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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】レンジ選択機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20231003BHJP
   F16H 63/38 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H63/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019195523
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021067356
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏臣
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-140121(JP,U)
【文献】実開平06-073530(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
F16H 63/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるレンジ選択機構であって、
レンジ選択操作に応じて回動されるマニュアルシャフトと、
トランスミッションケース内の前記マニュアルシャフトに結合され前記マニュアルシャフトに伴って回動されるレンジ選択レバーと、
トランスミッションケースに固定した状態で配置され複数のレンジ保持部を有する保持プレートと、
前記レンジ選択レバーと前記保持プレートの間に位置されると共に前記レンジ選択レバーの回動に伴って前記保持プレートに対して移動され前記複数のレンジ保持部のうち一つの前記レンジ保持部に保持される被保持体と、
トランスミッションケース内の前記マニュアルシャフトに結合され前記マニュアルシャフトに伴って回動される連結プレートと、
前記連結プレートに連結され前記連結プレートの回動に伴って移動されるパーキングロッドと、
前記被保持体を前記保持プレートに押し付ける方向に付勢する弾性部材とを備えた
レンジ選択機構。
【請求項2】
前記弾性部材として前記マニュアルシャフトに挿通されたコイルバネが用いられた
請求項1に記載のレンジ選択機構。
【請求項3】
前記レンジ選択レバーが前記保持プレートに離接する方向に弾性変形可能にされ、
前記弾性部材として前記レンジ選択レバーが用いられた
請求項1に記載のレンジ選択機構。
【請求項4】
前記連結プレートと前記レンジ選択レバーが一体に形成された
請求項1、請求項2又は請求項3に記載のレンジ選択機構。
【請求項5】
前記複数のレンジ保持部としてそれぞれ保持孔が形成され、
複数の前記保持孔が前記レンジ選択レバーの回動方向に離隔して形成された
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のレンジ選択機構。
【請求項6】
複数の前記保持孔のうち少なくとも二つの前記保持孔が異なる大きさに形成された
請求項5に記載のレンジ選択機構。
【請求項7】
前記保持プレートに複数の連結孔が形成され、
複数の前記保持孔と複数の前記連結孔が交互に連続した状態で位置された
請求項6に記載のレンジ選択機構。
【請求項8】
前記保持プレートが板状のベース部と前記ベース部から前記レンジ選択レバー側に突出された複数の突部とを有し、
複数の前記突部は前記レンジ選択レバーの回動方向に離隔して設けられ、
前記レンジ保持部が二つの前記突部の間の部分とされた
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のレンジ選択機構。
【請求項9】
複数の前記突部のうち少なくとも二つの前記突部の前記ベース部からの突出量が異なる
請求項8に記載のレンジ選択機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の駆動軸に連結されたパーキングギヤをロックするためのレンジ選択機構の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を有する車両においては、シフトレバーの操作によりパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)等のレンジの選択が行われる。また、パーキングスイッチの操作によりパーキングレンジへの選択が行われる車両もある。
【0003】
パーキングレンジは、車両を停止状態に維持するレンジであり、シフトレバー等によりパーキングレンジへの選択操作が行われると、駆動軸の回転が規制されて駆動輪の回転が不能な状態にされる。
【0004】
パーキングレンジへの遷移及びパーキングレンジの解除は、レンジ選択機構が動作されることにより行われる。レンジ選択機構は駆動軸に連結されたパーキングギヤとパーキングギヤの回転を規制するパーキングポールと車両の前後方向に延びパーキングポールを動作させるパーキングロッドと、マニュアルシャフトに結合されパーキングロッドと連動して動作されるマニュアルプレートとを有し、パーキングポールにはパーキングギヤに噛合される噛合部が設けられている。
【0005】
パーキングレンジへの選択操作が行われると、マニュアルシャフトが所定の方向に回動され、マニュアルシャフトの回動に伴ってマニュアルプレートが所定の方向に回動され、マニュアルプレートの回動に連動してパーキングロッドが所定の方向へ移動され、パーキングロッドの移動に伴ってパーキングポールがパーキングギヤに近付く方向へ移動され、噛合部がパーキングギヤに噛合されてパーキングギヤの回転が規制される。パーキングギヤの回転が規制されると、駆動軸の回転が規制されて駆動輪の回転が不能な状態にされ、パーキングレンジへの遷移が行われる。
【0006】
逆に、パーキングレンジ以外への選択操作が行われると、マニュアルシャフト及びマニュアルプレートが上記とは逆方向へ回動され、マニュアルプレートの回動に連動してパーキングロッドが上記とは逆方向へ移動され、パーキングロッドの移動に伴ってパーキングポールがパーキングギヤから離隔する方向へ移動され、噛合部のパーキングギヤへの噛合が解除されてパーキングギヤに対する回転の規制が解除される。パーキングギヤに対する回転の規制が解除されると、駆動軸の回転の規制が解除されて駆動輪の回転が可能な状態にされ、パーキングレンジ以外のレンジへの遷移が行われる。
【0007】
レンジ選択機構においては、板状に形成され一端が固定された状態で弾性変形可能にされたディテントスプリングがマニュアルプレートから離れた位置に設けられ、ディテントスプリングの弾性力によってマニュアルプレートに形成された凹部が押さえ付けられることにより、マニュアルプレートの回動が規制されレンジが保持されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-209877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記のようなパーキンキング機構においては、トランスミッションケース内に板バネ状のディテントスプリングを配置するための大きなスペースを確保する必要があり、レンジ選択機構における他の部品やトランスミッションケース内に配置される各部品の形状や大きさに制約が生じるおそれがある。また、ディテントスプリングの位置を考慮した上でマニュアルシャフトの位置を設計することにより、レイアウト設計の自由度が低下するおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、トランスミッションケース内の部品の形状や大きさやレイアウト設計の自由度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレンジ選択機構は、レンジ選択操作に応じて回動されるマニュアルシャフトと、トランスミッションケース内の前記マニュアルシャフトに結合され前記マニュアルシャフトに伴って回動されるレンジ選択レバーと、トランスミッションケースに固定した状態で配置され複数のレンジ保持部を有する保持プレートと、前記レンジ選択レバーと前記保持プレートの間に位置されると共に前記レンジ選択レバーの回動に伴って前記保持プレートに対して移動され前記複数のレンジ保持部のうち一つの前記レンジ保持部に保持される被保持体と、トランスミッションケース内の前記マニュアルシャフトに結合され前記マニュアルシャフトに伴って回動される連結プレートと、前記連結プレートに連結され前記連結プレートの回動に伴って移動されるパーキングロッドと、前記被保持体を前記保持プレートに押し付ける方向に付勢する弾性部材とを備えたものである。
【0012】
これにより、弾性部材によって被保持体が保持プレートに押し付けられた状態で保持される。
【0013】
第2に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、前記弾性部材として前記マニュアルシャフトに挿通されたコイルバネが用いられることが望ましい。
【0014】
これにより、コイルバネによって被保持体が保持プレートに対して押し付けられる方向に付勢される。
【0015】
第3に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、前記レンジ選択レバーが前記保持プレートに離接する方向に弾性変形可能にされ、前記弾性部材として前記レンジ選択レバーが用いられることが望ましい。
【0016】
これにより、レンジ選択レバーによって被保持体が保持プレートに対して押し付けられる方向に付勢される。
【0017】
第4に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、前記連結プレートと前記レンジ選択レバーが一体に形成されることが望ましい。
【0018】
これにより、マニュアルシャフトとパーキングポールを接続するための部材と被保持体を移動させるための部材とをそれぞれ必要としない。
【0019】
第5に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、前記複数のレンジ保持部として保持孔が形成され、複数の前記保持孔が前記レンジ選択レバーの回動方向に離隔して形成されることが望ましい。
【0020】
これにより、被保持体が保持孔に挿入された状態で保持される。
【0021】
第6に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、複数の前記保持孔のうち少なくとも二つの前記保持孔が異なる大きさに形成されることが望ましい。
【0022】
これにより、保持孔の大きさによって被保持体の保持孔に挿入される量が変化するため、被保持体が保持孔から外れる際の移動量が異なり、レンジ選択レバーを回動させるために必要とされる力が異なる。
【0023】
第7に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、前記保持プレートに複数の連結孔が形成され、複数の前記保持孔と複数の前記連結孔が交互に連続した状態で位置されることが望ましい。
【0024】
これにより、被保持体の少なくとも一部が移動時に保持孔又は連結孔に挿入される。
【0025】
第8に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、前記保持プレートが板状のベース部と前記ベース部から前記レンジ選択レバー側に突出された複数の突部とを有し、複数の前記突部は前記レンジ選択レバーの回動方向に離隔して設けられ、前記レンジ保持部が二つの前記突部の間の部分とされることが望ましい。
【0026】
これにより、被保持体がベース部における二つの突部の間の部分に保持される。
【0027】
第9に、上記した本発明に係るレンジ選択機構においては、複数の前記突部のうち少なくとも二つの前記突部の前記ベース部からの突出量が異なることが望ましい。
【0028】
これにより、被保持体が保持プレートに対して移動され突部を乗り越える際の移動量が異なり、レンジ選択レバーを回動させるために必要とされる力が異なる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、弾性部材によって被保持体が保持プレートに押し付けられた状態で保持されることでレンジが保持されるため、板バネ状で大きな配置スペースを必要とするディテントスプリングを設ける必要がなくなり、トランスミッションケース内における部品の形状や大きさの制約が小さくなり、レイアウト設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図2乃至図8と共に本発明レンジ選択機構の第1の実施の形態を示すものであり、本図は、レンジ選択機構を示す分解斜視図である。
図2】パーキングレンジが選択された状態を示す断面図である。
図3】レンジが切り換わる途中の被保持体の状態を示す断面図である。
図4】リバースレンジが選択された状態を示す断面図である。
図5】保持孔の大きさの違いによる被保持体の前後方向への移動量の違いを示す説明図である。
図6図7と共に保持プレートの変形例を示すものであり、本図は、保持プレートを示す斜視図である
図7】パーキングレンジが選択された状態を示す断面図である。
図8】連結プレートとレンジ選択レバーが一体に形成された例を示す分解斜視図である。
図9図10及び図11と共に本発明レンジ選択機構の第2の実施の形態を示すものであり、本図は、レンジ選択機構を示す分解斜視図である。
図10】パーキングレンジが選択された状態を示す断面図である。
図11】連結プレートとレンジ選択レバーが一体に形成された例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明のレンジ選択機構を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0032】
レンジ選択機構にはマニュアルシャフトが設けられており、以下の説明にあっては、マニュアルシャフトの軸方向を前後方向として前後上下左右の方向を示すものとする。ただし、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0033】
<第1の実施の形態の構成>
まず、第1の実施の形態に係るレンジ選択機構1の構成について説明する(図1乃至図8参照)。レンジ選択機構1は、車両における自動変速機構を備えた動力伝達装置に設けられている。
【0034】
車両においては、運転者等がシフトレバーの操作を行うことにより、パーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)等のレンジの選択が行われる。また、パーキングスイッチの操作によりパーキングレンジへの選択が行われる車両もある。
【0035】
パーキングレンジは、車両を停止させておくためのレンジであり、リバースレンジは車両を後進走行させるためのレンジであり、ニュートラルレンジはエンジン等の動力源からの駆動軸への動力伝達を遮断するレンジであり、ドライブレンジは車両を前進走行させるためのレンジである。パーキングレンジとニュートラルレンジは非走行レンジに相当し、リバースレンジとドライブレンジは走行レンジに相当する。
【0036】
シフトレバーにおいては、パーキングレンジとリバースレンジとニュートラルレンジとドライブレンジを選択するためのシフト位置がそれぞれ定められており、パーキングレンジの選択はシフトレバーがパーキングシフト位置に操作されることにより行われる。また、パーキングレンジの選択がパーキングスイッチの操作により行われる場合もある。
【0037】
レンジ選択機構1は、トランスミッションケース100に挿通されたマニュアルシャフト2と、トランスミッションケース100の内部においてマニュアルシャフト2に結合された連結プレート3と、マニュアルシャフト2に結合されたレンジ選択レバー4と、レンジ選択レバー4と一体になって移動される被保持体5と、連結プレート3に連結されたパーキングポール6と、トランスミッションケース100に固定された保持プレート7と、マニュアルシャフト2が挿通されたコイルバネ8とを有している(図1参照)。
【0038】
マニュアルシャフト2は前後方向に延びる状態で位置され、トランスミッションケース100の外面に設けられた制御ユニット101を貫通した状態でトランスミッションケース100に挿通されている。
【0039】
マニュアルシャフト2は外端部2aが図示しないケーブル等の接続部材を介して図示しないシフトレバーと接続され、シフトレバーの操作に応じて軸回り方向へ回動される。
【0040】
マニュアルシャフト2には、トランスミッションケース100の内部に位置された内端部2b寄りの部分に連結プレート3とレンジ選択レバー4が前後方向に離隔した状態で結合されている。
【0041】
連結プレート3は、前後方向を向く縦長の板状に形成され、長手方向における一端部がマニュアルシャフト2に結合されている。連結プレート3の長手方向における他端部にはパーキングロッド6が回動可能な状態で連結されている。連結プレート3はマニュアルシャフト2の回動に伴って回動される。
【0042】
レンジ選択レバー4は、前後方向を向く縦長の板状に形成され、長手方向における一端部がマニュアルシャフト2に結合されている。レンジ選択レバー4の長手方向における他端部には挿入孔4aが形成されている。レンジ選択レバー4はマニュアルシャフト2の回動に伴って回動される。
【0043】
被保持体5は、例えば、球状に形成され径が挿入孔4aの径より大きくされ、レンジ選択レバー4と保持プレート7の間に位置された状態で一部が挿入孔4aに挿入されている。なお、被保持体5はレンジ選択レバー4と一体に形成されていてもよく、この場合には、例えば、半球状に形成されていてもよい。
【0044】
被保持体5は、レンジ選択レバー4の回動に伴ってレンジ選択レバー4の回動方向へ移動される。
【0045】
パーキングロッド6は、連結プレート3に連結された連結軸部6aと連結軸部6aに対して直交する方向に屈曲された作用軸部6bとを有し、連結プレート3の回動に伴って変位される。
【0046】
作用軸部6bの連結軸部6aとは反対側の端部には、図示しないパーキングポールが係合されている。パーキングポールは噛合部を有し、パーキングロッド6の移動位置に応じて回動されることにより図示しないパーキングギヤに対して噛合又は噛合が解除される。パーキングギヤには図示しない駆動軸が連結されており、パーキングポールがパーキングギヤに噛合されることでパーキングレンジへの遷移が行われ、パーキングポールのパーキングギヤに対する噛合が解除されることでパーキングレンジ以外のレンジへの遷移が行われる。
【0047】
保持プレート7は、前後方向を向く縦長の板状に形成され、例えば、トランスミッションケース100の内面に固定されている。保持プレート7は、被保持体5が保持されるレンジ保持部として機能し前後方向に貫通された保持孔9、9、・・・を有している。保持孔9、9、・・・は、選択可能なレンジと同数が形成されている。
【0048】
保持孔9、9、・・・は径が被保持体5の径より小さくされている。保持孔9、9、・・・は、レンジ選択レバー4の回動方向に離隔した状態で形成され、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジにそれぞれ対応する保持孔9P、9R、9N、9Dが順に並んで位置されている。
【0049】
保持孔9、9、・・・はそれぞれ異なる大きさにされ、保持孔9Pが最も大きくされている。ただし、保持孔9、9、・・・のうち少なくとも二つの保持孔9、9の大きさが異なっていてもよく、特に、保持孔9Pが他の保持孔9、9、9よりも大きくされていてもよい。
【0050】
また、保持プレート7には前後方向に貫通された連結孔10、10、10が形成されている。連結孔10、10、10はいずれも保持孔9より小さくされている。
【0051】
保持孔9、9、・・・と連結孔10、10、10は交互に連続した状態で位置され、保持孔9Pと9Rの間には連結孔10Aが位置されている。
【0052】
マニュアルシャフト2には弾性部材として機能するコイルバネ8が支持されている。コイルバネ8としては、例えば、圧縮コイルバネが用いられている。コイルバネ8には、マニュアルシャフト2における制御ユニット101から外側に突出された部分が挿通されている。
【0053】
マニュアルシャフト2の外端部2aには支持プレート11が結合されている。コイルバネ8は、マニュアルシャフト2が挿通された状態で支持プレート11と制御ユニット101の間に圧縮された状態で位置され、マニュアルシャフト2を内端部2bから外端部2aへ向かう方向に付勢している。
【0054】
コイルバネ8によってマニュアルシャフト2が付勢されることで、レンジ選択レバー4が保持プレート7に近づく方向に付勢され、被保持体5がレンジ選択レバー4によって保持プレート7に押し付けられる。したがって、被保持体5は一部が保持孔9に挿入された状態で保持され、コイルバネ8の付勢力によってレンジ選択レバー4に押さえられ、保持孔9の開口縁に押し付けられる。
【0055】
<第1の実施の形態におけるレンジ切換動作>
次に、第1の実施の形態に係るレンジ選択機構1におけるレンジ切換動作について、パーキングレンジからリバースレンジに切り換えられる場合を例として説明する(図2乃至図4参照)。
【0056】
パーキングレンジが選択された状態においては、被保持体5は、コイルバネ8の付勢力によって保持孔9Pの開口縁に押し付けられ保持孔9Pに一部が挿入された状態で保持されている(図2参照)。このとき、被保持体5は他の一部がレンジ選択レバー4の挿入孔4aに挿入され、レンジ選択レバー4からの脱落が防止されている。
【0057】
レンジ選択レバー4が回動されると、被保持体5にはレンジ選択レバー4に伴う移動力が付与されるため、コイルバネ8の付勢力に反する方向に力が作用し、被保持体5は保持孔9Pから外れ、連結孔10Aに乗り上げた非保持状態にされる(図3参照)。このとき、コイルバネ8は最も圧縮された状態にされ、被保持体5はコイルバネ8の付勢力によって連結孔10Aの開口縁に押し付けられる。
【0058】
さらにレンジ選択レバー4が回動され、被保持体5がリバースレンジに対応する保持孔9Rまで移動されると、被保持体5はコイルバネ8の付勢力によって保持孔9Rの開口縁に押し付けられ保持孔9Rに一部が挿入された状態で保持される(図4参照)。こうして、パーキングレンジからリバースレンジへの切換が行われる。
【0059】
レンジ切換動作において、被保持体5は、少なくとも一部が保持孔9又は連結孔10に挿入された状態で移動される。したがって、被保持体5の保持プレート7からの脱落が防止される。なお、保持プレート7のレンジ選択レバー4の回動方向における両端部に被保持体5の保持プレート7からの脱落防止用の突出部が設けられていてもよい。
【0060】
また、被保持体5が球状に形成されレンジ選択レバー4と別体で設けられているため、被保持体5が保持孔9、9、・・・間を移動されるときにレンジ選択レバー4に対して回転可能であり、被保持体5の移動及びレンジの切換を円滑に行うことができる。さらに、被保持体5は保持プレート7に対しても回転可能であり、被保持体5の保持孔9、9、・・・間の移動及びレンジの切換を円滑に行うことができる。
【0061】
さらにまた、保持孔9、9、・・・がそれぞれ異なる大きさに形成されることで、被保持体5の保持孔9、9、・・・に対する挿入量がレンジによって異なり、被保持体5が連結孔10を乗り越える際の前後方向への移動量が異なる(図5参照)。これにより、切換が行われるレンジによって、レンジ選択レバー4の回動をさせるために必要とされる力が異なる。
【0062】
したがって、切換が行われるレンジによってシフトレバーを操作する際に必要とされる力が異なり、レンジの切換が切換位置に応じて異なる感覚となり、シフト位置が認識され易くなる。
【0063】
上記したように、レンジ選択機構1にあっては、ディテントスプリングに代わりコイルバネ8の弾性力によって被保持体5が保持プレート7に押し付けられた状態で保持されてレンジが保持される。
【0064】
したがって、板バネ状で大きな配置スペースを必要とするディテントスプリングを設ける必要がなくなり、トランスミッションケース100内における部品の形状や大きさの制約が小さくなり、レイアウト設計の自由度を高めることができる。
【0065】
また、レンジ保持部として保持孔9が形成されることで、被保持体5が保持孔9に挿入された状態で保持されるため、簡素な構成で被保持体5を保持することができる。
【0066】
上記ではレンジ保持部として保持プレート7に保持孔9が形成された場合を示したが、保持プレート7に代えて、保持プレート7Aが用いられてもよい(図6及び図7参照)。
【0067】
保持プレート7Aは、板状のベース部7aとベース部7aから突出された突部12、12、・・・とを有している。突部12、12、・・・はレンジ選択レバー4の回動方向に離隔した状態でレンジ選択レバー4側に突出されている。突部12、12、・・・は、例えば、ベース部7aからの突出量がそれぞれ異なっている。ただし、突部12、12、・・・のうち少なくとも二つの突部12、12のベース部7aからの突出量が異なっていてもよい。
【0068】
保持プレート7Aにおいては、突部12、12、・・・が補強リブとして機能するため、保持プレート7Aの十分な強度が確保される。
【0069】
ベース部7aにおける二つの突部12、12の間の部分は、レンジ保持部として機能される保持面13として形成されている。保持面13、13、・・・は、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジにそれぞれ対応する保持面13P、13R、13N、13Dが順に並んで位置されている。保持面13Pと保持面13Rの間には突部12Aが位置されている。例えば、突部12Aはベース部7aからの突出量が最も大きくされている。
【0070】
保持プレート7Aが用いられた場合のレンジ切換操作、例えば、パーキングレンジからリバースレンジへの操作において、パーキングレンジが選択された状態では、被保持体5は突部12、12Aに両側から押さえられ、コイルバネ8の付勢力によって保持面13P側に押さえられた状態で保持されている(図7参照)。
【0071】
レンジ選択レバー4が回動されると、被保持体5にはコイルバネ8の付勢力に反する方向に力が作用し、被保持体5は突部12Aに乗り上げた非保持状態にされる。このとき、コイルバネ8は最も圧縮された状態にされている。
【0072】
さらにレンジ選択レバー4が回動されると、被保持体5は突部12Aを乗り越え、突部12A、12に両側から押さえられた状態で、コイルバネ8の付勢力によって保持面13R側に押さえられ保持される。こうして、パーキングレンジからリバースレンジへの切換が行われる。
【0073】
また、被保持体5が球状に形成されレンジ選択レバー4と別体で設けられているため、被保持体5はレンジ選択レバー4及び保持プレート7Aに対して回転可能であり、被保持体5の突部12、12、・・・を乗り越えての移動及びレンジの切換を円滑に行うことができる。
【0074】
さらに、突部12、12、・・・のベース部7aからの突出量がそれぞれ異なることで、被保持体5が突部12を乗り越える際の前後方向への移動量が異なり、切換が行われるレンジによって、レンジ選択レバー4の回動をさせるために必要とされる力が異なる。
【0075】
したがって、切換が行われるレンジによってシフトレバーを操作する際に必要とされる力が異なり、レンジの切換が感覚的に捉えられ易くなり、シフト位置が認識され易くなる。
【0076】
また、上記のように構成されたレンジ選択機構1においては、連結プレート3とレンジ選択レバー4とが別部材として構成された例を示したが、連結プレート3とレンジ選択レバー4とが一体にされたレンジ切換レバー14として形成されていてもよい(図8参照)。
【0077】
レンジ切換レバー14は、前後方向を向く縦長の板状に形成され、長手方向における中央部がマニュアルシャフト2の内端部2bに結合され、長手方向における一端部にパーキングロッド6が回動可能な状態で連結され、長手方向における他端部に形成された挿入孔14aに被保持体5が挿入される。これにより、マニュアルシャフト2とパーキングポール6を接続するための部材と被保持体5を移動させるための部材とをそれぞれ必要としないため、部品点数の削減を図ることができる。
【0078】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施形態に係るレンジ選択機構1Aについて説明する(図9及び図11参照)。
【0079】
なお、以下に示すレンジ選択機構1Aは、上記したレンジ選択機構1と比較して、コイルバネ8に代えて弾性変形可能にされたレンジ選択レバー4Aによって被保持体5が付勢されることのみが相違する。したがって、レンジ選択機構1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分についてはレンジ選択機構1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0080】
レンジ選択レバー4Aは、前後方向を向く縦長の板状に形成され、保持プレート7に離接する方向へ弾性変形可能な状態で長手方向における一端部がマニュアルシャフト2に結合され、弾性部材として機能する(図9参照)。レンジ選択レバー4Aは、マニュアルシャフト2の回動に伴って回動される。
【0081】
レンジ選択レバー4Aの長手方向における他端部には挿入孔4aが形成され、挿入孔4aには被保持体5の一部が挿入されている。
【0082】
被保持体5は、レンジ選択レバー4Aの回動に伴ってレンジ選択レバー4Aの回動方向に移動されると共に、レンジ選択レバー4Aの弾性によって保持プレート7に押し付けられる方向に付勢されている。
【0083】
上記したレンジ選択機構1Aにおいては、被保持体5は一部が保持孔9に挿入され、レンジ選択レバー4Aの付勢力によって保持孔9の開口縁に押し付けられた状態で保持される。
【0084】
次に、第2の実施の形態に係るレンジ選択機構1Aにおけるレンジ切換動作について、パーキングレンジからリバースレンジに切り換えられる場合を例として説明する。
【0085】
パーキングレンジが選択された状態においては、被保持体5は、レンジ選択レバー4Aの弾性による付勢力によって保持孔9Pに一部が挿入された状態で保持孔9Pの開口縁に押し付けられ保持されている(図10参照)
【0086】
レンジ選択レバー4Aが回動されると、被保持体5にはレンジ選択レバー4Aの付勢力に反する方向に力が作用し、被保持体5は保持孔9Pから外れ、連結孔10Aに乗り上げた非保持状態にされる。このとき、レンジ選択レバー4Aは最も大きく変形され、被保持体5はレンジ選択レバー4Aの付勢力によって連結孔10Aの開口縁に押し付けられる。
【0087】
さらにレンジ選択レバー4Aが回動され、被保持体5がリバースレンジに対応する保持孔9Rまで移動されると、被保持体5は保持孔9Rに挿入されレンジ選択レバー4Aの付勢力によって保持孔9Rの開口縁に押し付けられた状態で保持される。こうして、リバースレンジへの切換が行われる。
【0088】
上記したように、レンジ選択機構1Aにあっては、ディテントスプリングに代わりレンジ選択レバー4Aの弾性力によってレンジが保持される。
【0089】
したがって、マニュアルシャフト2が軸方向へ移動されることがなく安定したレンジ切換操作が行われると共に、板バネ状で大きな配置スペースを必要とするディテントスプリングを設ける必要がなくなり、トランスミッションケース内における部品の形状や大きさの制約が小さくなり、レイアウト設計の自由度を高めることができる。
【0090】
なお、レンジ選択機構1Aにおいても、保持プレート7に代えて保持プレート7Aが用いられてもよい。
【0091】
また、レンジ選択機構1Aにおいても、連結プレート3とレンジ選択レバー4Aとが一体にされたレンジ切換レバー14Aとして形成されていてもよい(図11参照)。レンジ切換レバー14Aは、マニュアルシャフト2を基準として、パーキングロッド6が結合された部分が連結部15として設けられ、被保持体5が挿入された部分が保持プレート7に離接する方向へ弾性変形可能にされたレンジ選択部16として設けられている。レンジ切換レバー14Aにおいては、レンジ選択部16が弾性部材として機能する。これにより、マニュアルシャフト2とパーキングポール6を接続するための部材と被保持体5を移動させるための部材とをそれぞれ必要としないため、部品点数の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0092】
100…トランスミッションケース、1…レンジ選択機構、2…マニュアルシャフト、3…連結プレート、4…レンジ選択レバー、5…被保持体、6…パーキングロッド、7…保持プレート、8…コイルバネ、9…保持孔、10…連結孔、7A…保持プレート、12…突部、13…保持面、14…レンジ切換レバー、1A…レンジ選択機構、4A…レンジ選択レバー、14A…レンジ切換レバー、15…連結部、16…レンジ選択部
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