(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】抗菌紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/36 20060101AFI20230928BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
D21H21/36
A61F13/15 142
(21)【出願番号】P 2020027895
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019073764
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸井 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑佳
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169446(JP,A)
【文献】特開2015-089487(JP,A)
【文献】特開平09-031366(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108978347(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107119502(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107905040(CN,A)
【文献】特開平08-164191(JP,A)
【文献】特開2006-307404(JP,A)
【文献】特開2016-168133(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02561421(GB,A)
【文献】特開平11-222796(JP,A)
【文献】特開2000-170092(JP,A)
【文献】特開2019-178097(JP,A)
【文献】特開平07-054298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 1/00-27/42
A47K 10/16
A61F 13/15-13/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤を含有する抗菌紙であって、
該抗菌紙0.1g当たり、カルシウムの含有量が
600ppm以上
800ppm以下である抗菌紙。
【請求項2】
前記抗菌剤がカチオン性抗菌剤である、請求項1に記載の抗菌紙。
【請求項3】
JIS L 1902:2015「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」の菌液吸収法に従い測定された抗菌活性値が1以上である、請求項1又は2に記載の抗菌紙。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の抗菌紙を有する吸収性物品。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の抗菌紙の製造方法であって、
ドイツ硬度が
6°dH以上
12°dH以下の抄紙用水を用い、湿式抄紙により湿紙を形成する抄紙工程と、
前記湿紙に、抗菌剤及びその希釈用水を用いて調製した抗菌剤含有液を付与する抗菌剤付与工程と、
前記抗菌剤付与工程を経た前記湿紙を加熱乾燥する乾燥工程とを有し、
前記希釈用水のドイツ硬度が、前記抄紙用水のドイツ硬度以下である、抗菌紙の製造方法。
【請求項6】
前記希釈用水のドイツ硬度が、前記抄紙用水のドイツ硬度未満である、請求項5に記載の抗菌紙の製造方法。
【請求項7】
前記希釈用水のドイツ硬度が4°dH以下である、請求項5又は6に記載の抗菌紙の製造方法。
【請求項8】
前記抄紙用水のドイツ硬度に対する前記希釈用水のドイツ硬度の比率(前記希釈用水のドイツ硬度/前記抄紙用水のドイツ硬度)が0.7以下である、請求項5~7の何れか1項に記載の抗菌紙の製造方法。
【請求項9】
前記抗菌剤がカチオン性抗菌剤である、請求項5~8の何れか1項に記載の抗菌紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤を含有する抗菌紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品では、着用中における排泄物由来の不快な臭いを抑制する等の目的で、抗菌剤を配合することが行われている。特許文献1には、吸収性物品の構成部材、例えば吸収性コアを被覆するコアラップシートとして使用可能な、抗菌性能を有する紙が記載されている。特許文献1の実施例では、硬度が所定範囲にある水を用いて、抗菌剤を含む塗布液を製造し、該塗布液を湿紙に塗布することで、抗菌性能を有する紙を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の着用時において、吸収性コアは、着用者の体圧等による外力によって変形するとともに、排泄された尿等の体液を吸収することによって膨潤することから、吸収性コアを被覆するコアラップシートには、吸収性コアの変形や膨潤に追従し得るよう、柔軟で曲げやすいことが要望される。また、吸収性物品におけるコアラップシート以外の他の構成部材についても、柔軟性を有することが要望される場合が多い。
【0005】
本発明の課題は、抗菌性能を有し柔軟な抗菌紙を提供することに関する。また、本発明の課題は、抗菌性能を有し柔軟な抗菌紙を効率よく製造し得る、抗菌紙の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、抗菌剤とカルシウムを含有する抗菌紙である。
好ましくは本発明の抗菌紙は、該抗菌紙0.1g当たり、カルシウムの含有量が500ppm以上である。
【0007】
また本発明は、ドイツ硬度が5°dH以上の抄紙用水を用い、湿式抄紙により湿紙を形成する抄紙工程を有する抗菌紙の製造方法である。
好ましくは本発明の製造方法は、前記湿紙に、抗菌剤及びその希釈用水を用いて調製した抗菌剤含有液を付与する抗菌剤付与工程を有する。
好ましくは本発明の製造方法は、前記抗菌剤付与工程を経た前記湿紙を加熱乾燥する乾燥工程を有する。
好ましくは本発明の製造方法は、前記希釈用水のドイツ硬度が、前記抄紙用水のドイツ硬度以下である。
本発明の他の特徴は、特許請求の範囲の記載及び以下の説明から明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗菌紙は、抗菌性能を有し柔軟である。また、本発明の抗菌紙の製造方法によれば、斯かる高品質の抗菌紙を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般に、製紙工場において湿式抄紙に使用する水(以下、「抄紙用水」ともいう。)の硬度は、ドイツ硬度で通常2~4.5°dHである。また、スケール形成による水の配管のつまりを懸念するため、一般に、硬度の高い水は避けられる傾向にある。本発明者が種々検討した結果、通常の抄紙用水よりもドイツ硬度が高い抄紙用水を用い、常法に従って湿式抄紙することで、柔軟な紙が得られることを知見した。また、そのような高硬度の抄紙用水を用いて製造された柔軟な紙は、通常の抄紙用水を用いて製造された紙に比して、カルシウムの含有量が多いことも知見した。
【0010】
一般に、抗菌剤を金属イオンと併存させると、金属イオンによって抗菌剤の抗菌性能が阻害されることが知られている。例えば、後述の式(1)で表されるベンザルコニウム塩の如き逆性石けんは、水の硬度によりその効力(殺菌性能)が影響されやすいことが知られている。W.S. Mueller及びO. B. Seely〔Soap & Sanitary Chemicals, 27, No.6, 131(1951)〕によれば、1価金属イオンよりも2価、3価の金属イオンの方が逆性石けんの殺菌性能の阻害力が強く、該阻害力の比率は、1価金属イオン:2価金属イオン:3価金属イオン=1:100:1000とされている。また、一般に、抗菌性能を有する紙を製造する場合、典型的には、抗菌剤は抄紙用水と同じ水で希釈して用いられている。仮に、抄紙用水、すなわち希釈用水として、ドイツ硬度が5°dH以上のような高硬度の水を用いた場合、その高硬度の水には比較的多量の金属イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなど)が含まれている。そのため、抗菌剤と希釈用水由来の金属イオンとが反応して金属塩(スカム)が生成される機会が増加し、設計どおりの抗菌性能が得られない。斯かる問題について本発明者が種々検討した結果、抄紙用水と希釈用水とを分けて、後者のドイツ硬度を前者のそれ以下に設定することで、紙の抗菌性と柔軟性とを両立し得ることを知見した。
【0011】
本発明の抗菌紙は、抗菌剤を含有する。本発明の抗菌紙が有する抗菌性能は、該抗菌紙が含有する抗菌剤によって発現するものである。本発明で用いる抗菌剤は、細菌の増殖を抑制可能なものを特に制限無く用いることができ、臭いの発生源を絶つ作用をするもの、すなわち臭気発生原因の肌常在菌や腸内細菌、これらの細菌由来の酵素の増殖を抑える作用を奏するものが好ましい。例えば、尿臭の発生に関わる細菌の増殖、生育を抑制又は死滅させる抗菌剤を用いることができる。本発明で用いる抗菌剤としては、無機抗菌剤及び有機抗菌剤等から選ばれる1又は複数が挙げられる。
【0012】
無機抗菌剤としては、例えば、銀、亜鉛、銅、鉄、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、アンチモン、ビスマス等の抗菌性金属イオン及び塩等を担体に担持させた微粒子粉末及び針状結晶から選ばれる1又は複数が挙げられる。
該担体としては、ゼオライト、シリカゲル、低分子ガラス、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ケイ酸塩及び酸化チタン等から選ばれる1又は複数が挙げられる。
【0013】
有機抗菌剤としては、カチオン性抗菌剤、アニオン性抗菌剤及びノニオン性抗菌剤から選ばれる1又は複数が挙げられる。
アニオン性抗菌剤としては、ピロクトンオラミン[1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリドンモノエタノールアミン塩]、オレイン酸カリウム、1-ペンタスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びヘキサデシル硫酸ナトリウム等から選ばれる1又は複数が挙げられる。
ノニオン性抗菌剤としては、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロカルバン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ハロカルバン及びパラオキシ安息香酸エステル等から選ばれる1又は複数が挙げられる。
【0014】
本発明で用いる抗菌剤は有機抗菌剤を含むことが好ましい。有機抗菌剤は、酸化亜鉛や銀含有抗菌剤等の無機抗菌剤に比べて、抗菌効果が高いからである。また、無機抗菌剤は一般に水不溶性であるため、スプレーによる噴霧の如き非接触式付与方法によって紙に抗菌剤を付与する場合には、安定供給の観点から、抗菌剤として有機抗菌剤を用いることが好ましい。
【0015】
後述するように、本発明の抗菌紙の製造では、抗菌剤を希釈用水で希釈して調製した抗菌剤含有液を用いるところ、該抗菌剤含有液の調製を容易にして抗菌紙を効率よく製造する観点、該抗菌剤含有液を噴霧する工程で目詰まりを防止する観点などから、本発明で用いる抗菌剤は、ある程度の水溶性を有することないしは水に分散可能であることが好ましい。具体的には、本発明で用いる抗菌剤は、下記方法により測定される残留率が、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.3質量%以下、最も好ましくは0質量%である。すなわち0質量%以上である。なお、後述する実施製造例では抗菌剤A及びBの2種類を使用したところ、抗菌剤Aの残留率は0.01質量%、抗菌剤Bの残留率は0.005質量%である。
【0016】
<残留率の測定方法>
容量100mLのビーカーに、測定対象の抗菌剤を10gと脱イオン水(水温20℃)を90g入れ、十分撹拌して抗菌剤含有液を調製する。この抗菌剤含有液を、雰囲気温度25℃の環境で1時間静置後、目開き180メッシュの網に流し込む。該網を通過しなかった残留物の質量を測定し、その測定値を残留量M1とする。残留量M1と抗菌剤の当初の質量M0(=10g)とから、次式により、当該抗菌剤の残留率(質量%)を算出する。 残留率(質量%)=(M1/M0)×100
【0017】
本発明で用いる抗菌剤の好ましい一例として、有機抗菌剤の一種であるカチオン性抗菌剤が挙げられる。抗菌紙に含有される抗菌剤がカチオン性抗菌剤であると、排泄物由来の菌の増殖が効果的に抑制され、斯かる菌の増殖に起因する不都合が効果的に抑制され得る。
この効果は、特に、本発明の抗菌紙が吸収性物品用抗菌紙として、すなわち使い捨ておむつの如き吸収性物品の構成部材(例えばコアラップシート)として用いられる場合に、顕著である。例えば、着用時の不快な臭いの発生や着用者の肌トラブルなどが効果的に抑制され得る。
カチオン性抗菌剤は、尿等の排泄物の液相において、不快な臭い成分の産生原因である微生物や微生物由来の酵素の増殖を抑制する作用を有している。カチオン性抗菌剤の斯かる作用により、吸収性物品における臭い成分の産生源が絶たれ、消臭効果が発揮される。
このようなカチオン性抗菌剤による生物学的消臭作用は、例えば、低級脂肪酸類、フェノール類、メルカプタン類、ケトン類、アルデヒド類及びアミン類など、酸性からアルカリ性まで幅広い様々な臭い成分に対して有効である。
【0018】
カチオン性抗菌剤の中でも、低濃度で高い抗菌性を発現できることから、第四級アンモニウム塩を含むものが好ましい。
第四級アンモニウム塩としては、特に制限なく用いることができ、例えば、アルキルピリジニウム塩、ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、ここから選ばれる1又は複数を用いることができる。
第四級アンモニウム塩を含むカチオン性抗菌剤の中でも、特に、第四級アンモニウム塩として塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、セチルリン酸ベンザルコニウム及び塩化ベンザルコニウム等から選ばれる1又は複数を含有するものが好ましい。
ベンザルコニウム塩の中でも、とりわけ、下記式(1)で表されるベンザルコニウム塩が、一層低濃度で高い抗菌性を発現できることから好ましい。
【0019】
【0020】
前記式(1)中、R1及びR2は、同一の若しくは異なるメチル基、エチル基又は炭素数8以上20以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。X-は一価のアニオンを表す。
【0021】
前記式(1)で表されるもののうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(1)中、R1及びR2の好ましい組み合わせとしては、例えばR1がメチル基であり、R2が炭素数8以上20以下、好ましくは8以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である組み合わせが挙げられる。
他に、R1及びR2が同一の基であり、且つ該基が炭素数8以上20以下、好ましくは8以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である組み合わせが挙げられる。
【0022】
前記式(1)中、X-で表される一価のアニオンは、例えばハロゲン化物イオンやアニオン活性基であることが好ましい。「アニオン活性基」とは、陰イオン性の界面活性能を有するイオンのことを言う。
前記アニオン活性基は、炭素数6以上、特に炭素数10以上であることが好ましい。
また、前記アニオン活性基は、炭素数20以下、特に炭素数18以下であることが好ましい。
前記アニオン活性基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を含むアニオン活性基を用いることが好ましい。
そのようなアニオン活性基として、例えばアルキルリン酸エステル塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキル硫酸エステル塩から選ばれる1又は複数を含むものを用いることが、抗菌能の点で好ましい。
特に下記式(2)で表されるアルキルリン酸を含むものを用いることが、安全性(皮膚への低刺激性)の観点から好ましい。
【0023】
【0024】
前記式(2)中、R3及びR4の一方は炭素数6以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を表し、もう一方は水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
R3とR4の好ましい組み合わせとしては、R3が水素原子であり、R4が炭素数8以上20以下、好ましくは8以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である組み合わせが挙げられる。長鎖アルキルのカチオン性活性基(四級アミン)を持つことで、抗菌紙の風合い(嵩高性、柔軟性)が向上し得る。
【0025】
前記のベンザルコニウム塩の中でも、特に塩化ベンザルコニウム及びセチルリン酸ベンザルコニウムから選ばれる1又は複数を用いることが、抗菌性、安全性及び即効性の高さの点から好ましい。
特にセチルリン酸ベンザルコニウムは、有機系のカチオン性抗菌剤のなかで、抗菌性と皮膚への低刺激性(水溶解性が低い)とのバランスがよく、比較的安全性が高いため好ましい。
これにより、本発明の抗菌紙が吸収性物品用の抗菌紙、すなわち吸収性物品の構成部材(例えばコアラップシート)として用いられる場合に特に有効である。
塩化ベンザルコニウムとしては、花王株式会社より商品名サニゾールB-50として販売されている抗菌剤を、セチルリン酸ベンザルコニウムとしては、花王株式会社より商品名サニゾールP-2として販売されている抗菌剤を用いることができる。
【0026】
本発明の抗菌紙は、JIS L 1902:2015「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」の菌液吸収法に従い測定された抗菌活性値が1以上であることが好ましく、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上である。
また、抗菌活性値の値は6以下であることが現実的である。
斯かる抗菌活性値は、抗菌紙の抗菌性能の指標となるもので、その数値が大きいほど抗菌性能が高いと評価される。斯かる抗菌活性値が前記の下限以上である抗菌紙は、菌の増殖を効果的に抑制することができる。
特に尿等の排泄物由来の菌の増殖を効果的に抑制することができるので、特に吸収性物品用の抗菌紙、すなわち吸収性物品の構成部材(例えばコアラップシート)として好適である。
抗菌活性値の具体的な測定方法は下記のとおりである。
【0027】
<抗菌活性値の測定方法>
前述の「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」中の菌液吸収法(試験接種菌液を直接試験片上に接種する定量試験方法)に従い測定し、このJISに明確な規定がない点は以下のようにする。
【0028】
6.5ニュートリエント培地(NB)の作製
関東化学株式会社製の蒸留水1000mLに、ベクトン・ディッキンソンアンド カンパニー社製:ニュートリエントブロスを8g加え、よく攪拌して水溶液を得、該水溶液のpHを6.9±0.2に調整した後、オートクレーブによって滅菌し、ニュートリエント培地(NB)を得る。
6.11寒天培地(EA)の作製
関東化学株式会社製の蒸留水1000mLに、ベクトン・ディッキンソンアンド カンパニー社製:BactoTM Yeast Extractの脱水酵母エキス2.5gと、同社製:BactoTM Tryptoneのカゼイン製トリプトン5.0gと、富士フイルム和光純薬株式会社製のD(+)グルコース1.0gと、富士フイルム和光純薬株式会社製の寒天12~15gとを加え、よく攪拌して水溶液を得、該水溶液のpHを7.2±0.2に調整した後、アルプ株式会社製の高圧蒸気減菌器(CLG40L、オートクレーブ) によって、温度120℃±2℃、圧力103kPa±5kPaの条件で滅菌し、混釈平板培養法用寒天培地(EA)を得る。
7試験菌株
細菌名称:大腸菌、WDCMコード:Escherichia coli NBRC 3301
7.2.4試験菌株の作製(斜面培地法)
斜面培地法は、次による。アズワン株式会社製の50mL試験管に、あらかじめ温めて溶解した前記寒天培地(EA)を約10mL注ぎ、アズワン株式会社製の綿栓を用いて該試験管の開口端を閉塞し、オートクレーブにて滅菌終了後、清浄な室内に該試験管を水平面に対して約15度傾けて置き、内容物を凝固させる。凝結水がなくなったものは溶解し、再び凝固させて使用する。こうして斜面培地を作製する。
次に、前記斜面培地に細菌(大腸菌)を移植して、前培養Aを作製する。細菌を移植した斜面培地(前培養A)は、ヤマト科学株式会社製の低温恒温器IJ101Wを用い37℃±2 ℃で24~48時間培養し、その後は温度5~10℃で保存する。なお、白金耳を斜面培地に塗抹するときは、試験管に示す凝結水に細菌を分散し、ここから斜面上方まで直線を引く。一旦、培地から白金耳の先端を離し、再び凝結水につけ、今度は蛇行させながら斜面上方まで線を引く。
【0029】
8.1.1.2前培養B
20mLの前記ニュートリエント培地(NB)をアズワン株式会社製の容量100mLの蓋付三角フラスコに入れる。前記前培養Aの平板から白金耳を使用し、一つのコロニーをかき取り、そのコロニーをフラスコの培養液に接種する。こうして前培養Bを作製する。
【0030】
8.1.1.3前培養C
20mLの前記ニュートリエント培地(NB)をアズワン株式会社製の容量100mLの蓋付三角フラスコに入れる。前記前培養Bの培養液から0.4mLをこの蓋付三角フラスコに加え、前培養Cを作製する。
【0031】
8.1.2試験接種菌液の調製
前記前培養Cの培養後の菌濃度を、日立ハイテクノロジーズ株式会社製の分光光度計(U-3310)によって、室温で水によって20倍希釈したニュートリエント培地(NB)を用いて、1×105~3×105CFU/mLに調整する。こうして試験接種菌液を調製する。
【0032】
8.1.4試験操作
8.1.4.1試験片への接種
測定対象の抗菌紙を試験片としてバイアル瓶に入れ、接種液として前記試験接種菌液を用い、これを試験片に接種する。具体的には、ギルソン社製のピペットマン(P200)を用い、バイアル瓶中の試験片の片面の複数箇所に接種液を1箇所につき0.2mL接種する。その場合、接種液がバイアル瓶の壁面及びキャップに触れてはならない。
8.1.4.2接種直後の洗い出し
試験片への接種直後に、試験試料3検体及び対照試料3検体それぞれのバイアル瓶中に生理食塩水を20mL添加する。この生理食塩水は、関東化学株式会社製の蒸留水1000mLに富士フイルム和光純薬株式会社製の塩化ナトリウム8.5gを入れよく攪拌し、その後、オートクレーブで滅菌して調製する。
次に、バイアル瓶のキャップを締め、洗い出し法(JIS L 1902:2015:附属書B)中のボルテックスミキサ(アズワン株式会社製:TX-3000L)による洗い出し法を行う。この洗い出し法は、平板、ゴム製保持部にバイアル瓶の下部を押し付け、5秒×5サイクルの振とうを行うものである。
【0033】
なお、市販の使い捨ておむつ等の吸収性物品や種々の製品において構成部材として使用されている、抗菌紙の抗菌活性値を測定する場合は、次の方法で測定することができる。ドライヤー又はコールドスプレーを用いて、ホットメルト接着剤を無効化し、製品における他の構成部材を丁寧に除去し、測定対象の抗菌紙を得る。こうして得た抗菌紙について、前述の「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」の菌液吸収法に従い、抗菌活性値を測定することができる。また、抗菌紙を取り出すこの手段は、本明細書の他の測定においても共通である。
【0034】
本発明の抗菌紙における抗菌剤の含有量は、所定の抗菌性能が発現し得るよう、抗菌紙の用途等に応じて適宜設定することができる。前述の抗菌活性値下限以上を達成する観点から、本発明の抗菌紙における抗菌剤の含有量は、単位面積当たりの質量(坪量)として、好ましくは0.001g/m2以上、より好ましくは0.01g/m2以上である。一般に、抗菌剤の含有量が多いほど抗菌性能は向上する。
また、肌への刺激性や尿等の排泄物の透過性の観点から、本発明の抗菌紙における抗菌剤の含有量は、好ましくは0.2g/m2以下、より好ましくは0.1g/m2以下である。特に抗菌紙を吸収性物品の構成部材として使用する場合には、肌への刺激性や尿等の排泄物の透過性の観点から、この上限以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の抗菌紙におけるカルシウムの含有量は、該抗菌紙0.1g当たり500ppm以上である。紙におけるカルシウムの含有量は、当該紙の柔軟性の指標となり、カルシウムの含有量が多いほど、当該紙は柔軟性が高いことを本発明者は見出した。
抗菌紙0.1g当たりにおけるカルシウムの含有量が500ppm以上であると、例えば、抗菌紙が吸収性コアを被覆するコアラップシートとして使用された場合において、吸収性コアが体圧等により変形し、あるいは尿等の排泄物を吸収して膨潤した場合に、コアラップシートである抗菌紙は、その吸収性コアの変形や膨潤に追従して伸長しあるいは変形することができるため、コアラップシートの破断などの不都合が起こり難い。
本発明の抗菌紙0.1g当たりにおけるカルシウムの含有量は、柔軟性を向上する観点から、好ましくは510ppm以上、より好ましくは515ppm以上である。
一方、抗菌紙におけるセルロース繊維等の構成繊維どうしの水素結合を保持し、紙力を担保する観点から、本発明の抗菌紙0.1g当たりにおけるカルシウムの含有量の上限については、好ましくは800ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは700ppm以下である。
抗菌紙0.1g当たりにおけるカルシウムの含有量を500ppm以上にすることは、従来公知の湿式抄紙法によって抗菌紙を製造する場合に、湿式抄紙に使用する抄紙用水として、通常では用いられないような高硬度の水を用いることで実現可能であり、この点については後で詳述する。
抗菌紙におけるカルシウムの含有量は下記方法により測定される。
【0036】
<紙におけるカルシウムの含有量の測定方法>
テフロン(登録商標)製ビーカー(アズワン株式会社製)及びテフロン(登録商標)製時計皿を硝酸槽内に1日以上漬け置く。その後、ビーカー及び時計皿を硝酸槽から取り出し、超純水で洗浄した後、乾燥させておく。この操作とは別に、セラミックス製のはさみにより測定対象の紙を5mm四方に切り、小片を得る。はさみは、使用するに先立って、アルコールと水で軽く洗った後、水分をふき取っておく。得られた小片を天秤で0.1g量り取り、小数点4桁目まで記録する。量り取った小片を洗浄済みのビーカーに分取し精秤する。そして、塩酸(関東化学株式会社製:原子吸光分析用)30mLと硝酸(関東化学株式会社製:原子吸光分析用)10mLとをビーカーに入れる。その後、洗浄済みの時計皿でビーカーの上部開口に蓋をし、ビーカーの下に設置したホットプレートにて、該ホットプレートの温度が200~250℃となる条件で3時間加熱処理する。加熱処理の途中、ビーカーの内容物の分解状況を見て適宜硝酸を添加する。加熱処理の後、時計皿をずらして内容物を10mLまで濃縮させる。濃縮後ホットプレートからビーカーを降ろして放冷し、ビーカーの内容物に硝酸2mLを加える。時計皿の内側を少量の超純水(富士フイルム和光純薬株式会社製)ですすぎ、すすぎに使用した超純水をビーカー内に入れる。このビーカーの内容物を、超純水で洗浄した50mLデジチューブに移す。内容物を移した後のビーカーの内側を少量の超純水ですすぎ、すすぎに使用した超純水を50mLデジチューブに移す。50mLデジチューブ内の内容物(水溶液)を50mLに定容し、該内容物を試験溶液とする。この試験溶液中のカルシウムをICP-MS(アジレント・テクノロジー株式会社製:誘導結合プラズマ質量分析計)装置によって定量を行う。
【0037】
本発明の抗菌紙の曲げ剛性値は、好ましくは30cN以下、より好ましくは29cN以下である。曲げ剛性値の値が小さいほど、当該抗菌紙は柔軟性に優れ、曲げやすいことを示す。
また、本発明の抗菌紙の曲げ剛性値は、25cN以上であることが現実的である。
曲げ剛性値の測定方法は後述する。
【0038】
本発明の抗菌紙は、典型的には、繊維を主体とする。本発明の抗菌紙における繊維の含有量は、該抗菌紙の全質量に対して、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
また、本発明の抗菌紙における繊維の含有量は、100質量%未満である。
本発明の抗菌紙は、繊維以外に少なくとも抗菌剤を含有し、更に他の成分を含有してもよい。本発明の抗菌紙が含有し得る、繊維及び抗菌剤以外の他の成分としては、湿式抄紙で通常使用される各種成分が挙げられ、例えば、紙力増強剤、填料、染料、顔料、pH調整剤、歩留り向上剤、耐水化剤、消泡剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明の抗菌紙は、典型的には、セルロース繊維を主体とする。セルロース繊維としては、紙の原料として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
本発明で用いるセルロース繊維のフリーネスは特に制限されないが、抗菌紙の強度と液透過性とのバランスの観点から、好ましくは500mL以上、より好ましくは600mL以上である。
また、本発明で用いるセルロース繊維のフリーネスは、好ましくは700mL以下、より好ましくは680mL以下である。
フリーネスは、JIS P8121に規定するカナダ標準ろ水度(C.S.F.)で示される値であり、繊維の叩解(水の存在下で繊維を機械的に叩き、磨砕する処理)の度合いを示す値である。フリーネスの値が小さいほど、叩解の度合いが強く、叩解による繊維の損傷が大きくてフィブリル化が進行していることを示す。繊維の叩解は、繊維を分散させた紙料(スラリー)に対して、ビーター、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて常法に従って実施することができる。
【0041】
本発明の抗菌紙は、セルロース繊維に加えて他の繊維を含有してもよい。他の繊維としては、例えば熱融着性繊維が挙げられる。熱融着性繊維としては、加熱により溶融し相互に接着する繊維を用いることができる。熱融着性繊維の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン-ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン-ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル-ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール-ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール-ポリエステル複合繊維等を挙げることができる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維の何れをも用いることができる。これらの熱融着性繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明の抗菌紙は、典型的には、繊維を主体とする基材を含んで構成され、該基材に抗菌剤が含有される。前記基材は単層構造でもよく、2層以上が積層された積層構造でもよい。本発明の抗菌紙の他の形態として、基材と、該基材の片面又は両面に積層された塗工層とを備えた形態が挙げられ、該塗工層に抗菌剤が含有されてもよい。
【0043】
本発明の抗菌紙の坪量は特に制限されず、抗菌紙の用途等に応じて適宜設定することができる。
例えば、強度と液透過性や柔軟性などとのバランスの観点から、抗菌紙(前記基材)の坪量は、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは12g/m2以上である。
また、同様の観点から、そして、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは35g/m2以下である。
本発明の抗菌紙を吸収性物品の構成部材に適用する場合、吸収性コアの外面を被覆するコアラップシートに適用する場合には、さらに液透過性などの諸特性とのバランスの観点から前記範囲が好ましい。
【0044】
本発明の抗菌紙は、吸収性物品の構成部材として特に有用である。本発明には、前述した本発明の抗菌紙を有する吸収性物品が包含される。
本発明の吸収性物品は、典型的には、肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート、及びこれら両シート間に配置された液保持性の吸収体を具備する。
表面シートは典型的には液透過性である。
裏面シートは、典型的には液難透過性若しくは撥水性であるが、液透過性であってもよい。
吸収体は、典型的には、吸収性コアとそれを包むコアラップシートを含む。
本発明の抗菌紙は、コアラップシートとして用いられることが、特に効果的であるため、好ましい。
なお、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。
前記の表面シート、裏面シート及び吸収性コアとしては、それぞれ、この種の吸収性物品において通常用いられているものを特に制限無く用いることができる。
本発明の吸収性物品には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等が包含される。
【0045】
本発明の吸収性物品の一実施形態として、コアラップシートが本発明の抗菌紙である場合、コアラップシート(本発明の抗菌紙)は、少なくとも吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆することが好ましい。
また、本発明の吸収性物品の他の実施形態として、更に、表面シートと吸収体との間に介在配置された中間シート(サブレイヤー)を具備し、該中間シートが本発明の抗菌紙からなる形態が挙げられる。
【0046】
本発明の吸収性物品は、この種の吸収性物品と同様に製造することができ、具体的には例えば、表面シート、裏面シート、吸収体(吸収性コア、コアラップシート)、中間シート等の各種部材を常法に従って組み合わせることによって製造することができる。
本発明の吸収性物品の製造方法は、典型的には、前述した本発明の抗菌紙と、該抗菌紙以外の他の部材の1種又は2種以上の組み合わせ(該吸収性物品の製造中間体)とを組み合わせる工程を有する。
本発明の吸収性物品の製造方法の一実施形態として、コアラップシートとして本発明の抗菌紙を用いる場合に、コアラップシートを、吸収性コア、表面シート及び裏面シートと積層する工程を有するものが挙げられる。斯かるコアラップシートの積層工程は、例えば、吸収性コアをコアラップシートで被覆して吸収体を得、該吸収体を表面シートと裏面シートとの間に配置することで実施し得る。
【0047】
次に、本発明の抗菌紙の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう。)について説明する。前述した本発明の抗菌紙は、本発明の製造方法によって製造することができる。なお、後述する本発明の製造方法については、前述の本発明の抗菌紙の説明では言及しなかった点を主に説明する。本発明の製造方法については、特に断らない限り、前述の本発明の抗菌紙の説明が適宜適用される。
【0048】
本発明の製造方法は、湿式抄紙により湿紙を形成する抄紙工程を有し、該湿紙に抗菌剤含有液を付与する抗菌剤付与工程を有することが好ましい。また、該抗菌剤付与工程を経た湿紙を加熱乾燥する乾燥工程を有することが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法は、公知の湿式抄紙機を用い常法に従って実施することができる。湿式抄紙機は、典型的には、スラリーを調製するスラリー調製パートと、抄紙網を用いて該スラリーから湿紙を連続的に形成するフォーミングパートと、該湿紙を加熱乾燥するドライパートと、加熱乾燥された紙(抗菌紙)をロール状に巻き取るワインダーパートとを含んで構成されている。前記抄紙工程はスラリー調製パート及びフォーミングパートで実施され得る。前記乾燥工程はドライパートで実施され得る。湿式抄紙機のドライパートは、ヤンキードライヤ等の加熱乾燥手段を含んで構成されている。
【0050】
前記抄紙工程は、典型的には、繊維を含むスラリー(繊維の水分散液)を調製する工程と、該スラリー中の固形分を抄紙網で抄き上げて該抄紙網の表面に湿紙を形成する工程とを有する。前記スラリーには、必要に応じ、紙力増強剤、填料など、湿式抄紙で通常使用される抄紙原料が含有されてもよい。前記スラリーの固形分濃度は、通常0.005~0.2質量%程度である。前記抄紙工程は、従来公知の湿式抄紙機を用い常法に従って実施することができる。
【0051】
前記抄紙工程では、ドイツ硬度が5°dH以上の抄紙用水を用いて湿紙を形成する。すなわち、例えば、典型的な湿式抄紙機を用いて本発明の製造方法を実施する場合、少なくとも前記のスラリー調製パート及びフォーミングパートの両パートで使用する水(抄紙用水)として、ドイツ硬度が5°dH以上の水を用いる。前述したように、一般に製紙工場で通常使用される抄紙用水のドイツ硬度は2~4.5°dHである。また、ドイツ硬度の高い水は一般には避けられる傾向がある。すなわち、本発明の製造方法は、通常よりも高硬度の水を用いて湿紙を形成するものである。ドイツ硬度が5°dH以上の水を用いて湿紙を形成することで、製造目的物たる抗菌紙におけるカルシウムの含有量を多くすることが容易になり、これにより前述したとおり、抗菌紙の柔軟性を向上させることができる。前記抄紙工程で用いる抄紙用水のドイツ硬度は、好ましくは5.5°dH以上、より好ましくは6°dH以上である。
【0052】
一方、前記抄紙工程で用いる抄紙用水のドイツ硬度の上限については、抗菌紙におけるカルシウムの含有量を適切な範囲に制御して、抗菌紙におけるセルロース繊維等の構成繊維どうしの水素結合を保持し、紙力を担保する観点から、好ましくは12°dH以下、より好ましくは10°dH以下、更に好ましくは8°dH以下である。
【0053】
本発明では、水の硬度の指標として、ドイツ硬度を採用している。本明細書におけるドイツ硬度とは(°dH)とは、JIS K 0101:1998工業用水試験方法15.1.2フレーム原子吸光法に準拠して水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を測定し、以下の計算式を用いて求めたものを指す。
H(mgCaO/100mL)={(1.399×CCa)+(2.307×CMg)}/10
H:ドイツ硬度
CCa:カルシウム濃度(mgCa/L)
1.399:カルシウムの量を酸化カルシウム相当量に換算する場合の係数(56.08/40.08)
CMg:マグネシウム濃度(mgMg/L)
2.307:マグネシウムの量を酸化カルシウム相当量に換算する場合の係数(56.08/24.305)
【0054】
前記抗菌剤付与工程では、前記抄紙工程で形成された湿紙に抗菌剤含有液を付与する。
湿紙に抗菌剤含有液を付与する方法は特に制限されず、例えば、スプレーによる噴霧(非接触式付与方法)、公知の塗工手段による塗工(接触式付与方法)等が挙げられる。
抗菌剤含有液を付与するタイミングに関し、湿紙の形成直後、すなわちスラリーを抄紙網で抄き上げた直後に抗菌剤含有液を付与してもよい。典型的には、湿紙を圧搾脱水した後に抗菌剤含有液を付与する。
典型的な湿式抄紙機は、抄紙網とドライパートを構成する加熱乾燥手段との間に、湿紙を圧搾脱水するプレスロール等の加圧手段を備えている。抗菌剤含有液を付与する直前の湿紙の含水率は通常、20~85質量%程度である。
【0055】
前記抗菌剤含有液は、抗菌剤(好ましくはカチオン性抗菌剤)を水で希釈して調製される。前記抗菌剤含有液には必要に応じ、抗菌剤及び水以外の他の成分を含有してもよいが、典型的には、抗菌剤及び水のみを含有する。
前記抗菌剤含有液における抗菌剤の含有量は特に制限されないが、該抗菌剤含有液の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
前記抗菌剤含有液における抗菌剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0056】
本発明の製造方法は、前記抗菌剤含有液の調製(抗菌剤の希釈)に用いる水すなわち「希釈用水」と、前記抄紙工程で用いる水すなわち「抄紙用水」とで、ドイツ硬度が異なり得る。より具体的には、本発明の製造方法では、希釈用水のドイツ硬度が、抄紙用水のドイツ硬度以下であり、好ましくは、抄紙用水のドイツ硬度未満である。
【0057】
このように、「希釈用水のドイツ硬度≦抄紙用水のドイツ硬度」とする理由、好ましくは「希釈用水のドイツ硬度<抄紙用水のドイツ硬度」とする理由については前述したとおりであり、すなわち抗菌性と柔軟性とが高いレベルで両立した抗菌紙を得るためである。これにより、抗菌剤と希釈用水に含まれる金属イオンとが反応せず、製造目的物たる抗菌紙において所定の抗菌性能を発現するのに必要な抗菌剤の量が確実に付与される。湿式抄紙では、一連の工程(スラリーの調製並びに湿紙の形成及び乾燥を含む工程)で同じ水を用いるのが技術常識であり、本発明のように硬度の異なる水を使い分けることは極めて珍しいと言える。
【0058】
前述した作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、希釈用水のドイツ硬度は、前記のとおり抄紙用水のドイツ硬度以下であることを前提として、好ましくは4°dH以下、より好ましくは3°dH以下であり、最も好ましくは0°dH、すなわち0°dH以上である。
【0059】
同様の観点から、抄紙用水のドイツ硬度に対する希釈用水のドイツ硬度の比率は、前記のとおり「希釈用水のドイツ硬度≦抄紙用水のドイツ硬度」を前提として、希釈用水のドイツ硬度/抄紙用水のドイツ硬度として、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0、すなわち0以上である。
【0060】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
抗菌剤を含有する抗菌紙であって、
該抗菌紙0.1g当たり、カルシウムの含有量が500ppm以上、好ましくは510ppm以上、より好ましくは515ppm以上である抗菌紙。
<2>
前記抗菌紙0.1g当たり、カルシウムの含有量が800ppm以下、好ましくは750ppm以下、より好ましくは700ppm以下である、前記<1>に記載の抗菌紙。
<3>
前記抗菌紙0.1g当たり、カルシウムの含有量が515ppm以上700ppm以下である、前記<1>又は前記<2>に記載の抗菌紙。
<4>
前記抗菌剤が有機抗菌剤である、前記<1>~前記<3>の何れか1に記載の抗菌紙。
<5>
前記抗菌剤がカチオン性抗菌剤である、前記<1>~前記<4>の何れか1に記載の抗菌紙。
<6>
前記カチオン性抗菌剤が第四級アンモニウム塩である、前記<5>に記載の抗菌紙。
<7>
前記第四級アンモニウム塩が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、セチルリン酸ベンザルコニウム及び塩化ベンザルコニウムから選ばれる1又は複数である、前記<6>に記載の抗菌紙。
<8>
前記抗菌剤が、下記式(1)で表されるベンザルコニウム塩である、前記<1>~前記<7>の何れか1に記載の抗菌紙。
【化3】
前記式(1)中、R
1及びR
2は、同一の若しくは異なるメチル基、エチル基又は炭素数8以上20以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基若しくはアルケニル基を表す。X-は一価のアニオンを表す。
<9>
前記式(1)中、X
-で表される一価のアニオンが、下記式(2)で表されるアルキルリン酸を含む記アニオン活性基である、前記<8>に記載の抗菌紙。
【化4】
<10>
前記ベンザルコニウム塩が、塩化ベンザルコニウム及びセチルリン酸ベンザルコニウムから選ばれる1又は複数である、前記<8>又は前記<9>に記載の抗菌紙。
<11>
JIS L 1902:2015「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」の菌液吸収法に従い測定された抗菌活性値が1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上である、前記<1>~前記<10>の何れか1に記載の抗菌紙。
<12>
前記抗菌活性値が6以下である、前記<11>に記載の抗菌紙。
<13>
前記抗菌紙が吸収性物品用抗菌紙である、前記<1>~前記<12>の何れか1に記載の抗菌紙。
【0061】
<14>
前記<1>~前記<13>の何れか1に記載の抗菌紙を有する吸収性物品。
<15>
肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート、及び両シート間に配置された液保持性の吸収体を具備し、
前記吸収体は、吸収性コアと該吸収性コアを包むコアラップシートとを含み、
前記コアラップシートが前記抗菌紙である、前記<14>に記載の吸収性物品。
【0062】
<16>
ドイツ硬度が5°dH以上、好ましくは5.5°dH以上、より好ましくは6°dH以上の抄紙用水を用い、湿式抄紙により湿紙を形成する抄紙工程と、
前記湿紙に、抗菌剤及びその希釈用水を用いて調製した抗菌剤含有液を付与する抗菌剤付与工程と、
前記抗菌剤付与工程を経た前記湿紙を加熱乾燥する乾燥工程とを有し、
前記希釈用水のドイツ硬度が、前記抄紙用水のドイツ硬度以下である、抗菌紙の製造方法。
<17>
前記抄紙用水のドイツ硬度が12°dH以下、好ましくは10°dH以下、より好ましくは8°dH以下である、前記<16>に記載の抗菌紙の製造方法。
<18>
前記抄紙用水のドイツ硬度が6°dH以上8°dH以下である、前記<16>又は前記<17>に記載の抗菌紙の製造方法。
<19>
前記希釈用水のドイツ硬度が、前記抄紙用水のドイツ硬度未満である、前記<16>~前記<18>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<20>
前記希釈用水のドイツ硬度が4°dH以下、好ましくは3°dH以下であり、より好ましくは0°dHである、前記<16>~前記<19>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<21>
前記希釈用水のドイツ硬度が0°dH以上3°dH以下である、前記<16>~前記<20>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<22>
前記抄紙用水のドイツ硬度に対する前記希釈用水のドイツ硬度の比率(前記希釈用水のドイツ硬度/前記抄紙用水のドイツ硬度)が、0.7以下、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0である、前記<16>~前記<21>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<23>
前記希釈用水のドイツ硬度/前記抄紙用水のドイツ硬度が、0以上0.5以下である、前記<16>~前記<22>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<24>
前記抗菌剤が有機抗菌剤である、前記<16>~前記<23>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<25>
前記抗菌剤がカチオン性抗菌剤である、前記<16>~前記<24>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
<26>
前記カチオン性抗菌剤が第四級アンモニウム塩である、前記<25>に記載の抗菌紙の製造方法。
<27>
前記第四級アンモニウム塩が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、セチルリン酸ベンザルコニウム及び塩化ベンザルコニウム等から選ばれる1又は複数である、前記<26>に記載の抗菌紙の製造方法。
<28>
前記抗菌紙が吸収性物品用抗菌紙である、前記<16>~前記<27>の何れか1に記載の抗菌紙の製造方法。
【0063】
<29>
前記<1>~前記<13>の何れか1に記載の抗菌紙、又は、前記<16>~前記<28>の何れか1に記載の製造方法によって製造された抗菌紙と、該抗菌紙以外の他の部材の1種又は2種以上とを組み合わせる工程を有する、吸収性物品の製造方法。
<30>
前記他の部材として、前記吸収性物品の肌対向面を形成する表面シート、該吸収性物品の非肌対向面を形成する裏面シート、及び両シート間に配置された液保持性の吸収体とを用い、該吸収体が、吸収性コアと該吸収性コアを包むコアラップシートとを含み、
前記工程において、前記抗菌紙を前記コアラップシートとして用い、該コアラップシートを、前記吸収性コア、前記表面シート及び前記裏面シートと積層する、前記<29>に記載の吸収性物品の製造方法。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0065】
〔実施製造例1~14、比較製造例1~7〕
繊維(針葉樹晒クラフトパルプ、NBKP)を水に分散させてスラリーを得、該スラリーを叩解機にかけて、NBKPのフリーネスを650mLに調整した。その後、該スラリーに湿潤紙力増強剤としてPAE(星光PMC株式会社製、商品名「WS4030」)を、スラリー中の全繊維の乾燥質量に対して0.5質量%投入した。各成分が均一になるように十分に撹拌し、固形分濃度0.2質量%のスラリーを調製した。角型シートマシン(250mm角、熊谷理機工業株式会社製)に抄紙用水を10L入れた後、スラリーを投入し、抄紙を行い、湿紙を作製した。湿紙に濾紙(サイズ28×28cm)を載せて含水率75質量%に調整した。次に、湿紙に抗菌剤をスプレー噴霧した後、回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて乾燥を行い、抗菌剤を含有する抗菌紙を製造した。
斯かる湿式抄紙においては、スラリーの調製から湿紙の形成に至るまで、ドイツ硬度が所定の値である1種類の水(抄紙用水)を用いた。また、湿紙に対し希釈用水を用いた抗菌剤含有液をスプレーで噴霧することで、湿紙に抗菌剤含有液を付与した。抗菌剤含有液を付与する直前の湿紙の含水率は75質量%であった。また、斯かる湿式抄紙においては、抗菌剤含有液の噴霧を行わない場合に製造される紙の乾燥状態での坪量が16g/m2となるように、抄紙条件を適宜設定した。抗菌剤の含有量は抗菌剤Aが0.01g/m2、抗菌剤Bが0.0075g/m2であった。抗菌剤含有液として、下記の抗菌剤含有液1又は2を用いた。
【0066】
(抄紙用水)
使用した抄紙用水のドイツ硬度は下記の表1及び表2に示したとおりである。ドイツ硬度が1°dH以上の抄紙用水は、脱イオン水に塩化カルシウムと塩化マグネシウムとを溶解し、且つカルシウムイオンとマグネシウムイオンとの含有質量比(カルシウムイオン:マグネシウムイオン)を7:3となるように調製した。
(希釈用水)
使用した希釈用水のドイツ硬度は下記の表1及び表2に示したとおりである。ドイツ硬度が0°dHの希釈用水として、脱イオン水のみを使用した。ドイツ硬度が1°dH以上の希釈用水は、脱イオン水に塩化カルシウムと塩化マグネシウムとを溶解し、且つカルシウムイオンとマグネシウムイオンとの含有質量比(カルシウムイオン:マグネシウムイオン)を7:3となるように調製した。
(抗菌剤含有液1)
・組成:抗菌剤A/トロメタミン/クエン酸/水(希釈用水)=3/0.7/0.3/96を10倍希釈して、抗菌剤含有液中の抗菌剤濃度は0.3%であった。
・抗菌剤A:カチオン性抗菌剤(セチルリン酸ベンザルコニウム)、花王株式会社製、商品名「サニゾールP-2」
・トロメタミン:アルバケミカル社製、商品名:TRIS AMINOWウルトラPCトロメタミン
・クエン酸:扶桑化学工業社製、商品名「精製クエン酸(無水)」
(抗菌剤含有液2)
・組成:抗菌剤B/水(希釈用水)=3/97、すなわち、抗菌剤含有液中の抗菌剤濃度は3%であった。
・抗菌剤B:カチオン性抗菌剤(塩化ベンザルコニウム)、花王株式会社製、商品名「サニゾールB-50」
抗菌剤含有液を噴霧しなかった以外は、前記の製造工程と同様にして、比較例1の紙を得た。
【0067】
実施製造例及び比較製造例で得られた抗菌紙(実施例1~17、比較例1~4)について、前記方法により、カルシウムの含有量、抗菌活性値を測定するとともに、下記方法により、曲げ剛性値を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0068】
<曲げ剛性値の測定方法>
測定には、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定された剛軟性測定法に適合した株式会社大栄科学精器製作所製:ハンドロメーター試験機を使用した。測定対象の紙の長さが250mm×250mmの試験片を用意した。試験機が備える試料台におけるスロット間を10mmに調整し、このスロット間の中心位置に試験片2枚を中央が位置し且つ試験片が水平になるように、試験片を配置し、試験片の四隅を粘着テープで試料台の上面に固定した。試料台の上面から7mm下方の位置(最下位置)まで下降するように調整したブレードを、試験片の上方から一定の速度200mm/minで下降させ、ブレードで試験片を押圧したときの指示計(荷重計)が示す最高値(cN)を読み取った。斯かる測定を5回行い、その平均値を算出して、当該紙の曲げ剛性値とした。測定は室温23±2℃、相対湿度50%RH±5%で実施した。
【0069】
【0070】
【0071】
表1及び表2に記載のとおり、実施製造例及び比較製造例では、抄紙用水としてドイツ硬度が4、6、8、12の4種類を使用したところ、何れの抄紙用水を用いた場合でも、希釈用水のドイツ硬度が大きくなるに従って、製造結果物である抗菌紙におけるカルシウム含有量が増加し、それに伴って該抗菌紙の曲げ剛性値が小さくなる、すなわち柔軟性が向上する。
比較製造例1~3で得られた抗菌紙(比較例1~3の抗菌紙)及び実施製造例1で得られた抗菌紙(比較例4の抗菌紙)よりも、実施例の抗菌紙は、抗菌性能を有し柔軟という特性を安定的に持った抗菌紙であった。
【0072】
また、ドイツ硬度が4°dHの抄紙用水を用いた比較製造例1~5で得られた抗菌紙(比較例1~3及び実施例1~2の抗菌紙)、及び、ドイツ硬度が8°dHの抄紙用水とドイツ硬度が12°dHの希釈用水を用いた比較製造例6よりも、実施製造例は抗菌性能を有し柔軟な抗菌紙を安定的に製造することができた。抗菌活性値に注目すると、抄紙用水のドイツ硬度が一定の場合、希釈用水のドイツ硬度が抄紙用水のドイツ硬度よりも小さい方が、抗菌活性値が高く抗菌性能に優れることがわかる。以上のことから、1)ドイツ硬度が5°dH以上の抄紙用水を用いること、及び2)希釈用水のドイツ硬度が抄紙用水のそれ以下であることを満たす場合に、抗菌性能を有し柔軟な抗菌紙を安定的に製造することができることがわかる。前記2)については、希釈用水のドイツ硬度が抄紙用水のそれ未満であることがより好ましいと言える。