(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】複合タングステン酸化物粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 41/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
C01G41/00 A
(21)【出願番号】P 2019033288
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中倉 修平
(72)【発明者】
【氏名】荻 崇
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173642(JP,A)
【文献】Advanced powder technology,2018年,Vol.29,pp.2512-2520
【文献】AIChE Journal,2014年,Vol.60, No.1,pp.41-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式M
xW
yO
z(但し、M元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表わされる複合タングステン酸化物粒子の製造方法であり、
被処理物である、タングステン源と前記M元素を含有するM元素源とを含む原料混合溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記被処理物を1000℃まで昇温する昇温工程と、
前記被処理物を1000℃以上で1秒以上熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で得られた粒子を、還元性ガスを含む雰囲気下で、500℃以上で熱処理する還元処理工程と、を有し、
前記昇温工程、前記熱処理工程は、配管と、前記配管を加熱するヒーターと、を有する反応部に前記被処理物を供給して実施し、
前記複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径が5nm以上800nm以下である複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記液滴形成工程において、前記タングステン源を含む溶液と、前記M元素源を含む溶液とを混合し、前記原料混合溶液を形成する請求項1に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記液滴形成工程では、超音波噴霧装置を用いて前記原料混合溶液の液滴を形成しており、
前記超音波噴霧装置において、前記タングステン源を含む溶液と、前記M元素源を含む溶液とを混合し、前記原料混合溶液を形成する請求項1または請求項2に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記タングステン源がパラタングステン酸アンモニウムである請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記M元素源が、前記M元素の炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物から選択された1種類以上である請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径が30nm以上50nm以下である請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項7】
前記還元処理工程で得られた粒子に解砕処理を行う解砕処理工程をさらに有する請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項8】
前記解砕処理工程において、粒径が10μm以上500μm以下のビーズを用いて解砕処理を行う請求項7に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【請求項9】
前記解砕処理工程における解砕処理の時間が5分以上1時間以下である請求項7または請求項8に記載の複合タングステン酸化物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合タングステン酸化物粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な可視光透過率を有し透明性を保ちながら日射透過率を低下させる近赤外線遮蔽技術として、これまでさまざまな技術が提案されてきた。なかでも、無機物である導電性粒子を用いた近赤外線遮蔽技術は、その他の技術と比較して近赤外線遮蔽特性に優れ、低コストである上、電波透過性が有り、さらに耐候性が高い等のメリットがある。
【0003】
例えば特許文献1において、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子を赤外線遮蔽材料微粒子として可視光線を透過する樹脂等の媒体中に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体や、該赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法等に関する技術が開示されている。特許文献1には、薄膜状の赤外線遮蔽材料微粒子分散体である赤外線遮蔽膜を製造した例等も開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、太陽光線、特に近赤外線領域の光をより効率良く遮蔽し、同時に可視光領域の透過率を保持する等、優れた光学特性を有する赤外線遮蔽材料微粒子分散体を作製することが可能になるとされている。このため、特許文献1に開示された赤外線遮蔽材料微粒子分散体を窓ガラス等の各種用途に適用することが検討されている。
【0005】
そして、近赤外線遮蔽材料として有用な複合タングステン酸化物粒子の製造方法について、各種検討がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1の発明者は、非特許文献1において、固相法よるCs0.32WO3ナノ粒子の合成方法を提案している。しかしながら、非特許文献1に開示された合成方法では粒子径がサブミクロンサイズであるため、ナノ粒子化するには0.3mmのビーズを用いた数時間以上の粉砕プロセスが必要であった。
【0007】
非特許文献2には水熱合成法によるCsxWO3の合成方法が開示されている。しかしながら、水熱合成法では数十時間以上の合成時間を必要とする。また、水熱合成法は、後処理工程などの工程数が多い問題もある。
【0008】
非特許文献3には、誘導結合熱プラズマ技術に基づく合成方法が開示されている。しかしながら、係る合成方法は誘導結合熱プラズマの装置を導入する必要があり、コストが高くなっていた。
【0009】
特許文献2には化学式KxCsyWOzで表わされるカリウム・セシウム・タングステンブロンズ固溶体粒子調合のためのプロセスであって、式中、x+y≦1および2≦z≦3であり、前記プロセスは適切なタングステン・ソースをカリウム塩およびセシウム塩と混ぜ合わせて粉末混合物を形成し、還元雰囲気下でプラズマトーチに粉末混合物を露出することを含み、好ましくは還元雰囲気が水素/希ガス混合物から成るシースガスによって供給される、プロセスが開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献2についてもプラズマを用いる必要があり、プラズマ装置導入のためにコストが高くなっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Takeda Hiromitsu, and Kenji Adachi, "Near infrared absorption of tungsten oxide nanoparticle dispersions." Journal of the American Ceramic Society,2007 , Vol.90, Issue 12, P.4059-4061
【文献】Guo Chongshen, et al., "Novel synthesis of homogenous CsxWO3 nanorods with excellent NIR shielding properties by a water controlled-release solvothermal process." Journal of Materials Chemistry,2010, Vol.20, Issue38, P.8227-8229.
【文献】Mamak Marc, et al., "Thermal plasma synthesis of tungsten bronze nanoparticles for near infra-red absorption applications." Journal of Materials Chemistry, 2010, Vol.20, Issue44, P.9855-9857.
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第4096205号公報
【文献】特表2012-532822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
既述の様に複合タングステン酸化物粒子は、近赤外線遮蔽材料として有用である。このため、低コストで、かつ製造に要する時間を抑制できる複合タングステン酸化物粒子の製造方法が求められている。
【0014】
しかしながら、従来開示された複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、上述のように特殊な高コストの装置の導入を要したり、長時間の粉砕を必要としたり、多くの工程を要する等の問題があった。
【0015】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、導入コストの低い設備を用いることができ、製造に要する時間を抑制できる複合タングステン酸化物粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
一般式MxWyOz(但し、M元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表わされる複合タングステン酸化物粒子の製造方法であり、
被処理物である、タングステン源と前記M元素を含有するM元素源とを含む原料混合溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記被処理物を1000℃まで昇温する昇温工程と、
前記被処理物を1000℃以上で1秒以上熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程で得られた粒子を、還元性ガスを含む雰囲気下で、500℃以上で熱処理する還元処理工程と、を有し、
前記昇温工程、前記熱処理工程は、配管と、前記配管を加熱するヒーターと、を有する反応部に前記被処理物を供給して実施し、
前記複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径が5nm以上800nm以下である複合タングステン酸化物粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、導入コストの低い設備を用いることができ、製造に要する時間を抑制できる複合タングステン酸化物粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法に好適に用いることができる複合材料製造装置の模式図。
【
図2】本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法に好適に用いることができる還元処理装置の模式図。
【
図3】比較例1で用いた複合材料製造装置の反応部の温度分布測定結果。
【
図4】比較例1、実施例4で得られた複合タングステン酸化物粒子のXRDスペクトル。
【
図5】比較例1で得られた複合タングステン酸化物粒子の吸収スペクトル。
【
図6】実施例1、2、3で得られた複合タングステン酸化物粒子の吸収スペクトル。
【
図7】実施例2で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図8】実施例2で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図9】実施例3で得られた複合タングステン酸化物粒子のXRDスペクトル
【
図10】実施例3で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図11】実施例3で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図12】実施例4で得られた複合タングステン酸化物粒子の吸収スペクトル。
【
図13】実施例4で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図14】実施例4で得られた複合タングステン酸化物粒子の粒度分布
【
図15】実施例5で得られた複合タングステン酸化物粒子の吸収スペクトル。
【
図16】実施例5で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図17】実施例5で得られた複合タングステン酸化物粒子の粒度分布。
【
図18】実施例6で得られた複合タングステン酸化物粒子の吸収スペクトル。
【
図19】実施例6で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【
図20】実施例6で得られた複合タングステン酸化物粒子のTEM像。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る複合タングステン酸化物粒子の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
[複合タングステン酸化物粒子の製造方法]
以下、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法の一構成例について説明する。
【0020】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、一般式MxWyOzで表わされる複合タングステン酸化物粒子の製造方法に関する。
【0021】
上記一般式中のM元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素とすることができる。また、Wはタングステン、Oは酸素を表し、x、y、zはそれぞれ、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0を満たすことが好ましい。
【0022】
また、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法で製造する赤外線吸収材料粒子は、その平均粒子径が5nm以上800nm以下であることが好ましい。
【0023】
そして、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、以下の工程を有することができる。
【0024】
被処理物である、タングステン源とM元素源とを含む原料混合溶液の液滴を形成する液滴形成工程。
被処理物を、500℃以上で熱処理する熱処理工程。
熱処理工程で得られた粒子を、還元性ガスを含む雰囲気下で、500℃以上で熱処理する還元処理工程。
【0025】
ここでまず、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法で製造する複合タングステン酸化物粒子について説明する。
【0026】
複合タングステン酸化物粒子に含まれる複合タングステン酸化物は、上述のように一般式MxWyOzで表記される。式中のM元素、W、O、及びx、y、zについては既述のため、ここでは説明を省略する。
【0027】
複合タングステン酸化物は、例えば正方晶、立方晶、及び六方晶のいずれかの、タングステンブロンズ型の結晶構造をとることができる。本実施形態の複合タングステン酸化物粒子に含まれる複合タングステン酸化物の結晶構造は特に限定されず、正方晶、立方晶、六方晶から選択された1種類以上の結晶構造を有することができる。
【0028】
ただし、複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を有する場合、複合タングステン酸化物粒子の可視光線領域の光の透過率、及び近赤外線領域の光の吸収が特に向上するため好ましい。このため、複合タングステン酸化物粒子は、六方晶の結晶構造の複合タングステン酸化物を含むことが好ましい。そして、M元素にCs、Rb、K、Tl、Ba、Inから選択された1種類以上を用いると六方晶を形成し易くなる。このため、M元素はCs、Rb、K、Tl、Ba、Inから選択された1種類以上を含むことが好ましい。
【0029】
ここで、複合タングステン酸化物が六方晶の結晶構造を有する場合のM元素の配置の仕方を説明する。
【0030】
Wと、6つのOとを単位として形成される8面体、すなわち頂点にO原子を配し、中央部にW原子を配した8面体が、6個集合することでO原子より構成される六角形の空隙(トンネル)が形成される。そして、当該空隙中に、M元素が配置されて1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物が均一な結晶構造を有するとき、M元素の添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33である。z/y=3の時、x/yの値が0.33となることで、M元素が六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
【0031】
同様に、z/y=3の時、立方晶、正方晶のそれぞれの複合タングステン酸化物にも構造に由来したM元素の添加量の上限があり、1モルのタングステンに対するM元素の最大添加量は、立方晶の場合は1モルであり、正方晶の場合は0.5モル程度である。なお、正方晶の場合の1モルのタングステンに対するM元素の最大添加量は、M元素の種類により変化するが、工業的に製造が容易なのは、上述のように0.5モル程度である。但し、これらの構造は、単純に規定することが困難であり、当該範囲は特に基本的な範囲を示した例であることから、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0032】
また、M元素は極微量でも添加することで、複合タングステン酸化物内に自由電子が生成され、目的とする赤外線吸収効果を得ることができる。このため、x/yは、0.001≦x/y≦1を満たすことが好ましい。
【0033】
また、複合タングステン酸化物は、三酸化タングステン(WO3)にM元素を添加した組成を有している。そして、三酸化タングステンでは有効な自由電子を含まないため、1モルのタングステンに対する酸素の割合を3未満としないと赤外線吸収効果を発揮することはできない。しかしながら、複合タングステン酸化物では、M元素を添加することで自由電子を生じ、赤外線吸収効果を得ることができる。このため、1モルのタングステンに対する酸素の割合は3以下とすることができる。ただし、WO2の結晶相は可視光線領域の光について吸収や散乱を生じさせ、近赤外線領域の光の吸収を低下させる恐れがある。このため、WO2の生成を抑制する観点から、1モルのタングステンに対する酸素の割合は2より大きくすることが好ましい。
【0034】
従って、上述のように2.2≦z/y≦3.0を満たすことが好ましい。
【0035】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により製造する複合タングステン酸化物粒子の粒子径は特に限定されず、使用目的等に応じて選定することができる。
【0036】
例えば透明性を保持することが要求される用途に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、粒子径が800nm以下の粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を高く保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光線領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
【0037】
係る粒子による散乱の低減を重視するとき、粒子径は200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0038】
これは、粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm~780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。そして、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましい。
【0039】
このため、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により製造する複合タングステン酸化物粒子の粒子径は、用いる用途に応じて選択することができる。例えば上述のように可視光線領域の視認性を高く保持することが求められる場合には、粒子径は800nm以下とすることが好ましく、200nm以下とすることがより好ましく、100nm以下とすることがさらに好ましい。本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により製造する複合タングステン酸化物粒子の粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば1nm以上とすることができる。
【0040】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により得られる複合タングステン酸化物粒子の粒子径は、該粒子を例えばSEMやTEMで観察し、該粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径とすることができる。
【0041】
また、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により得られる複合タングステン複合酸化物粒子の平均粒子径は、5nm以上800nm以下であることが好ましく、5nm以上200nm以下であることが好ましく、30nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0042】
これは複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径を800nm以下とすることで、可視光線領域の光の散乱を特に低減することができるからである。
【0043】
ただし、複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径を5nm未満とすることは困難であり、生産性が低下する恐れがあることから、複合タングステン複合酸化物粒子の平均粒子径は5nm以上であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により得られる複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径は、以下の手順により算出することができる。まず、評価を行う複合タングステン酸化物粒子を例えばSEMやTEMで観察し、無作為に200個以上500個以下の粒子を選択する。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径とする。
【0045】
なお、例えば後述する液滴形成工程において形成する液滴のサイズ等を調整することで、得られる複合タングステン酸化物粒子の粒子径や、平均粒子径を選択することができる。また、例えば還元処理工程の後に、さらに後述の解砕処理工程を実施することで、得られる複合タングステン酸化物粒子の粒子径や、平均粒子径を選択することもできる。
【0046】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により得られた複合タングステン酸化物粒子を含有する赤外線遮蔽材料は近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
【0047】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法により得られた複合タングステン酸化物粒子、具体的には係る複合タングステン酸化物粒子が含有する複合タングステン酸化物の格子定数は特に限定されないが、a軸が7.39Å以上7.42Å以下、c軸が7.58Å以上7.65Å以下であることが好ましく、a軸が7.40Å以上7.42Å以下、c軸が7.58Å以上7.63Å以下であることがより好ましい。
【0048】
これは、複合タングステン酸化物の格子定数を上記範囲とすることで、W(タングステン)欠損のない結晶構造を構成するためである。
【0049】
格子定数の算出方法は特に限定されず、得られた複合タングステン酸化物粒子について測定した粉末X線回折パターンからリートベルト法等を用いて算出することができる。
【0050】
なお、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子は、例えばM元素の酸化物等の不可避成分を含有する場合がある。この場合、複合タングステン酸化物の結晶相、すなわち複合タングステン酸化物相の格子定数が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0051】
次に、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法について具体的に説明する。
【0052】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法はタングステン源と、M元素源とを含む液滴を、原料の熱分解温度以上の雰囲気にガス流と共に供給して溶媒の蒸発、熱分解を経て複合タングステン酸化物粒子を得る噴霧熱分解法である。
【0053】
そこで、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、既述の様に、被処理物である、タングステン源とM元素源とを含む原料混合溶液の液滴を形成する液滴形成工程を有することができる。また、被処理物である上記液滴を500℃以上で熱処理する熱処理工程を有することができる。
(液滴形成工程)
液滴形成工程では、被処理物である、タングステン源とM元素源とを含む原料混合溶液の液滴を形成することができる。
【0054】
液滴形成工程において液滴を形成する具体的な手段は特に限定されない。例えばスプレーノズルを用いてタングステン源とM元素源とを含む溶液の液滴を形成する方法や、タングステン源とM元素源とを含む溶液に対して超音波照射を行い、液滴を形成する方法、二流体ノズルを用いて液滴を形成する方法、遠心アトマイザーを初めとした各種アトマイザーを用いて液滴を形成する方法等が挙げられる。
【0055】
特に微細な液滴を安定して形成できることから、タングステン源とM元素源とを含む溶液に対して超音波を照射して液滴を形成することが好ましい。すなわち超音波を用いた液滴形成方法を好適に用いることができる。
【0056】
なお、タングステン源を含む溶液と、M元素源を含む溶液とを別に用意しておき、例えば液滴形成部(液滴形成手段)に供給する直前、もしくは液滴形成部内で混合し、タングステン源とM元素源とを含む溶液を形成することが好ましい。すなわち、液滴形成工程において、タングステン源を含む溶液と、M元素源を含む溶液とを混合し、原料混合溶液を形成することが好ましい。そして、原料混合溶液の形成に引き続き、連続して該原料混合溶液を用いて液滴を形成することが好ましい。
【0057】
液滴形成工程において両溶液を混合する具体的な方法は特に限定されない。例えばタングステン源を含む溶液と、M元素源を含む溶液とを液滴形成部である超音波噴霧装置(超音波照射装置)に別々に導入し、該装置内で両溶液を混合して原料混合溶液とし、液滴を形成することが好ましい。すなわち、液滴形成工程において、超音波噴霧装置を用いて原料混合溶液の液滴を形成している場合、超音波噴霧装置において、タングステン源を含む溶液と、M元素源を含む溶液とを混合し、原料混合溶液を形成することが好ましい。このように、タングステン源を含む溶液と、M元素源を含む溶液とを別に用意しておき、例えば超音波噴霧装置において混合することで、原料混合溶液を形成してから液滴にするまでの時間を特に短くすることができる。このため、中和反応によりタングステン源と、M元素源とが反応し、原料混合溶液内で析出等が生じることを特に抑制できる。
【0058】
タングステン源としては特に限定されず、タングステンの塩等を用いることができ、例えばパラタングステン酸アンモニウムを好ましく用いることができる。パラタングステン酸アンモニウム(ATP:ammonium tungstate pentahydrate)は、例えば(NH4)10(W12O41)・5H2Oで表すことができる。
【0059】
パラタングステン酸アンモニウムは、タングステン以外の元素が、N(窒素)、H(水素)、O(酸素)であり、後述する昇温工程や、熱処理工程において系外に排出される。このため、タングステン源を含む溶液の溶質として用いることで、不純物の混入を抑制した複合タングステン酸化物粒子を得ることができるため好ましく用いることができる。
【0060】
また、タングステン源を含む溶液としては、取扱いの容易さ等から、タングステン源を含む水溶液を好適に用いることができる。このため、タングステン源としては水溶性の塩を好適に用いることができる。そして、パラタングステン酸アンモニウムは水への溶解が容易であり、溶媒として水を用い、タングステン源を含む溶液を容易に形成できるため、好ましく用いることができる。
【0061】
M元素源を含む溶液としては、例えばM元素を含む塩の溶液を用いることができる。M元素源であるM元素の塩の種類は特に限定されないが、例えばM元素の炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0062】
M元素源を含む溶液としては、取扱いの容易さ等から、M元素源を含む水溶液を好適に用いることができる。このため、M元素の塩としては水溶性の塩を好適に用いることができる。
【0063】
例えば、M元素がセシウムの場合についても、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物等から選択された1種類以上を用いることができるが、炭酸塩を特に好適に用いることができる。これは、炭酸セシウムが水への溶解が容易であるからである。
【0064】
なお、得られる複合タングステン酸化物中の1モルのタングステンに対する、M元素の割合、すなわちドープ量は、原料混合溶液を形成する際のタングステン源と、M元素源との割合により決まる。このため、例えばタングステン源を含む溶液の濃度や、M元素源を含む溶液の濃度等により制御できる。
【0065】
タングステン源を含む溶液に含まれるタングステン源の濃度は特に限定されない。例えば、タングステン源を含む溶液のタングステン濃度が0.0015mol/L以上12mol/L以下であることが好ましい。このような濃度とすることで、熱処理工程で得られる粒子の生産性を高め、平均粒子径が800nm以下の粒子を得ることを可能とする。タングステン源を含む溶液のタングステン濃度を0.0015mol/L以上とすることで、単位時間当たりの複合タングステン酸化物粒子の生産量を十分に確保でき、例えばフィルター等で十分な量を回収することができ、生産性を高めることができるからである。また、タングステン源を含む溶液のタングステン濃度を12mol/L以下とすることで、平均粒子径が800nm以下となる粒子のみを選択的に得ることができる。また、例えば数μm以上の粗大な複合タングステン酸化物粒子が混入することを抑制できるからである。
【0066】
タングステン源を含む溶液として、例えばパラタングステン酸アンモニウム水溶液を用いる場合、パラタングステン酸アンモニウムは分子内に12個のタングステンを含むため、パラタングステン酸アンモニウムの濃度は0.000125mol/L以上1mol/L以下が好ましい。
【0067】
また、M元素源を含む溶液に含まれるM元素の濃度についても特に限定されるものではなく、製造する複合タングステン酸化物粒子における所望の組成や、タングステン源を含む溶液に含まれるタングステン源の濃度等に応じて選択することができる。
【0068】
原料混合溶液には、タングステン源を含む溶液や、M元素源を含む溶液以外にも任意の成分を添加できる。例えば複合タングステン酸化物粒子の還元を促進させるために、還元剤として、アンモニアを添加することもできる。タングステン源を含む溶液として、既述のパラタングステン酸アンモニウム水溶液を用いる場合、上記アンモニアは、例えばパラタングステン酸アンモニウム水溶液に添加しておくことができる。
【0069】
液滴形成工程で形成する液滴のサイズは特に限定されないが、液滴の直径は100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。液滴の直径を100μm以下とすることで、得られる複合タングステン酸化物粒子が粗粒化することを防ぎ、ナノメートルオーダーの複合タングステン酸化物粒子を得ることが可能になる。なお、液滴形成工程で形成する液滴のサイズの下限値は特に限定されない。ただし、過度に小さい液滴を形成することは困難であり、生産性が低下する恐れがあることから、例えば1μm以上であることが好ましい。
【0070】
液滴形成工程で形成した液滴は、例えばキャリアガスにより搬送し、熱処理工程や、昇温工程に供することができる。
(熱処理工程)
熱処理工程では被処理物を500℃以上で熱処理することができる。
【0071】
被処理物であるタングステン源とM元素源とを含む原料混合溶液の液滴中に含まれる溶媒は、500℃まで加熱される過程で蒸発し、さらにタングステン源や、M元素源が分解する。そして、係る分解過程でタングステンと、M元素とが反応して複合タングステン酸化物が形成される。
【0072】
熱処理工程等で液滴を加熱する際、液滴に含まれる溶媒が水の場合、該水の蒸発は50℃以上120℃以下の範囲で生じていると推定される。また、タングステン源や、M元素源の分解は、例えば120℃以上500℃以下の範囲で生じていると推定される。
【0073】
そして、タングステン源や、M元素源の分解の過程や、さらに高温の温度でタングステンとM元素とが反応して、複合タングステン酸化物が形成されていると考察される。
【0074】
このため、タングステン源や、M元素源の分解を十分に進行させ、複合タングステン酸化物への不純物の混入を抑制するため、熱処理工程ではタングステン源や、M元素源の分解温度以上で熱処理を行うことが好ましい。そして、上述のように、タングステン源や、M元素源の分解は通常500℃以下で生じると考えられる。このため、熱処理工程では、被処理物である液滴を500℃以上で熱処理を行うことができる。
【0075】
本発明の発明者らの検討によれば、熱処理温度は、得られる複合タングステン酸化物粒子の粒子径にも影響する。そして、本発明の発明者らのさらなる検討によれば、熱処理温度が上がるにつれて、得られる複合タングステン酸化物粒子の粒子径が小さくなる傾向がみられる。
【0076】
タングステン源の溶液としてパラタングステン酸アンモニウム水溶液を、M元素源の溶液として炭酸セシウム水溶液を用いて、セシウムドープ酸化タングステン酸化物粒子を製造した場合を例に説明する。この場合、熱処理温度が500℃以上1000℃未満の場合は、セシウムドープ酸化タングステン酸化物粒子の粒子径は100nmから1μm未満となった。また、さらに高温の1000℃以上となると、セシウムドープ酸化タングステン酸化物粒子の粒子径は100nm未満となる場合があった。
【0077】
これは、熱処理温度が高くなると、生成した複合タングステン酸化物粒子の昇華に熱エネルギーが使われ、昇華により粒子が弾けて微細な粒子径の粒子が得られるためと推認される。
【0078】
なお、同様の傾向が他の組成の複合タングステン酸化物粒子の製造でも見られることが確認された。このため、特に微細なナノ粒子である複合タングステン酸化物粒子を得るためには、熱処理温度は1000℃以上とすることが好ましい。すなわち、特に微細なナノ粒子を得ることを目的とする場合、熱処理工程では被処理物を1000℃以上で熱処理することが好ましい。
【0079】
熱処理工程における、被処理物の熱処理温度の上限は特に限定されないが、過度に高温まで昇温しようとすると、加熱装置のコストが高くなる恐れがあることから、1500℃以下であることが好ましい。
【0080】
また、粒子径が100nm未満のナノ粒子の複合タングステン酸化物粒子を製造することを目的とする場合、熱処理工程において被処理物を1000℃以上に熱処理することに加えて、1000℃以上の熱処理温度での熱処理時間を1秒以上とすることが好ましく、3秒以上とすることがより好ましい。これは、1000℃以上の熱処理温度での熱処理時間を1秒以上とすることで、生成した複合タングステン酸化物粒子に対して、十分な熱エネルギーを与えて昇華させ、より確実に例えば粒子径が100nm未満のナノ粒子とすることができるからである。
【0081】
1000℃以上の熱処理温度での熱処理時間の上限値は特に限定されないが、過度に長くしようとすると、熱処理炉の大きさが大きくなり、生産性が低下する恐れや、析出した粉末がフィルターまで到達せずに反応部の配管の内部に落下して閉塞する恐れがある。このため、1000℃以上の熱処理温度での熱処理時間は、例えば100秒以下とすることが好ましい。
【0082】
液滴形成工程で形成した液滴は、例えばキャリアガスにより電気炉等に搬送され、上述の熱処理工程を実施できる。このため、例えばキャリアガスの流量等を制御することにより、熱処理工程の時間を調整することができる。
【0083】
なお、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、熱処理工程の前に昇温工程をさらに有することもできる。
【0084】
昇温工程では、例えば被処理物である液滴を500℃まで昇温する工程とすることができる。また、例えば上述のように粒子径が特に小さいナノ粒子とする場合には、昇温工程は、被処理物である液滴を1000℃まで昇温する工程とすることができる。
【0085】
昇温工程の後は、熱処理工程において熱処理を実施できる。なお、熱処理工程においても必要に応じて所定の温度まで昇温することはできる。
【0086】
昇温工程に要する時間は特に限定されるものではなく、任意に選定することができる。
【0087】
既述の様に、被処理物であるタングステン源とM元素源とを含む原料混合溶液の液滴中に含まれる溶媒は、昇温工程の昇温する過程で蒸発し、より高温になるとタングステン源や、M元素源が分解する。そして、係る分解過程でタングステンと、M元素とが反応して複合タングステン酸化物が形成される。
(還元処理工程)
熱処理工程を経て得られた粒子、具体的には複合タングステン酸化物粒子は、赤外線吸収特性を発現しないことがあった。そこで、本発明の発明者らが検討を行ったところ、熱処理工程を経て得られた複合タングステン酸化物粒子について還元処理を行う還元処理工程をさらに実施することで、複合タングステン酸化物粒子は、赤外線吸収特性を発現できることを見出した。
【0088】
このため、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、熱処理工程で得られた粒子を、還元性ガスを含む雰囲気下で還元処理する還元処理工程を有することができる。
【0089】
還元処理の条件は特に限定されないが、還元処理後の複合タングステン酸化物粒子をX線回折パターンにより解析した場合に、還元処理工程の前後で結晶構造が変化せず、かつ金属のタングステン等が析出しないように還元処理の条件を選択することが好ましい。
【0090】
還元処理工程では、熱処理工程で得られた複合タングステン酸化物を、還元性ガスを含む還元雰囲気下で昇温と降温を行うことで、すなわち熱処理を行うことで還元処理できる。
【0091】
還元処理工程の間、複合タングステン酸化物粒子は撹拌しても静置してもよく、還元処理工程での複合タングステン酸化物粒子の取り扱いは適宜選択できるが、金属のタングステンが析出しないように取扱い条件を選択することが好ましい。
【0092】
還元処理の温度(還元処理温度)は、500℃以上とすることができ、望ましくは500℃以上700℃未満で、より望ましくは550℃以上650℃以下であり、さらに望ましくは550℃以上650℃未満である。なお、液滴形成工程において、原料濃度を低下させると得られる粒子サイズは小径化する。小径化した粒子はより還元しやすくなるため、還元処理工程における温度を従来よりも低下させることができる。室温から、還元処理の温度まで昇温後、再び室温まで降温することができる。
【0093】
還元条件は、得られる複合タングステン酸化物粒子の光学特性から、定めることができる。
【0094】
還元処理の温度を500℃以上とすることで複合タングステン酸化物粒子について還元処理を進め、赤外線吸収特性をより確実に発揮できる。また、700℃未満とすることで、複合タングステン酸化物粒子が金属タングステンに還元されることを抑制できる。
【0095】
還元雰囲気は、アルゴンなどの不活性ガスと、H2ガス(水素ガス)等の還元性ガスとの混合ガスによる雰囲気とすることが好ましく、還元性ガスはH2ガスが望ましい。
【0096】
還元性ガスとしてH2ガスを用いる場合、還元雰囲気中のH2ガスの含有量は、適宜選択できるが、H2ガスの含有量は、体積割合で0.1%以上10%以下の範囲が好ましく、2%以上10%以下の範囲がより好ましい。還元性ガスのみの雰囲気で還元すると、還元反応が過剰に進み金属のタングステンが析出することがあるので注意が必要である。
【0097】
還元処理工程の時間は、昇温から、降温までの全時間で30分以上とすることが望ましい。還元処理工程の時間の上限は特に限定されず、例えば過度に還元が進行しないように予備試験等を行い、選択することが好ましい。なお、ここでいう昇温から降温までの全時間とは、室温から昇温を開始し、還元処理温度に達した後、室温に冷却するまでの時間を意味する。なお、係る時間、複合タングステン酸化物粒子は、既述の還元雰囲気下に置かれていることが好ましい。
【0098】
このように還元処理工程を実施することで、熱処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子について、目的としない異相を、目的とする複合タングステン酸化物相に変換させることができる。
【0099】
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、ここまで説明した液滴形成工程、熱処理工程、還元処理工程以外にもさらに任意の工程を有することもできる。例えば以下に説明する解砕処理工程をさらに有することができる。
(解砕処理工程)
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、還元処理工程によって得られた粒子を、解砕処理することもできる。すなわち、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、上述のように還元処理工程で得られた粒子に解砕処理を行う解砕処理工程をさらに有することもできる。
【0100】
本実施形態に係る複合タングステン酸化物粒子の製造方法により得られる複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径は、800nm以下であることが好ましい。しかし、還元処理工程によって得られた粒子は凝集していることがある。この様に還元処理工程後に得られる粒子に凝集が生じる場合があるのはナノサイズの粒子を気相法で合成し、乾燥した粉末の形態で捕集しているため、またこの乾燥した粉末を還元処理する際に熱エネルギーを加えるため、と考えられる。複合タングステン酸化物粒子は分散した状態であると可視光線領域における特に優れた透過特性と赤外線領域における特に高い吸収特性を示すことが知られる。このため、還元処理工程後に得られる粒子の状態によっては、弱い解砕処理を行うことで分散したナノサイズの粒子とすることが好ましい。
【0101】
解砕処理工程において用いる解砕手段としては特に限定されないが、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた解砕処理方法が挙げられる。その中でも、媒体メディア(ビーズ、ボール、オタワサンド)を用いるビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体撹拌ミルで解砕させることが、所望とする平均粒子径とするために要する時間を短縮する観点から好ましい。
【0102】
なお、既述の様に固相法で合成した複合タングステン酸化物はサブミクロンサイズの粒子をナノサイズまで粉砕するためには、例えば粒径が0.3mmのビーズを用いて数時間以上の粉砕処理を行う必要がある。一般に、解砕や粉砕処理では粒子径の大きなビーズを用いると、ビーズ同士の衝突エネルギーが増加することで解砕や粉砕時に被処理粒子が受けるエネルギーが増加する。そのため、粒径が大きな媒体を用いることで、結果として解砕後の被処理粒子の粒子径は細かくできる。しかしながら、この様に粒径の大きな媒体を用いると、解砕や、粉砕時に被処理粒子がダメージを受けて、被処理粒子を構成する物質の結晶構造が変化する場合がある。
【0103】
一方、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法において、還元処理工程後に得られる複合タングステン酸化物粒子が既に細かく、また弱い力で凝集しているに過ぎない。このため、本実施形態の複合タングステン酸化物の製造方法において解砕処理工程を実施する場合、解砕用の媒体としては例えば粒径が10μm以上500μm以下のビーズを好適に用いることができ、該ビーズを用いて解砕処理を行うことができる。これは、解砕用の媒体として、粒径が500μm以下のビーズを用いることで、複合タングステン酸化物粒子に過剰なエネルギーを加え、結晶構造が変化すること等を抑制できるからである。また、粒径が10μm以上のビーズを用いることで、複合タングステン酸化物粒子を十分に解砕し、ナノサイズの粒子とすることができるからである。
【0104】
解砕用の媒体として用いるビーズの材質は特に限定されないが、解砕処理工程後に、分散液中で複合タングステン酸化物粒子と比重の差により分離することが可能な材料であることが好ましく、例えばジルコニア製のビーズ、すなわちジルコニアビーズを好適に用いることができる。
【0105】
また、解砕工程における解砕処理の時間は特に限定されないが、例えば5分以上1時間以下であることが好ましい。これは、解砕処理の時間を1時間以下とすることで、複合タングステン酸化物粒子に過剰なエネルギーを加え、結晶構造が変化すること等を特に抑制できるからである。また、解砕処理の時間を5分以上とすることで、複合タングステン酸化物粒子を十分に解砕し、ナノサイズの粒子とすることができるからである。
[複合材料製造装置、還元処理装置]
本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法に好適に用いることができる複合材料製造装置、還元処理装置の構成例について以下に説明する。
(複合材料製造装置)
図1は、複合材料製造装置10を模式的に示した図である。
【0106】
複合材料製造装置10は、液滴形成部11と、輸送部12と、反応部13と、回収部14とを有することができ、既述の液滴形成工程や、昇温工程、熱処理工程を実施することができる。
【0107】
なお、
図1に示すように、液滴形成部11と、輸送部12と、反応部13と、回収部14とは配管により接続しておくことが好ましい。
【0108】
液滴形成部11には、必要に応じて付帯設備を接続しておくことができる。例えば液滴形成部11には、原料溶液であるタングステン源を含む溶液を格納する第1格納部151や、M元素源を含む溶液を格納する第2格納部152を接続しておくことができる。なお、第1格納部151と液滴形成部11との間の配管や、第2格納部152と液滴形成部11との間の配管には、例えばポンプ151A、152Aをそれぞれ設けておき、所望の流速で各溶液を液滴形成部11に供給可能に構成できる。また、液滴形成部11で形成した液滴を輸送部12等に搬送するためのキャリアガスを収納したキャリアガスタンク16を接続しておくことができる。
【0109】
そして、第1格納部151、及び第2格納部152から液滴形成部11に供給されたタングステン源を含む溶液、およびM元素源を含む溶液は、
図1に示した装置では液滴形成部11内の上部で混合され、原料混合溶液が形成される。次いで、形成された原料混合溶液を用いて、液滴形成部11により液滴が形成される。
【0110】
なお、
図1に示した液滴形成部11は超音波噴霧装置の場合を例に示しており、例えば超音波照射部111により、原料混合溶液に超音波が照射され、液滴が形成される。
【0111】
上述のように、液滴形成部11にはキャリアガスを充てんしたキャリアガスタンク16を接続しておくことができ、該キャリアガスタンク16から液滴形成部11に対してキャリアガスが供給される。そして、液滴形成部11で形成した液滴はキャリアガスにより搬送され、輸送部12を介して反応部13に供給される。
【0112】
輸送部12は、液滴形成部11と、反応部13とを接続しており、液滴形成部11で形成した液滴を反応部13へと供給することができる。輸送部12を通過する液滴を予め加熱し、反応部13の温度が下がらないように、輸送部12内を加熱できるように構成しておくことが好ましい。具体的には例えば、輸送部12の外側にヒーターを巻きつける等して設置し、輸送部12の内部の温度を30℃以上80℃以下に保つことが好ましい。
【0113】
反応部13では、既述の昇温工程、及び熱処理工程を実施することができる。このため、反応部13は、例えば
図1に示したように耐熱性の配管131と、該配管131を加熱するヒーター132とを有することができる。
【0114】
配管131としては、例えばセラミック製の配管を用いることができる。
【0115】
反応部13の長さは特に限定されるものではなく、昇温工程、及び熱処理工程の所定の温度まで加熱することができ、熱処理工程の時間を十分に確保できるように選択することが好ましい。
【0116】
反応部13の配管131の長さは、所定の温度まで加熱し、熱処理工程の時間を十分に確保する観点から1m以上であることが好ましい。配管131の長さの上限は特に限定されないが、過度に長くすると多くのキャリアガスを要することになり、また装置のサイズも大きくなることから、5m以下であることが好ましい。
【0117】
また、配管131の直径(内径)についても特に限定されないが、生産性の観点から2cm以上であることが好ましい。配管131の直径(内径)の上限値は特に限定さないが、その中心部と、壁面部との温度差が過度に大きくならないように選択することが好ましく、配管131の直径は例えば20cm以下であることが好ましい。
【0118】
反応部13の配管131は、その長手方向に沿って温度勾配を有するのが通常である。例えば、反応部入口131A側の温度が低く、反応部出口131Bに向かって温度が上昇する。
【0119】
このため、反応部出口131B近傍に温度が500℃以上となる温度領域を形成できるように、各種条件を設定することが好ましい。
【0120】
また、特に既述の熱処理工程において被処理物を1000℃以上の温度で熱処理する場合には、反応部出口131B近傍に温度が1000℃以上となる温度領域を形成できるように、各種条件を設定することが好ましい。また、熱処理工程において、例えば1000℃以上の温度での熱処理時間を1秒以上とする場合、反応部13内の1000℃以上となる温度領域を、被処理物が通過する時間が1秒以上となるように、各種条件を設定することが好ましい。具体的には例えば、配管131内の温度分布を予め測定しておき、キャリアガスの供給速度等を調整することが好ましい。
【0121】
回収部14では、反応部13で生成した複合タングステン酸化物粒子を回収することができる。回収部14の構成は特に限定されるものではなく、製造する複合タングステン酸化物粒子の粒径等に応じて選択することができる。回収部14としては、例えば各種フィルターを用いることができる。もしくは、静電型捕集器を用いることができる。なお、回収部14でタングステン源を含む溶液等に含まれていた液体などが析出しないように、回収部14の周囲にヒーター等の加熱手段を配置し、加熱しておくこともできる。
【0122】
複合材料製造装置10の内部は密閉されており、キャリアガスタンク16から液滴形成部11にガスが流入し、回収部14から流出するようにガス流が構成されていることが好ましい。
(還元処理装置)
還元処理装置では、既述の還元処理工程を実施することができる。
【0123】
還元処理装置は、既述の還元処理工程を実施できるように構成されていればよく、特に限定されない。例えば、既述の複合材料製造装置で得られた粒子である複合タングステン酸化物粒子を格納する容器と、該容器内に還元雰囲気とする混合ガスを供給するガス配管と、該容器を加熱する熱源を備えればよい。
【0124】
なお、容器内に還元雰囲気とする混合ガスを導入、排気し、被処理物である複合タングステン酸化物粒子を該混合ガスの気流下に置くこともできる。この場合には、係る気流を形成できるように、ガス配管として混合ガスの供給配管、及び排気配管を設けておくことができる。
【0125】
また、容器内の複合タングステン酸化物粒子を撹拌する撹拌羽なども併用してもよい。
【0126】
図2は還元処理装置の一構成例を模式的に示した図であり、還元処理装置20の反応管21の中心軸を通る面での断面図を示している。
【0127】
還元処理装置20は、横型の管状炉であり、反応管21の一方の口21Aに図示しないガス導入管を、該管状炉の他方の口21Bに図示しないガス排気管を取り付けて用いることができる。そして、一方の口21A側から還元雰囲気とする混合ガスを供給することで、反応管21内を還元雰囲気とすることができる。
【0128】
反応管21の周囲にはヒーター22を設けておくことができ、複合タングステン酸化物粒子は、ボート等のセラミック製の容器23に入れ、管状炉の反応管21内のヒーター22に対応した位置に配置できる。
【0129】
係る還元処理装置20を用い、反応管21内を還元雰囲気とし、ヒーター22により所望の温度に加熱することで、容器23に入れられた複合タングステン酸化物粒子24の還元処理を行うことができる。
【0130】
以上に説明した本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法によれば、液滴形成部や、ヒーター等の導入コストの低い設備を用いることができる。また、近赤外線吸収粒子である複合タングステン酸化物粒子を、長時間の粉砕などのプロセスを経ることなく直接的に得ることができ、工程数も少なくすることができる。従って、容易に複合タングステン酸化物粒子を製造できる。
【0131】
さらに、還元処理工程を実施することで、確実に赤外線吸収特性を発現することができ、また熱処理工程で合成された複合タングステン酸化物粒子に異相が含まれても、異相を低減、除去できる。そのため、本実施形態の複合タングステン酸化物粒子の製造方法は、産業上の利用価値が高い。
【実施例】
【0132】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[比較例1]
図1に示した複合材料製造装置10を用いて、複合タングステン酸化物粒子として、Cs
0.32WO
3粒子の製造を行い、評価を行った。以下、具体的な条件について説明する。
【0133】
図1に示した複合材料製造装置10は、液滴形成部11と、輸送部12と、反応部13と、回収部14とを有しており、液滴形成部11と、輸送部12と、反応部13と、回収部14とは配管により接続されている。
【0134】
液滴形成部11には、原料溶液であるタングステン源を含む溶液を格納する第1格納部151、M元素源を含む溶液を格納する第2格納部152、液滴形成部11で形成した液滴を輸送部12等に搬送するためのキャリアガスを収納したキャリアガスタンク16を接続しておいた。
【0135】
まず、タングステン源を含む溶液として、(NH4)10(W12O41)・5H2Oで表されるパラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて1.25mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。そして、係るパラタングステン酸アンモニウム水溶液は、第1格納部151に入れ、第1格納部151に配管で接続された液滴形成部11に、ポンプ151Aにより連続して供給されるように構成した。
【0136】
また、M元素源を含む溶液として、炭酸セシウム(シグマアルドリッチ社製)、及び超純水を用いて2.4mmol/Lの炭酸セシウム水溶液を調製した。そして、係る炭酸セシウム水溶液は、第2格納部152に入れ、第2格納部152に配管で接続された液滴形成部11に、ポンプ152Aにより連続して供給されるように構成した。
【0137】
なお、上述のようにポンプ151A、152Aにより第1格納部151、及び第2格納部152から、配管を介して液滴形成部11に各溶液が一定の流速で供給され、液滴形成部11内の上部で両溶液が混合され原料混合溶液が形成されるように構成されている。そして、液滴形成部11内で形成される原料混合溶液中の1モルのタングステンに対するセシウムのモル数の割合が0.32となるように供給速度、及び各溶液の濃度を調整した。具体的には、上記各溶液を等量づつ、すなわち単位時間あたりの供給体積が同じになるように供給した。その結果、原料混合溶液中では、0.625mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウムと1.2mmol/Lの炭酸セシウムとが含まれていた。
【0138】
液滴形成部11には、キャリアガスタンク16が接続されており、キャリアガスタンク16としては空気ボンベを用いた。そして、複合タングステン酸化物粒子を製造している間、液滴形成部11にはキャリアガスとして空気ガスが4L/minの流量で供給されるように構成した。
【0139】
液滴形成部11には、超音波照射部111が設けられており、液滴形成部11で形成された原料混合溶液に対して超音波を照射し、直径が1μm以上5μm以下の液滴を形成できるように超音波の出力を調整しておいた。なお、液滴形成部11としては、超音波式ネブライザ(オムロンヘルスケア株式会社製 型式:NE-U17 超音波発信周波数1.7MHz)を用いた。
【0140】
そして、輸送部12の外側にヒーターを配置し、輸送部12の内部の温度を70℃に保つように構成した。
【0141】
反応部13は、配管131を備えており、配管131にはセラミック製の長さ1.3m、内径28.5mmの円筒形状の管を用いた。
【0142】
反応部13は、ヒーター132により配管131の外部から加熱するように構成されており反応部入口131Aから、反応部出口131Bに向かって温度が高くなるように温度を設定した。
【0143】
本比較例では、反応部出口131B近傍における最高温度が1200℃となるようにヒーター132の温度を設定した。本比較例で用いた反応部の温度分布を
図3に示す。
図3は、配管131の長さ方向に沿って2cm毎に温度を熱電対により測定して得られた温度分布曲線を示したものである。なお、配管131と回収部14との間の配管部分でも一部温度を測定している。
図3中横軸は、反応部入口131Aの位置を0とした場合の、反応部入口131Aからの、配管131の長さ方向に沿った測定点の位置(距離)x(cm)を示している。また、
図3中縦軸は、配管131の長さ方向の各位置における炉内温度を示している。
【0144】
図3に示したように、反応部入口131Aから、反応部出口131Bに向かって温度が徐々に高くなるように温度分布が形成され、1000℃以上になる温度領域も設定されていることが確認できる。
【0145】
回収部14には、バグフィルターを配置し、反応部13で昇温工程、及び熱処理工程を終え、形成された複合タングステン酸化物粒子を回収できるように構成した。粉末を乾燥させた状態で回収するため、ガラスフィルターの周囲をガラス繊維テープで目張りし、120℃に加熱した。なお、加温しないと蒸発した液滴が析出する場合がある。
【0146】
以上の条件により、複合タングステン酸化物粒子の製造を行った。
【0147】
具体的には、液滴形成部11において、パラタングステン酸アンモニウム水溶液と、炭酸セシウム水溶液との原料混合溶液の液滴を形成し(液滴形成工程)、炉体温度が1200℃に設定された反応部13にキャリアガスにより該液滴を供給し、昇温工程と、熱処理工程とを実施した。反応部13の配管131内は、
図3に示した温度分布を有し、キャリアガスの流量を4L/minとしたことから、液滴は1000℃まで昇温され(昇温工程)、1000℃以上の熱処理温度で3.0秒間熱処理がなされている(熱処理工程)。
【0148】
回収部14で回収された複合タングステン酸化物粒子について以下の評価を行った。
(1)粉末X線回折
得られた複合タングステン酸化物粒子について、粉末X線回折装置(Bruker社製 型式:D2 PHASER)を用い、粉末X線回折パターン(XRDパターン)の測定を行った。なお、線源としてはCuKα線を用い、管電圧40kV、管電流30mAとして粉末X線回折パターンの測定を行った。
【0149】
得られたXRDパターンを
図4に示す。
図4に示したように、XRDパターンから、得られた複合タングステン酸化物粒子は、2θが15、28、30°近傍にCsW
1.6O
6相のピークが確認できたものの、ほぼCs
0.32WO
3の単相であることが確認できた。
【0150】
(2)透過率評価
比較例1で得られた複合タングステン酸化物粒子の濃度が0.02質量%となるようにMIBK(メチルイソブチルケトン)に分散した分散液を、光路長10mmの溶液用セルに充填して光学試料を作製した。得られた光学試料を波長300nm~2100nmの範囲で積分球を備えた分光光度計(日本分光社製、型式:V-670)で透過率を測定した。結果を
図5に示す。
【0151】
図5に示すように、比較例1で得られた複合タングステン酸化物粒子は、波長が900nm以上の赤外線領域における吸収を全く発現しなかった。これは、比較例1に係る粒子は還元処理を行っておらず、赤外線吸収特性が発現しなかったためと考えられる。
[実施例1]
タングステン源を含む溶液として、パラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて10mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。また、M元素源を含む溶液として、炭酸セシウム(シグマアルドリッチ社製)、及び超純水を用いて19.2mmol/Lの炭酸セシウム水溶液を調製した。そして、以上のタングステン源を含む溶液、およびM元素源を含む溶液を用いた点以外は比較例1と同様に熱処理工程を実施し、粒子を得た。
【0152】
次いで、熱処理工程後に得られた粒子について、還元処理温度を650℃として
図2に示した還元処理装置20を用いて還元処理を実施し、複合タングステン酸化物粒子を得た(還元処理工程)。
【0153】
還元処理装置20は、横型の管状炉であり、セラミック製のボートである容器23に熱処理工程後に得られた粒子を入れ、該容器23が反応管21内の最高温度、すなわち上記還元処理温度となる位置に配置した。
【0154】
反応管21の一方の口21Aに図示しないガス導入管を、該管状炉の他方の口21Bに図示しないガス排気管を取り付けて用いた。そして、一方の口21A側から、不活性ガスであるアルゴンと、還元性ガスであるH2ガスとを含む混合ガスを供給することで、反応管21内を還元雰囲気とした。なお、混合ガス中のH2ガスの含有量は体積割合で5%とし、反応管内の圧力が0.08MPaとなるように供給した。
【0155】
反応管21の周囲にはヒーター22を設けておき、室温から650℃まで昇温し、容器23を置いた部分が還元処理温度に到達後、1時間保持し、その後室温まで冷却することで還元処理を行った。
(1)透過率評価
還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子の光学特性の評価を行った。
【0156】
本実施例で還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子を用いた点以外は、比較例1と同様にして分散液を作製し、透過率を測定した。結果を
図6に示す。
【0157】
図6に示すように、波長が900nm以上の赤外線領域において透過率10%以下となる吸収を示した。波長が500nm~800nm程度の可視光線領域における透過率は最大で48%であった。
【0158】
このことから、可視光線領域の光を十分に透過させつつ、優れた赤外線吸収特性を発揮できていることを確認できた。
(2)TEM像観察
得られた複合タングステン酸化物粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope 日本電子株式会社製 型式:JEM-3000F)を用いて観察を行った。観察は印加電圧を297kVとして行った。
【0159】
得られたTEM像より視野内の200個の粒子を無作為に選択した。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径として求めたところ、32.8nmであった。
[実施例2]
タングステン源を含む溶液として、パラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて2.5mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。また、M元素源を含む溶液として、炭酸セシウム(シグマアルドリッチ社製)、及び超純水を用いて4.8mmol/Lの炭酸セシウム水溶液を調製した。そして、以上のタングステン源を含む溶液、およびM元素源を含む溶液を用いた点および熱処理工程における1000℃以上となる温度領域を約半分とした点以外は比較例1と同様に熱処理工程を実施し、粒子を得た。
【0160】
なお、本実施例では、熱処理工程における1000℃以上の熱処理温度で熱処理される時間は1.5秒となる。
【0161】
次いで、熱処理工程後に得られた粒子について、実施例1の場合と同様にして還元処理を実施し、複合タングステン酸化物粒子を得た(還元処理工程)。
(1)透過率評価
得られた複合タングステン酸化物粒子を用いた点以外は、比較例1と同様にして分散液を作製し、透過率を測定した。結果を
図6に示す。
【0162】
図6に示すように、波長が900nm以上の赤外線領域において透過率10%以下となる吸収を示した。波長が500nm~800nm程度の可視光線領域における透過率は最大で44%であった。
【0163】
このことから、可視光線領域の光を十分に透過させつつ、優れた赤外線吸収特性を発揮できていることを確認できた。
【0164】
なお、実施例2では、実施例1と比較して原料濃度を低下させているため粒子サイズが微細化しており、かつ還元温度を650℃としているため、還元後の結晶相にタングステンが生成した可能性が高い。そして、タングステン相の影響により、赤外線領域での吸収、および可視光線領域での透過率が、実施例1と比較して若干低下したと考えられる。
(2)TEM像観察
得られた複合タングステン酸化物粒子について、実施例1と同様の条件で透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。
【0165】
【0166】
本実施例で得られた複合タングステン酸化物のほとんどは
図7(A)、
図7(B)に示すように50nm以下の微細な粒子であることが確認できた。ただし、一部に
図8に示す100nmの球状粒子が含まれていることが確認できた。
【0167】
得られたTEM像より視野内の200個の粒子を無作為に選択した。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径として求めたところ、62.7nmであった。
[実施例3]
タングステン源を含む溶液として、パラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて0.625mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。また、M元素源を含む溶液として、炭酸セシウム(シグマアルドリッチ社製)、及び超純水を用いて1.2mmol/Lの炭酸セシウム水溶液を調製した。そして、以上のタングステン源を含む溶液、およびM元素源を含む溶液を用いた点以外は比較例1と同様に熱処理工程を実施し、粒子を得た。
【0168】
次いで、熱処理工程後に得られた粒子について、実施例1の場合と同様にして還元処理を実施し、複合タングステン酸化物粒子を得た(還元処理工程)。
(1)粉末X線回折
還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子について比較例1と同じ条件で粉末X線回折パターン(XRDパターン)の測定を行った。
図9に実施例3の還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子のXRDスペクトルを示す。
図9に示すように、Cs
0.32WO
3相以外にWが析出していることが確認できた。また、CsW
1.6O
6相も確認できた。これは、本実施例では、実施例1と比較して原料濃度を低下させているため粒子サイズが微細化しており、かつ還元温度を650℃としているため、還元処理工程での還元が実施例1の場合よりも進行したためと考えられる。
(2)透過率評価
得られた複合タングステン酸化物粒子を用いた点以外は、比較例1と同様にして分散液を作製し、透過率を測定した。結果を
図6に示す。
【0169】
図6に示すように、波長が900nm以上の赤外線領域において透過率10%以下となる吸収を示した。波長が500nm~800nm程度の可視光線領域における透過率は最大で52%であった。
【0170】
このことから、可視光線領域の光を十分に透過させつつ、優れた赤外線吸収特性を発揮できていることを確認できた。
【0171】
なお、実施例3では、実施例1と比較して原料濃度を低下させているため、複合タングステン酸化物粒子の粒子サイズが微細化し、可視光線領域における透過率が向上したと考えられる。ただし、複合タングステン酸化物粒子が微細化し、かつ還元温度を650℃としているため、還元後の結晶相にタングステンが生成した可能性が高く、既述の様にXRDスペクトルからも確認できた。
(3)TEM像観察
得られた複合タングステン酸化物粒子について、実施例1と同様の条件で透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。
【0172】
【0173】
得られたTEM像より視野内の200個の粒子を無作為に選択した。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径として求めたところ、23.8nmであった。
[実施例4]
タングステン源を含む溶液として、パラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて1.25mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。また、M元素源を含む溶液として、炭酸セシウム(シグマアルドリッチ社製)、及び超純水を用いて2.4mmol/Lの炭酸セシウム水溶液を調製した。そして、以上のタングステン源を含む溶液、およびM元素源を含む溶液を用いた点以外は比較例1と同様に熱処理工程を実施し、粒子を得た。すなわち、熱処理工程までは、比較例1と同様にして粒子を得た。
【0174】
次いで、熱処理工程後に得られた粒子について、還元処理温度を600℃とした点以外は、実施例1の場合と同様にして還元処理を実施し、複合タングステン酸化物粒子を得た(還元処理工程)。
(1)粉末X線回折
還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子について比較例1と同じ条件で粉末X線回折パターン(XRDパターン)の測定を行った。得られたXRDパターンを
図4に示す。
図4に示したように、得られた複合タングステン酸化物粒子のXRDパターンは、
図4にあわせて示したJCPDS81-1244のCs
0.32WO
3相と一致することが確認できた。本実施例では、還元処理時の温度を600℃まで低下させているため、タングステン相が析出せず、単相のCs
0.32WO
3相のナノ粒子が得られた。
(2)透過率評価
還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子を用いた点以外は、比較例1と同様にして分散液を作製し、透過率を測定した。結果を
図12に示す。
【0175】
図12に示すように、波長が900nm以上の赤外線領域において透過率が概ね10%以下となる吸収を示した。波長が500nm~800nm程度の可視光線領域における透過率は最大で57%であった。
【0176】
このことから、可視光線領域の光を十分に透過させつつ、優れた赤外線吸収特性を発揮できていることを確認できた。
(3)TEM像観察
得られた複合タングステン酸化物粒子について、実施例1と同様の条件で透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。
【0177】
【0178】
図13(A)、
図13(B)に示すように、TEM像においても、粒径が100nm以下の微細な粒子が得られていることを確認できた。特に、粒径が30nm程度のサイズの粒子が多く、本サイズの粒子は結合もしくは凝集しやすい。
【0179】
図13(A)、
図13(B)に示したTEM像より視野内の200個の粒子を無作為に選択した。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、導出した粒度分布を
図14に示す。選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径として求めたところ、29.3nmであった。
[実施例5]
実施例4で還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子について、粒径が50μmのジルコニアビーズを用い、10分間の解砕処理を行った(解砕処理工程)。
【0180】
具体的にはまず、実施例4で還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子を200mg用意し、分散媒であるMIBK12.5mL(比重0.8)と、分散剤(商品名:EFKA440)0.2mLと混合し、複合タングステン酸化物粒子を分散させたインクを作製した。なお、インク中の、MIBKに対する複合タングステン酸化物粒子の質量濃度は2質量%となる。次いで、粒径が50μmのジルコニアビーズ(大研化学社製)を50mLのガラス瓶に導入し、ペイントシェーカーを用いて解砕した。
(1)透過率評価
解砕後に得られた分散液を用いた点以外は、比較例1と同様にして透過率の評価を行った。結果を
図15に示す。
【0181】
図15に示すように、波長が900nm、1400nm付近において、透過率が3%程度となる強い吸収を示した。そして、このような強い吸収を維持しながら波長が500nm~800nm程度の可視光線領域における透過率は最大で67%程度まで到達した。
【0182】
以上の結果から、実施例4で還元処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子について、10分程度のわずかな解砕処理を加えることで赤外線領域の吸収を増加しつつ、可視光線領域での透過率が改善することを確認できた。
【0183】
また、実施例5の可視光線領域の透過率のピークは、波長490nmに発現するところ、実施例4では波長590nmに発現し、透過する光線の波長が異なることも確認された。
(2)TEM像観察
解砕処理工程後に得られた複合タングステン酸化物粒子について、実施例1と同様の条件で透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。
【0184】
【0185】
図16(A)、
図16(B)に示すように、TEM像においても、100nm以下の微細な粒子が得られていることを確認できた。30nmサイズの粒子が多く、本サイズの粒子は結合もしくは凝集しやすい。
【0186】
図16(A)、
図16(B)に示したTEM像より視野内の200個の粒子を無作為に選択した。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、導出した粒度分布を
図17に示す。選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径として求めたところ、28.6nmであった。一次粒子の大きさを測長しているため、
図14に示した解砕処理を行う前の実施例4の粒子サイズとほぼ同じ大きさであると考えられる。
【0187】
ただし、解砕処理を行う前の実施例4の複合タングステン酸化物粒子は一次粒子同士がゆるやかに結合しており、この結合が可視域におけるレイリー散乱を引き起こし、その最大値が低下していたと考えられる。一方、解砕処理を行った後の実施例5における複合タングステン酸化物粒子は一次粒子が全体的に分散していることが確認された。このため、可視光線領域におけるレイリー散乱が低下して透過率が改善した。また、表面プラズモン現象などの量子現象はナノ粒子が分散した状態で引き起こされるため、解砕処理にともなって赤外線領域における吸収が強まったと考えられる。
[実施例6]
タングステン源を含む溶液として、パラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて5mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。また、M元素源を含む溶液として、炭酸セシウム(シグマアルドリッチ社製)、及び超純水を用いて9.6mmol/Lの炭酸セシウム水溶液を調製した。そして、以上のタングステン源を含む溶液、およびM元素源を含む溶液を用いた点、および
図3に示した場合と同様に、反応部入口131Aから、反応部出口131Bに向かって温度が徐々に高くなるように温度分布が形成され、最高温度を800℃になる温度領域も設定したこと以外は、比較例1と同様にして熱処理工程により粒子を得た
次いで、熱処理工程後に得られた粒子について、実施例1の場合と同じ条件で還元処理を実施し、複合タングステン酸化物粒子を得た(還元処理工程)。
(1)透過率評価
得られた複合タングステン酸化物粒子を用いた点以外は、比較例1と同様にして分散液を作製し、透過率を測定した。結果を
図18に示す。
【0188】
図18に示すように、波長が900nm以上の赤外線領域において透過率10%以下となる吸収を示した。波長が500nm~800nm程度の可視光線領域における透過率は最大で33.6%程度であった。
【0189】
このことから、可視光線領域の光を十分に透過させつつ、優れた赤外線吸収特性を発揮できていることを確認できた。
【0190】
本実施例では、熱処理工程の最高温度を800℃としたため、熱処理工程において、昇華現象が発現せずに他の実施例と比較して粗大な粒子が生じ、可視光線領域における透過率の最大値が、他の実施例と比較して低くなったものと考えられる。
(3)TEM像観察
得られた複合タングステン酸化物粒子について、実施例1と同様の条件で透過型電子顕微鏡を用いて観察を行った。
【0191】
得られたTEM像を
図19(A)、
図19(B)、
図20(A)、
図20(B)に示す。TEM像において、100~800nm程度以下の微細な粒子が得られていることを確認できた。
【0192】
得られたTEM像より視野内の200個の粒子を無作為に選択した。そして、選択した粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の直径を該選択した粒子の粒子径とし、選択した粒子の粒子径の平均値を該複合タングステン酸化物粒子の平均粒子径として求めたところ、343nmであった。