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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-22
(45)【発行日】2023-10-02
(54)【発明の名称】タイミング検出方法及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20230925BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20230925BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20230925BHJP
【FI】
H04L27/26 420
H04L27/26 114
H04W56/00 130
H04W74/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021572991
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020045019
(87)【国際公開番号】W WO2021149366
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2020010146
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 岳彦
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-306367(JP,A)
【文献】特開2010-087745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04W 56/00
H04W 74/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置によるタイミング検出方法において、
前記無線通信装置が、前記プリアンブル信号の負の周波数成分および正の周波数成分のそれぞれの時間領域信号である2つの被相関信号を予め記憶しておき、受信信号に対して前記2つの被相関信号のそれぞれとの相関演算を行い、被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出し、被相関信号毎の移動平均の値を比較し、被相関信号毎の相関演算結果の中から移動平均の値が最小であることが判明した相関演算結果を選択し、選択された相関演算結果の振幅が最大値となるタイミングを、前記プリアンブル信号の受信タイミングとして検出することを特徴とするタイミング検出方法。
【請求項2】
送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置によるタイミング検出方法において、
前記無線通信装置が、前記プリアンブル信号の負の周波数成分および正の周波数成分のそれぞれの時間領域信号である2つの被相関信号を予め記憶しておき、受信信号に対して前記2つの被相関信号のそれぞれとの相関演算を行い、被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出し、被相関信号毎の移動平均の値に基づいて、移動平均の値が小さいほど大きくなるように被相関信号毎の重み付け係数を算出し、被相関信号毎の相関演算結果に対して、被相関信号毎の重み付け係数のうちの対応するものを乗算し、被相関信号毎の乗算結果を同相に変換せずに合成し、合成結果の振幅が最大値となるタイミングを、前記プリアンブル信号の受信タイミングとして検出することを特徴とするタイミング検出方法。
【請求項3】
送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置において、
前記プリアンブル信号の負の周波数成分および正の周波数成分のそれぞれの時間領域信号である2つの被相関信号を格納したメモリと、
受信信号に対して前記2つの被相関信号のそれぞれとの相関演算を行う複数の相関器と、
前記複数の相関器により得られた被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出する複数の移動平均算出器と、
前記複数の移動平均算出器により得られた被相関信号毎の移動平均の値を比較する比較器と、
被相関信号毎の相関演算結果の中から、前記比較器での比較により移動平均の値が最小であることが判明した相関演算結果を選択する選択器と、
前記選択器により選択された相関演算結果の振幅が最大値となるタイミングを、前記プリアンブル信号の受信タイミングとして検出する検出器とを備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置において、
前記プリアンブル信号の負の周波数成分および正の周波数成分のそれぞれの時間領域信号である2つの被相関信号を格納したメモリと、
受信信号に対して前記2つの被相関信号のそれぞれとの相関演算を行う複数の相関器と、
前記複数の相関器により得られた被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出する複数の移動平均算出器と、
前記複数の移動平均算出器により得られた被相関信号毎の移動平均の値に基づいて、移動平均の値が小さいほど大きくなるように被相関信号毎の重み付け係数を算出する複数の係数算出器と、
前記複数の相関器により得られた被相関信号毎の相関演算結果に対して、前記複数の係数算出器により得られた被相関信号毎の重み付け係数のうちの対応するものを乗算する複数の乗算器と、
前記複数の乗算器により得られた被相関信号毎の乗算結果を同相に変換せずに合成する加算器と、
前記加算器による合成結果の振幅が最大値となるタイミングを、前記プリアンブル信号の受信タイミングとして検出する検出器とを備えたことを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置によるタイミング検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、無線通信装置の受信部(受信機)において、復調タイミングや復調周波数について送信側との同期をとることが重要である。一般的には、送信側が伝送情報とともに既知の信号系列を周期的に送信し、受信側でこの既知信号系列を利用して同期をとる手法が採用されている。この既知信号系列は、プリアンブル信号と呼ばれる。具体的には、受信信号とプリアンブル信号との相関をとり、その振幅の最大値(ピーク)を与えるタイミングを求めることにより、受信信号に含まれる伝送信号タイミングを正確に知ることができる。
【0003】
一方、特に広帯域通信においては、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex;直交周波数多重)が広く採用されている。OFDMと適切な誤り訂正符号との組み合わせにより、マルチパスによる伝送路歪みやより狭帯域な妨害波信号に対して優れた耐性を有する無線通信システムを実現することができる。
【0004】
OFDMに関しては、従前より種々の発明が提案されている。例えば、特許文献1には、D/U値に応じて、有効シンボル切り出し区間の位置及び妨害波の送信タイミングを最適化して、回り込み送信波による受信品質の劣化を防ぐことができるOFDM中継装置が開示されている。また、特許文献2には、多元接続される複数の送信装置から到来する無線信号の受信タイミングがずれている場合でも、誤差の少ない伝送路推定を可能とするOFDM受信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-098963号公報
【文献】特開2011-019057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
受信信号とプリアンブル信号との相関演算によるタイミング検出において、狭帯域の妨害波により相関波形が著しく損なわれ、タイミング検出が不可能となる場合がある。したがって、従来の技術では、狭帯域の妨害波によりタイミング同期が確保できず、OFDM伝送の妨害波耐性が発揮できない場合があるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、狭帯域の妨害波が存在する場合にも安定したタイミング同期を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るタイミング検出方法及び無線通信装置は、以下のように構成される。
すなわち、本発明に係るタイミング検出方法は、送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置によるタイミング検出方法であって、受信側の無線通信装置が、プリアンブル信号のうちの互いに異なる周波数部分の時間領域信号である複数の被相関信号を予め記憶しておき、受信信号に対して複数の被相関信号のそれぞれとの相関演算を行い、被相関信号毎に得られた相関演算結果の少なくとも1つを使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出することを特徴とする。
【0009】
ここで、一構成例として、受信側の無線通信装置が、被相関信号毎に得られた相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出し、移動平均の値が最小となる相関演算結果を使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出するようにしてもよい。
【0010】
また、別の構成例として、受信側の無線通信装置が、被相関信号毎に得られた相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出し、移動平均の値に応じた重み付けを各相関演算結果に施して合成したものを使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る無線通信装置は、送信側から送信されるプリアンブル信号を用いて同期処理を行う受信側の無線通信装置において、プリアンブル信号のうちの互いに異なる周波数部分の時間領域信号である複数の被相関信号を格納したメモリと、受信信号に対して複数の被相関信号のそれぞれとの相関演算を行う複数の相関器と、複数の相関器から出力される複数の相関演算結果の少なくとも1つを使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出する検出器とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、一構成例として、受信側の無線通信装置が、複数の相関器により得られた被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出する複数の移動平均算出器と、複数の移動平均算出器により算出された移動平均の値を比較する比較器と、比較器での比較により移動平均の値が最小であることが判明した相関演算結果を選択する選択器とを更に備え、検出器が、選択器により選択された相関演算結果を使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出するようにしてもよい。
【0013】
また、別の構成例として、受信側の無線通信装置が、複数の相関器により得られた被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出する複数の移動平均算出器と、複数の移動平均算出器により算出された移動平均の値に基づいて、被相関信号毎の重み付け係数を算出する複数の係数算出器と、複数の相関器により得られた被相関信号毎の相関演算結果に、複数の係数算出器により算出された被相関信号毎の重み付け係数を乗じる複数の乗算器と、複数の乗算器の乗算結果を合成する加算器とを更に備え、検出器が、加算器による合成結果を使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、狭帯域の妨害波が存在する場合にも安定したタイミング同期を確保することができる。その結果、誤り訂正を含むOFDM伝送が本来有している妨害波耐性を効果的に具現化することが可能となり、優れた妨害波耐性を有する広帯域OFDM伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成例を示す図である。
図2】プリアンブル信号の周波数帯域分割について説明する図である。
図3】シミュレーション用のテスト信号の構成を示す図である。
図4】妨害波が存在しない場合の周波数スペクトラムと相関出力の一例を示す図である。
図5】妨害波が存在する場合の周波数スペクトラムと相関出力の一例を示す図である。
図6図1の選択合成器の第1構成例を示す図である。
図7図6の選択器を構成する移動平均算出器の出力の一例を示す図である。
図8図1の選択合成器の第2構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成例を示してある。本例の無線通信装置は、OFDMを用いた無線通信システムにおける受信側の無線通信装置であり、入力端子101と、相関器102-1,102-2と、メモリ103-1,103-2と、選択合成器104と、ピーク検出器105と、出力端子106とを備えている。
【0017】
本例の無線通信装置による受信信号は、入力端子101に入力される。入力端子101に入力された受信信号は、相関器102-1,102-2により、メモリ103-1,103-2に格納された被相関信号との相関がとられる。すなわち、入力された受信信号に対して、メモリ103-1に格納されている被相関信号との相関演算が相関器102-1により行われ、メモリ103-2に格納されている別の被相関信号との相関演算が相関器102-2により行われる。時刻nにおける受信信号をr(n)、メモリに格納されている被相関信号をx(k)とした場合、相関器102-1,102-2の出力値c(n)は、下記(式1)により算出することができる。
【0018】
【数1】
ここで、Lは被相関信号の長さであり、x* はxの複素共役を表す。
【0019】
相関器102-1、102-2から出力される2つの相関演算結果は、選択器104に入力される。選択器104は、入力された2つの相関演算結果のうち、より適切であるもの、すなわち妨害波の影響を受けていないもの(又は影響が小さいもの)を選択し、ピーク検出器105に出力する。ピーク検出器105は、相関演算結果が最大値(ピーク)を与えるタイミングを検出する。ピーク検出器105により検出されたタイミングは、プリアンブル信号の受信タイミングとして出力端子106を介して出力され、受信信号の処理動作のタイミング制御に使用される。
【0020】
メモリ103-1,103-2に予め記憶される被相関信号について、図2を用いて説明する。送信側との同期のために使用される既知信号系列であるプリアンブル信号206は、符号201に示すように、所定の周波数帯域内部にプリアンブルに相当するサブキャリアを割り当て、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)205を施して時間領域信号に変換したものである。
【0021】
本発明では、一例として、符号201に示した割り当てを負の周波数成分202-1(帯域A)と正の周波数成分202-2(帯域B)とに分割し、それぞれにIFFT203-1,203-2を施して時間領域信号に変換する。このようにして生成された2つの信号系列204-1,204-2が、図1のメモリ103-1,103-2に被相関信号として格納され、プリアンブル信号の受信タイミングを検出する際に参照される。
【0022】
上記のような被相関信号204-1,204-2を用いたタイミング検出の効果について、図3図5を用いて説明する。図3は、説明のために行ったシミュレーションのテスト信号の構成である。シミュレーションで使用したテスト信号は、無送信区間と、固定の既知パタンを持つプリアンブルシンボルと、データシンボルとで構成されている。
【0023】
図4は、妨害波が存在しない場合の各信号出力を例示してある。図4(a)は、テスト信号の周波数スペクトラムであり、OFDMの正常なスペクトラムとなっている。図4(b)は、従来技術によるプリアンブル信号の全帯域に対する相関出力である。時刻512においてプリアンブル信号の最終点に対応する鋭いピークが得られており、このピークタイミングを検出することでタイミング同期を行うことが可能である。図4(c)及び(d)は、本例の無線通信装置による分割帯域A,Bのそれぞれに対する相関出力であり、図1の相関器102-1,102-2の出力を意味する。これらの相関出力はともに図4(b)と同様の傾向を示しており、どちらか一方を選択しても、或いは双方を加算してもタイミング同期をとることが可能である。
【0024】
次に、図5を用いて妨害波が存在する場合について説明する。図5(a)は、テスト信号の周波数スペクトラムであり、希望波であるOFDM信号に加えて、低い周波数領域に狭帯域の妨害波が存在することが分かる。なお、この妨害波は、GMSK(Gaussian-filtered Minimum Shift Keying;ガウスフィルター付き最小偏移符号化)変調としている。このような条件においても、OFDMと誤り訂正符号の効果により、復調、復号は正常に行われる可能性が高い。しかしながら、復調のための同期については厳しい条件となっている。
【0025】
図5(b)は、従来技術によるプリアンブル信号の全帯域に対する相関出力であるが、図4(b)と比較して全体的にレベルが高く、本来のピークが埋没しかけており、ピーク付近の波形も歪みを含んだものになっている。なお、妨害波の位相・振幅によっては、全くピークが検出できなくなることもある。
【0026】
図5(c)及び(d)は、本例の無線通信装置による分割帯域A,Bのそれぞれに対する相関出力であり、図1の相関器102-1,102-2の出力を意味する。図5(c)に示す分割帯域Aに対する相関出力は、図5(b)と同様に妨害波の影響を顕著に受けている。しかしながら、図5(d)に示す分割帯域Bに対する相関出力は、図4(d)と比較してほぼ変化がなく、妨害波の影響をほとんど受けていないことが分かる。
以上のように、プリアンブル信号を帯域分割して各々に対して相関演算を行い、その中から適切な相関演算結果を選択(図5の例では、帯域Bに対する相関演算結果を選択)することで、狭帯域の妨害波が同期処理に影響を及ぼすことが抑制され、安定的に同期をとることが可能となる。
【0027】
図6には、上記のような選択の判断基準を与える手法の一つとして、図1の選択合成器104の第1構成例を示してある。図6の選択合成器104は、入力端子111-1,111-2と、移動平均算出器112-1,112-2と、比較器113と、選択器114と、出力端子115とを備えている。
【0028】
入力端子111-1には、図1の相関器101-1による相関演算結果が入力され、入力端子111-2には、図1の相関器101-2による相関演算結果が入力される。移動平均算出器112-1,112-2は、入力された相関演算結果について所定長の時間区間で移動平均を算出する。移動平均算出器112-1,112-2による算出結果は、比較器113に入力される。比較器113は、移動平均算出器112-1,112-2から出力される各移動平均の瞬時の大きさを比較し、その結果に応じて選択器114に対する入力切り替え信号を制御する。具体的には、入力端子111-1,111-2に入力された2つの相関演算結果のうち、移動平均の値がより小さい方の相関演算結果が選択されるように選択器114を制御する。選択器114により選択された相関演算結果は、出力端子115から出力され、ピーク検出器105に入力される。
【0029】
図7には、移動平均112-1,112-2の出力の一例を示してある。図7(b)に示すように、妨害波が存在しない分割帯域Bの移動平均はレベルが比較的低いのに対して、図7(a)に示すように、妨害波が存在する分割帯域Aの移動平均は全体的にレベルが高くなっている。したがって、移動平均をとってそのレベルを比較することにより、妨害波の影響を判断できることが分かる。
【0030】
なお、図6の構成では、移動平均の値が小さい方の相関演算結果のみを使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出したが、図8に示す構成により相関演算結果を重み付け合成することも可能である。図8には、図1の選択合成器104の第2構成例を示してある。図8の選択合成器104は、入力端子111-1,111-2と、移動平均算出器112-1,112-2と、係数算出器116-1,116-2と、乗算器117-1,117-2と、加算器118と、出力端子115とを備えている。
【0031】
入力端子111-1には、図1の相関器101-1による相関演算結果が入力され、入力端子111-2には、図1の相関器101-2による相関演算結果が入力される。移動平均算出器112-1,112-2は、入力された相関演算結果について所定長の時間区間で移動平均を算出する。移動平均算出器112-1による算出結果は、係数算出器116-1に入力され、移動平均算出器112-2による算出結果は、係数算出器116-1に入力される。
【0032】
係数算出器116-1は、移動平均算出器112-1から出力される移動平均の値に基づいて、分割帯域Aに対する重み付け係数を算出し、乗算器117-1に出力する。係数算出器116-1は、例えば、移動平均の値が小さいほど大きな重み付け係数を出力する構成とされる。乗算器117-1は、入力端子111-1に入力された相関演算結果に対し、係数算出器116-1から出力された重み付け係数を乗算し、その結果を加算器118へ出力する。
【0033】
同様に、係数算出器116-2は、移動平均算出器112-2から出力される移動平均の値に基づいて、分割帯域Bに対する重み付け係数を算出し、乗算器117-2に出力する。乗算器117-2は、入力端子111-2に入力された相関演算結果に対し、係数算出器116-2から出力された重み付け係数を乗算し、その結果を加算器118へ出力する。加算器118は、乗算器117-1,117-2の各出力値を加算(合成)する。
【0034】
このようにして重み付け合成された相関演算結果は、出力端子115から出力され、ピーク検出器105に入力される。このような構成によっても、狭帯域の妨害波が同期処理に影響を及ぼすことが抑制され、安定的に同期をとることが可能となる。なお、移動平均の値が小さい方に対する重み付け係数を‘1’とし、大きい方に対する重み付け係数を‘0’とすれば、第1構成例と同じ演算結果となる。
【0035】
以上のように、本例の無線通信システムでは、受信側の無線通信装置が、プリアンブル信号のうちの互いに異なる周波数部分の時間領域信号である複数の被相関信号を格納したメモリ103-1,103-2と、受信信号に対して複数の被相関信号のそれぞれとの相関演算を行う相関器102-1,102-2と、相関器102-1,102-2により得られた相関演算結果の少なくとも1つを使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出するピーク検出器105とを備えている。
【0036】
より具体的には、第1構成例に係る無線通信装置は、相関器102-1,102-2により得られた被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出する移動平均算出器112-1,112-2と、移動平均算出器112-1,112-2により算出された移動平均の値を比較する比較器113と、比較器113での比較により移動平均の値がより小さいことが判明した相関演算結果を選択する選択器114とを更に備え、ピーク検出器105が、選択器114により選択された相関演算結果を使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出する構成となっている。
【0037】
また、第2構成例に係る無線通信装置は、相関器102-1,102-2により得られた被相関信号毎の相関演算結果のそれぞれについて移動平均を算出する移動平均算出器112-1,112-2と、移動平均算出器112-1,112-2により算出された移動平均の値に基づいて、被相関信号毎の重み付け係数を算出する係数算出器116-1,116-2と、相関器102-1,102-2により得られた被相関信号毎の相関演算結果に、係数算出器116-1,116-2により算出された被相関信号毎の重み付け係数を乗じる乗算器117-1,117-2と、乗算器117-1,117-2の乗算結果を合成する加算器118とを更に備え、ピーク検出器105が、加算器118による合成結果を使用して、プリアンブル信号の受信タイミングを検出する構成となっている。
【0038】
このように、プリアンブル信号を複数の被相関信号に帯域分割して受信側の無線通信装置に記憶させておき、受信信号に対して各被相関信号との相関演算を行うことで、狭帯域の妨害波の影響が無い(又は小さい)周波数部分についての相関演算結果を得ることができる。そして、狭帯域の妨害波の影響が無い(又は小さい)周波数部分についての相関演算結果を優先的に使用してタイミング検出を行うことで、狭帯域の妨害波が存在する場合にも安定したタイミング同期を確保することが可能となる。これにより、誤り訂正を含むOFDM伝送が本来有している妨害波耐性を効果的に具現化することが可能となり、優れた妨害波耐性を有する広帯域OFDM伝送を実現することができる。
【0039】
ここで、上記の説明では、プリアンブル信号の帯域分割数を2としたが、これを3以上とすること(つまり、3以上の被相関信号に分けること)も可能である。この場合、移動平均の値が小さいものほど優先して(つまり、移動平均の値が最小のものを選択し、または、移動平均の値が小さいものほど重み付け係数を大きくして)、プリアンブル信号の受信タイミングの検出に使用することが好ましい。なお、プリアンブル信号の帯域分割数をNとすると、相関演算の処理負担や必要なメモリなどがN倍となるが、OFDM帯域内に複数の妨害波が散在する場合にも安定したタイミング同期が可能となる。
【0040】
また、上記の説明では、プリアンブル信号を均等に帯域分割して複数の被相関信号を得ているが、偏りを持たせた帯域分割であっても構わない。また、上記の説明では、プリアンブル信号を互いの周波数成分が重複しないように帯域分割して複数の被相関信号を得ているが、各被相関信号の周波数成分が部分的に重複しても構わない。
【0041】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、他の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0042】
この出願は、2020年1月24日に出願された日本出願特願2020-010146を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、プリアンブル信号を用いて同期処理を行う無線通信システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
101:入力端子、 102-1,102-2:相関器、 130-1,103-2:メモリ、 104:選択合成器: 105:ピーク検出器、 106:出力端子、 111-1,111-2:入力端子、 112-1,112-2:移動平均算出器: 113:比較器、 114:選択器、 115:出力端子、 116-1,116-2:係数算出器、 117-2,117-2:乗算器、 118:加算器
図1
図2
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図8