(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】アクリルエマルジョン接着剤
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20230928BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20230928BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230928BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230928BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J153/00
(21)【出願番号】P 2017557039
(86)(22)【出願日】2016-05-02
(86)【国際出願番号】 US2016030379
(87)【国際公開番号】W WO2016179076
(87)【国際公開日】2016-11-10
【審査請求日】2019-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2015-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514100751
【氏名又は名称】エイブリィ・デニソン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガウアー,マーク・ディ
(72)【発明者】
【氏名】バルトロミュー,エリック・エル
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,チャールズ・アール,ジュニア
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】海老原 えい子
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-84106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293
C08L
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~2,000nmの範囲内のサイズの粒子を含むポリマーエマルジョン組成物であって、アクリルコポリマーと共重合される界面活性剤を含むアクリルコポリマーを含むポリマーエマルジョン組成物において、
前記界面活性剤は、前記ポリマー鎖に化学的に結合され、
前記アクリルコポリマーは、
RAFT、SFRP、又はATRPの制御されたラジカル重合剤(CRP剤)を用いて製造された2つの第1セグメントと、
RAFT、SFRP、又はATRPの制御されたラジカル重合剤(CRP剤)を用いて製造された1つの第2セグメントと、を含み;
ここにおいて前記第1セグメントはABA構造となるように前記ポリマー鎖の前記第2セグメントの両側に位置しており、
前記第1セグメントは、自己反応性官能基、反応性官能基、
非反応性官能基、およびその組合せよりなる群から選択された官能基を有するモノマーを含み、
前記第2セグメントは、反応性官能基、非反応性官能基、およびその組合せよりなる群から選択された官能基を有するモノマーを含み、
前記アクリルコポリマーの第1セグメントは
末端セグメントとして導入された官能基を有し、一つ以上の第2セグメントのモノマー、および架橋性官能基を有する少なくとも一つの重合性コモノマーから誘導されたコポリマーであり、
ここにおいて一つ以上の第2セグメントのモノマーは、第1セグメントおよび第2セグメントが硬化前に分子的に混和性となるのに有効な量で第1セグメント中に存在し、
ここにおいてアクリルコポリマーの非反応性セグメントは、C1~C20アルキル、アリール、または環状アクリレート、C1~C20アルキル、アリールまたは環状メタクリレートからなる群から選択されるモノマーに由来し、
ガラス転移温度が10℃~-115℃の範囲内である、ポリマーエマルジョン組成物。
【請求項2】
共重合性界面活性剤は、アリルまたはビニル置換アルキルフェノールエトキシレートおよびこれらのサルフェート;重合性末端基を有するポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドのブロックコポリマー;アリルまたはビニル置換エトキシ化アルコールおよびこれらのサルフェート;脂肪アルコールのマレイン酸半エステル;自動酸化重合可能な不飽和脂肪酸のモノエタノールアミドエトキシレート;アリルまたはビニルポリアルキレングリコールエーテル;アルキルポリアルキレングリコールエーテルサルフェート;官能化したモノマーおよび界面活性剤;並びにその組合せよりなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
自己反応性官能基は、シラン、無水物、エポキシ、アルコキシメチロールおよび環状エーテルよりなる群から選択され、前記反応性官能基は、アセトアセチル基、酸、ヒドロキシル、アミン、チオール、(メタ)アクリレート、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィン、チオキサントン、およびベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィンおよびチオキサントンの誘導体よりなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記自己反応性官能基がエポキシである、および/または、前記反応性官能基が酸である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
粘着付与剤をさらに含み、前記粘着付与剤は、炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、完全水素化炭化水素樹脂、水素化ロジンエステル、完全水素化ロジンエステル、およびその組合せよりなる群から選択される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アクリルコポリマーと共重合される界面活性剤を含むアクリルコポリマーであって、前記界面活性剤は、前記ポリマー鎖に化学的に結合される、アクリルコポリマーと、
架橋剤と、を含む感圧性接着剤であって、
ここにおいて前記アクリルコポリマーは、RAFT、SFRP、又はATRPの制御されたラジカル重合剤(CRP剤)を用いて製造された2つの第1セグメントと、RAFT、SFRP、又はATRPの制御されたラジカル重合剤(CRP剤)を用いて製造された1つの第2セグメントと、を含み;
ここにおいて前記第1セグメントはABA構造となるように前記ポリマー鎖の前記第2セグメントの両側に位置しており、
前記第1セグメントは、自己反応性官能基、反応性官能基、およびその組合せよりなる群から選択された官能基を有するモノマーを含み、
前記第2セグメントは、反応性官能基、非反応性官能基、およびその組合せよりなる群から選択された官能基を有するモノマーを含み、
前記アクリルコポリマーの第1セグメントは末端セグメントとして導入された官能基を有し、一つ以上の第2セグメントのモノマー、および架橋性官能基を有する少なくとも一つの重合性コモノマーから誘導されたコポリマーであり、
ここにおいて一つ以上の第2セグメントのモノマーは、第1セグメントおよび第2セグメントが硬化前に分子的に混和性となるのに有効な量で第1セグメント中に存在し、
ここにおいてアクリルコポリマーの非反応性セグメントは、C1~C20アルキル、アリール、または環状アクリレート、C1~C20アルキル、アリールまたは環状メタクリレートからなる群から選択されるモノマーに由来し、
ガラス転移温度が10℃~-115℃の範囲内である、感圧性接着剤。
【請求項7】
(i)一つ以上のアクリレートモノマーと、(ii)
RAFT、SFRP、又はATRPの制御されたラジカル重合剤(CRP剤)を用いて製造されたアクリレートオリゴマーと、(iii)一つ以上のアクリレート共安定剤と、を含むモノマー相を製造するステップであって、ここにおいて、
アクリレートオリゴマーは
末端セグメントとして導入された官能基を有し、(i)一つ以上のアクリレートモノマーと、(ii)一つ以上の制御されたフリーラジカル重合剤と、選択的に(iii)一つ以上のコモノマーとを組み合わせて製造される、ステップと、
一つ以上の共重合性界面活性剤を使用して前記モノマー相を乳化させ、ミニエマルジョンを形成するステップであって、ここにおいて、前記モノマー相の乳化に使用される共重合性界面活性剤は、アリルまたはビニル置換アルキルフェノールエトキシレートおよびこれらのサルフェート;重合性末端基を有するポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドのブロックコポリマー;アリルまたはビニル置換エトキシ化アルコールおよびこれらのサルフェート;脂肪アルコールのマレートハーフエステル;自動酸化重合可能な不飽和脂肪酸のモノエタノールアミドエトキシレート;アリルまたはビニルポリアルキレングリコールエーテル;アルキルポリアルキレングリコールエーテルサルフェート;官能化したモノマーおよび界面活性剤;およびその組合せよりなる群から選択される、ステップと、
前記ミニエマルジョンからシードラテックスを製造するステップであって、ここにおいて前記ミニエマルジョンは、10~2,000nmの範囲内のサイズを有する粒子を含む、ステップと、を含
み、
前記制御されたフリーラジカル重合剤は、ジベンジルトリチオカーボネート(DBTTC)を含む、アクリレートポリマーエマルジョン組成物の製造方法。
【請求項8】
エマルジョン重合を使用してシードラテックスを成長させることによりアクリレートポリマーを形成するステップをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマー相の製造は、一つ以上の粘着付与剤を含み、ここにおいて前記粘着付与剤は、炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、完全水素化炭化水素樹脂、水素化ロジンエステル、完全水素化ロジンエステル、およびその組合せよりなる群から選択される、請求項
7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記モノマー相の製造に使用されるアクリレートモノマーは、アクリレート、メタクリレート、およびその組合せよりなる群から選択される、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アクリレート共安定剤は、C6~C20アクリレート共安定剤である、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記シードラテックスを製造するステップは、前記ミニエマルジョンの熱開始により行われる、請求項
7~
11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月1日付けで出願された米国仮出願第62/155,508号の利益を主張し、その全体が参照として本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、溶媒系感圧性接着剤に匹敵する性能特性を示すエマルジョンで製造されたアクリル系感圧性接着剤に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリル接着剤は、多様な性能利点を提供する。このような接着剤は、溶媒および無溶媒重合技術を使用して形成されたアクリルポリマーを含む。様々な点で満足できるが、当業者は、エマルジョン重合により形成されたアクリルポリマーを接着剤に使用しようと試みている。エマルジョン重合は、速い重合速度で高分子量ポリマーを形成する能力を含むいくつかの利点を提供し;エマルジョン重合に存在する水相は、熱の良導体であり、反応媒体の粘度は、比較的安定しており、水の粘度とほぼ同一である。
【0004】
しかし、エマルジョン技術を通じて形成されたポリマーを接着剤、特に高性能接着剤に混入させようとする試みには多数の挑戦があった。これらの挑戦には、エマルジョン接着剤の粒子性にもかかわらず、凝集性接着フィルムを製造すること、架橋点間の一定のポリマー長さを含む限定された分子構造を有する接着性ポリマーフィルムを製造すること、前駆体またはあらかじめ架橋されたポリマー鎖の間の制御された数の絡み合いを提供すること、およびこのような界面活性剤が接着性能を顕著に減少させることができる接着フィルム界面への界面活性剤の移動を防止することを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、接着剤の剤形に効果的に使用され得るエマルジョン系ポリマーに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以前のアプローチ法に関連した問題点および欠点は、本発明において以下のように扱われる。
【0007】
一様態において、本発明は、アクリレートポリマー(前駆体ポリマーという)を形成するエマルジョン系方法を提供する。本明細書に開示された方法は、RAFTアクリレートオリゴマーの製造だけでなく、他の制御されたラジカル重合剤(CRP剤)/プロセス、例えば安定フリーラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)などを使用する制御されたアーキテクチャーアクリレート(CAA)オリゴマーの製造にも適用される。前記方法は、RAFT剤などのCRP連鎖移動剤を使用して制御されたアーキテクチャーアクリレート(CAA)オリゴマーを製造するステップを含む。前記方法は、CAAオリゴマーを単離するステップを含む。前記方法は、(i)一つ以上のアクリレートモノマーと、(ii)単離したCAAオリゴマーと、(iii)一つ以上のアクリレート共安定剤とを含むモノマー相を製造するステップをさらに含む。また、前記方法は、一つ以上の共重合性界面活性剤を使用して前記モノマー相を乳化させることでミニエマルジョンを形成するステップを含む。前記方法は、前記ミニエマルジョンからシードラテックスを製造するステップをさらに含む。また、前記方法は、エマルジョン重合を用いて前記シードラテックスを成長させることによりアクリレートポリマーを形成するステップを含む。
【0008】
他の様態において、本発明は、上述の方法により形成された多様なアクリレートポリマーを提供する。
【0009】
さらに他の様態において、本発明は、一つ以上の共重合性界面活性剤を含むCAAポリマーを提供する。エマルジョン接着剤に前記ポリマーを混入する場合、前記エマルジョン接着剤は、CAAポリマーを開発するのに使用される以外の技術により製造され、一つ以上の共重合性界面活性剤がない相応のアクリレートポリマーを含むエマルジョン接着剤と比較して増加した接着力を示す。
【0010】
さらに他の様態において、本発明は、CAAポリマーを含むアクリルエマルジョン接着剤を提供する。前記ポリマーは、一つ以上の共重合性界面活性剤を含む。前記エマルジョン接着剤は、CAAポリマーを開発するのに使用される技術以外の技術により製造され、一つ以上の共重合性界面活性剤がない相応のアクリレートポリマーを含むエマルジョン接着剤と比較して増加した接着力を示す。
【0011】
さらに他の様態において、本発明は、CAAポリマーと、一つ以上の共重合性界面活性剤および一つ以上の粘着付与剤を含むアクリルエマルジョン接着剤を提供する。前記エマルジョン接着剤は、粘着付与剤を含有する相応のアクリレートポリマーを含み、CAAポリマーを開発するのに使用される以外の技術により製造され、一つ以上の共重合性界面活性剤がないエマルジョン接着剤と比較して、高い接着力、増加した静的せん断および増加したデルタ不透明度を示す。
【0012】
以下の記載から分かるように、本明細書に記載の主題は、他の実施形態および異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの細部事項は、請求された主題を外れることなく、かつ多様な観点で変形され得る。したがって、図面および説明は、例示的なものであり、限定的ではないと見なすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】RAFTなどのCRP剤を使用する制御されたアーキテクチャー重合方法論により製造されたポリマーの利点を示すいくつかのポリマーの流動学的反応のグラフである。
【
図2】従来のRAFTポリマーと比較して本発明によって製造されたRAFTポリマーの流動学的反応のグラフである。
【
図3】本発明のポリマーの流動学的反応を通常製造される市販のポリマーと比較するグラフである。
【
図4】本発明によってポリマーを製造する様態を示す概略図である。
【
図5】本発明によってポリマーを形成する方法を示すフローチャート図である。
【
図6】本発明によって形成されたポリマーを通常製造されるポリマーと比較する24時間剥離接着試験のグラフである。
【
図7】本発明によって形成されたポリマーを通常製造されるポリマーと比較する静的せん断試験のグラフである。
【
図8】本発明によって製造された接着剤に対してポリプロピレンおよび低密度ポリエチレン表面の両方に対する剥離試験を比較したグラフであり、炭化水素粘着付与剤のレベルおよび軟化点のいずれもが変化したことを示す図である。
【
図9】本発明によって製造された接着剤に対して異なる分子量を有する粘着性2EHA系ポリマーに対する静的せん断およびデルタ不透明度の試験を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、溶媒系アクリル接着剤に匹敵し、特定の実施形態においては、優れた性能特性を示すアクリルエマルジョン接着剤を提供する。また、本発明は、前記アクリル接着剤を製造するエマルジョン系の方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、一つ以上の共重合性界面活性剤を含む多様な制御されたアーキテクチャーアクリレートポリマーを提供する。エマルジョン接着剤に前記ポリマーを混入する場合、前記エマルジョン接着剤は、制御されたアーキテクチャー重合以外の技術により製造され、一つ以上の共重合性界面活性剤がない相応のアクリレートポリマーを含むエマルジョン系接着剤(または本明細書で「エマルジョン接着剤」と称す)と比較して増加した接着力を示す。
【0016】
また、本発明は、制御されたアーキテクチャーアクリレートポリマーを含む多様なアクリルエマルジョン接着剤を提供する。前記ポリマーは、一つ以上の共重合性界面活性剤を含む。前記エマルジョン接着剤は、制御されたアーキテクチャー重合以外の技術により製造され、一つ以上の共重合性界面活性剤がない相応のアクリレートポリマーを含むエマルジョン系接着剤と比較して増加した接着力を示す。
【0017】
本発明によると、エマルジョン感圧性接着剤(PSA)は、RAFT媒介制御されたラジカル重合などの制御されたアーキテクチャー重合、および反応性界面活性剤の使用を通じて製造され、非常に向上した接着性能を提供する。特に、前記向上した接着性能は、(i)制御されたアーキテクチャー重合および通常の非反応性界面活性剤を使用して製造された類似のポリマー、(ii)反応性界面活性剤を使用する非RAFT媒介/非制御された重合を使用して製造された類似のポリマー、並びに/または(iii)非RAF媒介/非制御された重合、および通常の非反応性界面活性剤を使用して製造された類似のポリマーと比較して、静的せん断を犠牲にすることなく、極めて高い剥離接着力として立証される。
【0018】
本発明によって使用されるRAFT媒介制御されたラジカル重合プロセスなどの制御されたアーキテクチャー重合は、前記ポリマー鎖にわたって分散している厳格に制御された分子量(Mw)分散と、ポリマー末端および/または官能基に限定された官能性を有するエマルジョンアクリレートポリマーを伝達し得る。
【0019】
多数の官能基が前記アクリレートポリマーに混入され得、典型的に末端セグメントとして混入され得る。代表的な例は、(メタ)アクリレート、ヒドロキシ、シロキシ、エポキシ、シアノ、イソシアネート、アミノ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、オキシム、(メタ)アクリルオキシ、アセト、並びにテトラメトキシシラン、エポキシエーテルおよびビニルエーテルなどのアルコキシシランなどの反応性シラン、アルコキシメチロール、環状エーテル、チオール、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィン、チオキサントン、並びにベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィンおよびチオキサントンの誘導体を含む。一実施形態において、これらの基は、これらの官能基を含有する化合物との反応を通じて、前記ポリマーの末端の一つ以上に添加されてもよい。
【0020】
例えば、三官能性アミンと共に酸官能性ポリマーを使用するなどの架橋結合時に、一定のポリマー網目が形成される。
【0021】
媒介制御されたラジカル重合により伝達された改善した機械的特性は、前記接着層が前記基材に直接接触し得る時に高い剥離接着力として実現される。非反応性/非重合性界面活性剤を使用して前記エマルジョンPSAを製造する場合、これらは、ポリマー界面に素早く移動する傾向にある。表面に存在する場合、非反応性界面活性剤は、弱い境界層を形成して、増加した湿潤および後続の高い剥離接着性能に対する機会を防止する。反応性界面活性剤は、前記接着性ポリマー鎖内に化学的に結合する場合、界面に自由に移動しないため、剥離接着性能を減少させない傾向にある。本発明のさらなる細部事項および様態は、以下の通りである。
【0022】
ポリマー
図1を参照すると、ブチルアクリレートおよびt-ブチルアクリレート(BA/tBA)コポリマーの多様なポリマー試料は、鎖ごとに8個のメタクリル酸(MAA)残基で形成され、それぞれは、多様なアーキテクチャーを有する。「RAFT ARCHITECTED」と表記されている曲線は、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)を使用して分子量を制御し、ポリマーの合成時に、前記ポリマー鎖の末端に反応性基を配置させる時に観察される溶媒ポリマーの流動学的反応を示す。これは、本発明の多数のRAFTエマルジョンポリマーで観察される典型的な反応である。本明細書に使用される用語「RAFTポリマー」(または同様の用語)は、RAFT技術またはSFRP、ATRPなどの他の制御されたラジカル重合方法を使用して形成されたポリマーを示す。
【0023】
「RAFT RANDOM」と表記されている曲線は、構造化した鎖の形成なしにRAFTにより製造されたポリマーに対するタンジェントデルタ(tanδ)反応である。全般的に、タンジェントデルタ反応、すなわち弾性反応に対する粘性反応の比は、RAFTアーキテクチャーされたポリマーに対してより高い。特に高温において弾性に対する粘性の比率が高いため、これらの接着剤に対してより高い剥離力の結果を伝達する。より高い温度におけるより高いタンジェントデルタは、ポリマーが接着した表面とさらに良好に接触できるようにする(さらに良好な湿潤という)。流動学において、高温反応は、遅い変形速度を使用することにより複製できる。表面湿潤は、ポリマーが緩和されて表面と密接な接触を形成することにより、遅い速度プロセスである。
【0024】
「STANDARD HIGH MW RANDOM」と表記されている曲線は、ランダムに配置された反応性基を有する通常製造される接着剤に対するタンジェントデルタ反応である。高温における接着剤に対する低いタンジェントデルタは、低い変形率における低いタンジェントデルタも示す。この接着剤は、接着した表面を良好に湿潤させることができないため、前記表面との密接な接触が確立できない。
【0025】
接着剤が良好な表面湿潤を提供しない場合には、前記接着剤は、結合速度と比較してより高い変形速度でデボンディングされる時に、表面、すなわち接着剤および付着物は比較的容易に分離され得る。良好な界面結合を確立しない場合には、デボンディング時に接着剤を変形させることは、前記接着剤の消散能力が実現しないので、低いデボンディング剥離力で返還する。
【0026】
したがって、良好な接着特性を達成するために、より高い消散性接着剤以上のものが求められる。前記接着剤は、凝集力を有しなければならない。すなわち、前記接着剤は、引き剥がしに抵抗できる任意の内部強度を有しなければならない。
【0027】
この特性は、静的せん断試験を使用して概略に測定され得る。このテストのために、接着テープは、一端にループがあるテストパネルに適用され、ウェイトをかけることができる。前記パネルは、垂直に支持され、前記ウェイトがサスペンディングされる時に前記サスペンディングされたウェイトは、前記接着層上に垂直せん断力を引き起こす。タイマーを使用して前記ウェイトが前記テストパネルから接着剤を引き剥がす時間間隔を測定する。前記接着剤が破損に耐えられないほど、せん断性能が高くなる。
【0028】
高せん断は、典型的に高分子量および/または高度の架橋により提供される。流動学テストは、本発明によって接着剤が特に高温で相対的に高いモジュラスを有するので、低い変形率(時間-温度-重複原理により)に相応の相対的に高いモジュラスを示すことを発見した。
【0029】
図1は、比較モジュラスを示さないため、接着剤の他の特性を図示しない。
図2は、本発明によるRAFTエマルジョンをRAFTの制御なしに製造された類似の組成物と比較するチャートである。試料1および2に対する曲線は、本発明による2つの特定のRAFTポリマーに対する温度の関数としてタンジェントデルタおよびモジュラスを示す。試料3および4に対する曲線は、通常製造されるポリマーである。
【0030】
RAFTポリマーは、より高い温度、すなわち25℃以上でより高いタンジェントデルタを提供することが明白である。
【0031】
同様に重要なのは、前記RAFTポリマーのモジュラスは、有害な影響を受けない。わずかな量のモジュラスは、より高い剥離力を達成するためにこれらの実施例では扱わない。本発明の接着剤は、高せん断を維持するが、より高い剥離を可能にする。
【0032】
多数の用途において、エイブリィデニソン(Avery Dennison)から入手可能なフィルムグレード接着剤S692Nなどの剤形化した接着剤は、より高いタンジェントデルタを有するが、より低いモジュラスを有する。本発明の制御されたアーキテクチャーアクリレートポリマーは、
図3に示した比較で明らかように、より高いモジュラスを通じて改善した剥離およびさらに改善した静的せん断を提供する。
【0033】
特定の実施形態において、本発明の方法により形成されたポリマーは、約500,000~約100,000g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)であり、特定の実施形態においては、約250,000~約110,000g/mol、さらに他の実施形態においては、約200,000~約125,000g/molである。特定の実施形態において、本発明のポリマーは、約170,000~約130,000g/molの範囲内の分子量を有する。しかし、本発明のポリマーは、約500,000超および/または約100,000g/mol未満の分子量を有し得ることが理解されるであろう。典型的に、本発明の方法によって形成されたポリマーは、約4.0未満、特定の実施形態においては、3.0未満、さらに他の実施形態においては、2.5未満、特定のバージョンにおいては、2.0未満の多分散度(PDI)を有する。一般的に、前記多分散度は、約1.15超である。
【0034】
本発明の制御されたアーキテクチャーアクリレート(CAA)ポリマーおよび/または接着剤に対するガラス転移温度(Tg)の範囲の代表的且つ非限定的な例は、約10℃~約-115℃、他の実施形態においては、約0℃~約-80℃、特定の実施形態においては、約-10℃~約-40℃、さらに他の実施形態においては、約-10℃~約-30℃である。
【0035】
本発明の一実施形態において、アクリルブロックコポリマーと共重合される界面活性剤を含む少なくとも一つのアクリルコポリマーを含むポリマーエマルジョン組成物が提供され、前記界面活性剤は、前記ポリマー鎖に化学的に結合され、前記アクリルコポリマーは、制御されたサイズおよび位置の少なくとも一つの第1セグメントと、制御されたサイズおよび位置の少なくとも一つの第2セグメントとを含む。前記第1セグメントは、自己反応性官能基、反応性官能基、およびその組合せよりなる群から選択された官能基を有するモノマーを含む。一部の実施形態において、前記第2セグメントは、架橋性官能基を含有せず、前記第2セグメントは、前記第1セグメントの官能基と非反応性である。他の実施形態において、前記第2セグメントは、前記第1セグメントの官能基と非反応性を維持しながら架橋し得る官能基を含有することができる。前記第1セグメントの官能基は、互いに反応性を維持しながら架橋反応することが可能であり、前記官能基は、前記コポリマーの非末端位置にある。前記第2セグメントが架橋性官能基を含有する、または前記第2セグメントが架橋性官能基を含有しない実施形態において、前記第1セグメントおよび前記第2セグメントは、硬化前に分子的に混和性である。一部の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で液体ポリマーである。他の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で単相ポリマーである。特定の他の実施形態において、本明細書に記載されたポリマーエマルジョン組成物は、常温で単相液体ポリマーである。
【0036】
前記アクリルポリマーの第2(非反応性)セグメントは、アクリレート、メタクリレート、またはその混合物から誘導され得る。前記アクリレートは、C1~約C20アルキル、アリールまたは環状アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレートなどを含む。これらの化合物は、典型的に約3個~約20個の炭素原子、および一実施形態では、約3個~約8個の炭素原子を含有する。前記メタクリレートは、C1~約C20アルキル、アリールまたは環状メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルメタクリレートなどを含む。これらの化合物は、典型的に約4個~約20個の炭素原子を含有し、一実施形態においては、約3個~約10個の炭素原子である。
【0037】
前記アクリルポリマーの第1セグメントは、一つ以上の第2(非反応性)セグメントのモノマー、および架橋性官能基を有する少なくとも一つの重合性コモノマーから誘導されたコポリマーであってもよい。一実施形態において、前記反応性セグメントは、下記化学式を有する少なくとも一つのモノマーを含む。
【0038】
【0039】
ここで、Rは、HまたはCH3であり、Xは、架橋し得る官能基を示す、または含有する。前記アクリル系ポリマーの第1セグメントの架橋性官能基は、特に限定されないが、一つ以上の架橋性シリル、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、炭酸エステル、イソシアナート、エポキシ、ビニル、アミノ、アミド、イミド、無水物、メルカプト、酸、アクリルアミド、アセトアセチル基、アルコキシメチロールおよび環状エーテル基を含む。
【0040】
さらに他の実施形態において、本発明は、アクリルブロックコポリマーと共重合される界面活性剤を含む少なくとも一つのアクリルコポリマーを含むポリマーエマルジョン組成物を提供し、前記界面活性剤は、ポリマー鎖に化学的に結合され、前記アクリルコポリマーは、制御されたサイズおよび位置の少なくとも一つの第1セグメントと、制御されたサイズおよび位置の少なくとも一つの第2セグメントとを含み、反応性官能基を有する少なくとも一つのモノマーを含む。前記第1セグメントは、自己反応性官能基、反応性官能基、およびその組合せよりなる群から選択された官能基を有するモノマーを含み、前記第1セグメントおよび前記第2セグメントは、硬化前に分子的に混和性である。前記第1セグメントおよび前記第2セグメントの反応性官能基は、互いに同じでも異なっていてもよい。前記第1セグメントおよび第2セグメントに多数の反応性官能基が含まれ得る。特定の実施形態において、前記第2セグメントの反応性官能基は、前記第1セグメントにおけるのと同じ自己反応性官能基である。前記第2セグメントにおける自己反応性官能基は、前記第1セグメントの自己反応性官能基と同じでも異なっていてもよい。他の実施形態において、前記第2セグメントは、それ自体でまたは異なるポリマーの他の第2セグメントと反応性を維持しながら架橋し得る官能基を含有してもよい。また、特定の実施形態において、前記第2セグメントは、自己反応性官能基がない。一部の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で液体ポリマーである。他の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で単相ポリマーである。特定の他の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で単相液体ポリマーである。
【0041】
本明細書で考慮されるさらに他の実施形態において、第1セグメントおよび第2セグメントは、硬化前に分子的に非混和性である。一部の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で相分離したポリマーである。特定の他の実施形態において、本明細書に記載のポリマーエマルジョン組成物は、常温で相分離液体ポリマーである。本明細書で使用されるように、常温は約15~約25℃である。
【0042】
用語「反応性官能基」は、他の官能基と反応し得る官能基をいう。用語「自己反応性官能基」は、(i)同じ第2自己反応性官能基、(ii)異なる第2自己反応性官能基、および/または(iii)反応性官能基と反応し得る官能基をいう。すなわち、前記自己反応性官能基は、他の同じ自己反応性官能基と反応してもよく、異なる他の自己反応性官能基および/または反応性官能基と反応してもよい。前記自己反応性官能基は、これら自体と重合し得る。前記自己反応性官能基は、無水物、エポキシ、アルコキシメチロールおよび環状エーテルから選択されてもよい。反応性官能基の非限定的な例は、酸、ヒドロキシル、アミン、メルカプト(チオール)、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィン、チオキサントン、およびベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィンおよびチオキサントンの誘導体を含む。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態において、アクリルブロックコポリマーと共重合される界面活性剤を含む少なくとも一つのアクリルコポリマーを含むポリマーエマルジョン組成物が提供され、前記界面活性剤は、前記ポリマー鎖に化学的に結合され、前記アクリルコポリマーは、制御されたサイズおよび位置の少なくとも一つの第1セグメントと、制御されたサイズおよび位置の少なくとも一つの第2セグメントとを含み、反応性官能基を有する少なくとも一つのモノマーを含む。前記ポリマーエマルジョン組成物のアクリルコポリマーは、また、特定の実施形態において好ましくは第3ポリマーセグメントを含んでもよい。前記第3ポリマーセグメントは、 好ましくは反応性官能基および/または非反応性セグメントを含む。上述の好適な実施形態のアクリルコポリマーに関して記載されたさらなる様態は、本明細書に開示された実施例に含まれる。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「分子状混和性」は、当業者により観察および/または測定され得るバルク状態の特性を示す化合物または化合物の混合物を意味し、単相挙動を示す。用語「単相挙動」は、一定若しくはほぼ一定の挙動または物理的特性を意味する。前記アクリルコポリマーに関して、単一Tgの観察は、ポリマーセグメントの混和性を示す。前記単一Tgは、構成ポリマーセグメント間の中間であり、それぞれのセグメントの相対的な量が変化することによりこれら値の間で単調に変化する。分子状混和性化合物または化合物の混合物により立証される単相挙動とは対照的に、与えられた温度で相分離した化合物は、その中に存在する物質の異なる相に起因する多数の独立した特性のセットを立証する。このような特性のセットは、Tg、溶解度パラメーター、屈折率および物質の物理的状態/相を含むが、これらに限定されない。したがって、用語「相分離した」は、極性、分子量、ポリマーセグメントの相対的な量並びにTg(物質の相)に依存的な一つ以上の化学的および/または物理的特性に起因して分子的に単離した2種以上の物質と定義されるが、これらに限定されない。
【0045】
本開示の目的のために、用語ポリマーの「終端ブロック」または「末端ブロック」は、ポリマーの末端セグメントをいう。これらの終端ブロックまたは末端は、約50,000g/mol未満の数平均分子量(Mn)を有し;他の実施形態において分子量は、約30,000g/mol未満であってもよく、さらなる実施形態において、前記末端ブロックの分子量は、約10,000g/mol未満であってもよい。しかし、本発明の末端ブロックは、約50,000超の分子量を有し得ることが理解されるであろう。
【0046】
ポリマーを形成する方法
制御されたラジカル重合に使用される連鎖移動剤の水に対する不溶性は、厳格に通常のエマルジョン重合を使用して制御されたアーキテクチャーアクリレート感圧性接着剤(PSA)エマルジョンポリマーを製造することを困難にする。
【0047】
本発明のプロセスの重要な様態は、不溶性ポリマーが連続的な水相内に分散した界面活性剤の安定化した(surfactant stabilized)ポリマー粒子内で合成されるということである。反応性モノマーは、水相を介した拡散により成長するポリマー粒子内に補充される。モノマーは、前記粒子内で起こるフリーラジカル付加反応によりポリマーに連続して変形するため、ポリマー粒子内で補充される必要がある。
図4は、相対的に大きいモノマー液滴10およびモノマーMを水相を介してその液滴から成長するポリマー粒子100に移送されることを概略的に示す。粒子形成の段階で、前記モノマー液滴10は、比較的大きく、直径が約1ミクロンを有する。粒子形成の段階時に、反応速度は、典型的に加速化される。また、
図4は、小さな界面活性剤ミセル150がプロセス時に液滴および粒子を安定化させるように界面活性剤200を提供することを示す。
【0048】
本発明に使用される大多数の多様なモノマーは、若干水溶性である。前記モノマーは、典型的に
図4に示されるように、これらの表面で界面活性剤により安定化したモノマー液滴の形態であるあらかじめ乳化した液滴として反応混合物に導入される。前記モノマーは、前記モノマー液滴から拡散され、前記モノマーがポリマー粒子を枯渇させるように水相を介して移送される。濃度勾配は、拡散プロセスを駆動させる。
【0049】
前記エマルジョン重合プロセスが効率的に行われるために、典型的に直径が500nm未満の小さいポリマー粒子が好ましい。これは、拡散モノマーが浸透し得るポリマー粒子表面積の圧倒的な可用性を保証する。使用可能な大きいポリマー粒子表面積は、モノマーが水相に入る際に速かにポリマー粒子に吸収されるようにする。同様に、モノマーは、前記モノマーがモノマー液滴外および水相に拡散され得る十分な機会を有することを保証するようにあらかじめ乳化される。体積に対する大きい表面積の比、すなわち小さい粒子の使用を通じて達成されることは、前記モノマーが水相に入るインセンティブを提供する。モノマー液滴は、ポリマー粒子ほど小さくない。これらは、ミクロンサイズである。このサイズは、ポリマー粒子にモノマーを効率的に供給するための濃度差、すなわちモノマー液滴対水相を通じて十分な駆動力を提供する。
【0050】
エマルジョンは、モノマーおよび水の非混和性を克服するために製造される。モノマーおよびポリマーは、典型的に水のみで若干溶解する。多様な種は、界面活性剤の存在下に2つの成分、すなわち水およびモノマーまたは水およびポリマーを混合することにより水で安定した分散物として存在し得る。前記界面活性剤は、前記液滴の表面を効果的且つ化学的に偽装して、前記液滴が連続相に混和されるように行動することで水相を「トリック(Tricking)」する。前記界面活性剤は、化学的に異なる2つの末端を有する。前記界面活性剤は、モノマーおよびポリマー粒子液滴の表面または近くに位置する。これらの親水性/帯電された末端は、水相を示し、親油性/非極性の末端は、液滴モノマー/ポリマーが豊富な内部に向かう。
【0051】
上述のとおり、制御されたラジカル重合連鎖移動剤(CRP剤)の分子は、典型的なエマルジョンの重合法則によって行動しない。これらは、水相を介して移送されるように十分に溶解されない。これらの水溶性はあまりにも低い。その結果として、通常のエマルジョン重合接近法を用いてポリマー粒子にCRP剤分子を容易に混入させることは、一般的に不可能である。その代わりに、本発明の接近法は、エマルジョン重合プロセスの初期にあらかじめ製造されたポリマー粒子にCRP剤を導入することである。ミニエマルジョンプロセスは、このステップで活用され得る。
【0052】
多数の通常のエマルジョン重合プロセスごとに「その場で(on the fly)」でポリマー粒子を生成するよりは、ポリマー粒子の初期セット(ポリマーシードラテックスとして知られている)を生成するためにミニエマルジョンが使用される。本明細書でより詳細に記載されているように、あらかじめ重合されたCAAオリゴマー分子の形態で提供されるCRP剤は、モノマー(すなわち、モノマーに溶解したCRP剤)に溶液として初期粒子セットに混入される。前記初期シード粒子内に前記CRP剤を位置させることは、最初からCAAを媒介させることができる重合反応プロセスに対する機会を提供する。初期モノマーが消費される場合、セミバッチ(semi-batch)の供給プロセスが前記モノマーの補充に使用される。前記セミバッチ供給プロセスは、ポリマー粒子のないモノマーが、水中で乳化したモノマーの供給物を介してモノマーで連続的に補充されるプロセスである。CRP剤は、重合性ポリマー粒子内に位置するので、本発明の重合プロセスを持続的に制御する。本明細書でより詳細に開示されているように、一つ以上のミニエマルジョン共安定剤(co-stabilizer)が使用され得る。
【0053】
上述のミニエマルジョンの使用は、水性分散液で安定したナノサイズのモノマーの液滴の製造を可能にする。CRP剤(CAAオリゴマーの形態で)がモノマーにあらかじめ溶解するので、それぞれのミニエマルジョンモノマー液滴は、CRP剤を含有する。これらのナノサイズのモノマー液滴は、熱開始剤の使用を通じて効率的にポリマー粒子に変換される。前記熱開始剤は、前記ミニエマルジョンを形成する前にモノマー混合物内に溶解してもよく、または水性溶液として水相に添加されてもよい。適切な濃度のCRP剤と開始剤とを使用して、前記ナノサイズのモノマー液滴をナノサイズのポリマー粒子に変換させて、CRP剤媒介を介して最初から重合し始める。本発明のナノサイズのポリマー粒子により提供される圧倒的に大きいポリマー粒子の表面積は、モノマーを補充する時になると、水相からモノマーを効果的に吸収する。これは、約500nm未満の直径および特定の実施形態においては、300nm未満の直径を有する初期モノマー液滴が必要であることを意味する。約500nm未満の直径が本発明の多数の実施形態で使用されるが、特定の用途において約2,000nm以下などのより大きい粒子が使用され得ることが考慮される。安定したナノサイズのモノマー液滴が達成されると、熱開始剤を活性化させて重合反応を引き起こし、安定したナノサイズのポリマー液滴に容易に転換され得る。理想的に、すべてのモノマー液滴は、ポリマー粒子に変形される。ポリマー粒子が形成される際に、フリーラジカル重合がCRP剤の媒介が維持されることを保証するのにラジカルフラックスが十分に低いレベルに維持される場合、標準エマルジョン重合プロセスが使用され得る。反応が始まる際にポリマー粒子のサイズおよび数を制御することは、多数の理由で有利である。一つの理由は、バッチの変化に対するバッチが従来のエマルジョン重合と比較して減少することである。
【0054】
標準モノマーエマルジョンおよびミニエマルジョンプロセスとの間の差は、高エネルギー混合、すなわち高せん断混合および一つ以上の共安定剤の使用でミニエマルジョンナノ分散を生成することである。高せん断混合は、ミクロンサイズのモノマー液滴を激しく壊す手段を提供する。前記ミクロンサイズの液滴は、高せん断混合を使用してナノサイズの液滴に減少させることができる。しかし、前記モノマー相に添加された共安定剤ない状態で、それらのモノマーナノ液滴は、迅速に「オストワルド熟成(Ostwald ripening)」されて、ミクロンサイズの粒子に戻る。オストワルド熟成は、モノマーがナノサイズの液滴からミクロンサイズのより大きい液滴に拡散される過程である。これは、熱力学的に駆動するプロセスである。体積に対するかなり大きい表面積の比率は、小さい液滴を維持するのに高エネルギーコストがかかる。溶解性モノマーがより大きい粒子で存在することがエネルギー的に有利である。
【0055】
前記ミニエマルジョン共安定剤は、非常に不水溶性物質である。共安定剤は、疎水性であり、疎水性アクリルモノマーに可溶性である。学界内で、共安定剤は、通常、ヘキサデカンまたは他の小型分子、不水溶性溶媒である。これらは、モノマーを基準として約5重量%のレベルで使用される。典型的に以下のように作用する。
【0056】
浸透圧は、本発明の方法に依存する力である。極めて低い水溶性が原因で、共安定剤は液滴内に残らざるを得ない。オストワルド熟成は、液滴のサイズに変化を起こすが、前記液滴のモノマー拡散は、前記液滴内部の高い共安定剤の濃度をもたらすであろう。これは、モノマーが前記粒子外から拡散されることを防止することにより、液滴内の共安定剤の濃度を高く作用する浸透圧である。このように形成されたナノ分散は、運動力学的に安定し、これらのナノサイズは、数週間変化なく維持され得る。
【0057】
本発明の方法は、一つ以上の共重合性共安定剤を使用する。このような安定剤の非限定的な例は、十分に小さい分子であり、高度に不水溶性である炭素17個を有するアクリレートであるヘプタデシルアクリレートである。小さいサイズは、共安定剤として求められる移動性に寄与する。この共安定剤は、低いガラス転移温度(Tg)を有する反応性アクリレートである。反応性アクリレートとして、ヘプタデシルアクリレートは、使用されるモノマーと容易に共重合し、低いガラス転移温度および疎水性特性は、PSAに使用されるポリマーを製造するための有用な成分モノマーとなる。また、この共安定剤は、周辺温度で液体であるので、生産規模で容易に処理し得る。本発明は、他の共安定剤の使用を含むものと理解され得る。
【0058】
本発明によると、CRP剤を単独で使用してエマルジョンPSAを合成することは、高い接着性能を伝達するのに充分でないことが発見された。本発明によると、制御されたアーキテクチャーアクリレートPSAが通常の界面活性剤で製造される場合、前記界面活性剤が弱い境界層を形成する乾燥したポリマーフィルム界面に自由に移動することが認められる。この層は、ラベルまたはテープの適用後にPSAフィルムと付着物との間に存在する。前記界面活性剤層は、前記接着剤層により付着物の完全な表面湿潤を抑制する。前記接着テープまたはラベルが、例えば剥離時に応力を受ける場合、前記界面活性剤により形成された弱い境界層が先に弱くなる。すなわち、被着体の表面に対するテープの接着力を維持する結合は、前記界面活性剤と前記付着物との間の境界で弱くなる。前記界面で弱い界面活性剤層は、前記PSA層の接着性能の潜在力が完全に実現される前に弱くなる。
【0059】
前記界面活性剤が豊富な、弱い境界層の形成を防止するために、従来の界面活性剤は、一つ以上の共重合性界面活性剤に置き換えられている。反応性界面活性剤として知られている重合性界面活性剤が使用される場合、これらは反応して前記ポリマー鎖の一部を形成する。前記界面活性剤は、前記ポリマーと結合する際に粒子安定化機能を持続的に提供することができる。前記ポリマーは、界面活性剤分子の親水性部分を許容して、水相に向かう前記ポリマー粒子の表面に存在し得るように十分にフレキシブルである。また、前記界面活性剤分子の反応性は、前記モノマーより重合に対し反応性が若干低い。その結果として、前記界面活性剤分子の混入は、前記重合プロセスの最後まで発生するか、または少なくとも部分的に発生する。この様態は、多くの反応期間の間にポリマー粒子の最大界面活性剤の安定化を保存する。例えば、テープ製造時などの本発明の制御されたアーキテクチャーアクリレート(CAA)のポリマーエマルジョンから接着フィルムをキャストする場合、界面活性剤は、これ以上接着剤/空気界面に自由に移動できない。前記界面活性剤は、ポリマー鎖に結合しており、ポリマーの表面に界面活性剤が豊富な且つ弱い境界層を形成できない。
【0060】
本発明の特定の実施形態において、CRP剤は、RAFT剤ジベンジルトリチオカーボネート(DBTTC)である。可能な場合には、これらの実施形態において、DBTTCの未加工形態は、本発明のミニエマルジョンおよびエマルジョン重合プロセスにおいてCRP剤制御されたPSAポリマーの製造に使用されない。その代わりに、前記CRP剤は、CAAポリマーエマルジョンの製造における一つ以上の初期ステップとして、溶媒重合を使用して小さく制御されたアーキテクチャーアクリレートポリマーまたはオリゴマーに転換される。前記ミニエマルジョンプロセスを使用する際にも、エマルジョンシステムでRAFT剤を使用する重合が問題になり得るため、このような慣行が伴う。CRP剤が小さいCRP剤「スターター」オリゴマーとしてエマルジョンシステムに導入される際、これらの困難が管理され得ることが見つかっている。特定の実施形態において、本発明で使用されるCAAオリゴマーは、約500~約50,000g/molの数平均分子量(Mn)のサイズの範囲であり、他の実施形態では、約1,000~約25,000g/mol、特定の実施形態では、約2,500~約10,000g/molである。しかし、本発明のCAAオリゴマーは、約50,000超および/または約500g/mol未満の分子量を有し得ることが理解されるであろう。あらかじめ形成されたオリゴマーとして導入されないCRP剤を使用して直面する問題は、CRP剤フラグメントがポリマー粒子から脱着する際のCRP剤制御の損失、または重合度が小さく且つモノマー溶解度が高い場合、重合初期段階でのモノマーとポリマー粒子の超膨張を含む。
【0061】
図5を参照すると、要約すれば、本発明によるRAFTエマルジョン接着剤の製造プロセス300は、以下のような操作を含む。RAFTアクリレートオリゴマーは、典型的に溶媒重合を通じて製造される、すなわち操作310である。前記RAFTオリゴマーは、操作320により示すように、溶媒蒸発などにより分離する。アクリレートモノマー、RAFTオリゴマーおよびC17アクリレートなどの共安定剤を含むモノマー相を製造する、すなわち操作330である。次に、共重合性界面活性剤および水を使用して前記モノマー相のミニエマルジョンをあらかじめ行う、すなわち操作340である。次に、シードラテックスを前記ミニエマルジョンの熱開始により開始する、すなわち操作350である。次に、前記シードラテックスは、エマルジョン重合プロセスを通じて成長する、すなわち操作360である。
【0062】
本発明の特定の実施形態において、炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、完全水素化炭化水素樹脂、水素化ロジンエステル、完全水素化ロジンエステル、およびその組合せよりなる群から選択された粘着付与剤は、モノマー相の製造ステップに含まれる(操作330)。次に、共重合性界面活性剤および水を使用してモノマー相を含有する粘着付与剤のミニエマルジョンを行う、すなわち操作340である。次に、シードラテックスは、前記ミニエマルジョンの熱開始により製造される、すなわち操作350である。次に、前記シードラテックスは、エマルジョン重合プロセスを通じて成長する、すなわち操作360である。特定の実施形態において、本発明で使用された粘着付与剤は、全モノマーの約2~約30重量%の濃度範囲を有し、他の実施形態においては、全モノマーの約2~約18重量%、特定の実施形態においては、全モノマーの約2~約15重量%、さらに他の実施形態においては、全モノマーの約2~約12重量%である。しかし、これは、本発明が約30%超および/または約2%未満の濃度範囲を有する粘着付与剤を有し得ることが理解されるであろう。
【0063】
本発明によってアクリレートポリマーを形成する多様な方法および操作を、下記により詳細に説明する。
【0064】
RAFTオリゴマーの製造
本明細書に開示された方法は、RAFTアクリレートオリゴマーの製造だけでなく、他の制御されたラジカル重合剤(CRP剤)/プロセス、例えば安定フリーラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)などを使用する制御されたアーキテクチャーアクリレート(CAA)オリゴマーの製造にも適用可能である点に留意すべきである。本発明の方法は、RAFTアクリレートオリゴマーを製造する
図5の一つ以上の操作310を含む。典型的に、このような製造は、RAFT技術を使用する溶媒重合により行われる。しかし、前記RAFTアクリレートオリゴマーは、溶媒重合以外にも他の重合技術により製造され得ると認められる。
【0065】
多数の実施形態において、RAFTアクリレートオリゴマーは、(i)一つ以上のアクリレートモノマー、(ii)一つ以上のRAFT剤、および選択的に(iii)非アクリレートであってもよい一つ以上のコモノマーを組み合わせて製造される。
【0066】
RAFTアクリレートオリゴマーを形成するために多数のアクリレートモノマーが使用できる。このようなアクリレートモノマーの非限定的な例は、アクリレート、メタクリレート、またはその混合物を含む。前記アクリレートは、C1~C20アルキル、アリールまたは環状アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレートなどを含む。これらの化合物は、典型的に約3個~約20個の炭素原子を含有し、一実施形態においては、約3個~約8個の炭素原子である。前記メタクリルレートは、C1~約C20アルキル、アリールまたは環状メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルメタクリレートなどを含む。これらの化合物は、典型的に約4個~約20個の炭素原子を含有し、一実施形態においては、約3個~約10個の炭素原子である。
【0067】
RAFTアクリレートオリゴマーを形成するために多様なRAFT剤が使用できる。通常のRAFT剤は、チオカルボニル-チオ基を含有し、例えばジチオエステル、ジチオカーバメート、トリチオカーボネートおよびキサンテンを含む。有用なRAFT剤の例は、The Chemistry of Radical Polymerization,Graeme Moad & David H.Solomon、2nd rev.ed.、2006,Elsevier,p.508-514に記載されている。このようなRAFT剤の非限定的且つ特定の例は、先述のDBTTCを含む。
【0068】
RAFTアクリレートオリゴマーの形成に多数のコモノマーが選択的に使用される。このようなコモノマーの非限定的な例は、一つ以上の架橋性シリル、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、カーボネートエステル、イソシアナート、エポキシ、ビニル、アミノ、アミド、イミド、無水物、メルカプト、酸、アクリルアミドおよびアセトアセチル基を含む。
【0069】
ヒドロキシ官能性コモノマーは、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アシレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどを含む。エポキシ官能性モノマーは、例えばグリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートを含む。
【0070】
コモノマーを含有する酸は、3個~約20個の炭素原子を含有する不飽和カルボン酸を含む。前記不飽和カルボン酸は、その中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、βカルボキシエチルアクリレートおよびモノ-2-アクリロイルオキシプロピルスクシネートなどを含む。モノマーを含有する無水物は、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物などを含む。
【0071】
前記アクリルアミドは、アクリルアミド、およびN-置換アルキルおよびアリール誘導体を含む誘導体を含む。これらは、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、t-オクチルアクリルアミドなどを含む。前記メタクリルアミドは、メタクリルアミド、およびN-置換アルキルおよびアリール誘導体を含む誘導体を含む。前記ビニルエステルは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルバレレート、ビニルベルシテート、ビニルイソブチレートなどを含む。前記ビニルエーテルは、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテルなどを含む1個~約8個の炭素原子を有するビニルエーテルを含む。前記ビニルアミドは、ビニルピロリドンなどを含む1個~約8個の炭素原子を有するビニルアミドなどを含む。前記ビニルケトンは、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどを含む1個~約8個の炭素原子を有するビニルケトンを含む。
【0072】
前記重合性シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリル-オキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシメチル-ジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)-メチルジエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリアセトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシ-シラン、γ-アクリルオキシプロピルトリエトキシ-シラン、γ-メタクリル-オキシメチルジエトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルトリプロポキシ-シラン、γ-アクリルオキシプロピル-メチルジメトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、アクリルオキシプロピル-メチルジプロポキシシランなどを含む。
【0073】
官能基を有するコモノマーの他に、前記コモノマーは、下記化学式を有する少なくとも一つのセグメントを含むことができる:
【0074】
【0075】
ここで、R3は、HまたはCH3であり、R4は、4個~14個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状飽和アルキル基である。
【0076】
前記RAFTアクリレートオリゴマーは、典型的に約500~約50,000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有し、他の実施形態においては、約1,000~約25,000g/mol、特定の実施形態においては、2,500~約10,000g/molである。しかし、本発明のRAFTアクリレートオリゴマーは、約50,000超および/または約500g/mol未満の分子量を有し得ることが理解されるであろう。
【0077】
RAFTオリゴマーの単離
RAFTオリゴマーの形成後に、典型的に前記オリゴマーは、反応システムから単離する。これは、
図5において操作320として示す。多数の実施形態において、前記RAFTオリゴマーは、溶媒を除去することにより単離する。溶媒の除去は、例えば蒸発によるような多様な技術によって行われ得る。多数の適用において、溶媒の蒸発は、前記オリゴマーの加熱を避けるために減圧下で行われる。しかし、溶媒または他の液体を蒸発させてRAFTオリゴマーを単離するために熱が使用できる。
【0078】
モノマー相の製造
また、本発明の方法は、
図5において330として示しているモノマー相を製造する一つ以上の操作を含む。前記モノマー相は、(i)一つ以上のアクリレートモノマー、(ii)単離したRAFTアクリレートオリゴマー、(iii)一つ以上のアクリレート共安定剤、選択的に(iv)一つ以上の他のコモノマー、選択的に(v)一つ以上の粘着付与剤、および選択的に(vi)一つ以上の油溶性熱開始剤を含む。粘着付与剤の例は、イーストマン(Eastman)社製の完全水添ロジンエステル粘着付与剤であるForal AX-E、またはイーストマン(Eastman)社製の炭化水素樹脂粘着付与剤であるRegalite R1090である。しかし、本発明は、炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、完全水素化炭化水素樹脂、水素化ロジンエステル、完全水素化ロジンエステル、およびその組合せよりなる群から選択された粘着付与剤などの多様な粘着付与剤の使用を含むことが理解されるであろう。油溶性熱開始剤の例は、デュポン(Dupont)から入手可能なVazo 64である。Vazo 64は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルである。しかし、本発明は、過硫酸塩などの多様な油溶性または水溶性熱開始剤の使用を含むことが理解されるであろう。
【0079】
多数のアクリレートモノマーがこの操作に使用され得る。前記RAFTアクリレートオリゴマーの形成に使用される先述の任意のモノマーが使用され得る。また、この操作に使用されるアクリレートモノマーは、前記RAFTアクリレートオリゴマーの形成に使用されるものと異なってもよい。
【0080】
前記アクリレート共安定剤は、一般的にC6~C20アクリレートである。これらの安定剤は、C17アクリレートを含むことができ、特定のバージョンにおいては、ヘプタデシルアクリレートである。
【0081】
多様な他のコモノマーが選択的にモノマー相に含まれ得る。このようなコモノマーの非限定的な例は、前記RAFTアクリレートオリゴマーの形成に使用される先述のコモノマーのうち任意のものが使用され得る。使用されたコモノマーは、前記RAFTアクリレートオリゴマーの形成に使用されるものと同じでも異なっていてもよい。
【0082】
ミニエマルジョンの形成
モノマー相は、
図5において操作340として示されているように、一つ以上の共重合性界面活性剤を使用して乳化することでミニエマルジョンを形成する。乳化は、当業界に知られている高速ブレンダーおよび乳化装置を使用して行われ得る。
【0083】
一つ以上の界面活性剤が共重合性である限り、界面活性剤のアレイは、この操作に使用され得る。共重合性界面活性剤の非限定的な例は、アリルまたはビニル置換アルキルフェノールエトキシレートおよびこれらの硫酸塩、重合性末端基を有するポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドのブロックコポリマー、アリルまたはビニル置換エトキシル化アルコールおよびこれらの硫酸塩、脂肪アルコールのマレイン酸半エステル、自動酸化重合可能な不飽和脂肪酸のモノエタノールアミドエトキシレート、アリルまたはビニルポリアルキレングリコールエーテル、アルキルポリアルキレングリコールエーテルサルフェート、官能化モノマーおよび界面活性剤、並びにその組合せを含むことができる。
【0084】
製造されたミニエマルジョンは、上述のモノマー相および共重合性界面活性剤を含む。前記ミニエマルジョンの粒子は、典型的に2,000~10nm、特に500~10nmの範囲内の粒子のサイズを有し、特定の実施形態においては、300~10nmである。多数の実施形態において、前記ミニエマルジョンの粒子の少なくとも約90%は、前記言及された範囲内の粒子のサイズを有する。
【0085】
シードラテックスの製造
上述のミニエマルジョンの形成後に、
図5において操作350として示されているように、シードラテックスが製造される。前記シードラテックスは、熱的活性化した、(予めモノマー相内に溶解した)油溶性開始剤を使用した熱開始を通じてミニエマルジョンモノマー液滴分散液をポリマー粒子の分散物に変形させることにより形成される。前記ミニエマルジョンを撹拌式反応器で反応温度(約75℃)まで加熱し、モノマーからポリマーへの転換が少なくとも約80%(重量測定法で測定される)になるまで維持する。これは、典型的に2~5時間かかる。また、分散したモノマーのナノ-液滴から分散したポリマーへのミニエマルジョンの変形は、水相に添加された過硫酸ナトリウムなどの水溶性開始剤および上述のような加熱を使用して達成され得る。前記シードステップは、RAFTコントローラーを含む安定化したポリマー粒子の生成を可能にする。前記シードポリマーは、小さい分子量、例えば1000g/mol以上を有する必要がある。前記シード製造ステップの目的は、RAFT制御されたフリーラジカル重合を使用して界面活性剤安定化ポリマーを製造することである。前記シード粒子内のポリマーは、良好な接着性能(通常形成されたポリマーの絡み合い分子量(Me)の少なくとも2倍)に要求されるより高い分子量を達成するために更に重合(延長)し得る。シードポリマーの延長は、モノマーエマルジョンおよび低濃度の開始剤を通常のセミバッチエマルジョン重合工程を通じて添加することにより達成され得る。導入されたモノマーは、ポリマーシード粒子を膨潤させ、前記開始剤は、モノマー膨潤粒子内でRAFT媒介フリーラジカル重合を再構成できる。濃度勾配は、それが消耗する時に前記ポリマー粒子内のモノマーを補充するように作用し得る。
【0086】
前記シードポリマーラテックスは、直ちにより高い分子量で重合され得るか、または後になって貯蔵および処理されてもよい。
【0087】
十分に大きいモノマーが初期のミニエマルジョンモノマー分散物内に混入すると、前記シードポリマー粒子は、高性能PSAとして直接使用され得る。モノマーおよびRAFTオリゴマーの比は、高いポリマーMnが前記シード段階中に達成されるように調整されてもよい。前記形成されたMnが前記形成されたポリマーのMeの少なくとも2倍であれば、前記PSAは、架橋後に優れたPSA特性を示すであろう。
【0088】
前記シードラテックスは、上述のように、熱開始プロセスにより前記ミニエマルジョンから製造され得る。
【0089】
シードラテックスの成長
シードラテックスは、標準のセミバッチエマルジョン重合接近法によりプレエマルジョンおよび開始剤溶液供給物を使用して成長する、すなわち
図5の操作である。前記RAFT媒介フリーラジカル重合は、必要な低い開始剤の濃度をゆっくり提供して起こり、制御されたポリマー成長を維持する。反応性界面活性剤が主な界面活性剤であるべきことを除いては、典型的なアクリレートプレエマルジョン組成物が使用できる。前記モノマーエマルジョンは、少量の開始剤と共に反応混合物に供給される。約45~約63%の固体含量および略200,000g/molのMnを有するポリマー分散液を4.0未満のPDIで製造し得る。究極的な固体/Mnバランスは、部分的に初期シードの製造でモノマーに対するRAFT剤の比によって決定される。モノマーに対するRAFTの高い比は、究極的なMnを低くする。固体およびMn分布を最適にするために、前記初期シード粒子のサイズを考慮すべきである。界面活性剤の濃度、RAFTオリゴマーの濃度およびモノマーの選択と共に分散ステップ中のエネルギーの投入は、分散粒子のサイズを制御する重要なパラメーターである。
【0090】
モノマープレエマルジョンおよび開始剤の供給時間は、任意の与えられた時間に前記反応器内に過量の未反応のモノマーが蓄積されることを避けるために重合速度と略一致する。供給時間および供給モノマーの質量は、前記シードの初期Mnおよび完成品に対する目標Mnに依存する。典型的に、約25Kg/molのMnを約100Kg/molに成長させたシードポリマーは、約4時間のプレエマルジョン供給時間を必要とする。
【0091】
特定の実施形態において、供給完了後に残留のモノマーおよび反応性界面活性剤のレベルを減少させることについて考慮しなければならない。時折、反応性界面活性剤は、特に混入が遅く、バッチが供給完了した後に上昇した温度で追加時間の間維持されることを要求する。アリル官能性界面活性剤の場合、混入は、供給完了後に開始剤のショットにより補助される。また、RAFT媒介重合プロセスは、モノマーがゆっくり混入されることを意味する。上昇した温度における延びた期間およびペルオキシ開始剤のショットまたは供給は、98%以上のモノマー転換の達成を助ける。
【0092】
多数の実施形態において、前記シードラテックスの成長は、エマルジョン重合プロセスにより行われる。
【0093】
本発明によると、重要な様態は、高性能のエマルジョンPSAを伝達するためのRAFT対照群および重合性界面活性剤の併用である。
【0094】
ポストポリマーの形成
本発明のポリマーの形成後に、架橋、フィラーおよび添加剤の混入、並びに硬化などの多様なポスト形成操作が行われ得るが、これに限らない。
【0095】
架橋剤
接着剤は、接着剤の後、硬化時に架橋されて、感圧性接着剤の凝集力を増加させることができる。これは、熱、化学線または電子線放射などの共有架橋または官能基間の金属系イオン架橋を通じて達成され得る。下記表1は、セグメント化したポリマーの多様な官能基に対する架橋剤の類型を例示する。
【0096】
【0097】
本発明の接着剤は、顔料、フィラー、可塑剤、希釈剤、抗酸化剤、粘着付与剤などの添加剤をさらに含んでもよい。必要に応じて、顔料は、前記接着剤に所望の色を付与するのに十分な量で提供される。顔料の例は、カーボンブラック、二酸化チタンなどの固体無機フィラー、および有機染料を含むが、これに限らない。アルミニウム三水和物、クリストバライト、ガラス繊維、カオリン、沈降またはフュームドシリカ、銅、石英、ホウ酸塩、雲母、水酸化マグネシウム、珪酸塩(例えば、長石)、タルク、ニッケルおよび炭酸カルシウムなどの更なる無機フィラーも有用である。アルミニウム三水和物および水酸化マグネシウムなどの金属酸化物は、難燃剤として特に有用である。
【0098】
かなり多様な粘着付与剤を使用して、前記接着剤の粘着および剥離を向上させることができる。これらは、炭化水素樹脂粘着付与剤、松のオレオレジンで自然発生するロジン材料を含むロジンおよびロジン誘導体だけでなく、ロジンエステル、分画化、水素化、脱水素化および重合化ロジンなどの変形したロジン、変形したロジンエステルなどを含むその誘導体も含む。
【実施例】
【0099】
大半は、n-ブチルアクリレートおよびt-ブチルアクリレートモノマーを使用して、-20℃の目標ガラス転移温度(Tg)でポリマーを合成した。それぞれの重合に0.6重量%のメタクリル酸が含まれた。疎水性物質として少量のヘプタデシルアクリレートと共にモノマー相に溶解したあらかじめ製造されたRAFTオリゴマーを使用するミニエマルジョン重合を通じてRAFT媒介重合を行った。
【0100】
前記RAFTオリゴマーは、溶媒システムで製造された。剤形は、下記表2に提供される通りである。
【0101】
【0102】
表2に記載された製造法の化学量論は、ポリマー末端当たり5MAA分子を有する10,000g/molポリマーを伝達するように設計された。前記反応は80℃で行われ、完了すると(すなわち、転換>98%)、60℃で回転蒸発を使用して前記ポリマー溶液から溶媒(エチルアセテート)を除去した。前記単離したポリマーのMnを測定して、約1.5のPDIを有する約9,500g/molであることを発見した。次に、これらのオリゴマーを利用してRAFT媒介エマルジョンポリマーを製造した。
【0103】
前記RAFT媒介重合は、表3に示されるように、ポリマー試料1および2として約150,000g/molの分子量および低い多分散度(PDI)を有するポリマーを算出した。使用可能なメタクリル酸に対して同等な化学量論的重量でCX100アジリジン架橋剤を添加する前に、それぞれのポリマー分散液を、アンモニア溶液を使用して8.5~9.5の範囲内のpHに中和させた。
【0104】
ポリマーラテックスフィルムは、架橋剤を含有する前記ラテックスを2milのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに直接引き下げて製造した。前記湿式接着フィルムを対流式オーブンにて120℃で5分間乾燥および硬化させた後に、シリコーンコーティングされたガラス剥離紙にラミネートした。
【0105】
製造されたラミネートの接着コーティング重量を接着剤コーティングされたPETの100mm×100mmセクションの重さを測定して測定した。100mm×100mmの未コーティングのPET試料の重量を引いた結果に100を乗じて、コート重量をg/m2で得た。
【0106】
ステンレス鋼に滞留する24時間後の180°剥離接着力は、試験ラミネートの1インチ幅のストリップをそれぞれの方向に1回通過する5ポンドのローラーを有するステンレス鋼パネルに適用して測定した。試料を23℃でコンディショニングしてテストした。24時間滞留させた後に、少なくとも20mmのテストストリップに対して平均剥離力を3回測定した。
【0107】
静的せん断は、ループ型試験ストリップの1/2インチ×1/2インチ領域をステンレス鋼パネルに付着させ、それぞれの方向に1回通過する5ポンドのローラーでローリングして測定した。前記テストストリップを一晩滞留させた後に、前記テストストリップに形成されたループを介して500gの検査分銅を吊るして、破損に対する時間を記録した。
【0108】
動力学的分析(DMA)は、平行な板クランプを使用してTA Instrument AR-2000レオメーターで行った。1.0mm厚さの試料を前記クランプに置き、50℃で10分間アニーリングして良好な接着力を確保した。次に、前記試料を-50℃まで10分間冷却させ、分当り3℃で最大180℃まで上げた。温度を上げる間、前記試料を10rad/sの周波数で振動させた。
【0109】
【0110】
分子量は、非RAFTポリマー(ポリマー試料3および4)が顕著なゲル分画を含有したので測定されなかった。
【0111】
図6および
図7は、重合性界面活性剤と共に使用するRAFT重合の組合せが高い剥離および高いせん断特性を提供することを示す。
図6は、約5ポンドの剥離力が、従来の重合、RAFT重合のみおよび重合性界面活性剤のみを介して同じモノマーを使用するポリマーに対して、単に約1ポンドの剥離力と比較して重合性界面活性剤とRAFTプロセスの使用を組み合わせることにより達成されることを立証した。
図7は、せん断試験の結果を示す。
【0112】
図6および
図7に示されるように、向上した基板湿潤を通じて静的せん断を犠牲にすることなく、大きく増加した24時間剥離接着力が達成された。ここで提示された反応性界面活性剤を使用するRAFTポリマーに対する本来の剥離接着の結果は、24時間滞留する凝集破損モードに戻った。シードされたセミバッチプロセスを通じて製造されたRAFTおよび反応性界面活性剤を使用するエマルジョンPSAのより最近の例は、非常に高い静的せん断、すなわち1/2インチ×1/2インチおよび500gを使用する10,000分以上、および洗浄/接着剤不良モードを立証し、6lb/インチ以上の剥離力を提供する剥離を有するポリマーを得た。さらに他の予期しない結果は、本発明のポリマーがDOSSなどの後添加湿潤剤を含有せず、かつ優れた転写コーティングが達成されることである。ポリマー試料2(RAFT/重合性界面活性剤)および3(非RAFT/重合性界面活性剤)は、10,000分以上の平均静的せん断に戻った。
【0113】
本発明の多数の実施形態において、重要な性能利点は、改善した高温接着性能である。
多数の実施形態において、本発明によって形成された接着剤は、通常、せん断接着不良試験(SAFT)により測定されるように、高温でせん断に対して改善された耐性を示すものと認められる。
【0114】
特定の実施形態において、本発明の接着剤は、水に沈漬した場合、改善した水白化(water whitening)に対する耐性を示すことができる。
【0115】
耐温水性試験
標準方法として低温殺菌の効果をシミュレーションするために耐温水性試験を開発して、接着性ポリマーの不透明度を決めた。不透明度は、黒色バックグラウンドで背景とされている試料の百分率に対する白色バックグラウンドで背景とされている試料の百分率の比であり、100を乗じてパーセント不透明度として報告された。テストで、感圧接着剤をきれいな2milの二軸配向ポリプロピレン(BOPP)表面材またはバッキング(backing)上に1milの厚さでコーティングし、オーブンで60℃で10分間乾燥して冷却させた。冷却後に、前記フィルム表面材またはバッキングを温水(65℃)のビーカーに60分間沈漬させた。次に、PSAでコーティングされた表面材をプラスチックスのクキージーがある透明な2milのポリエステルフィルムに直ちにラミネートし、前記得られたラミネートの不透明度を分光比色計(Hunter Lab ColorQuest 45/0)を使用して決定した。前記沈漬した試料に対する不透明度の百分率は、沈漬していない試料と比較して、その差異は、デルタ不透明度として記録された。最大約6%の不透明度の増加は、良好と見なされた。最大約2.5の不透明度の増加は、優秀と見なされた。10.0%以上の不透明度の増加は、非水白化PSAが必要な用途で不良と見なされた。特定の実施形態において、本発明の接着剤は、10%未満のデルタ不透明度を有し、他の実施形態においては、6%未満、特定の実施形態においては、2%未満である。
【0116】
本発明のポリマーを使用する接着剤を製造して、現在公知になっている2つの接着剤と比較した。下記表4は、(i)現在公知になっている高性能溶媒であるアクリル接着剤、および(ii)現在公知になっている低価の溶媒であるアクリル接着剤を有する本発明のエマルジョン接着剤(本明細書で「高級エマルジョン」と表する)の多様な特徴を示す。
【0117】
【0118】
表4に示されるように、本発明による接着剤は、非常に高い固形分含量、HDPEに対する優れた24時間剥離、および水浸後における類似の静的せん断、SAFT、不透明度(上述の耐温水性試験を使用して試験)、および2つの公知の接着剤として他の剥離および粘着特性を含む。
【0119】
粘着性接着剤は、主に2-エチルヘキシルアクリレートおよびメチルアクリレートモノマーおよび90℃の軟化点を有する炭化水素樹脂粘着付与剤であるRegalite R1090を使用して、-20℃の目標ガラス転移温度(Tg)で合成された。Regalite R1090は、全モノマー相の成分(粘着付与剤入り)に対して8.1%のレベルで含まれた。約2.9重量%のメタクリル酸は、それぞれの重合に含まれた。疎水性物質として少量のヘプタデシルアクリレートと共に前記モノマー相に溶解したあらかじめ製造されたRAFTオリゴマーを使用して、ミニエマルジョン重合を介してRAFT媒介重合を行った。
【0120】
前記RAFTオリゴマーは、溶媒システムで製造された。 剤形は、下記表5に提示される通りである。
【0121】
【0122】
表5に提示されている製造法の化学量論は、ポリマー末端当たり4個のAAEM(アセトアセトキシエチルメタクリレート)分子を有する5,000g/molのポリマーを伝達するように設計された。前記反応は、80℃で行われ、完了すると(すなわち、転換>98%)、60℃で回転蒸発を使用してポリマー溶液から溶媒(エチルアセテートおよびメタノール)を除去した。前記単離したポリマーのMnを測定して、約1.5のPDIを有する約5000g/molであることを発見した。次に、これらのオリゴマーを用いて、RAFT媒介粘着性エマルジョンポリマーを製造した。
【0123】
前記RAFT媒介重合は、約40,000および60,000g/molの分子量であり、低い多分散度(PDI)を有するポリマーを算出した。使用可能なAAEMに対して等価化学量論的重量でJeffamine T403(三官能性アミン)架橋剤を添加する前に、それぞれのポリマー分散液をアンモニア溶液を使用して、7.5~9.5範囲内のpHに中和させた。
【0124】
図8は、本発明によって製造された接着剤に対するポリプロピレンおよび低密度ポリエチレンの表面の両方に対する剥離試験を比較したグラフであり、炭化水素粘着付与剤のレベルと軟化点のいずれもが変化した。低い軟化点樹脂(R1010)は、ポリプロピレンへの剥離を改善させず、2-EHAコポリマーにより提供されるより低いモジュラスは、15分および24時間剥離を向上させる結果を示す。
【0125】
図9は、本発明によって製造された接着剤に対して異なる分子量を有する粘着性2EHA系ポリマーに対する静的せん断およびデルタ不透明度の試験を比較したグラフである。
図9に示したコポリマーは、RAFT濃度および架橋剤の添加を通じてMnのみが異なる。前記コポリマーは、2EHA、MAAおよびMAを含む。Mnが低いほど絡み合い数を低減し、低い表面エネルギー(LSE)物質に対する高い剥離、高い静的せん断および低いパーセント不透明度につながる、より密接なネットワークおよびより速い弛緩を提供することが観察された。すなわち、前記接着剤は、十分に架橋される間に改善されたLSE接着および静的せん断に対する優れたバランスの流動学を有し、優れた耐水性を提供(および/または架橋前にポリマー鎖の粒子間の混合により補助される)することが示される。
【0126】
ポリマーラテックスフィルムは、架橋剤を含有する前記ラテックスを2milのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに直接引き下げて製造した。前記湿式接着フィルムを対流式オーブンにて120℃で5分間乾燥および硬化させた後に、シリコーンコーティングされたガラス剥離紙にラミネートした。
【0127】
製造されたラミネートの接着コーティング重量を接着剤コーティングされたPETの100mm×100mmセクションを重量測定して測定した。100mm×100mmの未コーティングのPET試料の重量を引いた結果に100を乗じて、コート重量をg/m2で得た。
【0128】
低密度ポリエチレン試験パネルに15分および24時間滞留させた後の180°剥離接着は、試験ラミネートの1インチ幅のストリップをそれぞれの方向に1回通過する5ポンドのローラーを有するステンレス鋼パネルに適用して測定した。試料を23℃でコンディショニングしてテストした。15分および24時間滞留させた後に、少なくとも20mmのテストストリップに対して平均剥離力を3回測定した。
【0129】
静的せん断は、ループ型テストストリップの1/2インチ×1/2インチ領域をステンレス鋼パネルに付着させ、それぞれの方向に1回通過する5ポンドのローラーでローリングして測定した。前記テストストリップを一晩滞留させた後、前記テストストリップに形成されたループを介して1000gの検査分銅を吊るして破損に対する時間を記録した。
【0130】
動力学的分析(DMA)は、平行な板クランプを使用してTA Instrument AR-2000レオメーターで行った。 厚さ1.0mmの試料を前記クランプに置き、50℃で10分間アニールして良好な接着力を確保した。次に、前記試料を-50℃で10分間冷却させ、分当たり3℃で最大180℃まで上げた。温度を上げる間、前記試料を10rad/sの周波数で振動させた。
【0131】
多数の他の利点は、この技術の今後の適用および開発から明白になるはずである。
ここに言及されたすべての特許、出願、基準および文献は、その全体が本明細書に参照として引用される。
【0132】
本発明は、ここに記載された特徴および様態のすべての操作可能な組合せを含む。したがって、例えば一つの特徴が一実施形態に関して説明され、さらに他の特徴が他の実施形態に関して説明される場合、本発明は、これらの特徴の組合せを有する実施形態を含むことが理解されるであろう。
【0133】
上述のように、本発明は、以前の戦略、システムおよび/または構成に関する多数の問題点を解決する。しかし、当該技術分野の本質を説明するために本明細書に記載され説明されている構成要素の細部事項、材料および配列における多様な変化は、添付の請求の範囲に表された請求された主題の原理および範囲を逸脱することなく、当業者により行われ得ることが理解されるであろう。