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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-25
(45)【発行日】2023-10-03
(54)【発明の名称】応力分配支持構造体を備える光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/14 20060101AFI20230926BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230926BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230926BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20230926BHJP
【FI】
G02B3/14
B81B3/00
B81C1/00
G02B7/28 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020560408
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2019063502
(87)【国際公開番号】W WO2019224367
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】18174036.6
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511009547
【氏名又は名称】ポライト アーエスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン、ラース
(72)【発明者】
【氏名】カルタショフ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】キルピネン、ジャン タパニ
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-527764(JP,A)
【文献】特開2006-141082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 3/00
B81C 1/00
G02B 3/00 - 3/14
G02B 7/28 - 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を画定する光学素子(100)であって、
- 支持構造体(101)と、
- 前記支持構造体(101)に取り付けられた屈曲可能なカバー部材(102)であって、前記屈曲可能なカバー部材(102)と前記支持構造体(101)との間の境界面が境界面平面を画定する、屈曲可能なカバー部材(102)と、
- 前記屈曲可能なカバー部材(102)を所望の形状に成形するために配設される、1または複数のアクチュエータ(103)と、
- 前記屈曲可能なカバー部材に取り付けられた、少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体(107、507)と、を含み、
- 前記境界面平面の一方の側にある前記支持構造体の、
〇 前記光軸と平行な方向における寸法、および/もしくは、
〇 ヤング率
の1もしくは複数が、前記光軸と直交し、前記光軸と交差して前記光軸から離れる方向にある線の少なくとも一部に沿って、漸進的におよび/もしくは複数の段階で増大し、前記線は、前記境界面の内縁部にある点から、前記光軸に対してさらに離れて配置された点との範囲に及んでおり、
ならびに/または、
- 前記光軸に平行な方向の前記屈曲可能なカバー部材の寸法が、
〇 前記境界面の内縁部の少なくとも1つの第1の点において、
〇 前記第1の点から前記光軸までの線上にある、少なくとも1つの第2の点よりも大きく、
前記支持構造体の前記ヤング率が、前記屈曲可能なカバー部材(102)の前記ヤング率より低
前記支持構造体(101)が、
- 支持要素(126)と、
- 前記支持要素(126)と別部材として設けられた構造要素(128)であって、
〇 前記支持要素(126)、および、
〇 前記屈曲可能なカバー部材(102)
に隣接する構造要素(128)と、を含み、
前記光学素子の前記光軸と平行な方向における前記構造要素(128)の寸法が、前記光軸から前記光軸と直交し、前記光軸から離れた線に沿って、漸進的におよび/または複数の段階で増大し、
前記構造要素(128)は、前記光学素子の前記光軸を前記光軸の周方向において完全に取り囲んでいる、光学素子(100)。
【請求項2】
前記構造要素(128)の材料が、
- 前記支持要素(126)の材料、および、
- 前記屈曲可能なカバー部材(102)の材料
と異なる、請求項に記載の光学素子(100)。
【請求項3】
前記構造要素がポリマーを含む、請求項に記載の光学素子(100)。
【請求項4】
前記構造要素がエポキシを含む、請求項に記載の光学素子(100)。
【請求項5】
前記光学素子が、
- 前記支持構造体(101)の側壁に囲まれた、前記少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体(107、507)
を含む、屈折レンズであって、前記屈曲可能なカバー部材(102、502)が、
〇 前記少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体(107、507)の表面に取り付けられた屈曲可能な透明カバー部材である、請求項1に記載の光学素子(100)。
【請求項6】
前記1または複数のアクチュエータが、駆動時に5ジオプトリ以上の範囲全体で前記屈曲可能なカバー部材を形成することができるように、前記1または複数のアクチュエータおよび前記屈曲可能なカバー部材が配設されている、請求項1に記載の光学素子(100)。
【請求項7】
前記複数の段階が、少なくとも3つの段階を含む、請求項1に記載の光学素子(100)。
【請求項8】
前記光軸と平行な前記方向における前記寸法および/または前記ヤング率が、漸進的におよび/または複数の段階で増大する前記支持構造体の少なくとも一部が、前記少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体(107、507)から離間して配置される、請求項1に記載の光学素子(100)。
【請求項9】
前記構造要素(128)を形成するために、
- 前記支持要素(126)、および/または、
- 前記屈曲可能なカバー部材(102)
に、液体構造要素材料を配置することを含む、請求項1に記載の前記光学素子(100)を製造する方法。
【請求項10】
前記液体構造要素材料が、前記液体構造要素材料と、
- 前記支持要素(126)、および/または、
- 前記屈曲可能なカバー部材(102)
との間の接着力を介して、前記液体構造要素材料が配置された位置を越えて再分配される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
- 請求項1に記載の光学素子(100)を含むカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子に関し、より詳細には、屈曲可能なカバー部材と、当該屈曲可能なカバー部材を成形するための1または複数のアクチュエータとを有する光学素子、およびそれに対応する使用、光学デバイス、および当該光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調整可能な焦点距離と、可能な限り高い画像品質とを備え、耐衝撃性を有するレンズアセンブリなどの光学(マイクロ)素子に関する、低コストで量産型の解決策に対する要求がこれまでになく高まっている。例えば、最新の携帯電話には、現在では小型のデジタルカメラモジュールが搭載され、レンズおよびレンズアセンブリなどの光学素子に対する品質およびコストの要求が高まっており、かつ耐衝撃性であることが必要とされている。携帯電話およびノートパソコンに使用されている、ますます小型化されるカメラは、オートフォーカス機能を有する。例えば、このような用途のためのレンズシステムの設計には、カメラモジュールの上部にレンズを取り付ける際の製造基準から操作のしやすさに至るまでの多数の要件を満たすことが必要とされる。これらの課題は、レンズ構成が、オートフォーカスレンズに見られるような調整可能なパラメータを含む場合にさらに重要なものとなり、例えば、レンズから撮影される対象物までの距離に合わせるように焦点距離を調整する必要がある。このような光学素子は通常、可動部品を含む複雑な設計となり、簡単な方法で組み立てることが困難になる可能性がある。このような設計が有するさらなる課題としては、このように使用するためのレンズアセンブリなどの好適な光学素子を提供するための要件がこれまでになく高まっているということである。これらの光学素子を耐衝撃性にすることは、特に光学的特性と機械的特性を高いレベルで維持しなければならない場合には、特に困難である。
【0003】
小型のオートフォーカス光学素子を作製するための多数の解決策が存在する。現在の解決策の問題点のうちの一つは、どのようにして良好な耐衝撃性を提供するのか、例えば、良好な光学的特性および機械的特性を維持しながら良好な耐衝撃性を提供するのかということである。
【0004】
したがって、改善された耐衝撃性を有する光学素子が有利となり、特に、良好な耐衝撃性を可能にするための手段が、光学的特性および機械的特性の低下をほとんどまたは全く伴わない、改善された耐衝撃性を有する、調整可能な光学マイクロレンズなどの光学素子が有利となるだろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、改善された耐衝撃性を有する光学素子(調整可能な光学素子などの)を提供することなどの、上述した先行技術の問題点を解決した、調節可能な光学素子などの光学素子を提供することにあるということが理解されよう。本発明のさらなる目的が、先行技術の代替手段を提供することであることが理解されよう。
【0006】
このように、上記に記載した目的および他のいくつかの目的は、本発明の第1の態様において、光学レンズなどの光学素子、例えば、光軸を画定し、
- 支持構造体、
- 支持構造体に取り付けられている屈曲可能なカバー部材であって、屈曲可能なカバー部材と支持構造体との間の境界面が、境界面平面、例えば、屈曲可能なカバー部材に取り付けられている少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体をさらに含む光学素子などの光軸に対して直交する境界面平面を画定する、屈曲可能なカバー部材、
- 1または複数のアクチュエータ、例えば、当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設されている、1または複数の圧電アクチュエータ、を含み、
- 境界面平面の一方の側にある支持構造体の、
〇 光軸と平行な方向における寸法、および/もしくは、
〇 ヤング率
の1または複数が、光軸と直交し、光軸と交差して光軸から離れる方向にある線の少なくとも一部に沿って、漸進的におよび/もしくは複数の段階で増大し、当該線は、境界面の内縁部にある点から、光軸に対してさらに離れて配置された点との範囲に及んでおり、
ならびに/もしくは、
- 光軸と平行な方向における屈曲可能なカバー部材の寸法が、
〇 境界面の内縁部の少なくとも1つの第1の点において、
〇 当該第1の点から光軸までの線上にある、少なくとも1つの第2の点よりも大きい、例えば10%以上大きく、例えば20%以上大きく、例えば50%以上大きく、例えば100%以上大きく、または1マイクロメートル以上大きく、例えば2マイクロメートル以上大きく、例えば5マイクロメートル以上大きく、例えば10マイクロメートル以上大きい、調整可能な光学レンズを提供することによって得られることが意図される。
【0007】
本発明は、これに限定されるものではないが、特に、改善された耐衝撃性および/または落下の結果として起こる衝撃に耐えるための、改善された性能を有し得る、光学(屈折)レンズまたは反射素子、例えば、調整可能なマイクロレンズまたは調整可能なマイクロミラーなどの光学素子を得るために有利である。別の考えられる利点としては、提案された解決策が、光学的特性(波面誤差および/もしくは透過率および/もしくは調整可能性、例えば、及び得るジオプトリの範囲などの)、ならびに/または機械的特性(屈曲可能なカバー部材の曲げ剛性などの)を著しく損なうことがないことであろう。
【0008】
例えば、支持構造体の内縁部における機械的特性の急激な変化、例えばただ1回きりの突然の変化により、過度に大きな応力、例えば屈曲可能なカバー部材において過度に大きな応力をもたらし得るということが、本発明者の知見として理解されよう。本発明の特徴は、このような過度に大きな応力を回避することが可能となり得る。このような急激な変化(特異点)の際の応力は、有利なことに、例えば、漸進的にまたは複数の段階で、厚さおよび/またはヤング率が変化する構造体を介して再分配することができることが、本発明者の知見として理解されよう。
【0009】
より詳細には、支持構造体は、厚さおよび/またはヤング率(例えば、「ばね定数」)を漸進的におよび/もしくは複数の段階(例えば、単一の階段関数ではなく)で増大させてもよく、ならびに/または屈曲可能なカバー部材は、支持構造体の側壁などの、支持構造体との接点において、支持構造体の内側(例えば、光軸に近い)よりも厚くなっていてもよい(すなわち、光軸と平行な方向においてより大きな寸法を有してもよい)。「厚さ」とは、材料に隙間がある場合、隙間までの材料のみが厚さに寄与するが、隙間より下の材料は寄与しないなどの「密着している材料の厚さ」であると理解されよう。
【0010】
境界面平面の一方の側にある支持構造体は、厚さを漸進的に増大させることと、段階的に増大させることとを組み合わせて構成してもよく、すなわち、厚さを漸進的に増大することによって支持構造体の一部を形成してもよく、厚さを段階的に増加することによって支持構造体の別の部分を形成してもよいということが理解される。
【0011】
複数の段階による厚さおよび/またはヤング率の段階的な増大は、厚さ/ヤング率の漸進的な増大に近似する形であってもよい。したがって、連続的で漸進的な増大と近似させるために、この複数の段階は少なくとも3つまたは4つの段階、例えば少なくとも6つまたは少なくとも10つの段階を含んでもよい。他の箇所で述べられているように、漸進的に、または近似させて漸進的に厚さを増大させることにより、改善された耐衝撃性に応じて機械的特性を改善することができる。同じように、ヤング率を漸増的にまたは近似させて漸増的に増大させることにより、同様に機械的特性が改善される。
【0012】
厚さ/ヤング率の段階的な増大は、厚さ/ヤング率の連続的な増大に近似する。しかしながら、その増大が複数の段階の形であっても、または連続的な変動の形であっても、どちらの例も厚み/ヤング率が漸進的に増大することを示す。したがって、厚さまたはヤング率が段階的に増大するということは、厚さ(すなわち、光軸と平行な方向における寸法)またはヤング率が漸進的に増大することの一つの例である。
【0013】
例えば、支持構造体は、ウェハの前側面とは別個に積層されてパターニングされた、異なる層の組み合わせで構成されていてもよい。それらは、裏面エッチングの選択性によって所望の段差形状がもたらされるような、異なる材料であってもよい。
【0014】
増大する厚さの少なくとも一部が形成される線の延在部分は、境界面の内縁部にある点から光軸に対してさらに離れて配置された点まで延在する。したがって、境界面の内縁部にある点は、さらに離れて配置された点よりも光軸の近くに配置され、線はこれらの点の間に延在する。
【0015】
1または複数のアクチュエータによる屈曲可能なカバー部材の所望の形状への成形は、カバー部材上のアクチュエータによって発生した応力によって達成してもよく、それによって、カバー部材は応力およびアクチュエータの位置に依存した変形に応じたものとなる。
【0016】
本発明の考えられる利点としては、支持構造体を提供して、その上にカバー部材を配置することができ、そのときに、さらなる工程および/または追加の補強要素を必要とせずに、カバー部材の(支持構造体に対して)反対側の部位に、本発明の機構を組み込むことができるということであろう。したがって、本発明は、(支持構造体および/またはカバー部材が、上記で記載した応力特異性の問題を軽減するように配設されているか否かにかかわらず)簡単で、かつ/または効率的な製造方法を可能にするものとして理解されよう。アクチュエータなどの他の要素が、例えば、上記で記載された応力特異性の問題を軽減するように配置された機構を妨害することなく、(支持構造体に対して)カバー部材の対向する側に配設することができるということが有利であり得る。
【0017】
「光学素子」とは、(光学レンズ、例えば光学的屈折レンズである素子などの)素子を通過する光に作用する(例えば、光を処理する)か、または(反射素子または反射ミラーである光学素子などの)光学素子から反射される光に作用する素子であると理解されよう。
【0018】
光学素子は、一般的には、調整可能な光学素子であってもよい。「調整可能」とは、アクチュエータを駆動することにより、例えば、(アクチュエータが圧電アクチュエータである場合)当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設された、1または複数の圧電アクチュエータの印加電圧を変化させることなどにより、光学素子の焦点距離を調整することができるということが理解されよう。
【0019】
変形可能な透明レンズ本体は、例えば透明で変形可能であり、非流体である。変形可能な非流体のレンズ本体は、弾性ポリマー材料などの弾性材料から作製されていることが好ましい。レンズ本体は非流体であるため、レンズ本体を保持するための密閉が必要とされず、漏出の危険性がない。レンズ本体は、シリコーン、ポリマーゲル、架橋または部分架橋ポリマーのポリマーネットワーク、および混和性油または油の組み合わせなどの多くの異なる材料を含み得る軟質ポリマーから作製されてもよい。非流体レンズ本体の弾性率は300Paより大きくてもよく、それによって通常動作における重力に起因した変形が回避される。非流体レンズ本体の屈折率は、1.3より大きくてもよい。
【0020】
軟質ポリマーを使用することにより、ポリマーが大気と接触するレンズを製造することが可能となり、したがってレンズの焦点距離を調整する際に必要とされる力は、例えばポリマーが空洞全体に充填されている場合と比較すると、はるかに小さくなる。また、異なる製造工程が、異なる場所または施設に局地化されている場合であっても、ポリマーが所定の位置に保持されるため、製造が容易となる。
【0021】
「光軸」とは、一般的に当技術分野において理解されているものであり、カバー部材と交差する、例えばレンズ本体とカバー部材とを通過するということが理解される(光学素子が光学レンズである場合、光軸はレンズ本体とも交差することが理解される)。
【0022】
本出願内の光学的特性について言及する場合、この光学的特性(透過率または不透過率、または透明度、または反射率などの)とは、例えば、光学的開口部を通る(光学レンズの場合)、または光学活性領域から反射される(反射素子の場合)、光軸に対して入射角(AOI)内を進む光に適用されるものであり、この入射角は光軸に対して0~65°、例えば0~40°(例えば0°)の角度内にあるということが一般的に理解されよう。光学的特性は、例えば630nmの可視領域内の任意の波長などの、特定の波長における光学的特性、および/または、0°などの特定の入射角における光学的特性、例えば、630nmの波長における、かつ0°の入射角における光学的特性であると理解されよう。
【0023】
光学的特性の「平均」について言及する場合、波長範囲および光軸に対する入射角(AOI)以内の当該特性の二重平均(double average)として理解され、波長範囲は10nm~1mm以内であってよく、例えば、
- 10~380nm以内などの紫外線(UV)領域、
- 380~760nm以内などの可視(VIS)領域(人間が「光」として知覚または見える領域)、
- 760~2,500nm以内などの近赤外線(nIR)領域、
- 2.50~10マイクロメートル以内などの中赤外線(mIR)領域、
- 10マイクロメートル~1ミリメートル以内などの遠赤外線(fIR)領域、
の1もしくは複数、またはすべてに相当してもよく、AOIは0~65°、例えば0~40°、例えば0°である。
【0024】
「光学」とは、「光」に関するものとして理解されるべきであり、「光」とは、UV、可視、nIR、mIRおよびfIRに対応する1もしくは複数、またはすべての領域内の電磁放射線、例えば可視領域内の電磁放射線であると理解される。
【0025】
「透明」についての言及は、一般に、光に関連して理解されるものであり、すなわち、光は、材料を通過するときに、例えば平均で10%以下、例えば平均で5%以下(90%および95%の平均透過率にそれぞれ対応する)が失われる強度損失が、ほとんどまたは全くない状態で透明な物体を通過することができる。
【0026】
正透過率(specular transmittance)または正透過率(regular transmittance)などの「透過率」とは、光学レンズなどの光学素子に関する透過率の、この文脈において、
- 光学レンズに入射する光、および、
- 光学レンズを透過し、他方の側に正透過光(specularly (regularly) transmitted light)として放射される、光学レンズに入射した光の一部
の間の(波長範囲内および入射角範囲内の)平均の比として理解されよう。
【0027】
「側壁」とは、屈曲可能なカバー部材を少なくとも部分的に支持する、例えば光学活性領域のすぐ外側または近くの領域で屈曲可能なカバー部材を支持する、例えば光学的開口部などの支持要素または支持要素の一部(表面などの)であると理解されよう。
【0028】
「支持構造体」とは、屈曲可能なカバー部材を機械的に所定の位置に保持する、例えば屈曲可能なカバー部材を固定する、フレームなどの構造体であると理解されよう。例えばカメラでは、支持構造体によってカバー部材がカメラの残りの部分に対して固定される。支持構造体は、モノリシック、例えば光軸に向かって内側に突出した要素を有するシリコン要素であってもよく、または、非モノリシック(2つ以上のモノリシック材料から構成されるなどの)、例えば光軸に向かって内側に突出しているシリコン要素とエポキシ要素とであってもよい。
【0029】
「エポキシ」とは、当技術分野で一般的なものとして理解され、特に、エポキシ樹脂の硬化した最終製品のことを意味し得る。ポリエポキシドとしても公知のエポキシ樹脂は、エポキシド基を含有する反応性プレポリマーおよびポリマーの一種である。
【0030】
場合により有利な実施形態では、無機または有機充填剤材料を含むか、または含まない液体接着材、流動性の熱硬化性接着剤またはUV硬化性接着剤(またはその組み合わせ)を含むか、またはそれらから構成され、これらは硬化が始まる前に達成可能な低粘度(例えば、室温(例えば20℃、すなわち293K)から、接着剤の架橋反応により粘度が上昇する前の、加熱時の温度/時間で、5000mPas(ミリパスカル秒)以下の粘度などの)を有し、硬化後に1GPa以上のヤング率を有するエポキシが適用され得る。適用されるエポキシの、場合によりさらなる有利な特徴は、低収縮性、良好な熱安定性、および良好な耐湿性のうちの1または複数を含み得る。
【0031】
屈曲可能なカバー部材は、比較的薄くてもよく、例えば、支持構造体(および/または存在する場合にはレンズ本体)に対して薄くてもよく、この場合、「薄い」とは、例えば、1mm未満、例えば0.75mm未満、例えば0.5mm未満、例えば[10;40]マイクロメートル(すなわち、10~40マイクロメートル以内)の、光軸に沿った方向の(小さい)寸法を意味する。屈曲可能なカバー部材は、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)などの(ヤング率が10~100GPa以内、例えば20~100GPa以内、例えば20~60GPa以内、もしくは30~70GPa以内のガラスなどの)任意の種類のガラス、例えば任意の標準的な種類のガラス、またはセラミックガラス、ポリマー、ポリマー無機ハイブリッドなどの他の材料、例えば、いわゆるカバーガラス、もしくはカバーガラスと同様の材料で作製されてもよい。これらの材料は特に、屈曲可能なカバー部材が透明でなければならない実施形態に関連し得る。「屈曲可能」とは、1または複数のアクチュエータによって屈曲可能なカバー部材などの要素を屈曲することができる、すなわち、1または複数のアクチュエータを駆動することによって要素を屈曲することができるということが理解されよう。「屈曲可能なカバー部材」とは、互換的に「カバー部材」を意味し得る。
【0032】
一実施形態では、屈曲可能なカバー部材は、少なくとも10GPa、例えば10~100GPa以内、例えば20~100GPa以内、例えば20~60GPa以内、または30~70GPa以内のヤング率を有する材料を含み、例えば構成される光学素子が提示される。この(比較的剛性のあるカバー部材などの)利点としては、1または複数の圧電アクチュエータが、開口部などの光学活性領域を画定することを可能にするか、または促進する一方で、それでもなお、1または複数の圧電アクチュエータによって開口部などの光学活性領域に(圧電アクチュエータは開口部には存在しないが)カバー部材を形成することができるということであろう。
【0033】
屈曲可能なカバー部材は、(光学素子が光学レンズである場合)屈曲可能な透明カバー部材であってもよく、より詳細には、
- 光に対して98%以上の透過率、および/または、
- 20MPa以下の応力
を有してもよい。
【0034】
このことは、例えば、屈曲可能な透明カバー部材がガラス製であれば実現することができる。
【0035】
一実施形態では、屈曲可能なカバー部材が側壁の内縁部を越えて延在する光学素子が提示される。光学素子が光学レンズである場合、側壁の内縁部は、側壁の表面、例えば変形可能なレンズ本体に面した側壁の表面に相当するものであるということを理解すべきである。換言すれば、屈曲可能なカバー部材は、直面する側壁の表面、例えば光軸に面した側壁の表面(および所望により変形可能なレンズ本体)よりも光軸からさらに離れて延在している。
【0036】
「アクチュエータ」とは、当技術分野で公知であり、例えば、熱アクチュエータ、静電アクチュエータ、磁気アクチュエータ、または圧電アクチュエータのうちいずれか1つであってもよい。
【0037】
「当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設される」とは、カバー部材に相対するアクチュエータの形状、大きさ、および位置が、アクチュエータの駆動時に、例えば(圧電アクチュエータの場合には)その電極全体に電圧が印加されると、当該屈曲可能なカバー部材を変形させ、それによって所望の形状に成形することが可能になるということが理解されよう。カバー部材の少なくとも一部は、光学的開口部などの光学活性領域にあり、例えば、光軸が交差するカバー部材の一部が、所望の形状に成形されていることが理解される。
【0038】
「所望の形状」とは、ある形状から所望の形状になる(例えば、ある所望の形状から別の所望の形状になる)ときに、光学素子の焦点距離を変化させることができるということが理解されよう。
【0039】
境界面平面の一方の側にある支持構造体の、
〇 光軸と平行な方向における寸法、および/または、
〇 ヤング率
の1または複数が、光軸と直交し、光軸と交差して光軸から離れる方向にある線の少なくとも一部に沿って、漸進的におよび/もしくは複数の段階で増大し、当該線は、境界面の内縁部にある点から、光軸に対してさらに離れて配置された点までの範囲に及ぶような支持構造体を配設することにより、応力特異性の問題を軽減することが可能となり得る。このように配設することにより、屈曲可能なカバー部材で見られるような、支持構造体の「ばね定数」(この場合「ばね定数」とは、力Fおよび変位xに関する定数k、例えばフックの法則ではF=kxであるものと理解される)を、光軸においてゼロから変動させてもよく(支持構造体が存在し得ない場合)、例えば少なくともカバー部材と支持構造体との間の境界面の内縁部から、光軸から離れる方向で、漸進的にまたは複数の段階で増大させてもよい。したがって、支持構造体とカバー部材との間の最大反力の変動もまた、光軸から離れる方向で、漸進的にまたは複数の段階で増大させてもよい。
【0040】
厚さが測定される線分の位置は、光軸に対して径方向で外側に向けられた線分であり、支持構造体とカバー部材との間の第1の接触点から始まって、当該第1の接触点の外側で支持構造体の少なくとも一部を半径方向に覆い、当該第1の接触点よりも光軸に対してさらに離れて配置された点で終了するということに留意されたい。当該線分は、1mm以下、例えば750μm以下、例えば500μm以下、例えば400μm以下、例えば300μm以下、例えば290μm以下、例えば250μm以下、例えば200μm以下、例えば150μm以下、例えば100μm以下、例えば50μm以下、例えば40μm以下、例えば20μm以下、例えば10μm以下、例えば2μm以下の長さを有していてもよい。厚さ、例えば当該線分にわたる支持構造体の、光軸と平行な方向における寸法は、1mm以下、例えば750μm以下、例えば500μm以下、例えば400μm以下、例えば300μm以下、例えば290μm以下、例えば250μm以下、例えば200μm以下、例えば150μm以下、例えば100μm以下、例えば50μm以下、例えば40μm以下、例えば20μm以下、例えば10μm以下、例えば2μm以下であってよい。特定の実施形態では、当該線分の長さと、当該線分にわたる支持構造体の寸法との両方が、1mm以下、例えば750μm以下、例えば500μm以下、例えば400μm以下、例えば300μm以下、例えば290μm以下、例えば250μm以下、例えば200μm以下、例えば150μm以下、例えば100μm以下、例えば50μm以下、例えば40μm以下、例えば20μm以下、例えば10μm以下、例えば2μm以下であってよい。
【0041】
「支持構造体のヤング率」とは、支持構造体の材料のヤング率のことであると理解される。「漸進的におよび/または複数の段階で増大する」とは、ヤング率の観点から、相対的な条件で増大する、例えば10%以上、20%以上、50%以上、または100%以上大きくなるということが理解されよう。
【0042】
「漸進的におよび/または複数の段階で増加する」とは、寸法の観点から、絶対的な条件で増大するということが理解されよう。当該増大は、1マイクロメートル以上、例えば2マイクロメートル以上、例えば5マイクロメートル以上、例えば10マイクロメートル以上、例えば20マイクロメートル以上、例えば40マイクロメートル以上、例えば50マイクロメートル以上であってよい。当該増大は、100マイクロメートル以下、例えば50マイクロメートル以下、例えば40マイクロメートル以下、例えば20マイクロメートル以下、例えば10マイクロメートル以下、例えば5マイクロメートル以下であってよい。具体的な実施形態では、当該増大は、1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~50マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内である。
【0043】
境界面の内縁部にある点と光軸に対してさらに離れて配置された点との間の距離は、1マイクロメートル以上、例えば2マイクロメートル以上、例えば5マイクロメートル以上、例えば10マイクロメートル以上、例えば20マイクロメートル以上、例えば40マイクロメートル以上、例えば50マイクロメートル以上であってよい。境界面の内縁部にある点と光軸に対してさらに離れて配置された点との間の距離は、100マイクロメートル以下、例えば50マイクロメートル以下、例えば40マイクロメートル以下、例えば20マイクロメートル以下、例えば10マイクロメートル以下、例えば5マイクロメートル以下であってよい。具体的な実施形態では、当該距離は、1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~50マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内である。
【0044】
さらにより具体的な実施形態では、光軸と平行な方向における寸法の当該増大は、1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~50マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内であり、当該距離は、1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~50マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内である。さらにより具体的な実施形態では、当該増大は10マイクロメートル~100マイクロメートル以内であり、当該距離は10マイクロメートル~100マイクロメートル以内である。さらにより具体的な実施形態では、当該増大は20マイクロメートル~40マイクロメートル以内であり、当該距離は20マイクロメートル~40マイクロメートル以内である。
【0045】
光軸に平行な方向の屈曲可能なカバー部材の寸法(厚さなどの)が、
〇 境界面の内縁部の少なくとも1つの第1の点において、
〇 当該第1の点から光軸までの線上にある、少なくとも1つの第2の点
よりも大きくなるように、屈曲可能なカバー部材を配設することにより、応力特異性の問題を軽減することが可能となり得る。
【0046】
このように配設することにより、屈曲可能なカバー部材は、支持構造体の「ばね定数」の急激な変化を経験する可能性があるものの、その急激な変化の際に、これに対処することができる十分な厚さにすることができ、しかしそれと同時に、良好な光学的特性および/または機械的特性を示すことができる支持構造体内の領域では十分な薄さにすることができる。上記で言及される境界面とは、光軸と平行な方向で観察されるような、支持構造体と屈曲可能なカバー部材との間の境界面のことである。
【0047】
一実施形態では、液体を含まない光学素子が提示される。一実施形態では、光学素子が固体またはガス状である、例えば、固体またはガス状の要素から構成される光学素子が提示される。一実施形態では、光学素子が固体である、例えば、固体要素から構成される光学素子が提示される。
【0048】
光学レンズは一般的に、調整可能なマイクロレンズなどのマイクロレンズであってよい。「マイクロレンズ」とは、厚さ(光軸と平行な方向における寸法)などの少なくとも1つの構造部品の寸法が、1マイクロメートル~1ミリメートルの範囲内にあるレンズのことであると一般的に理解されよう。本出願において、厚さについての言及は、幾何学的厚さ(光学的厚さではなく)についての言及である。一実施形態では、この厚さは、200~800マイクロメートルであってもよい支持構造体(例えばシリコン)と、カバー部材と、約22マイクロメートルであってもよい電気接点を含む1または複数の圧電アクチュエータとの合計であってもよい。光学レンズは、ノルウェーのポライト社から入手可能なTLens(登録商標)として公知の調整可能なマイクロレンズと(特許請求される特徴により)同一というわけではないが、同様なものであってよい。この光学レンズは、特に、特許出願国際公開第2008100154(A1)号に開示されている「焦点距離が可変の可撓性レンズ組立体」と題する、調整可能なマイクロレンズに(同一ではないが)相当する調整可能なマイクロレンズであってもよく、本出願は、参照によりその全体が本明細書に含まれる。さらに、参考文献である国際公開第2008100154(A1)号に関しては、特定の寸法をマイクロメートルからミリメートルに変換してもよく、特にd1PZT、d2PZT、およびwpol.として示される寸法(例えば、図1/5頁の図1c、部分図Iを参照のこと)は、μm(マイクロメートル)ではなくmm(ミリメートル)の単位で与えられるが、実現する際には数字的に同一の値、より詳細にはd1PZT=4mm、d2PZT=1.5mmおよびwpol.=4.5mmであってよいということに留意されたい。
【0049】
一実施形態では、光学素子の厚さが1mm以下、例えば700マイクロメートル以下、例えば500マイクロメートル以下、例えば450マイクロメートル以下、例えば425マイクロメートル以下、例えば400マイクロメートル以下である光学素子が提示される。厚さが薄いことの考えられる利点としては、垂直方向のフットプリントが非常に小さい光学レンズが可能になるということである。同様に、この小さな垂直方向のフットプリントによって、垂直方向のフットプリントがさらに小さいカメラなどのより薄型の光学デバイスを、現在許容されているものよりもさらに薄型の携帯電話などのデバイスに、所望により組み込むことができるようになる。「光学レンズの厚さ」とは、光軸と平行な方向の光学長の寸法(光軸に対して直交し、光学レンズの両側に位置する2つの平面間の距離などの)であると理解されよう。
【0050】
一実施形態では、支持構造体が、
- 支持要素、例えば、シリコン要素である支持要素と、
- 構造要素、例えば、エポキシ要素である構造要素であって、例えば構造要素のいくつかまたはすべてが支持要素よりも光軸の近くに配置され、
〇 支持要素、および、
〇 屈曲可能なカバー部材
に隣接している構造要素と、を含む、光学素子が提示される。
【0051】
支持要素および屈曲可能なカバー部材に隣接している構造要素を有することの考えられる利点としては、特許請求された特徴を、モノリシック支持構造体に提供することが過剰なものとなり得る(困難であり得る)ということである。例えば、特許請求された特徴を有するシリコンにおいてモノリシック支持構造体を提供することは可能であるかもしれないが、困難なことであり、低い歩留まりをもたらす可能性がある。記載されているような構造要素を導入することで、境界面平面の一方の側の(支持構造体の)構造要素の光軸と平行な方向の寸法が、光軸と直交し、光軸と交差して光軸から離れる方向にある線の少なくとも一部に沿って漸進的に増大する、例えばエポキシベースの構造要素を有する支持構造を、簡単かつ効率的な方法で提供することが可能となり得る。一実施形態では、当該構造要素は、1マイクロメートル~300マイクロメートル以内、例えば1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~50マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内の、光軸と平行な方向における第1の寸法を有する。一実施形態では、当該構造要素は、1マイクロメートル~300マイクロメートル以内、例えば1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~50マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内の、光軸に対して径方向の第2の寸法を有する。一実施形態では、当該構造要素のヤング率は、0.1~100GPa以内、例えば0.1~10GPa以内、例えば1~10GPa以内、例えば3.5GPaである。さらにより具体的な実施形態では、当該第1および第2の方向のそれぞれは、1マイクロメートル~300マイクロメートル以内、例えば1マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば10マイクロメートル~100マイクロメートル以内、例えば20マイクロメートル~40マイクロメートル以内であり、ヤング率は、0.1~100GPa以内、例えば0.1~10GPa以内、例えば1~10GPa以内、例えば3.5Paである。さらにより具体的な実施形態では、当該第1および第2の方向のそれぞれは、20マイクロメートル~40マイクロメートル以内であり、当該構造要素のヤング率は、1~10GPa以内である。
【0052】
構造要素は、支持要素と屈曲可能なカバー部材を単に結合しており、光軸に面する外側表面を有する。外側表面は、支持要素から屈曲可能なカバー部材に向かって延在しており、平面であってもよく、内向きに成形された表面または凹面などの湾曲した表面であってもよい。
【0053】
構造要素の材料は、複数の材料の中から選択されてもよい。実施形態では、構造要素の材料はポリマーであってよい。実施形態では、構造要素の材料はエポキシであってよい。
【0054】
実施形態では、構造要素は、有機反応性接着剤であってよい。例えば、支持要素および/または屈曲可能なカバー部材に、アクリル、ポリウレタン、エポキシ、ポリイミド、シアノアクリレートなどの、硬化後に剛性のある架橋構造へと固化する液体有機/ハイブリッド、無機/有機接着剤などの液体構造要素材料を配置してもよく、続いて、例えば熱活性化された化学架橋反応、水分活性化された硬化、UV活性化された硬化、またはその組み合わせであってよい硬化を介して(固体の)液体構造要素を形成することができる。
【0055】
実施形態では、構造要素材料に充填剤材料が添加される。充填剤材料を接着剤に添加して、より高い弾性率、改善された破壊抵抗、より良好な熱安定性、より良好な機械的強度もしくは機械的安定性などの望ましい特性を得るか、または未硬化状態における流動特性を改質してもよい。充填剤材料は、粒子、繊維、小板状の形態であってよく、任意の種類の無機(または場合によっては有機)鉱物(酸化物、窒化物、金属、ガラス、炭素)であってよい。充填剤材料は、異方性または等方性(繊維対球状粒子などの)であってもよい。
【0056】
実施形態では、構造要素は、ゾルゲルなどの無機材料を含む。固化する前に液体様の特性を有することが可能であり、かつ化学的/熱的プロセスを経て、剛性のある高弾性率の材料、典型的には「ゾルゲル」系と表される材料などの材料となる材料が多数存在する。いくつかの例としては、水または他の液体中に分散させたナノ粒子セラミックスがあり、これは、ゲル化の多段階プロセスである、乾燥段階(溶媒を除去するための)と、焼結段階と、場合によってはさらに第三の結晶化段階とによるものである。セラミック材料(酸化物、窒化物、炭化物)の薄膜を生成するために、ゾルゲル技術を適用してもよい。
【0057】
実施形態では、構造要素は金属および/またはセラミックを含み、例えばこれらより構成される。適切なマスキングを伴うスパッタリングを介して(例えば、物理的蒸着(PVD)を介して)、金属および/またはセラミックを適用してもよい。
【0058】
一実施形態において、光学素子の光軸と平行な方向における構造要素などの支持構造体の寸法(厚さなどの)が、光軸から光軸と直交する線に沿って、光軸から離れて漸進的におよび/または複数の段階で増大する光学素子が提示される。この考えられる利点としては、厚さが増大することにより、漸進的におよび/または複数の段階で支持構造体のばね定数を増大させるのに役立ち、それにより応力特異性の問題を低減または解消することができるため、支持構造体のヤング率を一定に保つことが可能になるということであろう。
【0059】
一実施形態では、光軸と平行な方向に、少なくとも5000(五千)g、例えば少なくとも10000g、例えば少なくとも15000g、例えば少なくとも30000g、例えば少なくとも50000gの加速度および/または減速度、例えば負の方向(すなわち、カバー部材が重力方向に面している場合の落下時の衝撃に対応することになる、カバー部材から支持構造体までの光軸と平行な方向)および/または正の方向における加速度に耐える、光学素子が提示される。「耐える」とは、この文脈においては、
- 1または複数のアクチュエータが、駆動時に屈曲可能なカバー部材の全体を変形させることができるジオプトリの範囲、
- 透過率、例えば630nmの透過率、
- 全波面誤差(WFERMS
にて与えられるパラメータのうちの任意の1もしくは複数、またはそのすべてが、加速および/または減速後に、加速および/または減速前の当該パラメータの値に対して[90;110]%(例えば、±10%)で与えられる間隔内にとどまるものとするということが理解されよう。
【0060】
この耐えることができる加速度は、支持構造体によって少なくとも部分的に達成され、特に、漸進的にまたは段階的に増大する厚さおよび/またはヤング率によって達成される。支持構造体の様々な設計によって加速仕様を達成することができ、この支持構造体は、厚さおよび/またはヤング率が増大する部分の異なる寸法、異なるヤング率の値、および異なる形状で設計することができる。
【0061】
一実施形態(例えば、支持要素および構造要素を備える実施形態)では、構造要素が、支持要素と屈曲可能なカバー部材との間の準境界面に、例えば光軸に面した当該準境界面の側に、接近して、例えば隣接して配置されている光学素子が提示される。この(光軸と平行または実質的に平行で、光軸に面する側壁を備える支持構造体が、光軸と直交するか、または支持要素とカバー部材との間に配置され、かつ支持要素よりも光軸に向かってさらに延在するカバー部材と交わる角に構造要素を有することなどの)考えられる利点としては、構造要素が応力特異性の問題を軽減するのに役立ち得る位置にあるということであろう。接頭語「準」(「準境界面」における)は、支持構造体がカバー部材との境界面を有することにより、(支持構造体の一部である)構造要素が、この境界面のうちの準境界面のみを有する可能性があることを表すものと理解されよう。
【0062】
一実施形態(例えば、支持要素および構造要素を備える実施形態)では、構造要素の一部または全部が、支持要素よりもさらに光軸に向かって配置され、および/または延在する、例えば少なくとも5μm、例えば少なくとも10μm、例えば少なくとも15μm、例えば少なくとも20μm、例えば少なくとも30μm、例えば少なくとも40μm、例えば少なくとも50μm、支持要素よりもさらに光軸に向かって配置され、および/または延在する光学素子が提示される。この考えられる利点としては、構造要素が応力特異点の問題を軽減するのに役立ち得る位置にあるということであろう。
【0063】
一実施形態(例えば、支持要素および構造要素を備える実施形態)では、構造要素が、光学素子の光軸を取り囲んでいる、例えば完全に(360度)取り囲んでいる光学素子が提示される。この考えられる利点としては、応力特異点の問題を光軸の全周において軽減させるか、または克服することが可能になるということであろう。
【0064】
一実施形態(例えば、支持要素および構造要素を備える実施形態)では、構造要素の材料が、
- 支持要素の材料、例えば支持要素が構造要素に隣接する点における支持要素の材料、および、
- 屈曲可能なカバー部材の材料、例えば支持要素が構造要素に隣接する点における屈曲可能なカバー部材の材料
とは異なる光学素子が提示される。
【0065】
特定の実施形態では、構造要素の材料(例えばエポキシ)は、支持要素の材料(例えばシリコン)および屈曲可能なカバー部材の材料(例えばガラス)のどちらとも異なっている。代替的な実施形態では、構造要素の材料は、支持要素の材料、または屈曲可能なカバー部材の材料と異なっている。
【0066】
一実施形態(例えば、支持要素および構造要素を備える実施形態)では、構造要素がポリマーを含み、例えば、ポリマーから構成される光学素子が提示される。
【0067】
一実施形態では、構造要素がエポキシを含み、例えば、エポキシから構成される光学素子が提示される。
【0068】
一実施形態では、光学素子の光軸から観察すると、構造要素の表面が凹んでいる光学素子が提示される。したがって、光軸から凹面に向かって観察したときに、光軸に直角な方向に沿って、または光軸と鋭角をなす方向に沿って凹みが見られる。この考えられる利点としては、湿潤力および/または毛細管力によって実現することができるということであろう。別の考えられる利点としては、支持構造体の内側側壁および構造要素の内縁部に衝撃を受けた際に、屈曲可能なカバー部材において、低い応力集中係数などの良好な機械的特性を助長するということであろう。
【0069】
一般に、耐衝撃性を改善する、この改善された機械的特性は、構造要素の凹面によって得られるだけでなく、支持構造体のこの部分が、光軸に最も近い箇所での低い厚さから、支持構造体の側壁の、より厚くて最も高い厚さまでの、光軸方向の支持構造体の厚さが漸進的にまたは段階的に変化する限りにおいて、任意の湾曲した表面または平面(第1の態様による)によっても達成することができる。厚さを漸進的に増大すると、この漸進的に変動する厚さを透過した光に影響を及ぼし、光学素子によって具現化されるレンズの像の歪みを生じさせる可能性がある。しかしながら、この漸進的に変動する厚さを透過した光をレンズが受光しない限り、漸進的に変動する厚さを有する支持構造体の影響は重要なものではない。
【0070】
さらに、光学的開口部111(図1)は、圧電アクチュエータ(層103、104、105)の内縁部により制限される。光は開口部のみを通過する。したがって、支持構造体が圧電アクチュエータの真下に位置する限り、支持構造体は透明であっても、または透明でなくても構わない。
【0071】
一実施形態では、光学活性領域の直径が10mm以下、例えば7.5mm以下、例えば5mm以下(例えば[0.5;4.0]mm)、例えば2.5mm以下(例えば[2.0~2.4]mm)、例えば1.9mm以下、例えば1.55mm以下、例えば1mm以下である光学素子が提示される。小さな直径であることの利点としては、最終的な適用デバイス(例えばカメラ)内の、ごくわずかな面積を利用することができ、および/または、サイズが小さいことにより、追加機能(例えば、3Dイメージング)のために複数の位置に設置できることが容易になる光学レンズを提供することが可能になることである。「光学活性領域」とは、光がそこに入射する可能性があり、かつ処理される可能性のある領域のことであると理解されよう。光学レンズの場合、光学活性領域が光学的開口部に相当していてもよい(例えば、同一であってもよい)。鏡などの反射素子の場合、光学活性領域は、光がそこに入射することができ、処理された光がそこから反射することができる反射領域(例えば、光学レンズの開口部に類似した)であってもよい。
【0072】
一実施形態では、光学活性領域の直径が1mm以上、例えば1.55mm以上、例えば1.9mm以上、例えば2mm以上、例えば2.5mm以上である光学素子が提示される。大きな直径であることの考えられる利点としては、大量の光を提供することが可能になるということである。
【0073】
光学素子は、屈曲可能なカバー部材に取り付けられた少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体をさらに含んでいてもよい。このことは、光学素子が屈折光学素子、例えば調整可能なレンズなどのレンズである場合、特に重要であり得る。一実施形態では、光学素子が、
- 支持構造体の側壁に囲まれた少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体を含む屈折レンズであって、
屈曲可能なカバー部材が、
〇 当該少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体の表面
に取り付けられた屈曲可能な透明カバー部材である、光学素子が提示される。
【0074】
一実施形態では、光学レンズである光学素子が提示され、当該少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体が固体ポリマーなどのポリマーを含み、例えば変形可能な透明レンズ本体が固体ポリマーから構成される。当該少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体が固体ポリマーなどのポリマーを含むとは、当該少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体は、少なくとも10wt%(重量%)、例えば少なくとも25wt%、例えば少なくとも50wt%、例えば少なくとも75wt%の固体ポリマーを含むということが理解されよう。一実施形態では、光学レンズである光学素子が提示され、当該少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体は、架橋または部分的架橋ポリマーのポリマーネットワーク、および相溶性の油または油の組み合わせを含む。一実施形態では、光学レンズである光学素子が提示され、当該少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体は、弾性率が300Paより大きくてもよく、屈折率が1.35を上回り、可視域の吸光度が厚さ1ミリメートルあたり10%未満である。
【0075】
「屈折レンズ」とは当技術分野で公知であり、それに基づいて理解される。屈折レンズの利点としては、わずかなメンテナンスが必要とされるだけであり、一般的に反射素子と同程度のコリメーションまたは再コーティングを必要としないということであろう。
【0076】
一実施形態では、光学素子が提示され、当該光学素子は、屈曲可能なカバー部材を変形させ(例えば、直接的に変形させる)、または形成するための1または複数のアクチュエータを含み、1または複数のアクチュエータが駆動すると、5ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば10ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば11ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば13ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば[-3;+10]ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば14ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば16ジオプトリ以上、例えば17ジオプトリ以上、例えば20ジオプトリ以上、例えば[-10;+20]ジオプトリ以上の範囲を通して、例えば28ジオプトリの範囲全体で、例えば30ジオプトリ以上の範囲全体で(例えば[-4;+26]ジオプトリ以上)、例えば54ジオプトリ以上の範囲全体で(例えば[-4;+50]ジオプトリ以上)、屈曲可能なカバー部材を変形させるか、または形成することができるように、1または複数のアクチュエータおよび屈曲可能なカバー部材が配設される。及ぶ範囲が、0ジオプトリ以上、例えば0~5ジオプトリ以上に及ぶ範囲、例えば0~6ジオプトリ以上、例えば0~7.5ジオプトリ以上、例えば0~10ジオプトリ以上、例えば0~12.5ジオプトリ以上、例えば0~14ジオプトリ以上、例えば0~16ジオプトリ以上、例えば0~20ジオプトリ以上、例えば28ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば30ジオプトリ以上の範囲全体で(例えば[-4;+26]ジオプトリ以上)、例えば54ジオプトリ以上の範囲全体で(例えば[-4;+50]ジオプトリ以上)の拡大倍率を含んでもよいことが一般的に理解されよう。及ぶ範囲が、0ジオプトリおよびゼロの両側の範囲、例えば±2.5ジオプトリ以上から/までの範囲(すなわち、-2.5ジオプトリ~2.5ジオプトリ以上)、例えば±6ジオプトリ以上、例えば±7.5ジオプトリ以上、例えば±10ジオプトリ以上、例えば±12.5ジオプトリ以上、例えば±14ジオプトリ以上、例えば±16ジオプトリ以上、例えば±20ジオプトリ以上、例えば[-4;+26]ジオプトリ以上、例えば[-4;+50]ジオプトリ以上の拡大倍率を含んでもよい。
【0077】
「直接的に」(変形させる)とは、屈曲可能なカバー部材の変形が第3の要素に依存しないように、1または複数のアクチュエータが屈曲可能なカバー部材に対して配設されるということが理解されよう。
【0078】
一実施形態では、光学素子が提示され、
- 当該光学素子は、95%以上、例えば98%以上、例えば99%以上の平均(波長範囲内および入射角範囲内の)透過率を有し、および/または、
- 例えば、任意の可視波長の(例えば、任意の可視波長の)可視域に対する最小透過率が94%以上であり、および/または、
- 可視域に対する平均反射率(例えば、波長範囲が任意の可視波長に限定される)が2.5%以下、例えば1%以下である。
【0079】
高い透過率の利点としては、光学デバイス素子を通過するときに、光の損失をより少なくすることを容易にするということであろう。一般的な実施形態では、当該光学素子は、90%以上、例えば92%以上、例えば93%以上、例えば94%以上の平均透過率を有する。
【0080】
一実施形態では、光学素子が反射素子であり、屈曲可能なカバー部材が、支持構造体に背面する側、および/または支持構造体に面する側で反射する光学素子が提示される。「反射素子」とは、鏡などの、入射電磁放射線を反射する素子のことであると理解されよう。「反射」とは、平均(波長範囲内および入射角範囲内)反射率が少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも99.9%であることと理解されよう。反射素子の利点としては、屈折光学素子と比較して、色収差がそれほど問題とならない場合があるということであろう。反射素子の別の利点としては、屈折光学部品よりも比較的軽量である場合があるということであろう。
【0081】
一実施形態では、全波面誤差(WFERMS)が5ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば10ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば11ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば13ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば[-3;+10]ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば14ジオプトリ以上の範囲全体で、例えば15ジオプトリ以上の範囲全体で、50nm以下、例えば40nm、例えば30nm、例えば25nm、例えば20nmである光学素子が提示される。特定の実施形態では、全波面誤差(WFERMS)が15ジオプトリ以上の範囲全体で50nm以下である光学素子が提示される。特定の実施形態では、全波面誤差(WFERMS)が15ジオプトリの範囲全体で30nm以下である光学素子が提示される。全WFERMSが、ジオプトリなどの別のパラメータの範囲全体で閾値よりも低いということは、全WFERMSが所定の範囲の他のパラメータの任意の値の閾値よりも低いということが理解されよう。本実施形態の考えられる利点としては、ジオプトリおよび/または焦点距離の範囲全体で改善された画像品質が達成されることであろう。「全波面誤差(WFERMS)」とは、全二乗平均平方根(RMS)波面誤差(WFERMS)であると理解され、これは一般に当技術分野において公知であり、それに基づいて理解される。全波面誤差(WFE)は、所与の共役(物点および像点)に対して定義される。波面誤差は、光線の点ごとに定義される。これは、実際の(収差のある)波面と完全な球面波面との間の光路長(OPL)の差異などの光路差(OPD)である。これは通常、ナノメートル(nm)またはマイクロメートル(μm)で表される距離である。全WFERMSは、所与の共役(物点および像点)に対して定義される。これは、計算される表面上の光線の断面にわたる全WFEの二乗平均であり、例えば下記の式で説明される。
【0082】
【数1】
【0083】
システムの出力瞳の断面の領域Aにわたって積分を行う。全WFERMSは単一の値である。これは通常、ナノメートル(nm)またはマイクロメートル(μm)で表される距離である。全WFERMSの測定は、イマジン・オプティック社社(フランス、オルセーに本社所在地を有する)のHASO(商標)などのシャック・ハルトマンセンサを備える波面測定システムを用いて実施してもよい。一実施形態では、全波面誤差(WFERMS)が630nmで測定される、例えば630nmの波長で、かつ0°の入射角で測定される光学素子が提示される。
【0084】
一実施形態では、支持構造体のヤング率は、屈曲可能なカバー部材のヤング率より低い。例えば、支持構造体は、例えば加熱プロセスまたはUV硬化プロセスで固化した後に、1~20GPa、例えば3.5GPaの範囲のヤング率の値を有するエポキシのような接着剤を含むか、またはそれから構成されてもよい。これに対して、例えばガラス製の屈曲可能なカバー部材は、10~100GPaの範囲のヤング率を有し得る。例えば、ホウケイ酸ガラスのヤング率は63GPa、溶融シリカガラスのヤング率は73GPa、ホウリンケイ酸ガラスのヤング率は44GPaである。有利なことに、相対的に高い弾性率(すなわち、より低いヤング率)を有する支持構造体を、カバー部材および支持構造体の側壁に、信頼性の高い方法でより容易に取り付けることができる。
【0085】
一実施形態では、複数の段階は少なくとも4つの段階を含む。有利なことに、支持構造体の段差面は、その機械的特性に対して連続構造を備える支持構造体に近似する。
【0086】
一実施形態では、光軸と平行な方向における寸法および/またはヤング率が、漸進的におよび/または複数の段階で増大する支持構造体の少なくとも一部が、少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体から離間して配置される。
【0087】
構造要素などの、光軸と平行な方向における寸法および/またはヤング率が増大する支持構造体の一部を、光軸に最も近い構造要素の部分と光軸から最も離れているレンズ本体の部分との間に、半径方向に離間して配置してもよい。このように、構造要素または支持構造体とレンズ本体との間の、構造要素の外周に沿った点で直接接触をしないように、構造要素がレンズ本体を取り囲んでもよい。
【0088】
有利なことに、レンズ本体から離れて構造要素を配置することにより、構造要素がレンズ本体の光の伝播を妨げないことを確実にする。さらに、構造要素または当該支持構造体の一部とレンズ本体との間が接触していないため、構造要素の変形に起因した変形または応力にレンズ本体がさらされることがない。
【0089】
一実施例では、少なくとも光軸の最も近くにある構造要素の一部がレンズ本体まで延在しないように、構造要素または当該支持構造体の一部が、少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体から離間されていてもよい。したがって、実質的にゼロ、例えば数マイクロメートルの最小距離が許容され得る。
【0090】
第2の態様は、第1の様態に従った光学素子を提供する方法に関する。
【0091】
第2の態様の一実施形態では、方法は、光学素子の屈曲可能なカバー部材の耐衝撃性を改善するためのものである。
【0092】
第2の態様の実施形態では、第1の態様に従って光学素子を製造するための方法が提示されており、より詳細には、支持構造体が、
- 支持要素、および、
- 構造要素
を含み、当該方法は、
- 支持要素、および/または、
- 屈曲可能なカバー部材
に、液体構造要素材料を配置することを含み、例えば、当該方法は、構造要素を形成するために、支持要素と屈曲可能なカバー膜との間の境界面の内縁部に液体構造要素材料を配置することを含む、第1の様態の任意の実施形態が提示される。
【0093】
構造要素を得るために、硬化プロセスなどの固化プロセスを適用して、液体構造要素材料の所望の機械的特性を達成してもよい。
【0094】
この方法の利点としては、当該位置に液体材料を配置することが比較的簡単であるということであろう。別の考えられる利点としては、当該液体を再分配するために湿潤力および/または毛細管力を利用することができることであり、このことは、特許請求された光学素子を得る際の、比較的単純でありながら効率的な方法を提供するのに有用であり得るということであろう。構造要素がエポキシ(例えば、光学レンズにおける硬化型エポキシ)である場合、液体構造材料は未硬化のエポキシ樹脂であってもよい。液体構造要素材料を支持要素と屈曲可能なカバー膜との間の境界面の内縁部に配置することの考えられる利点としては、液体構造要素が、当該液体を再分配するために湿潤力および/または毛細管力を(より容易に)利用することができる位置から、境界面に(最初から)配置されることであろう。
【0095】
一実施形態では、液体構造要素材料が、液体構造要素と、
- 支持要素、および/または、
- 屈曲可能なカバー部材
との間の接着力を介して、液体構造要素材料が配置された位置を越えて、例えば、支持要素と屈曲可能なカバー部材との間の境界面の内縁部に沿って再分配される、例えば、液体構造要素材料が、接着力を介して少なくとも100マイクロメートル、例えば少なくとも500マイクロメートル、例えば少なくとも1000マイクロメートル、例えば少なくとも2000マイクロメートルの距離にわたって再分配される方法が提供される。
【0096】
当該接着力を介して再分配されることの考えられる利点としては、液体構造要素の均等な分配を提供することを容易にするか、または確実にすることであろう。別の考えられる利点としては、再分配がそれ自体で実行されるということであろう。別の考えられる利点としては、支持構造体および/または屈曲可能なカバー部材の表面をコントロールすることにより、再分配をコントロールすることができるということであろう。「接着力を介した再分配」とは、湿潤力および/または毛細管力のことであると理解されよう。
【0097】
一実施形態では、液体構造要素材料が、液体構造要素と、
- 支持要素、および/または、
- 屈曲可能なカバー部材
の間の接着力を介して、光学素子の光軸を取り囲む、例えば完全に(360度)取り囲むように再分配される方法が提供される。
【0098】
一実施形態では、液体構造要素材料を固化すること、例えば、これにより構造要素を形成することをさらに含む方法が提供される。
【0099】
液体構造要素材料を固化することは、屈曲可能なカバーに沿って液体構造要素を再分配した後の、液体構造要素の硬化プロセスを含み得る。
【0100】
第3の態様に従って、
- 第1の態様に従った光学素子であって、例えば、屈曲可能なカバー部材が、光学素子を除いたカメラなどの、カメラの残りの部分に、支持構造体を介して取り付けられている光学素子、または、
- 第2の態様に従って製造される光学素子であって、例えば、屈曲可能なカバー部材が、光学素子を除いたカメラなどの、カメラの残りの部分に、支持構造体を介して取り付けられている光学素子
を含むカメラが提供される。
【0101】
光学素子は、カメラの一部であることが理解される。支持構造体をカメラの一部に取り付ける、例えば接着するようにして、カメラ、すなわち光学素子を含まないカメラ、またはカメラの残りの部分と光学素子を、支持構造体を介して一体化してもよい。このようにして、屈曲可能なカバー部材がカメラに取り付けられる。
【0102】
より一般的な実施形態では、
- 第1の様態に従った光学素子、または、
- 第2の様態に従って製造される光学素子
を含む光学デバイスが提供され、光学デバイスは、スキャナ、カメラ、可変光チューナもしくは減衰器、絞り、光学画像安定化(OIS)ユニット、ズームレンズ、広角レンズ、バーコードリーダー、内視鏡、プロジェクタ、または光を編成して所望の効果(例えば、イメージング)を生じさせる任意のデバイスを含む、例えばこれらからなる群から選択される、任意の1つの光学デバイスであってもよい。
【0103】
本発明の第4の態様に従って、1または複数の像を得るために、
- 第1の様態に従った光学素子、または、
- 第2の様態に従って製造される光学素子
の使用が提供される。代替的な実施形態では、言及されている光学素子を、バーコードおよび/もしくは網膜などの識別マークをスキャンするために、または特定の波長の光を減衰させるために使用してもよい。
【0104】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様はそれぞれ、他の態様のいずれかと組み合わせることができる。本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
次に、本発明による光学素子、方法、光学デバイスおよび使用を、添付図面に関連してより詳細に記載する。図面は本発明を実施する1つの方法を示しており、添付の請求項の組の範囲内に含まれる、他の考えられる実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【0106】
図1】光学素子の斜視図である。
図2】光学素子の側面図である。
図3】製造方法の際の光学素子の下面図の顕微鏡像である。
図4図1~2に概略的に示すような光学素子の、背面からの斜視図の顕微鏡(SEM)像を示す。
図5】光学素子のシミュレーションモデルを図示する。
図6】応力特異性の問題を図示する図を示す。
図7図5~6で記載したシミュレーションモデルに対応する、シミュレーション結果を示す。
図8図5~6で記載したシミュレーションモデルに対応する、シミュレーション結果を示す。
図9図5~6で記載したシミュレーションモデルに対応する、シミュレーション結果を示す。
図10図5~6で記載したシミュレーションモデルに対応する、シミュレーション結果を示す。
図11図5~6で記載したシミュレーションモデルに対応する、シミュレーション結果を示す。
図12】支持構造体がシリコンで作製されている代替的な実施形態を示す。
図13】支持構造体がシリコンで作製されている代替的な実施形態を示す。
図14】支持構造体がシリコンで作製されている代替的な実施形態を示す。
図15】Si構造要素の幅が20μmの、図12~14に対応する3つのシミュレーションモデルに対するシミュレーション結果を示す。
図16図15および図17の曲線の凡例を含む。
図17】Si構造要素の幅が40μmの、図12~14に対応する3つのシミュレーションモデルに対する図15と同様のシミュレーション結果を示す。
図18】概略的に図示した光学素子内の位置を示す。
図19】一実施形態を示す。
図20】代替的な光学レンズの例を提示する。
図21】代替的な光学レンズの例を提示する。
図22】代替的な光学レンズの例を提示する。
図23】代替的な光学レンズの例を提示する。
図24】代替的な光学レンズの例を提示する。
図25】代替的な光学レンズの例を提示する。
図26】構造要素にエポキシを使用した3つのシミュレーションモデルに対する図15と同様のシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0107】
一般に、「上方」または「下方」、または「上部」または「下部」という用語を使用する場合などの方向が暗示される場合、正の方向は、支持構造体からカバー部材までの光軸に平行な方向において定義されるものと一般的に理解される。例えば、カバー部材は、支持構造体の上部などの、支持構造体の上方にある。さらに、「内側」とは、一般的に、光軸に面した要素の側面または端部などの要素の部分を指し、例えば、光軸に面する「内側」の側面または端部、および光軸に背面する「外側」の側面または端部を有する要素を意味する。同様に、「内部」(例えば、「内部側壁」)とは、一般的に、光軸に面した要素の側面または端部などの要素の部分を指し、例えば、光軸に面する「内部側壁」、および光軸に背面する「外部側壁」を有する要素を意味する。
【0108】
図1は、光学素子の斜視図であり、より詳細には一実施形態に従った光学レンズであり、より詳細には200~800マイクロメートルの範囲の厚さ122を有する支持構造体101の斜視図である。支持構造体は、光軸110に面する内部側壁112を有する。図ではさらに、屈曲可能な透明カバー部材102(本実施形態ではガラスである)、1または複数のアクチュエータ(圧電アクチュエータである)用の下部電極103、圧電活性材料104、(1または複数の圧電アクチュエータ用の)上部電極105を示している。支持構造体は、シリコン要素である支持要素126と、エポキシ要素である構造要素128とを含む。構造要素128の全体は、支持要素126よりも光軸の近くに配置されており、構造要素128は、支持要素126と屈曲可能なカバー部材102との両方に隣接している。支持要素126は、100~500マイクロメートルの範囲の幅124を有する。上面図(光軸と平行な方向に沿った)において観察されるような1または複数の圧電アクチュエータの位置は、下部電極103、圧電活性層104、および上部電極105のすべての間で重なっている位置として定義される(これらの位置でのみ圧電活性層を駆動させることができることに留意されたい)ということが理解されよう。図はさらに、透明な変形可能なレンズ本体107(本実施形態ではポリマーである)、透明な背面窓106(レンズ本体107に取り付けられている)、支持構造体101内の空洞108(この空洞108は光軸110を含み、側壁112によって光軸110から離れる方向で境界が画定されている)、下部電極103の表面または上部電極105の表面に投影されている支持構造体101の内縁部109(支持構造体101と屈曲可能な透明カバー部材102との間の境界面にある)を示す。現在示されている実施形態において、1または複数の圧電アクチュエータ103、104、105(これらは、現在の実施形態では、光軸と平行な方向で観察されるように、下部電極103、圧電活性材料104、および上部電極105のすべてが重なっている領域として定義することができる単一の圧電アクチュエータである)の外縁部が、光軸110および光学的開口部111を完全に取り囲む、閉じたリングを形成していることが見て取れる。
【0109】
図2は、図1の光学素子と同様の光学素子の側面図である。図2ではさらに、成形パッケージ130、軟質物体のサイドキャップ(「ブラックシート」)232、および接着剤234を表す。図はさらに、エポキシ製であり、カバー部材102(ガラス)と支持要素126(シリコン)との間の角に、湿潤力および/または毛細管力を介して配置されている構造要素128の断面図の(走査型電子顕微鏡(SEM)からの)顕微鏡像による挿入図136を示す。図2の概略部分、および図2の挿入図の両方は、構造要素の丸みを帯びた部分(すなわち、カバー部材102にも、支持要素126にも隣接していない部分)を示している。
【0110】
図3は、製造方法の際の、より詳細には構造要素を設ける際の、光学素子の下面図の顕微鏡像である。図は、下面図、すなわち、底部(すなわち、図2における光学素子の下方)からの、光軸のある一点から観察したときの下面図を示している。図は、屈曲可能なカバー部材102における液体構造要素材料329を示している。液体構造要素材料は、カバー部材102と支持要素126との間の境界面の内縁部に接触するように塗布される。液体構造要素材料329は、一方の側の液体構造要素と、他方の側の支持要素126と、屈曲可能なカバー部材102との間で、現在示されている液滴の形態から、接着力を介して再分配され得る。より詳細には、液体構造要素材料329は、カバー部材102と支持要素126との間の内縁部の境界面の周囲に引き込まれ、これにより、光学素子の光軸を完全に(360度)取り囲む(本紙の平面に対して直交し、画像の中央の黒丸を中心として)ように、液体構造要素材料329が支持要素126の側壁全体の周囲に配置され、支持要素126とカバー部材102との間の角を埋めるようにして再分配され得る。
【0111】
図4は、図1~2に概略的に示すような光学素子の、背面からの斜視図の顕微鏡(SEM)像を示す。カバー部材102と支持要素126(の内側側壁)との間の角に、構造要素128が見て取れる。
【0112】
図3~4の特定の実施形態では、約5000cPs(センチポアズ)の粘度および3GPaの硬化後の貯蔵弾性率を有する2成分エポキシを使用した(これらのデータは、製造者データシートからの情報によるものであり、使用した特定のエポキシは、エポキシテクノロジー(ビレリカ、米国)社製の「EPO-TEK(商標登録) 353ND」である)。約0.2μl(1/5マイクロリットル)の液体構造要素材料329(構造要素128の硬化前のエポキシ材料などの)を、小さなシリンジチップを備えた標準的なディスペンシング装置を用いて分注した。液体構造要素材料329の液滴を、例えば、支持要素126によって取り囲まれた空洞内の屈曲可能な膜102(ガラス膜である)上に配置した。しばらくすると液滴が広がり、本実施形態ではシリコン製の壁である、光軸110に面する支持要素126の内部側壁(図1の内部側壁112を参照のこと)に接触し、毛細管力によって支持要素126の内部側壁の内縁部の周囲、例えば屈曲可能なカバー部材102と支持要素126との間の境界面の内縁部の光軸の周囲に急速に流れ始める。このようにして、液体構造要素材料329は、液体構造要素と、
- 支持要素126、および、
- 屈曲可能なカバー部材102
との間で、接着力を介して配置された位置を越えて再分配される(例えば、図3に示す最初に配置した液滴との間の接触位置から、図4に示す構造要素128の位置まで再分配される)。
【0113】
その後、液状エポキシなどの液体構造要素材料329を用いた光学素子をオーブンに入れ、120℃で2時間硬化させた。
【0114】
硬化後、固まったエポキシによる均一な形状のリングが形成されていた。エポキシリングなどの構造要素の幅(すなわち、光軸と直交する方向の寸法)を測定すると、約50~70μm(マイクロメートル)であった。
【0115】
いくつかのサンプルを同一の手順に従って調製し、さらに、調整可能な光学レンズなどの光学素子としてアセンブリするために使用した。続いて、レンズの光学性能を特性化すると、すべてが優れた性能を示した。さらに、レンズをジグに装着し、携帯電話のカメラモジュールの通常の慣行に従って落下試験を行った。これらの光学レンズの90%が、150cmからの落下に合格することがわかった。
【0116】
図5は、光学素子のシミュレーションモデルを図示している。図の上部にある図示は、光学素子の半分を上下反転させて示しているが(例えば、図2に対して)、それ以外では、参照符号は対応する要素、より詳細には光軸510、カバー部材502、支持要素526、構造要素528、透明な変形可能なレンズ本体507、透明な背面窓506、および成形パッケージ530に対応している。また、パッケージ接着材544が示されている。シミュレーションは、簡略化された軸対称モデルの落下試験に対応するものである。落下高さはh=1mであった。屈曲可能なカバー部材502は、PZT膜(厚さ2μm)とSi3N4膜(厚さ1μm)で被覆された、厚さ(光軸と平行な寸法)20μmのホウリンケイ酸ガラス(BPSG)を含み、例えばこれらから構成される。PZT膜、およびSi3N4膜ともに、中心部に直径1.55mmの丸穴(開口部)を有していた。Si膜の応力を-120MPaに調整して、オフセット-2.7dpt(「dpt」はジオプトリの省略形である)を得た。光学的開口部の半分の直径R=1/2*1.55mm(すなわち半径R=0.5*1.55mm)を示す両矢印は、左側の光軸から右側の不透明圧電膜までの距離にわたっている。矢印538は、衝突時の速度(すなわち、方向)を示す。太い破線で示される境界542における速度は、衝突時間中にVmax=4.427m/秒から0m/秒に変化した。図の下部における拡大表示では、図の上部と同じ要素のいくつかが示され、さらにマイクロメートルでの寸法が示されている。特に、縁部546が示される、構造要素528の異なる3つの寸法についてのシミュレーションが行われることに留意する。より詳細には、以下の寸法、40μm×40μm、200μm×200μm、290μm×290μmのエポキシ断面についてシミュレーションを行った。圧電材料はジルコン酸チタン酸鉛(PZT)である。構造要素528はエポキシである。点線548は、カバー部材の応力を算出するための線(図6を参照のこと)を示しており、この線は、ポリマーレンズ本体、エポキシ構造要素および支持要素に面する側から0.1μmにある。
【0117】
図6は、応力特異性の問題、すなわち、支持要素526と構造要素528との間の境界面における機械的特性の急激な変化により、衝撃時に、屈曲可能なカバー部材のピーク応力値(最大値σmaxを有する)がもたらされる(基準値σrefを実質的に上回る)ということを例示する図を示すものである。グラフは、y軸(0~300MPaに及ぶ)でミーゼス応力(MPa単位)を示し、左から右にかけて0mm~1.6mmに及ぶ光軸からの空間座標を示している。ポリマーレンズ本体、エポキシ構造要素および支持要素に面する側から0.1μmにある、カバー部材における線(図5の線548を参照のこと)に対する応力が示されている。
【0118】
図7~11は、図5~6に記載したシミュレーションモデルに対応するシミュレーション結果を示すものである。x軸は、0.01~1000GPa(図7)、または0.01~100GPa(図8~11)の対数スケールで、空洞内縁部におけるエポキシ構造要素528のヤング率を示している(ギガパスカル(GPa))。図7~11のすべての曲線には、3.5GPaのヤング率の値(これは、例えばエポキシの現実的な値である)が、垂直の点線で示されている。
【0119】
図7は、空洞端部のピーク応力σmax、すなわち、光軸に面する支持要素の端部の位置(図6におけるσmax)において、屈曲可能なカバー部材の下方面の上方の(すなわち、支持要素に面する表面の上方の)0.1μmにある、屈曲可能なカバー部材における応力を示している。y軸はピーク応力を示す(メガパスカル(MPa))。図は、ピーク応力を低減することが可能であって、この低減量は、エポキシ構造要素の寸法、およびエポキシ構造要素のヤング率の増大に伴って増加することを示している(示された値に対して)。グラフは、空洞端部(側壁)のカバー部材(ガラス)におけるピーク応力を、接着剤のヤング率E=3.5GPaに対して、実質的にまたは完全に抑制することができるということを示している。また、応力集中係数を数倍に低減させることもできる。
【0120】
図8~11のそれぞれには3つの曲線があり、これらは40μm×40μm(白丸マーカーによる点線曲線)、200μm×200μm(黒塗りの丸マーカーによる破線曲線)、290μm×290μm(黒丸マーカーによる実線曲線)の構造要素のそれぞれの寸法に対応している。
【0121】
図8~10では、光学パワー(OP)をジオプトリ(dpt)単位で示すy軸を有する。
【0122】
図8は、0ボルトの圧電アクチュエータ全体にわたる印加(現実的な)電圧に対する、ヤング率(Ym)の関数としての光学パワー(OP)を示している。
【0123】
図9は、40ボルトの圧電アクチュエータ全体にわたる印加(現実的な)電圧に対する、ヤング率(Ym)の関数としての光学パワー(OP)を示している。
【0124】
図10は、ヤング率の関数として、電圧差0~40Vに対応する光学パワーの差異を示している。示されたすべての構成では、15ジオプトリ以上の光学パワーの範囲が達成されていることが見て取れる。
【0125】
図11は、ナノメートル(nm)で二乗平均平方根波面誤差(RMSWFE)を示すy軸を有する。図11は、構造要素のヤング率の関数として、二乗平均平方根波面誤差を示している。当該二乗平均平方根波面誤差は、示されたすべての構成に対して50nm、またはそれを下回るように維持され、十分に低いヤング率の値のすべての寸法に対して、および示されたヤング率の範囲の全体にわたり最小で示された寸法に対してでさえも、30nmを下回るように維持することができるということが見て取れる。
【0126】
図12~14は、支持構造体がシリコンで作製されている代替的な実施形態を示す。図1~11は、シリコン(Si)の支持要素1226と、別の材料(エポキシなどの)の構造要素1228とを含む支持構造を備える光学素子に関するものであったのに対して、図12~14の実施形態のそれぞれは、第1の(主要)部分1226、1326、1426が図1~11の実施形態の支持構造体に相当し、第2の(突出)部分1228、1328、1428が図1~11の実施形態の構造要素に相当し、第1の部分および第2の部分のそれぞれは、同一の材料(シリコン)で、所望によりモノリシック構造で作製されている支持構造体を含むということが見て取れる。図12~14のそれぞれは、シリコン(Si)の右側に主要部分1226、1326、1426を、シリコン(Si)の左側に突出部分1228、1328、1428を備えた支持構造体を開示するものである。図12~14のそれぞれの突出部分は、20μm(他の実施形態では40μm)の幅w(半径方向の寸法、すなわち光軸と直交する方向の寸法)と、2μm、5μm、10μm、20μmまたは40μmの厚さd(光軸と平行な寸法)とを有する。また、厚さ20μmのホウリンケイ酸ガラス(BPSG)のカバー部材が図に示されている。カバー部材の上部には厚さ2μmのジルコン酸チタン酸鉛(PZT)の圧電材料の層が配置され、その上部には1μmのSiが配置されており、両方とも直径1.55mmの穴がある。
【0127】
図12では、第2の(突出)部分1228は、光軸を含む横断面において、実質的に長方形の形状、例えば丸みを帯びた角を有する長方形に相当する形状を有する(この丸みを帯びた角は、第1の(主要)部分1226およびカバー部材1202の両方に背面する角である)。
代替的な実施形態では、第2の(突出)部分1228の材料はシリコン以外の材料であってもよく、例えばSiOであってもよい。代替的な実施形態では、第2の(突出)部分1228の材料は、第1の(主要)部分1226とカバー部材1202との間に配置された材料と同様であってもよい。
【0128】
図13では、第2の(突出)部分1328は、光軸を含む横断面において、実質的に三角形状、例えば、第1の(主要)部分1326の側面と一致する直線の側面と、カバー部材1302の側面と一致する直線の側面と、(最後の)直線の側面とを有する形状などの三角形状を有する。
【0129】
図14では、第2の(突出)部分1428は、光軸を含む横断面において、1つの湾曲した側面を有するが、実質的に三角形状、例えば、第1の(主要)部分1426の側面と一致する直線の側面と、カバー部材1402の側面と一致する直線の側面と、三角形の外側から観察されるように、凹んでいるなどの(最後の)湾曲した側面とを有する形状を有する。
【0130】
図12に従った実施形態は、ウェハの裏面から2段階のディープドライシリコンエッチングを行う、標準的なバルクマイクロマシニング技術によって製造することができる。
【0131】
図13および14に従った実施形態は、2段階の裏面シリコンエッチングを行う標準的なバルクマイクロマシニング技術によって製造することができる。最初にディープドライシリコンエッチング段階を用いて、バルクシリコンの主要部分を除去する。図13に示される実施形態の場合は、この最初のディープドライシリコンエッチング段階の後に、異方性ウェットエッチングを行い、これにより<100>面のシリコンが優先的に除去され、図13に示される特徴的な傾斜した側壁が生じる。図14に示される実施形態の場合は、最初のディープドライシリコンエッチング段階の後に、湿式または乾式のいずれかの等方性エッチングを行い、これにより、図14に示される丸みを帯びたプロファイルが生じる。
【0132】
図15は、図12~14に対応する3つのシミュレーションモデルに対するシミュレーション結果を示している。x軸は、第2(突出)部分1228、1328、1428の厚さdをマイクロメートル(μm)で示している。y軸は、応力をメガパスカル(MPa)で示している。右側の上部にある3つの曲線1550、1552、1554は、(上から)第1(主要)部分1226と第2(突出)部分1228との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1202(図6のσmaxを参照のこと)のピーク応力(曲線1550)を、第1(主要)部分1326と第2(突出)部分1328との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1302(図6のσmaxを参照のこと)のピーク応力(曲線1552)を、および第1(主要)部分1426と第2(突出)部分1428との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1402(図6のσmaxを参照のこと)のピーク応力(曲線1554)を表している。左側の上部にある3つの曲線1556、1558、1560は、光軸に最も近い第2の(突出)部分1228、1328、1428のある一点(すなわち、図12~14において、第2の(突出)部分1228、1328、1428の最も左側の点)の上方の位置でのカバー部材1202、1302、1402のピーク応力を表している。これらの曲線1556、1558、1560は、厚さdがゼロ(μm)に向かうのに対して、518MPaへと向かっている。構造要素の形状に対応する形状を備えた小さな挿入図形が曲線に表示され、挿入図形にはピーク応力の位置を示す小さな星が付いている。
【0133】
図16は、図15図17の曲線の凡例を含む。図16の凡例は、構造要素128のSi残部をエポキシ材料で置き換えた場合の図26にも適用される。
【0134】
図17は、第2の(突出)部分1228、1328、1428の幅dが40μmではあるが、図12~14に対応する3つのシミュレーションモデルに対して図15と同様のシミュレーション結果を示すものである。右側の上部にある3つの曲線1750、1752、1754は、(上から)第1(主要)部分1226と第2(突出)部分1228との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1202(図6を参照のこと)のピーク応力(曲線1750)を、第1(主要)部分1326と第2(突出)部分1328との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1302(図6を参照のこと)のピーク応力(曲線1752)を、および第1(主要)部分1426と第2(突出)部分1428との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1402(図6を参照のこと)のピーク応力(曲線1754)を表している。左側の上部にある3つの曲線1756、1758、1760は、光軸に最も近い第2の(突出)部分1228、1328、1428のある一点(すなわち、図12~14において、第2の(突出)部分1228、1328、1428の最も左側の点)の上方の位置でのカバー部材1202、1302、1402のピーク応力を表している。これらの曲線1756、1758、1760は、厚さdがゼロ(μm)に向かうのに対して、518MPaへと向かっている。構造要素の形状に対応する形状を備えた小さな挿入図形が曲線に表示され、挿入図形にはピーク応力の位置を示す小さな星が付いている。
【0135】
図26は、第2の(突出)部分1228、1328、1428の幅dが40μmであり、かつ構造要素128、すなわち(突出)部分1228、1328、1428が硬化型エポキシから作製されてはいるが、図12~14に対応する3つのシミュレーションモデルに対して図15および図17と同様のシミュレーション結果を示すものである。右側で最大応力値を有する3つの曲線2650、2652、2654は、(上から)第1(主要)部分1226と第2(突出)部分1228との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1202(図6のσmaxを参照のこと)のピーク応力(曲線2650)を、第1(主要)部分1326と第2(突出)部分1328との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1302(図6のσmaxを参照のこと)のピーク応力(曲線2652)を、および第1(主要)部分1426と第2(突出)部分1428との間の境界面の上方の位置でのカバー部材1402(図6のσmaxを参照のこと)のピーク応力(曲線2654)を表している。左側の上部にある3つの曲線2656、2658、2660は、光軸に最も近い第2の(突出)部分1228、1328、1428のある一点(すなわち、図12~14において、第2の(突出)部分1228、1328、1428の最も左側の点)の上方の位置でのカバー部材1202、1302、1402のピーク応力を表している。これらの曲線2656、2658、2660は、厚さdがゼロ(μm)に向かうのに対して、533MPaへと向かっている。構造要素の形状に対応する形状を備えた小さな挿入図形が曲線に表示され、挿入図形にはピーク応力の位置を示す小さな星が付いている。
【0136】
図15~17からは、空洞端部の(BPSGの)カバー部材における(すなわち、第1の(主要)部分1226、1326、1426と第2の(突出)部分1228、1328、1428の間の境界面の上方の位置での(曲線1550、1552、1554、1750、1752、1754))、および、第2の(突出)部分1228、1328、1428の内縁部での(すなわち、第2の(突出)部分1228、1328、1428の、光軸に最も近い、すなわち、第2の(突出)部分1228、1328、1428で最も左側の点である、ある一点の上方の位置での(曲線1556、1558、1560、1756、1758、1760))応力集中因子(図6のピーク応力σmaxとレファレンス応力σrefとの間の比率)は、第2の(突出)部分が丸みを帯びた形状を有するときに最小値となる(約1などの)ということが見て取れる。厚さと幅の比が約1:10、例えば、
・厚さ2μmおよび幅20μm、または、
・厚さ4μmおよび幅40μm
を有する、図14の実施形態を参照のこと。
【0137】
さらに、図12~14の実施形態の第2の(突出)部分の存在が、光学パワーと二乗平均平方根波面誤差(WFERMS)とに与える影響は、ごくわずか(量的にはそれぞれ0.1ジオプトリ未満、および1nm未満)であることに留意されたい。
【0138】
図26は、第2の(突出した)部分が丸みを帯びた形状、例えば凹状または図14に示すような内側に湾曲した形状である場合、最適な厚さdは、約800μm、または800μmを上回る値であることを示している。この最適な厚さは、空洞端部の応力レベル(星の位置が右側にある赤色の曲線)と構造要素の端部の応力レベル(星の位置が左側にある青色の曲線)が近似的に等しくなる厚さとして定義することができる。このように、図26は、構造要素128にエポキシを使用することにより、特に空洞端部における応力レベル(赤色の曲線)を大幅に低減することが可能であるということを示している。
【0139】
また、図26は、長方形の要素の光学的厚さは約30~40μmであり、および三角形の要素の光学的厚さは約60μmであることを示している。
【0140】
エポキシまたは他の液体構造要素材料から作製された構造要素128の表面の凹形は、材料の流体特性の結果として得られることに留意されたい。
【0141】
図18は、概略的に図示した光学素子内の位置を示す。図は、光軸1810、支持要素1826と構造要素1828とを含む支持構造体、支持構造体に取り付けられた屈曲可能なカバー部材1802を示すものであり、屈曲可能なカバー部材1802と支持構造体との間の境界面1862(水平な点線で示される)が、境界面平面を画定している。図はさらに、境界面1862の内縁部にある点1864と、光軸に対してさらに離れて配置された点1866とを示している(この点1866は、中括弧1867によって示される範囲内のどこにでも存在し得ることに留意されたい)。またさらに、図は、境界面の内縁部の点1864から光軸1810までの線上の点1868を示している(この点1868は、中括弧1869によって示される範囲内のどこにでも存在し得ることに留意されたい)。
【0142】
図19は、(別の実施形態では存在する場合がある)(突出)構造要素がないことを除いて、図2の実施形態と同様の実施形態を示しているが、その代わり、光軸1902と平行な方向での屈曲可能なカバー部材の寸法は、屈曲可能なカバー部材1902と支持構造体1901との間の境界面の内縁部の少なくとも1つの第1の点において、当該第1の点から光軸1910までの線上の少なくとも1つの第2の点における寸法よりも大きい。
【0143】
すべての示された実施形態では、構造要素、第2の(突出)部分、またはカバー部材の厚さは、光軸から外側に向かう方向の任意の点で増大しているか、または一定ではあるが、少なくともいくつかの(半径方向の)範囲に対して厚さが減少し得るということも、本発明で考慮され、包含されることに留意されたい。
【0144】
代替的な光学レンズの例を下記および図20~25に示す。
【0145】
第1の代替的な光学レンズは、
- 支持構造体2001、
- 支持構造体2001に取り付けられている、屈曲可能なカバー部材2002、
- 当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設されている、1または複数のアクチュエータ、
- 屈曲可能なカバー部材2002よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、支持構造体2001に対して屈曲可能なカバー部材2002の対向する側(光軸と平行な方向に対して)にある屈曲可能なカバー部材2002に配置された、第1の要素2074、
- 第1の要素2074とカバー部材2002とを結合する接着剤である第2の要素2072であって、第1の要素2074よりも剛性が低い、第2の要素2072、
を含み、第1の要素2074および第2の要素2072のそれぞれは、支持構造体2001よりもさらに光軸に向かって延在している。「より剛性の高い」とは、より高い曲げ剛性のことであると理解されよう。これは、より高いヤング率および/またはより大きな厚さ(すなわち、光軸と平行な方向における寸法)によって達成することができる。
【0146】
図20は、(別の実施形態では存在する場合がある)(突出)構造要素128がなく、軟質物体のサイドキャップ(「ブラックシート」)232も、接着剤234もないことを除いて、図2の実施形態(例えば、「ポリマー」レンズ本体および背面窓を参考のこと)と同様の第1の代替的な光学素子の実施形態を示している。さらに、図2の実施形態とは異なり、図20の実施形態には、光軸を取り囲み、第2の要素2072(「ハードキャップ接着剤」)によってカバー部材に取り付けられている、第1の要素2074(「ハードキャップ」)がある。第1および第2の要素の利点としては、これらがカバー部材の過度な動きを抑制し、それにより、支持構造体の内縁部の点で、カバー部材に過度な応力がかかることを防止するということであろう。この効果は、接着性の第2の要素のために、両方向で達成される(上下方向、すなわち、光軸に沿った両方向の衝撃に対して)ということに留意されたい。さらに、接着性の第2の要素によって、剛性のある第1の要素が、カバー部材からある程度離れることが確実となり、これにより、第1の要素の内縁部において応力特異点の問題が生じないことが確実となる。第2の要素2072は、10~1000マイクロメートル、例えば30~50マイクロメートルの範囲の厚さを有する鋼(または銅、またはアルミニウム)で作製することができる。第2の要素(接着剤であってもよい)2072は、1~100MPa以内のヤング率Eを有する、厚さ10~1000マイクロメートルの範囲のエポキシ(または、アクリルもしくはシリコーン接着剤)であってもよい。第2の要素2072のヤング率は、光学レンズの光学パラメータに対する鋼板の影響が過大になることを防止するために、好ましくは剛性が高すぎないようにしなくてはならない。
【0147】
光学素子が屈折レンズである第2の代替的な光学レンズは、
- 支持構造体2101、
- 支持構造体2101に取り付けられている、屈曲可能なカバー部材2102、
- 当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設されている、1または複数のアクチュエータ、
- 支持構造体2101の側壁に囲まれ、屈曲可能なカバー部材2102に取り付けられている、少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体2107、
- 屈曲可能なカバー部材2102に対してレンズ本体2107の対向する側(光軸と平行な方向に対して)にある、レンズ本体2107に取り付けられた背面窓2106、
- 屈曲可能なカバー部材2102よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、屈曲可能なカバー部材2102に対して支持構造体2101の対向する側(光軸と平行な方向に対して)にある、支持構造体2101に配置されている第1の要素2176、
- 第1の要素2176と、
〇 支持構造体2101、および、
〇 背面窓2106
を結合する接着剤である、第2の要素2178であって、第1の要素2176よりも剛性が低い第2の要素2178を含む。
【0148】
図21は、(別の実施形態では存在する場合がある)(突出)構造要素128がなく、軟質物体のサイドキャップ(「ブラックシート」)232も、接着剤234もないことを除いて、図2の実施形態(例えば、「ポリマー」レンズ本体および背面窓を参考のこと)と同様の第2の代替的な光学素子の実施形態を示している。さらに、図2の実施形態とは異なり、図21の実施形態には、第1の要素2176(「ソフトキャップ」)、および第2の要素2178(「ソフトキャップ接着剤」)がある。第1および第2の要素の利点としては、これらがカバー部材の過度な動きを抑制し、それにより、支持構造体の内縁部の点で、カバー部材に過度な応力がかかることを防止するということであろう。この効果は、接着性の第2の要素のために、両方向で達成される(上下方向、すなわち、光軸に沿った両方向の衝撃に対して)ということに留意されたい。第1の要素2176は、厚さ10~1000マイクロメートル、例えば30~100マイクロメートルのポリイミド、またはヤング率10MPa未満などの、十分に低いヤング率を有する任意の他の材料で作製することができる。第2の要素(接着剤であってもよい)2178は、1~100MPa以内のヤング率Eを有する、厚さ10~1000マイクロメートルの範囲のエポキシ(または、アクリルもしくはシリコーン接着剤)であってもよい。第1の要素2176および第2の要素2178のそれぞれのヤング率は、光学レンズの光学パラメータに対する影響が過大になることを防止するために、好ましくは剛性が高すぎないようにしなくてはならない。第2の要素2178および第1の要素2176はともに、TLensの光学パラメータに対する影響が過大になることを防止するために、剛性が高すぎないようにしなければならない。
【0149】
第3の代替的な実施形態(第2の代替的な実施形態と若干類似している)では、分注された接着剤により、剛性のあるフレーム(支持構造体などの)に背面窓が取り付けられている。
【0150】
第4、第5および第6の代替的な光学レンズでは、可動カバー部材および/または背面窓から制御された距離に配置される機械的構造体が設けられていてもよい。この機械的構造体は、光路を妨げることなく光軸を取り囲むことができるように、リング状に設けられる。
【0151】
第4の代替的な光学レンズは、
- 支持構造体2201、
- 支持構造体2201に取り付けられている、屈曲可能なカバー部材2202、
- 当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設されている、1または複数のアクチュエータ、
- 屈曲可能なカバー部材2202よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、支持構造体2201に対して屈曲可能なカバー部材2202の対向する側(光軸と平行な方向に対して)にある屈曲可能なカバー部材2202に配置される、第1の要素2272、
- 第1の要素2272とカバー部材2202とを結合する接着剤である第2の要素2274であって、第1の要素2272よりも剛性が低い、第2の要素2274、
- 屈曲可能なカバー部材2202よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、支持構造体2201または支持構造体に結合された要素に配置される、第3の要素2280、
- 第3の要素2280と、
〇 支持構造体2201、または、
〇 支持構造体に結合された要素2230
とを結合する接着剤である、第4の要素2282であって、第1の要素2280よりも剛性が低い、第4の要素2282を含み、
- 第1の要素2272は、支持構造体2201および第2の要素2274のそれぞれよりも、さらに光軸に向かって延在しており、例えば、第1の要素2272および第2の要素2274は、カバー部材2202の動きを光軸に沿った少なくとも一方向において抑制するように配置され、
ならびに、
- 第3の要素2280および第4の要素2282は、5000~20000g、すなわち5~20kg(この場合、「kg」はキロ(千)「g」を意味し、1「g」は地球表面における重力による加速度にほぼ相当し、9.80665メートル毎秒毎秒、または同等に質量1キログラムあたり9.80665ニュートンの力として定義される標準的な重力である)の加減速による衝撃などの衝撃時の背面窓の動きを、光軸に沿った少なくとも一方向において抑制するように配置されている。
【0152】
図22は、(別の実施形態では存在する場合がある)(突出)構造要素128がなく、軟質物体のサイドキャップ(「ブラックシート」)232も、接着剤234もないことを除いて、図2の実施形態(例えば、「ポリマー」レンズ本体および背面窓を参考のこと)と同様の第4の代替的な光学素子の実施形態を示している。さらに、図2の実施形態とは異なり、図22の実施形態には、第1の要素2272(「ハードキャップ」)、第2の要素2274(「ハードキャップ接着剤」)、第3の要素2280(ハードキャップ)、および第4の要素2282(ハードキャップ接着剤)がある。第4の代替的な光学素子の利点としては、通常使用する間はカバー部材を自由に動かせるが、衝撃時にはその動きが抑制されて、過度の応力がかかることが回避されるということであろう。別の利点としては、パッケージと、実施形態ではTLensと称し得る光学レンズ(図2)との両方にキャップ2280を接着するよりも、パッケージ2230(図22)のみにキャップ2280を接着する方が、技術的により容易でありうるということである。第1の要素2272および第3の要素2280は、厚さ10~1000マイクロメートルの鋼で作製することができる。第2の要素2274および第4の要素2282は、厚さ10~1000マイクロメートルのエポキシ(または、アクリルもしくはシリコーン接着剤)であってもよく、1~100MPa以内のヤング率Eを有してもよい。第2の要素2274および/または第4の要素2282は、可能な限り不撓であることが有利であり得る。
【0153】
第5の代替的な光学レンズは、
- 支持構造体、
- 支持構造体に取り付けられている、屈曲可能なカバー部材、
- 当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設されている、1または複数のアクチュエータ、
- 屈曲可能なカバー部材よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、成形パッケージおよび背面窓に配置される、第1の要素2384、
- 第1の要素2384と背面窓とを結合する接着剤である、第2の要素2385、
- 第1の要素2384と成形パッケージとを結合する接着剤である、第3の要素2386、
- 屈曲可能なカバー部材よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、第1の要素2384に配置される、第4の要素2387、
- 第4の要素2387と第1の要素2384とを結合する接着剤である、第5の要素2388、
を含み、例えば、第1、第2、第3、第4および第5の要素(2384、2385、2386、2387、2388)は、光軸に沿った少なくとも一方向における背面窓の動きを阻止するように配置される。第1、第2、第3、第4、および第5の要素(2384、2385、2386、2387、2388)の曲げ剛性は、落下試験で背面窓が大きく動くことを阻止するほどに十分に大きく、同時に、例えば通常の動作モードで圧電フィルムを駆動させたときに、背面窓がわずかに動くことを妨げないほどに十分に小さい。
【0154】
図23は、(別の実施形態では存在する場合がある)(突出)構造要素128がなく、軟質物体のサイドキャップ(「ブラックシート」)232も、接着剤234もないことを除いて、図2の実施形態(例えば、「ポリマー」レンズ本体および背面窓を参考のこと)と同様の第5の代替的な光学素子の実施形態を示している。さらに、図2の実施形態とは異なり、図23の実施形態には、第1、第2、第3、第4、および第5の要素2384~2388がある。
【0155】
図24は、第1の要素2384および第4の要素2387、ならびに上記の両方を組み合わせた2389の光軸上の点から見た図を示している。
【0156】
第1の要素2384は、厚さ10~1000マイクロメートルのポリイミド、またはヤング率10MPa未満の任意の他の材料で作製することができる。第1の要素2384は、光学レンズの光学パラメータに対する影響が過大になることを防止するために、過度に不撓でないようにしなければならない。第2の要素2385、第3の要素2386、および第5の要素2388(これらは接着剤層であってもよい)は、厚さ10~1000マイクロメートルのエポキシ(または、アクリルもしくはシリコーン接着剤)であってもよく、1~100MPa以内のヤング率Eを有してもよい。第1の要素2384は、耐衝撃性に関しては必要不可欠なものではないかもしれないが、光学素子を透過する不必要な光を遮断するのに関連し得る。第1の要素および/または第4の要素2387は、任意の標準的な黒色材料(「カーボンブラックを混合したポリエステルフィルム」から作製されるSOMABLACKフィルムなどの、例えば2018年4月26日に検索された、http://www.somar.co.jp/english/products/03_somablack.htmlを参照されたい)で作製することができる。第4の要素2387ならびに/または、第2の要素2385、第3の要素2386および第5の要素2388(これらは接着剤層であってもよい)のうちの1つ以上が、可能な限り不撓であることが有利であり得る。
【0157】
第6の代替的な光学レンズは、
- 支持構造体2501、
- 支持構造体に取り付けられている、屈曲可能なカバー部材、
- 当該屈曲可能なカバー部材を所望の形状に成形するために配設されている、1または複数のアクチュエータ、
- 支持構造体2501の側壁に囲まれ、屈曲可能なカバー部材に取り付けられている、少なくとも1つの変形可能な透明レンズ本体(破線で示される)、
- 屈曲可能なカバー部材に対してレンズ本体の対向する側(光軸と平行な方向に対して)にある、レンズ本体に取り付けられた背面窓2506、
- 屈曲可能なカバー部材よりも剛性が高く、光軸を取り囲むように配設され、背面窓に配置される、第1の要素2591、
- 第1の要素2591と背面窓とを結合する接着剤である、第2の要素2592、
- 第3の要素2593と支持構造体、または支持構造体に結合された要素とを結合する接着剤である、第3の要素2593、
を含み、第1、第2および第3の要素は、背面窓が閾値変位量(所望により、光軸に沿った上方向または下方向のそれぞれに対する第1の閾値変位量と第2の閾値変位量)未満で自由に動くことができ、当該閾値変位量を超過する動きを抑制するように配設される。「より剛性の高い」とは、より高い曲げ剛性のことであると理解されよう。これは、より高いヤング率および/またはより大きな厚さ(すなわち、光軸と平行な方向における寸法)によって達成することができる。
【0158】
図25は、(別の実施形態では存在する場合がある)(突出)構造要素128がなく、軟質物体のサイドキャップ(「ブラックシート」)232も、接着剤234もないことを除いて、図2の実施形態(例えば、「ポリマー」レンズ本体および背面窓を参考のこと)と同様の第6の代替的な光学素子の実施形態を示している。さらに、図2の実施形態とは異なり、図25の実施形態には、第1、第2、第3の要素2591~2593がある。図は、上半分で第1の対角線に沿った光学レンズの構成を、下半分で他の対角線に沿った構成を示している。矢印2595は、一方向にて衝撃を受けた際の背面窓の動きを示している(下段の矢印は逆方向にて衝撃を受けた際の動きを示す)。円2596は、第2の要素2592によって画定される隙間を示す。星2597は、さらなる動きを抑制する障害物を示す。円2598は、第3の要素2593によって画定される隙間を示す。第1の要素2591は、10~1000マイクロメートルの厚さのポリイミド、またはヤング率10MPa未満の任意の他の材料で作製することができる。第2の要素2592および第3の要素2593(これらは接着剤層であってよい)は、厚さ10~1000マイクロメートル以内の厚さのエポキシ(または、アクリルもしくはシリコーン接着剤)であってもよく、1~100MPa以内のヤング率Eを有してもよい。第1の要素2591は、光学素子の光学パラメータに対する影響が過大になることを防止するために、過度に不撓でないようにしなければならない。
【0159】
要約すると、支持構造体101の境界における屈曲可能なカバー部材102の応力集中(応力特異点)に関する問題を軽減する手段128が設けられた、調整可能なレンズなどの光学素子100が提示されるが、当該手段がない場合、屈曲可能なカバー部材102の周囲の機械的特性が急激に変化することにより、応力特異点の問題が引き起こされることになる。
【0160】
本発明は、特定の実施形態に関して説明してきたが、提示された実施例に何らかの形で限定されるものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項の組によって提示される。特許請求の範囲の文脈において、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、他の使用可能な要素または工程を除外するものではない。また、例えば、「a」や「an」などの参照の言及は、複数を除外するものと解釈すべきではない。図中に示された要素に対する請求項における参照符号の使用もまた、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項で言及された個々の特徴を、場合により有利に組み合わせてもよく、異なる請求項でこれらの特徴を言及することは、特徴の組み合わせが可能でなく、有利でないことを除外するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
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図26