして偏光板21と偏光板22を得た。
(偏光板23の作製)
偏光板12に対し、PVA系接着剤1をPVA系接着剤2に代えた以外は同様にして偏光板23を得た。
光学積層体1に対し、偏光板1を夫々、偏光板21~23に代えた以外は同様にして、光学積層体21~23を得た。これらの試料を光学積層体1と同様に評価し、得られた結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示す結果から以下のことが明らかである。
1.偏光フィルムと接着剤に尿素系化合物を含有する本発明の偏光板は層間充填剤構成の画像表示装置に用いられた場合においても、高温環境下で長時間さらされた場合でも単体透過率の低下を抑止できる。
【0097】
更に他の態様の例を示す。この態様は、最初に尿素系化合物を含有しない偏光フィルムを作製し、乾燥工程を経た後に、尿素系化合物を含有する塗布液を塗布する態様である。この態様においても、以下の例に限定され制限されるものではない。
【0098】
塗布液としてメチル尿素の0.5%溶液を調製した。上記で作製した偏光フィルム12の片面にバーコータを用いてメチル尿素の0.5%溶液を、ウェット塗布量が10μmになるように塗布し60℃で5分乾燥し偏光フィルム31を得た。
比較例として、上記で作製した偏光素子の片面にバーコータを用いて純水を、ウェット塗布量が10μmになるように塗布し60℃で5分乾燥し偏光フィルム32を得た。
【0099】
偏光板1に対し、偏光フィルム1を夫々、偏光フィルム31、偏光フィルム32に代えた以外は同様にして偏光板31と偏光板32を得た。
光学積層体1に対し、偏光板1を夫々、偏光板31、偏光板32に代えた以外は同様にして、光学積層体31と光学積層体32を得た。これらの試料を光学積層体1と同様に評価し、得られた結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3に示す結果から以下のことが明らかである。
1.偏光フィルムの少なくとも一方の面に尿素系化合物を含有する溶液を塗布、乾燥して作製した偏光フィルムを有する、本発明の偏光板は層間充填剤構成の画像表示装置に用いられた場合においても、高温環境下で長時間さらされた場合でも単体透過率の低下を抑止できる。
【符号の説明】
【0102】
10 ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム、11 原反ロール、13 膨潤浴、15 染色浴、17a 第1架橋浴、17b 第2架橋浴、19 洗浄浴、21 乾燥部、23 偏光フィルム、30~48,60,61 ガイドロール、50~52,53a,53b,54,55 ニップロール。
図1