(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20230926BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230926BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B41J2/17 203
B41J2/01 451
B41J2/19
(21)【出願番号】P 2019135376
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 悟
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094518(WO,A1)
【文献】特開2018-089904(JP,A)
【文献】特開2010-069648(JP,A)
【文献】特開2011-207017(JP,A)
【文献】特開平09-011493(JP,A)
【文献】特開2015-168257(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190200(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク中の溶存気体を透過可能な気体透過膜を内部に有し、真空ポンプによって内部の気圧を真空圧まで減圧することにより前記気体透過膜を介して前記インク中の溶存気体を除去する脱気部と、
前記脱気部によって除去された前記溶存気体が流れる真空経路上に設けられ、前記溶存気体とともに前記気体透過膜を透過した、前記インクに含まれる液体成分を廃液として貯留する廃液貯留部と、
前記脱気部内の気圧を減圧する減圧時間に基づいて、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する推定部と、
推定された前記廃液の貯留量と前記真空圧の値とに基づいて、前記脱気部内の気圧を減圧し続けた場合に前記廃液の貯留量が所定量となるまでの時間を算出する時間算出部と、
算出された前記時間が所定時間以下である場合、前記廃液貯留部の清掃に関する警告を報知する報知部と、
を備え
る画像形成装置。
【請求項2】
インク中の溶存気体を透過可能な気体透過膜を内部に有し、真空ポンプによって内部の気圧を真空圧まで減圧することにより前記気体透過膜を介して前記インク中の溶存気体を除去する脱気部と、
前記脱気部によって除去された前記溶存気体が流れる真空経路上に設けられ、前記溶存気体とともに前記気体透過膜を透過した、前記インクに含まれる液体成分を廃液として貯留する廃液貯留部と、
前記脱気部内の気圧を減圧する減圧時間に基づいて、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する推定部と、
前記脱気部内に残留する前記液体成分を、前記脱気部から前記廃液貯留部に排出させる排出制御を行う排出制御部と、
を備え、
前記推定部は、前記排出制御が行われる毎に、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する、
画像形成装置。
【請求項3】
前記真空ポンプは、前記脱気部内における前記インクの温度が所定温度以上である場合、前記脱気部内の気圧を減圧する、
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記減圧時間と前記廃液の貯留量との間の関係を示す関係情報を参照し、前記廃液の貯留量を推定する、
請求項1
~3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記真空圧の値と前記減圧時間とに応じて、前記廃液の貯留量を推定する、
請求項1
~4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記減圧時間と前記廃液の貯留量との間の関係を前記真空圧の値毎に示す関係情報を参照し、前記廃液の貯留量を推定する、
請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記真空圧の値は、前記真空圧について設定された設定値である、
請求項
5または
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
推定された前記廃液の貯留量と前記真空圧の値とに基づいて、前記脱気部内の気圧を減圧し続けた場合に前記廃液の貯留量が所定量となるまでの時間を算出する時間算出部と、
算出された前記時間が所定時間以下である場合、前記廃液貯留部の清掃に関する警告を報知する報知部と、
を備える請求項
2~
7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記脱気部内の気圧を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部の検出結果に基づいて、前記脱気部内の気圧が前記真空圧に減圧されるように、前記真空ポンプを制御する真空制御部と、
を備える請求項1~
8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記廃液貯留部に貯留される前記廃液がユーザーによって除去された後、前記減圧時間をリセットするリセット部を備える、
請求項1~
9の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記脱気部内に残留する前記液体成分を、前記脱気部から前記廃液貯留部に排出させる排出制御を行う排出制御部を備える、
請求項1
、3~
10の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記排出制御部は、所定時間が経過する毎に前記排出制御を行う、
請求項
11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記推定部は、前記排出制御が行われる毎に、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する、
請求項
11または
12に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置により搬送される記録媒体に対し、画像形成ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出することにより記録媒体に画像を形成するインクジェット画像形成装置がある。
【0003】
このようなインクジェット画像形成記録装置では、インク中に溶存している気体が気泡となってインク中に残留していると、インクの吐出時に、吐出不良を発生するおそれがある。そのため、従来のインクジェット画像形成装置では、インクがインクジェットヘッドに供給される前の段階で、インクの流路間に脱気モジュールを配置し、その脱気モジュールでインク内に溶存した気泡を除去する構成が採られている。
【0004】
脱気モジュールとしては、一般的に、減圧可能な筒状部材に、複数本の中空糸膜を保持した装置が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。この中空糸膜を用いた脱気モジュールでは、中空糸膜にインクを流しながら真空ポンプの吸引により筒状部材内部を真空に減圧させることで、中空糸膜内を流れるインクに溶存している気泡を除去することができる。
【0005】
ところで、中空糸膜を用いたインクの脱気モジュールにおいては、例えば中空糸膜の劣化を理由として、インクに含まれる液体成分が気泡とともに中空糸膜を透過してしまう場合があった。この場合、中空糸膜を透過した液体成分が、気泡が流下する真空経路に流入して真空経路を詰まらせ、ひいては真空ポンプに故障を発生させるという問題があった。
【0006】
この問題に対して、脱気モジュールと真空ポンプとの間に、中空糸膜を透過した液体成分を廃液として貯留する廃液タンク(廃液貯留部)を設けることで真空経路の詰まりを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。ここで、廃液タンクに貯留される廃液量は、当該廃液の重量や液面位置を検知するセンサーの検知結果に基づいて監視され、廃液量が所定量に達した段階で、ユーザー(例えばサービスマン)によって廃液タンクに貯留される廃液は清掃(除去)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-168257号公報
【文献】特開2008-238127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、センサーの検知結果に基づいて廃液量を監視する従来技術では、当該センサーを配置するためのスペースが必要になったり、当該センサーを設けるためのコストが増大したりするという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、センサーを用いることなく、廃液貯留部に貯留される廃液量を監視することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、
インク中の溶存気体を透過可能な気体透過膜を内部に有し、真空ポンプによって内部の気圧を真空圧まで減圧することにより前記気体透過膜を介して前記インク中の溶存気体を除去する脱気部と、
前記脱気部によって除去された前記溶存気体が流れる真空経路上に設けられ、前記溶存気体とともに前記気体透過膜を透過した、前記インクに含まれる液体成分を廃液として貯留する廃液貯留部と、
前記脱気部内の気圧を減圧する減圧時間に基づいて、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する推定部と、
推定された前記廃液の貯留量と前記真空圧の値とに基づいて、前記脱気部内の気圧を減圧し続けた場合に前記廃液の貯留量が所定量となるまでの時間を算出する時間算出部と、
算出された前記時間が所定時間以下である場合、前記廃液貯留部の清掃に関する警告を報知する報知部と、
を備える。
また、本発明に係る画像形成装置は、
インク中の溶存気体を透過可能な気体透過膜を内部に有し、真空ポンプによって内部の気圧を真空圧まで減圧することにより前記気体透過膜を介して前記インク中の溶存気体を除去する脱気部と、
前記脱気部によって除去された前記溶存気体が流れる真空経路上に設けられ、前記溶存気体とともに前記気体透過膜を透過した、前記インクに含まれる液体成分を廃液として貯留する廃液貯留部と、
前記脱気部内の気圧を減圧する減圧時間に基づいて、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する推定部と、
前記脱気部内に残留する前記液体成分を、前記脱気部から前記廃液貯留部に排出させる排出制御を行う排出制御部と、
を備え、
前記推定部は、前記排出制御が行われる毎に、前記廃液貯留部における前記廃液の貯留量を推定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサーを用いることなく、廃液貯留部に貯留される廃液量を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】インクジェット画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】画像形成ヘッドにインクを供給するインク供給機構の構成を示す図である。
【
図4】インクジェット画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図5】脱気部内の気圧を減圧する減圧時間と、廃液貯留部における廃液の貯留量との間の関係を示す図である。
【
図6】貯留量推定処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】警告確認処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】脱気部内の気圧を減圧する減圧時間と、廃液貯留部における廃液の貯留量との間の関係を示す図である。
【
図9】貯留量推定処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、インクジェット画像形成装置1の概略構成を示す図である。インクジェット画像形成装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40(
図4を参照)とを備える。
【0015】
インクジェット画像形成装置1(本発明の「画像形成装置」として機能)は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Pを排紙部30に搬送する。記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0016】
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Pを給紙トレイ11から画像形成部20へ搬送する。
【0017】
画像形成部20は、搬送部21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部28などを有する。
【0018】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の搬送面211a(載置面)の上に載置された記録媒体Pを保持し、搬送ドラム211がX方向(
図1の紙面垂直方向)に延びた回転軸(円筒軸)を中心に回転して周回移動することで当該搬送ドラム211上の記録媒体Pを搬送方向(Y方向)に搬送する搬送動作を行う。搬送ドラム211は、その搬送面211a上で記録媒体Pを保持するための図示しない爪部および吸気部を備える。記録媒体Pは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面211aに吸い寄せられることで搬送面211aに保持される。搬送部21は、搬送ドラム211を回転させるための搬送ドラムモーター(図示せず)に接続されている。搬送ドラム211は、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0019】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送部21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0020】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送される記録媒体Pが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部40(
図4を参照)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0021】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の搬送面211aに対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、インク吐出面と搬送面211aとが所定の距離だけ離隔されるように配置される。本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0022】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図である。ここでは、ヘッドユニット24のうち搬送ドラム211の搬送面211aと対向する面が示されている。
【0023】
ヘッドユニット24は、取り付け部材244に取り付けられた4つの画像形成ヘッド242を備える。画像形成ヘッド242の各々には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズル243とを各々有する複数の画像形成素子(記録素子)が設けられている。この画像形成素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0024】
画像形成ヘッド242では、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(本実施の形態では、搬送方向と直交する方向、すなわちX方向)に等間隔に配列されたノズル243からなる2つのノズル列が形成されている。これら2つのノズル列は、ノズル243の配置位置が、各ノズル列におけるノズル243の配置間隔の2分の1だけX方向について互いにずれるように設けられている。
【0025】
4つの画像形成ヘッド242は、ノズル列のX方向についての配置範囲が切れ目なく繋がるように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズル243のX方向についての配置範囲は、搬送部21により搬送される記録媒体Pのうち画像が形成される領域のX方向の幅をカバーしており、ヘッドユニット24の位置は、画像の形成時には搬送ドラム211の回転軸に対して固定されて用いられる。すなわち、ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対するX方向についての画像形成可能幅に亘ってインクを吐出可能なラインヘッドを有しており、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置である。
【0026】
なお、画像形成ヘッド242が有するノズル列の数は、2つではなく、1つまたは3つ以上であっても良い。また、ヘッドユニット24が有する画像形成ヘッド242の数は、4つでなく、3つ以下または5つ以上であっても良い。
【0027】
画像形成素子のノズルから吐出されるインクとしては、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化する性質を有するものが用いられる。また、本実施の形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクが用いられる。ヘッドユニット24は、ヘッドユニット24内に貯留されるインクを加熱するインク加熱部(図示せず)を備える。インク加熱部は、制御部40による制御下で動作し、ゾル状となる温度にインクを加熱する。
【0028】
画像形成ヘッド242は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが記録媒体Pに吐出されると、インク滴が記録媒体Pに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体P上で凝固する。
【0029】
定着部25は、搬送部21のX方向の幅に亘って配置された発光部を有し、搬送部21に載置された記録媒体Pに対して当該発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部28の受け渡しドラム281の配置位置までの間において搬送面211aと対向して配置される。
【0030】
デリバリー部28は、記録媒体Pを搬送部21からベルトループ282に受け渡す円筒状の受け渡しドラム281と、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ282とを有し、受け渡しドラム281により搬送部21からベルトループ282上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ282により搬送して排紙部30に送出する。
【0031】
排紙部30は、デリバリー部28により画像形成部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0032】
次に、
図3を参照して、インクジェット画像形成装置1において画像形成ヘッド242にインクを供給するインク供給機構60の構成を説明する。
【0033】
図3に示すように、インク供給機構60は、メインタンク62、脱気部64、廃液貯留部66、真空ポンプ68、サブタンク70、脱気大気開放弁72、温度検出部74および圧力検出部76を備える。
【0034】
メインタンク62は、ヘッドユニット24の外部に設けられ、ヘッドユニット24に対応する色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)またはブラック(K))のインクを貯留する。メインタンク62に貯留されたインクは、制御部40(
図4を参照)から供給される制御信号に基づいて動作する供給ポンプ(図示せず)により汲み出され、インク流路および脱気部64を介してサブタンク70に供給される。
【0035】
サブタンク70は、メインタンク62から汲み出され、画像形成ヘッド242に供給されるインクを貯留する。本実施の形態では、サブタンク70として約40リットルの容量を有した金属製の容器が用いられる。サブタンク70は、外部に開放された容器であり、インクの量の増減に関わらずほぼ大気圧に保たれる。
【0036】
脱気部64は、メインタンク62からインク流路を介して脱気部64に流入したインク中の溶存気体を除去する(より具体的には、溶存気体をインクから脱離させる)脱気を行う。脱気部64により脱気されたインクは、サブタンク70に送液される。
【0037】
脱気部64と真空ポンプ68との間は、真空チューブ(図示せず)で接続され、脱気部64から真空ポンプ68までの真空経路が形成される。真空ポンプ68が吸引動作を行って真空経路内が大気圧より低い真空圧(所定の負圧の範囲内の気圧)とされることで、脱気部64においてインク中の溶存気体が取り除かれ、この取り除かれた溶存気体が真空経路を流れる。真空ポンプ68は、真空経路内を必ずしも超高真空状態にまでする必要はなく、脱気に必要な程度の減圧を行う。また、真空ポンプ68は、制御部40から供給される制御信号に基づいて動作する。
【0038】
脱気部64には、気体を透過させる一方、液体を透過させない気体透過性を有する脱気膜(本発明の「気体透過膜」として機能)が設けられている。脱気部64においては、脱気部64に流入したインクを脱気膜の一方の面に接触させ、他方では気体を真空ポンプ68により吸引することにより、インク中の溶存気体を真空経路に吸引して脱気させる。脱気部64の構成は、特には限られないが、例えば一端が閉塞した多数の中空状の微細糸構造をなす脱気膜(中空糸膜)を多数有し、当該中空糸膜の他端側から真空ポンプ68により気体を吸引することにより中空糸膜内部が減圧される構成とすることができる。この状態で、中空糸膜の膜面(外面)にインクが接触することで、インク中の溶存気体のみが選択的に膜面を透過して中空糸膜内部に吸引され、インクが脱気される。なお、脱気部64は、中空糸膜の外側が減圧されて、中空糸膜の内側を通過するインク中の溶存気体が中空糸膜の外側に脱離される構成であっても良い。
【0039】
廃液貯留部66は、脱気部64によって除去された溶存気体が流れる真空経路上に設けられ、例えば中空糸膜の劣化を理由として、脱気部64から溶存気体だけではなくインクに含まれる液体成分が脱気膜を透過して真空経路内に流入した場合に、当該液体成分を廃液として貯留する。すなわち、廃液貯留部66は、脱気部64から溶存気体だけではなく液体成分が吸引されて真空経路内に流入した場合に、この液体成分を溶存気体から分離し、当該液体成分が真空経路を詰まらせ、ひいては当該液体成分が真空ポンプ68に吸引されることで真空ポンプ68に故障を発生させることを防ぐ役割を担うトラップである。廃液貯留部66は、例えば、小型のタンク状であり、その底部に液体成分が貯留される。
【0040】
なお、脱気部64の近傍には、脱気部64から廃液貯留部66までの真空経路を加熱するための加熱部(図示せず)が設けられている。この構成により、ゲル化により粘性が高くなった紫外線硬化型インクであっても、真空経路内に流入した液体成分について、脱気部64から廃液貯留部66までの送液不良を防止することができる。
【0041】
脱気大気開放弁72は、脱気部64から真空ポンプ68までの間の真空経路内を大気開放するための弁である。脱気大気開放弁72は、例えばインクジェット画像形成装置1の電源停止時において、脱気部64を保守するために、脱気部64が真空状態から大気圧状態となるように開放制御される。この開放制御により、脱気部64の脱気膜内、または、脱気部64内(具体的には、脱気膜の外)に残留する液体成分は、脱気部64から廃液貯留部66に排出される。脱気大気開放弁72は、制御部40から供給される制御信号に基づいて動作する。
【0042】
温度検出部74は、例えばサーミスタ(接液サーミスタ)から構成され、メインタンク62から脱気部64に流入したインクの温度を検出し、検出した温度を制御部40に出力する。
【0043】
圧力検出部76は、脱気部64から真空ポンプ68までの間の真空経路内における気圧を検出し、検出した気圧を制御部40に出力する。
【0044】
図4は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。インクジェット画像形成装置1は、加熱部23と、ヘッド駆動部241および画像形成ヘッド242と、定着部25と、制御部40と、搬送駆動部51と、操作表示部52(本発明の「報知部」として機能)と、入出力インターフェース53などを備える。
【0045】
ヘッド駆動部241は、画像形成ヘッド242の画像形成素子に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、画像形成ヘッド242のノズル243から画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0046】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。なお、制御部40は、本発明の「推定部」、「時間算出部」、「真空制御部」、「リセット部」および「排出制御部」として機能する。
【0047】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0048】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでも良い。
【0049】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0050】
記憶部44には、入出力インターフェース53を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像形成命令)および当該プリントジョブに係る画像データなどが記憶される。このうちプリントジョブには、形成する画像に係る画像データを指定する情報の他、画像を形成する記録媒体Pの種別に係る情報(例えば、記録媒体Pの大きさおよび厚さ)が含まれる。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0051】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム211を所定の速度およびタイミングで回転させる。
【0052】
また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22およびデリバリー部28を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Pの搬送部21への供給および搬送部21からの排出を行わせる。
【0053】
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。
【0054】
入出力インターフェース53は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース53は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースの何れかまたはこれらの組み合わせで構成される。
【0055】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース53を介してプリントジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
【0056】
ところで、従来のインクジェット画像形成装置1においては、廃液貯留部66に貯留される廃液量は、当該廃液の重量や液面位置を検知するセンサーの検知結果に基づいて監視され、廃液量が所定量(例えば、満杯量)に達した段階で、ユーザー(例えばサービスマン)によって廃液タンクに貯留される廃液は清掃(除去)される。しかしながら、センサーの検知結果に基づいて廃液量を監視する従来技術では、当該センサーを配置するためのスペースが必要になったり、当該センサーを設けるためのコストが増大したりするという問題があった。
【0057】
そこで、本実施の形態では、制御部40は、脱気部64において脱気が行われる際、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間に基づいて、廃液貯留部66における廃液の貯留量を推定する。
【0058】
本発明者らは、脱気部64内の気圧を減圧する際に真空圧について設定された設定値(脱気部64固有の設定値)を様々に変えて試験を行った結果、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間には、減圧時間が長くなるにつれて貯留量が多くなるという略比例関係が成立する知見を得た。また、真空圧の設定値(絶対値)が小さくなるほど、すなわち大気圧に近づくほど、比例関係の傾きが小さくなるという知見も得た。本実施の形態では、これらの知見を活用して、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間から、廃液貯留部66における廃液の貯留量を推定する。
【0059】
記憶部44には、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の関係を真空圧の設定値毎に示す関係情報が予め記憶されている。
【0060】
図5は、真空圧の設定値が一定である場合、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の関係を近似して示す。
図5の実線Lに示すように、減圧時間Tが長くなるにつれて、貯留量Wは比例して多くなる。制御部40は、記憶部44に記憶されている関係情報を参照することによって、減圧時間がt1に達した場合、廃液の貯留量がw1に達したと推定する。また、制御部40は、記憶部44に記憶されている関係情報を参照することによって、減圧時間がt2に達した場合に廃液の貯留量がw2(満杯量)に達したことも推定でき、ひいては減圧時間がt1の段階において廃液の貯留量が満杯量(所定量以上)になるまでの残り時間(t2-t1)を算出することができる。
【0061】
本実施の形態では、廃液の貯留量が満杯量になるまでの残り時間が所定時間(例えば、100時間)以下になったタイミング(言い換えれば、廃液の貯留量が満杯量に近づいたタイミング)において、制御部40は、廃液貯留部66の清掃に関する警告(例えば、廃液貯留部66に貯留される廃液を清掃する指示)を操作表示部52に表示させる。その表示を見たユーザー(例えばサービスマン)は、廃液の貯留量が満杯量に達する前の適宜なタイミングで、廃液貯留部66に貯留される廃液を清掃(除去)することができる。
【0062】
図6は、貯留量推定処理の例を示すフローチャートである。
図6におけるステップS101の処理は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされることにより実行される。なお、
図6のフローチャートにおいて、脱気部64内の気圧を減圧する際における真空圧の設定値は一定であるものとする。
【0063】
まず、制御部40は、警告確認処理を実行する(ステップS101)。
図7は、警告確認処理の例を示すフローチャートである。
【0064】
図7のフローチャートにおいて、まず、制御部40は、廃液貯留部66の清掃に関する警告が操作表示部52に表示されているか否かについて判定する(ステップS201)。判定の結果、廃液貯留部66の清掃に関する警告が表示されていない場合(ステップS201、NO)、インクジェット画像形成装置1は、
図7における処理を終了する。
【0065】
一方、廃液貯留部66の清掃に関する警告が表示されている場合(ステップS201、YES)、制御部40は、ユーザーによって清掃完了ボタンが押下されたか否かについて判定する(ステップS202)。ここで、清掃完了ボタンは、廃液貯留部66の清掃に関する警告を見たユーザーが、廃液貯留部66に貯留される廃液を清掃した後に、その清掃が完了したことをインクジェット画像形成装置1に知らせるために押下するボタンである。
【0066】
判定の結果、清掃完了ボタンが押下されていない場合(ステップS202、NO)、処理はステップS202の前に戻る。一方、清掃完了ボタンが押下された場合(ステップS202、YES)、制御部40は、操作表示部52を制御して、廃液貯留部66の清掃に関する警告表示を終了させる(ステップS203)。
【0067】
最後に、制御部40は、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間(真空制御時間)をリセットする、すなわち0にする(ステップS204)。ステップS204の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は、
図7における処理を終了する。
【0068】
図6のフローチャートに戻り、ステップS102では、制御部40は、温度検出部74の検出結果を取得し、メインタンク62から脱気部64に流入したインクの温度が所定温度以上であるか否かについて判定する。ここで、所定温度は、加熱されることによってインクがゲル状からゾル状に相変化する温度である。インクの温度が所定温度以上になると、当該インクが十分に溶けた状態となり、脱気部64による脱気の際、インク中の溶存気体だけではなく液体成分が脱気膜を透過して真空経路内に流入する可能性が生じる。
【0069】
判定の結果、インクの温度が所定温度未満である場合(ステップS102、NO)、処理はステップS102の前に戻る。一方、インクの温度が所定温度以上である場合(ステップS102、YES)、制御部40は、メインタンク62から脱気部64に流入したインク中の溶存気体を除去する脱気を行うように、脱気部64の制御を開始する(ステップS103)。具体的には、制御部40は、圧力検出部76の検出結果に基づいて、脱気部64内の気圧が真空圧の設定値に減圧されるように、真空ポンプ68を制御する。
【0070】
次に、制御部40は、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされたか否かについて判定する(ステップS104)。判定の結果、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされていない場合(ステップS104、NO)、処理はステップS104の前に戻る。一方、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされた場合(ステップS104、YES)、制御部40は、ステップS103にて開始された脱気部64の制御を終了する(ステップS105)。
【0071】
次に、制御部40は、ステップS103において脱気部64の制御が開始されてからステップS105において脱気部64の制御が終了するまでの時間(制御部40のカウンタ機能により算出可能)を、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間に積算する。そして、制御部40は、記憶部44に記憶されている関係情報を参照し、積算された後の減圧時間に対応する貯留量(廃液貯留部66における廃液の貯留量)を推定する(ステップS106)。
【0072】
次に、制御部40は、積算された後の減圧時間(例えば、
図5におけるt1)から、廃液の貯留量が所定量(例えば、満杯量)に達する時間(例えば、
図5におけるt2)までの残り時間を算出し、残り時間が所定時間以下であるか否かについて判定する(ステップS107)。判定の結果、残り時間が所定時間以下でない場合(ステップS107、NO)、インクジェット画像形成装置1は、
図6における処理を終了する。
【0073】
一方、残り時間が所定時間以下である場合(ステップS107、YES)、制御部40は、操作表示部52を制御して、廃液貯留部66の清掃に関する警告を表示させる(ステップS108)。ステップS108の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は、
図6における処理を終了する。
【0074】
なお、上記フローチャートにおいて、制御部40は、脱気部64による脱気が行われている間、脱気部64内に残留している液体成分(具体的には、脱気部64内における脱気膜の内外に溜まっている液体成分)を脱気部64から廃液貯留部66に排出させる排出制御を行っても良い。具体的には、制御部40は、脱気部64が真空状態から大気圧状態となるように脱気大気開放弁72を開放制御する。これにより、脱気部64内に残留している液体成分も廃液貯留部66に排出させて清掃することができる。この場合、制御部40は、脱気部64による脱気が行われている間、所定時間(例えば、2時間)が経過する毎に排出制御を行っても良い。そして、制御部40は、排出制御が行われる毎に、廃液貯留部66に貯留される廃液の貯留量を推定しても良い。これにより、廃液の貯留量が満杯量に近づいているか否かについて、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされた後に廃液の貯留量が推定される場合と比べて、より短い間隔で監視し、必要に応じて廃液貯留部66の清掃に関する警告を表示させることができる。
【0075】
以上詳しく説明したように、本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1は、インク中の溶存気体を透過可能な脱気膜(気体透過膜)を内部に有する脱気部64であって、真空ポンプ68によって脱気部64内の気圧を真空圧まで減圧することにより脱気膜を介してインク中の溶存気体を除去する脱気部64と、脱気部64によって除去された溶存気体が流れる真空経路上に設けられ、溶存気体とともに脱気膜を透過した、インクに含まれる液体成分を廃液として貯留する廃液貯留部66と、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間に基づいて、廃液貯留部66における廃液の貯留量を推定する制御部40(推定部)とを備える。
【0076】
このように構成した本実施の形態によれば、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間(制御部40のカウンタ機能により算出可能)に基づいて、廃液貯留部66における廃液の貯留量が推定される。そのため、センサーの検知結果に基づいて廃液量を監視する従来技術と比べて、当該センサーを配置するためのスペースが必要になったり、当該センサーを設けるためのコストが増大したりすることがなくなる。したがって、センサーを用いることなく、すなわち簡易な構成で、廃液貯留部66に貯留される廃液量を監視することができる。
【0077】
なお、上記実施の形態では、脱気部64内の気圧を減圧する際における真空圧の設定値は一定である例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、脱気部64内の気圧を減圧する制御が実行される毎に、真空圧の設定値は変更されても良い。
図8は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされる毎に真空圧の設定値が可変である場合、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間(電源がオンにされる毎の減圧時間の累積)と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の関係を示す。
【0078】
図8において、実線L1は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して1回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、1回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt1に達し、廃液の貯留量(累積量)はw1に達する。
【0079】
図8において、実線L2は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して2回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、2回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt2に達し、廃液の貯留量(累積量)はw2に達する。
【0080】
図8において、実線L3は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して3回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、3回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt3に達し、廃液の貯留量(累積量)はw3に達する。
【0081】
図8において、実線L4は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して4回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、4回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt4に達し、廃液の貯留量(累積量)はw4に達する。
【0082】
図8において、実線L5は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して5回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、5回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt5に達し、廃液の貯留量(累積量)はw5に達する。
【0083】
図8において、実線L6は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して6回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、6回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt6に達し、廃液の貯留量(累積量)はw6に達する。
【0084】
図8において、実線L7は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされた後、オフにされるまでの間に脱気部64内の気圧を減圧して7回目の脱気が行われた場合における、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す。
図8に示すように、7回目の脱気が終了したタイミングで減圧時間(累積時間)はt7に達し、廃液の貯留量(累積量)はw7に達する。
【0085】
図8において、点線L8は、7回目の脱気が行われたときと同じ真空圧の設定値を用いて、脱気部64内の気圧を減圧して8回目の脱気が行われる場合、減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係(予測線)を示す。すなわち、実線L7における比例関係の傾きと、点線L8における比例関係の傾きとは同じである。この場合、制御部40は、減圧時間がt8に達した場合に廃液の貯留量がw8(満杯量)になることを推定でき、ひいては減圧時間がt7である段階において、廃液の貯留量が満杯量(所定量以上)になるまでの残り時間T1(=t8-t7)を算出することができる。なお、実線L1~L7における傾きがそれぞれ異なるのは、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされる毎に真空圧の設定値が変更されていることからである。
【0086】
図9は、貯留量推定処理の例を示すフローチャートである。
図9におけるステップS301の処理は、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされることにより実行される。なお、
図9のフローチャートにおいて、脱気部64内の気圧を減圧する制御が実行される毎に、真空圧の設定値はユーザーによって変更可能である。
【0087】
まず、制御部40は、警告確認処理を実行する(ステップS301)。警告確認処理については、
図7に示すフローチャートと同様のため、ここでは説明を省略する。
【0088】
次に、制御部40は、温度検出部74の検出結果を取得し、メインタンク62から脱気部64に流入したインクの温度が所定温度以上であるか否かについて判定する(ステップS302)。
【0089】
判定の結果、インクの温度が所定温度未満である場合(ステップS302、NO)、処理はステップS302の前に戻る。一方、インクの温度が所定温度以上である場合(ステップS302、YES)、制御部40は、メインタンク62から脱気部64に流入したインク中の溶存気体を除去する脱気を行うように、脱気部64の制御を開始する(ステップS303)。具体的には、制御部40は、圧力検出部76の検出結果に基づいて、脱気部64内の気圧が真空圧の設定値に減圧されるように、真空ポンプ68を制御する。
【0090】
次に、制御部40は、脱気を行う際の真空圧について設定されている設定値を取得する(ステップS304)。次に、制御部40は、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされたか否かについて判定する(ステップS305)。判定の結果、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされていない場合(ステップS305、NO)、処理はステップS305の前に戻る。一方、インクジェット画像形成装置1の電源がオフにされた場合(ステップS305、YES)、制御部40は、ステップS303にて開始された脱気部64の制御を終了する(ステップS306)。
【0091】
次に、制御部40は、ステップS303において脱気部64の制御が開始されてからステップS306において脱気部64の制御が終了するまでの時間(制御部40のカウンタ機能により算出可能)を、脱気部64内の気圧を減圧する減圧時間として算出する。そして、制御部40は、記憶部44に記憶されている関係情報とステップS304で取得した設定値とを参照し、算出された減圧時間に対応する貯留量(廃液貯留部66における廃液の貯留量)を推定する(ステップS307)。そして、制御部40は、ステップS307において算出された減圧時間と、推定された貯留量とを用いて、廃液貯留部66に貯留される廃液がユーザーによって清掃された後(具体的には、
図7のステップS204において減圧時間がリセットされた後)における減圧時間(累積時間)および貯留量(累積量)を更新する。
【0092】
次に、制御部40は、ステップS304にて取得した真空圧の設定値と、更新された減圧時間(累積時間)および貯留量(累積量)とを用いて、脱気部64内の気圧を減圧して次回の脱気が行われる場合における減圧時間と、廃液貯留部66における廃液の貯留量との間の比例関係を示す予測線(例えば、
図8の点線L8を参照)を生成する(ステップS308)。
【0093】
次に、制御部40は、ステップS308にて生成した予測線を参照し、更新された減圧時間(例えば、
図8におけるt7)から、廃液の貯留量が満杯量に達する時間(例えば、
図8におけるt8)までの残り時間を算出し、残り時間が所定時間以下であるか否かについて判定する(ステップS309)。判定の結果、残り時間が所定時間以下でない場合(ステップS309、NO)、インクジェット画像形成装置1は、
図9における処理を終了する。
【0094】
一方、残り時間が所定時間以下である場合(ステップS309、YES)、制御部40は、操作表示部52を制御して、廃液貯留部66の清掃に関する警告を表示させる(ステップS310)。ステップS310の処理が完了することによって、インクジェット画像形成装置1は、
図9における処理を終了する。
【0095】
なお、上記フローチャートにおいて、インクジェット画像形成装置1の電源がオンにされている間において、真空圧の設定値を変更して脱気が複数回行われても良い。この場合、制御部40は、真空圧の設定値が変更される毎に、廃液貯留部66における廃液の貯留量を推定し、変更前の設定値に基づいて生成された予測線を生成する。そして、制御部40は、廃液の貯留量が満杯量に達する時間までの残り時間を算出し、残り時間が所定時間以下である場合、廃液貯留部66の清掃に関する警告を表示させる。
【0096】
また、上記実施の形態では、廃液貯留部66の清掃に関する警告を表示することによってユーザーに対して報知する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、廃液貯留部66の清掃に関する警告を音声出力することによってユーザーに対して報知しても良い。
【0097】
また、上記実施の形態では、搬送ドラム211により記録媒体Pを搬送する例を用いて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、2本のローラーに支持されローラーの回転に応じて移動する搬送ベルトにより記録媒体Pを搬送しても良い。また、同一平面上を往復移動する搬送部材により記録媒体Pを搬送しても良い。
【0098】
また、上記実施の形態では、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置1を例に挙げて説明したが、ヘッドユニットを走査させながら画像の記録を行うインクジェット画像形成装置に本発明を適用しても良い。また、ヘッドユニットに単一のノズルが設けられたインクジェット画像形成装置に本発明を適用しても良い。
【0099】
また、上記実施の形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクをゾル状に加熱して吐出するインクジェット画像形成装置1を例に説明したが、本発明はこれに限らず、常温でゾル状または液体であるインクを含む種々の公知のインクを用いてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 インクジェット画像形成装置
2 外部装置
10 給紙部
11 給紙トレイ
12 媒体供給部
20 画像形成部
21 搬送部
211 搬送ドラム
211a 搬送面
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
241 ヘッド駆動部
242 画像形成ヘッド
243 ノズル
244 取り付け部材
25 定着部
28 デリバリー部
29 ロータリーエンコーダー
30 排紙部
31 排紙トレイ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
51 搬送駆動部
52 操作表示部
53 入出力インターフェース
60 インク供給機構
62 メインタンク
64 脱気部
66 廃液貯留部
68 真空ポンプ
70 サブタンク
72 脱気大気開放弁
74 温度検出部
76 圧力検出部
P 記録媒体