(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】スリットバルブ及び注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B65D47/20 111
(21)【出願番号】P 2019157594
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070225(JP,A)
【文献】特開2017-114561(JP,A)
【文献】特開平06-278163(JP,A)
【文献】実公昭40-031982(JP,Y1)
【文献】特開2019-064740(JP,A)
【文献】特開平02-005975(JP,A)
【文献】特開2007-108270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
F16K 15/00-15/20
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着可能なキャップ本体に保持される環状基部と、該環状基部の一端部に設けられる弾性変形可能な隔壁と、該隔壁を複数の隔壁部分に分断するスリットと、を備え、該容器の内圧上昇に伴って該隔壁部分が弾性変形して該容器の内容物を注出させるスリットバルブであって、
前記隔壁は、低密度ポリエチレンで形成されるとともに、厚みが0.15mm~0.25mmであり、
前記隔壁部分の少なくとも一つは、該隔壁部分から突出するとともに前記隔壁を前記低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる第一凸部を有し、
前記第一凸部を設けた前記隔壁部分以外の該隔壁部分のうち、該第一凸部を設けた該隔壁部分に対向する該隔壁部分は、該隔壁部分から突出する第二凸部を有し、
前記第一凸部を設けた隔壁部分及び前記第二凸部を設けた隔壁部分は、それぞれ前記第一凸部及び第二凸部が設けられていない隔壁部分と隣合う、スリットバルブ。
【請求項2】
容器の口部に装着可能なキャップ本体に保持される環状基部と、該環状基部の一端部に設けられる弾性変形可能な隔壁と、該環状基部の中心軸線を通過して該隔壁を複数の隔壁部分に分断
するスリットと、を備え、該容器の内圧上昇に伴って該隔壁部分が弾性変形して該容器の内容物を注出させるスリットバルブであって、
前記隔壁は、低密度ポリエチレンで形成されるとともに、厚みが0.15mm~0.25mmであり、
前記隔壁部分のうち、対向する該隔壁部分の少なくとも1組は、該隔壁部分から突出するとともに前記隔壁を前記低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる第一凸部を有し、
前記第一凸部を設けた隔壁部分
は、それぞれ前記第一凸部及び
該隔壁部分から突出する凸部が設けられていない隔壁部分と隣合う、スリットバルブ。
【請求項3】
前記スリットを、前記隔壁の中央部分に十字状に設けた請求項1又は2に記載のスリットバルブ。
【請求項4】
前記隔壁部分は、隣り合う他の前記隔壁部分との縁部において肉厚部を有する、請求項1~3の何れか一項に記載のスリットバルブ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のスリットバルブが前記キャップ本体に保持された注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形可能な隔壁にスリットが設けられたスリットバルブ、及びこのスリットバルブを備える注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、リンスなどの化粧料や醤油、ソースなどの食品調味料を収容する容器においては、容器の口部に装着される注出キャップにスリットバルブを設けたものが使用されている(例えば特許文献1参照)。スリットバルブは、弾性変形可能な隔壁にスリット(切り込み)を設けて隔壁を複数の隔壁部分に分断したものであって、容器の胴部等を押圧して容器の内圧が上昇すると、隔壁部分が瞬時に弾性変形してスリットが開放され、胴部への押圧を止めて内圧上昇が停止すると、隔壁部分がすぐに復元してスリットが閉鎖される。すなわちこのようなスリットバルブを使用することによって、通常時においては、スリットが閉鎖されているために容器内の内容物と外気との接触を避けることができ、また使用時においては、使用者が容器を押圧するに合わせて意図した通りに内容物を注出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来のスリットバルブは、ゴム系(シリコーンゴムやエラストマー系樹脂など)の材料で形成されることが一般的である。しかし、ゴム系の材料は一般に使用される樹脂材料よりも高価格であるため、ゴム系の材料を使用したスリットバルブにおいては、コスト削減に限界があった。一方、一般に使用される樹脂材料(例えば低密度ポリエチレン)を使用する場合はコスト削減に有効であるが、内容物を意図した向きに注出できないことがあった。
【0005】
この点について
図3を参照しながら説明する。
図3に示した注出キャップ101は、キャップ本体102と、キャップ本体102に保持されるスリットバルブ103と、キャップ本体102に対してヒンジを介して一体に連結し、スリットバルブ103を覆ってキャップ本体102に保持される蓋体104とを備えるものである。
【0006】
スリットバルブ103は、キャップ本体102に保持される環状基部103aと、中心軸線Oを中心とする円板状であって、中央部が下方に向けて湾曲する隔壁103eと、中心軸線Oで交わる十字状のスリット103fを備えていて、隔壁103eの中央部は4つの隔壁部分103gに分断されている。また隔壁部分103gの一つには、隔壁部分103gから上方に向けて突出する円形状の第一凸部103hが設けられている。スリットバルブ103は、溶融した低密度ポリエチレンを金型内で冷却して形成されるものであって、溶融した低密度ポリエチレンを注入するゲートは、金型における第一凸部103hに対応する部位に設けられている。すなわち第一凸部103hは、スリットバルブ103を低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる部位である。
【0007】
このような注出キャップ101をボトル状をなす容器に注出キャップ101を装着し、容器の胴部を押圧して内容物を注出させたところ、特に胴部への押圧が弱い場合において、内容物が中心軸線Oに対して傾いて注出される現象が認められた。この点について詳細に検討を重ねたところ、
図3(c)に二点鎖線で示すように、第一凸部103hを設けた隔壁部分103gのみが先行して弾性変形して、そのために内容物が中心軸線Oに対して傾いて注出されていた。また
図3(d)に示すように、ある隔壁部分103gが他の隔壁部分103gの上に重なって食い違い状態となり、そのために内容物が傾いて注出される現象も認められた。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、コスト削減を図ることができるうえ、内容物を意図した向きに安定的に注出させることが可能なスリットバルブ、及びこのスリットバルブを備える注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器の口部に装着可能なキャップ本体に保持される環状基部と、該環状基部の一端部に設けられる弾性変形可能な隔壁と、該隔壁を複数の隔壁部分に分断するスリットと、を備え、該容器の内圧上昇に伴って該隔壁部分が弾性変形して該容器の内容物を注出させるスリットバルブであって、
前記隔壁は、低密度ポリエチレンで形成されるとともに、厚みが0.15mm~0.25mmであり、
前記隔壁部分の少なくとも一つは、該隔壁部分から突出するとともに前記隔壁を前記低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる第一凸部を有し、
前記第一凸部を設けた前記隔壁部分以外の該隔壁部分のうち、該第一凸部を設けた該隔壁部分に対向する該隔壁部分は、該隔壁部分から突出する第二凸部を有し、
前記第一凸部を設けた隔壁部分及び前記第二凸部を設けた隔壁部分は、それぞれ前記第一凸部及び第二凸部が設けられていない隔壁部分と隣合う、スリットバルブである。
【0011】
また本発明は、容器の口部に装着可能なキャップ本体に保持される環状基部と、該環状基部の一端部に設けられる弾性変形可能な隔壁と、該環状基部の中心軸線を通過して該隔壁を複数の隔壁部分に分断するスリットと、を備え、該容器の内圧上昇に伴って該隔壁部分が弾性変形して該容器の内容物を注出させるスリットバルブであって、
前記隔壁は、低密度ポリエチレンで形成されるとともに、厚みが0.15mm~0.25mmであり、
前記隔壁部分のうち、対向する該隔壁部分の少なくとも1組は、該隔壁部分から突出するとともに前記隔壁を前記低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる第一凸部を有し、
前記第一凸部を設けた隔壁部分は、それぞれ前記第一凸部及び該隔壁部分から突出する凸部が設けられていない隔壁部分と隣合う、スリットバルブでもある。
【0013】
前記スリットは、前記隔壁の中央部分に十字状に設けることが好ましい。
【0014】
前記隔壁部分は、隣り合う他の前記隔壁部分との縁部において肉厚部を有することが好ましい。
【0015】
また本発明は、前記のスリットバルブが前記キャップ本体に保持された注出キャップでもある。
【0016】
なお、本明細書等で「対向する」とは、2つのものが完全に正対しあうことのみを意味するものではなく、正対し合えない場合においては、その隣の位置で向かい合うことも含む。例えば、隔壁が奇数個の隔壁部分に分断されている場合において、第一凸部を設けた隔壁部分以外の隔壁部分に第二凸部を設けるにあたっては、第一凸部を設けた隔壁部分に正対するはずの隣の隔壁部分(すなわち5つの隔壁部分に分断されている場合は、第一凸部を設けた隔壁部分に対して、2つ隣(隣の隣)又は3つ隣の隔壁部分)に第二凸部を設ければよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスリットバルブ及び注出キャップによれば、ゴム系の材料を使用していた従来のスリットバルブ及び注出キャップに対してコスト削減を図ることができる。また内容物が中心軸線Oに対して傾いて注出されることもなく、内容物を意図した向きに安定的に注出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に従う注出キャップの第一実施形態を示す、(a)はスリットバルブ周辺の平面図であり、(b)は側面視での断面図であり、(c)はA部における部分拡大断面図である。
【
図2】本発明に従う注出キャップの第二実施形態を示す、(a)はスリットバルブ周辺の平面図であり、(b)は側面視での断面図であり、(c)はB部における部分拡大断面図である。
【
図3】比較例の注出キャップを示す、(a)はスリットバルブ周辺の平面図であり、(b)は側面視での断面図であり、(c)と(d)はC部における部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1を参照して、本発明に従う注出キャップの第一実施形態について説明する。なお、本明細書等において、「上」方向、「下」方向とは、
図1に示すように、周壁(符合2a)が下方に位置し、隔壁(符合3e)が上方に位置する状態での向きをいう。
【0020】
本実施形態の注出キャップ1は、キャップ本体2、スリットバルブ3、及び蓋体4で構成されていて、不図示の容器に装着して使用されるものである。ここで容器は、例えば底部、胴部、肩部及び口部を備えてボトル状に形成されるものであって、合成樹脂で形成され、胴部は可撓性を有している。また口部は、容器の上方に位置し、円筒状に形成されて上方を開口させたものであって、口部の外周面には、雄ねじ部が設けられている。
【0021】
キャップ本体2は、本実施形態では合成樹脂製であって、上記の口部を取り囲むとともに口部と共通する中心軸線Oを有する円筒状の周壁2aを備えている。周壁2aの内周面には、上記の口部に設けた雄ねじ部に適合する雌ねじ部2bが設けられていて、容器に対してキャップ本体2を、中心軸線Oを周回する向きに回転させると、雄ねじ部に雌ねじ部2bが螺合してキャップ本体2は容器に装着される。なお、キャップ本体2を容器に装着するにあたっては、ねじによるものに限られず、アンダーカットによるものなど、他の手段を採用してもよい。
【0022】
周壁2aの上端には、容器に装着した状態において口部の上方を覆う天壁2cが一体に連結している。天壁2cの中央部には、平面視で円形をなし、天壁2cを上下方向に貫く開口2dが設けられている。
図1に示すように本実施形態の開口2dは、下方において段部2eを有していて、段部2eの上方には、上方に向かうにつれて内側に傾く傾斜部2fが設けられている。
【0023】
また天壁2cは、開口2dを取り囲んで上方に向けて延在する内側環状壁2gと、内側環状壁2gの径方向外側に位置するとともに内側環状壁2gよりも高さの低い外側環状壁2hを備えている。
【0024】
スリットバルブ3は、開口2dにおいてキャップ本体2に保持される環状基部3aを備える。環状基部3aは、下方において段部2eに収まる厚肉下部3bを備えていて、厚肉下部3bの上方には、厚肉下部3bよりも薄肉であって、傾斜部2fの内側に位置するとともに上方に向かうにつれて内側に傾く縮径部3cが設けられている。また縮径部3cの上部には、厚肉上部3dが設けられている。
【0025】
環状基部3aの上端部には、中心軸線Oを中心とする円板状であって、中央部が下方に向けて湾曲する隔壁3eが設けられている。本実施形態の隔壁3eは、弾性変形可能であって、厚みが0.15mm~0.25mmとなるものである。
【0026】
隔壁3eには、中心軸線Oから径方向外側に向けて環状基部3aの手前まで延在するとともに互いに直交する4本のスリット3fが設けられている。換言すると隔壁3eには、中心軸線Oで交わる十字状のスリット3fが設けられている。このようなスリット3fによって隔壁3eの中央部は、中心角が90度の扇形になる4つの隔壁部分3gに分断されている。なお、スリット3fの本数は任意であって、隔壁3eを2つ以上に分断するものであればよい。
【0027】
これら4つの隔壁部分3gの一つには、上方に向けて突出するとともに平面視で円形状に形成された第一凸部3hが設けられている。本実施形態の第一凸部3hは、
図1(a)に示すように、隔壁部分3gを区画する2つのスリット3fから等角度となる線上(すなわち、スリット3fが延在する向きに対して45度傾いた線上)であって、中心軸線Oからスリット3fの長さを超えない位置(すなわち、半径がスリット3fの長さとなる円の内側)に設けられている。そして他の3つの隔壁部分3gには、第一凸部3hと略同一の形状になる第二凸部3jが設けられている。なお、第二凸部3jにおける隔壁部分3gとの位置関係は、上記の第一凸部3hと略同一(スリット3fから45度傾いた線上であって、中心軸線Oからの距離も第一凸部3hと略同一)である。
【0028】
ここで第一凸部3hと第二凸部3jの違いについて説明する。本実施形態の隔壁3eは、環状基部3aも含めて低密度ポリエチレンで形成されるものである。そしてスリットバルブ3を形成する金型には、溶融した低密度ポリエチレンを注入するゲートが第一凸部3hに対応する部位に設けられている。すなわち第一凸部3hは、隔壁3eを低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる部位である。一方、本実施形態においては、第二凸部3jに対応する部位にはゲートを設けておらず、溶融した低密度ポリエチレンは第一凸部3hのみから注入されている。
【0029】
本実施形態では、隔壁3eを形成する低密度ポリエチレンとして、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用している。なお本発明における低密度ポリエチレンは、密度が更に低い超低密度ポリエチレン(VLDPE、ULDPE)でもよいし、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)でもよい。また、隔壁3eを低密度ポリエチレンで形成すればよく、スリットバルブ3における他の部位は、低密度ポリエチレン以外の材料で形成してもよい。
【0030】
このようなスリットバルブ3は、本実施形態ではキャップ本体2を形成する際にインサート成形されるものであり、これによりキャップ本体2に保持されている。なお、スリットバルブ3をキャップ本体2に保持させるにあたっては、予め形作ったキャップ本体2に対して接着や嵌合等によってスリットバルブ3を固着させたものでもよい。
【0031】
蓋体4は、スリットバルブ3を覆ってキャップ本体2に着脱自在に保持されるものである。
図1は、キャップ本体2に対して蓋体4を開いた状態を示している。本実施形態の蓋体4は、これを閉じた際にスリットバルブ3の上方を覆う頂壁4aと、頂壁4aの外縁部を取り囲む外周壁4bとを備えていて、ヒンジ4cを介してキャップ本体2に一体に連結している。頂壁4aの中央部には、蓋体4を閉じた際に内側環状壁2gと気密に当接する環状のシール壁4dが設けられている。そして外周壁4bの内周面には、蓋体4を閉じた際に外側環状壁2hに係合して蓋体4を閉蓋状態に維持する係合突起4eが設けられ、外周壁4bの外周面には、ヒンジ4cを設けた側とは逆側において、蓋体4を開く際に指掛かりとなる指掛け部4fが設けられている。
【0032】
このような注出キャップ1を使用して内容物の注出状態について調査したところ、容器の胴部を弱めに押圧した場合においても、内容物を中心軸線Oに沿う向きに安定的に注出させることが可能であり、また4つの隔壁部分3gが略同じように弾性変形していることが確認された。また胴部を強めに押圧しても、内容物が注出される向きは安定していた。そして胴部を押圧した際に内容物が注出されるタイミング、及び胴部への押圧を止めた際に内容物の注出が停止するタイミングも良好であった。
【0033】
なお本実施形態の注出キャップ1との比較のために、形状は上記のスリットバルブ3と同一であって、隔壁3eの厚みを0.10mmとしたスリットバルブ、及び隔壁3eの厚みを0.30mmとしたスリットバルブを作成して注出状態を確認したところ、弁としての機能を十分に満足することができなかった。一方、隔壁3eの厚みが0.15mm~0.25mmであれば、内容物の注出は何れも良好であった。
【0034】
また、
図1における第一凸部3hを設けた隔壁部分3gに対して中心軸線Oを挟んで対向する隔壁部分3gのみに第二凸部3jを設けたスリットバルブ(すなわち、第一凸部3hと第二凸部3jが中心軸線Oを挟んで対向するように各1個設けられたスリットバルブ)や、
図1における第一凸部3hを設けた隔壁部分3gに対して中心軸線Oを挟んで対向する隔壁部分3gのみに第一凸部3hを設けたスリットバルブ(すなわち、2つの第一凸部3hが中心軸線Oを挟んで対向するスリットバルブ)においても、内容物の注出結果は良好であった。また、
図1のように第一凸部3hと第二凸部3jが合計で4つ設けられる組み合わせでパターンを変えながら確認したところ、4つの隔壁部分3gに対して、2つの第一凸部3hが隣り合うとともに2つの第二凸部3jも隣り合う場合、2つの第一凸部3hが中心軸線Oを挟んで対向するとともに2つの第二凸部3jも中心軸線Oを挟んで対向する場合、3つの第一凸部3hと1つの第二凸部3jを設ける場合、4つ全てを第一凸部3hとする場合の何れにおいても、内容物の注出結果は良好であった。
【0035】
このような注出キャップ1には、
図2示すように肉厚部(符合13k)を設けてもよい。
図2に示した注出キャップ11は、上記のキャップ本体2と蓋体4を備える一方、上記のスリットバルブ3に替えてスリットバルブ13を備えるものである。
【0036】
本実施形態のスリットバルブ13は、上記のスリットバルブ3における環状基部3a、厚肉下部3b、縮径部3c、厚肉上部3d、隔壁3eと同様の環状基部13a、厚肉下部13b、縮径部13c、厚肉上部13d、隔壁13eを備えている。また隔壁13eの中央部には、中心軸線Oから径方向外側に向けて延在するとともに互いに直交する4本のスリット13fが設けられていて、隔壁13eの中央部を、中心角が90度の扇形になる4つの隔壁部分13gに分断している。また隔壁部分13gにおける隣り合う他の隔壁部分13gとの縁部には、隔壁13eの肉厚を部分的に厚くする肉厚部13kが設けられている。換言すると隔壁13eには、中心軸線Oで交わる十字状のスリット13fと、中心軸線Oで交わるとともにスリット13fに沿って延在する十字状の肉厚部13kが設けられている。本実施形態において肉厚部13kを設けた部位の隔壁13eの厚みは、これを設けていない部位における厚みの2倍程度である。また隔壁部分13gの一つには、隔壁3eを低密度ポリエチレンで形成する際のゲート跡となる第一凸部13hが設けられていて、これに対向する隔壁部分13gには、上記第二凸部3jと同様の第二凸部13jが設けられている。またスリットバルブ13も、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成されている。
【0037】
このような注出キャップ11を使用して内容物の注出状態について調査したところ、4つの隔壁部分13gの何れかが先行して弾性変形する現象は認められなかった。また4つの隔壁部分13gが食い違い状態に重なる現象も認められなかった。そして、容器の胴部を弱めに押圧した場合でも強めに押圧した場合でも、内容物を中心軸線Oに沿う向きに安定的に注出することができた。また、胴部を押圧した際に内容物が注出されるタイミング、及び胴部への押圧を止めた際に内容物の注出が停止するタイミングも良好であった。また本実施形態においても、2つの第一凸部13hが中心軸線Oを挟んで対向するスリットバルブや、上記の如き第一凸部13hと第二凸部13jが合計で4つ設けられる組み合わせでの各種のパターンのスリットバルブで調査したところ、何れにおいても内容物の注出結果は良好であった。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0039】
1:注出キャップ
2:キャップ本体
2a:周壁
2b:雌ねじ部
2c:天壁
2d:開口
2e:段部
2f:傾斜部
2g:内側環状壁
2h:外側環状壁
3:スリットバルブ
3a:環状基部
3b:厚肉下部
3c:縮径部
3d:厚肉上部
3e:隔壁
3f:スリット
3g:隔壁部分
3h:第一凸部
3j:第二凸部
4:蓋体
4a:頂壁
4b:外周壁
4c:ヒンジ
4d:シール壁
4e:係合突起
4f:指掛け部
11:注出キャップ
13:スリットバルブ
13a:環状基部
13b:厚肉下部
13c:縮径部
13d:厚肉上部
13e:隔壁
13f:スリット
13g:隔壁部分
13h:第一凸部
13j:第二凸部
13k:肉厚部
101:注出キャップ
102:キャップ本体
103:スリットバルブ
103a:環状基部
103e:隔壁
103f:スリット
103g:隔壁部分
103h:第一凸部
104:蓋体
O:中心軸線