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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 3/04 20060101AFI20230925BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20230925BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20230925BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20230925BHJP
【FI】
B60C3/04 B
B60C9/00 A
B60C9/08 E
B60C15/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019183983
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059195
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩平
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-343334(JP,A)
【文献】特表2016-513038(JP,A)
【文献】特開2008-179255(JP,A)
【文献】特開2013-129407(JP,A)
【文献】特開2011-245967(JP,A)
【文献】特開2010-253993(JP,A)
【文献】実開昭58-058903(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0017351(US,A1)
【文献】国際公開第2020/122165(WO,A1)
【文献】特開2002-160510(JP,A)
【文献】特開2002-178720(JP,A)
【文献】特開2018-138435(JP,A)
【文献】特開2007-022138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0050126(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118467(US,A1)
【文献】特開平10-230707(JP,A)
【文献】特開平05-162506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 3/04
B60C 9/00
B60C 9/08
B60C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ骨格を形成する環状のカーカスを備える空気入りタイヤであって、
路面に接するトレッドに連なり、前記トレッドのタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部と、
前記タイヤサイド部に連なり、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部と
を備え、
前記空気入りタイヤの外径ODは、350mm以上、600mm以下であり、
前記空気入りタイヤのタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であり、
前記空気入りタイヤの偏平率は、40%以上、75%以下であり、
前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイールのリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であり、
前記リムホイールのリム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下であり、
0.78≦RW/SW≦0.99、及び
0.56≦RD/OD≦0.75
の関係を満たし、
前記カーカスは、間隔を設けて配置された複数のカーカスコードを有し、
前記カーカスコードは、所定の有機繊維によって形成され、
前記カーカスコードの破断強力は、2.2kN/cm以上であり、
前記ビード部は、環状のビードコアを有し、
前記ビードコアは、複数のビードワイヤによって形成され、
前記ビードコアのターン数は、20以上であり、
前記カーカスの折り返し部は、前記ビードコアを介してタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、
前記折り返し部の先端は、前記ビードコアのタイヤ径方向外側部分に巻き付けられるように設けられている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビードコアのタイヤ幅方向外側部分のタイヤ径方向に沿った高さをx1、前記ビードコアのタイヤ幅方向内側部分のタイヤ径方向に沿った高さをx2、前記ビードコアのタイヤ径方向内側部分のタイヤ幅方向に沿った幅をy1、前記ビードコアのタイヤ径方向外側部分のタイヤ幅方向に沿った幅をy2とした場合、x1≧x2、y1≧y2、x1+y1≧10mm以上である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードワイヤの直径は、1.26mm以上である請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐荷重能力を高めた小径の空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐荷重能力(最大負荷能力)を高めつつ小径化された空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。このような空気入りタイヤによれば、特に、小型車両の省スペース化が図れ、広い乗車スペースが確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-138435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスが提案されている。このような小型シャトルバスは、全長5m、全幅2m程度であり、車両総重量も3tを超える場合も想定されている。このような小型シャトルバスに装着される空気入りタイヤに対しても、省スペース化が求められている。
【0005】
また、このような小型シャトルバスに装着される空気入りタイヤは、高い内圧が設定されることが想定されており、高い内圧に対する十分な耐久性が求められる。
【0006】
しかしながら、上述したような空気入りタイヤは、径サイズが小さいため、製造時にビードコアを介してカーカスを折り返す作業の難易度が上がる問題がある。このため、スチールなど、曲げ剛性が高い金属製のカーカスコードを用いることは容易ではなく、製造効率を考慮すると現実的ではない。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高い耐荷重能力、耐久性及び省スペース化を達成しつつ、製造が容易な空気入りタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、タイヤ骨格を形成する環状のカーカス(カーカス40)を備える空気入りタイヤ(例えば、空気入りタイヤ10)であって、前記空気入りタイヤの外径ODは、350mm以上、600mm以下であり、前記空気入りタイヤのタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であり、前記空気入りタイヤの偏平率は、40%以上、75%以下であり、前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイール(リムホイール100)のリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であり、前記リムホイールのリム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下であり、0.78≦RW/SW≦0.99、及び0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たし、前記カーカスは、間隔を設けて配置された複数のカーカスコード(カーカスコード40a)を有し、前記カーカスコードは、所定の有機繊維によって形成され、前記カーカスコードの破断強力は、2.2kN/cm以上である。
【発明の効果】
【0009】
上述した空気入りタイヤによれば、高い耐荷重能力、耐久性及び省スペース化を達成しつつ、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。
図2図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。
図3図3は、空気入りタイヤ10の断面図である。
図4図4は、カーカス40の一部斜視図である。
図5図5は、ビードコア61の断面形状を含むビード部60の拡大断面図である。
図6図6は、ビードコア61の寸法比率を含むビード部60の拡大断面図である。
図7図7は、ベルト層50の単体平面図を示す。
図8図8は、ベルト層50の一部拡大断面図である。
図9図9は、変更例に係るベルト層50Aの単体平面図を示す。
図10図10は、変更例に係る空気入りタイヤ10Aの断面図である。
図11図11は、他の変更例に係る空気入りタイヤ10Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(1)空気入りタイヤが装着される車両の概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。図1に示すように、本実施形態では、車両1は、4輪自動車である。なお、車両1は、4輪に限定されず、6輪構成或いは8輪構成などであってもよい。
【0013】
車両1は、車輪構成に応じて、所定数の空気入りタイヤ10が装着される。具体的には、車両1には、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10が所定位置に装着される。
【0014】
車両1は、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスに属する。本実施形態では、新たな小型シャトルバスとは、全長が4m~7m、全幅2m程度であり、車両総重量が3t前後である車両を想定する。但し、サイズ及び車両総重量は、必ずしも当該範囲に限定されず、多少であれば、当該範囲から外れても構わない。
【0015】
また、小型シャトルバスは、必ずしも人の輸送に限らず、物の輸送、移動店舗、移動オフィスなどとして用いられてもよい。
【0016】
さらに、小型シャトルバスは、都市内での人や物などの輸送に主眼が置かれているため、比較的低い走行速度レンジ(最高速度70km/h以下、平均速度50km/h程度)を想定する。このため、ハイドロプレーニング対策は重視されなくても構わない。但し、小型シャトルバスは、都市間の輸送などに用いられてもよく、速度走行レンジも高く(例えば、最高速度100km/h)なっても構わない。
【0017】
本実施形態では、車両1は、自動運転機能(レベル4以上を想定)を備えた電気自動車であることを前提とするが、自動運転機能は必須ではなく、また、電気自動車でなくても構わない。
【0018】
車両1が電気自動車である場合、インホイールモーター(不図示)をパワーユニットとして用いられることが好ましい。インホイールモーターは、ユニット全体がリムホイール100の内側空間に設けられてもよいし、ユニットの一部がリムホイール100の内側空間に設けられてもよい。
【0019】
また、インホイールモーターを用いる場合、車両1は、各車輪が独立して操舵が可能な独立操舵機能を備えることが好ましい。これにより、その場での転回、及び横方向への移動が可能となるとともに、動力伝達機構が不要となるため、車両1のスペース効率を向上し得る。
【0020】
このように、車両1では、高いスペース効率が要求される。このため、空気入りタイヤ10は、極力小径であることが好ましい。
【0021】
一方、車両サイズ及び用途に応じた相応の車両総重量となる車両1に装着されるため、高い耐荷重能力(最大負荷能力)が要求される。
【0022】
空気入りタイヤ10は、このような要件を満たすべく、外径OD(図1において不図示、図2参照)を小さくしつつ、車両1の車両総重量に対応した耐荷重能力を有する。
【0023】
また、車両1がインホイールモーター及び独立操舵機能を備える場合、応答性向上の観点からは空気入りタイヤ10の偏平率は低いことが好ましく、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、空気入りタイヤ10のリム径RD(図1において不図示、図2参照)は、大きいことが好ましい。
【0024】
(2)空気入りタイヤの構成
図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。具体的には、図2は、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、図2では、断面のハッチング表示は、省略されている(図3以降も同様)。
【0025】
空気入りタイヤ10は、比較的小径である一方、幅広である。具体的には、空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100の径であるリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下である。なお、リム径RDは、他の数値範囲を考慮すると、12インチ以上、17.5インチ以下としてもよい。
【0026】
図2に示すように、リム径RDは、リムホイール100のリム本体部分の外径であり、リムフランジ110の部分は含まない。
【0027】
また、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下である。図2に示すように、タイヤ幅SWは、空気入りタイヤ10の断面幅を意味し、空気入りタイヤ10がリムガード(不図示)を備える場合、リムガード部分は含まれない。
【0028】
さらに、空気入りタイヤ10の偏平率は、40%以上、75%以下である。なお、偏平率は、式1を用いて算出される。
【0029】
偏平率(%)=タイヤ断面高さH/タイヤ幅SW(断面幅)×100 …(式1)
空気入りタイヤ10の外径である外径ODは、350mm以上、600mm以下である。なお、外径ODは、500mm以下であることが好ましい。
【0030】
外径ODがこのようなサイズであって、空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100のリム幅をRWとした場合、空気入りタイヤ10は、(式2)及び(式3)の関係を満たす。リム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下である。
【0031】
0.78≦RW/SW≦0.99 …(式2)
0.56≦RD/OD≦0.75 …(式3)
このような関係を満たす空気入りタイヤ10は、小径でありながら、車両1の車両総重量を支持するために必要なエアボリュームを確保し得る。具体的には、エアボリュームは、荷重支持性能を考慮すると20,000cm以上必要である。また、省スペース化を考慮すると80,000cm以下であることが必要である。
【0032】
なお、上述の関係を満たすのであれば、リム幅RWは、特に限定されないが、エアボリュームを確保する観点からは、なるべく広いことが好ましい。
【0033】
また、同じくエアボリュームを確保する観点からは、外径ODに対するリム径RDの比率が小さい、つまり、偏平率が高いことが好ましい。但し、上述したように、応答性の観点からは偏平率が低いことが好ましく、また、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、リム径RDは大きいことが好ましいため、偏平率及びリム径RDは、エアボリュームと、応答性及びインホイールモーターなどの収容スペースとにおいてトレードオフの関係となる。
【0034】
空気入りタイヤ10としての好適なサイズの一例としては、205/40R15が挙げられる。また適合リム幅は、7.5J程度である。
【0035】
さらに、特に限定されないが、空気入りタイヤ10の設定内圧(正規内圧)は、400~1,100kPa、現実的には、500~900kPaを想定する。なお、正規内圧とは、例えば、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧であり、欧州ではETRTO、米国ではTRA、その他各国のタイヤ規格が対応する。
【0036】
また、空気入りタイヤ10が負担する荷重は、500~1,500kgf、現実的には、900kgf程度を想定する。
【0037】
図3は、空気入りタイヤ10の断面図である。具体的には、図3は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0038】
図3に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50及びビード部60を備える。図3に示すように、空気入りタイヤ10の断面形状は、タイヤ赤道線CLと基準として対称である。
【0039】
トレッド20は、路面と接する部分である。トレッド20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(不図示)が形成される。
【0040】
トレッド20に形成されるパターンは、特に限定されないが、本実施形態では、トレッド20には、複数の周方向溝が形成される。なお、トレッド20には、図示しない幅方向溝(ラグ溝)が形成されてもよい。
【0041】
具体的には、周方向主溝21及び周方向主溝22が形成されるとともに、タイヤ赤道線CLの位置には、周方向主溝21及び周方向主溝22よりも溝幅が狭い周方向細溝23が形成される。
【0042】
なお、周方向細溝23は、タイヤ赤道線CL付近のトレッドゴム20gがタイヤ径方向内側に湾曲しようとすると、両方の溝壁が接して支え合うことによって、いわゆるバックリングの抑制にも寄与し得る。
【0043】
タイヤサイド部30は、トレッド20に連なり、トレッド20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0044】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格(タイヤ骨格)を形成する環状の部材である。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード40a(図3において不図示、図4参照)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。但し、ラジアル構造に限定されず、カーカスコード40aがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0045】
カーカス40は、本体部41及び折り返し部42によって構成される。本体部41は、トレッド20、タイヤサイド部30及びビード部60に亘って設けられ、ビード部60において折り返されるまでの部分である。
【0046】
折り返し部42は、本体部41に連なり、ビードコア61を介してタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返された部分である。
【0047】
ベルト層50は、トレッド20のタイヤ径方向内側に設けられる。本実施形態では、ベルト層50は、4ベルト構成であるが、4ベルト構成以外、例えば、3ベルト構成でもよい。具体的には、ベルト層50は、ベルトコードが交錯する一対の交錯ベルトを含む。また、ベルト層50は、タイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向コードを有する周方向ベルトを含む。なお、ベルト層50の具体的な構成については、さらに後述する。
【0048】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状であり、ビード部60を介してカーカス40がタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。
【0049】
なお、ビード部60には、ビードコア61のタイヤ径方向外側にビードフィラーが設けられてもよいし、ビード部60で折り返されているカーカス40などがリムホイール100と擦れて摩耗することを防止するチェーファーが設けられてもよい。本実施形態では、ビードフィラー62が設けられる。
【0050】
カーカス40のタイヤ径方向内側には、インナーライナー70が設けられる。インナーライナー70は、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10の内部空間に充填された空気などの気体の漏れを防止する。
【0051】
特に、本実施形態では、高内圧となる当該内部空間に充填された空気などの気体の漏れをより確実に防止するため、インナーライナー70には、高性能な部材が用いられる。具体的には、インナーライナー70は、ガスバリア樹脂を含む樹脂組成物からなるA層と、A層に隣接し、エラストマーを含む樹脂組成物からなるB層とを有する。
【0052】
A層及びB層との合計は、7層以上である。A層の一層の平均厚みは、0.001μm以上10μm以下であり、B層の一層の平均厚みは、0.001μm以上40μm以下の多層構造体である。
【0053】
エラストマーは、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びフッ素樹脂系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0054】
また、ガスバリア樹脂は、エチレン-ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。
【0055】
なお、当該A層及びB層については、例えば、国際公開第2012/042679号に記載されているように構成してもよい。
【0056】
図3に示すように、本実施形態では、トレッド20は、トレッドゴム20gによって構成される。トレッドゴム20gは、トレッド20に求められる性能に応じた種類のゴム(配合剤含む)によって構成される。
【0057】
トレッドゴム20gは、タイヤサイド部30を構成するサイドゴム30gと接する(図中の境界線参照)。
【0058】
本実施形態では、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿ったトレッドゴム20gの断面積Stと、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った内部空間の断面積Ssとは、以下の関係を満たすことが好ましい。
【0059】
0.10≦St/Ss≦0.40
なお、好適には0.15≦St/Ss≦0.35、より好適には0.19≦St/Ss≦0.29を満たすことが好ましい。
【0060】
(3)カーカス40の構成
図4は、カーカス40の一部斜視図である。図4に示すように、カーカス40は、間隔を設けて配置された複数のカーカスコード40aを有する。本実施形態では、上述したようにラジアル構造であり、カーカスコード40aは、タイヤ幅方向に沿って配置されている。
【0061】
具体的には、タイヤ幅方向に沿って配置された複数のカーカスコード40aは、ゴム材料によって被覆されている。
【0062】
カーカスコード40aは、所定の有機繊維によって形成される。つまり、カーカスコード40aは、スチールなどの金属を除く有機繊維のフィラメント束を複数撚り合わせたコードによって形成される。
【0063】
具体的には、カーカスコード40aは、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはアラミドの何れかによって形成されることが好ましい。なお、当該有機繊維は、合成繊維または化学繊維と呼ばれてもよいし、ポリエステル系合成繊維、ポリアミド系合成繊維などであってもよい。
【0064】
また、このような有機繊維によって形成されるカーカスコード40aの破断強力は、空気入りタイヤ10としての必要な強度を確保するため、2.2kN/cm以上であることが好ましい。なお、2.2kN/cm以上の破断強力が確保できるのであれば、カーカスコード40aの具体的な撚り構造は特に限定されない。
【0065】
(4)ビード部60の構成
図5及び図6は、ビード部60の拡大断面図である。具体的には、図5は、ビードコア61の断面形状を含むビード部60の拡大断面図である。図6は、ビードコア61の寸法比率を含むビード部60の拡大断面図である。
【0066】
図5に示すように、カーカス40の折り返し部42は、ビードコア61を介してタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。折り返し部42は、ビードコア61に沿って巻き付けられるように設けられている。折り返し部42の先端部分42aは、ビードコア61のタイヤ径方向外側部分に巻き付いている。つまり、折り返し部42は、ビードコア61に沿って巻き付けられるように設けられている。このようなカーカス40の構造は、ワインド構造と呼ばれてもよい。
【0067】
本実施形態では、先端部分42aは、ビードコア61とビードフィラー62との間に介在する。
【0068】
ビードコア61は、複数のビードワイヤ61aによって形成される。ビードワイヤ61aは、スチール製であり、ビードワイヤ61aの直径は、1.26mm以上であることが好ましい。ビードコア61は、単線の金属ワイヤーによって構成される、いわゆるモノストランドビードであり、ビードコア61のターン数は、20以上であることが好ましい。
【0069】
ビードコア61は、単線のビードワイヤ61aを複数回、列方向(タイヤ幅方向)と段方向(タイヤ径方向)に移動しながら、環状に巻回して形成される。
【0070】
ターン数とは、ビードコア61を構成するビードワイヤ61aの数を意味し、例えば、20ターンであれば、5列×4段を適用し得る。本実施形態では、35ターン(7列×5段)が適用される。
【0071】
また、このようなターン構成を有するビードコア61の断面は、四角形状である。但し、ビードコア61断面は、四角形以上の多角形であればよい。つまり、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿ったビードコア61は、単純な列と段との構成でなくても構わない。
【0072】
また、図6に示すように、ビードコア61のタイヤ幅方向外側部分のタイヤ径方向に沿った高さをx1、ビードコア61のタイヤ幅方向内側部分のタイヤ径方向に沿った高さをx2、ビードコア61のタイヤ径方向内側部分のタイヤ方向に沿ったをy1、ビードコア61のタイヤ径方向外側部分のタイヤ方向に沿ったをy2とした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
【0073】
x1≧x2、及び
y1≧y2
また、x1+y1≧10mm以上であることが好ましい。好適にはx1+y1≧15mm、より好適にはx1+y1≧20mmであることが好ましい。
【0074】
さらに、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿ったビードコア61の断面積Sbと、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った内部空間の断面積Ssとは、以下の関係を満たすことが好ましい。
【0075】
4.0×10-3≦Sb/Ss≦9.5×10-3
なお、好適には4.5×10-3≦Sb/Ss≦9.0×10-3、より好適には 5.4×10-3≦Sb/Ss≦8.0×10-3であることが好ましい。
【0076】
(5)ベルト層50の構成
図7は、ベルト層50の単体平面図を示す。図7に示すように、ベルト層50は、複数のベルトによって構成される。
【0077】
具体的には、ベルト層50は、一対の交錯ベルト層と、一対の周方向ベルト層とによって構成される。周方向ベルト層は、の交錯ベルト層のタイヤ径方向内側に設けられる。
【0078】
より具体的には、ベルト層50は、交錯ベルト51及び交錯ベルト52を有する。また、ベルト層50は、周方向ベルト53及び周方向ベルト54を有する。
【0079】
交錯ベルト51は、ベルトコード51aを有し、交錯ベルト52は、ベルトコード52aを有する。ベルトコード51a及びベルトコード52aは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜し、互いに交錯するように設けられる。ベルトコード51a及びベルトコード52aは、一般的な交錯ベルト層と同様に、スチールコードを用いて形成し得る。交錯ベルト51(交錯ベルト52)は、ベルトコード51a(ベルトコード52a)をゴム被覆することによって形成される。
【0080】
周方向ベルト53は、周方向コード53aを有し、周方向ベルト54は、周方向コード54aを有する。
【0081】
周方向ベルト53は、周方向コード53aがタイヤ幅方向において振幅を繰り返すウェーブ状である。同様に、周方向ベルト54は、周方向コード54aがタイヤ幅方向において振幅を繰り返すウェーブ状である。
【0082】
なお、周方向コード53a及び周方向コード54aは、直線状ではなく、タイヤ幅方向において規則的または不規則に振られるように設けられていればよく、必ずしも綺麗なウェーブ(正弦波)状でなくても構わない。
【0083】
図8は、ベルト層50の一部拡大断面図である。具体的には、図8は、タイヤ赤道線CLを基準とした一方側のベルト層50のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0084】
上述したように、ベルト層50は、タイヤ周方向に沿った複数の周方向コードを有する周方向ベルト53及び周方向ベルト54を含む。図8に示すように、本実施形態では、カーカス40のタイヤ径方向に関する距離PDは、ベルト層50のタイヤ径方向に関する距離BDよりも長い。
【0085】
距離PDは、タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った空気入りタイヤ10の断面において、タイヤ赤道線CLの位置におけるカーカス40のタイヤ径方向内側端と、ベルト層50(具体的には、交錯ベルト51及び交錯ベルト52)のタイヤ幅方向外側端においてカーカス40のタイヤ径方向内側端を通過し、タイヤ幅方向と平行な直線が、タイヤ赤道線CLと交差する位置との距離(長さ)である。距離PDは、カーカス40のタイヤ径方向における落ち高と表現されてもよい。
【0086】
距離BDは、タイヤ赤道線CLの位置におけるベルト層50(具体的には、周方向ベルト54)のタイヤ径方向内側端と、ベルト層50(具体的には、交錯ベルト51及び交錯ベルト52)のタイヤ幅方向外側端においてベルト層50(具体的には、交錯ベルト52)のタイヤ径方向内側端を通過し、タイヤ幅方向と平行な直線が、タイヤ赤道線CLと交差する位置との距離である。距離BDは、ベルト層50のタイヤ径方向における落ち高と表現されてもよい。
【0087】
(6)変更例
図9は、変更例に係るベルト層50Aの単体平面図を示す。ベルト層50Aは、上述したベルト層50に代えて空気入りタイヤ10のベルト層として適用し得る。以下、上述したベルト層50と異なる部分について主に説明する。
【0088】
ベルト層50Aの交錯ベルト51及び交錯ベルト52は、ベルト層50と同様である。一方、周方向ベルト53B及び周方向ベルト54Bは、配置形状が異なる二種類の周方向コードによって形成される。
【0089】
具体的には、周方向ベルト53Bは、周方向コード53aと、周方向コード53cとによって構成される。周方向コード53aは、ベルト層50と同様であり、タイヤ幅方向において振幅を繰り返すウェーブ状である。周方向コード53cは、タイヤ周方向に沿って設けられ、タイヤ幅方向において振幅を有さない直線状である。
【0090】
同様に、周方向ベルト54Bは、周方向コード54aと、周方向コード54cとによって構成される。周方向コード54aは、ベルト層50と同様であり、タイヤ幅方向において振幅を繰り返すウェーブ状である。周方向コード54cは、タイヤ周方向に沿って設けられ、タイヤ幅方向において振幅を有さない直線状である。
【0091】
また、図9に示すように、ウェーブ状の周方向コード53a及び周方向コード54aは、ベルト層50Aのタイヤ幅方向における端部にのみ設けられる。周方向コード53a及び周方向コード54aの設けられる範囲は、特に限定されないが、交錯ベルト51及び交錯ベルト52のタイヤ幅方向における端部付近までとすることが好ましい。
【0092】
なお、ウェーブ状の周方向コード53a及び周方向コード54aを設けず、直線状の周方向コード53c及び周方向コード54cのみによって周方向ベルトを形成してもよい。
【0093】
この場合、周方向コード53c及び周方向コード54cは、タイヤ周方向に沿った所定の破断伸度を有する金属コードによって形成されることが好ましい。具体的には、周方向コード53c及び周方向コード54cは、高い伸び性を有する(即ち破断までの伸びが大きい)スチールコード、いわゆるハイエロンゲーションコードによって形成されることが好ましい。
【0094】
或いは、周方向コード53c及び周方向コード54cは、アラミド繊維によって形成されてもよい。
【0095】
(7)作用・効果
上述した空気入りタイヤ10によれば、以下の作用効果が得られる。空気入りタイヤ10は、上述した車両1のように、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新小型シャトルバス用として用いることができる。
【0096】
具体的には、空気入りタイヤ10の外径ODは、350mm以上、600mm以下であり、タイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下である。また、空気入りタイヤ10の偏平率は、40%以上、75%以下である。
【0097】
空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100のリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であり、リム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下である。
【0098】
このようなサイズを有する空気入りタイヤ10は、さらに、以下の関係を満たす。
【0099】
0.78≦RW/SW≦0.99、及び
0.56≦RD/OD≦0.75
このため、車両1のサイズと比較して十分に小径であり、車両1の省スペース化に貢献し得る。
【0100】
また、空気入りタイヤ10によれば、0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たすため、タイヤ幅SWに対するリム幅RWが広く、つまり、幅広のタイヤを構成でき、高い耐荷重能力を発揮するために必要なエアボリュームを確保し易い。なお、リム幅RWが広くなり過ぎると、タイヤ幅SWも広がりスペース効率が低下するとともに、ビード部60がリムホイール100から外れやすくなる。
【0101】
さらに、空気入りタイヤ10によれば、0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たすため、外径ODに対するリム径RDが大きく、インホイールモーターなどの収容スペースを確保し易い。なお、リム径RDが小さくなり過ぎると、ディスクブレーキまたはドラムブレーキの径サイズが小さくなる。このため、有効なブレーキの接触面積が小さくなり、必要な制動性能の確保が難しくなる。
【0102】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、新たな小型シャトルバスなどに装着される場合において、さらに高い耐荷重能力を有しつつ、高いスペース効率を達成し得る。
【0103】
また、空気入りタイヤ10のリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であるため、小径を維持しつつ、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。また、制動性能及び駆動性能も確保できる。
【0104】
さらに、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であり、空気入りタイヤ10の偏平率は、40%以上、75%以下であるため、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。
【0105】
本実施形態では、カーカスコード40aは、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはアラミドなど、所定の有機繊維によって形成され、カーカスコード40aの破断強力は、2.2kN/cm以上とすることができる。
【0106】
カーカスコード40aに金属以外の有機繊維が用いられるため、径サイズが小さい空気入りタイヤ10でも、製造時にビードコア61を介してカーカス40を折り返す作業の難易度が上がる問題を回避し得る。また、カーカスコード40aの破断強力は、2.2kN/cm以上とすることによって、小型シャトルバスなどに装着される場合に必要となる高い耐荷重能力及び耐久性も確保できる。すなわち、空気入りタイヤ10によれば、高い耐荷重能力、耐久性及び省スペース化を達成しつつ、製造も容易である。
【0107】
本実施形態では、ビードコア61のターン数は、20以上とすることができる。また、ビードワイヤ61aのの直径は、1.26mm以上とすることができる。このため、有機繊維製のカーカスコード40aを用いつつ、小型シャトルバスなどに装着される場合に必要となるビード部60の耐久性を効果的に高め得る。
【0108】
本実施形態では、カーカス40(折り返し部42)の先端部分42aは、ビードコア61のタイヤ径方向外側部分に巻き付いている。このため、高荷重または高内圧によってカーカスコード40aが引き抜かれる、いわゆるプライ抜けをより確実に防止し得る。すなわち、空気入りタイヤ10によれば、高い耐荷重能力、耐久性及び省スペース化を達成しつつ、特にカーカスの耐久性を高め得る。
【0109】
本実施形態では、図6に示したように、ビードコア61は、x1≧x2、及びy1≧y2の関係を満たす。また、x1+y1≧10mm以上であることが好ましい。
【0110】
このため、ビードコア61のタイヤ幅方向外側部分がタイヤ幅方向内側部分よりも長くなり、タイヤ径方向内側部分がタイヤ径方向外側部分によりも長くなる。これにより、折り返し部42が抜け難くなり、プライ抜けをさらに確実に防止し得る。
【0111】
本実施形態では、ビードコア61の断面積Sbは、4.0×10-3≦Sb/Ss≦9.5×10-3の関係を満たすことが好ましい。このため、高内圧、具体的には、400kPa~1100kPaに設定され得る空気入りタイヤ10の内部空間のエアボリュームを考慮した十分な耐久性を確保し得る。
【0112】
本実施形態では、インナーライナー70は、ガスバリア樹脂を含む樹脂組成物からなるA層と、A層に隣接し、エラストマーを含む樹脂組成物からなるB層とを有する。また、A層及びB層との合計は、7層以上である。さらに、A層の一層の平均厚みは、0.001μm以上10μm以下であり、B層の一層の平均厚みは、0.001μm以上40μm以下の多層構造体である。
【0113】
このようなガスバリア樹脂は、空気の透過性が低いため、高内圧に設定される空気入りタイヤ10の場合でも、内圧の低下をより確実に防止し得る。これにより、定常的な点検及びエア補充などの内圧管理に関する作業を大幅に削減し得る。すなわち、空気入りタイヤ10によれば、高い耐荷重能力及び省スペース化を達成しつつ、内圧管理に関する作業を大幅に削減し得る。
【0114】
本実施形態では、B層のエラストマーは、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びフッ素樹脂系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である。また、ガスバリア樹脂は、エチレン-ビニルアルコール共重合体である。これにより、空気の透過性を高め得るため、内圧管理に関する作業をさらに削減し得る。
【0115】
本実施形態では、トレッドゴム20gの断面積Stは、0.10≦St/Ss≦0.40の関係を満たすことが好ましい。このため、高内圧に設定され得る空気入りタイヤ10の内部空間のエアボリュームと、トレッドゴム20gを介して外部に漏れる気体の量とを考慮した内圧の自然低下率を十分に小さくし得る。
【0116】
本実施形態では、図8に示したように、距離PDは、距離BDよりも大きい。このような状態は、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10の内圧が設定内圧に調整された状態(荷重は負荷されていない)、及び荷重が負荷された状態(図8においてトレッド面に沿った仮想線で図示)においても同様である。
【0117】
このため、小径及び低偏平率であり、特に、ベルト層50のタイヤ幅方向における端部の荷重負荷時におけるタイヤ径方向における成長(径の拡大)を効果的に抑制し得る。具体的には、距離PD>距離BDの関係となるため、ベルト層50のタイヤ幅方向における端部では、結果的に、カーカス40とベルト層50との間に空間ができ、ベルト層50がカーカス40とともに移動(歪む)ことを、当該空間を用いて吸収できる。つまり、空気入りタイヤ10に荷重が負荷された場合おけるベルト層50のタイヤ幅方向における端部の歪みを大幅に低減し得る。
【0118】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、高い耐荷重能力及び省スペース化を達成しつつ、ベルト層50のセパレーションなどの故障を防止し得る。
【0119】
本実施形態では、周方向ベルト53(周方向ベルト54)は、周方向コード53a(周方向コード54a)がタイヤ幅方向において振幅を繰り返すウェーブ状である。このため、周方向ベルト53は、タイヤ周方向において一定の伸び率を有するため、特に、周方向ベルト53のタイヤ幅方向における端部の径成長を効果的に抑制でき、周方向ベルト53のタイヤ幅方向における端部の歪みを大幅に低減し得る。
【0120】
また、図9の変更例に示したように、周方向コード53c(周方向コード54c)は、アラミド繊維、或いはハイエロンゲーションコード(スチールコード)によって形成されてもよい。このような周方向コードによれば、必ずしもウェーブ状とせずに、ベルト層50のタイヤ幅方向における端部における径成長を効果的に抑制し得る。
【0121】
さらに、このよう観点からは、上述したような周方向コード(ウェーブ状、ハイエロンゲーションコードまたはアラミド繊維)は、ベルト層50のタイヤ幅方向における端部にのみ設けられてもよい。これにより、ベルト層50のタイヤ幅方向における中央部分は、一般的な構造としつつ、ベルト層50のタイヤ幅方向における端部における径成長を効果的に抑制し得る。
【0122】
(8)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0123】
例えば、空気入りタイヤ10の構成は、次のように変更してもよい。図10は、変更例に係る空気入りタイヤ10Aの断面図である。
【0124】
図10に示すように、空気入りタイヤ10Aは、ベルト層50Bを備える。ベルト層50Bは、コアベルト55及びシースベルト56によって構成される。
【0125】
コアベルト55は、タイヤ幅方向に対して低角度で傾斜したコード(不図示)をゴム被覆したベルトである。シースベルト56は、コードを含むテープ状のベルトであり、交錯ベルト51の全周に亘って巻き付けられる。ベルト層50Bは、交錯ベルト層と同様の機能を提供する。
【0126】
なお、シースベルト56の具体的な構成は、例えば、特開2016ー215943号公報に記載されている。
【0127】
図11は、他の変更例に係る空気入りタイヤ10Bの断面図である。図7に示すように、空気入りタイヤ10Bは、ベルト層50Cを備える。ベルト層50Cは、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コードをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成されたスパイラルベルトである。ベルト層50Cも、交錯ベルト層と同様の機能を提供する。
【0128】
また、空気入りタイヤ10Bのように、ビード部60は、先端部分がビードコアに巻き付けられたワインド構造ではなく、タイヤ径方向外側に延びる一般的な構造であってもよい。
【0129】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0130】
1 車両
10,10A,10B 空気入りタイヤ
20 トレッド
20g トレッドゴム
21,22 周方向主溝
23 周方向細溝
30 タイヤサイド部
30g サイドゴム
40 カーカス
40a カーカスコード
41 本体部
42 折り返し部
42a 先端部分
50,50A,50B,50C ベルト層
51,52 交錯ベルト
51a,52a ベルトコード
53,53B,54,54B 周方向ベルト
53a,53c,54a,54c 周方向コード
55 コアベルト
56 シースベルト
60 ビード部
61 ビードコア
61a ビードワイヤ
62 ビードフィラー
70 インナーライナー
100 リムホイール
110 リムフランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11