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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】車両の走行制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/10 20120101AFI20230913BHJP
   B60K 20/06 20060101ALI20230913BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B60W50/10
B60K20/06
B60K20/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019144787
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024456
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117165(JP,A)
【文献】特開2019-119326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60K 20/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操作によって変速比を変更可能な自動変速機を備えると共に、前記運転者の運転操作による手動運転モードの走行と、車線変更を含む自動運転による自動運転モードの走行とを切り換え可能な車両の走行制御システムであって、
前記手動運転モード下で前記運転者の操作に応じて前記自動変速機の変速比を変更するように機能する手動変速操作部と、
前記自動運転モードの場合、前記手動変速操作部の機能を、前記自動変速機の変速比を変更する機能から前記自動運転の車線変更に対する前記運転者の意思を前記走行制御システムに伝達する機能に切り換える操作機能切換部とを備え
前記自動変速機は、自動変速モードと前記手動変速操作部による手動変速モードとを選択するための変速選択部を備え、
前記操作機能切換部は、前記自動運転モードにおいて前記変速選択部が前記手動変速モードに選択された場合、前記手動変速操作部の前記車線変更に対する前記運転者の意思を伝達する機能を解除する
ことを特徴とする車両の走行制御システム。
【請求項2】
記操作機能切換部は、前記手動運転モードにおいて前記変速選択部が前記自動変速モードに選択された場合、前記手動変速操作部の前記変速比を変更する機能を解除することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御システム。
【請求項3】
前記手動変速操作部は、ステアリングハンドルの中心を挟んで左右に設けられた一対の操作スイッチであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の走行制御システム。
【請求項4】
前記手動変速操作部は、前記手動運転モードの場合、前記一対の操作スイッチの一方が前記変速比の上昇を指示するスイッチ、他方が前記変速比の下降を指示するスイッチとして機能することを特徴とする請求項3に記載の車両の走行制御システム。
【請求項5】
前記手動変速操作部は、前記自動運転モードの場合、前記一対の操作スイッチのそれぞれが、前記車線変更を承認又は指示するためのスイッチとして機能することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両の走行制御システム。
【請求項6】
前記手動変速操作部は、前記一対の操作スイッチの操作回数又は操作時間により、前記車線変更に対する前記運転者の異なる意思を伝達することを特徴とする請求項5に記載の車両の走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転操作による走行と車線変更を含む自動運転による走行とを切り換え可能な車両の走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、運転者の運転操作を必要とせずに車両を自動的に走行させる自動運転システムの開発が進められている。この自動運転システムでは、前方の低速車両の追い越しや分岐路への進路変更等によって車線変更の必要性が生じた場合、自動的に車線変更を実行する。
【0003】
このような自動運転システムによる自動車線変更に際しては、車線変更の開始前に予め運転者に車線変更を報知し、運転者の承諾を得ることが望まれる。車線変更に対する運転者の意思は、例えば、特許文献1に開示されているように、ウィンカーレバーの操作によって確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-103766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車線変更に対する運転者の意思をウィンカーレバーの操作によって確認する技術では、ウィンカーレバーの操作が車線変更に対する承認の意思表示なのか方向指示器としての操作なのかを区別できない場合があり、自動車線変更に際して必ずしも運転者の意思を確実に反映できるとは限らない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自動運転による走行中の自動車線変更に対して、運転者の意思を確実に反映させることのできる車両の走行制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両の走行制御システムは、運転者の操作によって変速比を変更可能な自動変速機を備えると共に、前記運転者の運転操作による手動運転モードの走行と、車線変更を含む自動運転による自動運転モードの走行とを切り換え可能な車両の走行制御システムであって、前記手動運転モード下で前記運転者の操作に応じて前記自動変速機の変速比を変更するように機能する手動変速操作部と、前記自動運転モードの場合、前記手動変速操作部の機能を、前記自動変速機の変速比を変更する機能から前記自動運転の車線変更に対する前記運転者の意思を前記走行制御システムに伝達する機能に切り換える操作機能切換部とを備え、前記自動変速機は、自動変速モードと前記手動変速操作部による手動変速モードとを選択するための変速選択部を備え、前記操作機能切換部は、前記自動運転モードにおいて前記変速選択部が前記手動変速モードに選択された場合、前記手動変速操作部の前記車線変更に対する前記運転者の意思を伝達する機能を解除する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動運転による走行中の自動車線変更に対して、運転者の意思を確実に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両の走行制御システムを示す構成図
図2】変速選択部の一例を示す概略斜視図
図3】ステアリングハンドルに設けた手動変速操作部を示す説明図
図4】車線変更制御処理のフローチャート
図5】車線変更制御処理のフローチャート(続き)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は車両の走行制御システムの構成図である。図1に示す走行制御システム1は、運転者の運転操作を必要とせずに車両を自動的に走行させる自動運転制御ユニット10を中心として構成されている。自動運転制御ユニット10には、外部環境認識ユニット20、ロケータユニット30、制駆動制御ユニット40、変速制御ユニット50、操舵制御ユニット60、情報報知ユニット70等が車内ネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。各ユニット10~70は、それぞれ、単一或いは複数のコンピュータを主として構成されている。
【0011】
外部環境認識ユニット20は、カメラ、ミリ波レーダ、レーザレーダ等の自車両の外部環境を自律的にセンシングするためのデバイスを備えている。これらのデバイスは、主として前方監視用と全周囲監視用とに分けられ、例えば、前方監視用としてカメラとミリ波レーダとが備えられ、全周囲監視用として、前後及び車幅方向の複数箇所にカメラが配置されている。外部環境認識ユニット20は、カメラやレーダ等で検出した自車両周囲の物体の検出情報、路車間通信や車車間通信等のインフラストラクチャ通信によって取得した交通情報、ロケータユニット30からの自車位置情報や地図情報等により、自車両周囲の外部環境を認識する。
【0012】
ロケータユニット30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等を利用して自己位置を測位する。また、ロケータユニット30は、地図データベースDBを備え、ロケータで測位した自車両の位置データから地図データベースDBの地図データ上での位置を特定する。地図データベースDBは、自動運転を含む走行制御用に作成された高精度のデジタル地図を保有するデータベースであり、HDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)等の大容量記憶媒体に格納されている。
【0013】
詳細には、高精度のデジタル地図は、道路形状や道路間の接続関係等の静的な情報と、インフラ通信によって収集される交通情報等の動的な情報とを複数の階層で保持する多次元マップ(ダイナミックマップ)として構成されている。道路データとしては、道路白線の種別、車線の数、車線の幅、車線の幅方向の中心位置を示す点列データ、車線の曲率、車線の進行方位角、制限速度等が含まれ、データの信頼度やデータ更新の日付等の属性データと共に保持されている。
【0014】
制駆動制御ユニット40は、電動モータや内燃機関で発生させる走行駆動力を制御し、また、自車両の走行速度、ブレーキ等を制御する。例えば、制駆動制御ユニット40は、エンジン運転状態を検出する各種センサ類からの信号、及び車内ネットワークを介して取得される各種制御情報に基づいて、エンジンの運転状態を制御する。また、制駆動制御ユニット40は、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、操舵角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、4輪のブレーキ装置(図示せず)を運転者のブレーキ操作とは独立して制御する。更に、制駆動制御ユニット40は、各輪のブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出して、アンチロックブレーキ制御や横すべり防止制御等を行う。
【0015】
変速制御ユニット50は、電動モータや内燃機関等の走行駆動源に連結される自動変速機51の変速比、前進と後退との切り換えを、変速のレンジ位置を検出するスイッチの信号及び変速スケジュールに基づいて制御する。自動変速機51は、周知の無段或いは有段の自動変速機であり、変速選択部52からの信号により変速レンジが選択される。図2は変速選択部の一例を示す概略斜視図である。
【0016】
本実施の形態においては、変速選択部52は、車室内のセンタコンソールに設けられ、運転者がセレクトレバー53を把持して前後方向に移動させることにより、パーキング(P)、後退(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)の各レンジをセレクトすることができ、各レンジ位置に対応するスイッチ信号が出力される。また、自動変速モードであるDレンジに対して、Dレンジの位置からセレクトレバー53を横方向に移動させると(D→M)、運転者の操作によって変速比を変更可能な手動変速モードに切り換えることができる。
【0017】
手動変速モードでは、図3に示すような手動変速操作部54を運転者が操作することにより、Dレンジにおける変速比を変更することができる。図3はステアリングハンドルに設けた手動変速操作部を示す説明図である。手動変速操作部54は、ステアリングハンドル55の背面側前方に、ステアリングハンドル55の中心を挟んで左右に設けられた一対のレバー形の操作スイッチ(以下、「パドルスイッチ」と称する)54a,54bを主として構成されている。
【0018】
パドルスイッチ54a,54bは、一方が変速比の上昇を指示するアップシフトスイッチとなり、他方が変速比の下降を指示するダウンシフトスイッチとなる。図3においては、「+」の表示があるパドルスイッチ54aがアップシフトスイッチ、「-」の表示があるパドルスイッチ54bがダウンシフトスイッチとなる。
【0019】
手動運転モードにおいては、運転者がステアリングハンドル55を把持しながら、例えば人差し指又は中指でパドルスイッチ54aのレバーを手前に短時間引いて離す操作(タップ操作)をすると、Dレンジにおける変速比を段階的に上昇させることができ、パドルスイッチ54bのレバーをタップ操作すると、Dレンジにおける変速比を段階的に下降させることができる。尚、各パドルスイッチ54a,54bは、レバーから指を離すと、元の位置に復帰する。
【0020】
また、パドルスイッチ54a,54bは、手動運転モードにおいては、運転者が変速比を変更するための操作部として機能するが、自動運転モードにおいては、自動運転制御ユニット10により、車線変更に対する運転者の意思を伝達するための操作部としての機能に切り換えられる。パドルスイッチ54a,54bの機能の切り換えについては、後述する。
【0021】
操舵制御ユニット60は、例えば、車速、運転者の操舵トルク、操舵角、ヨーレート、その他の車両情報に基づいて、操舵系に設けた電動パワーステアリング(EPS)ユニット61による操舵トルクを制御する。この操舵トルクの制御は、実操舵角を目標操舵角に一致させるための目標操舵トルクを実現するEPSユニット61の電動モータに対する電流制御として実行される。EPSユニット61は、操舵制御ユニット60からの目標操舵トルクを指示トルクとして、この指示トルクに対応する電動モータの駆動電流を、例えばPID制御によって制御する。
【0022】
情報報知ユニット70は、車両の各種装置に異常が生じた場合や運転者に注意を喚起するための警報、及び運転者に提示する各種情報の出力を制御する。例えば、モニタ、ディスプレイ、アラームランプ等の視覚的な出力と、スピーカ・ブザー等の聴覚的な出力との少なくとも一方を用いて、警告や制御情報を報知する。情報報知ユニット70は、自動運転を含む走行制御を実行中、その制御状態を運転者に提示し、また、運転者の操作によって自動運転を含む走行制御が休止された場合には、そのときの運転状態を運転者に報知する。
【0023】
次に、走行制御システム1の中心となる自動運転制御ユニット10について説明する。自動運転制御ユニット10は、運転者が操舵、加減速、ブレーキ等の全ての運転操作を行って自車両を走行させる手動運転モードに対して、運転者の運転操作を支援する運転支援モードや運転者の運転操作を必要としない自動運転モードの制御を実行する。本実施の形態における運転支援モードは、運転者の保舵或いは操舵を必要として、加減速制御と操舵制御との少なくとも一方を自動的に行う運転モードを意味し、部分的な自動運転を含むものとする。一方、自動運転モードは、運転者がハンドルに触れることのない手放し運転を前提とする運転モードを意味する。
【0024】
自動運転制御ユニット10は、外部環境認識ユニット20、ロケータユニット30からの情報に基づいて、制駆動制御ユニット40、変速制御ユニット50、及び操舵制御ユニット60を介した自動運転モードの走行制御を実行する。この自動運転モードの走行制御においては、特に、先行車両の追い越しや隣接車線への割り込み動作等によって現在の走行車線から離脱する場合、運転者の意思の確認結果に応じて、割り込みを含む車線変更を実行又は中止する。
【0025】
このため、自動運転制御ユニット10は、自動運転を制御する自動運転制御部11に対して、操作機能切換部12及び車線変更確認部13を車線変更に係る機能部として備えている。自動運転制御ユニット10は、自動運転モードにおいて、パドルスイッチ54a,54bの機能を切り換え、自動運転で車線変更を行う場合には、パドルスイッチ54a,54bからの信号によって運転者の許諾を確認し、また、自動運転中に、パドルスイッチ54a,54bからの特定の信号パターンによって運転者の車線変更に対する意思を確認した場合には、自動車線変更を行う。
【0026】
自動運転制御部11は、乗員(運転者)が自動運転モードをオンにして、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)を入力、或いはパネル等に表示される地図上で直接指定すると、走行ルートの位置座標(緯度、経度)を設定し、走行する道路及び走行車線を特定する。そして、自動運転制御部11は、道路条件、地理的条件、環境条件等が自動運転の条件を満足する場合、自動運転により、加減速制御及び操舵制御を実行する。
【0027】
目的地及び走行ルートが予め指定されている場合、自動運転制御部11は、周囲の交通環境に応じた車速、他車両との車間距離、車線を適切に設定しながら走行ルートに沿って自車両を目的地まで自動走行させる。一方、目的地及び走行ルートが指定されていない場合には、自動運転制御部11は、自車両を車線に沿って自動走行させる。
【0028】
操作機能切換部12は、手動運転モードから自動運転モードに切り換えられたとき、パドルスイッチ54a,54bの機能を、変速比を変更するシフト操作のスイッチとしての機能から、車線変更に対する運転者の意思を伝達するための操作スイッチとしての機能に切り換える。パドルスイッチ54a,54bをシフト操作の機能から車線変更に係る機能に切り換える条件として、本実施の形態においては、自動運転モードによる走行中、且つ変速選択部52のレンジ位置がDレンジに選択されていることを条件としている。
【0029】
操作機能切換部12は、パドルスイッチ54a,54bの車線変更に係る機能への切り換え条件が成立するとき、変速制御ユニット50に対して、パドルスイッチ54a,54bからの信号をスルーして操作機能切換部12に送信するように指示する。操作機能切換部12は、パドルスイッチ54a,54bからの信号を、車線変更に対する運転者の意思を表す信号として、車線変更確認部13に伝達する。
【0030】
具体的には、操作機能切換部12は、左右のパドルスイッチ54a,54bのタップ操作や長押し操作による信号の長さと、信号を出力する側で示される左右の方向とによるパターンを、車線変更に対する運転者の意思として車線変更確認部13に伝達する。尚、パドルスイッチ54a,54bの長押し操作とは、タップ操作よりも長い時間レバーを手前に引いた状態を保持する操作を意味する。タップ操作と見なす時間と長押し操作と見なす時間の関係は、予め設定されている。
【0031】
一方、自動運転モードが解除されたとき、又は自動運転モード中に変速選択部52のレンジ位置がDレンジから手動変速モードに切り換えられたときには、操作機能切換部12は、パドルスイッチ54a,54bの車線変更に対する運転者の意思を伝達する機能を解除し、変速制御ユニット50に、パドルスイッチ54a,54bからの信号入力を有効とするように指示する。但し、自動運転モードの走行中は、パドルスイッチ54a,54bの操作による自動変速機51の変速比の変更は、禁止若しくは制限される。
【0032】
尚、本実施の形態においては、パドルスイッチ54a,54bの信号は、変速制御ユニット50を経由して操作機能切換部12に読み込まれるものとするが、パドルスイッチ54a,54bを、変速制御ユニット50と自動運転制御ユニット10との双方に接続し、操作機能切換部12でパドルスイッチ54a,54bの信号を直接読み込むようにしても良い。変速選択部52についても同様である。
【0033】
車線変更確認部13は、自動運転による走行中、前方の低速車両の追い越し、分岐路への進路変更等によって車線変更の必要性が生じた場合、システムによる車線変更の提案を、車線変更の方向を含めて運転者に提示する。運転者がパドルスイッチ54a,54bのうちの提案方向側のスイッチをタップ操作した場合、車線変更確認部13は、運転者がシステムによる車線変更を承認したと判断し、自動運転制御部11に、自動運転による自動車線変更の実行を指示する。一方、運転者が提案方向と反対側のスイッチをタップ操作した場合には、車線変更確認部13は、運転者がシステムによる車線変更を拒否したと判断し、自動運転制御部11に、自動運転による自動車線変更の中止を指示する。
【0034】
また、車線変更確認部13は、自動運転中に車線変更の必要がない場合であっても、操作機能切換部12からパドルスイッチ54a,54bの操作回数や操作時間による特定のパターンの信号が入力された場合、この特定の信号パターンによって伝達される運転者の車線変更に対する異なる意思を判別し、自動運転制御部11に、自動車線変更の実行を指示、或いは自動運転の解除を指示する。
【0035】
例えば、運転者が左右のパドルスイッチ54a,54bのうちの一方をタップ操作した場合、車線変更確認部13は、運転者が車線変更を所望しているものと判断し、タップ操作された側への自動車線変更を自動運転制御部11に指示する。また、運転者が左右のパドルスイッチ54a,54bのうちの一方を長押し操作した場合、車線変更確認部13は、運転者が長押し操作した側の車線への割り込みを所望していると判断し、運転者がスイッチを長押し操作している期間中、自動運転制御部11に指示して割り込み制御を実行させる。このとき、割り込む側の車線の状態によっては、割り込みが不能の場合があり、その場合には、自動運転の解除を指示する。
【0036】
次に、以上の走行制御システム1の動作について、図4及び図5のフローチャートで例示される自動運転制御ユニット10の動作を中心として説明する。図4及び図5は車線変更制御処理のフローチャートである。
【0037】
自動運転制御ユニット10の車線変更制御処理は、最初のステップS1において、自動運転モード又は運転支援モードがオンか否かを調べる。自動運転モード又は運転支援モードがオフで手動運転モードの場合、自動運転制御ユニット10は、ステップS3において、パドルスイッチ54a,54bをシフト操作のスイッチとして、パドルスイッチ54a,54bの信号の読み込みを停止する。
【0038】
手動運転モードでは、運転者が変速選択部52のセレクトレバー53をDレンジから移動させて手動変速モードにセットしたとき、パドルスイッチ54a,54bの信号が変速制御ユニット50に読み込まれ、変速比の変更が可能となる。例えば、運転者が「+」の表示があるパドルスイッチ54aをタップ操作すると、自動変速機51の変速比を段階的に上昇させることができ、「-」の表示があるパドルスイッチ54bをタップ操作すると、変速比を段階的に下降させることができる。
【0039】
一方、ステップS1で自動運転モード又は運転支援モードがオンの場合、自動運転制御ユニット10は、ステップS2で自動変速機51が手動変速モードか否かを変速選択部52からの信号によって判断する。運転者が変速選択部52のセレクトレバー53をDレンジの位置から移動させて手動変速モードにセットしたと判断される場合、自動運転制御ユニット10は、運転モードを手動運転モード或いは運転支援モードとして、前述のステップS3へ進み、パドルスイッチ54a,54bをシフト操作のスイッチとする。
【0040】
変速選択部52が手動変速モードにセットされていない場合には、ステップS2からステップS4へ進む。ステップS4では、自動運転制御ユニット10は、パドルスイッチ54a,54bの機能を車線変更の操作スイッチとしての機能に切り換え、信号入力を待つ。尚、このとき、変速制御ユニット50は、パドルスイッチ54a,54bからの信号をスルーして自動運転制御ユニット10に送る。
【0041】
次に、ステップS5に進み、自動運転制御ユニット10は現在の走行環境から自動で車線変更するか否かを判断する。自動運転制御ユニット10は、特に車線変更を自動的に実行しなくともよいと判断した場合、ステップS5からステップS12以降へ進み、車線変更が望ましいと判断した場合、ステップS5からステップS6へ進み、システムによる車線変更を情報報知ユニット70を介して運転者に提案する。
【0042】
その後、ステップS7へ進み、自動運転制御ユニット10は、システムによる車線変更の提案に対して運転者が反応し、パドルスイッチ54a,54bの何れかがタップ操作されたか否か(タップ操作による信号入力を検出したか否か)を調べる。自動運転制御ユニット10は、パドルスイッチ54a,54bの一方がタップ操作されたとき、ステップS8に処理に進み、提案方向側のスイッチがタップ操作されたか否かを調べる。
【0043】
ステップS8において提案方向側のスイッチがタップ操作された場合、自動運転制御ユニット10は、ステップS9で提案方向への自動車線変更を実行する。一方、提案方向とは反対方向側のスイッチがタップ操作された場合、自動運転制御ユニット10は、ステップS11で自動車線変更を中止する。尚、車線変更中に、反対方向側のスイッチがタップ操作された場合には、車線変更を中止し、元の車線に戻る。
【0044】
一方、ステップS7において、パドルスイッチ54a,54bがタップ操作されていない場合、自動運転制御ユニット10は、ステップS7からステップS10の処理に進み、タップ操作されない時間が予め設定した一定時間だけ経過したか否かを調べる。一定時間が経過していない場合、ステップS7へ戻って入力待ちとなり、システムによる車線変更の提案に運転者が反応せずに一定時間が経過した場合には、ステップS11で自動車線変更を中止する。
【0045】
次に、ステップS5において特に車線変更を実行しなくともよいと判断された場合のステップS12以降の処理について説明する。ステップS12では、自動運転制御ユニット10は、運転者によるパドルスイッチ54a,54bのスイッチ操作による信号入力があったか否かを調べ、スイッチ操作による信号入力がない場合には、本処理を抜け、スイッチ操作による信号入力があった場合、ステップS13に進む。
【0046】
ステップS13では、自動運転制御ユニット10はパドルスイッチ54a,54bの一方からのタップ操作による信号入力か否かを調べる。そして、パドルスイッチ54a,54bの一方がタップ操作された場合、自動運転制御ユニット10は、運転者がタップ操作した側に車線変更を望んでいると判断し、ステップS14でタップ操作した側への自動車線変更を実行する。
【0047】
一方、ステップS13でパドルスイッチ54a,54bがタップ操作されていない場合には、自動運転制御ユニット10は、ステップS15でパドルスイッチ54a,54bの一方が長押し操作されているか否かを調べる。自動運転制御ユニット10は、パドルスイッチ54a,54bの操作がタップ操作と長押し操作との何れにも該当しない場合、誤操作と判断して本処理を抜け、パドルスイッチ54a,54bの一方が長押し操作されている場合、運転者が現在の走行車線を離脱してタップ方向の車線内への割り込みを望んでいると判断し、ステップS16へ進む。
【0048】
ステップS16では、自動運転制御ユニット10は、自車両前後の状況から割り込みが可能か否かを調べる。自動運転制御ユニット10は、割り込み可能の場合、ステップS17でパドルスイッチ54a,54bの長押し中、長押し側への割り込み制御を実行し、割り込み不能の場合には、ステップS18で自動運転を解除する。
【0049】
このように本実施の形態においては、手動運転モード下で運転者の操作に応じて自動変速機の変速比を変更するように機能するパドルスイッチ54a,54bを、自動運転モードにおいては、自動車線変更に対する運転者の意思をシステムに伝達するための操作スイッチとしての機能に切り換える。
【0050】
これにより、ウィンカーレバーを利用する場合等のように、他の運転操作と確実に区別することができ、自動車線変更に対する運転者の意思を確実に反映させることができる。しかも、本実施の形態においては、ステアリングハンドル55の中心を挟んで左右に設けられた一対の操作スイッチとしてパドルスイッチ54a,54bを用いるため、運転者の感覚と一致した操作で的確に自動車線変更に対する意思を伝達することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 走行制御システム
10 自動運転制御ユニット
11 自動運転制御部
12 操作機能切換部
13 車線変更確認部
20 外部環境認識ユニット
30 ロケータユニット
40 制駆動制御ユニット
50 変速制御ユニット
51 自動変速機
52 変速選択部
53 セレクトレバー
54 手動変速操作部
54a,54b パドルスイッチ
55 ステアリングハンドル
60 操舵制御ユニット
61 電動パワーステアリング
70 情報報知ユニット
DB 地図データベース
図1
図2
図3
図4
図5