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特許7357782複合材料およびその調製方法、負極材料およびリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】複合材料およびその調製方法、負極材料およびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20230929BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20230929BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230929BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230929BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
C01B33/32
H01M4/36 C
H01M4/58
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022521743
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2021119524
(87)【国際公開番号】W WO2022217835
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】202110401884.1
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(73)【特許権者】
【識別番号】521078089
【氏名又は名称】ディンユアン ニュー エナジー テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダン,ツィーチアン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】パン,チュンレイ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエキン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110444750(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109599551(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112018367(CN,A)
【文献】特開2020-155225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00 - 25/46
C01B 33/00 - 33/991
H01M 4/36
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造を有し、
前記コアシェル構造が、コアと、前記コアの少なくとも一部の表面に形成された疎水被覆層とを含み、
前記コアが、リチウム含有ケイ素酸化物を含み、
前記疎水被覆層が、化合物Mと化合物Nとを含み、前記化合物Mの化学式がLiSiOであり、前記化合物Nの化学式がLiSiOであり、ただし、0<a≦5、0<b≦5、0<c≦5、0<d≦5、0<e≦5、0<f≦5を満たし、Xが金属元素であり、Yが非金属元素である
ことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
a.前記コアの直径φが、0μm<φ≦500μmを満たすこと、
b.前記リチウム含有ケイ素酸化物が、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とケイ素とを含む化合物とリチウムとの複合物のうちの少なくとも1種を含み、
前記ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物が、LiSiO、LiSi、LiSiO、LiSiおよびLiSi11のうちの少なくとも1種を含むこと、
c.前記疎水被覆層の厚さが、2nm~500nmであること、
d.前記疎水被覆層が、前記複合材料の0.1wt%~10wt%を占めること、
e.前記疎水被覆層において、前記化合物Mと前記化合物Nの質量比が、(1~100):(1~100)であること、
f.前記金属元素が、バナジウム、ゲルマニウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ランタン、マグネシウム、ベリリウム、アンチモン、銀、カルシウム、銅およびチタンのうちの少なくとも1種を含むこと、
g.前記非金属元素が、リン、ホウ素、窒素および硫黄のうちの少なくとも1種を含むこと、
の特徴a~gの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
a.前記複合材料が、前記疎水被覆層の表面に形成される外部導電層をさらに含み、前記外部導電層が炭素材料を含むこと、
b.前記複合材料が、前記疎水被覆層の表面に形成される外部導電層をさらに含み、前記外部導電層の厚さが、50nm~2000nmであること、
c.前記複合材料が、前記疎水被覆層の表面に形成される外部導電層をさらに含み、前記外部導電層が、前記複合材料の0.1wt%~10wt%を占めること、
の特徴a~cの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
ケイ素酸化物とリチウム源とを含む混合物を保護雰囲気または真空環境下で焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得るステップと、
前記リチウム含有ケイ素酸化物、X源およびY源を含む原料を混合して、焼結し、複合材料を得るステップとを含み、
Xが金属元素であり、Yが非金属元素である
ことを特徴とする複合材料の調製方法。
【請求項5】
a.前記ケイ素酸化物の化学式がSiOであり、0<x<2を満たすこと、
b.前記リチウム源が、水素化リチウム、アルキルリチウム、金属リチウム、水素化アルミニウムリチウム、リチウムアミドおよび水素化ホウ素リチウムのうちの少なくとも1種を含むこと、
c.前記ケイ素酸化物と前記リチウム源のモル比が、(0.5~5):1であること、
d.前記焼成が保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気が、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスおよび窒素ガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記焼成の温度が、500℃~1000℃であり、前記焼成の時間が2h~10hであること、
f.前記リチウム含有ケイ素酸化物が、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とケイ素とを含む化合物とリチウムとの複合物のうちの少なくとも1種を含み、
前記ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物が、LiSiO、LiSi、LiSiO、LiSiおよびLiSi11のうちの少なくとも1種を含むこと、
の特徴a~fの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の複合材料の調製方法。
【請求項6】
a.前記X源が、X含有酸化物およびX含有塩類化合物のうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記Y源が、Y含有酸化物およびY含有塩類化合物のうちの少なくとも1種を含むこと、
c.前記リチウム含有ケイ素酸化物と前記X源と前記Y源のモル比が、1:(0.001~0.1):(0.001~0.1)であること、
d.前記焼結の温度が、300℃~800℃であり、前記焼結の時間が、2h~6hであること、
の特徴a~dの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項4に記載の複合材料の調製方法。
【請求項7】
a.前記複合材料の調製方法が、前記焼結により得た複合材料に対して炭素被覆を行い、外部導電層を形成するステップをさらに含むこと、
b.前記複合材料の調製方法が、前記焼結により得た複合材料に対して炭素被覆を行い、外部導電層を形成するステップをさらに含み、前記外部導電層の厚さが、50nm~2000nmであること、
c.前記複合材料の調製方法が、前記焼結により得た複合材料に対して炭素被覆を行い、外部導電層を形成するステップをさらに含み、前記炭素被覆の方法が、保護性雰囲気または真空環境下で、前記焼結により得た複合材料と有機炭素源とを含む原料を混合して熱処理を行うことを含むこと、
の特徴a~cの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項6に記載の複合材料の調製方法。
【請求項8】
a.前記有機炭素源が、炭化水素類、樹脂類、ゴム類、糖類、有機酸およびピッチのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記熱処理の温度が600℃~1000℃であり、前記熱処理の時間が0.5h~10hであること、
c.前記外部導電層と前記焼結により得た複合材料の質量比が、1:(1~1000)であること、
の特徴a~cの少なくとも1つを有する
ことを特徴とする請求項7に記載の複合材料の調製方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料または請求項4~8のいずれか1項に記載の調製方法で調製できた複合材料を含む
ことを特徴とする負極材料。
【請求項10】
請求項9に記載の負極材料を含む
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年04月14に中国専利局に提出された、出願番号が2021104018841であり、名称が「複合材料およびその調製方法、負極材料、負極片およびリチウムイオン電池」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【0002】
本出願は、電池の技術分野に属し、殊に、複合材料およびその調製方法、負極材料およびリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池の応用の拡大および深化に伴い、リチウムイオン電池の性能に対する要求もますます多くなっており、特に電池のエネルギー密度の面で、従来のグラファイト負極材料ではますます高くなる市場の要求を満たすことができなくなる。比容量の高い負極材料として、ケイ素酸素材料は、最近注目されている。ケイ素酸素負極材料は、比容量が2000mAh/gを超えるが、グラファイト材料に対して、初回クーロン効率が低く、導電性能、サイクル性能およびレート性能が劣るなどのため、実際の応用が制限されている。
【0004】
ケイ素酸素材料の性能を改善するため、企業、大学などの関係機構が多くの方法を開発する。例えば、ケイ素酸素材料にリチウム元素をドープする方法が挙げられ、リチウムのドーピングにより、ケイ素酸素材料の初回クーロン効率を著しく向上させることができるが、リチウムがドープされたケイ素酸素材料は、アルカリ性が高いため、水性スラリーを調製するときに、スラリーが不安定になりやすく、ガスの生成および沈殿が生じやすく、この場合電池の作製が影響され、そして、作製できたリチウム含有ケイ素酸素材料の電子導電性能が劣り、初回クーロン効率およびレート性能が低い。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、複合材料およびその調製方法、負極材料およびリチウムイオン電池を提供する。この複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高いため、該複合材料により作製された負極材料およびリチウムイオン電池の性能が優れる。
【0006】
第1局面において、本出願は、複合材料を提供する。該複合材料は、コアシェル構造を有し、
前記コアシェル構造が、コアと、前記コアの少なくとも一部の表面に形成された疎水被覆層とを含み、
前記コアが、リチウム含有ケイ素酸化物を含み、
前記疎水被覆層が、化合物Mと化合物Nとを含み、前記化合物Mの化学式がLiSiOであり、前記化合物Nの化学式がLiSiOであり、ただし、0<a≦5、0<b≦5、0<c≦5、0<d≦5、0<e≦5、0<f≦5を満たし、Xが金属元素であり、Yが非金属元素である。
【0007】
上記の案において、複合材料は、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコアと、該コアを部分的または完全に被覆する疎水被覆層とを有し、疎水被覆層は、化学式がLiSiOである化合物Mと化学式がLiSiOである化合物Nとを含み、化合物Mが材料の導電性を向上させることができ、化合物Nと化合物Mとの化学的作用により、即ち、化合物Nと化合物Mとが化合物分子間電荷のクーロン引力による吸着または両方の間の強固な化学結合による緊密な接続により、疎水被覆層を安定かつ完全に保ち、安定かつ完全な被覆層によれば、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコアをより効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を確保し、複合材料のサイクル過程での膨張をより効果的に緩和することができ、これによって、複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
【0008】
1種の実施形態において、前記複合材料は、
a.前記コアの直径φが、0μm<φ≦500μmを満たすこと、
b.前記リチウム含有ケイ素酸化物が、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とケイ素とを含む化合物とリチウムとの複合物のうちの少なくとも1種を含み、
前記ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物が、LiSiO、LiSi、LiSiO、LiSiおよびLiSi11のうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記疎水被覆層の厚さが、2nm~500nmであること、
f.前記疎水被覆層が、前記複合材料の0.1wt%~10wt%を占めること、
g.前記疎水被覆層において、前記化合物Mと前記化合物Nの質量比が、(1~100):(1~100)であること、
h.前記金属元素が、バナジウム、ゲルマニウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ランタン、マグネシウム、ベリリウム、アンチモン、銀、カルシウム、銅およびチタンのうちの少なくとも1種を含むこと、
i.前記非金属元素が、リン、ホウ素、窒素および硫黄のうちの少なくとも1種を含むこと、
の特徴a~iの少なくとも1つを有する。
【0009】
上記の案において、複合材料におけるコアと疎水被覆層のパラメータを制御することによれば、得られる複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
【0010】
1種の実施形態において、前記複合材料は、
a.前記複合材料が、前記疎水被覆層の表面に形成される外部導電層をさらに含み、前記外部導電層が炭素材料を含むこと、
b.前記複合材料が、前記疎水被覆層の表面に形成される外部導電層をさらに含み、前記外部導電層の厚さが、50nm~2000nmであること、
c.前記複合材料が、前記疎水被覆層の表面に形成される外部導電層をさらに含み、前記外部導電層が、前記複合材料の0.1wt%~10wt%を占めること、
の特徴a~cの少なくとも1つを有する。
【0011】
上記の案において、疎水被覆層に外部導電層を調製することによれば、複合材料の導電性能を向上させることができる。
【0012】
第2局面において、本出願は、複合材料の調製方法を提供する。前記調製方法は、
ケイ素酸化物とリチウム源とを含む混合物を保護雰囲気または真空環境下で焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得るステップと、
前記リチウム含有ケイ素酸化物、X源およびY源を含む原料を混合して、焼結し、複合材料を得るステップとを含み、
Xが金属元素であり、Yが非金属元素である。
【0013】
上記の案において、リチウム含有ケイ素酸化物をX源およびY源と反応させることによれば、リチウム含有ケイ素酸化物の表面にその場で安定した疎水被覆層を形成し、したがって、得られる複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
【0014】
1種の実施形態において、前記調製方法は、
a.前記ケイ素酸化物の化学式がSiOであり、0<x<2を満たすこと、
b.前記リチウム源が、水素化リチウム、アルキルリチウム、金属リチウム、水素化アルミニウムリチウム、リチウムアミドおよび水素化ホウ素リチウムのうちの少なくとも1種を含むこと、
c.前記ケイ素酸化物と前記リチウム源のモル比が、(0.5~5):1であること、
d.前記焼成が保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気が、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスおよび窒素ガスのうちの少なくとも1種を含むこと、
e.前記焼成の温度が、500℃~1000℃であり、前記焼成の時間が2h~10hであること、
f.前記リチウム含有ケイ素酸化物が、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とケイ素とを含む化合物とリチウムとの複合物のうちの少なくとも1種を含み、
前記ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物が、LiSiO、LiSi、LiSiO、LiSiおよびLiSi11のうちの少なくとも1種を含むこと、
の特徴a~fの少なくとも1つを有する。
【0015】
1種の実施形態において、前記リチウム含有ケイ素酸化物は、
a.前記X源が、X含有酸化物およびX含有塩類化合物のうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記Y源が、Y含有酸化物およびY含有塩類化合物のうちの少なくとも1種を含むこと、
c.前記リチウム含有ケイ素酸化物と前記X源と前記Y源のモル比が、1:(0.001~0.1):(0.001~0.1)であること、
d.前記焼結の温度が、300℃~800℃であり、前記焼結の時間が、2h~6hであること、
の特徴a~dの少なくとも1つを有する。
【0016】
1種の実施形態において、前記調製方法は、
a.前記複合材料の調製方法が、前記焼成物に対して炭素被覆を行い、外部導電層を形成するステップをさらに含むこと、
b.前記複合材料の調製方法が、前記焼成物に対して炭素被覆を行い、外部導電層を形成するステップをさらに含み、前記外部導電層の厚さが、50nm~2000nmであること、
c.前記複合材料の調製方法が、前記焼成物に対して炭素被覆を行い、外部導電層を形成するステップをさらに含み、前記炭素被覆の方法が、保護性雰囲気または真空環境下で、前記焼成物と有機炭素源とを含む原料を混合して熱処理を行うことを含むこと、
の特徴a~cの少なくとも1つを有する。
【0017】
1種の実施形態において、前記調製方法は、
a.前記有機炭素源が、炭化水素類、樹脂類、ゴム類、糖類、有機酸およびピッチのうちの少なくとも1種を含むこと、
b.前記熱処理の温度が600℃~1000℃であり、前記熱処理の時間が0.5h~10hであること、
c.前記外部導電層と前記焼成物の質量比が、1:(1~1000)であること、
の特徴a~cの少なくとも1つを有する。
【0018】
第3局面において、本出願は、上記の複合材料または上記の調製方法で調製できた複合材料を含む負極材料を提供する。
【0019】
第4局面において、本出願は、上記の負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0020】
本出願は、下記の有益効果を有する。
(1)本出願に係る複合材料は、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコアと、該コアを部分的または完全に被覆する疎水被覆層とを含み、該疎水被覆層が、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコアを効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を効果的に向上させ、複合材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和することができ、これによって、複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
(2)本出願において、リチウム含有ケイ素酸化物を、金属含有酸化物および金属含有塩類化合物のうちの少なくとも1種、および非金属含有酸化物および塩類化合物のうちの少なくとも1種と反応させ、リチウム含有ケイ素酸化物の表面にその場で安定した疎水被覆層を生成し、該疎水被覆層が、化学式がLiSiOである化合物Mと化学式がLiSiOである化合物Nとを含み、化合物Mが材料の導電性を向上させることができ、化合物Nと化合物Mとの化学的作用により、即ち、化合物Nと化合物Mとが化合物分子間電荷のクーロン引力による吸着または両方の間の強固な化学結合による緊密な接続により、疎水被覆層を安定かつ完全に保ち、安定かつ完全の被覆層によれば、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコアをより効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を確保し、複合材料のサイクル過程での膨張をより効果的に緩和することができ、これによって、複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
【0021】
また、本出願に係る調製方法は、簡単で、グリーンで汚染がなく、量産に適し、市場の応用可能性が期待されている。
【0022】
本出願における実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願の一部の実施例を示すものにすぎず、本出願の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本出願に係る複合材料の模式的構成図である。
図2】本出願に係る複合材料の調製方法の模式的フローチャートである。
図3】実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のそれぞれにより得た複合材料で組み立てた電池の、異なる電流密度下のサイクル性能を示すグラフである。
図4】実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のそれぞれにより得た複合材料で組み立てた電池の異なるレート性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願を簡単にするため、以下、実施例を利用して本出願の技術案を詳細に説明する。下記の説明において、本出願を十分理解するように多くの細部を説明する。
【0025】
本出願は、ここでの説明と異なる他の多くの方式で実施されることが可能であり、当業者が本出願の主旨を逸脱しない限り類似の改良を行うことができるので、本出願が以下で開示された具体的な実施形態に限定されない。
【0026】
特に断りがない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本出願が属する分野の一般技術者の通常の理解と同様の意味を有する。矛盾があった場合、本明細書での定義に準ずる。
【0027】
例えば、本明細書で使用される用語は以下のように理解される。
【0028】
「……により調製される」は、「含んでなる」と同じ意味を有する。本明細書に使用される用語の「含んでなる」、「含む」、「有する」、「含有」、またはそれらの他の任意のバリエーションは、非排除的包含を意味する。例えば、挙げられた要素を含む組成物、ステップ、方法、製品または装置は、これらの要素だけでなく、明確に挙げられていない他の要素またはこれらの組成物、ステップ、方法、製品または装置における固有の要素を含んでもよい。
【0029】
フレーズの「からなる」は、指定されていない要素、ステップまたは組成を排除するものである。当該フレーズは、請求項に使用される場合、請求項が閉鎖式のものになり、関係する一般不純物を除き、説明した材料以外の材料を含まないと意味している。フレーズの「からなる」は、請求項主題に使うのではなく請求項内容の一節に使われた場合、当該節に説明した要素だけを限定するものとなり、その他の要素が請求項全体から排除するものにならない。
【0030】
量、濃度、又はその他の値やパラメータは、範囲、好ましい範囲、又は一連の好ましい上限値および下限値で限定される範囲により表される場合、単独の開示があるか否かにも関わらず、任意の範囲の上限又は好ましい値と任意の範囲の下限または好ましい値とにより任意に組み合わせたすべての範囲が具体的に開示されたと理解すべきである。例えば、「1~5」という範囲が開示された場合、説明する範囲が「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2と4~5」、「1~3と5」などの範囲を含むと解釈される。本明細書で説明される数値範囲は、特に断りがない限り、臨界値および該範囲にあるすべての整数と分数を含む。
【0031】
これらの実施例において、特に断りがない限り、部およびパーセントは、質量で計算するものである。
【0032】
「質量部」は、複数の成分の質量比率関係を表す基本的な的計量単位であり、1部が任意の単位質量を表すことができ、例えば、1gを表してもよく、2.689gなどを表してもよい。A成分の質量部がa部であり、B成分の質量部がb部である場合、A成分の質量とB成分の質量の比がa:bであることを表し、または、A成分の質量がaKであり、B成分の質量がbKであることを表す(Kが任意の数字であり、倍数因子を表すものである)。なお、質量%とは異なり、すべての成分の質量部の合計が100部とは限らない。
【0033】
「および/または」は、記載された状況のうちの少なくとも一方が発生することを表すものである。例えば、Aおよび/またはBは、「AおよびB」および「AまたはB」を含む。
【0034】
本出願は、複合材料を提供し、該複合材料が、コアシェル構造を有し、コアシェル構造がコア1と疎水被覆層2とからなり、コア1が少なくとも1種のリチウム含有ケイ素酸化物を含み、疎水被覆層2がコア1材料を被覆するものである。
【0035】
上記の案において、複合材料は、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1と、該コア1を部分的または完全に被覆する疎水被覆層2とを有し、該疎水被覆層2が、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1を効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を効果的に向上させ、複合材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和することができ、これによって、複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
【0036】
第1局面において、本出願は、複合材料を提供する。図1は、本出願に係る複合材料の模式的構成図である。図1に示すように、複合材料は、コアシェル構造を有し、コアシェル構造が、コア1と、コア1の少なくとも一部の表面に形成された疎水被覆層2とを有し、
コア1が、リチウム含有ケイ素酸化物を含み、疎水被覆層2が、化合物Mと化合物Nとを含み、化合物Mの化学式がLiSiOであり、化合物Nの化学式がLiSiOであり、ただし、0<a≦5、0<b≦5、0<c≦5、0<d≦5、0<e≦5、0<f≦5を満たし、Xが金属元素であり、Yが非金属元素である。
【0037】
上記の案において、複合材料は、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1と、該コア1を部分的または完全に被覆する疎水被覆層2とを有し、該疎水被覆層2が、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1を効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を向上させ、複合材料のサイクル過程での膨張を緩和することができる。上記の疎水被覆層2は、化学式がLiSiOである化合物Mと化学式がLiSiOである化合物Nとを含み、化合物Mが材料の導電性を向上させることができ、化合物Nが化合物Mとの化学的作用により、即ち、化合物Nと化合物Mとが化合物分子間電荷のクーロン引力による吸着または両方の間の強固な化学結合による緊密な接続により、疎水被覆層2を安定かつ完全に保ち、安定かつ完全な被覆層によれば、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1をより効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を確保し、複合材料のサイクル過程での膨張をより効果的に緩和することができ、これによって、複合材料は、電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高い。
【0038】
いくつかの実施形態において、リチウム含有ケイ素酸化物は、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物、ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とリチウムとを含む化合物とケイ素との複合物、酸素とケイ素とを含む化合物とリチウムとの複合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0039】
前記ケイ素と酸素とリチウムとを含む化合物は、LiSiO、LiSi5、LiSiO、LiSi、LiSi11のうちの少なくとも1種を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、疎水被覆層2において、化合物Mと化合物Nの質量比は、(1~100):(1~100)である。
【0041】
具体的に、疎水被覆層2において、化合物Mと化合物Nの質量比は、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、5:1、3:1、1:1、1:3、1:5、1:8、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100などであってもよく、ここで限定されない。
【0042】
なお、上記の疎水被覆層2において、化合物Mと化合物Nの質量比を上記の範囲(すなわち、(1~100):(1~100))内に収める必要があり、上記の範囲よりも高い場合、疎水被覆層2の強度が低下し、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1を効果的に保護できず、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を向上させることができず、複合材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和できず、したがって、複合材料の電子導電性能、初回クーロン効率、サイクル安定性能およびレート性能が非常に悪くなる。上記の範囲よりも低い場合、得られる複合材料の導電能力が低下する。好ましくは、化合物Mと化合物Nの質量比は、(5~50):(5~50)であり、この範囲内の値であれば、疎水被覆層2の強度が高く、リチウム含有ケイ素酸化物を含むコア1を効果的に保護し、リチウム含有ケイ素酸素材料のスラリー安定性を向上させ、複合材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和することができ、これによって、複合材料の電子導電性能、初回クーロン効率、サイクル安定性能およびレート性能が優れる。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記の金属元素は、バナジウム、ゲルマニウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ランタン、マグネシウム、ベリリウム、アンチモン、銀、カルシウム、銅およびチタンのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。上記の非金属元素は、リン、ホウ素、窒素および硫黄のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態において、コア1の直径は、0超かつ500μm以下である。任意選択で、コア1の直径は、具体的に、1μm、5μm、10μm、20μm、50μm、80μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μmなどであってもよいが、ここで限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態において、コア1の直径は、2μm~200μmであってもよい。コア1の直径を200μm以下にすれば、複合材料のサイクル性能を向上させることができ、コア1の直径を2μm以上にすれば、複合材料の初回クーロン効率を向上させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、疎水被覆層2の厚さは、2nm以上かつ500nm以下である。任意選択で、疎水被覆層2の厚さは、具体的に、2nm、5nm、10nm、20nm、50nm、80nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nmなどである。
【0047】
いくつかの実施形態において、疎水被覆層2の厚さは、5nm~200nmであってもよい。疎水被覆層2の厚さを5nm以上にすれば、コア1に対してより良い保護作用を奏し、疎水被覆層2の厚さを200nm以下にすれば、得られる複合材料の電子導電性能が優れる。
【0048】
いくつかの実施形態において、疎水被覆層2は、前記複合材料の0.1wt%~10wt%を占める。前記複合材料において、疎水被覆層2の質量分率は、具体的に、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、3wt%、5wt%、8wt%、10wt%などであってもよいが、ここで限定されない。
【0049】
いくつかの実施形態において、複合材料は、疎水被覆層2の表面に形成される外部導電層3をさらに含み、外部導電層3が炭素材料を含む。なお、外部導電層3は、炭素材料を含むが、これに限定されず、炭素材料と他の導電材料との複合物であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、外部導電層3の厚さは、50nm超かつ2000nm以下である。任意選択で、外部導電層3の厚さは、具体的に、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nm、1600nm、1700nm、1800nm、1900nm、2000nmなどであってもよいが、ここで限定されない。この場合、複合材料の導電性能が保証され、複合材料の導電性能が、疎水被覆層2の存在で劣化することはない。外部導電層3の厚さを50nm以上にすれば、得られる複合材料の電子導電性能が優れ、外部導電層3の厚さを2000nm以下にすれば、得られる複合材料の容量が高い。好ましくは、外部導電層3の厚さは、80nm~1000nmである。
【0051】
いくつかの実施形態において、外部導電層3は、複合材料の0.1wt%~10wt%を占める。任意選択で、複合材料において、外部導電層3の質量分率は、具体的に、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、3wt%、5wt%、8wt%、10wt%などであってもよいが、ここで限定されない。
【0052】
第2局面において、本出願は、上記の複合材料の調製方法をさらに提供する。図2は、本出願に係る複合材料の調製方法の模式的フローチャートである。図2に示すように、調製方法は、ステップS100~S300を含む。
【0053】
ステップS100は、ケイ素酸化物とリチウム源とを含む混合物を保護雰囲気または真空環境下で焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得る。ケイ素酸化物の化学式は、SiOであり、0<x≦2を満たす。
【0054】
いくつかの実施形態において、リチウム源は、水素化リチウム、アルキルリチウム、金属リチウム、水素化アルミニウムリチウム、リチウムアミドおよび水素化ホウ素リチウムのうちの1種を含むが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物とリチウム源のモル比は、(0.5~5):1である。任意選択で、ケイ素酸化物とリチウム源のモル比は、具体的に、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1などであってもよいが、ここで限定されない。ケイ素酸化物とリチウム源のモル比が上記の範囲よりも高くなる場合、得られる複合材料の初回放電比容量およびサイクル安定性能が劣る。ケイ素酸化物とリチウム源のモル比が上記の範囲よりも低くなる場合、得られる複合材料の初回クーロン効率が低い。
【0056】
いくつかの実施形態において、リチウム含有ケイ素酸化物の調製過程において、焼成が保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気が、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスおよび窒素ガスのうちの少なくとも1種を含み、焼成の温度が、500℃~1000℃であり、焼成の時間が、2h~10hである。
【0057】
任意選択で、焼成の温度は、具体的に、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃などである。焼成の時間は、具体的に、2h~10hであり、例えば、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h、10hなどであってもよく、ここで限定されない。焼成温度を500℃以上にし、焼成時間を2h以上にすれば、完全に焼成され、調製された複合材料は、構造が完全である。焼成温度を1000℃以下にし、焼成時間を10h以下にすれば、塊に焼結することがなく、複合材料の性能を向上させることができる。
【0058】
なお、ステップS100を省略してもよく、直接要求を満たすリチウム含有ケイ素酸化物を利用することもできる。
【0059】
ステップS200は、上記のリチウム含有ケイ素酸化物、X源およびY源を含む原料を混合して、焼結し、複合材料を得、Xが金属元素であり、Yが非金属元素である。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記のX源は、X含有酸化物およびX含有塩類化合物のうちの少なくとも1種を含み、例えば、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、酸化銅、硫酸銅、酸化ベリリウム、塩化ベリリウム、酸化スズ、硫酸スズ、酸化ランタン、塩化ランタン、酸化チタンおよび塩化チタンのうちの少なくとも1種を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記のY源は、Y含有酸化物およびY含有塩類化合物のうちの少なくとも1種を含み、例えば、五酸化二リン、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、硫酸リチウムおよび三酸化硫黄のうちの少なくとも1種を含む。
【0062】
上記の案において、リチウム含有ケイ素酸化物を、金属含有酸化物および金属含有塩類化合物のうちの少なくとも1種、および、非金属含有酸化物および非金属含有塩類化合物のうちの少なくとも1種と反応させ、リチウム含有ケイ素酸化物の表面にその場で安定した疎水被覆層2を生成する。
【0063】
いくつかの実施形態において、リチウム含有ケイ素酸化物とX源とY源のモル比は、1:(0.001~0.1):(0.001~0.1)である。
【0064】
任意選択で、上記のリチウム含有ケイ素酸化物とX源とY源のモル比は、具体的に、1:0.001:0.001、1:0.003:0.005、1:0.005:0.01、1:0.01:0.006、1:0.008:0.003、1:0.005:0.001、1:0.01:0.01、1:0.03:0.05、1:0.05:0.08、1:0.1:0.05、1:0.07:0.03、1:0.05:0.01、1:0.1:0.1などであってもよいが、ここで限定されない。
【0065】
いくつかの実施形態において、リチウム含有ケイ素酸化物とX源とY源のモル比は、具体的に、1:(0.005~0.08):(0.005~0.08)である。原料において、X源およびY源の占める割合が高すぎる場合、最終に得られる複合材料の初回クーロン効率およびサイクル安定性能が影響され、得られる複合材料の初回クーロン効率およびサイクル安定性能が劣る。原料において、X源とY源の占める割合が低すぎる場合、コア1を効果的に保護できない。
【0066】
いくつかの実施形態において、焼結の温度は、300℃~800℃であり、焼結の時間は、2h~6hである。任意選択で、焼結の温度は、具体的に、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃などであってもよく、焼結の時間は、具体的に、2h、3h、4h、5h、6hなどであってもよいが、ここで限定されない。この焼結処理の温度および焼結時間を採用すれば、調製できた複合材料の性能が優れる。焼結の温度を800℃以下にし、焼結の時間を6h以下にすれば、焼結プロセスを制御しやすく、得られる複合材料の形状や寸法の変化が小さい。焼結の温度を300℃以上にし、焼結の時間を2h以上にすれば、所望の性能要求を満たす複合材料を調製することができる。
【0067】
ステップS300は、上記の複合材料に対して炭素被覆を行い、複合材料の表面に外部導電層3を形成する。
【0068】
いくつかの実施形態において、本出願における炭素被覆の方法は、保護性雰囲気または真空環境下で、焼成物と有機炭素源とを含む原料を混合して熱処理を行うことを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記の炭素被覆の方法は、保護性雰囲気または真空環境下で、上記の焼成物と有機炭素源とを含む原料を混合して熱処理を行うことを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記の炭素被覆は、気相炭素被覆および/または固相炭素被覆が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本出願における炭素被覆は、気相炭素被覆の方式を採用し、具体的に、上記の焼成物を保護性雰囲気下で600℃~1000℃まで昇温させ、有機炭素源ガスを導入し、0.5h~10h保温したあと、冷却することを含む。該有機炭素源ガスとして、炭化水素類(例えば、アルカン、ナフテン炭化水素、オレフィン、アルキンおよび芳香族炭化水素など)を選択してもよく、具体的に、例えば、メタン、エチレン、アセチレンおよびベンゼンのうちの少なくとも1種を選択する。
【0072】
いくつかの実施形態において、気相炭素被覆の方式において、熱処理の温度は、具体的に、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃などであってもよく、熱処理の保温時間は、具体的に、0.5h、1.5h、2.5h、3.5h、4.5h、5.5h、6.5h、7.5h、8.5h、9.5h、10hなどであってもよいが、ここで限定されない。好ましくは、熱処理の温度は、700~900℃であり、熱処理の保温時間は、3~9hである。
【0073】
いくつかの実施形態において、本出願における炭素被覆は、固相炭素被覆の方式を採用し、すなわち、保護性雰囲気または真空環境下で、焼成物と有機炭素源とを含む原料を混合して熱処理を行う。具体的に、上記の焼成物と有機炭素源とを0.5h以上融合し、得られた炭素混合物を600℃~1000℃で2h~6h炭化し、冷却することを含む。該炭素源として、ポリオレフィン、樹脂類、ゴム類、糖類(例えば、ブドウ糖、スクロース、スターチおよびセルロースなど)、有機酸およびピッチのうちの少なくとも1種を選択してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、固相炭素被覆の方式において、熱処理の温度は、具体的に、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃などであってもよく、熱処理の保温時間は、具体的に、2h、3h、4h、5h、6hなどであってもよいが、ここで限定されない。好ましくは、熱処理の温度は、700~900℃であり、熱処理の保温時間は、3~5hである。
【0075】
いくつかの実施形態において、融合は、融合機で行われることが好ましく、融合機の回転速度が、500r/min~3000r/minである。
【0076】
いくつかの実施形態において、融合機の回転速度は、具体的に、500r/min、800r/min、1000r/min、1500r/min、2000r/min、2500r/min、3000r/minなどであってもよいが、ここで限定されない。好ましくは、融合機の回転速度は、1000~3000r/minである。
【0077】
融合機のカッター間の間隔は、必要に応じて選択することができ、例えば、0.5cmにすることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記の炭素被覆方式において、保護雰囲気として、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスおよび窒素ガスのうちの少なくとも1種を選択してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、外部導電層3と焼成物の質量比は、1:(1~1000)である。
【0080】
任意選択で、外部導電層3と焼成物の質量比は、具体的に、1:1、1:10、1:30、1:50、1:80、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:450、1:500、1:550、1:600、1:650、1:700、1:750、1:800、1:850、1:900、1:950、1:1000などであってもよいが、ここで限定されない。好ましくは、外部導電層3と焼成物の質量比は、1:(10~500)である。
【0081】
いくつかの実施形態において、得られた外部導電層3の厚さは、50nm~2000nmである。任意選択で、外部導電層3の厚さは、具体的に、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nm、1200nm、1300nm、1400nm、1500nm、1600nm、1700nm、1800nm、1900nm、2000nmなどであってもよいが、ここで限定されない。したがって、複合材料の導電性能が保証され、複合材料の導電性能が、疎水被覆層2の存在で劣化することはない。外部導電層3の厚さを50nm以上にすれば、得られる複合材料の電子導電性能が優れる。外部導電層3の厚さを2000nm以下にすれば、得られる複合材料の容量が高い。好ましくは、外部導電層3の厚さは、80nm~1000nmである。
【0082】
なお、S300ステップを行わなくてもよく、すなわち、被覆を行わずに、直接負極材料を得るようにしてもよく、または、性能要求に応じて、炭素層の代わりに、他の材質の被覆層を採用してもよく、被覆層の材質が、高分子材料または金属酸化物であってもよい。
【0083】
第3局面において、本出願は、上記の複合材料または上記の調製方法で調製できた複合材料を含む負極材料を提供する。
【0084】
第4局面において、本出願は、上記の複合材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0085】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本出願の実施案を詳細に説明する。当業者であれば分かるように、下記の実施例は、本出願を説明するためのものにすぎず、本出願の範囲を限定するものではない。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件またはメーカーの勧めの条件で行うことが可能である。使用する試剤または器械の製造メーカーが明記されないものについて、市販の従来品を使用することが可能である。
【0086】
実施例1
(1)亜酸化ケイ素SiOと水素化リチウムとを1.5:1のモル比で均一に混合したあと、窒素ガスの保護下で800℃で4h焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得た。
(2)ステップ(1)により得たリチウム含有ケイ素酸化物と酸化チタンとリン酸アンモニウムとを1:0.01:0.01のモル比で均一に混合し、そして700℃で4h焼結し、疎水被覆層2で被覆されたリチウム含有ケイ素酸化物の焼成物を得た。
(3)ステップ(2)により得た焼成物をチューブ炉内に入れ、窒素ガスの保護下で600℃まで昇温させ、アセチレンを導入し、10h保温したあと冷却し、疎水被覆層2の外面において炭素被覆される外部導電層3を形成し、複合材料を得た。ここで、アセチレンと焼成物の質量比が、1:2であった。
【0087】
実施例2
(1)亜酸化ケイ素SiOと水素化リチウムとを0.5:1のモル比で均一に混合したあと、窒素ガスの保護下で600℃で6h焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得た。
(2)ステップ(1)により得たリチウム含有ケイ素酸化物と酸化チタンとリン酸アンモニウムとを1:0.1:0.1のモル比で均一に混合し、そして300℃で6h焼結し、疎水被覆層2で被覆されるリチウム含有ケイ素酸化物の焼成物を得た。
(3)ステップ(2)により得た焼成物をチューブ炉内に入れ、窒素ガスの保護下で800℃まで昇温させ、アセチレンを導入し、5h保温したあと冷却し、疎水被覆層2の外面において炭素被覆される外部導電層3を形成し、複合材料を得た。ここで、アセチレンと焼成物の質量比が、1:2であった。
【0088】
実施例3
(1)亜酸化ケイ素SiOと水素化リチウムとを5:1のモル比で均一に混合したあと、窒素ガスの保護下で1000℃で2h焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得た。
(2)ステップ(1)により得たリチウム含有ケイ素酸化物と酸化チタンとリン酸アンモニウムとを1:0.04:0.06のモル比で均一に混合し、そして500℃で4h焼結し、疎水被覆層2で被覆されるリチウム含有ケイ素酸化物の焼成物を得た。
(3)ステップ(2)により得た焼成物をチューブ炉内に入れ、窒素ガスの保護下で1000℃まで昇温させ、アセチレンを導入し、1h保温したあと冷却し、疎水被覆層2の外面において炭素被覆される外部導電層3を形成し、複合材料を得た。ここで、アセチレンと焼成物の質量比が、1:2であった。
【0089】
実施例4
(1)ケイ素酸化物SiO1.5と水素化ホウ素リチウムとを4:1のモル比で均一に混合したあと、窒素ガスの保護下で700℃で7h焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得た。
(2)ステップ(1)により得たリチウム含有ケイ素酸化物と酸化アルミニウムとホウ酸アンモニウムとを1:0.001:0.002のモル比で均一に混合し、そして800℃で2h焼結し、疎水被覆層2で被覆されるリチウム含有ケイ素酸化物の焼成物を得た。
(3)ステップ(2)により得た焼成物をチューブ炉内に入れ、アルゴンガスの保護下で900℃まで昇温させ、アセチレンを導入し、2h保温したあと冷却し、疎水被覆層2の外面において炭素被覆される外部導電層3を形成し、複合材料を得た。ここで、アセチレンと焼成物の質量比が、1:3であった。
【0090】
実施例5
(1)ケイ素酸化物SiO0.5とリチウムアミドとを3:1のモル比で均一に混合したあと、窒素ガスの保護下で700℃で8h焼成し、リチウム含有ケイ素酸化物を得た。
(2)ステップ(1)により得たリチウム含有ケイ素酸化物と酸化亜鉛と硫酸リチウムとを1:0.05:0.06のモル比で均一に混合し、そして400℃で5h焼結し、疎水被覆層2で被覆されるリチウム含有ケイ素酸化物の焼成物を得た。
(3)ステップ(2)により得た焼成物をチューブ炉内に入れ、アルゴンガスの保護下で700℃まで昇温させ、アセチレンを導入し、8h保温したあと冷却し、疎水被覆層2の外面において炭素被覆される外部導電層3を形成し、複合材料を得た。ここで、アセチレンと焼成物の質量比が、1:4であった。
【0091】
実施例6
本実施例6は、ステップ(3)をなしにしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0092】
実施例7
本実施例7は、ステップ(3)をなしにしたところだけにおいて、実施例2と相違している。
【0093】
実施例8
本実施例8は、ステップ(3)をなしにしたところだけにおいて、実施例3と相違している。
【0094】
実施例9
本実施例9は、ステップ(1)において亜酸化ケイ素と水素化リチウムのモル比を1.5:1から8:1にしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0095】
実施例10
本実施例10は、ステップ(1)において亜酸化ケイ素と水素化リチウムのモル比を1.5:1から0.2:1にしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0096】
実施例11
本実施例11は、ステップ(2)においてリチウム含有ケイ素酸化物と酸化チタンとリン酸アンモニウムのモル比を1:0.01:0.01から1:0.15:0.15にしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0097】
実施例12
本比較例12は、ステップ(2)においてリチウム含有ケイ素酸化物と酸化チタンとリン酸アンモニウムのモル比を1:0.01:0.01から2:0.001:0.001にしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0098】
比較例1
本比較例1は、ステップ(2)をなしにしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0099】
比較例2
本比較例2は、ステップ(2)とステップ(3)とをなしにしたところだけにおいて、実施例1と相違している。
【0100】
比較例3
本比較例3は、下記のことにおいて、実施例1と相違している。
(1)ケイ素酸化物と酸化チタンとリン酸アンモニウムとを1:0.01:0.01のモル比で均一に混合し、そして700℃で4h焼結し、被覆層で被覆されるケイ素酸化物の焼成物を得た。
(2)ステップ(1)により得た焼成物をチューブ炉内に入れ、窒素ガスの保護下で600℃まで昇温させ、アセチレンを導入し、10h保温したあと冷却し、被覆層の外面において炭素被覆される外部導電層を形成し、複合材料を得た。ここで、アセチレンと焼成物の質量比が、1:2であった。
【0101】
複合材料の被覆層は、化合物SiOTi0.2と化合物SiO0.2とを含み、化合物SiOTi0.2と化合物SiO0.2の質量比が、1:1であり、被覆層の厚さが、43nmであった。
【0102】
1.材料の性能評価
上記の実施例と比較例により得た負極材料に対して性能評価を行った。測定方法として、S4800電界放出形走査電子顕微鏡を利用して材料顆粒の断面を測定し、まず、疎水被覆層の厚さを測出し、そして、オックスフォード(Oxford)X-MAXN X線エネルギー分光装置を利用し、元素の走査分析により、疎水被覆層におけるX元素、Y元素のそれぞれとSi元素の比を確定し、任意に選択した20個の顆粒におけるX元素/Si元素およびY元素/Si元素の比の平均値をとって小数点以下1桁まで求め、疎水被覆層におけるX元素/Si元素およびY元素/Si元素の比とし、最後、材料コアにおけるLi、Si、Oとの3種の元素の比およびコアに含まれるリチウム含有ケイ素酸化物の構成組成に基づいて、疎水被覆層における、化合物Mと化合物Nの組成およびその比を確定する。測定結果は、表1に示される。
【0103】
2.電気化学的性能測定
(1)初回クーロン効率測定
a.リチウムイオン電池の調製:上記の実施例と比較例により調製できた複合材料を負極活性材料とし、負極活性材料と導電性カーボンブラックとCMCとSBRを75:15:4:6の質量比で均一に混合したあと、銅箔に塗布し、負極片を調製し、金属リチウム片を正極片とし、PP/PEをセパレータとし、ボタン電池を作製した。
b.LAND NEWARE 5V/10mA型電池評価装置を利用して測定し、電圧が1.5Vであり、電流が0.1Cであり、初回クーロン効率=初回充電比容量/初回放電比容量を用いて測定した。
(2)サイクル性能測定
a.リチウムイオン電池の調製:上記の実施例と比較例により調製できた複合材料をそれぞれグラファイトと15:85の質量比で混合して負極活性材料を得、負極活性材料と導電性カーボンブラックとCMCとSBRを92:4:2:2の質量比で均一に混合し、銅箔に塗布し、負極片を調製し、金属リチウム片を正極片とし、PP/PEをセパレータとし、ボタン電池を作製した。
b.LAND NEWARE 5V/10mA型電池評価装置を利用して測定し、電圧が1.5Vであり、電流が0.1Cであり、50サイクル維持率=第50回放電比容量/初回放電比容量を用いて測定した。
(3)レート性能測定
a.リチウムイオン電池の調製:上記の実施例と比較例により調製できた複合材料をそれぞれグラファイトと15:85の質量比で混合して負極活性材料を得、負極活性材料と導電性カーボンブラックとCMCとSBRを92:4:2:2の質量比で均一に混合し、銅箔に塗布し、負極片を調製し、金属リチウム片を正極片とし、PP/PEをセパレータとし、ボタン電池を作製した。
b.LAND NEWARE 5V/10mA型電池評価装置を利用して測定し、電圧が1.5Vであり、電流がそれぞれ0.1Cおよび3Cであり、3C/0.1C=3C電流の放電比容量/0.1C電流の放電比容量を用いて測定した。
上記の電気化学的性能の測定結果は、表2で示される。
【0104】
3.上記の実施例と比較例により調製できた複合材料を負極活性材料とし、負極活性材料と導電性カーボンブラックとCMCとSBRを75:15:4:6の質量比で均一に混合し、スラリーに調製して、各スラリーの安定性を判断した。
【0105】
スラリーの安定性の判断方法
スラリーを4h静置したあと、スラリー内に気泡が発生した場合、不安定と認められ、スラリーを12h静置したあと、スラリーが沈殿した場合、不安定と認められる。
【表1】
【表2】
【0106】
なお、実施例1における酸化チタンを、バナジウム、ゲルマニウム、亜鉛、錫、アルミニウム、ランタン、マグネシウム、ベリリウム、アンチモン、銀、カルシウムおよび銅の酸化物および/または塩類の少なくとも1種、またはチタンの少なくとも1種の塩類に置き換え、リン酸アンモニウムを、ホウ素、窒素および硫黄の酸化物、酸および塩類のうちの少なくとも1種、またはリンの酸化物に置き換え、リチウム含有ケイ素酸化物とX源とY源のモル比を、1:(0.001~0.1):(0.001~0.1)の範囲内の任意の他のモル比に置き換える場合、得られるスラリーが実施例1並の安定性を得ることができる。
【0107】
図3は、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のそれぞれにより得た複合材料で組み立てた電池の、異なる電流密度下のサイクル性能を示すグラフ(第1サイクルが0.1Cであり、第2サイクルが0.2Cであり、第3サイクルが0.5Cであり、第4サイクル~50サイクルが1Cである)である。
【0108】
図4は、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のそれぞれにより得た複合材料で組み立てた電池の異なるレート性能を示すグラフである。
【0109】
図3および図4に示すように、上記の電気化学的性能の測定結果から分かるように、本出願の実施例1~8により調製できた複合材料は、いずれも電子導電性能が優れ、初回クーロン効率が高く、サイクル安定性能が優れ、レート性能が高かった。実施例1~5において、疎水被覆層2の外面に、炭素被覆される外部導電層が形成されたため、実施例1~5により調製できた複合材料のそれぞれで組み立てた電池の導電性能、初回クーロン効率、サイクル安定性能およびレート性能は、実施例6~8により調製できた複合材料のそれぞれで組み立てた電池の導電性能、初回クーロン効率、サイクル安定性能およびレート性能よりも優れる。
【0110】
上記の実施例9において、亜酸化ケイ素と水素化リチウムのモル比は、実施例1に対して高すぎたため、得られた複合材料の初回クーロン効率が劣る。上記の実施例10において、亜酸化ケイ素と水素化リチウムのモル比は、実施例1に対して低すぎたため、得られた複合材料の初回放電比容量が低下した。
【0111】
上記の実施例11において、酸化チタンおよびリン酸アンモニウムのそれぞれとリチウム含有ケイ素酸化物のモル比が実施例1に対して高すぎたため、材料の活性が低下し、導電能力が劣り、したがって、初回放電比容量、初回クーロン効率が比較的に低かった。上記の実施例12において、酸化チタンおよびリン酸アンモニウムのそれぞれとリチウム含有ケイ素酸化物のモル比が実施例1に対して低すぎ、効果的な保護層を形成できなくて、得られたスラリーが不安定であり、リチウム含有ケイ素酸素材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和できず、したがって、その50サイクル維持率が実施例1の50サイクル維持率より低く、3C/0.1Cのレート性能が実施例1の3C/0.1Cのレート性能より低かった。
【0112】
上記の比較例1において、リチウム含有ケイ素酸化物コア構造を直接炭素で被覆した複合材料であり、実施例1に対して中間の疎水被覆層がなかったため、得られたスラリーが不安定であり、リチウム含有ケイ素酸素材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和できず、したがって、その50サイクル維持率が実施例1の50サイクル維持率より低く、3C/0.1Cのレート性能が実施例1の3C/0.1Cのレート性能より低かった。
【0113】
上記の比較例2は、実施例1に対して疎水被覆層および炭素被覆される外部導電層がなかったため、得られたスラリーが不安定であり、リチウム含有ケイ素酸素材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和できず、得られた複合材料の導電性が悪く、したがって、その初回放電比容量が実施例1の初回放電比容量より低く、初回クーロン効率が実施例1の初回クーロン効率より低く、50サイクル維持率が実施例1の50サイクル維持率より低く、3C/0.1Cのレート性能が実施例1の3C/0.1Cのレート性能より低かった。
【0114】
上記の比較例3において、プレリチエーション後のケイ素酸素材料を採用せずに、ケイ素酸化物を酸化チタンおよびリン酸アンモニウムと直接反応させることにより、最終に得られた負極材料が比較的に高い初回放電比容量を有するが、ケイ素酸化物が電解液と反応し、大量の活性なリチウムイオンが消費されたため、電池の初回クーロン効率が実施例1に対して大幅に低下した。ケイ素酸素材料は、電池サイクル過程において体積が膨張し、被覆層によってもケイ素酸素材料のサイクル過程での膨張を効果的に緩和できず、したがって、その50サイクル維持率が実施例1の50サイクル維持率より低く、3C/0.1Cのレート性能が実施例1の3C/0.1Cのレート性能より低かった。
【0115】
上記の各実施例は、本出願の技術案を説明するためのものにすぎず、それを限定するものではない。上記の各実施例を参照しながら本出願を詳細に説明したが、当業者は、上記の各実施例に記載された技術案を変更してもよく、その内の一部またはすべての技術的特徴に対して均等置換を行ってもよい。これらの変更または置換は、該当技術案の本質を本出願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させていない。
【0116】
また、ここでの一部の実施例は、他の実施例に含まれる一部の特徴を有しているが、異なる実施例の特徴の組合せは、本出願の範囲に属する別の実施例になると当業者が理解すべきである。例えば、特許請求の範囲において、保護しようとする実施例を、任意に組合せてもよい。背景技術の部分に開示された情報は、本出願の背景技術全体に対する理解を深めるためのものにすぎず、当業者であれば周知の従来技術であることを認めることや如何なる形式で暗示することではないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0117】
1…コア
2…疎水被覆層
3…外部導電層
図1
図2
図3
図4