(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】分岐ミキサー並びにその使用及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B01F 25/40 20220101AFI20230915BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230915BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20230915BHJP
B01J 2/10 20060101ALI20230915BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230915BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B01F25/40
A61K9/51
B01F23/40
B01J2/10 A
C12M1/00 A
C12N15/88 Z
(21)【出願番号】P 2018535128
(86)(22)【出願日】2016-08-24
(86)【国際出願番号】 CA2016050997
(87)【国際公開番号】W WO2017117647
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-19
(32)【優先日】2016-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ワイルド
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・リーバー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェームズ・テイラー
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】松井 裕典
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-246283(JP,A)
【文献】特表2014-517513(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111789(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0280029(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102151504(CN,A)
【文献】JYH JIAN CHEN 他,Optimal Designs of Staggered Dean Vortex Micromixers,NT.J.MOL.SCI.,2011,Vol.12,No.6,P3500-3524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F25/00
B01F23/00
C12N15/88
A61K9/50
C12M1/00
B01J2/10
B01J19/00
B81B1/00
G01N37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の液体と第2の液体とを混合するように構成され、直列に配置された複数の環状混合素子に通じる入口チャネルを含むミキサーであって、
複数の環状混合素子は、入口チャネルの下流にある第1の環状混合素子、及び第1のネック領域を介して第1の環状混合素子と流体連通する第2の環状混合素子を含み、第1の環状混合素子は、入口チャネルと第1のネック領域との間の第1のネック角を画定
し、第1のネック角が、90~150度である、ミキサーであり、
第1の環状混合素子が、第1のインピーダンスを有する第1の曲がった脚部チャネル、及び第1のインピーダンスとは異なる第2のインピーダンスを有する第2の曲がった脚部チャネルを有し、第1の環状混合素子の第1の曲がった脚部チャネル及び第2の曲がった脚部チャネルが、第1の環状体の周辺部を画定し、
第2の環状混合素子が、第3のインピーダンスを有する第3の曲がった脚部チャネル、及び第3のインピーダンスとは異なる第4のインピーダンスを有する第4の曲がった脚部チャネルを有し、第3の曲がった脚部チャネル及び第4の曲がった脚部チャネルが、第2の環状体の周辺部を画定し、
前記インピーダンスは、圧力/流量の比として定義されるものである、ミキサー。
【請求項2】
前記第1のネック領域が、0.05mm以上の長さを有する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項3】
前記第1の曲がった脚部チャネル、前記第2の曲がった脚部チャネル、前記第3の曲がった脚部チャネル及び前記第4の曲がった脚部チャネルが、20μm~2mmの流体力学的径を有する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項4】
並列に並んだ2個以上のミキサーを含み、各ミキサーが複数の環状混合素子を有する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項5】
前記第1の曲がった脚部チャネル及び前記第3の曲がった脚部チャネルが、ミキサーにおいて反対側に位置する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項6】
前記第1の曲がった脚部チャネルが、第1の長さを有し、前記第2の曲がった脚部チャネルが、第1の長さとは異なる第2の長さを有し、前記第3の曲がった脚部チャネルが、第3の長さを有し、前記第4の曲がった脚部チャネルが、第3の長さとは異なる第4の長さを有する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項7】
前記第1の曲がった脚部チャネル及び前記第3の曲がった脚部チャネルが、ミキサーにおいて反対側に位置する、請求項
6に記載のミキサー。
【請求項8】
前記第1の曲がった脚部チャネルが、第1の幅を有し、前記第2の曲がった脚部チャネルが、第1の幅とは異なる第2の幅を有し、前記第3の曲がった脚部チャネルが、第3の幅を有し、前記第4の曲がった脚部チャネルが、第3の幅とは異なる第4の幅を有する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項9】
前記第1の長さの前記第2の長さに対する比が、前記第3の長さの前記第4の長さに対する比に等しい、請求項
6に記載のミキサー。
【請求項10】
前記第1の幅の前記第2の幅に対する比が、前記第3の幅の前記第4の幅に対する比に等しい、請求項
8に記載のミキサー。
【請求項11】
前記第1のインピーダンスが前記第2のインピーダンスよりも大きい、請求項
10に記載のミキサー。
【請求項12】
前記第1の曲がった脚部チャネル及び前記第3の曲がった脚部チャネルが、ミキサーにおいて反対側に位置する、請求項
8に記載のミキサー。
【請求項13】
前記第1のインピーダンスの前記第2のインピーダンスに対する比が、前記第3のインピーダンスの前記第4のインピーダンスに対する比に等しい、請求項1に記載のミキサー。
【請求項14】
直列に並んだ2~20個の環状混合素子を含む、請求項1に記載のミキサー。
【請求項15】
直列に並んだ1~10対の環状混合素子を含む、請求項1に記載のミキサー。
【請求項16】
前記環状混合素子が、0.1mm~2mmの内半径を有する、請求項1に記載のミキサー。
【請求項17】
第1の液体を第2の液体と混合する方法であって、混合溶液を生成するために、請求項1から
16のいずれか一項に記載のミキサーを通して第1の液体及び第2の液体を流す工程を含む、方法。
【請求項18】
前記ミキサーが、複数のミキサーを含むマイクロ流体デバイスに組み込まれ、方法が、混合溶液を形成するために、複数のミキサーを通して第1の液体及び第2の液体を流す工程を更に含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の液体が、第1の溶媒中に核酸を含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の液体が、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項21】
前記混合溶液が、第1の液体と第2の液体を混合することにより生成された粒子を含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項22】
前記粒子が、脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子からなる群から選択される、請求項
21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年1月6日に出願された米国特許出願第62/275,630号の利益を主張するものであり、その開示全体が参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、工業的に適切な流速(例えば、10~12mL/分)でのナノ粒子製造に使用される高性能マイクロ流体ミキサーが開発されている。これらのミキサーは薬物開発市場で広く採用されてきたが、現在使用されているミキサーは製造が困難であり、特定の性能限界がある。同時に、はるかに小さな容積(100μlのオーダー)で動作可能なミキサーの市場が存在する。容積損失に加えて、既存のミキサーを操作するのに必要な高流速は、既存のミキサーをそのような用途に適さないものにしている。1つの解決策は、スタッガーヘリングボーンミキサー(Staggered Herringbone Mixer)(SHM)等の既存の技術を小型化し、寸法をより小さくすることであろう。しかし、そのようなデバイスは、50μm未満のフィーチャーを必要とし、従来的に機械加工射出成形ツールに使用されるツールを使用しての作製(プラスチックマイクロ流体デバイスの好ましい大量生産方法)が困難になる場合がある。
【0003】
従来的なマイクロ流体ミキサーを小型化することに特有の困難を考慮すると、マイクロ流体ミキサーの使用の商業的拡大を継続するため、安価な製造を可能にする新しいミキサーの設計が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2009/096558
【文献】WO98/22489
【文献】WO98/39352
【文献】WO99/14226
【文献】米国特許第6,251,666号
【文献】米国特許第5,753,789号
【文献】EP0540742
【文献】米国特許第5,432,272号
【文献】米国特許第5,644,048号
【文献】米国特許第5,386,023号
【文献】米国特許第5,637,684号
【文献】米国特許第5,602,240号
【文献】米国特許第5,216,141号
【文献】米国特許第4,469,863号
【文献】米国特許第5,235,033号
【文献】米国特許第5,034,506号
【文献】米国特許出願第10/290672号
【文献】米国特許第6,433,134号
【文献】WO92/20702
【文献】WO92/20703
【文献】米国特許第5,539,082号
【文献】米国特許第5,527,675号
【文献】米国特許第5,623,049号
【文献】米国特許第5,714,331号
【文献】米国特許第5,718,262号
【文献】米国特許第5,736,336号
【文献】米国特許第5,773,571号
【文献】米国特許第5,766,855号
【文献】米国特許第5,786,461号
【文献】米国特許第5,837,459号
【文献】米国特許第5,891,625号
【文献】米国特許第5,972,610号
【文献】米国特許第5,986,053号
【文献】米国特許第6,107,470号
【文献】WO96/04000
【文献】米国特許出願第13/464690号
【文献】米国特許出願第14/353,460号
【文献】PCT/US2014/029116
【文献】PCT/US2014/041865
【文献】PCT/US2014/060961
【文献】米国特許仮出願第62/120,179号
【文献】米国特許仮出願第62/154,043号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Fasman、1989年、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385~394頁、CRC Press、Boca Raton、Fla.
【文献】Loakes、N.A.R. 2001年、29巻:2437~2447頁
【文献】Seela、N.A.R. 2000年、28巻:3224~3232頁
【文献】Asseline、(1991)、Nucl. Acids Res. 19:4067~74頁
【文献】Garbesi、(1993)、Nucl. Acids Res. 21:4159~65頁
【文献】Fujimori、(1990)、J. Amer. Chem. Soc. 112:7435頁
【文献】Urata、(1993)、Nucleic Acids Symposium Ser. 29号:69~70頁
【文献】Kornberg及びBaker、(1992)、DNA Replication、第2版、Freeman、San Francisco、Calif.
【文献】Beaucageら、Tetrahedron 49(10):1925 (1993)
【文献】Letsinger、J. Org. Chem. 35:3800 (1970)
【文献】Sprinzlら、Eur. J. Biochem. 81:579 (1977)
【文献】Letsingerら、Nucl. Acids Res. 14:3487 (1986)
【文献】Sawaiら、Chem. Lett. 805 (1984)
【文献】Letsingerら、J. Am. Chem. Soc. 110:4470 (1988)
【文献】Pauwelsら、Chemica Scripta 26:141 91986
【文献】Magら、Nucleic Acids Res. 19:1437 (1991)
【文献】Briuら、J. Am. Chem. Soc. 111:2321 (1989)
【文献】Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Press
【文献】Denpcyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097 (1995)
【文献】Kiedrowshiら、Angew. Chem. Intl. Ed. English 30:423 (1991)
【文献】Letsingerら、Nucleoside & Nucleotide 13:1597 (194): 2及び3章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Ed. Y. S. Sanghui及びP. Dan Cook
【文献】Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4:395 (1994)
【文献】Jeffsら、J. Biomolecular NMR 34:17 (1994)
【文献】Tetrahedron Lett. 37:743 (1996)
【文献】Jenkinsら、Chem. Soc. Rev. (1995)169~176頁
【文献】Rawls、C & E News、1997年6月2日、35頁
【文献】Lagriffoulら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、4: 1081-1082 (1994)
【文献】Petersenら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、6: 793-796 (1996)
【文献】Diderichsenら、Tett. Lett. 37: 475-478 (1996)
【文献】Fujiiら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 637-627 (1997)
【文献】Jordanら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 687-690 (1997)
【文献】Krotzら、Tett. Lett. 36: 6941-6944 (1995)
【文献】Diederichsen, U.、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、7: 1743-1746 (1997)
【文献】Loweら、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1、(1997)1: 539-546
【文献】Loweら、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 11: 547-554 (1997)
【文献】Howarthら、J. Org. Chem. 62: 5441-5450 (1997)
【文献】Altmann、K-Hら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、7: 1119-1122 (1997)
【文献】Diederichsenら、Angew. Chem. Int. Ed.、37: 302-305 (1998)
【文献】Cantinら、Tett. Lett.、38: 4211-4214 (1997)
【文献】Ciapettiら、Tetrahedron、53: 1167-1176 (1997)
【文献】Lagriffouleら、Chem. Eur. J.、3: 912-919 (1997)
【文献】Kumarら、Organic Letters 3(9): 1269-1272 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本概要は、選定された概念について簡単に紹介するために提供されるものであり、これらの概念については、下の詳細な説明で更に説明される。本概要は、特許請求の範囲に記載された主題の重要な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を決定する際の助けとして使用されることも意図していない。
【0007】
本明細書における特定の実施形態において、効率的ミキサーとして動作するマイクロ流体デバイスの新しい構成が開示される。特定の実施形態において、これらの新しいミキサーは射出成形ツールを使用して作製することができ、デバイスの安価で効率的な製造が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、少なくとも第1の液体と第2の液体とを混合するためにディーン渦を形成することにより動作するミキサーであって、ミキサーは、直列に配置された複数の環状混合素子に通じる入口チャネルを含み、複数の環状混合素子は、入口チャネルの下流にある第1の環状混合素子、及び第1のネック領域を介して第1の環状混合素子と流体連通する第2の環状混合素子を含み、第1の環状混合素子は、入口チャネルと第1のネック領域との間の第1のネック角を画定する、ミキサーが提供される。
【0009】
別の態様では、本明細書において開示されるミキサーを使用する方法が提供される。一実施形態において、本方法は、混合溶液を生成するために、本明細書に開示されるミキサーを通して第1の液体及び第2の液体を流す(例えば押し出す、又は引き込む)ことにより、第1の液体を第2の液体と混合する工程を含む。
【0010】
別の態様では、ミキサーを製造する方法が提供される。一実施形態において、エンドミルを使用してマスター型を形成する工程を含む方法であって、マスター型は、本明細書に開示される実施形態によるDVBMミキサーを形成するように構成される、方法が提供される。
【0011】
本発明の前述の態様及び付随する利点の多くは、添付図面と併せて以下の詳細な記載を参照することによって理解が進むことで、より容易に正しく認識できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書において開示される実施形態による2つの液体を混合する例示的ディーン渦分岐ミキサー(「DVBM」)の顕微鏡写真である。
【
図2】本明細書において開示される実施形態によるDVBMミキサーの一部分の説明図である。
【
図3】本明細書において開示される実施形態によるDVBMミキサーの一部分の説明図である。
【
図4】本明細書において開示される実施形態によるDVBMミキサーの一部分の説明図である。
【
図5】本明細書において開示される実施形態による例示的DVBMミキサーの図である。
【
図6】本明細書において開示される実施形態によるDVBMミキサーの一部分の説明図である。
【
図7】種々のネック角による例示的DVBMにおける測定混合時間のグラフを示す。
【
図8】例示的DVBMミキサーと比較用DVBMミキサーにおける測定混合時間のグラフを示す。
【
図9】スタッガーヘリングボーンミキサー及び2つの例示的DVBMミキサーに関して粒径及び多分散指数(「PDI」)を比較したグラフを示す。
【
図10】混合前のDVBMミキサーの顕微鏡写真である。このような画像は画像解析の「テンプレート」としての役割を果たす。
【
図11】動作中のDVBMミキサーの顕微鏡写真であり、ここで、透明の液体と青色の液体が混合されて、画像の右端で黄色の液体が形成されている(即ち、混合は完了している)。
【
図12】ハフ円変換を使用して検出した円を示す顕微鏡写真である。
【
図13A】ミキサーの加工テンプレート及びデータ画像である。
【
図13B】ミキサーの加工テンプレート及びデータ画像である。
【
図13C】ミキサーの加工テンプレート及びデータ画像である。
【
図14】マスクを適用したテンプレート画像である。
【
図15】マスクを適用したデータ(混合)画像である。
【
図16】白色の画素をカウントしたデータ(混合)画像である。
【
図17】本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたリポソームのサイズ及びPDI特性のグラフを示す。
【
図18】本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたエマルションカプセル化治療薬粒子のサイズ及びPDI特性、並びに治療薬粒子を含有しない点を除き同様の組成を有する非治療薬粒子含有(non-therapeutic-containing)エマルション粒子との比較のグラフを示す。
【
図19】本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたポリマーナノ粒子のサイズ及びPDI特性のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
流体が曲がりチャネルを通って流れるとき、チャネルの中心に向かう流体は、(滑りなし境界条件により生じる)曲がり位置での流体の向心力及びより高い速度により、外に向かって押される。これらの力の作用は、ディーン渦形成として知られる形態で、チャネルに対して垂直な流体の回転を生じさせる。
【0014】
本明細書では、環状混合素子内を通る分岐した流体流れを有する流体ミキサーが開示される。本ミキサーは、少なくとも部分的に、ディーン渦形成により動作する。したがって、本ミキサーはディーン渦分岐ミキサー(「DVBM」)と呼ばれる。DVBMは、最適化されたマイクロ流体混合という目的を達成するために、ディーン渦形成及びミキサーを形成する流体チャネルの非対称分岐を利用する。開示されるDVBMミキサーは、2種以上の流体の混合が所望される技術分野の当業者に公知である、任意の流体(例えばマイクロ流体)デバイスに組み込むことができる。開示されるミキサーは、シリンジ、ポンプ、注入口、放出口、非DVBMミキサー、加熱器、アッセイ、検出器等を含む、当業者に公知である任意の流体素子と組み合わせることができる。
【0015】
提供されるDVBMミキサーは、複数の環状混合素子(本明細書では「環状ミキサー」とも呼ばれる)を含む。本明細書で使用するとき、「環状体」とは、環状ミキサーの入口と出口との間の環状体の周辺部を画定する2つの「脚部」チャネルを有する、略円形の構造を指す。特定の実施形態において、環状ミキサーは円形である。他の実施形態において、環状ミキサーは完全な円形ではなく、代わりに楕円又は非定形の形状を有してもよい。
【0016】
一態様では、少なくとも第1の液体と第2の液体とを混合するためにディーン渦を形成することにより動作するミキサーであって、ミキサーは、直列に配置された複数の環状混合素子に通じる入口チャネルを含み、複数の環状混合素子は、入口チャネルの下流にある第1の環状混合素子、及び第1のネック領域を介して第1の環状混合素子と流体連通する第2の環状混合素子を含み、第1の環状混合素子は、入口チャネルと第1のネック領域との間の第1のネック角を画定する、ミキサーが提供される。
【0017】
DVBMでは、2つ(又はそれ以上)の別個の入口から、例えば入口チャネルを介して、2つ(又はそれ以上)の流体がミキサー内に入り、混合される2つ(又はそれ以上)の流体の一方にそれぞれ流れ込む。2つの流体は、1つの領域に流れ込み最初に合わされるが、その後、異なる長さの2つの曲がりチャネルへと分かれる流路の分岐に至る。これらの2つの曲がりチャネルは、本明細書において環状ミキサーの「脚部」と呼ばれる。異なる長さは、異なるインピーダンスを有する(インピーダンスは、本明細書において、圧力/流量(例えば(PSI*分)/mL)として定義される)。一実施形態において、第2の脚部と比較した第1の脚のインピーダンス比は、約1:1から約10:1である。この不均衡により、一方の脚部に他方の脚部よりも多くの流体が入ることになる。インピーダンスの不均衡は2つの脚部の体積比をもたらし、体積比はインピーダンス比に非常に近い値になる。したがって、一実施形態において、第2の脚部と比較した第1の脚部の体積流れの比は、約1:1~約10:1となる。インピーダンス(又は長さあたりのインピーダンス*粘度)は、デバイスの動作から明確に独立している。
【0018】
脚部の断面積が同じである場合、異なる長さによって異なるインピーダンスが得られ、混合が生じる。真に1:1のインピーダンスがある場合、体積は脚部間で等しく分割されるが、依然としてディーン渦形成により混合が生じる。ただし、そのような状況では、分岐の利益は十分に活用されない。
【0019】
一連の4つの環状ミキサーを有する例示的DVBMを
図1に示す。
【0020】
一実施形態において、ミキサーのチャネル(例えば、脚部)は、ほぼ均一な縦断面積(latitudinal cross-sectional area)(例えば、高さ及び幅)を有する。チャネルは、標準幅及び高さの測定値を用いて定義することができる。一実施形態において、チャネルは約100~約500μmの幅及び約50~約200μmの高さを有する。一実施形態において、チャネルは約200~約400μmの幅及び約100~約150μmの高さを有する。一実施形態において、チャネルは約100μm~約1mmの幅及び約100μm~約1mmの高さを有する。一実施形態において、チャネルは約100μm~約2mmの幅及び約100μm~約2mmの高さを有する。
【0021】
他の実施形態において、チャネル面積は個々の環状体又は環状体対内部で変化する。流体力学的径は、マイクロ流体チャネル寸法を特徴付けるために用いられることが多い。本明細書で使用するとき、流体力学的径は、チャネル幅及び高さ寸法を用いて、(2*幅*高さ)/(幅+高さ)として定義される。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約20μm~約2mmの流体力学的径を有する。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約20μm~約1mmの流体力学的径を有する。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約20~約300μmの流体力学的径を有する。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約113~約181μmの流体力学的径を有する。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約150~約300μmの流体力学的径を有する。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約1~約2mmの流体力学的径を有する。一実施形態において、ミキサーのチャネルは、約500μm~約2mmの流体力学的径を有する。
【0022】
一実施形態において、ミキサーはマイクロ流体ミキサーであり、環状混合素子の脚部はマイクロ流体寸法を有する。
【0023】
層流を維持し、マイクロ流体デバイス内の溶液の挙動を予測可能な状態に保ち、本方法を繰り返し可能な状態に保つために、システムは低レイノルズ数での流れに対応するように設計されている。一実施形態において、第1のミキサーは、2000未満のレイノルズ数で第1の溶液と第2の溶液を混合するようにサイズが決定され構成されている。一実施形態において、第1のミキサーは、1000未満のレイノルズ数で第1の溶液と第2の溶液を混合するようにサイズが決定され構成されている。一実施形態において、第1のミキサーは、900未満のレイノルズ数で第1の溶液と第2の溶液を混合するようにサイズが決定され構成されている。一実施形態において、第1のミキサーは、500未満のレイノルズ数で第1の溶液と第2の溶液を混合するようにサイズが決定され構成されている。
【0024】
図2及び
図3を参照すると、本明細書に開示される実施形態をより的確に説明するために例示的デバイスが示されている。
図2は、DVBMのチャネル長さを変えることにより得られるインピーダンス差を図式的に示す。このケースでは、4つの異なる経路長:経路Aの経路長L
a、経路Bの経路長L
b、経路Cの経路長L
c及び経路Dの経路長L
dがある。したがって、第1の環状体のインピーダンス比は、L
b:L
a及びL
c:L
dとなる。
図3は、DVBMのチャネル幅を変えることにより得られるインピーダンス差を図式的に示す。この場合、4つの異なるチャネル幅:経路Aのチャネル幅w
a、経路Bのチャネル幅w
b、経路Cのチャネル幅w
c及び経路Dのチャネル幅w
dがある。したがって、第1の環状体対のインピーダンス比は(おおよそ)w
a:w
b及びw
c:w
dとなる。
【0025】
図示されたミキサーは、それぞれ4つの「脚部」(A~D)によって画定される2つの環状混合素子を含んでおり、流体は、これらの脚部を通り、脚部により生じる流体の4つの「経路」(A~D)に沿って流れる。デバイス内に形成された経路から生じるインピーダンスの不均衡により、(脚部B内の)経路Bを通過するより多くの流体が(脚部A内の)経路Aを通過する。これらの曲がりチャネルは、ディーン渦形成を誘発するように設計されている。これらの曲がりチャネルを出ると、再び、流体は合わされ、第2の分岐によって分割される。前回と同様に、この分割はインピーダンスの異なる2つのチャネルに至るが、今回はそれらのインピーダンス比は逆転している。
図2では、(脚部Cを通る)経路Cは、(脚部Dを通る)経路Dよりもインピーダンスが小さく、経路Aのインピーダンスと等しくなっている。同様に、経路Dと経路Bは一致する。その結果、経路Cは、経路Aと経路Bの両方からの流体を含むことになる。このようにインピーダンスが交互に入れ替わる分岐のパターンが複数回繰り返されると、(例えば、
図1において色の変化によって視覚的に示されるように)2つの流体が一緒に「混練」され、結果的に2つの流体間の接触面積が増大し、したがって、混合時間が短縮される。この混練はスタッガーヘリングボーンミキサー(SHM)で用いられるのと同じ機構であるが、より単純で平面的な構造を用いてこの機構を実現している。
【0026】
図2に示すように、環状混合素子の2つの脚部の長さを合わせて合計すると、2つの脚部のチャネルの幅の中心線を通って画定される環状体の円周になる。脚部が交わる2つの点(例えば、環状混合素子の流路の始点及び終点)は、入口、出口、又はネックを通る中心線が環状体と交わる位置によって画定される。
図2を参照すると、「合わされた流れ」の線が「経路」と交わっている。
【0027】
チャネルの所与の長さにわたる圧力損失は、次式:
【0028】
【0029】
によって与えられ、
式中、
【0030】
【0031】
及び
【0032】
【0033】
であり、
幅w及び高さh(h<w)のチャネルについては、
【0034】
【0035】
であり、
式中、μは流体粘度であり、Lはチャネル長さである。この式から、hが一定に保たれる場合、L(
図2)又はw(
図3)のいずれかを変化させることによりインピーダンス比が得られることは明らかである。
【0036】
用語「内半径」(R)は、環状体フィーチャーの内側の半径として定義される。
図4は、環状混合素子の内半径(R)を図式的に示す。
【0037】
環状体の外半径は、内半径に、半径が測定される脚部チャネルの幅を加算した値として定義される。本明細書の他の箇所に記載されているように、特定の実施形態において、環状体の2つの脚部は同じ幅である。他の実施形態において、2つの脚部は異なる幅を有する。したがって、単一の環状体は、測定位置によって異なる半径を有することがある。そのような実施形態において、外半径は、環状体の周り外半径の平均により定義されてもよい。可変半径環状体の最大半径は、環状体の中心の向かい側にある最遠点同士を結んだ直線の半分の長さとして定義される。
【0038】
一実施形態において、ミキサーは、複数の環状混合素子(「環状体」)を含む。一実施形態において、複数の環状体は全て、ほぼ同じ半径を有する。一実施形態において、環状体の全てがほぼ同じ半径を有するわけではない。一実施形態において、ミキサーは、環状体の1つ以上の対を含む。一実施形態において、環状体対の2つの環状体は、ほぼ同じ半径を有する。別の実施形態において、2つの環状体は、異なる半径を有する。一実施形態において、ミキサーは、第1の対及び第2の対を含む。一実施形態において、第1の対における環状体の半径は、第2の対における環状体の半径とほぼ同じである。別の実施形態において、第1の対における環状体の半径は、第2の対における環状体の半径とほぼ同じではない。
【0039】
本明細書において開示されるミキサーは、ミキサー内を通って移動する2種以上の液体を適切に混合するために、2つ以上の環状体を含む。特定の実施形態において、ミキサーは、(例えば、
図5に示すように)対として一緒に連結された2つの環状体である基本構造を含む。2つの環状体は、ネックによってある特定のネック角で連結されている。一実施形態において、ミキサーは、環状体の1~10個の対(即ち、2~20個の環状体)を含み、対は、インピーダンス、構造、及び混合能力の点で、ほぼ同じ特性を有するものと定義される(ただし、各対の2つの環状体は特性が異なっていてもよい)。一実施形態において、ミキサーは、環状体の2~8個の対を含む。一実施形態において、ミキサーは、環状体の2~6個の対を含む。
【0040】
別の実施形態において、環状体が対になって配置されているどうかにかかわらず、ミキサーは2~20個の環状体を含む。
【0041】
図5は、繰り返される一連の環状体対、即ち、4個の対における合計8個の環状体を含む、代表的ミキサーである。各対において、第1の環状体は長さa及びbの「脚部」を有し、第2の環状体では、脚部は長さc及びdを有する。一実施形態において、長さaとcは等しく、bとdは等しい。別の実施形態において、比a:bは、c:dに等しい。
図5のミキサーは、均一なチャネル幅、環状体半径、ネック角(120度)、及びネック長を有するミキサーの一例である。
【0042】
環状体の脚部の長さは、環状体の対間で同一であることも異なっていることもある。
図2及び
図6を参照すると、少なくとも1つの環状体の2つの脚部は異なっており、ある特定のネック角が生じている。一実施形態において、ミキサー内の第1の環状体の脚部は、0.1mm~2mmである。別の実施形態において、ミキサー内の環状体の脚部の全てがこの範囲内にある。
【0043】
最も単純な形態では、ディーン渦形成を利用するミキサーは、環状体間に「ネック」がない一連の環状体を含む。しかし、この極端に単純化された概念は、2つの環状体が交わる位置に、鋭い「ナイフの刃」のフィーチャーをもたらすことになる。標準的機械加工技術を用いて、そのようなフィーチャーのための鋳型を機械加工することは不可能であろう。この点を克服するための2つの最も簡単な手段は、上記のフィーチャーに特定の半径を導入すること(ここで、半径は、使用するエンドミルの半径と同じである)、又は環状体間にチャネル領域、即ち「ネック」を創製することであろう。混合速度の測定値(下記の例示的デバイス試験及び結果のセクションを参照されたい)に示されるように、これらの改変はいずれも、混合性能の低下をもたらす。この性能損失は、流体が次の環状体に入るために強いられる急激な方向転換時の損失に起因すると思われる。この性能損失を克服するために、DVBMは環状体間に斜めの「ネック」を使用する。
【0044】
ネック角は、各環状体の入口チャネル及び出口チャネルの中心を通る直線によって画定される、各環状体の中心に関して形成される最小角として定義される。
図6は、開示される実施形態におけるネック角の測定法を図式的に示す。
【0045】
環状体の各対は、対間のネック角に従って構成される。入口又は出口チャネルに隣接する環状体(即ち、複数の環状体の始点又は終点にある環状体)では、ネック角は、入口又は出口チャネルがその環状体のネックであると考えることにより定義される角度である。
【0046】
一実施形態において、ネック角は、デバイスの各環状体でほぼ同じである。別の実施形態において、複数のネック角があり、各環状体が同じネック角を有するわけではない。
【0047】
一実施形態において、ネック角は、0~180度である。別の実施形態において、ネック角は90~180度である。別の実施形態において、ネック角は90~150度である。別の実施形態において、ネック角は100~140度である。別の実施形態において、ネック角は110~130度である。別の実施形態において、ネック角は120度である。
【0048】
図6を参照すると、ネック長さは、曲線の方向が変化する、隣接する環状体上の点間の距離として定義される。
【0049】
一実施形態において、ネック長さは、ミキサーを作製するために使用されるエンドミルの曲率半径の少なくとも2倍である。一実施形態において、ネックは、少なくとも0.05mmの長さを有する。一実施形態において、ネックは、少なくとも1mmの長さを有する。一実施形態において、ネックは、少なくとも0.2mmの長さを有する。一実施形態において、ネックは、少なくとも0.25mmの長さを有する。一実施形態において、ネックは、少なくとも0.3mmの長さを有する。一実施形態において、ネックは、0.05~2mmの長さを有する。一実施形態において、ネックは、0.2~2mmの長さを有する。
【0050】
ミキサーを形成するために使用される材料に関しては、流体デバイスの形成に使用され得る、公知の又は将来開発される任意の材料を使用してよい。一実施形態において、ミキサーは、ポリプロピレン、ポリカーボネート、COC、COP、PDMS、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、HDPE、LDPE、他のポリオレフィン、及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む。従来的なシリカ系ガラス等の無機ガラス、金属、及びセラミックスを含む、非ポリマー材料を使用して、ミキサーを作製することもできる。
【0051】
特定の実施形態において、複数のミキサーが同じ「チップ」(即ち、複合ミキサーを含む単一の基板)に含まれる。そのような実施形態において、DVBMミキサーは、入口チャネル及び出口チャネルをそれぞれ始点及び終点とする、直列に並んだ複数の環状混合素子であると考えられる。したがって、複合ミキサーを備えたチップは、並列に又は直列構成で配置された複合DVBMミキサー(各ミキサーが複数の環状混合素子を含む)による実施形態を含む。別の実施形態において、複数のミキサーは、1つ以上のDVBMミキサー及び1つの非DVBMミキサー(例えば、SHM)を含む。ミキサーのタイプを組み合わせることにより、各タイプのミキサーの長所を単一のデバイスで利用することができる。
【0052】
使用方法
別の態様では、本明細書において開示されるミキサーを使用する方法が提供される。一実施形態において、本方法は、混合溶液を生成するために、本明細書に開示されるミキサー(即ち、DVBM)を通して第1の液体及び第2の液体を流す(例えば押し出す、又は引き込む)ことにより、第1の液体を第2の液体と混合することを含む。そのような方法は、DVBMデバイス及びその性能を定義する文脈において、本明細書の他の箇所で詳細に説明されている。開示されるミキサーは、2種以上の液体の蒸気が比較的少量(例えば、マイクロ流体レベル)で混合される技術分野の当業者に公知である、任意の混合用途に使用することができる。
【0053】
一実施形態において、ミキサーは、(DVBMを含む)複数のミキサーを含む、より大きなデバイスに組み込まれ、方法は、混合溶液を形成するために、複数のミキサーを通して第1の液体及び第2の液体を流す工程を更に含む。この実施形態は、より高い混合容積を単一デバイス上に生成するための、ミキサーの並列化に関する。そのような並列化は、参照により組み込まれる特許文献で論じられている。
【0054】
一実施形態において、第1の液体は、第1の溶媒を含む。一実施形態において、第1の溶媒は、水溶液である。一実施形態において、水溶液は、所定のpHの緩衝液である。
【0055】
一実施形態において、第1の液体は、第1の溶媒中に1つ以上の高分子を含む。
【0056】
一実施形態において、高分子は核酸である。別の実施形態において、高分子はタンパク質である。更なる実施形態において、高分子はポリペプチドである。
【0057】
一実施形態において、第1の液体は、第1の溶媒中に1種以上の低分子量化合物を含む。
【0058】
一実施形態において、第2の液体は、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料を含む。
【0059】
一実施形態において、第2の液体は、第2の溶媒中にポリマー粒子形成材料を含む。
【0060】
一実施形態において、第2の液体は、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料及び1種以上の高分子を含む。
【0061】
一実施形態において、第2の液体は、第2の溶媒中に脂質粒子形成材料及び1種以上の低分子量化合物を含む。
【0062】
一実施形態において、第2の液体は、第2の溶媒中にポリマー粒子形成材料及び1種以上の高分子を含む。
【0063】
一実施形態において、第2の液体は、第2の溶媒中にポリマー粒子形成材料及び1種以上の低分子量化合物を含む。
【0064】
一実施形態において、混合溶液は、第1の液体と第2の液体を混合することにより生成された粒子を含む。一実施形態において、粒子は、脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子からなる群から選択される。
【0065】
製造方法
別の態様では、ミキサーを製造する方法が提供される。一実施形態において、エンドミルを使用してマスター型を形成する工程を含む方法であって、マスター型は、本明細書に開示される実施形態によるDVBMミキサーを形成するように構成される、方法が提供される。特定の実施形態において、マスターを作製するためにエンドミルが使用されるが、他の実施形態において、マスターは、リソグラフィ又は電鋳を含む技術を使用して形成される。そのような実施形態において、Rは、特定の技術が可能にする最小のフィーチャーサイズである。
【0066】
デバイスが射出成形を用いて製作され、射出成形インサートがフライス加工によって製作される場合、環状混合素子の内半径(R)は、ミキサー形成用の鋳型を製作するために使用されるエンドミルの半径以上の大きさとなる。大量生産のためには、エンボス加工、鋳造、成形又は他の任意の複製技術によって実行されるかに関わらず、マスター(例えば、鋳型)を作製する必要がある。このようなマスターは、精密ミルを使用して作製するのが最も容易である。フライス加工中、エンドミルとして知られている高速回転切削ツールは、固体材料片(鋼板等)を通され、特定の区画を除去し、所望のフィーチャーを形成する。したがって、エンドミルの半径は、形成される任意のフィーチャーの最小半径を画定する。マスターはまた、リソグラフィ又は電鋳等の他の技術により製作されてもよく、その場合、選択した技術の分解能が環状体の最小内半径を画定する。一実施形態において、ミキサーの内半径は0.1mm~2mmである。一実施形態において、ミキサーの内半径は0.1mm~1mmである。
【0067】
定義
マイクロ流体
本明細書で使用するとき、用語「マイクロ流体」とは、マイクロスケールの寸法(即ち、1mm未満の寸法)を有する少なくとも1つのチャネルを含む、流体試料の操作(例えば、流すこと又は混合等)を行うためのシステム又はデバイスを指す。
【0068】
治療物質
本明細書で使用するとき、用語「治療物質」は、薬理的活性を与えること、或いは疾患の診断、治癒、緩和、理解、処置若しくは予防において直接的効果を有すること、又は生理学的機能の回復、矯正若しくは改善に直接的効果を有することが意図される物質として定義される。治療物質としては、限定されないが、小分子薬物、核酸、タンパク質、ペプチド、多糖、無機イオン及び放射性核種が含まれる。
【0069】
ナノ粒子
本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子」は、治療物質をカプセル化するために使用され、250nm未満の最小寸法を有する、2種以上の成分材料(例えば脂質、ポリマー等)を含む、均一な粒子として定義される。ナノ粒子としては、限定されないが、脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子が挙げられる。一実施形態において、デバイスは、脂質ナノ粒子を形成するように構成される。一実施形態において、デバイスは、ポリマーナノ粒子を形成するように構成される。一実施形態において、脂質ナノ粒子を形成するための方法が提供される。一実施形態において、ポリマーナノ粒子を形成するための方法が提供される。
【0070】
脂質ナノ粒子
一実施形態において、脂質ナノ粒子は、
(a)コア;及び
(b)コアを取り囲むシェルであって、リン脂質を含むシェル
を含む。
【0071】
一実施形態において、コアは脂質(例えば、脂肪酸トリグリセリド)を含んでおり、固体である。別の実施形態において、コアは液体(例えば、水性)であり、粒子はリポソーム等の小胞である。一実施形態において、コアを取り囲むシェルは単一層である。
【0072】
前述したように、一実施形態において、脂質コアは脂肪酸トリグリセリドを含む。好適な脂肪酸トリグリセリドとしては、C8~C20脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。一実施形態において、脂肪酸トリグリセリドは、オレイン酸トリグリセリドである。
【0073】
脂質ナノ粒子は、コアを取り囲む、リン脂質を含むシェルを備える。好適なリン脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。一実施形態において、リン脂質は、C8~C20脂肪酸ジアシルホスファチジルコリンである。代表的リン脂質は、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)である。
【0074】
特定の実施形態において、リン脂質の脂肪酸トリグリセリドに対する比は、20:80(mol:mol)~60:40(mol:mol)である。トリグリセリドは、40%超且つ80%未満の割合で存在することが好ましい。
【0075】
特定の実施形態において、ナノ粒子はステロールを更に含む。代表的ステロールとしては、コレステロールが挙げられる。一実施形態において、リン脂質のコレステロールに対する比は55:45(mol:mol)である。代表的実施形態において、ナノ粒子は、55~100%のPOPC及び最大10mol%のPEG-脂質を含む。
【0076】
他の実施形態において、本開示の脂質ナノ粒子は、ホスホグリセリドを含む1種以上の他の脂質類を含んでよく、その代表例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン(lyosphosphatidylcholine)、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、及びジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられる。リンを欠く他の化合物、例えばスフィンゴ脂質及びスフィンゴ糖脂質ファミリーが有用である。トリアシルグリセロールもまた有用である。
【0077】
本開示の代表的ナノ粒子は、約10~約100nmの直径を有する。直径の下限は約10~約15nmである。
【0078】
本開示の限界サイズの脂質ナノ粒子は、治療及び/又は診断薬として使用される1種以上の低分子量化合物を含むことができる。これらの薬剤は典型的に粒子コア内に含有される。本開示のナノ粒子は、多種多様な治療及び/又は診断薬を含むことができる。
【0079】
好適な低分子量化合物薬剤としては、化学療法薬(即ち、抗腫瘍薬)、麻酔薬、β-アドレナリン遮断薬、血圧降下薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、抗不整脈薬、及び抗マラリア薬が挙げられる。
【0080】
代表的抗腫瘍薬としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ストレプトゾシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メクロレタミン、塩酸塩、メルファラン、シクロホスファミド、トリエチレンチオホスホルアミド、カルムスチン(carmaustine)、ロムスチン、セムスチン、フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、シタラビン、フロクスウリジン、ダカルバジン(decarbazine)、シスプラチン、プロカルバジン、ビノレルビン、シプロフロキサシン(ciprofloxacion)、ノルフロキサシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ベキサロテン、テニポシド、トレチノイン、イソトレチノイン、シロリムス、フルベストラント、バルルビシン、ビンデシン、ロイコボリン、イリノテカン、カペシタビン、ゲムシタビン、ミトキサントロン塩酸塩、オキサリプラチン、アドリアマイシン、メトトレキセート、カルボプラチン、エストラムスチン、及びこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0081】
別の実施形態において、脂質ナノ粒子は、核酸脂質ナノ粒子である。
【0082】
用語「核酸-脂質ナノ粒子」は、核酸を含有する脂質ナノ粒子を指す。脂質ナノ粒子は、1種以上のカチオン性脂質、1種以上の第2の脂質、及び1つ以上の核酸を含む。
【0083】
カチオン性脂質。脂質ナノ粒子はカチオン性脂質を含む。本明細書で使用するとき、用語「カチオン性脂質」は、カチオン性であるか、又はpHが脂質のイオン化基のpKより低くなるとカチオン性になる(プロトン化される)が、より高いpH値において漸進的に中性に近づく、脂質を指す。pKより低いpH値において、脂質は、負に荷電した核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と会合することができる。本明細書で使用するとき、用語「カチオン性脂質」は、pH低下時に正電荷を帯びる両性イオン性脂質を含む。
【0084】
用語「カチオン性脂質」は、生理学的pH等の選択的pHにおいて正味正電荷を有する、いくつかの脂質種のうちのいずれかを指す。このような脂質としては、限定されないが、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。加えて、本開示において使用することができる、カチオン性脂質のいくつかの市販製剤が利用可能である。これらの市販製剤としては、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(GIBCO/BRL社、Grand Island、NYから提供される、DOTMA及び1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム);LIPOFECTAMINE(登録商標)(GIBCO/BRL社から提供される、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)及び(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム);及びTRANSFECTAM(登録商標)(Promega社、Madison、WIから提供される、エタノール中にジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を含む市販のカチオン性脂質)が挙げられる。以下の脂質:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)は、カチオン性であり、生理学的pHより低いpHにおいて正電荷を有する。
【0085】
一実施形態において、カチオン性脂質はアミノ脂質である。本開示において有用な好適なアミノ脂質としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2009/096558に記載されたアミノ脂質が挙げられる。代表的アミノ脂質としては、1,2-ジリノレイルオキシ(dilinoleyoxy)-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA・Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP・Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(propanedio)(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)が挙げられる。
【0086】
好適なアミノ脂質としては、下記式:
【0087】
【0088】
を有するものが挙げられ、
式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なっており、独立して、任意選択で置換されたC10~C24アルキル、任意選択で置換されたC10~C24アルケニル、任意選択で置換されたC10~C24アルキニル、又は任意選択で置換されたC10~C24アシルであり;
R3及びR4は、同一であるか又は異なっており、独立して、任意選択で置換されたC1~C6アルキル、任意選択で置換されたC2~C6アルケニル、又は任意選択で置換されたC2~C6アルキニルであるか、又はR3及びR4は連結して、任意選択で置換された、4~6個の炭素原子並びに窒素及び酸素から選択された1又は2個のヘテロ原子の複素環を形成してよく;
R5は、存在しないか又は存在し、存在する場合、水素又はC1~C6アルキルであり;
m、n、及びpは、同一であるか又は異なっており、m、n、及びpが同時に0にはならないことを条件として、独立して、0又は1であり;
qは0、1、2、3、又は4であり;
Y及びZは、同一であるか又は異なっており、独立して、O、S、又はNHである。
【0089】
一実施形態において、R1及びR2はそれぞれリノレイルであり、アミノ脂質はジリノレイルアミノ脂質である。一実施形態において、アミノ脂質はジリノレイルアミノ脂質である。
【0090】
代表的な有用なジリノレイルアミノ脂質は、下記式:
【0091】
【0092】
を有し、
式中、nは0、1、2、3、又は4である。
【0093】
一実施形態において、カチオン性脂質はDLin-K-DMAである。一実施形態において、カチオン性脂質は、DLin-KC2-DMA(上記のDLin-K-DMA、式中、nは2である)である。
【0094】
他の好適なカチオン性脂質としては、上記で具体的に記載したものに加えて、生理学的pH付近で正味正電荷を有するカチオン性脂質、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N-N-トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DOTAP・Cl);3β-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-Chol);N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA);ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA);及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられる。加えて、カチオン性脂質のいくつかの市販製剤、例えば、LIPOFECTIN(GIBCO/BRL社から入手可能なDOTMA及びDOPEを含む)、並びにLIPOFECTAMINE(GIBCO/BRL社から入手可能なDOSPA及びDOPEを含む)を使用することができる。
【0095】
カチオン性脂質は、脂質粒子中に約30~約95モル%の量で存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、脂質粒子中に約30~約70モル%の量で存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、脂質粒子中に約40~約60モル%の量で存在する。
【0096】
一実施形態において、脂質粒子は、1種以上のカチオン性脂質及び1種以上の核酸のみを含む(「からなる」)。
【0097】
第2の脂質。特定の実施形態において、脂質ナノ粒子は、1種以上の第2の脂質を含む。好適な第2の脂質は、ナノ粒子形成中にナノ粒子の形成を安定化する。
【0098】
用語「脂質」は、脂肪酸のエステルであり、水には不溶性であるが多くの有機溶媒に可溶性であることにより特徴付けられる、1群の有機化合物を指す。脂質は通常、少なくとも下記の3種類:(1)脂肪及び油並びにワックスを含む「単純脂質」;(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」;及び(3)ステロイド等の「誘導脂質」に分類される。
【0099】
好適な安定化脂質としては、中性脂質及びアニオン性脂質が挙げられる。
【0100】
中性脂質。用語「中性脂質」は、生理学的pHにおいて非荷電又は中性両性イオン形態で存在する、いくつかの脂質種のいずれか1種を指す。代表的中性脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。
【0101】
例示的脂質としては、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、並びに1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)が挙げられる。
【0102】
一実施形態において、中性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0103】
アニオン性脂質。用語「アニオン性脂質」は、生理学的pHにおいて負に荷電した任意の脂質を指す。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に連結した他のアニオン性修飾基が挙げられる。
【0104】
他の好適な脂質としては、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)が挙げられる。他の好適な第2の脂質としては、コレステロール等のステロールが挙げられる。
【0105】
ポリエチレングリコール-脂質。特定の実施形態において、第2の脂質は、ポリエチレングリコール-脂質である。好適なポリエチレングリコール-脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロールが挙げられる。代表的ポリエチレングリコール-脂質としては、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGが挙げられる。一実施形態において、ポリエチレングリコール-脂質は、N-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。一実施形態において、ポリエチレングリコール-脂質は、PEG-c-DOMGである。
【0106】
特定の実施形態において、第2の脂質は、脂質粒子中に約0.5~約10モル%の量で存在する。一実施形態において、第2の脂質は、脂質粒子中に約1~約5モル%の量で存在する。一実施形態において、第2の脂質は、脂質粒子中に約1モル%の量で存在する。
【0107】
核酸。本開示の脂質ナノ粒子は、核酸の全身的又は局所的送達に有用である。本明細書に記載したように、核酸は、形成中に脂質粒子に組み込まれる。
【0108】
本明細書で使用するとき、用語「核酸」は、任意のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含むことを意味する。最大50個のヌクレオチドを含有する断片は一般にオリゴヌクレオチドと呼ばれ、より長い断片はポリヌクレオチドと呼ばれる。具体的な実施形態において、本開示のオリゴヌクレオチドは、20~50のヌクレオチド長がある。開示の文脈において、用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、天然起源の塩基、糖及び糖間(主鎖)結合からなる、ヌクレオチド又はヌクレオシドモノマーのポリマー又はオリゴマーを指す。用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」はまた、非天然起源のモノマー又は同様に機能するそれらの一部分を含む、ポリマー又はオリゴマーも含む。このような修飾又は置換オリゴヌクレオチドは、例えば細胞内取込みの強化及びヌクレアーゼの存在下での安定性増大等の性質のため、天然型よりも好ましいことが多い。オリゴヌクレオチドは、デオキシリボオリゴヌクレオチド又はリボオリゴヌクレオチドとして分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、デオキシリボースと呼ばれる5炭素糖からなり、デオキシリボースは、5炭素糖の5'及び3'炭素でリン酸に共有結合し、交互の非分岐ポリマーを形成している。リボオリゴヌクレオチドは、5炭素糖がリボースである類似の繰り返し構造からなる。本開示の脂質粒子中に存在する核酸は、公知である任意の形態の核酸を含む。本明細書で使用される核酸は、一本鎖DNA若しくはRNA、二本鎖DNA若しくはRNA、又はDNA-RNAハイブリッドであってよい。二本鎖DNAの例としては、構造遺伝子、制御領域及び終結領域を含む遺伝子、並びにウイルス又はプラスミドDNA等の自己複製系が挙げられる。二本鎖RNAの例としては、siRNA及び他のRNA干渉試薬が挙げられる。一本鎖核酸としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、mRNA、及び三本鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0109】
一実施形態において、ポリ核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、核酸は、アンチセンス核酸、リボザイム、tRNA、snRNA、snoRNA、siRNA、shRNA、saRNA、tRNA、rRNA、piRNA、ncRNA、miRNA、mRNA、lncRNA、sgRNA、tracrRNA、予備濃縮DNA、ASO、又はアプタマーである。
【0110】
用語「核酸」はまた、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リン酸-糖-主鎖オリゴヌクレオチド、他のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、及びこれらの組合せも指し、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、必要に応じて、二本鎖配列と一本鎖配列の両方の一部分を含有してもよい。
【0111】
本明細書で使用するとき、用語「ヌクレオチド」は一般的に、以下で定義する下記の用語:ヌクレオチド塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド類似体、及びユニバーサルヌクレオチドを包含する。
【0112】
本明細書で使用するとき、用語「ヌクレオチド塩基」、置換又は非置換の親芳香環(単一又は複数)を指す。いくつかの実施形態において、芳香環(単一又は複数)は、少なくとも1個の窒素原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド塩基は、適切に相補的なヌクレオチド塩基との間で、ワトソン-クリック及び/又はフーグスティーン水素結合を形成することができる。例示的ヌクレオチド塩基及びそれらの類似体としては、限定されないが、プリン類、例えば、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、アデニン(A)、エテノアデニン、N6-2-イソペンテニルアデニン(6iA)、N6-2-イソペンテニル-2-メチルチオアデニン(2ms6iA)、N6-メチルアデニン、グアニン(G)、イソグアニン、N2-ジメチルグアニン(dmG)、7-メチルグアニン(7mG)、2-チオピリミジン、6-チオグアニン(6sG)ヒポキサンチン及びO6-メチルグアニン;7-デアザ-プリン誘導体、例えば、7-デアザアデニン(7-デアザ-A)及び7-デアザグアニン(7-デアザ-G);ピリミジン誘導体、例えば、シトシン(C)、5-プロピニルシトシン、イソシトシン、チミン(T)、4-チオチミン(4sT)、5,6-ジヒドロチミン、O4-メチルチミン、ウラシル(U)、4-チオウラシル(4sU)及び5,6-ジヒドロウラシル(ジヒドロウラシル;D);インドール誘導体、例えば、ニトロインドール及び4-メチルインドール;ピロール誘導体、例えば、ニトロピロール;ネブラリン;塩基(Y)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド塩基は、ユニバーサルヌクレオチド塩基である。追加の例示的ヌクレオチド塩基は、Fasman、1989年、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385~394頁、CRC Press、Boca Raton、Fla.及びその引用参考文献に見出すことができる。ユニバーサル塩基の更なる例は、例えば、Loakes、N.A.R. 2001年、29巻:2437~2447頁、及びSeela、N.A.R. 2000年、28巻:3224~3232頁に見出すことができる。
【0113】
本明細書で使用するとき、用語「ヌクレオシド」は、ペントース糖のC-1'炭素に共有結合したヌクレオチド塩基を有する化合物を指す。いくつかの実施形態において、この結合はヘテロ芳香環窒素を介する。典型的なペントース糖としては、限定されないが、炭素原子の1個以上が、それぞれ独立して、同一の又は異なる-R、-OR、-NRR又はハロゲン基の1個以上で置換され、ここで、各Rは、独立して、水素、(C1~C6)アルキル又は(C5~C14)アリールである、ペントースが挙げられる。ペントース糖は飽和又は不飽和であってよい。例示的ペントース糖及びそれらの類似体としては、限定されないが、リボース、2'-デオキシリボース、2'-(C1~C6)アルコキシリボース、2'-(C5~C14)アリールオキシリボース、2',3'-ジデオキシリボース、2',3'-ジデヒドロリボース、2'-デオキシ-3'-ハロリボース、2'-デオキシ-3'-フルオロリボース、2'-デオキシ-3'-クロロリボース、2'-デオキシ-3'-アミノリボース、2'-デオキシ-3'-(C1~C6)アルキルリボース、2'-デオキシ-3'-(C1~C6)アルコキシリボース及び2'-デオキシ-3'-(C5~C14)アリールオキシリボースが挙げられる。例えば、2'-O-メチル、4'-α-アノマーヌクレオチド、1'-α-アノマーヌクレオチド(Asseline、(1991)、Nucl. Acids Res. 19:4067~74頁)、2'-4'-及び3'-4'-結合並びに他の「ロックド」又は「LNA」二環式糖修飾(WO98/22489;WO98/39352;WO99/14226)も参照されたい。LNA又は「ロックド核酸(locked nucleic acid)」は、立体配座的にロックされ、リボース環が2'-酸素と3'-又は4'-炭素との間のメチレン結合によって拘束された、DNA類似体である。結合によって与えられる立体配座制限は、相補的配列に対する結合親和性を高め、そのような二本鎖の熱安定性を高めることが多い。
【0114】
糖は、2'又は3'位の修飾、例えば、メトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、メトキシエチル、アルコキシ、フェノキシ、アジド、アミノ、アルキルアミノ、フルオロ、クロロ及びブロモを含む。ヌクレオシド及びヌクレオチドは、天然D型立体配置異性体(D体)、及びL型立体配置異性体(L体)を含む(Beigelman、米国特許第6,251,666号;Chu、米国特許第5,753,789号;Shudo、EP0540742;Garbesi、(1993)、Nucl. Acids Res. 21:4159~65頁;Fujimori、(1990)、J. Amer. Chem. Soc. 112:7435頁;Urata、(1993)、Nucleic Acids Symposium Ser. 29号:69~70頁)。核酸塩基がプリン、例えば、A又はGである場合、リボース糖が核酸塩基のN9位に付加される。核酸塩基がピリミジン、例えば、C、T又はUである場合、ペントース糖が核酸塩基のN1位に付加される(Kornberg及びBaker、(1992)、DNA Replication、第2版、Freeman、San Francisco、Calif.)。
【0115】
ヌクレオシドのペントース炭素のうち1個以上が、リン酸エステルで置換されてよい。いくつかの実施形態において、リン酸エステルはペントースの3'-又は5'-炭素に付加される。いくつかの実施形態において、ヌクレオシドは、ヌクレオチド塩基がプリン、7-デアザプリン、ピリミジン、ユニバーサルヌクレオチド塩基、特定のヌクレオチド塩基、又はそれらの類似体であるヌクレオシドである。
【0116】
本明細書で使用するとき、用語「ヌクレオチド類似体」は、ペントース糖及び/若しくはヌクレオチド塩基、並びに/又はヌクレオシドのリン酸エステルのうち1種以上が、そのそれぞれの類似体で置き換えられ得る実施形態を指す。いくつかの実施形態において、例示的ペントース糖類似体は上記のものである。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド類似体は、上記のヌクレオチド塩基類似体を有する。いくつかの実施形態において、例示的リン酸エステル類似体としては、限定されないが、アルキルホスホネート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリデート(phosphoroanilidate)、ホスホロアミデート(phosphoroamidate)、ボロノホスフェート(boronophosphate)が挙げられ、例示的リン酸エステル類似体は、会合した対イオンを含んでよい。他の核酸類似体及び塩基としては、例えば、インターカレーション核酸(Christensen及びPedersen、2002年に記載された、INA)、及びAEGIS塩基(Eragen、米国特許第5,432,272号)が挙げられる。各種核酸類似体の追加の記載は、例えば、(Beaucageら、Tetrahedron 49(10):1925 (1993)及びその参考文献;Letsinger、J. Org. Chem. 35:3800 (1970);Sprinzlら、Eur. J. Biochem. 81:579 (1977);Letsingerら、Nucl. Acids Res. 14:3487 (1986);Sawaiら、Chem. Lett. 805 (1984)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc. 110:4470 (1988);及びPauwelsら、Chemica Scripta 26:141 91986))、ホスホロチオエート(Magら、Nucleic Acids Res. 19:1437 (1991);並びに米国特許第5,644,048号にも見出される。他の核酸類似体は、ホスホロジチオエート(Briuら、J. Am. Chem. Soc. 111:2321 (1989))、O-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Press参照)、陽性主鎖(positive backbones)を有する類似体(Denpcyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097 (1995);非イオン性主鎖を有する類似体(米国特許第5,386,023号、5,386,023号、5,637,684号、5,602,240号、5,216,141号、及び4,469,863号、Kiedrowshiら、Angew. Chem. Intl. Ed. English 30:423 (1991);Letsingerら、J. Am. Chem. Soc. 110:4470 (1988);Letsingerら、Nucleoside & Nucleotide 13:1597 (194): 2及び3章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Ed. Y. S. Sanghui及びP. Dan Cook;Mesmaekerら、Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4:395 (1994);Jeffsら、J. Biomolecular NMR 34:17 (1994);Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))及び非リボース主鎖を有する類似体(米国特許第5,235,033号及び5,034,506号、並びに6及び7章、ASC Symposium Series 580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Ed. Y. S. Sanghui及びP. Dan Cookに記載された類似体を含む)を含む。1種以上の炭素環糖を含有する核酸もまた、核酸の定義に含まれる(Jenkinsら、Chem. Soc. Rev. (1995)169~176頁参照)。いくつかの核酸類似体は、Rawls、C & E News、1997年6月2日、35頁にも記載されている。
【0117】
本明細書で使用するとき、用語「ユニバーサルヌクレオチド塩基」又は「ユニバーサル塩基」は、芳香環部分を指し、芳香環部分は窒素原子を含有しても含有しなくてもよい。いくつかの実施形態において、ユニバーサル塩基をペントース糖のC-1'炭素に共有結合させて、ユニバーサルヌクレオチドを生じさせてもよい。いくつかの実施形態において、ユニバーサルヌクレオチド塩基は、別のヌクレオチド塩基と特異的に水素結合することはない。いくつかの実施形態において、ユニバーサルヌクレオチド塩基は、特定の標的ポリヌクレオチドにおける最大で全てのヌクレオチド塩基を含む、ヌクレオチド塩基と水素結合する。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド塩基は、疎水性スタッキングによって、同一核酸鎖上の隣接ヌクレオチド塩基と相互作用し得る。ユニバーサルヌクレオチドとしては、限定されないが、デオキシ-7-アザインドール三リン酸(d7AITP)、デオキシイソカルボスチリル三リン酸(dICSTP)、デオキシプロピニルイソカルボスチリル三リン酸(dPICSTP)、デオキシメチル-7-アザインドール三リン酸(dM7AITP)、デオキシImPy三リン酸(dImPyTP)、デオキシPP三リン酸(dPPTP)、又はデオキシプロピニル-7-アザインドール三リン酸(dP7AITP)が挙げられる。このようなユニバーサル塩基の更なる例は特に、公開された米国特許出願第10/290672号及び米国特許第6,433,134号に見出すことができる。
【0118】
本明細書で使用するとき、用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用され、ヌクレオチドモノマーの一本鎖ポリマー及び二本鎖ポリマーを意味し、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合、例えば3'-5'及び2'-5'、反転結合、例えば3'-3'及び5'-5'、分岐構造、又はヌクレオチド間類似体によって結合された、2'-デオキシリボヌクレオチド(DNA)及びリボヌクレオチド(RNA)を含む。ポリヌクレオチドは、会合した対イオン、例えばH+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+を有する。ポリヌクレオチドは、完全にデオキシリボヌクレオチドから構成されてもよく、完全にリボヌクレオチドから構成されてもよく、又はそれらのキメラ混合物から構成されてもよい。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド間類似体、核酸塩基類似体及び/又は糖類似体から構成されてよい。ポリヌクレオチドのサイズは、典型的に、数個のモノマー単位、例えば3~40個(この場合、ポリヌクレオチドは、当該技術分野において、オリゴヌクレオチドと呼ばれることが多い)から、数千個のモノマーヌクレオチド単位までの範囲に及ぶ。特に指定のない限り、ポリヌクレオチド配列が示される場合常に、ヌクレオチドは左から右に5'から3'の順序にあると理解され、特に注記のない限り、「A」はデオキシアデノシンを表し、「C」はデオキシシトシンを表し、「G」はデオキシグアノシンを表し、「T」はチミジンを表すと理解される。
【0119】
本明細書で使用するとき、「核酸塩基」は、核酸技術を利用するか又はペプチド核酸技術を利用し、核酸に特異的に結合できる配列のポリマーを創出する者に周知である、天然起源及び非天然起源の複素環式部分を意味する。好適な核酸塩基の非限定的な例としては、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5-プロピニル-ウラシル、2-チオ-5-プロピニル-ウラシル、5-メチルシトシン、シュードイソシトシン、2-チオウラシル及び2-チオチミン、2-アミノプリン、N9-(2-アミノ-6-クロロプリン)、N9-(2,6-ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9-(7-デアザ-グアニン)、N9-(7-デアザ-8-アザ-グアニン)並びにN8-(7-デアザ-8-アザ-アデニン)が挙げられる。好適な核酸塩基の他の非限定的な例としては、Buchardtら(WO92/20702又はWO92/20703)の
図2(A)及び2(B)に示された核酸塩基が挙げられる。
【0120】
本明細書で使用するとき、「核酸塩基配列」は、核酸塩基含有サブユニットを含むポリマーの任意のセグメント、又は2つ以上のセグメントの集合体(例えば、2つ以上のオリゴマーブロックの集合体核酸塩基配列)を意味する。好適なポリマー又はポリマーセグメントの非限定的な例としては、オリゴデオキシヌクレオチド(例えばDNA)、オリゴリボヌクレオチド(例えばRNA)、ペプチド核酸(PNA)、PNAキメラ、PNA組合せオリゴマー、核酸類似体及び/又は核酸擬態(nucleic acid mimic)が挙げられる。
【0121】
本明細書で使用するとき、「ポリ核酸塩基鎖」は、核酸塩基サブユニットを含む単一ポリマー鎖全体を意味する。例えば、二本鎖核酸の単一核酸鎖は、ポリ核酸塩基鎖である。
【0122】
本明細書で使用するとき、「核酸」は、ヌクレオチド又はそれらの類似体から形成される主鎖を有する、核酸塩基配列含有ポリマー、又はポリマーセグメントである。
【0123】
好ましい核酸は、DNA及びRNAである。
【0124】
本明細書で使用するとき、核酸は、2つ以上のPNAサブユニット(残基)を含むが核酸サブユニット(又はそれらの類似体)を含まない、任意のオリゴマー又はポリマーセグメント(例えばブロックオリゴマー)を意味する、「ペプチド核酸」又は「PNA」を指すこともあり、これらの「ペプチド核酸」又は「PNA」としては、限定されないが、米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号及び第6,107,470号(これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる)において、ペプチド核酸として言及されているか又は特許請求の範囲に記載されている、オリゴマー又はポリマーセグメントのいずれかが挙げられる。用語「ペプチド核酸」又は「PNA」は、以下の刊行物: Lagriffoulら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、4: 1081-1082 (1994);Petersenら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、6: 793-796 (1996);Diderichsenら、Tett. Lett. 37: 475-478 (1996);Fujiiら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 637-627 (1997);Jordanら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 687-690 (1997);Krotzら、Tett. Lett. 36: 6941-6944 (1995);Lagriffoulら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 4: 1081-1082 (1994);Diederichsen, U.、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、7: 1743-1746 (1997);Loweら、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1、(1997)1: 539-546;Loweら、J. Chem. Soc. Perkin Trans.
11: 547-554 (1997);Loweら、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 11:555-560 (1997);Howarthら、J. Org. Chem. 62: 5441-5450 (1997);Altmann、K-Hら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、7: 1119-1122 (1997);Diederichsen, U.、Bioorganic & Med. Chem. Lett.、8: 165-168 (1998);Diederichsenら、Angew. Chem. Int. Ed.、37: 302-305 (1998);Cantinら、Tett. Lett.、38: 4211-4214 (1997);Ciapettiら、Tetrahedron、53: 1167-1176 (1997);Lagriffouleら、Chem. Eur. J.、3: 912-919 (1997);Kumarら、Organic Letters 3(9): 1269-1272 (2001);及びWO96/04000に開示されたShahらのペプチド系核酸擬態(PENAMS)に記載された、核酸擬態の2つ以上のサブユニットを含む、任意のオリゴマー又はポリマーセグメントにも当てはまる。
【0125】
ポリマーナノ粒子
用語「ポリマーナノ粒子」は、治療物質を含有するポリマーナノ粒子を指す。ポリマーナノ粒子は、限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-コグリコリド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリリジン、ポリエチレンイミン等の合成ホモポリマー;ポリ(ラクチド-コグリコリド)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレングリコール)等の合成コポリマー;セルロース、キチン、及びアルギネート等の天然ポリマー;並びにポリマー-治療物質コンジュゲートを含む、広範囲に及ぶ材料を使用して開発されてきた。
【0126】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、主として又は完全に、一緒に結合された多数の類似の単位から構築された、通常高分子量を有する化合物を指す。このようなポリマーとしては、多数の天然ポリマー、合成ポリマー及び半合成ポリマーのいずれかが挙げられる。
【0127】
用語「天然ポリマー」は、天然由来の任意の数のポリマー種を指す。このようなポリマーとしては、限定されないが、多糖、セルロース、キチン、及びアルギネートが挙げられる。
【0128】
用語「合成ポリマー」は、天然には見出されない任意の数の合成ポリマー種を指す。このような合成ポリマーとしては、限定されないが、合成ホモポリマー及び合成コポリマーが挙げられる。
【0129】
合成ホモポリマーとしては、限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリリジン、及びポリエチレンイミンが挙げられる。
【0130】
「合成コポリマー」は、2つ以上の合成ホモポリマーサブユニットから構成された任意の数の合成ポリマー種を指す。このような合成コポリマーとしては、限定されないが、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)-ポリ(エチレングリコール)、及びポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0131】
用語「半合成ポリマー」は、天然ポリマーの化学的又は酵素的処理によって得られる任意の数のポリマーを指す。このようなポリマーとしては、限定されないが、カルボキシメチルセルロース、アセチル化カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、キトサン及びゼラチンが挙げられる。
【0132】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマーコンジュゲート」は、共有結合的に又は非共有結合的に、1種以上の分子種をポリマーにコンジュゲートさせることによって調製された化合物を指す。このようなポリマーコンジュゲートとしては、限定されないが、ポリマー-治療物質コンジュゲートが挙げられる。
【0133】
ポリマー-治療物質コンジュゲートは、コンジュゲートされた分子種のうち1種以上が治療物質であるポリマーコンジュゲートを指す。このようなポリマー-治療物質コンジュゲートとしては、限定されないが、ポリマー-薬物コンジュゲートが挙げられる。
【0134】
「ポリマー-薬物コンジュゲート」は、任意の数の薬物種にコンジュゲートされた任意の数のポリマー種を指す。このようなポリマー薬物コンジュゲートとしては、限定されないが、アセチルメチルセルロース-ポリエチレングリコール-ドセタキセル(docetaxol)が挙げられる。
【0135】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、特に指示のない限り、関連する値がプラス又はマイナス5パーセント(+/-5%)だけ修正されることがあり、開示される実施形態の範囲内に留まることを示す。
【0136】
参照による組込み
以下の参照文献では、相溶性マイクロ流体混合方法及びデバイスが開示されている。本明細書において開示されるミキサーは、以下の参照文献において開示された混合デバイスのいずれかに組み込むことができ、又は以下の参照文献において開示された組成物のいずれかを混合するために使用することができる。
(1)2009年11月4日に出願された米国特許出願第61/280510号の利益を主張する、2010年11月4日に出願されたPCT/CA2010/001766の継続出願である、米国特許出願第13/464690号;
(2)2011年10月25日に出願された米国特許出願第61/551,366号の利益を主張する、2012年10月25日に出願されたPCT/CA2012/000991の継続出願である、米国特許出願第14/353,460号;
(3)2013年3月15日に出願された米国特許出願第61/798,495号の利益を主張する、2014年3月14日に出願されたPCT/US2014/029116(2014年10月23日にWO2014/172045として公開);
(4)2013年7月26日に出願された米国特許出願第61/858,973号の利益を主張する、2014年7月25日に出願されたPCT/US2014/041865(2015年1月29日にWO2015/013596として公開);
(5)2013年10月16日に出願された米国特許出願第61/891,758号の利益を主張する、PCT/US2014/060961;
(6)2015年2月24日に出願された米国特許仮出願第62/120,179号;及び
(7)その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年4月28日に出願された米国特許仮出願第62/154,043号。
【0137】
以下の実施例は、記載された実施形態を例示することを目的とするものであって、限定することを目的とするものではない。
【実施例】
【0138】
(実施例1)
DVBMデバイス試験及び結果
試験のために2つの流体注入口及び1つの放出口を有するデバイスを作製した。4つの異なる概念を試験した。4つの設計を下記表1に要約する。ミキサータイプ1~3のケースにおいて、環状体の2つの側部の幅を変えることでインピーダンスの不均衡が生じる(
図3)。DVBMは環状体を通る経路長を変えることでインピーダンスの不均衡を実現する。全ての試験デバイスは、140μmの入口チャネル幅と105μmの高さ(120μmの流体力学的径;インピーダンス/長さ*粘度の概算値:6.9*10^-5/um^4)を有していた。
【0139】
【0140】
【0141】
性能を最適化するために、120°、140°、160°及び180°のオフセット角を有する4つの例示的DVBMミキサーのセットを試作した。一連の流速に関して、混合速度を光学的に測定した(
図7)。この試験から、オフセット角が混合速度を改善するためのパラメータであり、120°が最適な角度であることを確認した。このため、120°のDVBMをミキサータイプ1~3との比較に使用した。
【0142】
明視野実体顕微鏡(bright field stereoscope)を用いて試料を画像化した。混合を視覚化するために、ブロモチモールブルー(「BTB」)を含有する125mMのNaAc及び1MのNaOHを試薬として使用した。カラーCCDでミキサーを画像化し、チャネル全体にわたって均一な黄色の分布が存在する点を特定することにより、混合時間を計算した。次に、流体を入れてこの完全混合点に達するのに必要な時間として、デバイスの混合時間を計測した。混合時間を測定するために用いた実験技術に関する更なる詳細については付属書類を参照されたい。
【0143】
図8は、タイプ1~3及び例示的DVBMの性能が、(混合時間により測定された)一連の入力流量にまたがって異なることを示す。10ml/分未満では、ミキサータイプ1及び3は共に、(予想通り)タイプ2又は例示的DVBMよりも混合が遅くなっている。興味深いことに、120°のオフセットを有する例示的DVBMは、タイプ2ミキサーの性能に近づいているだけでなく、低流量では実際にそれを上回っている。これは予想外のことであり、自明なことではない。
【0144】
120°及び180°の例示的DVBMミキサーの両方で、(以下のセクションで組み入れられた参照文献において形成されたタイプの)脂質ナノ粒子を配合した。簡潔に述べると、POPC及びコレステロールの脂質組成物をエタノール中に55:45のモル比で溶解させた。最終的な脂質濃度は16.9mMであった。市販のNanoAssemblr社製Benchtopマイクロ流体カートリッジ(SHMを使用)、120度の例示的DVBM及び180度の例示的DVBMに関して、2~10ml/分の流速を試験した。結果を以下の
図9に示す。両方の例示的DVBMデバイスは、カートリッジと同じサイズ対流量を示した。しかし、低流量では、例示的DVBMミキサーは、カートリッジよりも小さく多分散度の低い粒子を生成した。
【0145】
図9は、スタッガーヘリングボーンミキサーと2つのDVBMの設計の粒径及びPDIの比較である。特に、より高い流速において、例示的DVBMミキサーはSHMミキサーと同様の性能を示すことが分かる。
【0146】
混合時間の計算
以下の機器を使用した。
・AmScope社製カメラ
・AmScope社製顕微鏡
・白/黒バックプレート
・PTFE配管1/32''
・ディーン渦混合デバイス(ガラススライド上のPDMS)
・ペトリ皿
・ステンレス鋼分銅
【0147】
56個のLED照明器及び白色ベースプレートを取り付けたAmScope社製顕微鏡を使用してデータを収集した。デバイス位置の調整を容易にするため、分銅を取り付けたペトリ皿もまた、記録領域に置いた。125mMのNaAc及びBTBを伴う1MのNaOHを3:1の比で混合した。完全混合は、溶液が均一な強度分布で黄色に変わった点で決定した。ディーン渦混合ミキサーを動かさずに、同じ流量の全ての画像を取得した(「処理方法」を参照されたい)。色の変化をより的確に検出するために、画像処理ソフトウェアを手動で調整して彩度を最大に設定した。
図10は混合前のDVBMミキサーの顕微鏡写真である。
【0148】
図11は動作中のDVBMミキサーの顕微鏡写真であり、ここで、透明の液体と青色の液体が混合されて、画像の右端で黄色の液体が形成されている(即ち、混合は完了している)。
【0149】
処理方法
原画像をフォルダー内に置き、Python及びOpenCV3.0を使用したプログラムを使用して、原画像の回転、中央揃え、及びステッチを行った。まずテンプレート画像を処理し(ハフ円変換(
図12参照)を使用して、画像内の円を検出し、変換計算の基準として使用した)、次に、以後の画像に対してテンプレートと同じ変換を実行した。この処理中に、半径も計算し、マイクロメートルの画像のピクセル面積を決定するために使用した。
図13A~
図13Cは、ミキサーの加工テンプレート及びデータ画像である。
図13Aは、DVBMテンプレート画像である。
図13Bは、混合中のDVBM画像である。
図13Cは、非DVBMミキサーのテンプレート画像である。
【0150】
計算方法及びアルゴリズム
特定の色閾値(このケースでは青色の強度)について各ピクセルの値をチェックし、次に、それらの値が閾値範囲内にない場合にピクセル色を黒色に変更することにより、テンプレート画像チャネルを検出した。この方法により、ミキサーのチャネルのみを含むマスクに適用した。次に、混合画像をアップロードし、それに同じマスクを適用した。混合点を視覚的に確認し、次に計算範囲を入力した。この範囲までのチャネル内のピクセル数をカウントし、白色に着色した。以前に決定されたピクセル面積及びデバイス内のチャネルの高さから、容積を計算した。総混合容量を計算した後、それをデバイスの混合時の流量で割り、混合時間を決定した。
【0151】
図14は、マスクを適用したテンプレート画像である。
図15は、マスクを適用したデータ(混合)画像である。
図16は、白色の画素をカウントしたデータ(混合)画像である。
【0152】
DVBMを使用したリポソーム生成
我々は、
図17に要約されるように、狭いPDIを有する100nm未満のサイズのリポソーム小胞を生成した。
図17は、本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたリポソームのサイズ及びPDI特性のグラフを示す。このデータは、ネック長さ0.25mm、ネック角120度、内半径0.16、チャネル幅及び高さ80μm、並びに流量比約2:1(水性:脂質)のDVBMデバイスで作成した。脂質組成物は、純粋なPOPCリポソーム、又はPOPC:コレステロール(55:45)含有リポソームであった。最初の脂質混合物濃度は50mMであった。水性相はPBS緩衝液を含んでいた。
【0153】
材料及び方法:POPC(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)は、Avanti Polar Lipids社、USAから得た。コレステロール、トリオレイン、C-6(クマリン-C6)、DMF(ジメチルホルムアミド)、PVA、[ポリ(ビニルアルコール)]、Mowiol(登録商標)4-88]及びPBS(ダルベッコリン酸塩緩衝食塩水)は、Sigma-Aldrich社、USAから入手した。エタノールは、Green Field Speciality Alchols社、Canadaから入手した。PLGA、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体は、PolyciTech社、USAから得た。
【0154】
以下の溶液をカートリッジ内の各ウェルに分注した。36μLのPBSを水性試薬ウェルに入れ、48μLのPBSを収集ウェルに入れ、最後に、チップ全体にわたり混合する前に、エタノール中の50mMの脂質混合物12μLを有機試薬ウェルに入れた。試薬溶液をマイクロ混合した。創出した粒子をPBSで1:1に希釈した。
【0155】
DVBMを使用したエマルション生成
我々は、
図18に要約されるように、狭いPDIを有する100nm未満のサイズのエマルションを生成した。
図18(「POPC:トリオレイン(60:40)」)は、本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたリポソームのサイズ及びPDI特性のグラフを示す。このデータは、ネック長さ0.25mm、ネック角120度、内半径0.16、チャネル幅及び高さ80μm、並びに流量比約2:1(水性:脂質混合物)のDVBMデバイスで作成した。脂質組成はPOPC:トリオレイン(60:40)であった。最初の脂質混合物濃度は50mMであった。水性相はPBS緩衝液を含んでいた。
【0156】
材料及び方法:リポソームに関して前述したものと同一。
【0157】
DVBMを用いたエマルションの治療薬カプセル化(Therapeutic Encapsulation)
我々は、
図18に示すように、100nm未満の粒径及び狭いPDIを有する、エマルション生成中にカプセル化されたモデル疎水性薬物、クマリン-6を生成した。
図18(「POPC-トリオレイン(60:40):C6」)は、本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたカプセル化治療薬、クマリン-6のサイズ及びPDI特性、並びに別の同様の組成による非治療薬粒子含有エマルション粒子との比較のグラフを示す。このデータは、ネック長さ0.25mm、ネック角120度、内半径0.16、チャネル幅及び高さ80μm、並びに流量比約2:1(水性:脂質混合物)のDVBMデバイスで作成した。脂質混合組成物は、0.024質量/質量のD/L(薬物/脂質)比を有する、DMF中のPOPC:トリオレイン(60:40)50mMとクマリン-6であった。水性相はPBS緩衝液を含んでいた。クマリン-6を使用せずに形成した「エマルションのみ」のナノ粒子は、本質的に同一のサイズ及びPDIを有する。
【0158】
材料及び方法:リポソームに関して前述したものと同一。
【0159】
DVBMを使用して形成したポリマーナノ粒子
我々は、
図19に要約されるように、狭いPDIを有する200nm未満のサイズのエマルションを生成した。
図19は、本明細書において開示される実施形態による代表的DVBMにより生成されたポリマーナノ粒子のサイズ及びPDI特性のグラフを示す。このデータは、ネック長さ0.25mm、ネック角120度、内半径0.16、チャネル幅及び高さ80μm、並びに流量比約2:1(水性:ポリマー混合物)のDVBMデバイスで作成した。ポリマー混合物は、アセトニトリル中のポリ乳酸-グリコール酸共重合体(「PLGA」)20mg/mLを含む。水性相はPBS緩衝液を含んでいた。
【0160】
材料及び方法:リポソームに関して前述した材料と同一。以下の溶液をカートリッジ内の各ウェルに分注した。MilliQ水中の2%PVA質量/体積36μLを水性試薬ウェルに入れ、48μLのMilliQ水を収集ウェルに入れ、最後に、チップ全体にわたり混合する直前に、アセトニトリル中の20mg/mLのPLGA(12μL)を有機試薬ウェルに入れた。試薬溶液をマイクロ混合した。創出した粒子をMilliQ水で1:1に希釈した。
【0161】
例示的実施形態を具体的に説明し、記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の範囲内で種々の変更を行うことができると理解される。