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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ウエブ巻取装置及びウエブ巻取システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 26/02 20060101AFI20230926BHJP
   B65H 18/10 20060101ALI20230926BHJP
   B65H 18/26 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
B65H26/02
B65H18/10
B65H18/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019162828
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042009
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】本間 義晃
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-092524(JP,A)
【文献】特開2013-250635(JP,A)
【文献】特開2017-100850(JP,A)
【文献】特開2012-046261(JP,A)
【文献】特開平01-104558(JP,A)
【文献】特開平05-277555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 26/00-26/08
B65H 18/00-18/28
B65H 23/18-23/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き芯に巻き取られるウエブの外周を所定のニップ荷重で押圧するニップローラと、
前記ニップ荷重を調整するとともに、前記巻き芯に巻き取られるウエブの巻取張力を調整する制御部と、
前記巻取張力の初期値と前記ニップ荷重の初期値とを含み、巻取条件を規定するパラメータのうち調整対象のパラメータである設定パラメータと、前記巻き芯と前記ウエブとを接続する貼り付けテープの貼付パターン及び環境温度を含み、前記設定パラメータとともに巻取条件を規定する条件のうち前記設定パラメータの調整のために参照される付加条件とを入力する入力部と、
前記設定パラメータと、前記付加条件と、前記設定パラメータ及び前記付加条件に基づいて巻き取られたウエブの巻取状態を表す巻取結果とを含むデータセットを記憶する記憶部と、
前記設定パラメータ及び前記付加条件を表示させる表示部と、を備え、
前記制御部は、
前記設定パラメータの調整のため、前記記憶部に記憶されている前記データセットのうち、初期設定時に入力された前記設定パラメータに近似する前記設定パラメータを有する参照データセットの前記付加条件及び前記巻取結果を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とするウエブ巻取装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ウエブの巻取後に前記入力部で入力された前記巻取結果と前記設定パラメータとを含む前記データセットを、前記記憶部に記憶させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のウエブ巻取装置。
【請求項3】
前記初期設定時に入力された前記設定パラメータに基づいて算出された巻取張力及びニップ荷重と、前記参照データセットに含まれる前記設定パラメータに基づいて算出された巻取張力及びニップ荷重とを、前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウエブ巻取装置。
【請求項4】
前記貼り付けテープを撮影可能なカメラを備え、
前記制御部は、
前記カメラで撮影された画像に基づいて、前記貼付パターンを判別し、前記データセットに登録する、
ことを特徴とする請求項に記載のウエブ巻取装置。
【請求項5】
巻き芯に巻き取られるウエブの外周を所定のニップ荷重で押圧するニップローラと、
前記ニップ荷重を調整するとともに、前記巻き芯に巻き取られるウエブの巻取張力を調整する制御部と、
前記巻取張力の初期値と前記ニップ荷重の初期値とを含み、巻取条件を規定するパラメータのうち調整対象のパラメータである設定パラメータと、前記巻き芯と前記ウエブとを接続する貼り付けテープの貼付パターン及び環境温度を含み、前記設定パラメータとともに巻取条件を規定する条件のうち前記設定パラメータの調整のために参照される付加条件とを入力する入力部と、
前記設定パラメータ及び前記付加条件を表示させる表示部と、
ネットワークと通信可能に接続された通信部と、を有するウエブ巻取装置と、
前記設定パラメータと、前記付加条件と、前記設定パラメータ及び前記付加条件に基づいて巻き取られたウエブの巻取状態を表す巻取結果とを含むデータセットを記憶する記憶部を有し、
前記ネットワークを介して前記ウエブ巻取装置に接続されたデータベースと、を備え、
前記データベースは、
前記記憶部に記憶されている前記データセットのうち、初期設定時に前記入力部で入力された前記設定パラメータに近似する前記設定パラメータを有する参照データセットを算出して、前記ウエブ巻取装置へ送信し、
前記制御部は、
前記設定パラメータの調整のため、前記データベースから受信した前記参照データセットに含まれる前記付加条件及び前記巻取結果を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とするウエブ巻取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ巻取装置及びウエブ巻取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷工程等で用いられるウエブ巻取装置では、ウエブを巻き取る際、ウエブの巻取張力、巻取速度等の巻取条件が不適切であると、巻き取られたウエブ(巻取ロール)にシワ、ずれなどの不具合を生じる場合がある。これらの不具合を抑制するウエブ巻取方法として、例えば特許文献1のウエブ巻取方法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-46261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のウエブ巻取方法では、適切な巻取張力とニップ荷重とを算出し、算出された値に基づいて巻取張力、ニップ荷重を制御することにより、巻取ロールに生じるシワ、ずれ等の不具合を抑制する。しかしながら、装置の個体差、装置の周囲温度の変化、ウエブの特性変化等により、算出された巻取張力、ニップ荷重を用いて巻取を行っても、シワ、ずれ等の不具合を生じる場合がある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、設定パラメータと巻取結果の実績データに基づいて、設定パラメータを調整することにより、巻取の不具合を抑制することができるウエブ巻取装置及びウエブ巻取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係るウエブ巻取装置は、
巻き芯に巻き取られるウエブの外周を所定のニップ荷重で押圧するニップローラと、
前記ニップ荷重を調整するとともに、前記巻き芯に巻き取られるウエブの巻取張力を調整する制御部と、
前記巻取張力の初期値と前記ニップ荷重の初期値とを含み、巻取条件を規定するパラメータのうち調整対象のパラメータである設定パラメータと、前記巻き芯と前記ウエブとを接続する貼り付けテープの貼付パターン及び環境温度を含み、前記設定パラメータとともに巻取条件を規定する条件のうち前記設定パラメータの調整のために参照される付加条件とを入力する入力部と、
前記設定パラメータと、前記付加条件と、前記設定パラメータ及び前記付加条件に基づいて巻き取られたウエブの巻取状態を表す巻取結果とを含むデータセットを記憶する記憶部と、
前記設定パラメータ及び前記付加条件を表示させる表示部と、を備え、
前記制御部は、
前記設定パラメータの調整のため、前記記憶部に記憶されている前記データセットのうち、初期設定時に入力された前記設定パラメータに近似する前記設定パラメータを有する参照データセットの前記付加条件及び前記巻取結果を前記表示部に表示させる。
【0007】
また、前記制御部は、
前記ウエブの巻取後に前記入力部で入力された前記巻取結果と前記設定パラメータとを含む前記データセットを、前記記憶部に記憶させる、
こととしてもよい。
【0008】
また、前記初期設定時に入力された前記設定パラメータに基づいて算出された巻取張力及びニップ荷重と、前記参照データセットに含まれる前記設定パラメータに基づいて算出された巻取張力及びニップ荷重とを、前記表示部に表示させる、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記貼り付けテープを撮影可能なカメラを備え、
前記制御部は、
前記カメラで撮影された画像に基づいて、前記貼付パターンを判別し、前記データセットに登録する、
こととしてもよい。
【0011】
この発明の第2の観点に係るウエブ巻取システムは、
巻き芯に巻き取られるウエブの外周を所定のニップ荷重で押圧するニップローラと、
前記ニップ荷重を調整するとともに、前記巻き芯に巻き取られるウエブの巻取張力を調整する制御部と、
前記巻取張力の初期値と前記ニップ荷重の初期値とを含み、巻取条件を規定するパラメータのうち調整対象のパラメータである設定パラメータと、前記巻き芯と前記ウエブとを接続する貼り付けテープの貼付パターン及び環境温度を含み、前記設定パラメータとともに巻取条件を規定する条件のうち前記設定パラメータの調整のために参照される付加条件とを入力する入力部と、
前記設定パラメータ及び前記付加条件を表示させる表示部と、
ネットワークと通信可能に接続された通信部と、を有するウエブ巻取装置と、
前記設定パラメータと、前記付加条件と、前記設定パラメータ及び前記付加条件に基づいて巻き取られたウエブの巻取状態を表す巻取結果とを含むデータセットを記憶する記憶部を有し、
前記ネットワークを介して前記ウエブ巻取装置に接続されたデータベースと、を備え、
前記データベースは、
前記記憶部に記憶されている前記データセットのうち、初期設定時に前記入力部で入力された前記設定パラメータに近似する前記設定パラメータを有する参照データセットを算出して、前記ウエブ巻取装置へ送信し、
前記制御部は、
前記設定パラメータの調整のため、前記データベースから受信した前記参照データセットに含まれる前記付加条件及び前記巻取結果を前記表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期設定時に入力された設定パラメータに近似する設定パラメータと巻取結果との実績データを表示部に表示させるので、これらに基づいて、設定パラメータを調整することにより、巻取の不具合を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係るウエブ巻取装置を含む印刷設備の構成を示す概略図である。
図2】実施の形態1に係るウエブ巻取装置の構成を示す正面図である。
図3】実施の形態1に係る制御ユニットの機能ブロック図である。
図4】実施の形態1に係るウエブ巻取の流れを示すフローチャートである。
図5】実施の形態1に係るデータセットの構成を示す概念図である。
図6】実施の形態1に係るパラメータの表示例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係るウエブ巻取システムの構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態2に係るウエブ巻取装置の構成を示す正面図である。
図9】実施の形態2に係るウエブ巻取の流れを示すフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る貼り付けテープの貼付パターンを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るウエブ巻取装置について、グラビア印刷装置とともに用いられる印刷設備のウエブ巻取装置を例として説明する。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態に係るウエブ巻取装置1は、図1の概略図に示すように、巻出装置51から送り出され、グラビア印刷装置60で印刷された紙、フイルム等のウエブWを巻き取る装置である。巻出装置51は、ロール状態でセットされたウエブWをグラビア印刷装置60へ送出する装置である。グラビア印刷装置60は、ウエブWに、色ごとに印刷を行う印刷ユニット61、62、63を備える。また、グラビア印刷装置60は、ウエブWを印刷ユニット61へ送り込むインフィードローラ65、ウエブWを印刷ユニット63からウエブ巻取装置1へと送り出すアウトフィードローラ66を備える。
【0016】
ウエブ巻取装置1は、図2に示すように、ダンサーユニット11、ガイドローラ12,16、ニップローラユニット13、駆動軸14、巻取駆動装置15、制御ユニット20を備える。
【0017】
ダンサーユニット11は、アウトフィードローラ66とニップローラユニット13との間に配置され、ウエブWに掛かる巻取張力Twを調整する。ダンサーユニット11は、図2に示すように、アウトフィードローラ66側のガイドローラ12とニップローラユニット13側のガイドローラ16との間に配置されたダンサーローラ111、基端部に設けられた支持軸114を支点としてダンサーローラ111を回動可能に支持する支持アーム112、支持アーム112を押圧して回動させる駆動シリンダ113を備える。
【0018】
駆動シリンダ113の駆動力によって、支持アーム112が支持軸114を支点に回転動作することにより、ダンサーローラ111は、所定の押圧力でウエブWを押圧する。これにより、ダンサーユニット11は、ダンサーローラ111の押圧力とつり合いが取れるようにウエブWに掛かる巻取張力Twを調整する。
【0019】
ガイドローラ12は、ダンサーユニット11の上流側に配置され、ウエブWを案内するローラである。また、ガイドローラ16は、ダンサーユニット11の下流側に配置され、ウエブWを案内するローラである。
【0020】
ニップローラユニット13は、駆動軸14に取り付けられた巻き芯であるコアCとコアCに巻き取られるウエブWとで形成される巻取ロール31を押圧し、巻取ロール31のウエブWの外周にニップ荷重Nを与える。ニップローラユニット13は、ニップローラ131、駆動シリンダ132を備える。
【0021】
駆動シリンダ132は、駆動シリンダ132の駆動方向と、駆動軸14の軸方向とが直交する方向に配置されている。これにより、駆動シリンダ132は、ニップローラ131を巻取ロール31の半径方向中心軸向きに押圧し、巻取ロール31にニップ荷重Nを与える。
【0022】
駆動軸14は、コアCを取り付け可能な回転軸であり、駆動軸14が回転駆動することにより、コアCにウエブWを巻き取り、巻取ロール31を形成する。
【0023】
巻取駆動装置15は、駆動軸14を回転駆動させるものであり、本実施の形態に係る巻取駆動装置15は、ACベクトル制御モータである。
【0024】
制御ユニット20は、図3の機能ブロック図に示すように、制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24、巻取制御部25、ダンサー制御部26、ニップローラ制御部27を備える。
【0025】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、水晶発振器等から構成されており、ウエブ巻取装置1全体の動作を制御する。制御部21は、記憶部22、制御部21のROM等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPUを動作させることにより、図3に示される制御部21の各機能を実現させる。これにより、制御部21は、演算部211、張力制御部212、ニップ荷重制御部213として動作する。
【0026】
演算部211は、作業者によって入力された巻取張力Twの初期値である初期巻取張力Tw、ニップ荷重Nの初期値である初期ニップ荷重N、巻取速度Uw等の巻取条件を規定する設定パラメータPsに基づいて、適当な巻取張力Tw、ニップ荷重Nを算出する。巻取張力Tw及びニップ荷重Nの算出は、公知の方法を用いて行うことができ、例えば特許文献1に記載された方法を用いることができる。すなわち、予め記憶部22に記憶されている目的関数及び目的関数の制約関数に基づいて、巻取張力Tw及びニップ荷重Nを最適化することにより、巻取張力Tw、ニップ荷重Nを巻取ロール31の径方向座標の関数として算出する。
【0027】
張力制御部212は、算出された巻取張力Twに基づいて、巻取制御部25及びダンサー制御部26へ制御信号を送信し、ウエブWの巻取張力Twを調整する。巻取制御部25は、巻取駆動装置15を制御するモータドライバを含む。また、ダンサー制御部26は、ダンサーユニット11の駆動シリンダ113を制御するドライバを含む。すなわち、張力制御部212は、巻取駆動装置15と駆動シリンダ113とを制御することにより、巻取張力Twを調整する。
【0028】
ニップ荷重制御部213は、算出されたニップ荷重Nに基づいて、ニップローラ制御部27へ制御信号を送信し、ニップ荷重Nを調整する。ニップローラ制御部27は、ニップローラユニット13の駆動シリンダ132を駆動制御するドライバを含み、ニップローラ131のウエブWへの押圧力を制御する。
【0029】
記憶部22は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、設定パラメータPsに基づいて巻取張力Tw及びニップ荷重Nを算出するための目的関数及び制約関数、設定パラメータPsと巻き取られたウエブWの巻取状態を表す巻取結果Rrとを含む実績データとしてのデータセットDs等を記憶する。
【0030】
表示部23は、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶パネル等の表示用デバイスであり、ウエブWの初期巻取張力Tw、初期ニップ荷重N、巻取速度Uw、ウエブWの材質等の設定パラメータPs、演算部211で算出された巻取張力Tw、ニップ荷重N等を表示する。本実施の形態に係る表示部23は、制御ユニット20に搭載された液晶パネルである。
【0031】
入力部24は、設定パラメータPsを入力するための入力デバイスである。入力部24は、タッチパネル、キーボード等であり、本実施の形態に係る入力部24は、液晶パネルである表示部23上に配置されたタッチパネルである。
【0032】
巻取制御部25は、巻取駆動装置15を制御するモータドライバを備え、張力制御部212から受信する制御信号に基づいて、巻取駆動装置15の動作を制御する。これにより、巻取制御部25は、駆動軸14の回転を制御して、ウエブWの巻取張力Twを調整する。
【0033】
ダンサー制御部26は、ダンサーユニット11の駆動シリンダ113を制御するドライバを備え、張力制御部212から受信する制御信号に基づいて、駆動シリンダ113の押圧力を変える。そして、ダンサーローラ111の位置が、常に所定の位置となるように巻取駆動装置15を制御し、ウエブWの巻取張力Twを調整する。
【0034】
ニップローラ制御部27は、ニップ荷重制御部213から受信する制御信号に基づいて、駆動シリンダ132を駆動する。これにより、ニップローラ131の巻取ロール31への押圧力、すなわちニップ荷重Nを制御する。
【0035】
続いて、図4に基づいてウエブ巻取装置1の巻取動作について、グラビア印刷装置60から送出されるウエブWを巻き取るウエブ巻取装置1を例として説明する。
【0036】
まず、作業者は、入力部24から、設定パラメータPsを入力する(ステップS11)。設定パラメータPsは、ウエブWにかける初期巻取張力Tw、ニップローラ131が巻取ロール31を押圧する初期ニップ荷重N、ウエブWの巻取速度Uw及びウエブWの材質を含む。これらの設定パラメータPsは、初期設定時に作業者によって入力されるものに限られず、予めセットされているものを使用してもよい。また、設定パラメータPsは、例えばウエブWの材質ごとに予め設定されている設定パラメータPsから選択されることとしてもよい。
【0037】
また、初期設定では、設定パラメータPsとともに付加条件Acとして、ウエブWの弾性係数、ウエブ巻取装置1の環境温度T、ウエブWを巻き取るコアCの材質、ウエブWの巻き始め部分をコアCに固定するための貼り付けテープTpの貼り方を示す貼付パターンを含むこととしてもよい。ウエブWの弾性係数は、数値による入力に限られず、予め記憶部22に記憶されているウエブWの材料リストを表示部23に表示させ、表示された材料リストから選択することによって、設定されることとしてもよい。
【0038】
設定パラメータPsが入力された後、演算部211は、記憶部22から読み出した目的関数及び制約関数と、入力された設定パラメータPsとに基づいて巻取張力Tw及びニップ荷重Nを算出する(ステップS12)。
【0039】
また、制御部21は、過去に使用された実績データであるデータセットDsが記憶部22に記憶されている場合(ステップS13のYES)、ステップS11で入力された設定パラメータPsに近似する設定パラメータPsを含むデータセットDsを参照データセットDsrとして読み出す(ステップS14)。記憶部22にデータセットDsが記憶されていない場合(ステップS13のNO)、制御部21は、データを読み出さず、次の処理(ステップS18)に移る。
【0040】
データセットDsは、図5に示すように、設定パラメータPsに環境温度T、コアCの材質等の付加条件Acと、巻取結果Rrとを含む。巻取結果Rrは、設定パラメータPsと付加条件Acとで表される条件下で巻き取られた巻取ロール31が不具合を生じていたか否かを表すパラメータである。設定パラメータPsの近似評価は、例えば以下の式に示す値が最も小さいものを選択することによって行う。
【0041】
【数1】
(ただし、Twは入力された初期巻取張力、Twは記憶部に記憶されているデータセットDsの初期巻取張力、Uwは入力された巻取速度、UwはデータセットDsの巻取速度、Nは入力された初期ニップ荷重、NはデータセットDsの初期ニップ荷重)
【0042】
制御部21は、ステップS12で算出した巻取張力Tw及びニップ荷重N、ステップS14で記憶部22から読み出した参照データセットDsrに含まれる各パラメータ、巻取結果Rrを表示部23へ表示させる(ステップS15)。作業者は、表示部23に表示された巻取結果Rr、その他のパラメータを参考に、設定パラメータPsを調整するか否か決定する(ステップS16)。
【0043】
図6は、表示部23の表示例である。図6に示すように、入力された設定パラメータPs、付加条件Ac等が左側に設定条件として表示され、これらに並列して参照データセットDsrの各パラメータが参考条件(実績データ)として表示される。また、ステップS12で算出された巻取張力Tw、ニップ荷重Nは、表示部23の右側に表示される。表示部23の右側には、参照データセットDsrの巻取結果Rrと、巻取を開始するための動作開始ボタン241も表示されている。
【0044】
例えば、参照データセットDsrの巻取結果Rr、すなわち入力した設定パラメータPsに近似する設定パラメータPs及び付加条件Acで表される条件での巻取結果Rrが良好なものである場合、設定パラメータPsを調整せず初期設定を完了し、巻取動作を開始させる(ステップS16のNO)。一方、巻取結果Rrが良好でない場合、作業者は、設定パラメータPsを調整する(ステップS16のYES)。設定パラメータPsの調整では、作業者は、例えば巻取速度Uwを調整し、再入力する(ステップS17)。
【0045】
ステップS12に戻り、演算部211は、目的関数、制約関数及び再入力された設定パラメータPsに基づいて、巻取張力Tw及びニップ荷重Nを算出する。また、制御部21は、再入力された設定パラメータPsに近似する設定パラメータPsを含む参照データセットDsrを記憶部22から読み出す。
【0046】
制御部21は、算出した巻取張力Tw、ニップ荷重N、記憶部22から読み出した参照データセットDsrに含まれる各パラメータ、巻取結果Rrを表示部23へ表示させる。作業者は、表示部23に表示された巻取結果Rr、その他のパラメータを参考に、設定パラメータPsが適当であると判断するまで、上述した設定パラメータPsの調整を繰り返す。
【0047】
設定パラメータPsの初期設定が完了すると(ステップS16のNO)、作業者は、図6に示す動作開始ボタン241を押下する。これにより、ウエブ巻取装置1は巻取動作を開始し、ウエブWの巻取が開始される(ステップS18)。
【0048】
ウエブWは、図1に示すように、巻出装置51にセットされており、巻出装置51からグラビア印刷装置60へと送り出される。グラビア印刷装置60は、印刷ユニット61、62、63でウエブWに印刷を行い、アウトフィードローラ66を介してウエブWをウエブ巻取装置1へと送り出す。
【0049】
ウエブ巻取装置1に送り込まれたウエブWは、図2に示すように、ダンサーユニット11のダンサーローラ111を介することにより、巻取張力Twを調整されて、ニップローラユニット13へと送られる。より具体的には、張力制御部212は、実際の巻取張力Twと、ステップS12で算出された巻取張力Twとが一致するように、巻取制御部25及びダンサー制御部26を制御する。これにより、ダンサーローラ111の押圧力及び駆動軸14の回転速度が調整され、ウエブWの巻取張力Twが適正値に制御される。
【0050】
ダンサーユニット11から送り出されたウエブWは、ニップローラ131に押圧されながら、コアCに巻き取られて巻取ロール31を形成する。コアCは、上述の通り、駆動軸14に取り付けられている。そして、コアCは、巻取駆動装置15によって駆動軸14とともに回転駆動されて、ウエブWを巻き取る。
【0051】
ニップローラ131は、ステップS12で算出されたニップ荷重Nで、巻取ロール31に押圧されている。ニップ荷重制御部213は、算出されたニップ荷重Nに基づいて、駆動シリンダ132を制御し、ニップローラ131を移動させることにより、ニップ荷重Nを調整する。
【0052】
予め設定された長さのウエブWが巻き取られると、制御部21は、巻取駆動装置15の動作を停止させる。作業者は、巻取後の巻取ロール31を検査し、巻き取ったウエブWにシワ、ずれ等の不具合が生じていないか確認する。そして、作業者は、入力部24から、巻取ロール31に不具合が生じているか否かを表す巻取結果Rrを入力する。巻取結果Rrは、例えば○:良好、△:可、×:不良等の選択肢から選択する簡易的な情報であってもよいし、不具合の内容を具体的に文章で入力する詳細なテキストデータであってもよい。
【0053】
制御部21は、入力された巻取結果Rrを、ステップS11で入力された設定パラメータPs及び付加条件AcとともにデータセットDsとして記憶部22に記憶させる(ステップS19)。
【0054】
巻取結果Rrの入力が完了した後、作業者は、巻取ロール31をウエブ巻取装置1から取り外し(ステップS20)、ウエブWの巻取を終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態に係るウエブ巻取装置1では、設定パラメータPsと設定パラメータPsに基づいて巻き取られた巻取ロール31の品質を表す巻取結果Rrの実績データを作業者に提示する。これにより、作業者は、初期設定時に入力した設定パラメータPsによる巻取結果Rrの品質を推定することができるので、ウエブ巻取装置1の動作開始前に設定パラメータPsを調整し、巻取品質のよい条件を設定できる。したがって、巻取ロール31の不具合を低減し、巻取品質を改善することができる。
【0056】
本実施の形態に係るウエブ巻取装置1では、付加条件Acである環境温度Tは、作業者によって直接入力されることとしたが、これに限られない。例えば、環境温度Tは、ウエブ巻取装置1に備えられた温度センサの出力から自動的に入力されることとしてもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、実績データとして、参照データセットDsrに含まれるパラメータを表示部23に表示することとしたが、これに限られない。例えば、参照データセットDsrの設定パラメータPsに基づいて算出された巻取張力Tw、ニップ荷重NをステップS12で算出された巻取張力Tw、ニップ荷重Nとともに表示させることとしてもよい。これにより、入力した条件と参照データセットDsrの条件との巻取張力Tw、ニップ荷重Nの差異を確認できるので、より適切なパラメータを設定することができる。
【0058】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係るウエブ巻取装置2とデータベース72とを含むウエブ巻取システム80について説明する。本実施の形態では、図7に示すように、ウエブ巻取装置2が、ウエブWの巻き始め部分をコアCに貼り付ける貼り付けテープTpの貼付パターンを画像認識によって検出するためのカメラ50を備える点で、実施の形態1のウエブ巻取装置1と異なる。また、ウエブ巻取装置2が通信部70を備え、データセットDsを記憶するデータベース72とネットワークを介して接続されている点で実施の形態1と異なる。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので同じ符号を付す。
【0059】
ウエブ巻取装置2に備えられたカメラ50は、図8に示すように、駆動軸14の近傍に取り付けられている。より具体的には、カメラ50は、ウエブ巻取装置2の駆動軸14にセットされたコアCを撮影可能な位置に配置され、ウエブWの幅方向全体を撮影可能な画角を有している。
【0060】
図7に示すように、通信部70は、ウエブ巻取装置2の制御部21に接続されている通信デバイスであり、ネットワーク上のデータベース72とデータの送受信を行う。これにより、ウエブ巻取装置2は、ネットワーク上のデータベース72と通信可能に接続される。通信部70は、有線通信デバイスでも無線通信デバイスでもよく、本実施の形態に係る通信部70は、無線通信デバイスである。
【0061】
データベース72は、ネットワークを介してウエブ巻取装置2と接続されたデータサーバであり、記憶部721を備える。データベース72の記憶部721には、過去にウエブWの巻取を実施した際の実績データとして、設定パラメータPsと巻取結果Rrを含むデータセットDsが記憶されている。
【0062】
以下、図9に基づいて、本実施の形態に係るウエブ巻取システム80の巻取動作について説明する。
【0063】
実施の形態1と同様に、作業者は、入力部24から、初期巻取張力Tw、初期ニップ荷重N、巻取速度Uw等を含む設定パラメータPsを入力する(ステップS31)。
【0064】
設定パラメータPsが入力された後、演算部211は、記憶部22から読み出した目的関数及び制約関数と、入力された設定パラメータPsとに基づいて、巻取張力Tw及びニップ荷重Nを算出する(ステップS32)。
【0065】
また、制御部21は、入力された設定パラメータPsを、通信部70を介して、データベース72へ送信する(ステップS33)。
【0066】
データベース72は、データセットDsが記憶部721に記憶されている場合(ステップS34のYES)、記憶部721に記憶されているデータセットDsから、受信した設定パラメータPsに近似する設定パラメータPsを含む参照データセットDsrを読み出す(ステップS35)。記憶部721にデータセットDsが記憶されていない場合(ステップS34のNO)、データベース72は、ウエブ巻取装置2へデータセットDsが記憶されていないことを示す情報を送信し、ウエブ巻取装置2は次の処理(ステップS40)に移る。設定パラメータPsの近似評価方法は、実施の形態1と同様である。
【0067】
データベース72は、ステップS35で読み出した参照データセットDsrを、ネットワークを介してウエブ巻取装置2へ送信する(ステップS36)。
【0068】
制御部21は、受信した参照データセットDsrに含まれる巻取結果Rr、ステップS32で算出された巻取張力Tw、ニップ荷重N等を表示部23へ表示させる(ステップS37)。実施の形態1と同様に、作業者は、表示部23に表示された巻取結果Rrを参考に、設定パラメータPsを調整するか否か決定する(ステップS38)。
【0069】
また、制御部21は、カメラ50でコアCを撮影し、撮影された画像データに基づいて、コアCに対してウエブW端部を固定するための貼り付けテープTpの貼付パターンを画像認識する。より具体的には、制御部21は、図10に示すように、画像データに基づいて、ウエブWとコアCとを繋ぐように貼り付けられた貼り付けテープTpの形状を認識し、予め登録された貼付パターンから該当するパターンを選択する。これにより、制御部21は、貼り付けテープTpの貼付パターンを認識し、付加条件Acの一つとして表示部23へ表示させる。
【0070】
作業者は、表示された巻取結果Rr、その他のパラメータを参考として、設定パラメータPsを調整せず、現状の設定パラメータPsで動作させる場合(ステップS38のNO)、初期設定を完了し、ウエブ巻取装置2の巻取動作を開始させる。設定パラメータPsを調整する場合は(ステップS38のYES)、入力部24を介して設定パラメータPsの調整、再入力を行う(ステップS39)。
【0071】
設定パラメータPsが再設定されると、ステップS32に戻り、演算部211は、目的関数、制約関数及び再入力された設定パラメータPsに基づいて、巻取張力Tw及びニップ荷重Nを算出する。また、制御部21は、設定パラメータPsを通信部70からデータベース72へ送信する(ステップS33)。データベース72は、記憶部721から、修正された設定パラメータPsに近似する設定パラメータPsを含む参照データセットDsrを読み出し、ウエブ巻取装置2へ送信する。以下、実施の形態1と同様に、作業者は、設定パラメータPsが妥当であると判断するまで、設定パラメータPsの調整を繰り返す。
【0072】
設定パラメータPsの初期設定が完了すると(ステップS38のNO)、作業者は、入力部24の動作開始ボタン241を押下する。これにより、ウエブ巻取装置2は動作を開始し、ウエブWの巻取が開始される。
【0073】
ウエブWが巻出装置51から送り出されて、グラビア印刷装置60を介して、コアCに巻き取られるまでの動作は、実施の形態1と同様である(ステップS40)。
【0074】
予め設定された長さのウエブWが巻き取られると、制御部21は、巻取駆動装置15の動作を停止させる。作業者は、巻取後の巻取ロール31を検査し、巻き取ったウエブWにシワ等の不具合が生じていないか確認する。そして、作業者は、入力部24から、巻取ロール31に不具合が生じているか否かを表す巻取結果Rrを入力する。
【0075】
制御部21は、入力された巻取結果Rrを、ステップS31で入力された設定パラメータPs及び貼付パターンを含む付加条件AcとともにデータセットDsとして、データベース72へ送信する。データベース72は、受信したデータセットDsを記憶部721に記憶させる(ステップS41)。
【0076】
巻取結果Rrの入力が完了した後、作業者は、巻取ロール31をウエブ巻取装置2から取り外し(ステップS42)、巻取処理を終了する。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態に係るウエブ巻取システム80では、設定パラメータPsと巻取結果Rrとを含むデータセットDsをネットワーク上のデータベース72に記憶させることとしている。これにより、データベース72と複数のウエブ巻取装置2とを接続して、より多くの設定パラメータPsと巻取結果Rrとを含むデータセットDsの情報を集積することができるので、より信頼度の高い情報に基づいて巻取処理を行い、巻取品質を改善することができる。
【0078】
また、データベース72に記憶されたデータセットDsに基づいて、ウエブ巻取装置2ごとの巻取結果Rrの傾向を分析することにより、それぞれのウエブ巻取装置2における不具合発生傾向の分析、ウエブ巻取装置2の不具合の早期発見などが可能となる。
【0079】
本実施の形態に係るカメラ50は、貼り付けテープTpの貼付パターンのみを画像認識することとしたが、これに限られない。例えば、制御部21は、カメラ50で撮影した画像のコアCの色彩等からコアCの材質を判別し、付加条件Acとして登録することとしてもよい。これにより、コアCの弾性係数等の特性を考慮して設定パラメータPsを調整できるので、より適切な条件設定を行い、巻取品質を改善することができる。
【0080】
また、制御部21は、カメラ50で撮影した画像のコアCの色彩等からコアCの径を判別し、付加条件Acとして登録することとしてもよい。これにより、巻径の変化を考慮して設定パラメータPsを調整できるので、より適切な条件設定を行い、巻取品質を改善することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,2 ウエブ巻取装置、11 ダンサーユニット、111 ダンサーローラ、112 支持アーム、113 駆動シリンダ、114 支持軸、12,16 ガイドローラ、13 ニップローラユニット、131 ニップローラ、132 駆動シリンダ、14 駆動軸、15 巻取駆動装置、20 制御ユニット、21 制御部、211 演算部、212 張力制御部、213 ニップ荷重制御部、22 記憶部、23 表示部、24 入力部、241 動作開始ボタン、25 巻取制御部、26 ダンサー制御部、27 ニップローラ制御部、31 巻取ロール、50 カメラ、51 巻出装置、60 グラビア印刷装置、61,62,63 印刷ユニット、65 インフィードローラ、66 アウトフィードローラ、70 通信部、72 データベース、721 記憶部、80 ウエブ巻取システム、W ウエブ、C コア、Ds データセット、Dsr 参照データセット、Ps 設定パラメータ、Ac 付加条件、Rr 巻取結果、Tp 貼り付けテープ
図1
図2
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図10