(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1368 20060101AFI20230913BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G02F1/1368
G02F1/1343
(21)【出願番号】P 2019193883
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀史
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107995959(CN,A)
【文献】特表2019-522822(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0066220(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0100112(US,A1)
【文献】特開2009-080446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1368
G02F 1/1343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、制御回路とを具備し、
前記液晶パネルは、面内方向にマトリクス状に配置された複数の絵素を含み、アクティブマトリクス基板と、液晶分子を含有する液晶層と、カラーフィルタ基板とをこの順に有し、
前記複数の絵素は、行方向に並んだ赤色の表示単位と、緑色の表示単位と、青色の表示単位とを含み、
前記赤色の表示単位は、互いに列方向に隣接して配置され、奇数行から選ばれた第一の赤絵素と偶数行から選ばれた第二の赤絵素とを含み、
前記緑色の表示単位は、互いに列方向に隣接して配置され、奇数行から選ばれた第一の緑絵素と偶数行から選ばれた第二の緑絵素とを含み、
前記青色の表示単位は、列方向に隣接して配置され、奇数行から選ばれた第一の青絵素と偶数行から選ばれた第二の青絵素とを含み、
前記アクティブマトリクス基板は、第一基板と、絶縁層を介して積層された第一電極と前記絵素毎に配置された第二電極とを有し、
前記カラーフィルタ基板は、第二基板と、カラーフィルタと、第三電極とを有し、
前記第一電極及び前記第二電極のいずれか一方は、前記複数の絵素を跨いで電気的に結合して配置され、
前記複数の絵素には、それぞれ、光が前記液晶パネルを透過するよう構成された光学的開口部が設けられ、
前記第三電極は、平面視において前記光学的開口部の少なくとも一部と重畳せず、電気的に結合して配置され、
前記制御回路は、前記第三電極への交流電圧の印加及び定電圧の印加を切り換える制御を行
い、
前記制御回路は、前記液晶パネルの法線方向を含む狭い視野角の範囲から観察できる第一の画像を表示する第一の表示モードにあっては、前記第三電極に対して交流電圧を印加する制御を行い、
前記制御回路は、前記狭い視野角の範囲を含む広い視野角の範囲から前記第一の画像が観察できる第二の表示モードにあっては、前記第三電極に対して前記第一電極又は前記第二電極と共通の定電圧を印加する制御を行い、
前記第一の表示モードにおいて、前記制御回路が、以下の(a)又は(b)の方法で制御を行うことにより、前記第一の画像とは異なる第二の画像が、前記広い視野角の範囲から観察され、かつ、前記第二の画像を前記第一の画像に重ねて前記第一の画像を視認し難くするように画像信号を入力し、前記第一の赤絵素及び前記第二の赤絵素のいずれか一方、前記第一の緑絵素及び前記第二の緑絵素いずれか一方、並びに、前記第一の青絵素及び前記第二の青絵素のいずれか一方が前記第一の画像を表示する通常表示を行い、他方が黒表示を行う;
(a)前記第二電極に対して共通電位を印加し、前記第一の赤絵素に対応する第一電極及び前記第二の赤絵素に対応する第一電極に対してそれぞれ異なる電圧を印加し、前記第一の緑絵素に対応する第一電極及び前記第二の緑絵素に対応する第一電極に対してそれぞれ異なる電圧を印加し、前記第一の青絵素に対応する第一電極及び前記第二の青絵素に対応する第一電極に対してそれぞれ異なる電圧を印加する、又は、
(b)前記第一電極に対して共通電位を印加し、前記第一の赤絵素に対応する第二電極及び前記第二の赤絵素に対応する第二電極に対してそれぞれ異なる電圧を印加し、前記第一の緑絵素に対応する第二電極及び前記第二の緑絵素に対応する第二電極に対してそれぞれ異なる電圧を印加し、前記第一の青絵素に対応する第二電極及び前記第二の青絵素に対応する第二電極に対してそれぞれ異なる電圧を印加する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第三電極と前記液晶層との間に誘電体層を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第二基板、前記第三電極、前記カラーフィルタ及び前記誘電体層の順に配置されることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記カラーフィルタは、誘電体層であり、
前記第二基板、前記第三電極、前記カラーフィルタ、及び、前記液晶層の順に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第三電極は、遮光性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第三電極は、アルミニウム、モリブデン、クロム、チタン又はこれらの合金を含む単層又は複層の遮光電極であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第三電極は、透明電極であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第三電極は、平面視において前記光学的開口部を囲むように配置されることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記アクティブマトリクス基板は、ゲート配線と前記ゲート配線と交差するように配置されたソース配線とを有し、
平面視において、前記第三電極は、前記ゲート配線及び前記ソース配線の少なくとも一方と重畳することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記カラーフィルタ基板は、更に、平面視において前記光学的開口部の周囲に配置された黒色樹脂からなるブラックマトリクスを有し、
前記第三の電極は、前記ブラックマトリクスと重畳することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記第二基板、前記第三電極及び前記ブラックマトリクスの順で配置されることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第二基板、前記ブラックマトリクス及び前記第三電極の順で配置されることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶分子は、前記液晶層への電圧が印加されていない電圧無印加状態において前記アクティブマトリクス基板に対して水平に配向し、
前記第一の表示モードにあっては、前記液晶分子は、前記第一電極と前記第二電極と前記第三電極との間に形成された電界により、前記アクティブマトリクス基板に対して角度をなしつつ配向方位を変化させ、
前記第二の表示モードにあっては、前記液晶分子は、前記第一電極と前記第二電極との間に形成される電界により、前記アクティブマトリクス基板に対して平行に配向しつつ配向方位を変化させることを特徴とする請求項
1に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示のために液晶組成物を利用する表示装置であり、その代表的な表示方式は、一対の基板間に封入された液晶組成物に対して電圧を印加し、印加した電圧に応じて液晶組成物中の液晶分子の配向状態を変化させることにより、光の透過量を制御するものである。このような液晶表示装置は、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を活かし、幅広い分野で用いられている。
【0003】
従来、液晶表示装置は、狭い視野角の範囲から観察しても、広い角度の範囲から観察しても同様の画像が観察できるように視野角特性を向上させることが検討されている。一方で、プライバシー保持の観点からは、狭い視野角の範囲からは画像を観察できるが、視野角の広い範囲からは上記画像を観察し難くする表示方法が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1の基板上に設けられた第1の電極および第2の電極の間に横電界を発生させるFFS構造を有する液晶表示装置において、前記第1の基板と対向する第2の基板上に、前記第1の電極および前記第2の電極と縦電界を発生させる第3の電極をさらに備えた液晶表示装置が開示され、縦電界の制御により視野角制御を行うことが検討されている。
【0005】
特許文献2には、液晶表示パネルと、上記液晶表示パネルにおける第1領域および第2領域と、上記第1領域および上記第2領域のそれぞれに応じて異なる第1形態および第2形態で液晶層に電界を印加する回路とを備えた液晶表示装置が開示されており、パブリックモードとプライベートモードとを切り替え、プライベートモードにおいてマスキング画像を表示することが検討されている。当該技術を、ソフトベールビュー技術(機能)と本明細書では記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-178907号公報
【文献】特開2011-253206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された液晶表示装置では、充分な透過率及びコントラストを得ることは困難であった。また、斜め方向から観察した場合には、充分なプライバシー性を得ることは困難であった。特許文献2に開示された液晶表示装置では、表示画面に対して斜め方向からは画像が観察され難くなるものの、表示画面の左右方向から観察した場合には、充分なプライバシー性を得ることは困難であった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ソフトベールビュー機能と組み合わせることができ、液晶パネルの左右方向及び斜め方向からのプライバシー性を確保しつつ、高透過率及び高コントラストが得られる液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一実施形態は、液晶パネルと、制御回路とを具備し、上記液晶パネルは、面内方向にマトリクス状に配置された複数の絵素を含み、アクティブマトリクス基板と、液晶分子を含有する液晶層と、カラーフィルタ基板とをこの順に有し、上記アクティブマトリクス基板は、第一基板と、絶縁層を介して積層された第一電極と上記絵素毎に配置された第二電極とを有し、上記カラーフィルタ基板は、第二基板と、カラーフィルタと、第三電極とを有し、上記第一電極及び上記第二電極のいずれか一方は、上記複数の絵素を跨いで電気的に結合して配置され、上記複数の絵素には、それぞれ、光が上記液晶パネルを透過するよう構成された光学的開口部が設けられ、上記第三電極は、平面視において上記光学的開口部の少なくとも一部と重畳せず、電気的に結合して配置され、
上記制御回路は、上記第三電極への交流電圧の印加及び定電圧の印加を切り換える制御を行う液晶表示装置である。
【0010】
(2)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)の構成に加え、上記第三電極と上記液晶層との間に誘電体層を有する液晶表示装置である。
【0011】
(3)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(2)の構成に加え、上記第二基板、上記第三電極、上記カラーフィルタ及び上記誘電体層の順に配置される液晶表示装置である。
【0012】
(4)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)の構成に加え、上記カラーフィルタは、誘電体層であり、上記第二基板、上記第三電極、上記カラーフィルタ、及び、上記液晶層の順に配置される液晶表示装置である。
【0013】
(5)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)~(4)のいずれかの構成に加え、上記第三電極は、遮光性を有する液晶表示装置である。
【0014】
(6)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(5)の構成に加え、上記第三電極は、アルミニウム、モリブデン、クロム、チタン又はこれらの合金を含む単層又は複層の遮光電極である液晶表示装置である。
【0015】
(7)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)~(4)のいずれかの構成に加え、上記第三電極は、透明電極である液晶表示装置である。
【0016】
(8)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、上記第三電極は、平面視において上記光学的開口部を囲むように配置される液晶表示装置である。
【0017】
(9)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)~(7)のいずれかの構成に加え、上記アクティブマトリクス基板は、ゲート配線と上記ゲート配線と交差するように配置されたソース配線とを有し、平面視において、上記第三電極は、上記ゲート配線及び上記ソース配線の少なくとも一方と重畳する液晶表示装置である。
【0018】
(10)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)~(9)のいずれかの構成に加え、上記カラーフィルタ基板は、更に、平面視において上記光学的開口部の周囲に配置された黒色樹脂からなるブラックマトリクスを有し、上記第三の電極は、上記ブラックマトリクスと重畳する液晶表示装置である。
【0019】
(11)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(10)の構成に加え、上記第二基板、上記第三電極及び上記ブラックマトリクスの順で配置される液晶表示装置である。
【0020】
(12)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(10)の構成に加え、上記第二基板、上記ブラックマトリクス及び上記第三電極の順で配置される液晶表示装置である。
【0021】
(13)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(1)~(12)のいずれかの構成に加え、上記液晶パネルの法線方向を含む狭い視野角の範囲から観察できる第一の画像を表示する第一の表示モードと、上記狭い視野角の範囲を含む広い視野角の範囲から上記第一の画像が観察できる第二の表示モードとを有し、上記制御回路は、上記第一の表示モードにあっては、上記第三電極に対して交流電圧を印加する制御を行い、上記第二の表示モードにあっては、上記第三電極に対して上記第一電極又は上記第二電極と共通の定電圧を印加する制御を行う液晶表示装置である。
【0022】
(14)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(13)の構成に加え、上記液晶分子は、上記液晶層への電圧が印加されていない電圧無印加状態において上記アクティブマトリクス基板に対して水平に配向し、上記第一の表示モードにあっては、上記液晶分子は、上記第一電極と上記第二電極と上記第三電極との間に形成された電界により、上記アクティブマトリクス基板に対して角度をなしつつ配向方位を変化させ、上記第二の表示モードにあっては、上記液晶分子は、上記第一電極と上記第二電極との間に形成される電界により、上記アクティブマトリクス基板に対して平行に配向しつつ配向方位を変化させる液晶表示装置である。
【0023】
(15)本発明の一実施形態中のある形態は、上記(13)又は(14)の構成に加え、上記液晶パネルは、ソフトベールビュー機能により画像を表示する複数の表示単位を有し、上記表示単位は、互いに隣接して配置され、奇数行から選ばれた第一の絵素と偶数行から選ばれた第二の絵素とからなる一対の絵素を含み、上記制御回路は、上記第一の表示モードにおいて、上記第一の画像とは異なる第二の画像が、上記広い視野角の範囲から観察されるように、上記一対の絵素のそれぞれに対して異なる画像信号を入力する液晶表示装置である。
【0024】
(16)上記アクティブマトリクス基板と上記液晶層との間に第一の配向膜を有し、上記カラーフィルタ基板と上記液晶層との間に第二の配向膜を有し、上記第一の配向膜及び上記第二の配向膜は、水平配向膜であることが好ましい。水平配向膜は、配向膜の表面に対する、液晶分子の初期(液晶層への電圧無印加状態)の立ち上がり角度、即ちプレチルト角度を、0°から1°とするものが好ましい。一方で、初期のプレチルト角度を、例えば、3°~15°の範囲とすることで、液晶パネルを観察者側から視認した時の視野角特性を、液晶パネルの上下方向に対して非対称にすることができる。具体的には、方位角90°で基板平面に平行な状態から鉛直方向に+3~+15°立ち上がる場合(プレチルト角+3°~+15°)、上方位に対して狭視野角となる。他方、方位角270°で基板平面に平行な状態から鉛直方向に+3°~+15°立ち上がる場合(プレチルト角+3°~+15°)、下方位に対して狭視野角となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ソフトベールビュー機能と組み合わせることができ、液晶パネルの左右方向及び斜め方向からのプライバシー性を確保しつつ、高透過率及び高コントラストが得られる液晶表示装置を提供することができる。特に、本発明に係る液晶表示装置は、広視角モードで表示を行う際に、絵素の光学的開口部において縦電界が作用し難い為、高い透過率とコントラストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る液晶表示装置を例示した一絵素の断面模式図である。
【
図2】実施形態に係る液晶表示装置の第一例を示した平面模式図である。
【
図3】実施形態に係る液晶表示装置の第二例を示した平面模式図である。
【
図4】実施形態に係る液晶表示装置の第三例を示した平面模式図である。
【
図5】実施形態に係る液晶表示装置の第四例を示した平面模式図である。
【
図6】実施形態に係る液晶表示装置のカラーフィルタ基板の変形例1を示した平面模式図である。
【
図7】実施形態に係る液晶表示装置のカラーフィルタ基板の変形例2を示した平面模式図である。
【
図8】実施形態に係る液晶表示装置のカラーフィルタ基板の変形例3を示した平面模式図である。
【
図9】第一の表示モードと第二の表示モードの表示方法を模式的に示したブロック図である。
【
図10】狭視野角モードで白表示とした場合の一絵素の平面模式図である。
【
図11】狭視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の断面模式図である。
【
図12】狭視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の平面模式図である。
【
図13】広視野角モードで白表示とした場合の一絵素の断面模式図である。
【
図14】広視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の断面模式図である。
【
図15】液晶パネルが有する一つの表示単位の一例を示した平面模式図である。
【
図16】ソフトベールビュー機能によりカラー表示を行う場合のカラー素子の一例を示した平面模式図である。
【
図17】ソフトベールビューパターンを表示する場合の表示方法を模式的に示したブロック図である。
【
図18】カラー素子の表示パターンの一例を示した平面模式図である。
【
図19】カラー素子の表示パターンの他の一例を示した平面模式図である。
【
図21】液晶パネルの表示画面を法線方向から観察した場合の模式図である。
【
図22】液晶パネルの表示画面を225°方位から観察した場合の模式図である。
【
図23】シアンのストライプを表示する場合のカラー素子の配置を示した液晶パネルの平面模式図である。
【
図24】白のストライプを表示する場合のカラー素子の配置を示した液晶パネルの平面模式図である。
【
図25】黒のストライプを表示する場合のカラー素子の配置を示した液晶パネルの平面模式図である。
【
図26】液晶表示装置の正面コントラストを比較したグラフである。
【
図27】広視野角モードにおけるモード効率を示したグラフである。
【
図28】実施例1に係る液晶表示装置の広視野角モードにおける一絵素のシミュレーション図である。
【
図29】比較例1に係る液晶表示装置の広視野角モードにおける一絵素のシミュレーション図である。
【
図30】実施例1に係る液晶表示装置の狭視野角モードのシミュレーション図である。
【
図31】実施例1に係る液晶表示装置の広視野角モードのシミュレーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0028】
本発明の実施形態に係る液晶表示装置は、液晶パネルと、制御回路とを具備し、上記液晶パネルは、面内方向にマトリクス状に配置された複数の絵素を含み、アクティブマトリクス基板と、液晶分子を含有する液晶層と、カラーフィルタ基板とをこの順に有し、上記アクティブマトリクス基板は、第一基板と、絶縁層を介して積層された第一電極と上記絵素毎に配置された第二電極とを有し、上記カラーフィルタ基板は、第二基板と、カラーフィルタと、第三電極とを有し、上記第一電極及び上記第二電極のいずれか一方は、上記複数の絵素を跨いで電気的に結合して配置され、上記複数の絵素には、それぞれ、光が上記液晶パネルを透過するよう構成された光学的開口部が設けられ、上記第三電極は、平面視において上記光学的開口部の少なくとも一部と重畳せず、電気的に結合して配置され、上記制御回路は、上記第三電極への交流電圧の印加及び定電圧の印加を切り換える制御を行う。
【0029】
以下に図面を用いて、実施形態に係る液晶表示装置について説明する。
図1は、実施形態に係る液晶表示装置を例示した一絵素の断面模式図である。
図2は、実施形態に係る液晶表示装置の第一例を示した平面模式図である。
図1は、
図2のX-X´線での断面図である。本明細書中、「絵素」とは、後述する
図2に示したような、アクティブマトリクス基板10上に配置される互いに隣接する2本のゲート配線1と互いに隣接する2本のソース配線2とに囲まれた領域を指す。本明細書中、「電気的に結合して配置される」とは、ある電極が配置された範囲において電気的に分断されず、上記電極全体に所望の電圧が印加されるように配置されていることをいう。
【0030】
図1に示したように、液晶パネル100は、アクティブマトリクス基板10と液晶層20とカラーフィルタ基板30とをこの順に有する。本明細書中、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより近い側を「観察者側(前面側)」ともいい、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより遠い側を「背面側」ともいう。
【0031】
アクティブマトリクス基板10は、第一基板11と、絶縁層13を介して積層された第一電極12と第二電極14とを有する。第一電極12と第二電極14とは絶縁層13を介して積層されており、FFS(Fringe Field Switching)型の電極構造を構成する。絶縁層13の材料としては、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物等の無機材料が挙げられる。
【0032】
第一電極12は、ベタ電極であることが好ましい。第一電極12は、複数の絵素毎に配置されてもよく、複数の絵素で共通して配置されてもよく、絵素の境界に関わらず表示領域全体に渡って形成されてもよい。上記ベタ電極とは、少なくとも平面視において絵素の光学的開口部と重畳する領域に、スリットや開口が設けられていない電極をいう。第一電極12の材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料が挙げられる。
【0033】
第二電極14は、絵素毎に配置される。第二電極14は、スリット又は開口が設けられることが好ましい。例えば、
図2に示したように、線状の電極部分14aに囲まれた開口14bが設けられる構造が挙げられる。第二電極14の材料としては、例えば、ITO、IZO等の透明導電材料が挙げられる。第二電極14は、例えば、TFT3が備える半導体層を介して対応するソース配線2と電気的に接続される。
【0034】
図2に示したように、第一電極12及び第二電極14のいずれか一方は、上記複数の絵素を跨いで電気的に結合して配置される。上記複数の絵素を跨ぐとは、複数の絵素の境界を越えて上記複数の絵素と重畳するように配置されることをいう。上記複数の絵素を跨いで電気的に結合することで、第一電極12及び第二電極14のいずれか一方に、上記複数の絵素に対して、共通した定電圧を印加することができる。
【0035】
液晶パネル100は、面内方向にマトリクス状に配置された複数の絵素70を含む。複数の絵素70には、それぞれ、光が液晶パネル100を透過するよう構成された光学的開口部が設けられる。上記光学的開口部は、
図2に示した絵素70の内側に太線で囲まれた領域である。液晶パネル100が透過型である場合には、上記光学的開口部は、液晶パネル100の背面から出射された光を液晶パネル100の前面に向かって透過する。液晶パネル100が反射型である場合には、上記光学的開口部は、液晶パネル100の外部から入射される入射光、及び、上記入射光が液晶パネル100の内部で反射され、液晶パネル100の外部に向かって出射される反射光を透過する。なお、上記光学的開口部は、平面視において、例えば、偏光板、カラーフィルタ等の透過性を有する部材と重畳していてもよい。
【0036】
図1及び
図2に示したように、アクティブマトリクス基板10は、第一基板11上に、互いに平行に延設された複数のゲート配線1と、絶縁膜を介して各ゲート配線1と交差する方向に互いに平行に延設され複数のソース配線2とを備える。複数のゲート配線1及び複数のソース配線2は、全体として格子状に形成されている。ゲート配線1とソース配線2との交点にはスイッチング素子として、薄膜トランジスタ3(TFT:Thin Film Transistor)が配置される。ゲート配線1及びソース配線2の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、モリブデン、クロム、これらの合金等の金属材料が挙げられる。
【0037】
第一基板11及び後述する第二基板31としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート等の樹脂基板、ガラス基板等を用いることができる。
【0038】
液晶層20は、液晶分子21を含有する。液晶分子21は、下記式で定義される誘電率異方性(Δε)が正の値を有するもの(ポジ型)が好ましい。また、液晶分子21は、電圧が印加されていない状態(電圧無印加状態)で、ホモジニアス配向するものが好ましい。電圧無印加状態における液晶分子21の長軸の方向は、液晶分子の初期配向の方向ともいう。上記電圧無印加状態とは、液晶分子の閾値未満の電圧を含む。
Δε=(液晶分子の長軸方向の誘電率)-(液晶分子の短軸方向の誘電率) (L)
【0039】
カラーフィルタ基板30は、第二基板31と、カラーフィルタ32と、第三電極33とを有する。カラーフィルタ基板は、更に、黒色樹脂からなるブラックマトリクスを有してもよい。上記ブラックマトリクスとしては、特に限定されず、液晶表示装置の分野で通常用いられるものを使用することができる。
【0040】
カラーフィルタ32は、液晶表示装置100を前面側から観察した場合に、上記光学的開口部と重畳するように絵素70毎に配置される。カラーフィルタ32は、例えば、赤色のカラーフィルタ32R、緑色のカラーフィルタ32G及び青色のカラーフィルタ32Bを含む。例えば、カラーフィルタ32は、液晶表示装置100の列方向又は列方向に、同色のカラーフィルタが連続して形成されていてもよい。このような場合でも、液晶表示装置100を前面側から観察すると、第三電極33、ブラックマトリクス等により遮光されるため、カラーフィルタ32は上記光学的開口部と重畳するように絵素70毎に配置されている。カラーフィルタ32は、誘電体層であることが好ましい。
【0041】
図2に示したように、第三電極33は、平面視において上記光学的開口部の少なくとも一部と重畳しない。そして電気的に結合して配置される。第三電極33が電気的に結合して配置されることで、第三電極33と重畳する複数の絵素に対して、共通した電圧を印加することができる。第三電極33が平面視において上記光学的開口部の少なくとも一部と重畳しないことで、広視角モードで表示を行う際に、絵素の開口部において縦電界が作用し難い為、高い透過率とコントラストを得ることができる。
【0042】
第三電極33は、平面視において上記光学的開口部の全てと重畳しない構成とすることも可能である。第三電極33は、平面視において上記光学的開口部の周囲に配置されてもよいし、上記光学的開口部の外縁から内側に延伸して上記光学的開口部の一部と重畳していてもよい。上記光学的開口部の周囲とは、液晶パネル100の行方向及び列方向に隣接する光学的開口部間の領域をいう。第三電極33は、平面視において少なくとも上記光学的開口部の一部と重畳しなければよく、上記光学的開口部の少なくとも一部を囲むように配置されてもよいし、少なくとも行方向又は列方向に隣接する上記光学的開口部間に配置されていてもよい。
【0043】
実施形態に係る液晶表示装置は、インセルタッチパネルを備えることも可能である。カラーフィルタ基板に対向電極としてベタ電極を用いた場合には、タッチパネルに指で触れた場合に、上記ベタ電極が指とタッチパネルとの間に静電容量が形成されることを阻害するが、実施形態に係る液晶表示装置は、第三電極33が配置されていない上記光学的開口部から、指とタッチパネルとの静電容量を感知することができるため、インセルタッチパネルを備えることができる。
【0044】
第三電極33は、導電性を有していればよく、遮光性を有してもよい。遮光性を有する導電材料を用いた場合には、ブラックマトリクスとしての機能を兼ねることができるため、製造プロセスの負荷を低減することができる。
【0045】
第三電極33は、アルミニウム、モリブデン、クロム、チタン又はこれらの合金を含む単層又は複層の遮光電極であってもよい。これらの金属は、ITO等の透明電極の電気伝導度よりも高い電気伝導度を有しているため、第三電極としてカラーフィルタ基板に配置し、狭視野角モードで白表示を行った場合に、第三電極に印加するAC電圧(交流電圧)の波形のなまり、鈍化等に起因する電圧降下が抑制され、結果、パネルの画面内での光勾配(輝度傾斜)を抑制できるため、表示品位を向上させることができる。
【0046】
上記第三電極は、透明電極であってもよい。上記透明電極の材料としては、例えば、ITO、IZO等の透明導電材料が挙げられる。上記第三電極が透明電極である場合には、上記第三電極がブラックマトリクスと重畳して配置されることが好ましい。
【0047】
図3~
図5は、ともに実施形態に係る液晶表示装置を示した平面模式図であり、
図3は第二例、
図4は第三例、
図5は第四例を示す。
図2に示した第一例のように、第三電極33は、平面視において上記光学的開口部の少なくとも一部を囲むように配置されてもよい。この場合、第三電極33は遮光性を有することがより好ましく、第三電極33がブラックマトリクスに相当する遮光部材の機能を兼ねることができる。
【0048】
第三電極33は、平面視において、ゲート配線1及びソース配線2の少なくとも一方と重畳してもよい。
図3に示した第二例のように、第三電極33は、ゲート配線1と重畳してもよいし、
図4に示した第三例のように、ソース配線2と重畳してもよいし、
図5に示した第四例のように、ゲート配線1とソース配線2の両方と重畳してもよい。
【0049】
上記カラーフィルタ基板は、更に、平面視において光学的開口部の周囲に配置された黒色樹脂からなるブラックマトリクス34を有してもよい。ブラックマトリクス34は、上記光学的開口部の少なくとも一部を囲むように配置されてもよいが、少なくとも、行方向又は列方向に隣接する上記光学的開口部間に配置されていればよい。上記第三の電極は、上記ブラックマトリクスと重畳してもよい。
図3~
図5では、第三電極33が、上記光学的開口部を囲むように配置されたブラックマトリクス34と、平面視において重畳するように配置された例を示した。
【0050】
以下に
図1及び
図6~
図8を用いてカラーフィルタ基板の断面構造について説明する。
図6~
図8は、ともに実施形態に係る液晶表示装置のカラーフィルタ基板を示した平面模式図であり、
図6は変形例1、
図7は変形例2、
図8は変形例3を示す。
図6~
図8は、第三電極及び/又はブラックマトリクスの構成が異なる点以外は、
図1に示した液晶表示装置と同様の構成を有する。
【0051】
図6~
図8では、液晶層20の図示を省略しているが、ともに
図1に示したように、第三電極33と液晶層20との間に誘電体層50を有してもよい。誘電体層50の誘電率εは、例えばε=3~4であってもよい。誘電体層の厚みは、0.5μm以上、4μm以下であることが好ましい。誘電体層の厚みが4μmを超えると、視差混合が生じ表示品位が低下することがある。なお、カラーフィルタ32が誘電体層であり、第三電極33、カラーフィルタ32、誘電体層50の順で積層される場合には、上記誘電体層の厚みは、カラーフィルタ32と誘電体層50の厚みの合計を意味する。
【0052】
図1に示したように、第二基板31、第三電極33、カラーフィルタ32及び誘電体層50の順に配置されてもよい。また、カラーフィルタ32は、誘電体層であり、第二基板31、第三電極33、カラーフィルタ32、及び、液晶層20の順に配置されてもよい。カラーフィルタ32が誘電体層である場合も、更に、カラーフィルタ32と液晶層20との間に誘電体層50を有してもよい。
図1に示した構造は、以下に説明する変形例1~3と比べて製造が容易であり、プロセス負荷が小さい。また、後述する変形例2及び3よりも、第三電極33と第二電極14との距離が長く、第三電極33と第二電極14との間に形成される縦電界の強度が弱いことから、後述する広視野角モードで表示を行った場合のコントラストを高くすることができる。
【0053】
図6に示した変形例1のように、第二基板31、第三電極33及びブラックマトリクス34の順で配置されてもよい。変形例1は、
図1の場合と同様に、変形例2及び3よりも、第三電極33と第二電極14との距離が長いため、後述する広視野角モードで表示を行った場合のコントラストを高くすることができる。また、カラーフィルタ32、ブラックマトリクス34等の樹脂層上に第三電極33を形成する変形例3及び4と比べて、第三電極33を耐熱性に優れた第二基板31上に形成できるため、第三電極33の形成条件の自由度が増し、より導電性あるいは透過率性に優れた電極を形成することができる。
【0054】
図7に示した変形例2のように、第二基板31、ブラックマトリクス34及び第三電極33の順で配置されてもよい。変形例2は、液晶表示装置100を観察者側から見たときに、第三電極の表面での反射が抑制されるため、表示品位を向上させることができる。
【0055】
図8に示した変形例3のように、第二基板31、カラーフィルタ32、第三電極33及び誘電体層50の順に配置されてもよい。変形例3は、上記
図1に示した構成は、第三電極33と、第一電極12及び第二電極14との距離が近いため、対向電圧の絶対値が小さくしても液晶層20に充分な電界を印加することができる。そのため、後述する狭視野角モードで表示した場合に、変形例1及び2よりも、消費電力を低くすることができる。
【0056】
アクティブマトリクス基板10と液晶層20との間には第一の配向膜41が配置され、カラーフィルタ基板30と液晶層20との間には第二の配向膜42が配置されてもよい。第一の配向膜41及び第二の配向膜42は、電圧無印加状態における液晶分子21の初期配向方位を制御する。
【0057】
上記第一の配向膜及び上記第二の配向膜は、水平配向膜であることが好ましい。水平配向膜は、配向膜の表面に対する、液晶分子の初期(液晶層への電圧無印加状態)のプレチルト角度を、0°から1°とするものが好ましい。一方で、初期のプレチルト角度を、例えば、3°~15°の範囲とすることで、液晶パネルを観察者側から視認した時の視野角特性を、液晶パネルの上下方向に対して非対称にすることができる。具体的には、方位角90°で基板平面に平行な状態から鉛直方向に+3°~+15°立ち上がる場合(プレチルト角+3°~+15°)、上方位に対して狭視野角となる。他方、方位角270°で基板平面に平行な状態から鉛直方向に+3°~+15°立ち上がる場合(プレチルト角+3°~+15°)、下方位に対して狭視野角となる。
【0058】
また、アクティブマトリクス基板10の液晶層20に対して反対側、及び、カラーフィルタ基板30の液晶層20に対して反対側には、第一の偏光板61、第二の偏光板62がそれぞれ配置されてもよい。第一の偏光板61の吸収軸61Aと第二の偏光板62の吸収軸62Aとは、互いに直交するようにクロスニコルに配置されていることが好ましい。第一の偏光板61及び第二の偏光板62は、直線偏光板であることが好ましい。
【0059】
実施形態の液晶表示装置は、上記液晶パネルの法線方向を含む狭い視野角の範囲から観察できる第一の画像を表示する第一の表示モード(狭視野角モードともいう)と、上記狭い視野角の範囲を含む広い視野角の範囲から上記第一の画像が観察できる第二の表示モード(広い視野角モードともいう)とを有する。なお、上記狭い視野角の範囲では、液晶パネルを斜め方位(方位角45°、135°、225°又は315°)からある極角で観察した場合に、コントラストが2より小さくなることが好ましい。上記極角は、例えば、液晶パネルの表面に対して、垂直な方向を極角0°とし、パネルの表面に対して水平な方向を極角90°とした場合に、60°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましく、30°以上であることが更に好ましい。上記広い視野角の範囲とは、上記狭い視野角の範囲の極角よりも、大きい極角の範囲をいう。
【0060】
図9は、第一の表示モードと第二の表示モードの表示方法を模式的に示したブロック図である。
図9に示したように、実施形態に係る液晶表示装置は、液晶パネル100と制御回路200を具備する。液晶パネル100は、第一電極12に電圧を印加する第一電極駆動回路101、第二電極14に電圧を印加する第二電極駆動回路102、及び、第三電極33に電圧を印加する第三電極駆動回路103を有してもよい。制御回路200は、画像信号合成回路201、表示モード選択回路202及び第三電極印加電圧切替回路203を有してもよい。制御回路200は、第三電極33への交流電圧の印加及び定電圧の印加を切り換える制御を行う。
【0061】
画像信号合成回路201は、例えば、所望の画像を表示するための原画像信号211が入力され、入力された原画像信号211に応じた画像信号212を、第一電極駆動回路101と第二電極駆動回路102に対して出力する。
【0062】
表示モード選択回路202には、第一の表示モードと第二の表示モードとを切り替える表示モード切替信号213が入力される。第一の表示モードが選択された場合、表示モード選択回路202は、第三電極印加電圧切替回路203に対して、第一の表示モード選択信号214を出力する。第二の表示モードが選択された場合、表示モード選択回路202は、第三電極印加電圧切替回路203に対して、第二の表示モード選択信号215を出力する。
【0063】
第三電極印加電圧切替回路203は、入力された表示モード選択信号に応じて、第三電極駆動回路103に交流信号216又は定電圧信号217を入力し、第三電極33への交流電圧の印加及び定電圧の印加を切り換える。表示モード選択回路202から、第一の表示モード選択信号214が入力されると、第三電極印加電圧切替回路203は、交流信号216を第三電極駆動回路103に出力し、第三電極33に所定の交流電圧が印加される。表示モード選択回路202から、第二の表示モード選択信号215が入力されると、第三電極印加電圧切替回路203は、定電圧信号217を第三電極駆動回路103に出力し、第三電極33に所定の定電圧が印加される。
【0064】
以下に
図1及び
図9~
図14を用いて、第一の表示モードと第二の表示モードについて説明する。第一の表示モードを狭視野角モードといい、第二の広視野角表示モードをモードともいう。
図1は、狭視野角モードで白表示とした場合の一絵素の断面模式図でもある。
図10は、狭視野角モードで白表示とした場合の一絵素の平面模式図である。
図11は、狭視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の断面模式図である。
図12は、狭視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の平面模式図である。
図13は、広視野角モードで白表示とした場合の一絵素の断面模式図である。
図14は、広視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の断面模式図である。黒表示とは、最低輝度(0階調)となる表示状態をいい、白表示とは、最高輝度(255階調)となる表示状態をいう。
【0065】
上記液晶分子は、上記液晶層への電圧が印加されていない電圧無印加状態においてアクティブマトリクス基板10に対して水平に配向する。本明細書中、「水平」とは、液晶分子21のチルト角(プレチルト角を含む)が、アクティブマトリクス基板10又はカラーフィルタ基板30の表面に対して0°~5°であることを意味し、好ましくは0°~3°、より好ましくは0°~1°であることを意味する。液晶分子のチルト角は、液晶分子21の長軸が、アクティブマトリクス基板10の表面に対して傾斜する角度を意味する。
【0066】
狭視野角モードで白表示とする場合、例えば、上記制御回路は、第一電極12及び第二電極14のいずれか一方に対して定電圧(コモン電圧)を印加し、他方に対して上記コモン電圧とは異なる電位を印加する制御を行う。また、上記制御回路は、上記第三電極に対して交流電圧を印加する制御を行う。上記交流電圧の絶対値は、第一電極12及び第二電極14に印加される電圧の絶対値と異なることが好ましい。一例としては、第二電極14にコモン電圧が印加された場合、第一電極12には上記コモン電圧に対して4Vの交流電圧が印加され、第三電極33には上記コモン電圧に対して6Vの交流電圧が印加される。これにより、
図1に示したように、第一電極12と第二電極14との間にはフリンジ電界が形成され、第三電極33と第一電極12及び第二電極14との間には、液晶層20の厚み方向に対して斜め電界が形成される。その結果、液晶層20中には、上記フリンジ電界と上記斜め電界が合成された電界が形成されるため、液晶分子21は、第一電極12と第二電極14と上記第三電極33との間に形成された電界により、アクティブマトリクス基板10に対して角度をなしつつ配向方位を変化させる。
【0067】
液晶分子21が液晶層20の面内で回転して初期配向方位から変化することで、
図9に示したように、液晶分子21の長軸方向が第一の偏光板の吸収軸61A及び第二の偏光板の吸収軸62Aと角度を成し、液晶パネルの背面からの光を透過することで白表示を行う。その結果、狭い視野角の範囲からは第一の画像を観察することができる。一方で、
図1に示したように、液晶分子21はアクティブマトリクス基板に対して角度をなすため、広い視野角の範囲から液晶パネルを観察した場合には、コントラストが極端に低くなる等の画像の変化が得られ上記第一の画像を観察し難くすることができる。
【0068】
狭視野角モードで黒表示とする場合、例えば、上記制御回路は、第二電極14及び第一電極12に対してコモン電圧を印加する制御を行う。また、上記制御回路は、上記第三電極に対して交流電圧を印加する制御を行う。上記交流電圧の絶対値は、上記コモン電圧の絶対値と異なることが好ましい。一例としては、第二電極14にコモン電圧が印加された場合、第一電極12にもコモン電圧(コモン電圧に対して0Vの電圧)が印加され、第三電極33には上記コモン電圧に対して6Vの交流電圧が印加される。これにより、
図10に示したように、第三電極33と、第一電極12及び第二電極14との間には斜め電界が形成される。液晶分子21は、上記斜め電界により、アクティブマトリクス基板10に対して角度をなす。
【0069】
図12に示したように、液晶層20の面内で液晶分子21の配向方位は変化しないため、液晶パネルの背面からの光を透過せず黒表示を行う。
図10に示したように、液晶分子21はアクティブマトリクス基板に対して角度をなすため、広い視野角の範囲から液晶パネルを観察した場合には、狭い視野角の範囲から観察される黒表示よりも白っぽい表示として観察される。
【0070】
広視野角モードで白表示とする場合、例えば、上記制御回路は、第一電極12及び第二電極14のいずれか一方に対して定電圧(コモン電圧)を印加し、他方に対して上記コモン電圧とは異なる電位を印加する制御を行う。また、上記制御回路は、第三電極33に対して第一電極12又は第二電極14と共通の定電圧(コモン電圧)を印加する制御を行う。一例としては、第二電極14にコモン電圧が印加された場合、第一電極12には上記コモン電圧に対して4Vの交流電圧が印加され、第三電極33には第一電極12と共通のコモン電圧が印加される。これにより、
図13に示したように、第一電極12と第二電極14との間にはフリンジ電界が形成される。一方で、狭視野角モードとは異なり、液晶層20の厚み方向の電界は小さい。そのため、液晶分子21は、第一電極12と第二電極14との間に形成される電界により、アクティブマトリクス基板10に対して平行に配向しつつ配向方位を変化させる。なお、広視野角モードで白表示とした場合の一絵素の平面模式図は、
図10と同様であるため説明は省略する。
【0071】
広視野角モードで黒表示とする場合は、例えば、上記制御回路は、第二電極14及び第一電極12に対してコモン電圧を印加する制御を行う。また、上記制御回路は、上記第三電極に対しても第一電極12又は第二電極14と共通の定電圧を印加する制御を行う。
図14に示したように、液晶層20中に電界が発生しないため、液晶分子21は、初期配向方位に配向する。上記初期配向方位は、アクティブマトリクス基板10に対して平行であり、かつ平面視において第一の偏光板61の吸収軸61A又は第二の偏光板62の吸収軸62Aと平行であることが好ましい。なお、広視野角モードで黒表示とした場合の一絵素の断面模式図は、
図12と同様であるため説明は省略する。
【0072】
上述した狭視野角モードの白表示と広視野角モードの白表示とは、第三電極に電圧を印加することで切り替えることができる。同様に、狭視野角モードの黒表示と広視野角モードの黒表示とは、第三電極に電圧を印加することで切り替えることができる。中間調表示も同様である。狭視野角モードと広視野角モードとは、第三電極への交流電圧の印加の有無で切り替えることができる。
【0073】
実施形態に係る液晶表示装置では、上述ようのように、第二の表示モード(広視野角モード)から第一の表示モード(狭視野角モード)に切り替えることで、液晶パネルの左右方向から観察した場合に高いプライバシー性が得られる。更に、実施形態に係る液晶表示装置は、上記表示モードの切り替えに加え、後述するソフトベールビュー機能と組み合わせることにより液晶パネルの左右方向に加え、斜め方向から観察した場合に更に高いプライバシー性が得られることを見出した。第一の表示モードのみでは左右方位に狭視野角効果が出るが、斜め45度方位からも狭視野角効果が得られるものの限定的である。逆に、特許文献2に記載されたような、ソフトベールビュー機能のみでは、斜め45度方位では狭視野角効果が出るが、左右方位では狭視野角効果は限定的である。これらを組み合わせることで相補的となり、左右方位、45度方位ともに優れた狭視野角効果が発揮される。この知見に基づいた発明について以下記載する。
【0074】
なお、上記上下方向とは、所望の画像を表示した液晶パネルの右手方向を0°とし、反時計回りに角度が増す場合に、90°方位及び270°方位をいい、左右方向とは0°方位及び180°方位をいう。斜め方位とは、45°方位、135°方位、225°方位及び315°方位から観察した場合をいう。
【0075】
以下に
図15~
図20を用いてソフトベールビュー機能により画像を表示する方法の一例を説明する。
図15~
図20では、
図1等に示した絵素70を模式的に示した。
図15は、液晶パネルが有する一つの表示単位の一例を示した平面模式図である。
図16は、ソフトベールビュー機能によりカラー表示を行う場合のカラー素子の一例を示した平面模式図である。
【0076】
図15に示したように、液晶パネル100は、ソフトベールビュー機能により画像を表示する複数の表示単位72を有する。表示単位72は、互いに隣接して配置され、奇数行から選ばれた第一の絵素70と偶数行から選ばれた第二の絵素71とからなる一対の絵素を含む。第一の画素70及び第二の画素は、
図1に示したように、それぞれ一つの絵素として捉えてもよいし、
図16に示したように、第一の赤絵素70R、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bの組み合わせを第一の画素70として捉え、第二の赤絵素71R、第二の緑絵素71Gお及び第二の青絵素71Bの組み合わせを第一の画素70として捉えてもよい。なお、通常の表示方法でカラー表示を行う場合には、赤色、緑色及び青色を含むそれぞれの画素を独立させて駆動させることでカラー表示を行うことができる。通常のカラー表示をおこなう場合には、ソフトベールビュー機能によりカラー表示を行う場合の2倍の解像度で表示を行うことができる。
【0077】
カラー表示を行う場合は、液晶表示パネル100は、第一の赤絵素70Rと第二の赤絵素71Rとを含む赤色の表示単位72R、第一の緑絵素70Gと第二の緑絵素71Gとを含む緑色の表示単位72G、及び、第一の青絵素70Bと第二の青絵素71Bとを含む青色の表示単位72Bとを含むことが好ましい。第一の赤絵素70R及び第二の赤絵素71Rは、それぞれ光学的開口部において赤色のカラーフィルタ32Rと重畳する。第一の緑絵素70G及び第二の緑絵素71Gは、それぞれ光学的開口部において緑色のカラーフィルタ32Gと重畳する。第一の青絵素70B及び第二の青絵素71Bは、それぞれ光学的開口部において青色のカラーフィルタ32Bと重畳する。
【0078】
ソフトベールビュー機能により画像を表示する方法としては、例えば、第一の画像として表示したい原画像の輝度のデータ値をD1とすると、D1を互いに等しい二つのデータ値D2及びD3に分割し、第一の絵素70又は第二の絵素71のいずれか一方には、D1+D2のデータ値を入力し、他方にはD1-D3のデータ値を入力する。液晶表示パネルを狭視野角の範囲から観察した場合には、第一の絵素70の輝度と第二の絵素71の輝度とが空間的に平均化され、原画像の輝度として視認される、一方で、広い視野角の範囲から観察した場合には、D1+D2の輝度、又は、D1-D3の輝度として視認される。
【0079】
以下に、
図17を用いて、ソフトベールビューパターンを表示する場合の表示方法を説明する。
図17は、ソフトベールビューパターンを表示する場合の表示方法を模式的に示したブロック図である。制御回路200は、上記第一の表示モードにおいて、上記第一の画像とは異なる第二の画像が、上記広い視野角の範囲から観察されるように、上記第一の絵素と上記第二の絵素とに異なる画像信号を入力する。このようは表示方法をソフトベールビュー機能ともいう。ソフトベールビュー機能による表示は、第一の表示モード(狭視野角モード)と組み合わせることで、プライバシー性をより高めることができることから、前述の表示モード選択回路202から第一の表示モード選択信号214が入力された場合に、データベース204がソフトベールビューパターン画像信号219を画像信号合成回路201に出力することが好ましい。
【0080】
図17に示したように、制御回路200は、更に、ソフトベールビューパターンに関する情報が格納されたデータベース204を有してもよい。ソフトベールビュー表示切替信号218が入力されると、データベース204は、ソフトベールビューパターン画像信号219を画像信号合成回路201に出力する。画像信号合成回路201は、原画像信号211とソフトベールビューパターン画像信号219とを合成した画像信号212を、第一電極駆動回路101及び第二電極駆動回路102に出力する。
【0081】
例えば、第二電極駆動回路102により第二電極14に対して共通電位を印加される場合は、第一電極駆動回路101により第一電極12に対しては、広い視野角の範囲から上記第二の画像が観察されるように、第一の絵素70及び第二の絵素71に対応する第一電極12に対してそれぞれ異なる電圧が印加される。このような場合、第一電極12は絵素毎に設けられていることが好ましい。一方で、第一電極駆動回路101により第一電極12に対して共通電位を印加される場合は、第二電極駆動回路102により第二電極14に対しては、広い視野角の範囲から上記第二の画像が観察されるように、第一の絵素70及び第二の絵素71に対応する第二電極14に対してそれぞれ異なる電圧が印加される。
【0082】
図18は、カラー素子の表示パターンの一例を示した平面模式図である。
図19は、カラー素子の表示パターンの他の一例を示した平面模式図である。第一の絵素70が配置された行を奇数行、第二の絵素71が配置された行を偶数行ともいう。
図18に示したように、第一の赤絵素70R、第二の緑絵素71G及び第二の青絵素71Bを黒表示とし、第二の赤絵素71R、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bを白表示とした場合、225°方位から観察すると、第二の赤絵素71Rに存在する液晶分子は、リタデーションが高い液晶分子の短軸方向から観察することになるため赤色が観察されるが、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bに存在する液晶分子は、リタデーションが低い液晶分子の長軸方向から観察することになるため対応する色は観察されない。その結果、赤色が視認される。一方で、315°方位から観察すると、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bに存在する液晶分子は、液晶分子の短軸方向から観察することになるため、青色と緑色の混色であるシアンが視認されるが、第二の赤絵素71Rに存在する液晶分子は長軸方向から観察することになるため対応する色は観察されない。その結果、シアンが視認される。
図19に示したように、第一の赤絵素70R、第一の緑絵素70G及び第二の青絵素71Bを黒表示とし、第二の赤絵素71R、第二の緑絵素71G及び第一の青絵素70Bを白表示とした場合、225°方位から観察すると、赤色と緑色の混色である黄色が視認され、315°方位から観察すると青色が視認される。
【0083】
図18に示したカラー素子の表示パターンと、
図19に示したカラー素子の表示パターンとを組み合わせることで、液晶パネルの法線方向(正面)から観察した場合には、白表示が観察される。
図20は、液晶パネルのγカーブの一例である。
図20に示したように、中間調の範囲では、奇数行と偶数行側とで視認される映像の差が大きい。このような奇数行側/偶数行側の視認性の違いが充分に得られるような中間調の範囲で、ソフトベールビューパターンを作成することが好ましい。
【0084】
実施形態に係る液晶表示装置は、第三電極33が配置されていることで、中間調表示を行う場合には、第一電極12及び/又は第二電極14と、第三電極33との間に斜め電界が発生して、アクティブマトリクス基板10に対して液晶分子が角度を成すため、斜め方向だけではなく、左右方向からのγカーブにおいても同様に視認性の違いが充分に得られ、左右方向からもソフトベールビューパターンを視認することができる。
【0085】
上記第二の画像は、ソフトベールビューパターンであることが好ましい。上記ソフトベールビューパターンとは、上記第一の画像に重ねて表示され、上記第一の画像を視認し難くする表示画像である。ソフトベールビューパターンを表示することで、よりプライバシー性を向上させることができる。上記ソフトベールビューパターンとしては、特に限定されないが、ストライプ、市松模様等の幾何学模様、文字、画像等を表示することができる。
【0086】
以下に
図21~
図25を用いて、ソフトベールビューパターンの具体例を説明する。
図23~
図25では、
図1等に示した絵素70を模式的に示した。
図21は、液晶パネルの表示画面を法線方向から観察した場合の模式図である。
図22は、液晶パネルの表示画面を225°方位から観察した場合の模式図である。液晶パネルの表示画面を法線方向から観察した場合には、
図21に示したように、第一の画像として、封筒の画像と「Email account」の文字が視認される。一方で、液晶パネルの表示画面を225°方位から観察した場合には、第一の画像に重なって、ソフトベールビューパターンとして
図22に示したようなストライプパターンが視認される。その結果、第一の画像が視認しにくくなり、斜め方向からのプライバシー性を向上させることができる。
【0087】
上記ストライプパターンは、例えば、225°方位から観察した場合に、シアン、白、黒のストライプが視認され、315°方位から観察した場合には、赤、黒、白のストライプが視認される。
【0088】
図23は、シアンのストライプを表示する場合のカラー素子の配置を示した液晶パネルの平面模式図である。
図23に示したように、第一の赤絵素70R、第二の緑絵素71G及び第二の青絵素71Bを通常表示とし、第二の赤絵素71R、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bを黒表示としたカラー素子73を液晶パネルの行方向及び列方向に配置する。このように配置することで、第二の画像として、225°方位から観察した場合にシアンのストライプを表示し、315°方位から観察した場合に赤のストライプを表示することができる。上記通常表示とは、上記第一の画像を表示するための表示である。
【0089】
図24は、白のストライプを表示する場合のカラー素子の配置を示した液晶パネルの平面模式図である。白のストライプは、
図24に示したように、第一の赤絵素70R、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bを黒表示とし、第二の赤絵素71R、第二の緑絵素71G及び第二の青絵素71Bを通常表示としたカラー素子73を液晶パネルの行方向及び列方向に配置する。このように配置することで、225°方位から観察した場合に白のストライプを表示することができ、315°方位から観察した場合に黒のストライプを表示することができる。
【0090】
図25は、黒のストライプを表示する場合のカラー素子の配置を示した液晶パネルの平面模式図である。黒のストライプは、
図25に示したように、第一の赤絵素70R、第一の緑絵素70G及び第一の青絵素70Bを通常表示とし、第二の赤絵素71R、第二の緑絵素71G及び第二の青絵素71Bを黒表示としたカラー素子73を液晶パネルの行方向及び列方向に配置する。このように配置することで、225°方位から観察した場合に黒のストライプを表示することができ、315°方位から観察した場合に白のストライプを表示することができる。
【0091】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
実施例1に係る液晶表示装置は、
図1及び
図2に示した構成を有する。アクティブマトリクス基板は、FFS型の電極構成を有し、第一電極としてITOからなるベタ電極を用い、絶縁層として厚さ110μmの窒化シリコン膜を用い、第二電極として絵素毎に配置されたITO電極を用いた。第二電極は、開口が設けられた電極を用いた。液晶分子は、ポジ型の液晶材料を用いた。
カラーフィルタ基板は、第二基板、第三電極及び誘電体層であるカラーフィルタをこの順に有し、カラーフィルタ上に厚さ2μmの誘電体層(オーバーコート層)を配置した。第三電極としては、モリブデンからなる単層の遮光電極を用い、複数の絵素の光学的開口部を囲むように配置した。実施例1では、第三電極を対向電極ともいう。
【0093】
(比較例1)
比較例1に係る液晶表示装置は、対向電極として、第三電極の代わりに第二基板全体を覆う平面状のITO電極を用いた点以外は、実施例1と同様の構成を有する。即ち、比較例1のカラーフィルタ基板は、第二基板、カラーフィルタ、第一のオーバーコート層、第三電極、第二のオーバーコート層の順に積層されている。
【0094】
(比較例2)
比較例2に係る液晶表示装置は、対向電極として、第三電極の代わりに第二基板全体を覆う平面状のITO電極を用いた点、カラーフィルタ上に誘電体層を配置しなかった点以外は、実施例1と同様の構成を有する。
【0095】
<コントラストの比較>
実施例1、比較例1及び2に係る液晶表示装置のそれぞれについて、以下の方法で、表示画面の法線方向から観察した場合の黒表示(0階調)時の輝度と白表示(255階調)時の輝度とを測定した。輝度の測定は、トプコンテクノハウス社製の「SR-UL1R」を用いて行った。
【0096】
白表示(255階調)時の輝度は、第二電極に対してコモン電圧を印加し、第一電極に上記コモン電圧に対して4Vの交流電圧を印加した状態で、対向電極に対して印加する電圧(対向電圧ともいう)を、上記コモン電圧に対して0Vから6Vまで上昇させ、0.5V又は1V毎に輝度を測定した。黒表示(0階調)時の輝度は、第二電極及び第一電極に対してコモン電圧を印加した状態で、対向電圧を、上記コモン電圧に対して0Vから6Vまで上昇させ、0.5V又は1V毎に輝度を測定した。
【0097】
実施例1、比較例1及び2に係る液晶表示装置のそれぞれについて、対向電圧毎に下記式(1)により液晶表示装置のコントラスト(CR)を算出し、正面コントラストの比較行った。
CR=白表示(255階調)時の輝度/黒表示(0階調)時の輝度 (1)
【0098】
図26は、液晶表示装置の正面コントラストを比較したグラフである。対向電圧0Vが広視野角モードに対応し、対向電圧4~6Vが狭視野角モードに対応する。広視野角モードでの目標CRを1000とすると、
図26に示したように、実施例1では、対向電圧が0Vの時のCRが927(実測値)であり、目標値に近い値が得られた。一方で、広視野角モードでの比較例1のCRは623(実測値)、比較例2のCRは277(実測値)であった。なお、比較例1では、第二のオーバーコート層(誘電体層)が、対向電圧を0Vとした広視野角モードにおいて、アクティブマトリクス基板側の電極と対向電極と間の縦電界を抑制する層として機能するため、第二のオーバーコート層を形成しなかった比較例2と比べて、正面CRが向上したと考えられる。
【0099】
<視差混色の検討>
実施例1では、カラーフィルタ基板は、第二基板、第三電極、カラーフィルタ、オーバーコート層の順に積層されている。ここで、第三電極と第一あるいは第二電極との間の電界を弱めるためには、カラーフィルタ層とオーバーコート層との合計は例えば4μm必要である。カラーフィルタの厚みを3μmとすると、オーバーコートの厚みは1μmのみであるため、カラーフィルタ層の表面から液晶層までの距離は1μmに過ぎず、斜めから液晶パネルを視認したときの視差混色が起こりにくかった。一方で、比較例1では、カラーフィルタの上に、第一のオーバーコート層、対向電極、第二のオーバーコート層を有する。対向電極と液晶層との間は電界を弱めるために例えば4μm必要であるため、第二のオーバーコート層の層厚は4μmとなる。そのため、カラーフィルタ層の表面から液晶層までの距離は、第二のオーバーコート層の厚みである4μmに第一のオーバーコート層の厚みとして例えば1μmを加えて5μmとなる。結果、斜めから液晶パネルを視認したときの視差混色が観察された。
【0100】
<広視野角モードにおけるモード効率、CRの検討>
実施例1及び比較例1に係る液晶表示装置について、以下の方法で、広視野角モードにおけるモード効率を比較した。モード効率は、下記式(2)によって表される。
モード効率(%)=(クロスニコルでの最大輝度)/(パラレルニコルでの輝度)×100 (2)
ここで、上記クロスニコルでの最大輝度とは、対向電圧を0Vとした場合、液晶パネルに対して一対の偏光板をクロスニコルに配置した際の最大輝度である。上記パラレルニコルでの輝度とは、液晶パネルに対して一対の偏光板をパラレルニコルに配置した際の電圧無印加状態における輝度である。液晶表示装置の輝度は、液晶表示装置を白色光源上に配置し、LCDマスター3D(シンテック社製)を用いて見積もった。更に、実施例1及び比較例1に係る液晶表示装置について、広視野角モードにおける正面CRの計算を行った。正面CRの計算では、実施例1は1000程度、比較例1は700程度の値が確認できており、前述した実施例1のCR(実測値)=927、比較例1のCR(実測値)=623に近い値を再現できている。
【0101】
図27は、広視野角モードにおけるモード効率を示したグラフである。
図27に示したように、比較例1のモード効率の最高値は58%であったが、実施例1のモード効率の最高値は82%であった。
【0102】
実施例1では、第三電極33はカラーフィルタ32と重畳する絵素の開口部には配置されない部分を有するため、広視角モードで白表示を行う際に、絵素の開口部において縦電界が作用し難い為、対向電極にベタ電極を用いた比較例1及び2よりも、高い透過率とコントラストが得られたと考えられる。
【0103】
以下に、一絵素の透過率についてシミュレーションを行った。上記シミュレーションは、LCDマスター3D(シンテック社製)を用いて行った。実施例1比較例1ともに、透過率が最大となる電圧を印加した場合をシミュレーションした。
図28は、実施例1に係る液晶表示装置の広視野角モードにおける一絵素のシミュレーション図である。
図29は、比較例1に係る液晶表示装置の広視野角モードにおける一絵素のシミュレーション図である。
図28及び
図29中、色が濃いほど透過率が低く、白い部分は透過率が高いことを示す。
図29よりも
図28の方が白い領域が広いことから、実施例1に係る液晶表示装置の方が広視野角モードにおける輝度が高いことが確認された。このことからも、実施例1に係る液晶表示装置の方がモード効率が高いことが分かる。
【0104】
実施例1の第三電極(対向電極)は、開口部が設けられているため、対向電極に共通電位を印加した広視野角モードにおいて、絵素の光学的開口部に存在する液晶分子には、縦電界の影響が及びにくい。従って、アクティブマトリクス基板側でのフリンジ電界に起因する液晶分子の配向は、カラーフィルタ基板側に電極が形成されていない構成と似たような配向状態となるため、高いモード効率を有する。一方、比較例1は、対向電極に開口部がないベタ電極であるため、広視野角モードにおいて、絵素の光学的開口部に存在する液晶分子には、縦電界の影響がダイレクトに及んでしまう。比較例1では、アクティブマトリクス基板側でフリンジ電界を発生させると、同時に、縦電界も発生してしまうため、実効的なリタデーションが減じてしまい、結果的に、モード効率が低くなったと考えられる。
【0105】
<表示モードによる視野角の検討>
以下に、実施例1に係る液晶表示装置に関し、広視野角モードと狭視野角モードにおける視野角の範囲をシュミレーションした。上記シミュレーションは、LCDマスター3D(シンテック社製) を用いて行った。上記シミュレーションは、表示パネルを0°方位~360°方位からの観察した場合のコントラスト比を表したものである。
図30は、実施例1に係る液晶表示装置の狭視野角モードのシミュレーション図である。
図31は、実施例1に係る液晶表示装置の広視野角モードのシミュレーション図である。狭視野角モードでは、
図30に示したように、90°-270°方位でのコントラスト比が高いものの、他の方位から見た場合の輝度が低いことから、左右方向、斜め方向からは画像が視認され難いことが分かる。広視野角モードでは、
図31に示したように、90°-270°方位及び0°-180°方位のコントラスト比が高く、狭視野角モードよりも広い方位から画像を視認できることが分かる。以上のことから、第三電極への交流電圧の印加及び定電圧の印加を切り換えることで、狭視野角モードと広視野角モードとを切り替えられること確認された。
【符号の説明】
【0106】
1:ゲート配線
2:ソース配線
3:TFT
10:アクティブマトリクス基板
11:第一基板
13:絶縁層
12:第一電極
14:第二電極
14a:線状の電極部分
14b:開口
20:液晶層
21:液晶分子
30:カラーフィルタ基板
31:第二基板
32:カラーフィルタ
32B:青色のカラーフィルタ
32G:緑色のカラーフィルタ
32R:赤色のカラーフィルタ
33:第三電極
34:ブラックマトリクス
41:第一の配向膜
42:第二の配向膜
50:誘電体層
61:第一の偏光板
61A:第一の偏光板の吸収軸
62:第二の偏光板
62A:第二の偏光板の吸収軸
70:絵素(第一の絵素)
70B:第一の青絵素
70G:第一の緑絵素
70R:第一の赤絵素
71:第二の絵素
71B:第二の青絵素
71G:第二の緑絵素
71R:第二の赤絵素
72:表示単位
72B:青色の表示単位
72G:緑色の表示単位
72R:赤色の表示単位
73:カラー素子
100:液晶パネル
101:第一電極駆動回路
102:第二電極駆動回路
103:第三電極駆動回路
200:制御回路
201:画像信号合成回路
202:表示モード選択回路
203:第三電極印加電圧切替回路
204:データベース
211:原画像信号
212:画像信号
213:表示モード切替信号
214:第一の表示モード選択信号
215:第二の表示モード選択信号
216:交流信号
217:定電圧信号
218:ソフトベールビュー表示切替信号
219:ソフトベールビューパターン画像信号