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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】差動ギヤ機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/08 20060101AFI20230926BHJP
【FI】
F16H48/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020059879
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156416
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 知也
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】島地 重幸
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-192327(JP,A)
【文献】特開2003-240101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側に形成された複数の内側ギヤ歯と、前記複数の内側ギヤ歯の外周側に形成された複数の外側ギヤ歯とをそれぞれ含む一対のフェースギヤと、前記一対のフェースギヤの前記複数の内側ギヤ歯に噛合する一対の内側ピニオンギヤと、前記一対の内側ピニオンギヤと同軸に支持されると共に前記一対のフェースギヤの前記複数の外側ギヤ歯に噛合する一対の外側ピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構において、
前記複数の外側ギヤ歯の歯数を前記外側ピニオンギヤの歯数で除して得られる前記複数の外側ギヤ歯と前記一対の外側ピニオンギヤの各々とのギヤ比は、前記複数の内側ギヤ歯の歯数を前記内側ピニオンギヤの歯数で除して得られる前記複数の内側ギヤ歯と前記一対の内側ピニオンギヤの各々とのギヤ比よりも大きい差動ギヤ機構。
【請求項2】
請求項1に記載の差動ギヤ機構において、
前記内側ピニオンギヤのピッチ円直径は、前記外側ピニオンギヤのピッチ円直径と同一であり、前記内側ピニオンギヤの歯先円直径は、前記外側ピニオンギヤの歯先円直径と同一である差動ギヤ機構。
【請求項3】
請求項2に記載の差動ギヤ機構において、
前記複数の内側ギヤ歯の各々の歯先面は、前記フェースギヤの軸心側から外周側に向かうにつれて歯底面に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
前記複数の外側ギヤ歯の各々の歯先面は、前記フェースギヤの軸心側から外周側に向かうにつれて歯底面に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
前記内側ピニオンギヤの隣り合うピニオン歯の間に位置するピニオン歯底面の各々は、前記フェースギヤの前記軸心側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先に接近するように傾斜した傾斜部を含み、
前記外側ピニオンギヤの隣り合うピニオン歯の間に位置するピニオン歯底面の各々は、前記フェースギヤの前記軸心側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先に接近するように傾斜した傾斜部を含む差動ギヤ機構。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の差動ギヤ機構において、
前記外側ピニオンギヤの歯数は、前記内側ピニオンギヤの歯数と同一であり、前記外側ギヤ歯の歯数は、前記内側ギヤ歯の歯数よりも多い差動ギヤ機構。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載の差動ギヤ機構において、
前記外側ピニオンギヤの歯数は、前記内側ピニオンギヤの歯数よりも少なく、前記外側ギヤ歯の歯数は、前記内側ギヤ歯の歯数と同一である差動ギヤ機構。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の差動ギヤ機構において、車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれる差動ギヤ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一対のフェースギヤと、一対のフェースギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原動機から伝達された駆動トルクによって回転するデフケースと、デフケースに対して径方向に差し渡されて当該デフケースと一体に回転する1本のピニオンシャフトと、当該ピニオンシャフトにより回転自在に支持される一対の内側ピニオンギヤと、当該ピニオンシャフトにより回転自在に支持される一対の外側径ピニオンギヤと、一対の内側ピニオンギヤおよび一対の外側ピニオンギヤに噛合する一対のサイドギヤとを含むデファレンシャル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このデファレンシャル装置において、一対のサイドギヤは、一対の内側ピニオンギヤに噛合する内側噛み合い部と、一対の外側ピニオンギヤに噛合する外側噛み合い部とをそれぞれ含む。また、各内側ピニオンギヤおよび各外側ピニオンギヤは、内側噛み合い部または外側噛み合い部に対して異なるピッチ円直径で噛合する。更に、内側ピニオンギヤと内側噛み合い部とのギヤ比と、外側ピニオンギヤと外側噛み合い部とのギヤ比とは、同一に定められている。これにより、ピニオンシャフトの数を増やすことなく4つ以上のピニオンギヤを支持することが可能となり、デファレンシャル装置の部品点数を削減すると共に軽量化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-192327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のデファレンシャル装置では、サイドギヤの内周側に配置される内側ピニオンギヤのピッチ円直径が小さくなることで、当該内側ピニオンギヤの歯底円直径も小さくなり、ピニオンシャフトにより支持される内周面から歯底面までの内側ピニオンギヤの肉厚を充分に確保することが困難になる。このため、上記従来のデファレンシャル装置では、内側ピニオンギヤひいては装置全体の強度すなわち耐久性が低下してしまうおそれがある。一方、上記デファレンシャル装置において、内側ピニオンギヤの内周面から歯底面までの肉厚を充分に確保すると、各サイドギヤの軸長(軸方向における厚み)を増加させざるを得ず、デファレンシャル装置が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本開示は、一対のフェースギヤと当該一対のフェースギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ耐久性を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の差動ギヤ機構は、内周側に形成された複数の内側ギヤ歯と、前記複数の内側ギヤ歯の外周側に形成された複数の外側ギヤ歯とをそれぞれ含む一対のフェースギヤと、前記一対のフェースギヤの前記複数の内側ギヤ歯に噛合する一対の内側ピニオンギヤと、前記一対の内側ピニオンギヤと同軸に支持されると共に前記一対のフェースギヤの前記複数の外側ギヤ歯に噛合する一対の外側ピニオンギヤとを含む差動ギヤ機構において、前記複数の外側ギヤ歯の歯数を前記外側ピニオンギヤの歯数で除して得られる前記複数の外側ギヤ歯と前記一対の外側ピニオンギヤの各々とのギヤ比が、前記複数の内側ギヤ歯の歯数を前記内側ピニオンギヤの歯数で除して得られる前記複数の内側ギヤ歯と前記一対の内側ピニオンギヤの各々とのギヤ比よりも大きいものである。
【0007】
本開示の差動ギヤ機構において、複数の外側ギヤ歯と一対の外側ピニオンギヤの各々とのギヤ比は、複数の内側ギヤ歯と一対の内側ピニオンギヤの各々とのギヤ比よりも大きく定められる。これにより、各内側ピニオンギヤのピッチ円直径が小さくなるのを抑制することが可能となり、各フェースギヤの軸長(厚み)の増加を抑制しつつ、各内側ピニオンギヤの内周面から歯底面までの肉厚を良好に確保することができる。この結果、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、内側ピニオンギヤひいては差動ギヤ機構全体の強度すなわち耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の差動ギヤ機構を示す斜視図である。
図2】本開示の差動ギヤ機構を示す部分断面図である。
図3】本開示の他の差動ギヤ機構を示す斜視図である。
図4】本開示の他の差動ギヤ機構を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の差動ギヤ機構1を示す斜視図であり、図2は、差動ギヤ機構1を示す部分断面図である。これらの図面に示す差動ギヤ機構1は、図示しないデフリングギヤおよびデフケース等と共に車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれるものである。差動ギヤ機構1は、同軸に配置される一対のフェースギヤ(クラウンギヤ)2と、それぞれ一対のフェースギヤ2に噛合する一対(2つ)の内側ピニオンギヤ3と、それぞれ一対のフェースギヤ2に噛合する一対(2つ)の外側ピニオンギヤ4とを含む。各内側ピニオンギヤ3および各外側ピニオンギヤ4には、一対のフェースギヤ2の軸心2cと直交するようにデフケースにより支持されるピニオンシャフト5が挿通される。これにより、各内側ピニオンギヤ3および各外側ピニオンギヤ4は、ピニオンシャフト5を介してデフケースにより同軸かつ回転自在に支持される。
【0011】
一対のフェースギヤ2は、図示しないドライブシャフトに固定されてデファレンシャルギヤのサイドギヤとして機能する。各フェースギヤ2は、ドライブシャフトが固定されるシャフト孔2oと、各内側ピニオンギヤ3に噛合する内周側の複数の内側ギヤ歯21と、それぞれ隣り合う内側ギヤ歯21の間に位置する複数の内側歯底面24と、複数の内側ギヤ歯21の外周側に形成されると共に各外側ピニオンギヤ4に噛合する複数の外側ギヤ歯25と、それぞれ隣り合う外側ギヤ歯25の間に位置する複数の外側歯底面28とを含む。各フェースギヤ2において、外側ギヤ歯25の歯数は、内側ギヤ歯21の歯数よりも多く、本実施形態において、内側ギヤ歯21の歯数は、20であり、外側ギヤ歯25の歯数は、26である。
【0012】
各内側ギヤ歯21は、それぞれ内側ピニオンギヤ3の歯面を用いて創成される一対の歯面22と、一対の歯面22の間に形成された平坦面あるいは凸曲面である内側歯先面23とを含む。図2に示すように、各内側ギヤ歯21の内側歯先面23は、フェースギヤ2の軸心2c側(内周側)から当該フェースギヤ2の外周側に向かうにつれて内側歯底面24に接近するように傾斜した傾斜部23sを含む。各外側ギヤ歯25は、それぞれ外側ピニオンギヤ4の歯面を用いて創成される一対の歯面26と、一対の歯面26の間に形成された平坦面あるいは凸曲面である外側歯先面27とを含む。図2に示すように、各外側ギヤ歯25の外側歯先面27は、フェースギヤ2の軸心2c側(内周側)から当該フェースギヤ2の外周側に向かうにつれて外側歯底面28に接近するように傾斜した傾斜部27sを含む。
【0013】
各内側ピニオンギヤ3は、ピニオンシャフト5が挿通されるピニオンシャフト孔3o(図2参照)と、それぞれ軸心3c(図2参照)と平行に延在する歯すじを有する複数のピニオン歯30と、それぞれ隣り合うピニオン歯30の間に位置する複数のピニオン歯底面35とを含む平歯車である。本実施形態において、各ピニオン歯30は、それぞれ例えばインボリュート曲線により形成される一対の歯面31と、当該一対の歯面31の間に軸心3cと平行に延在するように形成されたピニオン歯先32とを含む。また、図2に示すように、内側ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35は、フェースギヤ2の軸心2c側(内周側)から外周側に向かうにつれてピニオン歯先32に接近するように傾斜した傾斜部35sを含む。
【0014】
これにより、図2に示すように、各ピニオン歯底面35とピニオンシャフト孔3o(内側ピニオンギヤ3)の内周面との距離(厚み)は、フェースギヤ2の軸心2c側(内周側)からフェースギヤ2の外周側に向かうにつれて増加する。更に、ピニオン歯底面35を平面視した際、当該ピニオン歯底面35は、フェースギヤ2の外周側からフェースギヤ2の軸心2c側(内周側)に向かうにつれて狭まる。
【0015】
各外側ピニオンギヤ4は、ピニオンシャフト5が挿通されるピニオンシャフト孔4o(図2参照)と、それぞれ軸心4c(図2参照)と平行に延在する歯すじを有する複数のピニオン歯40と、それぞれ隣り合うピニオン歯40の間に位置する複数のピニオン歯底面45とを含む平歯車である。本実施形態において、各ピニオン歯40は、それぞれ例えばインボリュート曲線により形成される一対の歯面41と、当該一対の歯面41の間に軸心4cと平行に延在するように形成されたピニオン歯先42とを含む。また、図2に示すように、外側ピニオンギヤ4の各ピニオン歯底面45は、フェースギヤ2の軸心2c側(内周側)から外周側に向かうにつれてピニオン歯先42に接近するように傾斜した傾斜部45sを含む。
【0016】
これにより、図2に示すように、各ピニオン歯底面45とピニオンシャフト孔4o(外側ピニオンギヤ4)の内周面との距離(厚み)は、フェースギヤ2の軸心2c側(内周側)からフェースギヤ2の外周側に向かうにつれて増加する。更に、ピニオン歯底面45を平面視した際、当該ピニオン歯底面45は、フェースギヤ2の外周側からフェースギヤ2の軸心2c側(内周側)に向かうにつれて狭まる。
【0017】
また、内側ピニオンギヤ3および外側ピニオンギヤ4としては、互いに同一の歯数を有するものが採用される。本実施形態において、内側ピニオンギヤ3の歯数および外側ピニオンギヤ4の歯数は、何れも9である。そして、フェースギヤ2の複数の内側ギヤ歯21と一対の内側ピニオンギヤ3の各々とのギヤ比Giは、内側ギヤ歯21の歯数を内側ピニオンギヤ3の歯数で除して得られ、フェースギヤ2の複数の外側ギヤ歯25と一対の外側ピニオンギヤ4の各々とのギヤ比Goは、外側ギヤ歯25の歯数を外側ピニオンギヤ4の歯数で除して得られる。これにより、複数の外側ギヤ歯25と各外側ピニオンギヤ4とのギヤ比Go(本実施形態では、Go=26/9)は、複数の内側ギヤ歯21と各内側ピニオンギヤ3とのギヤ比Gi(本実施形態では、Go=20/9)よりも大きくなる。なお、図2における線分L1は、フェースギヤ2の複数の内側ギヤ歯21と各内側ピニオンギヤ3との転がりピッチ円錐線を示し、線分L2は、フェースギヤ2の複数の外側ギヤ歯25と各外側ピニオンギヤ4との転がりピッチ円錐線を示す。
【0018】
更に、図2に示すように、内側ピニオンギヤ3のピッチ円直径Dpiは、外側ピニオンギヤ4のピッチ円直径Dpoと同一であり、内側ピニオンギヤ3の歯先円直径Dtiは、外側ピニオンギヤ4の歯先円直径Dtoと同一である。また、本実施形態において、内側ピニオンギヤ3の歯底円直径の最小値は、外側ピニオンギヤ4の歯底円直径の最小値と同一であり、内側ピニオンギヤ3の歯底円直径の最大値は、外側ピニオンギヤ4の歯底円直径の最大値と同一である。
【0019】
上述のように、差動ギヤ機構1では、フェースギヤ2の複数の外側ギヤ歯25と一対の外側ピニオンギヤ4の各々とのギヤ比Goが、フェースギヤ2の複数の内側ギヤ歯21と一対の内側ピニオンギヤ3の各々とのギヤ比Giよりも大きく定められている。これにより、各内側ピニオンギヤ3のピッチ円直径Dpiが小さくなるのを抑制することが可能となり、各フェースギヤ2の軸長(厚み)の増加を抑制しつつ、図2に示すように、各内側ピニオンギヤ3の内周面(ピニオンシャフト孔3oの内周面)からピニオン歯底面35までの肉厚を良好に確保することができる。この結果、差動ギヤ機構1のコンパクト化を図りつつ、各内側ピニオンギヤ3ひいては差動ギヤ機構1全体の強度すなわち耐久性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、上記差動ギヤ機構1では、各内側ピニオンギヤ3のピッチ円直径Dpiが、各外側ピニオンギヤ4のピッチ円直径Dpoと同一とされ、各内側ピニオンギヤ3の歯先円直径Dtiが、各外側ピニオンギヤ4の歯先円直径Dtoと同一とされる。これにより、各内側ピニオンギヤ3および各外側ピニオンギヤ4の強度を良好に確保しつつ、各フェースギヤ2の軸長およびフェースギヤ2の軸方向における差動ギヤ機構1の長さの増加を良好に抑制することが可能となる。ただし、各内側ピニオンギヤ3の強度が確保されるのであれば、各内側ピニオンギヤ3のピッチ円直径Dpiは、必ずしも各外側ピニオンギヤ4のピッチ円直径Dpoに一致している必要はなく、各内側ピニオンギヤ3の歯先円直径Dtiは、必ずしも各外側ピニオンギヤ4の歯先円直径Dtoに一致している必要はない。
【0021】
更に、各フェースギヤ2において、複数の内側ギヤ歯21の各々の内側歯先面23は、フェースギヤ2の軸心2c側から外周側に向かうにつれて内側歯底面24に接近するように傾斜した傾斜部23sを含み、複数の外側ギヤ歯25の各々の外側歯先面27は、フェースギヤ2の軸心2c側から外周側に向かうにつれて外側歯底面28に接近するように傾斜した傾斜部27sを含む。また、内側ピニオンギヤ3の隣り合うピニオン歯30の間に位置するピニオン歯底面35の各々は、フェースギヤ2の軸心2c側から外周側に向かうにつれてピニオン歯先32に接近するように傾斜した傾斜部35sを含む。更に、外側ピニオンギヤ4の隣り合うピニオン歯40の間に位置するピニオン歯底面45の各々は、フェースギヤ2の軸心2c側から外周側に向かうにつれてピニオン歯先42に接近するように傾斜した傾斜部45sを含む。
【0022】
これにより、各内側ピニオンギヤ3および各外側ピニオンギヤ4の内周面(ピニオンシャフト孔3o,4oの内周面)からピニオン歯底面35,45までの肉厚を良好に確保して、内側ピニオンギヤ3および外側ピニオンギヤ4ひいては差動ギヤ機構1全体の強度を向上させることが可能となる。ただし、各フェースギヤ2の各内側歯先面23および各外側歯先面27、各内側ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35、並びに各外側ピニオンギヤ4の各ピニオン歯底面45から傾斜部23s,27s,35sまたは45sが省略されてもよい。すなわち、各フェースギヤ2の各内側ギヤ歯21および各外側ギヤ歯25の歯先円直径は、それぞれ一定に定められてもよく、各内側ピニオンギヤ3の各ピニオン歯底面35の歯底円直径および各外側ピニオンギヤ4の各ピニオン歯底面45の歯底円直径は、それぞれ一定に定められてもよい。
【0023】
図3は、本開示の他の差動ギヤ機構1Bを示す斜視図であり、図4は、差動ギヤ機構1Bを示す部分断面図である。なお、差動ギヤ機構1Bの構成要素のうち、上述の差動ギヤ機構1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
図3および図4に示す差動ギヤ機構1Bの各フェースギヤ2Bでは、内側ギヤ歯21Bの歯数と、外側ギヤ歯25Bの歯数とが互いに同一に定められている。図3および図4の例において、内側ギヤ歯21Bの歯数および外側ギヤ歯25Bの歯数は、26である。また、差動ギヤ機構1Bでは、外側ピニオンギヤ4Bとして、内側ピニオンギヤ3Bの歯数よりも少ない歯数を有するものが採用されている。図3および図4の例において、内側ピニオンギヤ3Bの歯数は、12であり、外側ピニオンギヤ4Bの歯数は、9である。
【0025】
かかる差動ギヤ機構1Bにおいても、複数の外側ギヤ歯25Bと一対の外側ピニオンギヤ4Bの各々とのギヤ比Go(Go=外側ギヤ歯25Bの歯数/外側ピニオンギヤ4Bの歯数=26/9)が、複数の内側ギヤ歯21Bと一対の内側ピニオンギヤ3Bの各々とのギヤ比Gi(Gi=内側ギヤ歯21Bの歯数/内側ピニオンギヤ3Bの歯数=26/12)よりも大きくなる。これにより、各内側ピニオンギヤ3Bのピッチ円直径Dpiが小さくなるのを抑制することが可能となり、各フェースギヤ2Bの軸長(厚み)の増加を抑制しつつ、図4に示すように、各内側ピニオンギヤ3Bの内周面(ピニオンシャフト孔3oの内周面)からピニオン歯底面35までの肉厚を良好に確保することができる。この結果、差動ギヤ機構1Bのコンパクト化を図りつつ、各内側ピニオンギヤ3Bひいては差動ギヤ機構1B全体の強度すなわち耐久性を向上させることが可能となる。更に、差動ギヤ機構1Bでは、内側ギヤ歯21Bの歯数と、外側ギヤ歯25Bの歯数とを同一にすることで、フェースギヤ2の加工コストを抑えることができる。
【0026】
また、上記差動ギヤ機構1Bにおいても、各内側ピニオンギヤ3Bのピッチ円直径Dpiは、各外側ピニオンギヤ4Bのピッチ円直径Dpoと同一とされ、各内側ピニオンギヤ3Bの歯先円直径Dtiは、各外側ピニオンギヤ4Bの歯先円直径Dtoと同一とされる。これにより、各内側ピニオンギヤ3Bおよび各外側ピニオンギヤ4Bの強度を良好に確保しつつ、各フェースギヤ2Bの軸長およびフェースギヤ2Bの軸方向における差動ギヤ機構1Bの長さの増加を良好に抑制することが可能となる。ただし、各内側ピニオンギヤ3Bの強度が確保されるのであれば、各内側ピニオンギヤ3Bのピッチ円直径Dpiは、必ずしも各外側ピニオンギヤ4Bのピッチ円直径Dpoに一致している必要はなく、各内側ピニオンギヤ3Bの歯先円直径Dtiは、必ずしも各外側ピニオンギヤ4Bの歯先円直径Dtoに一致している必要はない。
【0027】
更に、各フェースギヤ2Bにおいても、複数の内側ギヤ歯21Bの各々の内側歯先面23は、フェースギヤ2Bの軸心2c側から外周側に向かうにつれて内側歯底面24に接近するように傾斜した傾斜部23sを含み、複数の外側ギヤ歯25Bの各々の外側歯先面27は、フェースギヤ2Bの軸心2c側から外周側に向かうにつれて外側歯底面28に接近するように傾斜した傾斜部27sを含む。また、内側ピニオンギヤ3Bの隣り合うピニオン歯30の間に位置するピニオン歯底面35の各々は、フェースギヤ2Bの軸心2c側から外周側に向かうにつれてピニオン歯先32に接近するように傾斜した傾斜部35sを含む。更に、外側ピニオンギヤ4Bの隣り合うピニオン歯40の間に位置するピニオン歯底面45の各々は、フェースギヤ2の軸心2c側から外周側に向かうにつれてピニオン歯先42に接近するように傾斜した傾斜部45sを含む。また、差動ギヤ機構1Bにおいて、内側ピニオンギヤ3Bの歯底円直径の最小値は、外側ピニオンギヤ4Bの歯底円直径の最小値と同一であり、内側ピニオンギヤ3Bの歯底円直径の最大値は、外側ピニオンギヤ4Bの歯底円直径の最大値と同一である。
【0028】
これにより、各内側ピニオンギヤ3Bおよび各外側ピニオンギヤ4Bの内周面(ピニオンシャフト孔3o,4oの内周面)からピニオン歯底面35,45までの肉厚を良好に確保して、内側ピニオンギヤ3Bおよび外側ピニオンギヤ4Bひいては差動ギヤ機構1B全体の強度を向上させることが可能となる。ただし、各フェースギヤ2Bの各内側歯先面23および各外側歯先面27、各内側ピニオンギヤ3Bの各ピニオン歯底面35、並びに各外側ピニオンギヤ4Bの各ピニオン歯底面45から傾斜部23s,27s,35sまたは45sが省略されてもよい。すなわち、各フェースギヤ2Bの各内側ギヤ歯21Bおよび各外側ギヤ歯25Bの歯先円直径は、それぞれ一定に定められてもよく、各内側ピニオンギヤ3Bの各ピニオン歯底面35の歯底円直径および各外側ピニオンギヤ4Bの各ピニオン歯底面45の歯底円直径は、それぞれ一定に定められてもよい。
【0029】
なお、上述の差動ギヤ機構1,1Bは、一対の内側ピニオンギヤ3,3Bと一対の外側ピニオンギヤ4,4Bとを含むものであるが、これに限られるものではない。すなわち、差動ギヤ機構1,1Bは、内側ピニオンギヤ3,3Bおよび外側ピニオンギヤ4,4Bをそれぞれ2対以上含むものであってもよい。
【0030】
以上説明したように、本開示の差動ギヤ機構は、内周側に形成された複数の内側ギヤ歯(21,21B)と、前記複数の内側ギヤ歯(21,21B)の外周側に形成された複数の外側ギヤ歯(25,25B)とをそれぞれ含む一対のフェースギヤ(2,2B)と、前記一対のフェースギヤ(2,2B)の前記複数の内側ギヤ歯(21,21B)に噛合する一対の内側ピニオンギヤ(3,3B)と、前記一対の内側ピニオンギヤ(3,3B)と同軸に支持されると共に前記一対のフェースギヤ(2,2B)の前記複数の外側ギヤ歯(25,25B)に噛合する一対の外側ピニオンギヤ(4,4B)とを含む差動ギヤ機構(1,1B)において、前記複数の外側ギヤ歯(25,25B)の歯数を前記外側ピニオンギヤ(4,4B)の歯数で除して得られる前記複数の外側ギヤ歯(25,25B)と前記一対の外側ピニオンギヤ(4,4B)の各々とのギヤ比(Go)が、前記複数の内側ギヤ歯(21,21B)の歯数を前記内側ピニオンギヤ(3,3B)の歯数で除して得られる前記複数の内側ギヤ歯(21,21B)と前記一対の内側ピニオンギヤ(3,3B)の各々とのギヤ比(Gi)よりも大きいものである。
【0031】
本開示の差動ギヤ機構において、複数の外側ギヤ歯と一対の外側ピニオンギヤの各々とのギヤ比は、複数の内側ギヤ歯と一対の内側ピニオンギヤの各々とのギヤ比よりも大きく定められる。これにより、各内側ピニオンギヤのピッチ円直径が小さくなるのを抑制することが可能となり、各フェースギヤの軸長(厚み)の増加を抑制しつつ、各内側ピニオンギヤの内周面から歯底面までの肉厚を良好に確保することができる。この結果、差動ギヤ機構のコンパクト化を図りつつ、内側ピニオンギヤひいては差動ギヤ機構全体の強度すなわち耐久性を向上させることが可能となる。
【0032】
また、前記内側ピニオンギヤ(3,3B)のピッチ円直径(Dpi)は、前記外側ピニオンギヤ(4,4B)のピッチ円直径(Dpo)と同一であり、前記内側ピニオンギヤ(3,3B)の歯先円直径(Dti)は、前記外側ピニオンギヤ(4,4B)の歯先円直径(Dto)と同一であってもよい。これにより、内側ピニオンギヤおよび外側ピニオンギヤの強度を良好に確保しつつ、各フェースギヤの軸長およびフェースギヤ2の軸方向における差動ギヤ機構1の長さの増加を良好に抑制することが可能となる。
【0033】
更に、前記複数の内側ギヤ歯(21,21B)の各々の歯先面(23)は、前記フェースギヤ(2,2B)の軸心(2c)側から外周側に向かうにつれて歯底面(24)に接近するように傾斜した傾斜部(23s)を含んでもよく、前記複数の外側ギヤ歯(25,25B)の各々の歯先面(27)は、前記フェースギヤ(2,2B)の軸心側(2c)から外周側に向かうにつれて歯底面(28)に接近するように傾斜した傾斜部(27s)を含んでもよく、前記内側ピニオンギヤ(3,3B)の隣り合うピニオン歯(30)の間に位置するピニオン歯底面(35)の各々は、前記フェースギヤ(2,2B)の前記軸心(2c)側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先(32)に接近するように傾斜した傾斜部(35s)を含んでもよく、前記外側ピニオンギヤ(4,4B)の隣り合うピニオン歯(40)の間に位置するピニオン歯底面(45)の各々は、前記フェースギヤ(2,2B)の前記軸心(2c)側から前記外周側に向かうにつれてピニオン歯先(42)に接近するように傾斜した傾斜部(45s)を含んでもよい。これにより、各内側ピニオンギヤおよび各外側ピニオンギヤの内周面から歯底面までの肉厚を良好に確保して、内側ピニオンギヤおよび外側ピニオンギヤひいては差動ギヤ機構全体の強度を向上させることが可能となる。
【0034】
更に、前記外側ピニオンギヤ(4)の歯数は、前記内側ピニオンギヤ(3)の歯数と同一であってもよく、前記外側ギヤ歯(25)の歯数は、前記内側ギヤ歯(21)の歯数よりも多くてもよい。これにより、内側ピニオンギヤおよび外側ピニオンギヤの強度を良好に確保しつつ、複数の外側ギヤ歯と各外側ピニオンギヤとのギヤ比を複数の内側ギヤ歯と各内側ピニオンギヤとのギヤ比よりも大きくすることが可能となる。
【0035】
また、前記外側ピニオンギヤの歯数(3B)は、前記内側ピニオンギヤ(4B)の歯数よりも少なくてもよく、前記外側ギヤ歯(25B)の歯数は、前記内側ギヤ歯(21B)の歯数と同一であってもよい。これにより、フェースギヤの加工コストを抑えつつ、複数の外側ギヤ歯と各外側ピニオンギヤとのギヤ比を複数の内側ギヤ歯と各内側ピニオンギヤとのギヤ比よりも大きくすることが可能となる。
【0036】
更に、前記差動ギヤ機構(1,1B)は、車両に搭載されるデファレンシャルギヤに含まれてもよい。
【0037】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示の発明は、差動ギヤ機構の製造分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,1B 差動ギヤ機構、2,2B フェースギヤ、2c 軸心、2o シャフト孔、21,21B 内側ギヤ歯、22 歯面、23 内側歯先面、23s 傾斜部、24 内側歯底面、25,25B 外側ギヤ歯、26 歯面、27 外側歯先面、27s 傾斜部、28 外側歯底面、3,3B 内側ピニオンギヤ、3c 軸心、3o ピニオンシャフト孔、30 ピニオン歯、31 歯面、32 ピニオン歯先、35 ピニオン歯底面、35s 傾斜部、4,4B 外側ピニオンギヤ、4c 軸心、4o ピニオンシャフト孔
5 ピニオンシャフト、40 ピニオン歯、41 歯面、42 ピニオン歯先、45 ピニオン歯底面、45s 傾斜部。
図1
図2
図3
図4