(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】画像形成システム、及び、画像形成システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
B41J2/01 107
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2019121423
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-194737(JP,A)
【文献】特開2011-084005(JP,A)
【文献】特開2013-256003(JP,A)
【文献】特開2011-005815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク液滴の吐出ノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、主走査方向に沿って往復動するキャリッジと、
被吐出媒体が前記主走査方向とは交差する副走査方向に移動して前記記録ヘッドの前記吐出ノズルと対向する位置を通過するように、前記被吐出媒体を搬送する搬送装置と、
制御器と、
を備え、
前記制御器は、
前記被吐出媒体へのインクドットの形成有無を画素毎に示す制御データに基づき、前記記録ヘッドに対する駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記記録ヘッドに入力することにより、前記制御データに従う前記インクドットが前記被吐出媒体に形成されるように、前記記録ヘッドによる前記吐出ノズルからの前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記記録ヘッド及び前記キャリッジが前記主走査方向に沿って折返し地点から次の折返し地点まで移動する片道移動の度に前記被吐出媒体が前記副走査方向に所定量移動するように、前記キャリッジ及び前記搬送装置を制御し、
前記被吐出媒体における第一の領域に対しては、第一の制御モードで前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、前記被吐出媒体における第二の領域であって、前記副走査方向の上流及び下流の少なくとも一方で前記第一の領域に隣接する第二の領域に対しては、第二の制御モードで前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記第一の制御モードでは、前記記録ヘッドが前記主走査方向に沿う一条のインクドット列を複数回の前記片道移動に分けて前記被吐出媒体に形成するように、前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記第二の制御モードでは、前記記録ヘッドが前記インクドット列を一回の前記片道移動で前記被吐出媒体に形成するように、前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記制御データには、前記第一の制御モードにおいて前記複数回の前記片道移動で前記インクドットを形成すべきドット形成対象画素に対し、前記複数回の前記片道移動のうちの一部の片道移動では、前記インクドットを形成しないように指示する情報が含まれ、
前記制御器は、前記
第一の制御モードでは、前記指示する情報に従って前記インクドットが形成されないように前記記録ヘッドの制御が行われる画素に前記記録ヘッドの移動方向上流側で隣接する特定画素に対応するインクドット形成用の前記駆動信号として、
前記第二の制御モードとは異なる駆動信号を前記記録ヘッドに入力するように構成される画像形成システム。
【請求項2】
インク液滴の吐出ノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、主走査方向に沿って往復動するキャリッジと、
被吐出媒体が前記主走査方向とは交差する副走査方向に移動して前記記録ヘッドの前記吐出ノズルと対向する位置を通過するように、前記被吐出媒体を搬送する搬送装置と、
制御器と、
を備え、
前記制御器は、
前記被吐出媒体へのインクドットの形成有無に関する制御値を画素毎に示す制御データに基づき、前記記録ヘッドに対する駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記記録ヘッドに入力することにより、前記制御データに従う前記インクドットが前記被吐出媒体に形成されるように、前記記録ヘッドによる前記吐出ノズルからの前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記記録ヘッド及び前記キャリッジが前記主走査方向に沿って折返し地点から次の折返し地点まで移動する片道移動の度に前記被吐出媒体が前記副走査方向に所定量移動するように、前記キャリッジ及び前記搬送装置を制御し、
前記被吐出媒体における第一の領域に対しては、第一の制御モードで前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、前記被吐出媒体における第二の領域であって、前記副走査方向の上流及び下流の少なくとも一方で前記第一の領域に隣接する第二の領域に対しては、第二の制御モードで前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記第一の制御モードでは、前記記録ヘッドが前記主走査方向に沿う一条のインクドット列を複数回の前記片道移動に分けて前記被吐出媒体に形成するように、前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記第二の制御モードでは、前記記録ヘッドが前記インクドット列を一回の前記片道移動で前記被吐出媒体に形成するように、前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、
前記制御データは、前記第一の制御モードで形成される前記インクドット列に対応する前記主走査方向に沿う各画素のインクドットの形成有無に関する
制御値を前記片道移動毎に
有し、前記制御値として、前記インクドットを形成するように指示する第一の値と、前記インクドットを形成しないように指示する第二の値と、を有し、
前記制御器は、
前記制御データにおいて前記第二の値が示された画素に前記記録ヘッドの移動方向上流側で隣接する特定画素に対応するインクドット形成用の前記駆動信号として、前記第一の制御モードと前記第二の制御モードとの間で異なる駆動信号を前記記録ヘッドに入力するように構成され、前記第二の値が示された画素が、前記第一の制御モードにおいて前記複数回の前記片道移動で前記インクドットが形成されるドット形成対象画素であるか否かを判別し、前記特定画素が前記ドット形成対象画素に前記記録ヘッドの移動方向上流側で隣接する特定隣接画素であるか否かに応じて、前記駆動信号として異なる駆動信号を前記記録ヘッドに入力する
ように構成される画像形成システム。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成システムであって、
前記制御器は、前記第一の制御モードにおける前記特定隣接画素に対応する前記駆動信号として、前記第一の制御モードにおける前記特定隣接画像以外の前記特定画素に対応する前記駆動信号よりも前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の液量が少なくなる駆動信号を、前記記録ヘッドに入力する画像形成システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の画像形成システムであって、
前記制御器は、前記第二の制御モードにおける前記特定画素に対応する前記駆動信号として、前記第一の制御モードにおける前記特定隣接画素に対応する前記駆動信号よりも、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の液量が多くなる駆動信号を、前記記録ヘッドに入力する画像形成システム。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか一項記載の画像形成システムであって、
前記制御器は、前記第一の制御モードにおける前記特定隣接画像以外の前記特定画素に対応する前記駆動信号として、前記第二の制御モードにおける前記特定画素に対応する前記駆動信号と等価な駆動信号を、前記記録ヘッドに入力する画像形成システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項記載の画像形成システムであって、
前記制御器から前記記録ヘッドに入力される前記特定画素に対応する前記駆動信号は、前記特定画素以外の、前記記録ヘッドの移動方向下流側で隣接する画素が前記インクドットの形成有りの画素である非特定画素に対応する駆動信号よりも、前記記録ヘッドの駆動時間が長い駆動信号である画像形成システム。
【請求項7】
インク液滴の吐出ノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載し、主走査方向に沿って往復動するキャリッジと、
被吐出媒体が前記主走査方向とは交差する副走査方向に移動して前記記録ヘッドの前記吐出ノズルと対向する位置を通過するように、前記被吐出媒体を搬送する搬送装置と、
を備える画像形成システムの制御方法であって、
前記被吐出媒体へのインクドットの形成有無を画素毎に示す制御データに基づき、前記記録ヘッドに対する駆動信号を生成し、前記駆動信号を前記記録ヘッドに入力することにより、前記制御データに従う前記インクドットが前記被吐出媒体に形成されるように、前記記録ヘッドによる前記吐出ノズルからの前記インク液滴の吐出動作を制御することと、
前記記録ヘッド及び前記キャリッジが前記主走査方向に沿って折返し地点から次の折返し地点まで移動する片道移動の度に前記被吐出媒体が前記副走査方向に所定量移動するように、前記キャリッジ及び前記搬送装置を制御することと、
を含み、
前記吐出動作を制御することは、
前記被吐出媒体における第一の領域に対しては、第一の制御モードで前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御し、前記被吐出媒体における第二の領域であって、前記副走査方向の上流及び下流の少なくとも一方で前記第一の領域に隣接する第二の領域に対しては、第二の制御モードで前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御することと、
前記第一の制御モードでは、前記記録ヘッドが前記主走査方向に沿う一条のインクドット列を複数回の前記片道移動に分けて前記被吐出媒体に形成するように、前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御することと、
前記第二の制御モードでは、前記記録ヘッドが前記インクドット列を一回の前記片道移動で前記被吐出媒体に形成するように、前記記録ヘッドによる前記インク液滴の吐出動作を制御することと
、を含み、
前記制御データには、前記第一の制御モードにおいて前記複数回の前記片道移動で前記インクドットを形成すべきドット形成対象画素に対し、前記複数回の前記片道移動のうちの一部の片道移動では、前記インクドットを形成しないように指示する情報が含まれ、
前記吐出動作を制御することは、前記第一の制御モードでは、前記指示する情報に従って前記インクドットが形成されないように前記記録ヘッドの制御が行われる画素に前記記録ヘッドの移動方向上流側で隣接する特定画素に対応するインクドット形成用の前記駆動信号として、
前記第二の制御モードとは異なる駆動信号を前記記録ヘッドに入力するこ
とを含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成システム、及び、画像形成システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドを搭載するキャリッジを主走査方向に往復動させて、シートに画像を形成する画像形成システムが知られている。画像形成システムの例には、インクジェットプリンタが含まれる。
【0003】
インクジェットプリンタは、記録ヘッドを搭載するキャリッジを主走査方向に沿って往復動させる一方、記録ヘッドの吐出ノズルと対向する位置をシートが通過するように、シートを副走査方向に搬送して、シートに画像を形成する。
【0004】
この記録ヘッドを用いた画像形成においてシートに生じる画像のムラやスジを抑制するために、主走査方向に沿う一条のインクドット列を複数回に分けてシートに形成する印刷方式、所謂シングリング印刷方式も知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この印刷方式では、シートに形成されるべき一条のインクドット列を、間引くように分割し、二つの相補的なインクドット列である第一の部分インクドット列及び第二の部分インクドット列を定義する。
【0006】
記録ヘッドは、主走査方向に沿う第一の移動では、シートに第一の部分インクドット列が形成されるように、第一のノズルからインク液滴を吐出する。記録ヘッドは、シートが所定量搬送された後の第二の移動では、シートにおける第一の部分インクドット列にオーバーラップするように、第一のノズルより所定量副走査方向下流に位置する第二のノズルからインク液滴を吐出して、第二の部分インクドット列を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したシングリング印刷方式は、シートに形成される画像の品質を改善するのに役立つ。しかしながら、シングリング印刷方式の多用は、印刷に係るスループットを低下させる原因になる。
【0009】
このため、一枚のシートに対する画像形成領域を、シングリング印刷方式で画像を形成する領域と、シングリング印刷方式を用いずに画像を形成する領域と、に分けて、印刷方式を切り替えながら、一枚のシートに画像を形成することが考えられている。
【0010】
しかしながら、印刷方式を切り替えることによっては、その切替地点に対応するシートの画像領域に、印刷方式の違いから生じる画像の不連続な特徴が、ユーザにとって視認可能な形で出現する可能性がある。
【0011】
そこで、本開示の一側面によれば、複数の方式で被吐出媒体に対するインク液滴の吐出制御を行う画像形成システムにおいて、被吐出媒体における方式の切替地点周辺の画質が劣化するのを抑制することが可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一側面によれば、記録ヘッドと、キャリッジと、搬送装置と、制御器と、を備える画像形成システムが提供される。記録ヘッドは、インク液滴の吐出ノズルを有する。キャリッジは、記録ヘッドを搭載し、主走査方向に沿って往復動する。搬送装置は、被吐出媒体が主走査方向とは交差する副走査方向に移動して記録ヘッドの吐出ノズルと対向する位置を通過するように、被吐出媒体を搬送する。
【0013】
制御器は、被吐出媒体へのインクドットの形成有無を画素毎に示す制御データに基づき、記録ヘッドに対する駆動信号を生成し、駆動信号を記録ヘッドに入力することにより、制御データに従うインクドットが被吐出媒体に形成されるように、記録ヘッドによる吐出ノズルからのインク液滴の吐出動作を制御する。
【0014】
制御器は更に、記録ヘッド及びキャリッジが主走査方向に沿って折返し地点から次の折返し地点まで移動する片道移動の度に、被吐出媒体が副走査方向に所定量移動するように、キャリッジ及び搬送装置を制御する。
【0015】
制御器は、被吐出媒体における第一の領域に対しては、第一の制御モードで記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御し、被吐出媒体における第二の領域に対しては、第二の制御モードで記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御する。第二の領域は、副走査方向の上流及び下流の少なくとも一方で第一の領域に隣接する領域であり得る。
【0016】
制御器は、第一の制御モードでは、記録ヘッドが主走査方向に沿う一条のインクドット列を複数回の片道移動に分けて被吐出媒体に形成するように、記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御する。制御器は、第二の制御モードでは、記録ヘッドがインクドット列を一回の片道移動で被吐出媒体に形成するように、記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御する。
【0017】
制御器は、制御データに示されるインクドットの形成無しの画素に記録ヘッドの移動方向上流側で隣接する特定画素に対応するインクドット形成用の駆動信号として、第一の制御モードと第二の制御モードとの間で異なる駆動信号を記録ヘッドに入力する。
【0018】
この画像形成システムによれば、第一の制御モードでは、一条のインクドット列が複数回の片道移動に分けて被吐出媒体に形成される。すなわち、一条のインクドット列が複数に分割されて、分割されたインクドット列のそれぞれである部分インクドット列のそれぞれが、互いにオーバーラップする被吐出媒体上の領域に順次形成される。
【0019】
このように、複数の部分インクドット列がオーバーラップするように形成される場合には、先に形成された部分インクドット列の影響を受けて、後に形成される部分インクドット列に対応するインク液滴の被吐出媒体における広がりが変化する。
【0020】
すなわち、第一の制御モードにおいて複数回の片道移動に分けてインクドット列を形成する場合には、同じように記録ヘッドを駆動しても、第二の制御モードにおいて一回の片道移動で同じインクドット列を形成する場合と比較して、インクドット列の出来上がりに相違が生じる。この相違は、第一の制御モードでインクドット列が形成される領域と第二の制御モードでインクドット列が形成される領域との境界で目立ちやすくなる。
【0021】
そこで、本開示の一側面では、インクドットの形成無しの画素の前画素に対応するインクドット形成用の駆動信号として、第一の制御モードと第二の制御モードとの間で異なる駆動信号を記録ヘッドに入力する。
【0022】
第一の制御モードと第二の制御モードとの間で異なる駆動信号を記録ヘッドに入力することによれば、第一の制御モードで形成されるインクドット列と、第二の制御モードで形成されるインクドット列との間の画質変化を抑えように、第一及び第二の制御モードにおいて、記録ヘッドを駆動することができる。
【0023】
従って、本開示の一側面によれば、複数の方式で被吐出媒体に対するインク液滴の吐出制御を行う画像形成システムにおいて、被吐出媒体における方式の切替地点周辺の画質が劣化するのを抑制することができる。
【0024】
本開示の一側面によれば、上述した記録ヘッドと、キャリッジと、搬送装置と、を備える画像形成システムの制御方法が提供されてもよい。制御方法は、記録ヘッドによる吐出ノズルからのインク液滴の吐出動作を制御することと、キャリッジ及び搬送装置を制御することと、を備える。
【0025】
インク液滴の吐出動作を制御することは、被吐出媒体へのインクドットの形成有無を画素毎に示す制御データに基づき、記録ヘッドに対する駆動信号を生成し、駆動信号を記録ヘッドに入力することにより、制御データに従うインクドットが被吐出媒体に形成されるように、記録ヘッドによる吐出ノズルからのインク液滴の吐出動作を制御することを含む。
【0026】
キャリッジ及び搬送装置を制御することは、記録ヘッド及びキャリッジが主走査方向に沿って折返し地点から次の折返し地点まで移動する片道移動の度に被吐出媒体が副走査方向に所定量移動するように、キャリッジ及び搬送装置を制御することを含む。
【0027】
吐出動作を制御することは、被吐出媒体における第一の領域に対しては、第一の制御モードで記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御し、被吐出媒体における第二の領域に対しては、第二の制御モードで記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御することを含む。
【0028】
吐出動作を制御することは、第一の制御モードでは、記録ヘッドが主走査方向に沿う一条のインクドット列を複数回の片道移動に分けて被吐出媒体に形成するように、記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御し、第二の制御モードでは、記録ヘッドがインクドット列を一回の片道移動で被吐出媒体に形成するように、記録ヘッドによるインク液滴の吐出動作を制御することを含む。
【0029】
吐出動作を制御することは、制御データに示されるインクドットの形成無しの画素に記録ヘッドの移動方向上流側で隣接する特定画素に対応するインクドット形成用の駆動信号として、第一の制御モードと第二の制御モードとの間で異なる駆動信号を記録ヘッドに入力することを含む。この方法によれば、上記画像形成システムと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】画像形成システムの構成を表すブロック図である。
【
図3】主制御部が実行する印刷制御処理を表すフローチャートである。
【
図4】オーパーラップする領域に関する説明図である。
【
図5】印刷制御部が実行するマスク処理に関する説明図である。
【
図6】第一及び第二の間引きデータを例示する図である。
【
図7】印刷制御部が実行する吐出制御処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の画像形成システム1は、インクジェットプリンタとして構成される。この画像形成システム1は、主制御部10と、印刷制御部30と、記録ヘッド40と、ヘッドドライバ45と、キャリッジ搬送機構50と、CRモータ53と、リニアエンコーダ57と、搬送制御部60と、用紙搬送機構70と、PFモータ73と、ロータリエンコーダ77と、を備える。
【0032】
主制御部10は、CPU11と、ROM13と、RAM15と、NVRAM17とを備え、画像形成システム1全体を統括制御する。CPU11は、ROM13が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行する。RAM15は、CPU11によるコンピュータプログラムの実行時に作業領域として利用される。NVRAM17は、フラッシュメモリ又はEEPROMにより構成され、各種データを記憶する。以下において説明する主制御部10が実行する処理は、コンピュータプログラムに従う処理をCPU11が実行することにより実現される。
【0033】
主制御部10は、パーソナルコンピュータ等の外部装置5と通信可能な構成にされ、外部装置5から受信した画像データに基づく画像が用紙Qに形成されるように、印刷制御部30及び搬送制御部60を通じて、記録ヘッド40、キャリッジ搬送機構50、及び、用紙搬送機構70を制御する。
【0034】
印刷制御部30は、記録ヘッド40を駆動するヘッドドライバ45を制御することにより、記録ヘッド40によるインク液滴の吐出動作を制御する。印刷制御部30は更に、CRモータ53を制御することにより、キャリッジ搬送機構50を制御する。CRモータ53は、直流モータであり、キャリッジ搬送機構50の駆動源として、キャリッジ搬送機構50に接続される。
【0035】
キャリッジ搬送機構50は、記録ヘッド40を搭載するキャリッジ51(
図2参照)を備え、CRモータ53により駆動されて、キャリッジ51を主走査方向に沿って往復動させる。主走査方向は、
図2に示されるX軸方向、すなわち
図2の紙面法線方向である。
【0036】
印刷制御部30は、リニアエンコーダ57から入力されるエンコーダ信号に基づき、キャリッジ51の主走査方向の位置及び速度を検出し、検出位置及び速度に基づき、CRモータ53を制御する。キャリッジ51及び記録ヘッド40の主走査方向における往復動は、こうしたCRモータ53の制御により実現される。
【0037】
記録ヘッド40は、用紙搬送方向に並ぶ複数の吐出ノズルNzを備える。複数の吐出ノズルNzは、副走査方向上流に位置する第一の吐出ノズル群Nz1と、副走査方向下流に位置する第二の吐出ノズル群Nz2と、を含む。用紙搬送方向は、副走査方向に一致し、副走査方向は、主走査方向(X軸方向)に直交する
図2のY軸方向に対応する。
【0038】
記録ヘッド40は更に、特開2014-50997号公報に記載されるように、カートリッジ等のタンクからインクが供給されるマニホールド流路と、マニホールド流路に連通し、複数の吐出ノズルNzの各々に繋がる複数の圧力室と、を備えることができる。記録ヘッド40は更に、複数の吐出ノズルNzからインク液滴を吐出させるように、複数の圧力室内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータを備えることができる。
【0039】
搬送制御部60は、PFモータ73を制御することにより、用紙搬送機構70を制御する。PFモータ73は、直流モータであり、用紙搬送機構70の駆動源として、用紙搬送機構70に接続される。
【0040】
図2に示すように、用紙搬送機構70は、記録ヘッド40の下方に、用紙Qを下方から支持するプラテン701を備える。用紙搬送機構70は、プラテン701より用紙搬送方向上流に、対向配置された搬送ローラ703及びピンチローラ704を備える。
【0041】
用紙搬送機構70は更に、プラテン701より用紙搬送方向下流に、対向配置された排紙ローラ706及び拍車ローラ707を備える。用紙搬送機構70は更に、動力伝達機構709を備える。搬送ローラ703及び排紙ローラ706は、動力伝達機構709を通じてPFモータ73と連結され、PFモータ73からの動力を受けて同期回転する。
【0042】
用紙搬送機構70は、図示しない給紙トレイに載置された用紙Qを、図示しない給紙ローラの回転により一枚ずつ分離し、分離した用紙Qを、搬送ローラ703とピンチローラ704との間のニップ部に提供するように構成される。
【0043】
搬送ローラ703は、PFモータ73により回転駆動されて、給紙トレイから供給される用紙Qを、副走査方向下流に搬送するように動作する。搬送ローラ703は、ピンチローラ704との間に用紙Qを挟持した状態で、回転により用紙Qを下流に搬送する。
【0044】
搬送ローラ703の回転により下流に搬送される用紙Qは、プラテン701に支持されながら、記録領域R0を通過する。記録領域R0は、記録ヘッド40が有する第一及び第二のノズル群Nz1,Nz2を含む複数の吐出ノズルNzと下方で対向する領域に対応する。
【0045】
記録領域R0を通過した用紙Qは、PFモータ73により回転駆動される排紙ローラ706と拍車ローラ707との間に挟持されて、排紙ローラ706の回転により下流に搬送される。排紙ローラ706を通過した用紙Qは、最終的に排紙トレイに排出される。
【0046】
搬送制御部60は、ロータリエンコーダ77から入力されるエンコーダ信号に基づき、PFモータ73の回転位置及び速度を検出し、検出された回転位置及び速度に基づき、PFモータ73を制御する。用紙Qの搬送制御は、こうしたPFモータ73の制御により実現される。
【0047】
続いて、主制御部10が、外部装置5から受信した画像データに基づく画像を用紙Qに形成するために実行する印刷制御処理を、
図3を用いて説明する。
印刷制御処理を開始すると、主制御部10は、給紙処理を実行する(S110)。給紙処理において、主制御部10は、給紙トレイに載置された用紙Qの一枚が、搬送ローラ703とピンチローラ704との間のニップ部に供給されるように、搬送制御部60を通じて用紙搬送機構70を制御する。
【0048】
その後、主制御部10は、頭出し処理を実行する(S120)。頭出し処理において、主制御部10は、上記ニップ部に供給された用紙Qにおける画像形成対象領域の先頭部が記録ヘッド40下方の記録領域R0に配置されるように、搬送制御部60を通じて用紙搬送機構70を制御する。
【0049】
頭出し処理後、主制御部10は、ワンパス印刷処理を実行する(S130)。ワンパス印刷処理では、キャリッジ51が出発地点から折返し地点まで主走査方向に沿って一方向に移動するように、印刷制御部30を通じて、キャリッジ搬送機構50を制御する。出発地点は、前回のワンパス印刷処理におけるキャリッジ51の目的地点、すなわち前回の折返し地点に対応する。以下では、キャリッジ51が折返し地点から折返し地点まで主走査方向に沿って一方向に片道分移動することを、ワンパス移動と表現する。
【0050】
主制御部10は、ワンパス移動の過程で、記録ヘッド40の吐出ノズルNzからのインク液滴の吐出により、記録領域R0に対応する用紙Qの領域に、画像が形成されるように、印刷制御部30を通じて、記録ヘッド40の吐出動作を制御する(S130)。用紙Qは、インク液滴の被吐出媒体に対応する。以下では、1回のワンパス印刷処理で画像が形成される用紙Q上の領域のことを、ワンパス領域と表現する。
【0051】
その後、主制御部10は、用紙送出処理を実行する(S140)。用紙送出処理では、ワンパス印刷処理(S130)において記録ヘッド40によるインク液滴の吐出動作が終了した直後から、用紙Qが所定距離L0だけ副走査方向下流に搬送されるように、搬送制御部60を通じて用紙搬送機構70を制御する。
【0052】
主制御部10は更に、用紙Qの画像形成対象領域全体に対する画像形成が完了したか否かを判断する(S150)。完了していないと判断すると(S150でNo)、主制御部10は、S130に移行し、直前の用紙送出処理(S140)による用紙Qの送出が終了した直後から、インク液滴の吐出動作が開始されるように、次パスに関するワンパス印刷処理を開始する(S130)。ここでいう次パスは、次に画像形成を行うべきワンパス領域のことを意味する。
【0053】
主制御部10は、このようにして、キャリッジ51を主走査方向に沿って折返し地点から次の折返し地点まで移動させ、その移動時にワンパス領域に対するインク液滴の吐出動作を記録ヘッド40に実行させる。更には、ワンパス移動の度に、用紙Qを副走査方向に所定距離L0移動させる。
【0054】
そして、用紙Qの画像形成対象領域全体に対する画像形成が完了したと判断すると(S150でYes)、主制御部10は、S160に移行し、排紙処理を行う。排紙処理では、用紙Qが排紙トレイに排出されるように、搬送制御部60を通じて用紙搬送機構70を制御する。その後、主制御部10は、印刷制御処理を終了する。
【0055】
上記印刷制御処理により、用紙Qには、外部装置5から受信した画像データに基づく画像が形成される。本実施形態では、S140において、用紙Qが、記録領域R0の副走査方向の幅よりも短い距離L0だけ、副走査方向に送出されることに注目されたい。
【0056】
このような用紙Qの送出方式に関連して、
図4に示すように、用紙Qには、複数回、具体的には二回のワンパス印刷処理を経て、その領域に対応する画像が形成される第一の領域R1と、一回のワンパス印刷処理で、その領域に対応する画像が形成される第二の領域R2と、が含まれる。
【0057】
図4では、ワンパス印刷処理が実行され、用紙送出処理が実行され、次パスのワンパス印刷処理が実行される過程が、左から右に時系列で示されている。ハッチングされた領域が、インク液滴の吐出により画像が形成される領域に対応する。
【0058】
このように、本実施形態では、用紙Qに形成される画像の品質向上のために、部分的にオーバーラップする形態で、各ワンパス領域に対する画像形成が行われる。そして、オーバーラップ領域である第一の領域R1では、非オーバーラップ領域である第二の領域R2とは異なる方式で、インク液滴の吐出動作が行われる。
【0059】
印刷制御部30は、主制御部10から入力される制御データD1に基づき、ヘッドドライバ45に対する液滴制御信号を生成し、生成した液滴制御信号をヘッドドライバ45に入力することにより、ヘッドドライバ45から記録ヘッド40に入力される駆動信号を制御して、記録ヘッド40におけるインク液滴の吐出動作を制御する。
【0060】
上記第一の領域R1では、複数回のワンパス印刷処理により用紙Qに目的画像が形成されるようにするために、印刷制御部30は、主制御部10から入力される制御データD1のうち、第一の領域R1に対応する制御データ部分に対してマスク処理(S21)を実行する(
図5参照)。
【0061】
主制御部10から入力される制御データD1は、複数の画素のそれぞれに関して、インクドットの形成有無及び形成すべきインクドットのサイズを示す。具体的には、制御データD1は、複数の画素列に関して、画素列毎に、対応する画素列を構成する各画素の制御値を有する。各画素列は、主走査方向に沿う画素の列である。
【0062】
制御値は、形成すべきインクドットのサイズとして、「大」「中」「小」「無し」のいずれかの値を示す。「無し」は、対応する画素が非インクドット形成対象画素であり、インクドットを形成すべき画素ではないことを示す。以下では、制御データD1における各画素列のデータを、列データD10と表現する。制御データD1は、列データD10の一群から構成される。列データD10は、対応する一つの画素列に関する各画素の制御値を有する。
【0063】
この制御データD1に基づく記録ヘッド40の制御により、用紙Qには、一つの画素列に対応する主走査方向に沿う一条のインクドット列が、副走査方向に複数配列された、外部装置5からの画像データに基づく画像が形成される。ワンパス領域におけるインクドット列の副走査方向における数は、記録ヘッド40が備える吐出ノズルNzの副走査方向におけるノズル数に対応する。
【0064】
上記説明から理解できるように、制御データD1には、第一の領域R1に対応する列データD10と、第二の領域R2に対応する列データD10とが含まれる。印刷制御部30は、この制御データD1内の第一の領域R1に対応する列データD10のそれぞれに対して、
図5に示すようにマスク処理(S21)を実行することにより、対応する列データD10を、第一の間引きデータD11と第二の間引きデータD12とに分割する。
【0065】
第一及び第二の間引きデータD11,D12は、第一及び第二の間引きデータD11,D12を重ね合わせるように合成すると、対応する列データD10が完成する互いに相補的なデータである。
【0066】
例えば、
図6に示すように制御値「大」を示す第一、第二、第三、及び第四の画素を有する列データD10に対するマスク処理では、制御値「大」「無し」「大」「無し」を順に示す第一、第二、第三、及び第四の画素を有する第一の間引きデータD11と、制御値「無し」「大」「無し」「大」を順に示す第一、第二、第三、及び第四の画素を有する第二の間引きデータD12とが生成される。
図6における記号Lは、制御値「大」を示す画素に対応し、記号Nは、制御値「無し」を示す画素に対応する。
【0067】
この例によれば、第一の間引きデータD11では、第二画素及び第四画素が、マスク処理(間引き)によって、インクドット形成対象画素から、非インクドット形成対象画素に置き換えられている。
図6において破線描写の円は、非インクドット形成対象画素に置き換えられた画素を示す。
【0068】
同様に、
図6に示す例示的な第二の間引きデータD12では、第一画素及び第三画素が、間引きによって、インクドット形成対象画素から、非インクドット形成対象画素に置き換えられている。以下では、マスク処理によって、インクドット形成対象画素から非インクドット形成対象画素に置き換えられた画素のことをマスク画素とも表現する。
【0069】
印刷制御部30は、主制御部10から入力される制御データD1のうち、第一の領域R1に対応する列データD10を、第一及び第二の間引きデータD11,D12に置き換えるように修正して、各ワンパス印刷処理で用いる制御データであるパスデータD2を生成する。パスデータD2には、間引きによってインクドット形成対象画素から非インクドット形成対象画素に置き換えられた画素に関して、その画素がマスク画素であることを示す情報を付すことができる。
【0070】
印刷制御部30は、各ワンパス印刷処理において、対応するパスデータD2に基づき、ヘッドドライバ45に対する液滴制御信号を生成するように動作する。
【0071】
具体的に、印刷制御部30は、各ワンパス印刷処理で画像形成が行われる領域の列データD10の一群を、主制御部10から入力される制御データD1から抽出し、抽出データにおける第一の領域R1の列データD10のうち、1回目のワンパス印刷処理の対象となる領域の列データD10を、第一の間引きデータD11に置換し、2回目のワンパス印刷処理の対象となる領域の列データD10を、第二の間引きデータD12に置換するように、抽出データを修正して、パスデータD2を生成する。
【0072】
印刷制御部30は、このパスデータD2に基づき、
図7に示す吐出制御処理(
図5に示すS23)において、液滴制御信号を生成し、生成した液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。ヘッドドライバ45は、入力された液滴制御信号に従って、記録ヘッド40が有する各吐出ノズルに対する駆動信号を生成し、生成した駆動信号を記録ヘッド40に入力する。これよりヘッドドライバ45は、液滴制御信号に従うインク液滴の吐出動作が、記録ヘッド40で実行されるように、記録ヘッド40を駆動する。
【0073】
具体的に、印刷制御部30は、パスデータD2内の各画素を順に注目画素に選択し、注目画素毎に、
図7に示す吐出制御処理を実行する。吐出制御処理を開始すると、印刷制御部30は、注目画素が、制御値「無し」の画素であるか否かを判断する(S310)。
【0074】
注目画素が、制御値「無し」の画素、すなわち非インクドット形成対象画素であると判断すると(S310でYes)、印刷制御部30は、S315に移行し、注目画素の駆動信号を入力しないように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力することで、注目画素に関する駆動信号の入力をオフに設定する。
【0075】
駆動信号は、対応画素の吐出ノズルからインクを吐出させるように、圧電アクチュエータを駆動させるための駆動信号であり、ハイ(Hi)/ロウ(Lo)の矩形信号から構成される。駆動信号を入力しないことは、
図8最下段に実線で例示されるように、記録ヘッド40に対する駆動信号をロウに維持することに対応する。
【0076】
印刷制御部30は、S310で否定判断すると、S320に移行し、注目画素が制御値「小」の画素であるか否かを判断する。注目画素が制御値「小」の画素であると判断すると(S320でYes)、印刷制御部30は、S325に移行する。
【0077】
S325において、印刷制御部30は、注目画素の駆動信号として小サイズのインクドットを形成するための「小滴」波形信号を記録ヘッド40に入力するように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。「小滴」波形信号の例は、
図8の下から二段目のグラフにおいて実線で示される。
【0078】
印刷制御部30は、S320で否定判断すると、S330に移行し、注目画素が制御値「中」の画素であるか否かを判断する。注目画素が制御値「中」の画素であると判断すると(S330でYes)、印刷制御部30は、S335に移行し、注目画素の駆動信号として中サイズのインクドットを形成するための「中滴」波形信号を記録ヘッド40に入力するように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。「中滴」波形信号の例は、
図8の下から三段目のグラフにおいて実線で示される。
【0079】
印刷制御部30は、S330で否定判断すると、S340に移行し、注目画素が制御値「大」の画素であるか否かを判断する。ここでは、通常肯定判断される。印刷制御部30は、注目画素が制御値「大」の画素であると判断すると(S340でYes)、注目画素の次画素が制御値「無し」の非インクドット形成対象画素であるか否かを判断する(S350)。
【0080】
ここでいう次画素は、記録ヘッド40の移動方向下流側で注目画素に隣接する画素に対応する。記録ヘッド40の吐出ノズルは、注目画素の駆動信号に従うインク液滴の吐出後、続く駆動信号に従うインク液滴の吐出動作により、次画素に対応するインクドットを形成するように動作する。ここでいう次画素は、駆動信号に基づくインク液滴の吐出動作に関して、注目画素との間に上述した関係を有する画素である。
【0081】
印刷制御部30は、注目画素の次画素が非インクドット形成対象画素ではないと判断すると(S350でNo)、S355に移行する。S355において、印刷制御部30は、注目画素の駆動信号として大サイズのインクドットを形成するための「大滴」波形信号を記録ヘッド40に入力するように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。「大滴」波形信号の例は、
図8の下から四段目のグラフにおいて実線で示される。
【0082】
この他、印刷制御部30は、注目画素の次画素が非インクドット形成対象画素であると判断すると(S350でYes)、続くS360において、注目画素がシングリング印刷制御モードでインクドットが形成される画素であるか否かを判断する。
【0083】
ここでいうシングリング印刷制御モードとは、主走査方向に沿う一条のインクドット列を用紙Qに形成するときに、複数回のワンパス印刷処理に分けて、用紙Qにインクドット列を形成する制御モードのことを言う。具体的には、シングリング印刷制御モードは、複数回のワンパス印刷処理の間で用紙Qを副走査方向に所定量搬送する一方、各ワンパス印刷処理では、記録ヘッド40によるインク液滴の吐出動作を制御し、用紙Qの同じ領域に少なくとも2つの異なる吐出ノズル群N1,N2からインク液滴を吐出することで、部分インクドット列の重なり画像として、用紙Qに一条のインクドット列を形成する制御モードのことを言う。シングリング印刷制御モードは、上述した第一の領域R1に対して実行される制御モードである。
【0084】
上述したように、第一の領域R1に関しては、第一及び第二の間引きデータD11,D12に基づく合計二回のワンパス印刷処理により、用紙Qに、列データD10に対応するインクドット列が形成される。
【0085】
すなわち、一回目のワンパス印刷処理では、第一の領域R1に第一の間引きデータD11に対応する部分インクドット列が形成され、二回目のワンパス印刷処理では、第二の間引きデータD12に対応する部分インクドット列が、第一の間引きデータD11に基づく部分インクドット列にオーバーラップするように形成される。
【0086】
一回目のワンパス印刷処理では、複数の吐出ノズルNzのうち、副走査方向上流に位置する第一の吐出ノズル群Nz1(
図2参照)からのインク液滴の吐出により第一の間引きデータD11に対応する部分インクドット列が用紙Qに形成され、二回目のワンパス印刷処理では、複数の吐出ノズルNzのうち、副走査方向下流に位置する第二の吐出ノズル群Nz2からのインク液滴の吐出により第二の間引きデータD12に対応する部分インクドット列が用紙Qに形成される。
【0087】
このようにシングリング印刷制御モードは、主走査方向に一条の、換言すれば1ライン分のインクドット列を、記録ヘッド40の往復運動における複数回の片道移動のそれぞれで、部分インクドット列を形成することにより、部分インクドット列の重なり画像として形成する制御モードである。記録ヘッド40は、主走査方向に沿う第一の方向、第一の方向とは逆方向である第二の方向に交互に片道移動するときに、それぞれの片道移動で用紙Qに部分インクドット列を形成してもよいし、記録ヘッド40は、第一及び第二の方向のうちの特定の一方向に片道移動するときのみに、部分インクドット列を形成してもよい。
【0088】
このシングリング印刷制御モードは、第二の領域R2に対する非シングリング印刷制御モードとは異なる。非シングリング印刷制御モードでは、1ライン分のインクドット列が分割されずに、一度のワンパス印刷処理で、換言すれば、記録ヘッド40の1回の片道移動時に形成される。
【0089】
シングリング印刷制御モードによるインクドット列の形成が行われるのは、次の理由からである。仮に、第一の領域R1のようなオーパーラップした画像形成対象領域を設けずに、各ワンパス印刷処理で、互いに重複しないワンパス領域に対して画像形成を行う場合には、第一のワンパス印刷処理において第一の吐出ノズル群Nz1を用いて形成される画像と、続く第二のワンパス印刷処理において第二の吐出ノズル群Nz2を用いて形成される画像と、が用紙Q上で隣り合うことになる。
【0090】
異なる吐出ノズル群Nz1,Nz2で形成された画像が隣り合う場合には、その境界部分の画像ムラが目立ちやすい。このような理由から、本実施形態では、シングリング印刷制御モードを採用し、各ワンパス印刷処理で形成される画像の境界でのムラを抑制するようにしている。
【0091】
但し、シングリング印刷制御モードを採用しても、第一の領域R1では、上述したシングリング印刷制御モードによる画像形成が行われるのに対し、第一の領域R1に隣接する第二の領域R2では、非シングリング印刷制御モードによる画像形成が行われることになる。このため、印刷制御モードの違いによる画質の違いに起因して、第一の領域R1と、第一の領域R1に対し副走査方向の上及び下流で隣接する第二の領域R2との境界では、画像ムラが依然として残る可能性がある。
【0092】
この画像ムラは、複数回のワンパス印刷処理に分けてインクドット列を形成する場合には、一回のワンパス印刷処理で一度にインクドット列を形成する場合と比較して、インク液滴の広がりや浸透に違いが生じることに起因する。
【0093】
この違いは、特に、マスク処理により一回目のワンパス印刷処理では、インクドットが形成されず、二回目のワンパス印刷処理では、インクドットが形成される画素において生じやすい。
【0094】
なぜなら、マスク処理によりインクドットが形成されない画素に隣接する注目画素に対するインク液滴は、隣接領域にインク液滴が形成されていない為、隣接領域にインク液滴が広がりやすいのに対して、非シングリング印刷制御モードでは、注目画素に隣接する画素にもインクドットが形成されるため、その隣接領域にインク液滴が広がりにくいためである。
【0095】
そこで、印刷制御部30は、S360において、注目画素がシングリング印刷制御モードでインクドットが形成される画素であるか否かを判断する。この判断結果に従って、注目画素に吐出するインク液滴量を調整することにより、印刷制御モードの違いによる画像ムラを抑制して、より高品質な画像を用紙Qに形成する。
【0096】
印刷制御部30は、注目画素がシングリング印刷制御モードでインクドットが形成される画素ではないと判断すると(S360でNo)、すなわち、非シングリング印刷制御モードで形成される第二の領域R2の画素であると判断すると、S380に移行する。
【0097】
S380において、印刷制御部30は、注目画素の駆動信号として大サイズのインクドットを形成するための「第一ロング」波形信号を記録ヘッド40に入力するように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。「第一ロング」波形信号の例は、
図8の下から五段目のグラフにおいて実線で示される。
【0098】
「第一ロング」波形信号は、一画素当たりの駆動周期Tより長い時間に亘って記録ヘッド40に入力される駆動信号である。ヘッドドライバ45は、各画素に対応する駆動信号を、主走査方向に定速搬送されるキャリッジ51及び記録ヘッド40の移動に合わせて周期的に記録ヘッド40に入力する。駆動周期Tは、このように周期的に記録ヘッド40に入力される駆動信号の入力周期である。
【0099】
「小滴」「中滴」「大滴」波形信号が駆動周期Tの時間幅を有するのに対して、「第一ロング」波形信号が、次画素の駆動周期Tに侵入した駆動周期Tより長い時間幅を有するのは、「第一ロング」波形信号によりインクドットが形成される画素の次画素が非インクドット形成対象画素であるためである。
【0100】
次画素が非インクドット形成対象画素であることで、注目画素に対応する駆動周期Tの経過後、直ちに駆動信号の入力をオフにすると、注目画素に対するインク液滴の吐出量が不足する。すなわち、各駆動周期の駆動信号は、完全に各画素に対応しているわけではなく、次画素の駆動信号の入力が、前画素のインク液滴の吐出動作の終末に影響を与える。
【0101】
「小滴」「中滴」「大滴」波形信号は、次画素がインクドット形成対象画素であることを前提に、インク液滴が適量になるように定義された駆動信号である。このため、次画素が非インクドット形成対象画素である場合に、これらの波形信号を入力すると、インク液滴の吐出量が不足する。このような理由から、次画素が非インクドット形成対象画素である注目画素に対して選択される「第一ロング」波形信号は、駆動周期Tを超えた波形成分を有する。
【0102】
このように、「大滴」波形信号及び「第一ロング」波形信号は、記録ヘッド40に、吐出ノズルから同量のインク液滴を吐出させて、同サイズの大ドットを用紙Qに形成させる駆動信号である点で共通するが、「第一ロング」波形信号は、吐出動作の次画素での休止に伴うインク液滴の不足を補う特殊成分を、駆動周期Tを超えて備える点で、「大滴」波形信号とは異なる。
【0103】
印刷制御部30は、注目画素がシングリング印刷制御モードでインクドットが形成される画素であると判断すると(S360でYes)、すなわち、注目画素が第一の領域R1の画素であると判断すると、S370に移行する。
【0104】
S370において、印刷制御部30は、注目画素の次画素がマスク画素であるか否かを判断する。すなわち、印刷制御部30は、次画素が、複数回のワンパス印刷処理の実行の過程でインクドットが形成される画素であるが、今回のワンパス印刷処理では、インクドットが形成されない画素であるか否かを判断する。
【0105】
そして、次画素がマスク画素ではないと判断すると(S370でNo)、換言すれば、次画素が複数回のワンパス印刷処理によってもインクドットが形成されない画素であると判断すると、印刷制御部30は、S380に移行し、注目画素の駆動信号として「第一ロング」波形信号を記録ヘッド40に入力するように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。
【0106】
この他、次画素がマスク画素であると判断すると(S370でYes)、印刷制御部30は、S390に移行し、注目画素の駆動信号として「第二ロング」波形信号を記録ヘッド40に入力するように指示する液滴制御信号を、ヘッドドライバ45に入力する。「第二ロング」波形信号の例は、
図8の下から六段目、すなわち最上段のグラフに示される。
【0107】
「第二ロング」波形信号は、「第一ロング」波形信号と同様に、一画素当たりの駆動周期Tより長い時間に亘って記録ヘッド40に入力される駆動信号である。「第二ロング」波形信号では、「第一ロング」波形信号と同様に、次画素の駆動周期Tに侵入した波形成分が、インク吐出量の低下を補う成分として機能する。
【0108】
「第二ロング」波形信号は、「大」サイズのインクドットを用紙Qに形成するためのインク液滴の吐出動作を記録ヘッド40に実行させるための駆動信号である点で、「第一ロング」波形信号及び「大滴」波形信号と同じである。しかしながら、「第二ロング」波形信号は、「第一ロング」波形信号よりも少ない液量のインク液滴を記録ヘッド40に吐出させるための駆動信号である点で、「第一ロング」波形信号とは異なる。
【0109】
例えば、「第一ロング」波形信号により吐出ノズルから吐出されるインク液滴の液量は、31ピコリットル(pl)であるのに対し、「第二ロング」波形信号により吐出ノズルから吐出されるインク液滴の液量は、30ピコリットル(pl)と、「第一ロング」波形よりも少ない。
【0110】
「第二ロング」波形信号の液量が「第一ロング」波形信号の液量より小さいのは、「第二ロング」波形信号により形成される注目画素のインクドットが、インク液滴の広がりの違いにもかかわらず、非シングリング印刷制御モードで「大滴」波形信号により形成されるインクドットと、同じようなサイズで用紙Qに形成されるようにするためである。
【0111】
このように印刷制御部30は、非インクドット形成対象画素の前画素に対応する注目画素の駆動信号として、シングリング印刷制御モードと非シングリング印刷制御モードとの間で、異なる駆動信号(第一ロング波形信号及び第二ロング波形信号)を記録ヘッド40に入力するようにヘッドドライバ45を制御する。
【0112】
ヘッドドライバ45は、各画素に関して上記液滴制御信号の入力を印刷制御部30から受けて、その入力値をレジスタに保持する。ヘッドドライバ45は、入力値に応じた駆動信号を、対応する画素に関するインク液滴の吐出タイミングに合わせて、対応する吐出ノズルからインク滴を吐出させるように圧電アクチュエータを駆動する駆動信号として記録ヘッド40に入力する。この駆動信号の入力により、記録ヘッド40では、対応する吐出ノズルから液滴制御信号に従うインク液滴が吐出される。
【0113】
以上に説明した本実施形態によれば、シングリング印刷制御モードでは、マスク処理(S21)により、インクドット形成対象画素が非インクドット形成対象画素に置換されることに伴って生じる、シングリング印刷制御モードと非シングリング印刷制御モードとの間の画質の差異を、次画素が非インクドット形成対象画素であるときの注目画素の駆動信号を、第一ロング波形信号と第二ロング波形信号との間で切り替えることにより抑制する。
【0114】
本実施形態のように、ワンパス領域の一部のみをオーバーラップ領域とせずに、全領域をオーバーラップ領域とすれば、印刷制御モードの差異から生じる画質の変化は生じない。しかしながら、この場合には、用紙送出処理(S140)における用紙Qの送出量が小さくなるために、印刷に関するスループットが悪化する。
【0115】
本実施形態によれば、オーパーラップ領域を部分的にしか設けないために上記スループットの悪化を抑制することができる。しかも、隣接するワンパス領域間の画像ムラをシングリング印刷により抑えつつ、印刷方式の切替に起因する画像ムラも抑制することができる。従って、本実施形態によれば、高品質な画像を高速印刷可能な画像形成システム1を構築することができる。
【0116】
特に、本実施形態の画像形成システム1は、第一の領域R1に対する第一の印刷制御モードであるシングリング印刷制御モードにおいて、次のような駆動信号の切替を行う。すなわち、印刷制御部30は、注目画素が非インクドット形成対象画素の前画素である場合には、非インクドット形成対象画素がマスク画素であるか否かに応じて、注目画素の駆動信号を切り替える。マスク画素は、上述したように複数回のワンパス移動でインクドットが形成される画素であって、マスク処理(S21)で非インクドット形成対象画素に置換された画素である。
【0117】
具体的には、印刷制御部30は、注目画素の次画素がマスク画素である場合には、注目画素の駆動信号として、次画素がマスク画素以外の非インクドット形成対象画素であるときの駆動信号である第一ロング波形信号よりも、記録ヘッド40から吐出されるインク液滴の液量が少ない第二ロング波形信号が記録ヘッド40に入力されるように、ヘッドドライバ45を制御する。
【0118】
印刷制御部30は、次画素がマスク画素以外の非インクドット形成対象画素であるときには、シングリング印刷制御モード、及び、第二の印刷制御モードである非シングリング印刷制御モードのいずれにおいても、注目画素の駆動信号として、同じ第一ロング波形信号が記録ヘッド40に入力されるように、ヘッドドライバ45を制御する。
【0119】
印刷制御部30は、非シングリング印刷制御モードにおいて、注目画素が非インクドット形成対象画素の前画素である場合には、シングリング印刷制御モードにおいて、注目画素がマスク画素の前画素である場合に記録ヘッド40に入力される駆動信号(第二ロング波形信号)よりも、吐出されるインク液滴の液量が多い駆動信号(第一ロング波形信号)が記録ヘッド40に入力されるように、ヘッドドライバ45を制御する。
【0120】
換言すれば、印刷制御部30は、シングリング印刷制御モードにおいて、注目画素がマスク画素の前画素である場合には、非シングリング印刷制御モードにおいて、注目画素が非インクドット形成対象画素の前画素であるよりも、吐出されるインク液滴の液量が少ない駆動信号(第二ロング波形信号)が記録ヘッド40に入力されるように、ヘッドドライバ45を制御する。
【0121】
従って、本実施形態によれば、次画素の非インクドット形成対象画素がマスク画素であるか否かに応じて、注目画素のインクドット形成のために吐出されるインク液滴の液量を適切に調整することができる。更には、印刷制御モードの違いに合わせて、非インクドット形成対象画素の前画素に対するインク液滴の液量を適切に調整することができる。
【0122】
更に、本実施形態では、次画素が非インクドット形成対象画素である注目画素の駆動信号として、次画素がドット形成対象画素であるときの注目画素の駆動信号である「小滴」波形信号、「中滴」波形信号、及び「大滴」波形信号よりも、駆動時間の長い、具体的には駆動周期Tより長い時間幅を有する第一又は第二ロング波形信号を、記録ヘッド40に入力し、液量の適切な制御を行う。
【0123】
よって、本実施形態によれば、従来と比較して、高品質な画像を用紙Qに形成可能な優れた画像形成システム1を構築することができる。
【0124】
本開示が、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができることは言うまでもない。上記実施形態では、次画素がマスク画素ではない非インクドット形成対象画素である注目画素の駆動信号として、シングリング印刷制御モード及び非シングリング印刷制御モードのいずれにおいても、同じ第一ロング波形信号が記録ヘッド40に入力される(S380)。しかしながら、シングリング印刷制御モードと非シングリング印刷制御モードとの間では、異なる駆動信号が記録ヘッド40に入力されてもよい。
【0125】
すなわち、印刷制御部30は、S360において否定判断した場合に、S380には移行せずに、注目画素の駆動信号として、第一及び第二ロング波形信号とは異なる第三ロング波形信号を入力するように指示する液滴制御信号をヘッドドライバ45に入力してもよい。
【0126】
この他、上記実施形態において定義されたインクドットのサイズは、「小」「中」「大」の3種であるが、更に多種のサイズが定義されてもよい。
【0127】
上記実施形態の記録ヘッド40は、圧電アクチュエータにより圧力室内のインクに圧力を付与して複数の吐出ノズルNzからインク液滴を吐出するが、記録ヘッド40の構成は、これに限られない。例えば、記録ヘッド40は、インクを加熱して圧力室内に気泡を発生させることで、複数の吐出ノズルNzからインクを吐出するように動作してもよい。
【0128】
また、複数の吐出ノズルNzからインク液滴を吐出して用紙Qに画像を形成するインクジェットプリンタに本開示の技術を適用した例について説明したが、本開示は、この例に限定されない。用紙Q以外の被吐出媒体に対して液体を吐出して画像を形成する画像形成システムにも適用することも可能である。
【0129】
例えば、被吐出媒体が載置されたステージを副走査方向に搬送可能なプリンタであって、キャリッジとともに記録ヘッドを主走査方向に移動させつつ吐出ノズルからインク液滴を吐出させるワンパス印刷処理と、ステージの移動と、を交互に繰り返すことによって、被吐出媒体に対して画像を印刷するプリンタ、に本開示の技術を適用することも可能である(例えば、特開2017-144726号公報参照)。このようなプリンタにおける被吐出媒体としては、例えば、Tシャツ、屋外用広告用のシート等を挙げることができる。スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂等に、インク液滴を吐出して画像を形成する画像形成システムにも、本開示の技術を適用することが可能である。
【0130】
上述した印刷制御部30、及び、搬送制御部60は、ASICによって構成されてもよい。上述した主制御部10、印刷制御部30、及び、搬送制御部60を含む制御系は、CPUとASICとの併用によって制御を実現する構成にされてもよいし、複数のCPUによって制御を実現する構成にされてもよいし、複数のASICによって制御を実現する構成にされてもよい。
【0131】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0132】
最後に用語間の対応関係について説明する。主制御部10、印刷制御部30、ヘッドドライバ45、及び搬送制御部60は、制御器の一例に対応する。非インクドット形成対象画素を次画素に有する注目画素は、特定画素の一例に対応し、マスク画素を次画素に有する注目画素は、特定隣接画素の一例に対応する。
【符号の説明】
【0133】
1…画像形成システム、10…主制御部、30…印刷制御部、40…記録ヘッド、45…ヘッドドライバ、50…キャリッジ搬送機構、51…キャリッジ、60…搬送制御部、70…用紙搬送機構、703…搬送ローラ、704…ピンチローラ、706…排紙ローラ、707…拍車ローラ、709…動力伝達機構、D1…制御データ、D2…パスデータ、D10…列データ、Nz…複数の吐出ノズル、Nz1…第一の吐出ノズル群、Nz2…第二の吐出ノズル群、Q…用紙、R1…第一の領域、R2…第二の領域。