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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】すすかび病抵抗性トマト植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/82 20180101AFI20230928BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20230928BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230928BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20230928BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALN20230928BHJP
【FI】
A01H6/82
A01H5/00 Z ZNA
A01H5/00 A
C12Q1/6869 Z
C12N15/29
C12Q1/6895 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023032297
(22)【出願日】2023-03-02
【審査請求日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (集会を通じた公開) 開催日:2023年2月6日 集会名および開催場所:南郷トマト生産組合総会及び60周年記念大会 御蔵入交流会館(福島県南会津郡南会津町田島字宮本東22) 公開者:福永寛
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (刊行物を通じた公開) 発行日:2022年11月23日 刊行物:農耕と園芸 2022年冬号、第77巻4号、第11~14頁 発行者:株式会社誠文堂新光社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (販売を通じた公開1) 販売日:2022年4月20日~2023年3月2日 販売場所:JA会津よつば南郷トマト選果場(福島県南会津郡南会津町宮床川久保22-1) 公開者:有限会社グローイング・マック
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (販売を通じた公開2) 販売日:2022年4月11日~2022年6月9日 公開者:ベルク福島株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (販売を通じた公開3) 販売日:2022年3月9日~2022年5月24日 公開者:有限会社テイエス・ナーサリ
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (販売を通じた公開4) 販売日:2022年4月25日~2022年6月14日 公開者:タキイ種苗株式会社
【微生物の受託番号】IPOD  FERM P-22459
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028130
【氏名又は名称】タキイ種苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿朗
(72)【発明者】
【氏名】有本 龍平
(72)【発明者】
【氏名】青池 仁美
(72)【発明者】
【氏名】芦原 紗也加
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/015442(WO,A1)
【文献】ZAHN, Marc et al.,“Quantification of Pseudocercospora fuligena in Tomato Lines Carrying Introgressions from Solanum habrochaites Using a qPCR Assay”,Plant Disease,2011年04月,Vol. 95, No. 4,p.394-400,DOI: 10.1094/PDIS-07-10-0487
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00- 17/00
C12N 15/00- 15/90
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドからなるポリヌクレオチドを含む、すすかび病抵抗性トマト植物:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
【請求項2】
すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドを含み、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上であるすすかび病抵抗性トマト植物:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
【請求項3】
記トマト植物は、前記部分配列からなるポリヌクレオチドにより、前記すすかび病抵抗性を付与される、請求項2に記載のトマト植物。
【請求項4】
前記すすかび病抵抗性トマト植物は、受託番号FERM P-22459で特定されるトマト植物の種子から得られるトマト植物またはその後代系統である、請求項1または2に記載のトマト植物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のすすかび病抵抗性トマト植物の部分。
【請求項6】
前記植物の部分が、種子である、請求項5に記載の植物の部分。
【請求項7】
下記(a)および(b)工程を含むことを特徴とする、すすかび病抵抗性トマト植物の生産方法:
(a)請求項1または2に記載のすすかび病抵抗性トマト植物と、他のトマト植物とを交雑する工程;
(b)前記(a)工程より得られたトマト植物またはその後代系統から、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程。
【請求項8】
前記(a)工程に先立って、下記(x)工程を含む、請求項7に記載の生産方法。
(x)被検トマト植物から、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程
【請求項9】
前記(x)工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性トマト植物を選抜し、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上である、請求項8に記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記(x)工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性の候補トマト植物を選抜し、
前記候補トマト植物またはその後代系統に対して、すすかび病菌の接種試験を行い、すすかび病抵抗性を示すトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜し、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上である、請求項9に記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記(x)工程に先立ち、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列と、トマト植物における対応する領域の参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列を特異的に検出可能な分子マーカーを設計する工程を含む、請求項9に記載の生産方法。
【請求項12】
前記(x)工程における選抜が、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを含む、すすかび病抵抗性トマト植物の選抜であり、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上である、請求項8に記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド。
【請求項13】
すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを、トマト植物に導入する導入工程を含み、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上であることを特徴とする、トマト植物へのすすかび病抵抗性の付与方法
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド
【請求項14】
すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを含むすすかび病抵抗性トマト植物と交雑することにより、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを導入し、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上である、請求項13に記載の付与方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
【請求項15】
トマト植物のすすかび病抵抗性の検出方法であって、
被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを含むすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する検出工程を含み、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上である、方法
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド
【請求項16】
前記検出工程に先立ち、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列と、トマト植物における対応する領域の参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列を特異的に検出可能な分子マーカーを設計する工程を含み、
前記検出工程において、前記被検トマト植物について、前記分子マーカーを検出することにより、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
すすかび病抵抗性トマト植物のスクリーニング方法であって、
被検トマト植物から、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドからなるポリヌクレオチドを含むトマト植物を、すすかび病抵抗性の候補トマト植物として選抜する選抜工程を含み、
前記部分配列の長さは、5000塩基長以上である、スクリーニング方法
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、すすかび病抵抗性トマト植物に関する。
【背景技術】
【0002】
糸状菌の一種であるシュードサーコスポラ・フリゲナ(Pseudocercospora fuligena)は、トマト植物のすすかび病の病原菌である。前記すすかび病は、葉かび病と酷似した病徴を示す。前記すすかび病では、主に風媒で病原菌が伝染し、トマトの葉で発病を引き起こす。ついで、すすかび病では、発病が激しいと、多数の病斑を生じ、株全体が衰弱し、枯死する(非特許文献1)。このため、前記すすかび病が流行すると、果実を取得できなくなる。
【0003】
前記すすかび病の防除方法として、前記葉かび病防除のための薬剤散布によって、同時にすすかび病が防除されることが知られていた。しかしながら、葉かび病抵抗性品種の普及により、薬剤散布が減少し、すすかび病の発生が顕著になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Hartman, Glen L. and T. C. Wang. “Black leaf mold development and its effect on tomato yield.”, Plant Disease, 1992, vol. 76, pages 462-465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、すすかび病抵抗性を示すトマト植物が求められている。
【0006】
そこで、本開示は、すすかび病抵抗性を示すトマト植物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本開示のトマト植物は、すすかび病抵抗性を有する。
【0008】
本開示のすすかび病抵抗性トマト植物の生産方法(以下、「生産方法」という)は、下記(a)および(b)工程を含む:
(a)前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物と、他のトマト植物とを交雑する工程;
(b)前記(a)工程より得られたトマト植物またはその後代系統から、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程。
【0009】
本開示のトマト植物へのすすかび病抵抗性の付与方法(以下、「付与方法」という)は、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を、トマト植物に導入する導入工程を含む。
【0010】
本開示の検出方法は、トマト植物のすすかび病抵抗性の検出方法(以下、「検出方法」という)であって、被検トマト植物について、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する検出工程を含む。
【0011】
本開示のスクリーニング方法は、すすかび病抵抗性トマト植物のスクリーニング方法(以下、「スクリーニング方法」という)であって、
被検トマト植物から、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する選抜工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、すすかび病に対して抵抗性を示すトマト植物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<定義>
本明細書において、「トマト植物」は、ナス科(Solanaceae)のナス属(Solanum)のトマト種に分類される植物を意味する。具体例として、前記トマト植物は、例えば、S. lycopersicumS. peruvianumS. arcanum PeraltaS. chilenseS. corneliomulleriS. huaylasense PeraltaS. cheesmaniae (L.Riley) Fosberg、S. chmielewskiiS. galapagense S.C.Darwin & Peralta、S. habrochaitesS. neorickiiS. pennelliS. pimpinellifolium等があげられ、好ましくは、交雑が容易なS. lycopersicumである。本明細書において、前記トマト植物は、例えば、栽培用トマト植物である。前記栽培用トマト植物は、例えば、トマト植物の栽培品種ということもできる。
【0014】
本明細書において、「すすかび病」は、特に、糸状菌(シュードサーコスポラ・フリゲナ:Pseudocercospora fuligena)により引き起こされる空気伝染性病害を意味する。前記すすかび病では、感染した植物体において、病斑の発生および枯死が引き起こされることが知られている。
【0015】
本明細書において、「すすかび病の病原菌」または「病原菌」(以下、「すすかび病」ともいう)は、シュードサーコスポラ・フリゲナ(Pseudocercospora fuligena)に分類される菌を意味する。
【0016】
本明細書において、「すすかび病抵抗性」は、すすかび病の感染による病害の発生および/または発生した病害の進行に対する、阻害能または抑制能を意味する。具体例として、前記「すすかび病抵抗性」は、例えば、すすかび病菌の感染による病害の未発生、および/または、発生した病害の進行の停止、阻害、抑止、低減、もしくは遅延を意味する。前記すすかび病菌抵抗性は、すすかび病耐性またはすすかび病耐病性ということもできる。
【0017】
本明細書において、「すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域」は、すすかび病抵抗性を供与する量的形質遺伝子座(Quantitative Traits Loci:QTL)または染色体領域を意味する。前記量的形質遺伝子座は、一般に、量的形質の発現に関与する染色体領域を意味する。
【0018】
本明細書において、「植物体」または「植物」は、植物全体を示す植物個体を意味する。
【0019】
本明細書において、「植物体の部分」または「植物の部分」は、植物個体の部分を意味する。
【0020】
以下、本開示について例をあげて説明するが、本開示は以下の例等に限定されるものではなく、任意に変更して実施できる。また、本開示における各説明は、特に言及がない限り、互いに援用可能である。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0021】
<すすかび病抵抗性トマト植物>
ある態様において、本開示は、すすかび病に対して抵抗性を示すトマト植物を提供する。本開示のトマト植物は、すすかび病抵抗性を有する。本開示によれば、すすかび病抵抗性を有するトマト植物を提供できる。
【0022】
前記トマト植物は、各植物種の純系のトマト植物でもよいし、対象のトマト植物と、前記対象のトマト植物の近縁種との交雑種でもよい。前記近縁種は、例えば、前記トマト植物における各植物種があげられる。
【0023】
本開示のトマト植物において、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の存在により付与されてもよい。以下、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を、すすかび病抵抗性マーカーともいう。
【0024】
本開示のトマト植物において、前記すすかび病抵抗性がすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の存在により付与される場合、本開示のトマト植物は、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含む。前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域は、第1染色体上のすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域であることが好ましい。
【0025】
本開示において、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域は、例えば、下記(G)のポリヌクレオチドを含む。
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のいずれかのポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の塩基配列または配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド。
【0026】
前記配列番号1の塩基配列は、例えば、後述する受託番号FERM P-22459で寄託されているトマト植物の種子から得ることができ、より具体的には、前記種子の第1染色体から得ることができる。
【0027】
前記(G2)のポリヌクレオチドにおいて、前記1もしくは数個は、例えば、1~12022個、1~9016個、1~6011個、1~3005個、1~2402個、1~1803個、1~1202個、1~601個、1~541個、1~480個、1~420個、1~300個、1~240個、1~180個、1~120個、1~60個、1~40個、1~20個、1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1または2個、1個である。
【0028】
前記(G3)のポリヌクレオチドにおいて、前記同一性は、例えば、80%以上、85%以上、89%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上である。
【0029】
前記(G1)のポリヌクレオチドは、配列番号1の塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドでもよい。前記部分配列からなるポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1の塩基配列において、457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。この場合、前記(G2)および(G3)のポリヌクレオチドは、前記(G2)および(G3)のポリヌクレオチドの説明において、「前記(G1)の塩基配列」を前記「配列番号1の塩基配列において、457321~517433番目の塩基配列」に読み替えて、その説明を援用できる。
【0030】
前記部分配列からなるポリヌクレオチドは、例えば、前記部分配列からなるポリヌクレオチドを含むトマト植物にすすかび病抵抗性を付与できる範囲である。前記部分配列からなるポリヌクレオチドの長さの下限、上限、または範囲は、特に制限されず、例えば、前記部分配列からなるポリヌクレオチドを含むトマト植物にすすかび病抵抗性を付与できる範囲である。前記部分配列からなるポリヌクレオチドの長さの下限は、例えば、1000塩基長以上、2500塩基長以上、5000塩基長以上、7500塩基長以上、10000塩基長以上、12500塩基長以上、15000塩基長以上、17500塩基長以上、20000塩基長以上、22500塩基長以上、25000塩基長以上、27500塩基長以上、30000塩基長以上、32500塩基長以上、35000塩基長以上、37500塩基長以上、40000塩基長以上、42500塩基長以上、45000塩基長以上、47500塩基長以上、50000塩基長以上、52500塩基長以上、55000塩基長以上、または、57500塩基長以上である。前記部分配列からなるポリヌクレオチドの長さの上限は、例えば、60113塩基長以下、60000塩基長以下、57500塩基長以下、55000塩基長以下、52500塩基長以下、50000塩基長以下、47500塩基長以下、45000塩基長以下、42500塩基長以下、40000塩基長以下、37500塩基長以下、35000塩基長以下、32500塩基長以下、30000塩基長以下、27500塩基長以下、25000塩基長以下、22500塩基長以下、20000塩基長以下、17500塩基長以下、15000塩基長以下、12500塩基長以下、10000塩基長以下、7500塩基長以下、または、5000塩基長以下である。前記部分配列からなるポリヌクレオチドの長さの範囲は、例えば、1000~60113塩基長、2500~60000塩基長、5000~57500塩基長、7500~55000塩基長、10000~52500塩基長、12500~50000塩基長、15000~47500塩基長、17500~45000塩基長、20000~42500塩基長、22500~40000塩基長、25000~37500塩基長、27500~35000塩基長、または、30000~32500塩基長である。
【0031】
本開示の前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域は、内在性のゲノム領域であってもよいし、外来性のゲノム領域であってもよい。前記内在性のゲノム領域は、例えば、前記トマト植物における突然変異等を含むゲノム領域である。前記すすかび病抵抗性を含むゲノム領域が内在性のゲノム領域の場合、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域は、例えば、交雑移入により導入できる。前記外来性のゲノム領域は、例えば、遺伝子組換え技術、ゲノム編集技術等により導入されたゲノム領域である。前記遺伝子組換え技術または前記ゲノム編集技術による、トマト植物への外来性のゲノム領域の導入は、本分野における一般的な手法により実施でき、例えば、植物用の人工染色体を構築し、当該人工染色体を対象のトマト植物に導入し、染色体の組み換えを用いて導入することにより、作製できる(下記参考文献1)。
参考文献1:Sun YD, Luo WR, Sun SY, Ni L. Agrobacterium-mediated transformation of tomato (Solanum lycopersicum L.) using the expansin 10 (CsEXP10) gene. Genet Mol Res. 2015 Dec 8;14(4):16215-21. doi: 10.4238/2015.December.8.11. PMID: 26662414.
【0032】
本開示のすすかび病抵抗性トマト植物は、すすかび病に対して抵抗性を示す。本開示において、トマト植物の前記すすかび病抵抗性は、後述する実施例1の方法に準じて、トマト植物の発病度を評価し、前記発病指数から算出する発病度により表わすことができる。この方法による前記発病度の算出は、後述する実施例1の説明を援用でき、例えば、発病度が1以下の場合、耐病性、発病度が1を超える場合、罹病性と評価できる。前記発病度により前記すすかび病抵抗性を判断する場合、前記発病度は、複数のトマト植物の平均の発病度である。前記すすかび病抵抗性の判断に使用するトマト植物(調査個体または調査個体群)の数は、例えば、すすかび病罹病性トマト植物との統計学的な検定が可能な数であり、具体例として、40~50株である。
【0033】
本開示のトマト植物は、一例として、受託番号FERM P-22459で寄託されたトマト植物(S. lycopersicum)またはその後代系統があげられる。前記後代系統は、例えば、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を有する。寄託の情報を以下に示す。
寄託の種類:国内寄託
寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター
あて名:日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室
受託番号:FERM P-22459
識別のための表示:Takii31
受領日:2022年8月15日
【0034】
本開示のトマト植物は、例えば、トマト植物に、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を導入することによっても製造できる。前記トマト植物への前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の導入方法は、特に制限されず、例えば、本開示のトマト植物との交雑もしくは胚培養、または従来公知の遺伝子工学的手法があげられる。前記遺伝子工学的手法としては、例えば、前述のように、遺伝子組み換え技術、ゲノム編集技術を用いた方法等があげられる。導入する前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域は、前述のすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域が例示できる。本開示のトマト植物との交雑により導入する場合、交雑に用いる本開示のトマト植物は、例えば、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域をホモ接合型で、または、両染色体に含むことが好ましい。
【0035】
前記(G1)のポリヌクレオチドは、例えば、前記受託番号FERM P-22459で特定されるトマト植物の種子が有する。このため、前記(G1)のポリヌクレオチドは、例えば、前記前記受託番号FERM P-22459で特定されるトマト植物の種子から得られるトマト植物またはその後代系統と交雑することにより、交雑移入または遺伝子移入されてもよい。また、前記(G2)または(G3)のポリヌクレオチドを含むトマト植物は、例えば、前記(G1)のポリヌクレオチドを含むトマト植物において、前記(G1)のポリヌクレオチドを含むゲノム領域に対して、前記ゲノム編集技術を用いて位置特異的な変異を導入することにより作製できる。
【0036】
本開示のトマト植物について、すすかび病抵抗性以外の特徴、例えば、形質的、生態的特徴等は、特に限定されない。
【0037】
本開示のトマト植物は、さらに、他の抵抗性を有してもよい。
【0038】
<すすかび病抵抗性トマト植物の部分>
別の態様において、本開示は、すすかび病に抵抗性を示すトマト植物の部分を提供する。本開示は、前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物の部分である。
【0039】
前記植物の部分は、例えば、植物細胞、植物プロトプラスト、植物体を再生可能な植物細胞培養物または組織培養物、植物カルス、植物塊(plant clumps)、植物または植物の部分から単離した植物細胞、分裂組織細胞(meristematic cell)、花、花弁、花芽、雌しべ、花冠、花粉、葉、葉柄、葉髄、子葉、子房(ovary)、胚、胚珠、胚軸、胚嚢、卵細胞、小胞子(microspore)、葯、雌しべ、花、子房(ovary)、挿し木、穂木(接ぎ穂)、台木、根、根の先端(根端)、種子、果実、幹、茎、苗等があげられる。前記植物の部分は、例えば、器官、組織、細胞または栄養繁殖体等があげられ、いずれでもよい。前記器官は、例えば、花弁、花冠、花、葉、種子、果実、茎、根等があげられる。前記組織は、例えば、前記器官の部分である。前記花粉は、成熟した花粉でも、未成熟の花粉でもよい。
【0040】
本開示の植物の部分は、例えば、本開示のトマト植物において、目的の部位を取得することにより製造できる。
【0041】
<すすかび病抵抗性トマト植物の生産方法>
別の態様において、本開示は、すすかび病に対して抵抗性を示す、トマト植物の生産方法を提供する。本開示のすすかび病抵抗性トマト植物の生産方法(以下、「生産方法」ともいう)は、下記(a)および(b)工程を含む。本開示の生産方法は、下記(a)の工程のみを含んでもよい。
【0042】
(a)前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物と、他のトマト植物とを交雑(交配)する工程;
(b)前記(a)工程より得られたトマト植物またはその後代系統から、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程。
【0043】
本開示の生産方法によれば、前記本開示のトマト植物を他のトマト植物と交雑することにより、得られた後代系統から、すすかび病に抵抗性を示すトマト植物を得ることができる。本開示の生産方法によれば、任意のトマト植物を用いて、すすかび病に対して抵抗性を示すトマト植物の品種を育種できる。このため、本開示の生産方法は、例えば、育種方法または育成方法ということもできる。
【0044】
本開示の生産方法において、前記すすかび病抵抗性マーカーの説明は、前記本開示のトマト植物における前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の説明を援用できる。
【0045】
前記(a)工程において、第一の親として使用するすすかび病抵抗性トマト植物は、本開示のトマト植物であればよい。本開示のトマト植物は、例えば、前述の受託番号FERM P-22459で寄託されたトマト植物またはその後代系統が好ましい。前記(a)工程において、第一の親として使用するすすかび病抵抗性トマト植物は、例えば、後述する本開示のスクリーニング方法により得ることもできる。このため、前記すすかび病抵抗性トマト植物は、例えば、前記(a)工程に先立って、例えば、被検トマト植物から、下記(x)工程により選抜して準備してもよい。
(x)被検トマト植物から、前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程。
【0046】
前記(x)工程において、前記すすかび病抵抗性トマト植物の選抜は、例えば、被検トマト植物のすすかび病抵抗性を、直接および/または間接的に評価(検出)し、前記すすかび病抵抗性トマト植物を選抜することにより実施できる。前記直接的な評価(検出)は、前述のすすかび病抵抗性の発病度を用いた評価方法の説明を援用できる。
【0047】
前記間接的評価により実施する場合、前記(x)工程では、例えば、前記すすかび病抵抗性マーカーの存在または不存在を指標として用いて、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜できる。具体的には、前記(x)工程において、前記すすかび病抵抗性トマト植物の選抜は、前記すすかび病抵抗性マーカー、すなわち、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域、を有するトマト植物の選抜ということができる。このため、前記(x)工程は、例えば、下記(x1)工程および(x2)工程により行うことができる。
【0048】
(x1)前記被検トマト植物の染色体上における、前記すすかび病抵抗性マーカーの有無を検出する検出工程
(x2)前記すすかび病抵抗性マーカーの存在により、前記被検トマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する選抜工程
【0049】
前記(x)工程における前記選抜は、前述のように、例えば、前記すすかび病抵抗性マーカーを有するトマト植物の選抜であり、具体的には、前記被検トマト植物について、前記すすかび病抵抗性マーカーを検出することによって、前記抵抗性トマト植物を選抜できる。
【0050】
前記(x1)工程における前記抵抗性マーカーの検出は、例えば、前記本開示のトマト植物において説明したように、すすかび病抵抗性を付与するすすかび病抵抗性マーカー、すなわち、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を有するトマト植物を検出することにより実施できる。前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の検出については、後述する。
【0051】
前記(x2)工程では、例えば、一対の染色体における一方の染色体において前記すすかび病抵抗性マーカーが存在する場合に、前記被検トマト植物を、前記抵抗性トマト植物として選抜してもよいし、一対の染色体における両方の染色体において前記すすかび病抵抗性マーカーが存在する場合、前記被検トマト植物を、前記抵抗性トマト植物として選抜してもよいが、後者が好ましい。
【0052】
前記(x)工程における前記選抜について、以下の具体例をあげるが、本開示は、これらには限定されない。
【0053】
前記(x1)工程における前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の検出は、例えば、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを検出することにより実施できる。以下の説明において、特に言及しない限り、本開示において、前記(G)のポリヌクレオチドの説明は、前記(G)のポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドの説明に援用できる。また、以下の説明において、特に言及しない限り、本開示において、前記(G)のポリヌクレオチドに代えて、前記(G)のポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドを用いてもよい。具体的には、前記(x1)工程では、前記被検トマト植物のゲノム(ゲノムDNA)の塩基配列を解読する。ついで、前記(x1)工程では、得られた塩基配列と、前記(G)のポリヌクレオチドの塩基配列と比較することにより、塩基配列が一致するか否かにより検出できる。前記塩基配列の解読は、例えば、被検トマト植物のゲノム(ゲノムDNA)を含む試料を含む試料と、シークエンス用試薬と、シークエンサーとを用いて実施できる。具体例として、前記(x1)工程での解読は、例えば、下記参考文献2を参照して、単分子シーケンサーを用いて実施し、スキャフォールディングを実施することにより決定できる。また、前記塩基配列の比較は、例えば、塩基配列の解析ソフト(例えば、前述のBLAST等)により実施できる。そして、前記(x1)工程では、前記(G)のポリヌクレオチドと一致する塩基配列をゲノムDNAに有するトマト植物を、前記(G)のポリヌクレオチドを有する被検トマト植物として特定(同定または検出)できる。前記(x1)工程において、前記検出は、前記被検トマト植物の全ゲノムに対して実施してもよいし、一部のゲノムに対しても実施してもよい。また、前記検出は、全染色体に実施してもよいし、一部の染色体に対して実施してもよい。そして、前記(x2)工程では、例えば、前記(G)のポリヌクレオチドを含む被検トマト植物を、本開示のトマト植物またはその後代系統、すなわち、すすかび病抵抗性を示すトマト植物として選抜する。
参考文献2:Kenta Shirasawa et.al., “Chromosome-scale genome assembly of Eustoma grandiflorum, the first complete genome sequence in family Gentianaceae, Ryohei Arimoto”, bioRxiv 2021.09.09.459690; doi: https://doi.org/10.1101/2021.09.09.459690
【0054】
前記(x1)工程における前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の検出は、例えば、前記(G)のポリヌクレオチドを特異的に検出することにより実施できる。この場合、前記(x1)工程では、前記被検トマト植物について、前記(G)のポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する。前記(G)のポリヌクレオチドの検出は、例えば、予め設計された前記(G)のポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを用いて検出してもよいし、前記(x1)工程に先立ち、前記分子マーカーを設計してもよい。前記分子マーカーの種類は、例えば、SNPマーカー、AFLP(分子増幅断片長多型、amplified fragment length polymorphism)マーカー、RFLP(restriction fragment length polymorphism)マーカー、マイクロサテライトマーカー、SCAR(sequence-characterized amplified region)マーカー、またはCAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカー等があげられる。本開示において、前記分子マーカーは、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記分子マーカーとしてSNPマーカーを用いる場合、前記SNPマーカーは、例えば、1個のSNPを前記SNPマーカーとしてもよいし、2個以上のSNPの組合せを前記SNPマーカー、すなわち、SNPマーカーセットとしてもよい。前記分子マーカーは、好ましくは、SNPマーカーである。
【0055】
前記分子マーカーは、例えば、本技術分野における通常の設計方法により、設計できる。前記分子マーカーは、例えば、前記(G)のポリヌクレオチドの塩基配列と、前記塩基配列を比較する参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドの塩基配列に特異的な塩基または塩基配列を特定することにより、実施できる。具体例として、前記分子マーカーの設計は、例えば、前記(G)のポリヌクレオチドと、前記参照配列として、前記(G)のポリヌクレオチドと対応するHeinz 1706のゲノムの塩基配列情報(SL3.0)とを比較して、両者間で異なる塩基または塩基配列を特定することにより、分子マーカーを設計することができる。前記対応するHeinz 1706のゲノムの塩基配列情報は、例えば、SL3.0における第1染色体の678023~1337393番目の塩基配列である。
【0056】
前記分子マーカーは、例えば、下記参考文献3~5を参照して、設計できる。具体例として、まず、前記配列番号1の塩基配列(BLM_Chr)を参照配列とし、ショートリードシーケンスなどで得られた塩基配列情報をマッピングし、SNP等の多型を検出する。そして、前記分子マーカーは、例えば、得られた多型をもとにマーカーを作成することにより、設定できる。
参考文献3:Hamilton JP et al., “Single Nucleotide Polymorphism Discovery in Cultivated Tomato via Sequencing by Synthesis.”, 2012, The Plant Genome 5.
参考文献4:Sim S-C et al., “Development of a Large SNP Genotyping Array and Generation of High-Density.”, 2012, Genetic Maps in Tomato. PLoS ONE 7(7)
参考文献5:Blanca J et al., “Variation Revealed by SNP Genotyping and Morphology Provides Insight into the Origin of the Tomato.”, 2012, PLoS ONE 7(10)
【0057】
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の有無を検出する染色体は、好ましくは、第1染色体である。
【0058】
本開示のトマト植物は、例えば、後述の付与方法により作出できる。このため、本開示の生産方法は、下記(y)工程を含んでもよい。下記(y)工程は、例えば、後述の本開示の付与方法の説明を援用できる。
(y)対象のトマト植物から本発明のすすかび抵抗性トマト植物を作出する工程(作出工程)
【0059】
また、前記(a)工程において、他方の親として使用するトマト植物は、特に制限されず、例えば、既知のすすかび病抵抗性を有するまたはすすかび病抵抗性を有さないトマト植物でもよいし、他の抵抗性を有するまたは有さないトマト植物でもよいし、前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物でもよい。
【0060】
前記(a)工程において、前記すすかび病抵抗性トマト植物と前記他のトマト植物との交雑方法は、特に制限されず、公知の方法が採用できる。
【0061】
前記(b)工程において、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜する対象は、例えば、前記(a)工程より得られたトマト植物でもよいし、さらに、そのトマト植物から得られた後代系統でもよい。具体的に、前記対象は、例えば、前記(a)工程の交雑によって得られたF1のトマト植物でもよいし、その後代系統でもよい。前記後代系統は、例えば、前記(a)工程の交雑によって得られたF1のトマト植物の自殖交雑後代または戻し交雑後代でもよいし、前記F1のトマト植物と他のトマト植物とを交雑することによって得られたトマト植物であってもよい。
【0062】
前記(b)工程において、すすかび病抵抗性トマト植物の選抜は、例えば、すすかび病抵抗性を、直接的または間接的に確認することにより行うことができる。
【0063】
前記(b)工程において、前記直接的な確認は、得られた前記F1のトマト植物またはその後代系統について、例えば、すすかび病抵抗性を、前述の発病度によって評価することで行える。具体的には、例えば、前記F1のトマト植物またはその後代系統に対して、例えば、すすかび病菌を接種して、すすかび病抵抗性を、前述の発病度に基づき評価し、発病度が1以下の場合、耐病性、発病度が1を超える場合、罹病性と評価できる。この場合、例えば、前記所定の基準を満たす前記F1のトマト植物またはその後代系統を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜できる。
【0064】
また、前記(b)工程において、前記間接的な確認による選抜は、例えば、下記(b1)および(b2)工程によって行うことができる。
(b1)前記(a)工程より得られたトマト植物またはその後代系統について、染色体上における、すすかび病抵抗性マーカーの有無を検出する検出工程
(b2)前記すすかび病抵抗性マーカーの存在により、前記(a)工程により得られたトマト植物またはその後代系統を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する選抜工程
【0065】
前記(b)工程におけるすすかび病抵抗性トマト植物の間接的な確認による選抜は、例えば、前記(x)工程において説明した方法と同様であり、前記すすかび病抵抗性マーカーの有無の検出によって、行うことができる。
【0066】
本開示の生産方法は、前記(b)工程において選抜されたすすかび病抵抗性トマト植物を、さらに育成することが好ましい。
【0067】
このように、前記すすかび病抵抗性が確認された前記トマト植物またはその後代系統を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜できる。
【0068】
本開示の生産方法は、さらに、交雑により得られた前記後代系統から、種子を採取する採種工程を含んでもよい。
【0069】
本開示の生産方法は、前記(a)工程および前記(b)工程を含むが、本開示はこれに限定されず、前記(a)工程のみを含んでもよい。この場合、前記(a)工程で用いる本開示のトマト植物は、前記抵抗性を含むゲノム領域をホモ接合型で、または、両染色体に含むことが好ましい。
【0070】
<すすかび病抵抗性トマト植物のスクリーニング方法>
別の態様において、本開示は、すすかび病に対して抵抗性を示す、トマト植物をスクリーニングする方法を提供する。本開示のスクリーニング方法は、すすかび病抵抗性トマト植物のスクリーニング方法であって、被検トマト植物から、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する選抜工程を含む。本開示のスクリーニング方法によれば、すすかび病に対して抵抗性を示す可能性があるトマト植物をスクリーニングできる。また、本開示のスクリーニング方法によれば、交雑によりすすかび病抵抗性トマト植物を生産するための親をスクリーニングすることができる。
【0071】
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を有するトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する場合、前記選抜工程では、例えば、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、前記(G)のポリヌクレオチドを含む被検トマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する。前記選抜は、例えば、前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物の生産方法における前記(x)工程の説明を援用できる。
【0072】
本開示のスクリーニング方法において、前記選抜工程は、前記(x)工程または前記(x1)工程の間接的な選抜(間接的な評価を用いた選抜)の説明を援用できる。
【0073】
<トマト植物のすすかび病抵抗性の検出方法>
別の態様において、本開示は、トマト植物におけるすすかび病に対する抵抗性を検出する方法を提供する。本開示の検出方法は、トマト植物のすすかび病抵抗性の検出方法であって、被検トマト植物のすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する検出工程を含む。本開示の検出方法によれば、対象のトマト植物がすすかび病に対して抵抗性を示すかを検出できる。本開示のトマト植物のすすかび病抵抗性の検出方法は、例えば、トマト植物におけるすすかび病抵抗性のスクリーニング方法ということもできる。
【0074】
前記すすかび病抵抗性トマト植物の検出は、例えば、前記本開示のすすかび病抵抗性トマト植物の生産方法における前記(x)工程の間接的な選抜、すなわち、前記(x1)工程の説明を援用できる。
【0075】
<トマト植物へのすすかび病抵抗性の付与方法>
別の態様において、本開示は、トマト植物に、すすかび病の抵抗性を付与する方法を提供する。本開示のトマト植物へのすすかび病抵抗性の付与方法は、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を、トマト植物に導入する導入工程を含むことを特徴とする。本開示の付与方法によれば、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域、すなわち、前記本開示のすすかび病抵抗性マーカーを導入することにより、トマト植物にすすかび病抵抗性を付与できる。
【0076】
前記導入工程において、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の導入方法は、特に制限されない。前記導入方法は、例えば、前記抵抗性トマト植物と交雑または胚培養、従来公知の遺伝子工学的手法があげられる。導入するすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域は、前述の本開示のトマト植物の説明におけるすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域が例示できる。前記抵抗性トマト植物との交雑により導入する場合、前記抵抗性トマト植物は、例えば、前記抵抗性を含むゲノム領域をホモ接合型で、または、両染色体に含むことが好ましい。
【0077】
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を導入する場合、前記導入工程は、これらを含む発現ベクターおよび/または人工染色体を導入することにより実施してもよい。前記発現ベクターおよび人工染色体は、例えば、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法等により、対象のトマト植物に導入できる。前記対象のトマト植物は、例えば、植物細胞、カルス、植物組織、および植物個体のいずれでもよい。
【0078】
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域、を導入する場合、前記導入工程は、これらを含む核酸(ドナー核酸)およびゲノム編集ユニットを導入することにより実施してもよい。この場合、前記核酸の5’端には、前記核酸を導入する染色体における導入位置の5’端側の塩基配列と相同性を有する5’ホモロジーアームが配置され、前記核酸の3’端には、前記核酸を導入する染色体における導入位置の3’端側の塩基配列と相同性を有する3’ホモロジーアームが配置される。また、前記ゲノム編集ユニットシステムは、前記導入位置を切断可能に構成される。これにより、前記導入工程後、導入されたトマト植物では、前記導入位置で、ゲノムDNAの切断が生じ、相同組み換えにより前記核酸が染色体に組込むことができる。前記導入位置は、2箇所としてもよい。この場合、前記導入位置は、前記核酸を導入する染色体において、塩基配列の交換を行なう上流端と、下流端とに設計できる。また、前記5’ホモロジーアームは、上流端の導入位置の5’端側の塩基配列と相同性を有し、前記3’ホモロジーアームは、下流端の導入位置の3’端側の塩基配列と相同性を有するように設計できる。前記導入位置を2箇所とすることにより、前記染色体における2つの導入位置間の領域が切り出され、これに代えて、前記核酸を導入することができる。
【0079】
前記ゲノム編集ユニットは、例えば、ZFN(Zinc Finger Nuclease)、TALEN(Transcription Activator‐Like Effector Nuclease)、CRISPR-CASシステム等があげられる。前記CRISPR-CASシステムは、例えば、ガイド鎖およびCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)酵素を含む。前記CRISPR酵素は、例えば、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4等があげられる。前記核酸は、例えば、crRNAおよびtracrRNA、またはこれらがリンカーを介して連結された一本鎖核酸があげられる。この場合、前記核酸は、例えば、crRNAにおける標的配列とアニールする塩基配列を、前記標的配列をコードする塩基配列と相補的な塩基配列に設計する。
【0080】
前記核酸(ドナー核酸)およびゲノム編集ユニットは、例えば、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法等により、対象のトマト植物に導入できる。前記対象のトマト植物は、例えば、植物細胞、カルス、植物組織、および植物個体のいずれでもよい。
【0081】
前記導入工程において、前記発現ベクター、前記人工染色体、または前記核酸を導入する場合、本開示の付与方法は、さらに、前記発現ベクター、前記人工染色体、または前記核酸が導入されたトマト植物を選抜する選抜工程を含んでもよい。この場合、前記選抜は、例えば、導入された発現ベクター、人工染色体、または核酸を検出し、前記発現ベクター、人工染色体、または核酸が検出されたトマト植物を選抜することにより実施できる。
【0082】
<トマト植物のすすかび病抵抗性マーカー>
ある態様において、本開示は、トマト植物におけるすすかび病抵抗性の指標として使用可能なマーカーを提供する。本開示のマーカーは、トマト植物のすすかび病抵抗性マーカーであって、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含む。本開示のマーカーによれば、すすかび病抵抗性の有無を検出できる。
【実施例
【0083】
以下、実施例を用いて本開示を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
新規なすすかび病抵抗性トマト植物について、すすかび病菌に対して抵抗性を示すことを確認した。また、前記すすかび病抵抗性トマト植物における新規なすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の特定を行った。
【0085】
トマト植物において、すすかび病菌(Pseudocercospora fuligena)に抵抗性を持つ植物を選抜するために、すすかび病菌を用いて接種試験を行った。具体的には、すすかび病の接種試験は、以下のように行った。
【0086】
(1)供試植物
すすかび病抵抗性を示す新規トマト植物を開発するために、タキイ種苗株式会社農場で継代育種により採取された大量のトマト系統の種子について、育種を行い、すすかび病抵抗性の試験を行った。具体的には、接種に供試するトマト植物は、TM-1無肥培土(タキイ種苗株式会社)を詰めた200穴セルトレイに播種し、約2週間育苗した。前記育苗後、前記トマト植物は、果菜用培土を詰めた55穴セルトレイに移植した。
【0087】
(2)接種試験
すすかび病菌(Pseudocercospora fuligena)は、岐阜県の農業試験所より譲渡された菌株を使用した。
【0088】
V8寒天培地において、25℃の条件下、14日間培養した。前記培養後、前記培養した菌糸を水に懸濁し、2重ガーゼでろ過し、胞子濃度を1×10胞子/mlに調整した。その後、前記調整した胞子を接種源とし、接種試験に供試した。また、前記供試試験に供試するトマト植物は、前記実施例1(1)で得たトマト植物を用いた。前記接種試験は、実施例1(1)で苗を移植した当日に、前記接種源を噴霧し、前記噴霧後、25℃、12時間日長の条件下で、3週間生育させた。前記生育後に発病調査を行った。
【0089】
発病調査は、発病指数を、倍率100倍の光学顕微鏡で接種葉の発病部位を観察した場合、1視野当たりの胞子形成について、以下の基準にしたがって評価することにより実施した。

発病指数0:胞子形成が見られない。
発病指数1:胞子形成が数個(9個以下)見られる。
発病指数2:胞子形成が10-20個見られる。
発病指数3:胞子形成が21個以上見られる。
【0090】
そして、各個体について、それぞれ、前記基準に従って発病指数を調査し、下記式より、各系統の発病度を求めた。
発病度(N)=[(0×n)+(1×n)+(2×n)+(3×n)]/調査個体数
前記式において、「0、1、2、3、4」は、それぞれ発病指数を示し、「n、n、n、n」は、それぞれ、発病指数0、発病指数1、発病指数2、および発病指数3の個体数を示す。
【0091】
(3)寄託系統の確立
前記接種試験を行った結果、高度なすすかび病抵抗性を示す、新規なすすかび病抵抗性トマト系統を得た。以下、このすすかび病抵抗性トマト植物を親系統という。前記親系統について、雌親として、すすかび病感受性トマト植物「桃太郎ホープ」(タキイ種苗株式会社)と3回戻し交雑した(BC3)。得られたBC3について、前記接種試験を実施し、高度なすすかび病抵抗性を示すトマト系統を得た。得られたトマト系統について、自殖を3回実施した(BC3F3)。得られたすすかび病抵抗性のトマト系統(BC3F3)は、受託番号FERM P-22459で寄託した。以下、前記親系統を、寄託系統ともいう。
【0092】
(4)抵抗性付与するゲノム領域の特定
すすかび病抵抗性を持つ前記寄託系統と、雌親として、すすかび病感受性トマト植物「桃太郎ホープ」(タキイ種苗株式会社)とを交雑して、F1世代を取得した。つぎに、前記F1世代を自殖することにより、F2世代の種子を得た。前記F2世代3000個体から、SNPマーカーにより選抜した。さらに、選抜した前記F2世代の個体について、接種試験を行った。具体的には、接種試験の供試植物に前記F2世代の個体を用いた以外は、前記実施例1(2)の接種試験と同様にして、接種試験を実施した。前記接種試験において、すすかび病菌(Pseudocercospora fuligena)抵抗性の表現型を示した個体を取得した。前記取得により、すすかび病菌(Pseudocercospora fuligena)抵抗性を付与するゲノム領域は、公知の参照配列Heinz1706(SL3.0)を用いた場合において、第1染色体上の678,023bpと1,337,393bpの間の領域(配列番号1)に座乗していることが強く示唆された。
【0093】
つぎに、前記F1世代の個体に、雌親として、「桃太郎ホープ」を4回戻し交雑した。前記交雑後、すすかび病抵抗性ゲノム領域以外の染色体が全て「桃太郎ホープ」に置換した植物体をゲノムワイドに設定したSNPマーカーにより選抜した。前記選抜個体を2回自殖することにより、すすかび病抵抗性ゲノム領域を固定した植物系統Bを作出した。
【0094】
前記植物系統Bについて、単分子シーケンサー(Pacbioシーケンサー)を用いて、全ゲノム解読を行った。前記全ゲノム解読の結果に基づき、de novoアセンブリにより、疑似染色体を構築した。前記類似染色体から得られた配列情報をもとに、9つのSNPマーカーを前述の参考文献6~8に基づき設計し、得られた9つのSNPマーカーを用いて、1144個体から5個体の遺伝的組換えが生じた個体を選抜した。前記選抜後、それぞれを自殖することにより、5系統の自殖系統種子(F3)を取得した。さらに、選抜した前記5系統の個体のF3系統(系統3~7)、前記寄託系統(系統1)および前記すすかび病感受性トマト植物(系統2)について、前述と同様にして接種試験を行った。具体的には、接種試験の供試植物に前記5系統の個体を用いた以外は、前記実施例1(2)の接種試験と同様にして、接種試験を実施した。そして、得られた接種結果に基づき、各系統について、抵抗性のホモな集団、罹病性(感受性)のホモな集団、または抵抗性/罹病性の個体が分離した集団かを評価した。
【0095】
この結果、前記配列番号1の塩基配列のうち、457321~517433番目(参照配列Heinz1706(SL3.0)における第1染色体上の1,133,392bpおよび1,121,649bp)の塩基配列を有するトマト植物については、F3系統の表現型が抵抗性を示すことがわかった。この結果から、前記配列番号1の塩基配列において、457321~517433番目の塩基配列が、トマト植物に、すすかび病抵抗性を付与するのに寄与していることがわかった。
【0096】
次に、系統Aについて、参照配列Heinz1706(SL3.0)における第1染色体上の1,133,392bpおよび1,121,649bpの間の塩基配列(系統A(寄託系統)、配列番号1の塩基配列における457321~517433番目の塩基配列)を、Heinz1706(系統B)、LA1589(系統C、S.pimpinellifolium)、LA2093(系統D、S.pimpinellifolium)、LA0716(系統E、S.penellii)、AJ002235.1(系統F、葉かび病抵抗性遺伝子(Cf-4)を保有:S.habrochaites由来)、およびAJ002236.1(系統G、葉かび病抵抗性遺伝子(Cf-9)を保有:S.pimpinellifolium由来)と比較した。
【0097】
系統A~Gにおいて、配列番号1の塩基配列における457321~517433番目の塩基配列と対応する塩基配列は、各系統間で大きく異なり、寄託系統に由来するすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域の塩基配列(配列番号1)は、新規なすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域であることが確認された。なお、系統Aの配列番号1の塩基配列を、他の系統との対応する塩基配列と比較すると、系統Gが最も塩基配列の相同性が高かった。また、前記寄託系統に由来するすすかび抵抗性遺伝子領域を含む塩基配列(配列番号1)と、系統G(AJ002236.1)の塩基配列とを比較すると、同一性は、46.87%であり、参照配列Heinz1706(SL3.0)における第1染色体上の1,133,392bpおよび1,121,649bp間の塩基配列は、寄託系統およびその他の系統との間で大きく異なった。
【0098】
(5)市販品種のSNPの分析
新規なすすかび病抵抗性トマト植物が有する抵抗性を付与するゲノム領域について、他のトマト植物が有していないことを確認した。
【0099】
下記表1の市販品種を含む各トマト植物について、前記すすかび病抵抗性ゲノム領域に座乗する参照配列Heinz1706(SL3.0)における第1染色体上の1,133,392bpに対応するSNPを用いて、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域が検出できるかの検討を行った。なお、いずれのトマト植物も、すすかび病抵抗性を示さないことを確認している。これらの結果を下記表1に示す。下記表1において、Sは、寄託系統と異なるSNP、すなわち、罹病性のSNPを保有することを示し、Rは、寄託系統と同じSNP、すなわち、抵抗性のSNPを保有することを示す。下記表1に示すように、各トマト植物はいずれも寄託系統とは異なる遺伝子型を有しており、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域特異的なSNPを設計でき、且つそれを用いて、すすかび病抵抗性を評価できることがわかった。
【0100】
【表1】
【0101】
以上のことから、寄託系統を第1の親とし、すすかび病抵抗性を持たないトマト植物を第2の親として交配することによって、すすかび病菌(Pseudocercospora fuligena)抵抗性をもつトマト植物を得ることができることがわかった。さらに、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域特異的なSNPを検出するプライマーセットまたはプローブを用いること、および/またはすすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含む配列を検出して選抜することで、本開示のすすかび病抵抗性トマト植物を選抜できることがわかった。
【0102】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0103】
<付記>
<すすかび病抵抗性トマト植物>
(付記1)
すすかび病抵抗性を有する、トマト植物。
(付記2)
すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを含む、付記1に記載のトマト植物:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記3)
前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを含み、
前記トマト植物は、前記ポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドにより、前記すすかび病抵抗性を付与される、付記2に記載のトマト植物。
(付記4)
前記すすかび病抵抗性トマト植物は、受託番号FERM P-22459で特定されるトマト植物の種子から得られるトマト植物またはその後代系統である、付記1から3のいずれかに記載のトマト植物。
<すすかび病抵抗性トマト植物の部分>
(付記5)
付記1から4のいずれかに記載のすすかび病抵抗性トマト植物の部分。
(付記6)
前記植物の部分が、種子である、付記5に記載の植物の部分。
<すすかび病抵抗性トマト植物の生産方法>
(付記7)
下記(a)および(b)工程を含むことを特徴とする、すすかび病抵抗性トマト植物の生産方法:
(a)付記1から4のいずれかに記載のすすかび病抵抗性トマト植物と、他のトマト植物とを交雑する工程;
(b)前記(a)工程より得られたトマト植物またはその後代系統から、すすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程。
(付記8)
前記(a)工程に先立って、下記(x)工程を含む、付記7に記載の生産方法。
(x)被検トマト植物から、付記1から4のいずれかに記載のすすかび病抵抗性トマト植物を選抜する工程
(付記9)
前記(x)工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性トマト植物を選抜する、付記8に記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記10)
前記(x)工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性の候補トマト植物を選抜し、
前記候補トマト植物またはその後代系統に対して、すすかび病菌の接種試験を行い、すすかび病抵抗性を示すトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する、付記8または9に記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記11)
前記(x)工程に先立ち、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列と、トマト植物における対応する領域の参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列を特異的に検出可能な分子マーカーを設計する工程を含む、付記9または10に記載の生産方法。
(付記12)
前記(x)工程における選抜が、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを含む、すすかび病抵抗性トマト植物の選抜である、付記8から11のいずれかに記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド。
(付記13)
前記(b)工程における前記選抜が、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性トマト植物の選抜である、付記7から12のいずれかに記載の生産方法。
(付記14)
前記(b)工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性トマト植物を選抜する、付記7から13のいずれかに記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記15)
前記(b)工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性の候補トマト植物を選抜し、
前記候補トマト植物またはその後代系統に対して、すすかび病菌の接種試験を行い、すすかび病抵抗性を示すトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する、付記7から14のいずれかに記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記16)
前記(b)工程に先立ち、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列と、トマト植物における対応する領域の参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列を特異的に検出可能な分子マーカーを設計する工程を含む、付記14または15に記載の生産方法。
(付記17)
前記(b)工程における選抜が、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを含む、すすかび病抵抗性トマト植物の選抜である、付記7から16のいずれかに記載の生産方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を発現させるポリヌクレオチド。
<トマト植物へのすすかび病抵抗性の付与方法>
(付記18)
すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を、トマト植物に導入する導入工程を含むことを特徴とする、トマト植物へのすすかび病抵抗性の付与方法。
(付記19)
付記1から4のいずれかに記載のすすかび病抵抗性トマト植物と交雑することにより、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、付記2または3に記載のポリヌクレオチドを導入する、付記18に記載の付与方法。
<すすかび病抵抗性の検出方法>
(付記20)
トマト植物のすすかび病抵抗性の検出方法であって、
被検トマト植物について、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する検出工程を含む、方法。
(付記21)
前記検出工程において、前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する、付記20に記載の方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記22)
前記検出工程に先立ち、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列と、トマト植物における対応する領域の参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列を特異的に検出可能な分子マーカーを設計する工程を含み、
前記検出工程において、前記被検トマト植物について、前記分子マーカーを検出することにより、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する、付記21に記載の方法。
(付記23)
前記検出工程において、前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを含む、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する、付記20から22のいずれかに記載の方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記24)
前記検出工程において、前記被検トマト植物の第1染色体について、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出する、付記20から23のいずれかに記載の方法。
<すすかび病抵抗性トマト植物のスクリーニング方法>
(付記25)
すすかび病抵抗性トマト植物のスクリーニング方法であって、
被検トマト植物から、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むトマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する選抜工程を含む、スクリーニング方法。
(付記26)
前記選抜工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性トマト植物を選抜する、付記25に記載のスクリーニング方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記27)
前記選抜工程において、
前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列を含むポリヌクレオチドを特異的に検出可能な分子マーカーを検出することにより、すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を検出し、
前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含むすすかび病抵抗性の候補トマト植物を選抜し、
前記候補トマト植物またはその後代系統に対して、すすかび病菌の接種試験を行い、すすかび病抵抗性を示す候補トマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する、付記25または26に記載のスクリーニング方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記28)
前記選抜工程に先立ち、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列と、トマト植物における対応する領域の参照配列とを用いて、前記(G)のポリヌクレオチドまたはその部分配列の塩基配列を特異的に検出可能な分子マーカーを設計する工程を含む、付記26または27に記載のスクリーニング方法。
(付記29)
前記選抜工程において、前記被検トマト植物について、下記(G)のポリヌクレオチドを含む、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を有する被検トマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する、付記25から28のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(G)下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチド:
(G1)配列番号1の457321~517433番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
(付記30)
前記選抜工程において、前記被検トマト植物の第1染色体について、前記すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域を含む被検トマト植物を、すすかび病抵抗性トマト植物として選抜する、付記25から29のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本開示によれば、すすかび病に対して抵抗性を示すトマト植物を提供できる。このため、本開示は、例えば、農業分野、育種分野等において極めて有用である。
【要約】      (修正有)
【課題】すすかび病抵抗性を示すトマト植物を提供する。
【解決手段】すすかび病抵抗性を付与するゲノム領域として、下記(G1)、(G2)、または(G3)のポリヌクレオチドまたはその部分配列からなるポリヌクレオチドを含むトマト植物を提供する。
(G1)特定の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(G2)前記(G1)の塩基配列において、1~6011個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド;
(G3)前記(G1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、すすかび病抵抗性を付与するポリヌクレオチド。
【選択図】なし
【配列表】
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