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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】センサー付きプロテクター
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/273 20160101AFI20230926BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230926BHJP
   B60J 10/15 20160101ALI20230926BHJP
【FI】
B60J10/273
B60J5/00 D
B60J10/15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075755
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021172165
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】松本 美智彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 敏路
(72)【発明者】
【氏名】林 大祐
(72)【発明者】
【氏名】服部 航
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091618(JP,A)
【文献】特開2019-119420(JP,A)
【文献】特開平11-237289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/273
B60J 5/00
B60J 10/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部を開閉する開閉物の周縁または前記開口部の周縁に取付けられる取付基部と、その取付基部に一体成形され、2本の芯線が空間部を介して設けられた中空部を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では長手方向に引き出された前記芯線が、ワイヤーハーネスで束ねられた被覆部から突出したリード線に電気的に接続されるとともに、前記空間部を塞ぐように、非導電材で形成されるインサートの一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクターであって、
前記インサートに、前記型成形時に型成形材料を前記インサートの内部に流入可能な型材流入口を少なくとも二ヶ所、前記ワイヤーハーネスが延びる方向に沿い間隔をおいて設けるとともに、
前記型材流入口に相対向する部位では、前記ワイヤーハーネスから前記被覆部をそれぞれ露出させたことを特徴とするセンサー付きプロテクター。
【請求項2】
前記インサートの他端部には、前記芯線の先端と前記リード線の先端が納められる小溝部が形成された支持体と、その支持体を覆う蓋体を備えるとともに、
前記支持体と蓋体には、前記被覆部と前記ワイヤーハーネスが納められる大溝部が前記小溝部に連通して形成されたことを特徴とする請求項1に記載のセンサー付きプロテクター。
【請求項3】
前記大溝部の内方に突出して、前記大溝部に納められたワイヤーハーネスを挟持する押付部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のセンサー付きプロテクター。
【請求項4】
前記押付部を、前記大溝部において、前記小溝部側に寄った位置にある第一押付部と、前記小溝部側とは逆側に第一押付部から離れた位置にある第二押付部の少なくとも二ヶ所に設けたことを特徴とする請求項3に記載のセンサー付きプロテクター。
【請求項5】
前記小溝部及び前記大溝部の小溝部側を直線形状に形成するとともに、前記大溝部の小溝部とは逆側を曲線形状に湾曲形成して、前記ワイヤーハーネスをUターンさせた状態で前記大溝部に納めたことを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか一つに記載のセンサー付きプロテクター。
【請求項6】
前記支持体と蓋体を、前記型成形材料と接着可能な材質で構成したことを特徴とする請求項2乃至5のうちいずれか一つに記載のセンサー付きプロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴン車やワンボックスカーなどのように車体の前後に移動するスライドドアやバックドア等のドアやサンルーフなどのように、車体の開口部を開閉する開閉物と、開口部との間に指等の異物が挟み込まれると対応する信号を出力して異物の存在を検知するセンサーが組込まれたセンサー付きプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、ワゴン車などのようにスライドドア1(あるいはバックドア)によって車体の開口部を開閉する自動車や、図11に示すように、サンルーフ2によって車体の開口部を開閉する自動車においては、センサー付きプロテクター10,20が取付けられている。
【0003】
例えば、スライドドア1の前端面には、車体前側に向けて突設され、図12に示すような、上下に延びるセンサー付きプロテクター10が取付けられている。
センサー付きプロテクター10は、図13及び図14に示すように、スライドドア1の前端面に取付けられる、車内側壁11a,車外側壁11b及び連結壁11cからなる断面略U字状の取付基部11とそれに一体成形された中空部12を備え、中空部12には、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
なお、センサー付きプロテクター10の下部では、取付基部11の車内側壁11a側に断面C字形状のチャンネル部13が一体成形されていて、感圧センサーSに接続されるワイヤーハーネスWを保持している。また、取付基部11の内側には複数の保持リップ14,14が設けられ、また取付基部11には剛性をアップさせるために断面略U字形状の芯材15が埋設されている。さらに取付基部11の車外側壁11bにはシールリップ16が設けられている。
【0004】
センサー(感圧センサー)Sは、上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線)31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体34,35に埋設されるようにして中空部12内に固定されてなるもので、スライドドア1の閉時にスライドドア1とボディ側開口部との間に異物が挟み込まれると中空部12が部分的に押圧されて潰れ、ゴム様弾性体34,35が接触して2本の芯線31,32が短絡するようになっている。そして、この電気信号の変化が、センサー付きプロテクター10の下側端末部分で2本の芯線31,32に結線されたリード線36に接続された制御装置40に伝えられることによって異物の存在が検知される。なおリード線36は絶縁体で被覆された状態でワイヤーハーネスWによって束ねられているが、先端は被覆部37からむき出した裸線となっている。
【0005】
センサー付きプロテクター10の下側端末部分では、図15に示すように、長手方向(図15では左方向)に引き出された2本の芯線31,32に対して、リード線36が重ね合わされ抵抗溶接やハンダ付によって結線される(図15(b))とともに、端部では空間部33が露出しているのでインサート25で塞いた後(図15(c))、図16に示すように、型成形することによって結線部M1,インサート25及びワイヤーハーネスWの一部を型成形内部に埋めて露出しないようにしている。インサート25で空間部33を塞ぐのは、型成形時に型成形材料が空間部33に流れ込みセンサー機能が損なわれることを防止するためである。なお、図16では型成形の部位を点線で示した。
【0006】
しかし、結線部M1は型成形内部に埋められる際に射出成形圧の影響を受けるため、型成形部から露出しないように、または線が破損しないようにセンサー付きプロテクター10の下側端末部分では結線部M1及びリード線36をインサート25の表面に接着剤で強固に固定して位置決めする必要があった。
このため接着工程が新たに必要になるとともに接着剤の使用が多くなると接着不良の原因になるという不具合があった。また、接着剤の使用にはバラツキが生じ易く、結線部Mを安定した状態で固定することが難しい。さらに接着剤による固定では、一旦取付けられると補修や交換などの際に容易に取り外すことはできないといった問題がある。
また、2本の芯線31,32とリード線36との結線作業にバラツキが生じた場合、リード線36の足が端末部の表面から飛び出すといった問題もある。
【0007】
一方、特許文献1には、コードの接続部をかしめることで固定できる金属片を使用するものが記載されているが溶接により固着されるので手間がかかり構造も複雑であるのに加え、インサートを含め、型成形の際に型成形材料が中空部に流れ込むことを防止する点については記載されていない。
【0008】
これに対して、図17に示すセンサー付きプロテクター10のように、インサート50の一端側に設けられた挿入部51を空間部33に圧入して空間部33を塞いだ状態で型成形されてなるとともに、インサート50の他端側に設けられた支持体52Aとそれを覆う蓋体52Bで、芯線31,32の先端とリード線36の先端の重ね合わせ部分M2を挟み込み押付部54を局所的に当接させながら固定するものが開示されている(特許文献2参照)。
そして、センサー付きプロテクター10の下側端末部分においては、最終的に、インサート50の他端側に設けられた支持体52Aと蓋体52B,リード線36の被覆部37及びワイヤーハーネスWの一部は、型成形内部に埋められて露出しないようにされる。
【0009】
これによれば、インサート50の挿入部51によって中空部12の空間部33側に型成形材料が流れ込むことが防止されるとともに、インサート50の支持体52Aとそれを覆う蓋体52Bによって芯線31,32の先端とリード線36の先端同士を直接結線しなくても両者は電気的に接続されるので接着剤を使用することがないのに加え、抵抗溶接やハンダ付による結線も不要となる。
そして、型成形時に芯線31,32の先端とリード線36の先端同士を重ね合わせた部分M2が、射出成形圧の影響を受けて型成形部から露出したり、線が破損したりすることが防止される。
【0010】
しかしながら、図17に示すセンサー付きプロテクター10は、下側端末部分を型成形するときにリード線36の被覆部37やワイヤーハーネスWに沿ってエアーが伝播してくるといった問題がある。
エアーが型成形部内に残ると型成形材料の密着性が弱くなってしまい止水性能も悪くなってしまう。
【0011】
このようなエアーを遮断するため、例えば、特許文献3に記載されたように、一次シール層及び二次シール層を施すといったように型成形を重ねて行うことも考えられるが生産コストがかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第3291233号公報
【文献】特開2015-20548号公報
【文献】特許第6258735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の目的とするところは、安定した型成形を行って止水能性を向上させることのできるセンサー付きプロテクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明のセンサー付きプロテクターは、車体の開口部を開閉する開閉物の周縁または前記開口部の周縁に取付けられる取付基部(11)と、その取付基部(11)に一体成形され、2本の芯線(31,32)が空間部(33)を介して設けられた中空部(12)を備え、前記開閉物の閉時に前記開閉物と前記開口部との間に挟み込まれた異物により前記中空部(12)が押圧されて潰れると、それに対応した電気信号の変化によって前記異物の存在を検知し、端末部分では長手方向に引き出された前記芯線(31,32)が、ワイヤーハーネス(W)で束ねられた被覆部(37)から突出したリード線(36,36)に電気的に接続されるとともに、前記空間部(33)を塞ぐように、非導電材で形成されるインサート(80)の一端側が圧入された状態で型成形されてなるセンサー付きプロテクター(70)であって、
前記インサート(80)に、前記型成形時に型成形材料を前記インサート(80)の内部に流入可能な型材流入口(85,86)を少なくとも二ヶ所、前記ワイヤーハーネス(W)が延びる方向に沿い間隔をおいて設けるとともに、前記型材流入口(85,86)に相対向する部位では、前記ワイヤーハーネス(W)から前記被覆部(37)をそれぞれ露出させたことを特徴とする。
なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0015】
また本発明は、前記インサート(80)の他端部には、前記芯線(31,32)の先端と前記リード線(36,36)の先端が納められる小溝部(83)が形成された支持体(82A)と、その支持体(82A)を覆う蓋体(82B)を備えるとともに、
前記支持体(82A)と蓋体(82B)には、前記被覆部(37)と前記ワイヤーハーネス(W)が納められる大溝部(84)が前記小溝部(83)に連通して形成されたことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記大溝部(84)の内方に突出して、前記大溝部(84)に納められたワイヤーハーネス(W)を挟持する押付部(87,88)を設けたことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記押付部(87,88)を、前記大溝部(84)において、前記小溝部(83)側に寄った位置にある第一押付部(87)と、前記小溝部(83)側とは逆側に第一押付部から離れた位置にある第二押付部(88)の少なくとも二ヶ所に設けたことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記小溝部(83)及び前記大溝部(84)の小溝部(83)側を直線形状に形成するとともに、前記大溝部(84)の小溝部(83)とは逆側を曲線形状に湾曲形成して、前記ワイヤーハーネス(W)をUターンさせた状態で前記大溝部(84)に納めた
ことを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記支持体(82A)と蓋体(82B)を、前記型成形材料と接着可能な材質で構成したことを特徴とする。
なお、ここで「接着」には「溶着」・「融着」も含まれる。
【0020】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インサートには、型成形時に型成形材料がインサートの内部に流入可能な型材流入口が少なくとも二ヶ所設けられているので、センサー付きプロテクターの端末部分を型成形するときに、型材流入口からインサートの内部に流入した型成形材料によってインサートとワイヤーハーネスの空間(X)が埋められ、その空間(X)にエアーが残ることが抑制される。
その上、二ヶ所以上の型材流入口は、ワイヤーハーネスが延びる方向に沿い間隔をおいて設けられるとともに、型材流入口に相対向する部位では、ワイヤーハーネスから被覆部をそれぞれ露出させた状態になっているので、型成形材料によってワイヤーハーネスと被覆部の空間(Y)も埋められ、その空間(Y)にエアーが残ることも抑制される。
これにより、エアーが型成形部内に残ることは著しく改善されるので、エアーが残ることで型成形材料の密着性が弱くなってしまい止水性能も悪くなってしまうといった問題は大きく解消される。
【0022】
また本発明によれば、インサートの他端部は芯線の先端とリード線の先端が納められる小溝部が形成された支持体とその支持体を覆う蓋体とを備えるとともに、支持体と蓋体には、被覆部とワイヤーハーネスが納められる大溝部が小溝部に連通して形成されているので、芯線,リード線,被覆部及びワイヤーハーネスの各端部はインサートの内部において外部に露出させず束状にして安定した状態で納められる。したがって、組付け性が向上する。
また、型成形時にワイヤーハーネスがインサート内で押されることを抑えることもできる。
【0023】
また本発明によれば、大溝部の内方に突出して大溝部に納められたワイヤーハーネスを挟持する押付部を設けたので、インサートの中にワイヤーハーネスをさらに安定した状態で固定することができる。
特に、第一押付部と第二押付部によって、ワイヤーハーネスを小溝部側に寄った位置と小溝部側とは逆側の位置で局所的に押えると効果的である。
【0024】
また本発明によれば、小溝部及び大溝部の小溝部側を直線形状に形成するとともに、大溝部の小溝部とは逆側を曲線形状に湾曲形成して、ワイヤーハーネスをUターンさせた状態で大溝部に納めるようにしたので型成形材料とインサートとの接着面積を長く設定することが可能となるとともに、型成形直前の、ワイヤーハーネスやリード線の取り扱い作業性が向上し、結線部が破断しにくくなる。
【0025】
また本発明によれば、支持体と蓋体を、型成形材料と接着可能な材質で構成したので、インサートと型成形材料が接着することで一体感ができ、センサー付きプロテクターの取扱いを容易にすることができるとともに、止水性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター下側端末部分の要部を示す斜視図である。
図2図1に示すセンサー付きプロテクターのインサートを示す斜視図である。
図3図1に示すセンサー付きプロテクターのインサートでワイヤーハーネスに組付けられた状態を示す斜視図である。
図4図1に示すセンサー付きプロテクターのインサートでワイヤーハーネスに組付けられた状態を、図3とは別の角度で示す斜視図である。
図5図4に示すセンサー付きプロテクターのインサートで、蓋体を外した状態を示す斜視図である。
図6図4のC-C線拡大断面図である。
図7図4のD-D線拡大断面図である。
図8図1に示すセンサー付きプロテクターの要部を模式的に示す縦断面図(図4のE-E線断面相当図)である。
図9】本発明の実施形態に係る別のセンサー付きプロテクターのインサートでワイヤーハーネスに組付けられた状態を示す斜視図である。
図10】スライドドアによって開閉する自動車の側面図である。
図11】サンルーフが設けられた自動車の斜視図である。
図12図10に示すセンサー付きプロテクターを示す側面図である。
図13図12のA-A線拡大断面図である。
図14図12のB-B線拡大断面図である。
図15】従来例に係るセンサー付きプロテクター下側端末部分の型成形前の工程を順に示す斜視図である。
図16】従来例に係るセンサー付きプロテクター下側端末部分の型成形後の構成概要を示す斜視図である。
図17】従来例に係る別のセンサー付きプロテクター下側端末部分の型成形後の構成概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター70について説明する。
本発明の実施形態に係るセンサー付きプロテクター70は、図10で示したようなスライドドア1によって車体の開口部を開閉する自動車におけるそのスライドドア1の前端面に車体前側に向けて突出するように取付けられ、スライドドア1とボディ側開口部(フロントドア(サイドドア)の場合もある)との間に人体の一部(指や手足)などの異物が挟まった場合にその挟み込みを検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sが取付けられたものであり、図12乃至図14で示した部分では、従来例で示したものと同一の構成であるが、インサート80の構成が従来例で示したインサート25,50とは相違するものである。従来例と同一部分には同一符号を付した。なお、ここで、「電気信号の変化」には、2本の芯線31,32が短絡することによる変化や、静電容量の変化が含まれる。
【0028】
このセンサー付きプロテクター70は、図13及び図14で示したものと同様に、スライドドア1に形成されたフランジ(図示しない)に直接、取付けられる取付基部11と、その取付基部11に一体成形され、スライドドア1の閉時にスライドドア1の前端面とその前端面が対向するボディ側開口部との間に指等の異物があるとその異物に弾接する中空部12と、その中空部12に組み込まれ異物を検知して対応する電気信号を出力するセンサー(感圧センサー)Sを備え、センサー(感圧センサー)Sは、上下方向(長手方向)に延びる2本の芯線(電極線(撚り線も含まれる))31,32が、空間部33を介して設けられた導電性のゴム様弾性体34,35に埋設されるようにして中空部12内に固定されてなる。また、取付基部11の内側には複数の保持リップ14,14が設けられ、また取付基部11には剛性をアップさせるために断面略U字形状の芯材15が埋設されている。さらに取付基部11の車外側壁11bにはシールリップ16が設けられている。
そして、センサー付きプロテクター70の下側端末部分では、図1に示すように、インサート80によって下側端末部分において開口した中空部12の空間部33が塞がれる。
【0029】
インサート80は、図2に示すように、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエチレン・テレフタレート,ナイロン,6ナイロン、6-6ナイロン,といった非導電材からなるもので、一端側に設けられた板状の挿入部81と、他端側に設けられた突出部82で構成されている。
【0030】
挿入部81は、中空部12の空間部33に圧入されるように空間部33とほぼ同じ又は少し大きな断面形状により、空間部33を隙間なく塞ぐことで、その後の型成形時に型成形材料が空間部33に流れ込みセンサー機能が損なわれることを防止している。
挿入部81の断面形状はここでは空間部33と同様の断面形状である。挿入部81の断面形状は上述のように空間部33の断面形状にあわせられ、例えば空間部33の断面形状がV字状であれば、挿入部81の断面形状は、図4及び図5に示すようにV字状の断面形状になる。
【0031】
突出部82は、芯線31,32の先端とリード線36,36の先端を重ね合わされた状態で納められる小溝部83,83が形成された支持体82Aと、その支持体82Aを覆う蓋体82Bから構成されている。小溝部83は、支持体82Aの前側82Aa、すなわち挿入部81側に設けられた互いに離間した二つの溝部であり、挿入部81と突出部82の境界部から突出部82側に向かって長手方向に延びている。
小溝部83の溝幅は、図7に示すように、ここでは、芯線31,32の径及びリード線36,36の径よりも広くしてあり、両者を重ね合わせた状態では特に力を加える必要はなく小溝部83に容易に納めることができるようにしている。
【0032】
なお、小溝部83において芯線31,32とリード線36,36は重ね合わされた状態で納められるものであればどのような構成であってもよい。
【0033】
図7に示したものでは、支持体82Aの前側82Aaは断面略H字形状で形成される2つの凹部を小溝部83としているので小溝部83に納められた芯線31,32とリード線36,36の重ね合わせ部分M3は露出して外から視認することができるが、例えば、図17に示すように、重ね合わせ部分M2を覆うようにして外から視認することができないようにすることもできる。
【0034】
そして、図5に示すように、支持体82Aと蓋体82Bには、被覆部37とワイヤーハーネスWが納められる大溝部84が小溝部83に連通して形成されている。
大溝部84の溝幅84Lは、小溝部83の溝幅83L及びワイヤーハーネスWの(大径側の)幅WLよりも広くしてあり、ワイヤーハーネスWを特に力を加える必要はなく大溝部84に容易に納めることができるようにしている。
【0035】
インサート80は、図5に示すように、略J字形状に形成され直線形状の挿入部81側に対して突出部82の端部側は湾曲形状に形成されている。
これにより、挿入部81及び突出部82の内部に形成された、小溝部83及び大溝部84の小溝部83側は直線形状に形成され、大溝部84の小溝部83とは逆側は曲線形状に湾曲形成され、下側に延びるワイヤーハーネスWをUターンさせて上側に延びるようにした状態で大溝部84に納めるようにしている。
【0036】
また、大溝部84の内方には突出して、大溝部84に納められたワイヤーハーネスWを挟持する二つの押付部87,88が設けられている。
第一押付部87は、小溝部83側に寄った位置でワイヤーハーネスWの端部を挟持し、第二押付部88は、小溝部83側とは逆側で第一押付部87から離れた位置においてUターンさせられたワイヤーハーネスWの曲面部を挟持する。
【0037】
第一押付部87,第二押付部88は、大溝部84の内方に向けてリング状に突出したものであり、それらの内径87L,88LはワイヤーハーネスWの幅WLよりも小さくワイヤーハーネスWを局所的にかしめる構造にしている。
特に限定されるわけではないが、第一押付部87では長手方向に間隔をあけて4段設けている(87a~87d)。第二押付部88側は1段とした。
【0038】
そして、図1および図4に示すように、支持体82Aと蓋体82Bの端部との間及び、蓋体82Bの中央部には、型成形時に型成形材料Kが大溝部84に流入可能な二ヶ所の型材流入口85,86を設けられている。
型材流入口85,86は、ワイヤーハーネスWが延びる方向に沿って間隔をおいて設けるとともに、型材流入口85,86に相対向する部位では、ワイヤーハーネスWから被覆部37をそれぞれ露出させ、それら露出させた被覆部37同士の間(型材流入口85側で露出した被覆部37と型材流入口86側で露出した被覆部37との間)には、被覆部37を露出させていない状態のワイヤーハーネスWが配置されている。
【0039】
インサート80の支持体82Aの小溝部83に、芯線31,32とリード線36,36が重ね合わされた状態で納められるとともに、大溝部84に被覆部37とワイヤーハーネスWが納められ、支持体82Aを覆うように蓋体82Bが支持体82Aに固定された後、図1に示すように、インサート80の挿入部81が、センサー付きプロテクター70の下側端末部分において開口した中空部12の空間部33に圧入することで開口した部位は塞がれる。
その後、センサー付きプロテクター70の下側端末部分は型成形され、
インサート80が型成形内部に埋められ露出しないようにされる。
【0040】
この型成形時に、型成形材料Kは、インサート80の支持体82Aと蓋体82Bに設けられた型材流入口85,86からインサート80の内部に流入して、図4のC-C断面である、図6に示すように、インサート80とワイヤーハーネスWの間、すなわち支持体82Aと蓋体82Bが一体にされたものとワイヤーハーネスWの間の空間Xも埋め、さらにワイヤーハーネスWと被覆部37の間の空間Yも埋められるので、それら空間X,Yにエアーが残ることが防止される。
【0041】
特に、型材流入口85,86を設けることにより、図1の要部を模式的に示す縦断面図(図4のE-E線断面相当図)である、図8に示すように、三ヶ所の型成形材充填エリアY1,Y2,Y3から型成形材料Kを充填するようにしているので、ワイヤーハーネスWと被覆部37の間の空間Yが確実に埋められ一層エアーが残ることが抑制される。
これにより、エアーが型成形部内に残ることで型成形材料Kの密着性が弱くなってしまい止水性能も悪くなるといった問題が解消される。
また、空気穴を通って雨水などによる水が中空内に浸入してセンサー感度を悪化させることも抑制される。
【0042】
本実施形態に係るセンサー付きプロテクター70のインサート80(型成形後)をX線で検査したところCT画像において、ワイヤーハーネスWと被覆部37間の空間Yにはエアー溜まりを発見することができたものの、そのエアー溜まりは極めて小さいものであり型成形材料Kが高充填されていることを確認することができた。
また、図12に示す本実施形態に係るセンサー付きプロテクター70において、図12に示すA-A線断面切断位置にて押出断面を横切断するとともに、型成形部と制御装置40との間の部分でワイヤーハーネスWを横切断し、試験体とした。
この試験体の型成形部および、型成形部から露出したワイヤーハーネスWをその端部まで水中に浸漬し、水中に浸漬させていない図12に示す押出断面端部の空間部33から加圧空気を送り込み空気漏れが生じるか否かのシール性試験を行ったところ空気漏れはまったくなかった。
これにより、エアー溜まりの大きさは少なくとも水の分子の大きさよりも小さいものであることが確認された。
【0043】
なおインサート80の材質と型成形材料Kの材質を、共に類似な可撓性のある硬度にすることができる。例えば、インサート80の材質をPPとし、型成形材料Kの材質をTPOとする事が、あげられる。
これによるとインサート80と型成形材料Kが接着することで一体感ができ、センサー付きプロテクター70の取扱いを容易にすることができる。硬度は軟質のJISA20~90の範囲が好ましく、より好ましくはJISA40~90である。JISA40未満だと型成形部の機能(例えば車体への組付け性)に不安があり、JISA20未満では機能が不十分となる。また外部から内部電気部品や配線へ水が浸入するのを防止するために、インサート80が異なる別の樹脂材料(例えば接着剤)で包まれることもあるが、この別の樹脂材料も型成形材料と同程度又は、これより軟らかい(低硬度)であれば、前記した一体感を阻害しない。
【0044】
またインサート80の材質と型成形材料Kの材質を相溶性のある材質にすることもできる。この場合もインサート80と型成形部とに一体感ができ、センサー付きプロテクター70の取扱いを容易にすることができる。さらに、水の浸入の更なる防止を目的に異なる別の樹脂材料(接着剤)でインサート80を包む必要があったとしても、インサート80の材質と型成形材料の材質に相溶性があれば、両者と良好に接着する接着剤の選定が容易である。また、両者が融着する程度に同質であると接着剤などを使用せずともインサート80が型成形時に密着することができるため、接着剤を使わずとも外部からの水の内部電気部品や配線への侵入を防止することができる。なお相溶性があるとは、狭義には両者が融着する程度に同質のものであることを意味し、例えば、一方の材質がTPOである場合は、ポリプロピレン,ポリエチレン,TPO、又はオレフィン系樹脂を含有する各種TPEであればよい。オレフィン系樹脂を含有する各種TPEとしてはスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)があげられる。また一方の材質がTPSである場合は、これにオレフィン系樹脂が含有されていれば前記したTPOに対すると同様な材質を、相溶性があって、特に溶着又は融着する程度に同質として選択できる。
【0045】
なお、本実施形態では、インサート80の突出部82において、支持体82Aに対して蓋体82Bを上から嵌め込むことで互いに係止させて閉鎖状態を保持するようにしたが、蓋体82Bを、ヒンジまたは薄肉部(図示しない)を介して支持体82Aに開閉自在に取付けるようにしてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、型材流入口85,86を一ヶ所ずつ図示して説明したが、支持体82Aまたは蓋体82B、あるいは支持体82Aと蓋体82Bの両方に、追加の型材流入口を、一ヶ所以上設定しても良い(図示しない)。
本実施形態では、図1および図4に示すように、型材流入口85を、支持体82Aとその支持体82Aよりも小さくした蓋体82Bの端部との間に設け、型材流入口86を、蓋体82Bの中央部に設けるようにしたが、図9に示すように、型材流入口85についても蓋体82Bに設けるようにしてもよい。ここでは、支持体82Aに固定された蓋体82Bの上側に開口部を設けてそこを型材流入口85としたものである。
これによれば、型材流入口85の上下と、型材流入口86の上下の計四ヶ所(図8では三ヶ所の型成形材充填エリアY1,Y2,Y3)から型成形材料Kを充填することができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態では、スライドドア1が前後方向に移動する自動車において、スライドドア1側にセンサー付きプロテクター70を取付けたものを例にして説明したが、ボディ側開口部にセンサー付きプロテクター70を取付け、スライドドア1との間の異物を検知するようにしてよい。
また、センサー付きプロテクター70をバックドアやサンルーフ2(図11)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 スライドドア
2 サンルーフ
10 センサー付きプロテクター
11 取付基部
11a 車内側壁
11b 車外側壁
11c 連結壁
12 中空部
13 チャンネル部
14 保持リップ
15 芯材
16 シールリップ
20 センサー付きプロテクター
25 インサート
31,32 芯線
33 空間部
34,35 導電性のゴム様弾性体
36 リード線
37 被覆部
40 制御装置
50 インサート
51 挿入部
52 突出部
52A 支持体
52B 蓋体
54 押圧部
70 センサー付きプロテクター
80 インサート
81 挿入部
82 突出部
82A 支持体
82Aa 支持体の前側
82B 蓋体
83 小溝部
83L 小溝部の溝幅
84 大溝部
84L 大溝部の溝幅
85 型材流入口
86 型材流入口
87 第一押付部
87L 第一押付部の内径
88 第二押付部
88L 第二押付部の内径
K 型成形材料
M1 結線部
M2 重ね合わせ部分
M3 重ね合わせ部分
S センサー(感圧センサー)
W ワイヤーハーネス
WL ワイヤーハーネスの大径側の幅
X インサートとワイヤーハーネス間の空間
Y ワイヤーハーネスと被覆部間の空間
Y1,Y2,Y3 型成形材充填エリア
図1
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