IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チャイナ コミュニケーションズ コンストラクション カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7359959水中トンネルの岸側接続システム及びその水中トンネル、水中トンネルの工事方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】水中トンネルの岸側接続システム及びその水中トンネル、水中トンネルの工事方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/073 20060101AFI20231003BHJP
   E02D 29/063 20060101ALI20231003BHJP
   E02D 23/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
E02D29/073
E02D29/063
E02D23/02 D
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022529091
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 CN2020129975
(87)【国際公開番号】W WO2021098751
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】201911135735.4
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518040965
【氏名又は名称】チャイナ コミュニケーションズ コンストラクション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHINA COMMUNICATIONS CONSTRUCTION COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.85 Deshengmenwai Street,Xicheng District,Beijing,100000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】リン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イン ハイチン
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/043490(WO,A1)
【文献】特開平07-042182(JP,A)
【文献】特開平09-287157(JP,A)
【文献】特表2002-508048(JP,A)
【文献】特開昭47-036531(JP,A)
【文献】特開2000-027208(JP,A)
【文献】国際公開第89/009870(WO,A1)
【文献】特開昭54-144022(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02009399(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第109653249(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103556655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/02
29/063
29/073
F16L 1/12
3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中トンネルの設計方法であって、水中トンネルの管体の一端又は両端に沿って軸方向引張力が加えられ、前記管体は直線形状の一体構造部材であり、前記水中トンネルに沿って前記管体の各端には複数の傾斜力が加えられ、前記水中トンネルの軸方向に沿った全ての上記傾斜力の分力の合力の大きさは、前記水中トンネルの当該端部に加えられた軸方向引張力であり、前記水中トンネルの管体の各端に加えられた各傾斜力に対応する受力点は、それぞれ前記水中トンネルの管体表面の長手方向に沿って異なる位置に設けられ、前記軸方向引張力の大きさは調節可能であり、軸方向引張力の大きさを調節することによって、前記水中トンネルの前記管体の固有振動周波数の大きさが調節可能であり、
前記水中トンネルの管体の各端に沿って加えられた全ての傾斜力と前記水中トンネルの軸線との夾角が30°未満である、ことを特徴とする水中トンネルの設計方法。
【請求項2】
前記水中トンネルの管体の同じ断面に沿って設けられた全ての受力点は対称に設けられ、且つ各前記受力点の受けた傾斜力の大きさが同じであり、前記傾斜力と前記水中トンネルの軸線との夾角も同じである、ことを特徴とする請求項1に記載の水中トンネルの設計方法。
【請求項3】
前記水中トンネルの管体両端の継手セグメントは岸側基盤を通過する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水中トンネルの設計方法。
【請求項4】
前記水中トンネルは、浮遊セグメントがアンカーシステムによって河床又は海床にアンカー固定されたアンカー引き式水中トンネルであり、又は浮遊セグメントがポンツーンに接続されたポンツーン式水中トンネルであり、又は浮遊セグメントにポンツーンとアンカーシステムが同時に接続されたポンツーン-アンカー引き式水中トンネルである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水中トンネルの設計方法。
【請求項5】
水中トンネルの管体の端部に位置し、前記管体の軸方向に沿って移動可能であり、引張力発生装置が接続されている継手セグメントを含み、前記引張力発生装置は、前記継手セグメントに軸方向引張力を加えるために用いられ、前記管体は直線形状の一体構造部材であり、前記引張力発生装置は、一端が前記継手セグメントに接続され、他端が岸側基盤又は固定構造に接続され、
当該引張力発生装置は外周に沿って取り付けられた複数のケーブルを含み、
前記引張力発生装置の各ケーブルには、いずれも引張力調節機構が設けられており、前記引張力調節機構は前記ケーブルの端部に位置するアンカールームを含み、前記アンカールームに前記ケーブル引張力を調節可能なレギュレーターが設けられており、全ての前記アンカールームはいずれも前記岸側基盤に配置され、各ケーブルの引張力を調節することによって、前記継手セグメントの受けた軸方向引張力の大きさを調節し、それにより前記水中トンネルの前記管体の固有振動周波数への調節を実現し、
前記ケーブルはいずれも前記水中トンネルの継手セグメントに傾斜して接続され、各前記ケーブルと前記水中トンネルの軸線との夾角は30°未満である、ことを特徴とする水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項6】
前記継手セグメントは岸側基盤を通過して岸側基盤の軸方向に対して移動可能である、ことを特徴とする請求項に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項7】
全ての前記ケーブルは前記水中トンネルの継手セグメント表面の長手方向に沿って配置され、前記水中トンネルの継手セグメントの同じ断面に沿って配置された全ての前記ケーブルは、前記水中トンネルの軸線との夾角がいずれも同じであり、且つ対称に配置される、ことを特徴とする請求項に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項8】
各前記継手セグメントには前記ケーブルに接続するための複数の係留ラグが設けられている、ことを特徴とする請求項に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項9】
前記ケーブルの端部は、前記岸側基盤内に位置するプレキャストコンクリートブロック内にアンカー固定され、又は岸側地面に位置する鋼構造部材内にアンカー固定される、ことを特徴とする請求項に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項10】
各前記継手セグメントは外層に設けられた環状鋼板層及び中空チャンバーを含み、全ての前記係留ラグは前記鋼板層に接続される、ことを特徴とする請求項に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項11】
前記鋼板層の内側に環状鉄筋コンクリート層が設けられ、前記鉄筋コンクリート層内には、一端が前記鋼板層に接続された複数のせん断部材が設けられ、前記鋼板層と前記鉄筋コンクリート層との間に環状ゴム層が更に設けられている、ことを特徴とする請求項10に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項12】
各前記継手セグメントと前記岸側基盤との間に環方向止水部材が更に設けられており、前記環方向止水部材は前記継手セグメントにスリーブされ、前記環方向止水部材は弾性構造部材である、ことを特徴とする請求項5~11のいずれか1項に記載の水中トンネルの岸側接続システム。
【請求項13】
中空チャンバーを有する管体を含み、前記管体は、両端に請求項5~12のいずれか1項に記載の岸側接続システムがそれぞれ接続された浮遊セグメントを含む、ことを特徴とする水中トンネル。
【請求項14】
2つの前記岸側接続システムの2つの引張力発生装置により加えられた軸方向引張力は、大きさが同じであり、方向が反対である、ことを特徴とする請求項13に記載の水中トンネル。
【請求項15】
前記浮遊セグメント及び2つの継手セグメントはいずれも、鋼板層及び前記鋼板層内に位置する鉄筋コンクリート層を含み、全ての前記鋼板層は一体構造部材であり、全ての前記鉄筋コンクリート層は一体構造部材であり、前記管体の断面形状は円形、四角形、楕円形又は馬蹄形であり、前記浮遊セグメントは複数の管体ユニットをつなぎ合わせて形成される、ことを特徴とする請求項13に記載の水中トンネル。
【請求項16】
2つの岸側基盤の間に位置する前記管体の長さは50~3000mである、ことを特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の水中トンネル。
【請求項17】
前記2つの岸側基盤の間に位置する前記管体の長さは200~2000mである、ことを特徴とする請求項16に記載の水中トンネル。
【請求項18】
前記浮遊セグメントには、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置が設けられており、又は前記浮遊セグメントには、水面に浮遊可能なポンツーン装置が接続されている、ことを特徴とする請求項13~15のいずれか1項に記載の水中トンネル。
【請求項19】
中空チャンバーを有する管体を含み、前記管体は、一端には請求項5~12のいずれか1項に記載の岸側接続システムが接続されており、他端には岸側基盤に固定された引き止めセグメントが接続されている浮遊セグメントを含む、ことを特徴とする水中トンネル。
【請求項20】
前記引き止めセグメントは前記浮遊セグメントの端部に設けられた径方向突起部を含み、前記岸側基盤には前記突起部に適合した凹溝部が設けられており、前記突起部は、前記浮遊セグメントと一体成形された構造部材である、ことを特徴とする請求項19に記載の水中トンネル。
【請求項21】
前記引き止めセグメントは、前記浮遊セグメントの端部に接続された重力式ケーソン構造であり、前記重力式ケーソン構造は鋼質又は鉄筋コンクリートのケーソン構造部材である、ことを特徴とする請求項19に記載の水中トンネル。
【請求項22】
前記引き止めセグメントは、前記浮遊セグメントの端部に接続された複数の引張抵抗アンカーロッドであり、全ての前記引張抵抗アンカーロッドは、前記岸側基盤にアンカー固定される、ことを特徴とする請求項19に記載の水中トンネル。
【請求項23】
前記浮遊セグメント及び継手セグメントはいずれも、鋼板層及び前記鋼板層内に位置する鉄筋コンクリート層を含み、全ての前記鋼板層は一体構造部材であり、全ての前記鉄筋コンクリート層は一体構造部材であり、前記管体の断面形状は円形、四角形、楕円形又は馬蹄形であり、前記浮遊セグメントは複数の管体ユニットをつなぎ合わせて形成される、ことを特徴とする請求項19に記載の水中トンネル。
【請求項24】
2つの岸側基盤の間に位置する前記管体の長さは50~3000mである、ことを特徴とする請求項19~23のいずれか1項に記載の水中トンネル。
【請求項25】
前記2つの岸側基盤の間に位置する前記管体の長さは200~2000mである、ことを特徴とする請求項24に記載の水中トンネル。
【請求項26】
前記浮遊セグメントには、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置が設けられており、又は前記浮遊セグメントには、水面に浮遊可能なポンツーン装置が接続されている、ことを特徴とする請求項19~23のいずれか1項に記載の水中トンネル。
【請求項27】
請求項13~18のいずれか1項に記載の水中トンネルの工事方法であって、
水中トンネルの浮遊セグメント及び2つの継手セグメントを製造するステップ1と、
水中トンネルの継手セグメントの2つの岸側基盤に合わせるための貫通孔を工事するステップ2と、
2つの前記継手セグメントをそれぞれ前記岸側基盤の貫通孔を通過させ、前記引張力発生装置により前記岸側基盤に接続するステップ3と、
前記浮遊セグメントの両端をそれぞれ2つの前記継手セグメントに接続し、水中トンネルの管体を形成するステップ4と、
前記浮遊セグメントに、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置を取り付け、又は前記浮遊セグメントに、水面に浮遊可能なポンツーン装置を接続するステップ5と、
2つの前記継手セグメントの引張力発生装置に軸方向引張力を加え、アンカー固定装置に引張力を加え、各引張力が受力の要件を満たすように調節した後、最終的に水中トンネルの工事を完成するステップ6と、を含む、ことを特徴とする水中トンネルの工事方法。
【請求項28】
請求項19~26のいずれか1項に記載の水中トンネルの工事方法であって、
水中トンネルの浮遊セグメント、継手セグメント及び引き止めセグメントを製造するステップ1と、
水中トンネルの継手セグメントの岸側基盤に合わせるための貫通孔を工事するステップ2と、
前記継手セグメントを前記岸側基盤の貫通孔を通過させ、前記引張力発生装置により前記岸側基盤に接続するステップ3と、
水中トンネルに合わせるための引き止めセグメントを工事し、引き止めセグメントを前記岸側基盤に取り付けるステップ4と、
前記浮遊セグメントの両端をそれぞれ前記継手セグメント及び引き止めセグメントに接続し、水中トンネルの管体を形成するステップ5と、
前記浮遊セグメントに、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置を取り付け、又は前記浮遊セグメントに、水面に浮遊可能なポンツーン装置を接続するステップ6と、
前記継手セグメントの引張力発生装置に軸方向引張力を加え、アンカー固定装置に引張力を加え、各引張力が受力の要件を満たすように調節した後、最終的に水中トンネルの工事を完成するステップ7と、を含む、ことを特徴とする水中トンネルの工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中トンネル工事の技術分野に関し、特に水中トンネルの岸側接続システム及びその水中トンネル、並びに水中トンネルの工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中トンネルは、水域を通過する新規な交通形態のアイデアとして、一般的には、構造の自重、浮力及び水中基盤に設置されたアンカー固定システムが連携して機能することにより、水中での水中トンネルのバランスと安定性を維持する。水中トンネルの構造と作業条件環境が非常に複雑であるため、現在、世界中で建設に成功した前例はなく、水中トンネルにつていの技術はまだ技術的思想と試験段階に留まっている。
【0003】
従来の水中トンネル構造の技術的思想は、全体的にアンカー引き式とポンツーン式に分けられている。アンカー引き式水中トンネルの管体構造は、浮力が重力より大きいため、ケーブルによって浮上した管体を海床又は河床にアンカー固定するが、ポンツーン式水中トンネルの管体は、重力が浮力より大きいため、ポンツーンによって沈んだ管体を水面に「アンカー固定」する。アンカー引き式水中トンネルのケーブルは、垂直方向と傾斜方向に配置され、垂直方向のケーブルは管体に垂直方向の拘束のみを提供する。傾斜方向のケーブルは、管体に垂直方向の拘束を提供すると共に、管体に水平方向の拘束も提供し、即ち、水中トンネル構造システムへの剛性寄与には、垂直方向の剛性寄与と水平方向の剛性寄与が含まれる。ポンツーン式水中トンネルのポンツーンと管体との接続が剛性であるため、当該ポンツーン式水中トンネルの、それ自体の水浮力の変化による水中トンネル構造システムへの剛性寄与は垂直方向の剛性寄与だけである。
【0004】
また、従来の技術的思想において、アンカー引き式水中トンネル又はポンツーン式水中トンネルであっても、2種類の水中トンネルの管体両端と岸側との接続(即ち、岸側接続継手)にはいずれも、固定接続及びヒンジ接続の2種類の方法が含まれ、岸側接続継手は固定接続の方法によって管体の端部の並進と回転を拘束することができ、岸側接続継手はヒンジ接続の方法によって管体の端部の並進のみを拘束することができる。2種類の岸側接続継手はいずれも、主に管体断面の曲げ抵抗を通じて水中トンネル構造体の水平剛性と垂直剛性の寄与を提供する。即ち、水中トンネルの管体の断面積が大きいほど、その管体断面の曲げ弾性率が大きくなり、水中トンネル構造システムの水平剛性と垂直剛性がいずれも大きくなることを予測することができる。
【0005】
本発明者は、このプロジェクトの研究において、ポンツーン式水中トンネルとアンカー引き式水中トンネルに以下の技術的問題があることを発見した。
【0006】
ポンツーン式水中トンネルの場合、ポンツーンは静水圧浮力の変化のみによって垂直方向の拘束を提供することができるが、水平方向の拘束を提供することができず、即ち、水中トンネル構造システムの水平剛性に寄与することができない。従って、ポンツーン式水中トンネルの水平剛性の寄与は全て、岸側接続継手の拘束作用と管体断面の曲げ弾性率に由来する。水中トンネルが比較的長い水域をまたがる場合、管体断面がどんなに大きく設計されたとしても、管体の浮遊セグメントの長さと比べて、当該管体全体が「細長いロッド」の構造であり、当該管体の水平剛性が依然として比較的弱いため、水中トンネル構造は波、水流などの外部荷重作用下で撓みが過度に大きくなり、構造の安全性に影響を与えると共に、運転期間にトンネルの加速度が大きすぎる(通常、0.3~0.5m/s2を超えてはならない)ことを更に引き起こし、走行の安全性と乗客の快適さに影響を与える。
【0007】
アンカー引き式水中トンネルの場合、2つの問題がある。
【0008】
1、水深の増加に伴い、海床又は河床にアンカー固定されたアンカーケーブルが長くなり、水中トンネル構造システムへの拘束作用が弱くなり、構造システムへの水平剛性の寄与も小さくなり、更に、上記のポンツーン式水中トンネルと同じ問題もある。
【0009】
2、水中トンネルが自然界の波や水流の影響を受けることは不可避であり、研究により、これによる水中トンネルの管体の垂直方向の移動が、そのケーブルのスラックとスナップ(Slack and snap)現象を引き起こす可能性があると一般的に考えられている。このスラックとスナップ現象は、初期張力のあるケーブルが水中トンネルの管体の移動よって完全にたるみ、続いて回復時に急激に締まることを意味し、この瞬間にケーブルの受けた力はその初期張力の数倍になり、水中トンネルの急激な振動が発生し、ケーブルの破断や破損が発生することを引き起こし、水中トンネルの長期的な安全性に影響を与え、運用と保守の作業量を増加させる。
【0010】
上記の2つの問題に対して、現在の技術的解決手段は、水中トンネルの管体断面を大きな浮力対重量比又は残留浮力で設計することで、ケーブルが常に比較的大きな初期張力を維持し、スラックとスナップ現象を回避することを確保する。しかし、このような解決手段によって、アンカー引き式水中トンネルは深水基盤の引抜き支持力の増加につながる。深水基盤の処理コストが非常に高いため、更に水中トンネルの工事コストを大幅に向上させ、このアンカー引き式水中トンネルの設計方法の経済性を低下させ、更に過大な残留浮力要件で水中トンネルの基盤の方法が工事要件を満たすことができなくなる。
【0011】
なお、発明者は、この2種類の水中トンネル構造の水平剛性が比較的弱い場合、その主振動周波数が低く、自然界の波の高エネルギー領域に遭遇しやすく、共振のリスクが大きく、水中トンネルの安全性に深刻な影響を与えることを更に発見した。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、従来技術に存在する、従来の水中トンネルの研究が技術的思想と試験段階に留まり、ポンツーン式水中トンネルの技術的思想についてのスキームは、水平剛性が依然として比較的弱いという問題があり、構造の安全性、走行の安全性及び乗客の快適さに影響を与え、アンカー引き式水中トンネルの技術的思想についてのスキームは、水平剛性が依然として比較的弱く、且つスラックとスナップ現象が発生しやすく、2種類の水中トンネル構造は更に自然界の波の高エネルギー領域に遭遇した場合に共振のリスクが大きくなりやすく、水中トンネルの安全性に深刻な影響を与えるという、上記不足を克服するために、水中トンネルの岸側接続システム及びその水中トンネルを提供すると同時に、水中トンネルの工事方法を更に提供することである。
【0013】
上記の発明目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0014】
本発明はまず、水中トンネルの管体の一端又は両端に沿って軸方向引張力をそれぞれ加える、水中トンネルの設計方法を提供する。
【0015】
本発明により提供される水中トンネルの設計方法は、従来のポンツーン式水中トンネルの水平剛性が比較的弱いという技術的問題、及び、従来のアンカー引き式水中トンネルの技術的思想による水平剛性が依然として比較的弱く、且つスラックとスナップ現象が発生しやすいという技術的問題に対して、水中トンネルの一端又は両端に管体への軸方向引張力(当該軸方向引張力は、即ち管体の軸方向に沿って外側へ加えられた引張力である)をそれぞれ加えることによって、水中トンネルの管体全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させ、管体の移動を更に拘束する役割を果たすことができ、それにより水中トンネルの管体の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性も高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが波や水流によって移動する時、管体の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減する。
【0016】
また、本発明で使用される水中トンネルの設計方法は、管体の両端に軸方向引張力をそれぞれ加える方法によって、以下と同様の技術的効果を果たす。(1)ポンツーン式水中トンネルは断面管体を大きくする方法を使用し、断面が大きな管体を採用することによって管体の曲げ剛性を効果的に増加させることができる。(2)アンカー引き式水中トンネルは、管体の水平剛性を増加させるために、より多くの深水ケーブルを配置する方法を使用する。(3)アンカー引き式水中トンネルは、残留浮力の大きさを増大し、深水基盤の引抜き抵抗力に対する要求を向上させる。上記の(1)、(2)、(3)の3種類の設計方法と比べて、本発明で使用される方法は、実現がより容易になるだけでなく、工事リスクと工事コストもより低く、工事の実施と普及がより容易になる。
【0017】
好ましくは、上記水中トンネルの各端に沿って複数の傾斜力が加えられており、上記水中トンネルの軸方向に沿った全ての上記傾斜力の分力の合力の大きさは、上記水中トンネルの当該端部に加えられた軸方向引張力の大きさであり、上記水中トンネルの径方向に沿った対応する全ての上記傾斜力の分力は、径方向合力を0にするように互いに相殺する。
【0018】
水中トンネルの各端部に複数の傾斜力を加える方法を使用し、水中トンネルの軸方向における当該複数の傾斜力の分力の合力は、水中トンネルの各端の受けた軸方向引張力として、水中トンネルの両端に軸方向引張力を直接加えることに比べて、実現がより容易で、操作性がより高く、且つ水中トンネルの端部の垂直剛性と全体的な安定性を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、上記水中トンネルの管体の各端に加えられた各傾斜力に対応する受力点は、それぞれ上記水中トンネルの管体表面の長手方向に沿って異なる位置に設けられる。
【0020】
当該各傾斜力に対応する受力点が水中トンネルの管体表面の軸長方向に沿って各位置に設けられることによって、同じ断面の周方向のみに沿って設けられることを回避し、水中トンネルの管体の応力が集中することを効果的に回避することができるため、水中トンネル端部の各位置の受力点をできる限り均一化にし、水中トンネルの受力構造の安定性を向上させる。
【0021】
好ましくは、上記水中トンネルの管体の同じ断面に沿って設けられた全ての受力点は対称に設けられ、且つ各上記受力点の受けた傾斜力の大きさが同じであり、上記傾斜力と上記水中トンネルの軸線との夾角も同じである。水中トンネルの管体の各端部の各位置での受力点と受力の大きさがいずれも同じであることを効果的に保証することができると共に、その後の傾斜力の大きさの調整を容易にし、上記水中トンネルの径方向に沿った対応する全ての上記傾斜力の分力が径方向合力を0にするように互いに相殺することを効果的に保証することができる。
【0022】
好ましくは、上記水中トンネルの管体の各端に沿って加えられた全ての傾斜力と上記水中トンネルの軸線との夾角が30°未満であり、水中トンネルの管体の垂直剛性が比較的大きいと保証すると同時に、各傾斜力の軸方向分力をより大きくすることができ、その軸方向分力の合力、即ち軸方向引張力も大きくなり、水中トンネルの水平剛性を効果的に向上させる。
【0023】
好ましくは、上記軸方向引張力の大きさは調節可能であり、軸方向引張力の大きさを調節することによって、運用期間に水中トンネルの管体構造の固有振動周波数を容易に調節することができ、即ち水中トンネルの管体構造は、作業条件環境に適応するために、それ自体の固有周波数を自動的に調節できるようになり、更に水中トンネルの安全性をより保証することができる。
【0024】
好ましくは、上記水中トンネルの管体両端の継手セグメントは岸側基盤を通過する。当該水中トンネルの管体両端の継手セグメントは岸側基盤の中空チャネルを直接通過し、当該継手セグメントは、岸側基盤の中空チャネルに固定して接続するものではなく、岸側基盤の中空チャネルを通過するものに過ぎず、当該継手セグメントは管体に取り付けられて傾斜力を提供する複数のケーブルによって岸側基盤にそれぞれ固定され、それにより水中トンネルの継手セグメントの固定を実現する。上記岸側基盤は川岸、湖岸又は海岸に位置して一定の負荷力を有する沙層、土層、岩層又はコンクリート層であり、又は上記の幾つかの基礎複合層である。
【0025】
好ましくは、各上記継手セグメントと岸側基盤との間に環方向止水部材が更に設けられており、上記環方向止水部材は上記継手セグメントにスリーブされる。
【0026】
更に、上記環方向止水部材は弾性構造部材である。
【0027】
当該岸側基盤の中空チャネルは、サイズが継手セグメントより大きくするように設計することができ、このように、継手セグメントを岸側基盤の中空チャネルに取り付ける時、両者に隙間があり、当該隙間の位置に環方向止水部材が配置され、当該環方向止水部材は、管体と岸側基盤に同時に接続するとともに、一定の弾性を有するため一定の軸方向の相対変位に適合することができ、即ち当該継手セグメントが軸方向引張力を受けた後に環方向止水部材は変位した後も依然として水密を保持する。
【0028】
好ましくは、水中トンネルは、浮遊セグメントがアンカーシステムによって河床又は海床にアンカー固定されたアンカー引き式水中トンネルであり、又は浮遊セグメントがポンツーンに接続されたポンツーン式水中トンネルであり、又は浮遊セグメントにポンツーンとアンカーシステムが同時に接続されたポンツーン-アンカー引き式水中トンネルである。
【0029】
当該水中トンネルの設計方法は、河床又は海床にアンカー固定された現在汎用されているアンカー引き式水中トンネル、又は、浮遊セグメントがポンツーンに接続されたポンツーン式水中トンネルの2種類の水中トンネル、又は、浮遊セグメントにポンツーンとアンカーシステムが同時に接続されたような複合式ポンツーン-アンカー引き式水中トンネルの設計に適用される。
【0030】
本発明は、水中トンネルの端部に位置し、軸方向に沿って移動可能であり、引張力発生装置が接続されている継手セグメントを含む水中トンネルの岸側接続システムを更に提供し、上記引張力発生装置は上記継手セグメントに軸方向引張力を加えるために用いられる。
【0031】
本発明に記載の水中トンネルの岸側接続システムは、従来のポンツーン式水中トンネルの水平剛性が比較的弱いという技術的問題、及び、従来のアンカー引き式水中トンネルの技術的思想による水平剛性が依然として比較的弱く、且つスラックとスナップ現象が発生しやすいという技術的問題に対して、水中トンネルの継手セグメントによって引張力発生装置に接続し、当該引張力発生装置が継手セグメントに軸方向引張力を加えることができるため、当該継手セグメントが軸方向引張力を受けた後、軸方向に沿って自由に伸縮して移動することができ、水中トンネルの管体全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させ、管体の移動を更に拘束する役割を果たすことができ、それにより水中トンネルの管体の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性も高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが各方向の波や水流によって移動する時、管体の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0032】
好ましくは、上記継手セグメントは岸側基盤を通過して岸側基盤の軸方向に対して移動可能である。当該継手セグメントは岸側基盤を通過し、岸側基盤に固定又はヒンジにより接続されるものではなく、当該継手セグメントは岸側基盤の軸方向に対して移動可能であり、当該継手セグメントが引張力発生装置の引張力を受ける時、岸側基盤による継手セグメントへの反力が引張力発生装置による管体の水平剛性の向上を削減する影響を回避する。
【0033】
好ましくは、上記引張力発生装置は、一端が上記継手セグメントに接続され、他端が上記岸側基盤又は固定構造に接続される。引張力発生装置を岸側基盤又は固定構造に直接接続することで、水中トンネルの管体の継手セグメントと岸側基盤又は固定構造との相対的な固定を効果的に保持することができる。当該固定構造は岸側基盤に取り付けられた固定鋼構造部材であってもよく、当該鋼構造部材は岸側基盤の地面上、堤防上乃至水面下に取り付けられてもよい。
【0034】
好ましくは、上記引張力発生装置は複数のケーブルを含み、全ての上記ケーブルは、一端が上記水中トンネルの継手セグメントの外周に沿って配置され、他端が上記岸側基盤又は固定構造の外周にアンカー固定されるように配置される。
【0035】
水中トンネルの管体の体積が大きく、1本や2本のケーブルによって水中トンネルの管体に安定した軸方向引張力を提供することは難しいため、当該引張力発生装置は水中トンネルの継手セグメントの外周に沿って取り付けられた複数のケーブルを含み、複数のケーブルは水中トンネルの継手セグメントの周方向に沿った各位置に引張力をそれぞれ提供することができ、全てのケーブルにより提供される引張力の軸方向分力の合力を水中トンネルの各端の受けた軸方向引張力とすることが考えられる。このように分散して必要な各ケーブルにより提供される引張力がより小さくなり、実際の工事で実現がより容易になり、操作や実施がより容易になると共に、水中トンネルが各方向の波や水流によって運動衝撃が発生する時に安定性を保持することができる。
【0036】
好ましくは、全ての上記ケーブルは上記水中トンネルの継手セグメント表面の長手方向に沿って配置される。
【0037】
各ケーブルは水中トンネルの管体表面の軸長方向に沿って各位置に配置することで、水中トンネルの管体表面の各位置に傾斜力を提供し、同じ断面の周方向のみに沿って配置されたケーブルの、水中トンネルの管体への応力集中を回避することができ、それにより水中トンネル端部の各位置の受力点の分布をできる限り均一化にし、水中トンネルの受力構造の安定性を効果的に向上させることができる。
【0038】
好ましくは、上記水中トンネルの継手セグメントの同じ断面に沿って配置された全ての上記ケーブルは、上記水中トンネルの軸線との夾角がいずれも同じであり、且つ互いに対称に配置される。それにより各ケーブルの傾斜力をより容易に調節し、水中トンネルの継手セグメントの受けた軸方向引張力の大きさをより容易に調節する。
【0039】
好ましくは、上記ケーブルはいずれも上記水中トンネルの継手セグメントに傾斜して接続され、各上記ケーブルと上記水中トンネルの軸線との夾角は30°未満である。各ケーブルはいずれも、水中トンネルの継手セグメントに傾斜して接続され、水中トンネルの両端の軸方向に沿って軸方向引張力を直接加えることに比べて、実現がより容易で、操作性がより高く、水中トンネル端部の垂直剛性と全体的な安定性を向上させることができる。
【0040】
好ましくは、上記引張力発生装置の各上記ケーブルには、いずれも引張力調節機構が設けられている。それにより上記引張力発生装置は上記継手セグメントにより加えられた軸方向引張力の大きさを調節することができ、各ケーブルの引張力を調節することによって、全てのケーブルの引張力の軸方向分力の大きさを調節することができ、継手セグメントの受けた軸方向引張力の大きさを調節し、それにより水中トンネルの管体構造の固有振動周波数への調節を実現し、即ち水中トンネルの管体構造は、様々な作業条件環境に適応するために、それ自体の固有周波数を自動的に調節できるようになり、更に水中トンネルの安全性をより保証することができる。
【0041】
好ましくは、各上記ケーブルに設けられた上記引張力調節機構は上記ケーブルの端部に位置するアンカールームを含み、上記アンカールームに上記ケーブル引張力を調節可能なレギュレーターが設けられており、全ての上記アンカールームはいずれも上記岸側基盤に設置される。アンカールームによって各ケーブルの引張力を調節することは、より便利で信頼性がある。また、ケーブルの長さは現場の岸側基盤に基づいて柔軟に調節して配置され、ケーブルの材質は鋼線ロック、鋼管、高強度ケーブル等の材質の構造部材を用いることができる。
【0042】
好ましくは、各上記継手セグメントには上記ケーブルに接続するための複数の係留ラグ、又は他のケーブルに接続しやすい継手が設けられている。
【0043】
好ましくは、上記ケーブルの端部は、岸側基盤内に位置するプレキャストコンクリートブロック内にアンカー固定され、又は岸側地面に位置する鋼構造部材内にアンカー固定され、鋼構造部材は比較的大きい引張強度を有することができ、両端の軸方向引張力の荷重作用により、水中トンネルの管体に比較的大きい水平剛性を提供することができる。
【0044】
好ましくは、各上記継手セグメントは外層に設けられた環状鋼板層及び中空チャンバーを含み、全ての上記係留ラグは上記鋼板層に接続され、係留ラグは鋼板層と一体成形された構造体であってもよい。
【0045】
好ましくは、上記鋼板層の内側に環状鉄筋コンクリート層が更に設けられており、同じ構造強度を保証する場合、鋼板層に鉄筋コンクリート層が内蔵されることで、工事コストを効果的に削減することができる。
【0046】
好ましくは、コンクリート層と鋼板層との間の接続強度を高めるために、上記鉄筋コンクリート層内には、一端が上記鋼板層に接続された複数のせん断部材が設けられている。
【0047】
好ましくは、水中トンネルの衝突防止とエネルギー散逸作用を向上させるために、上記鋼板層と鉄筋コンクリート層との間に環状ゴム層が更に設けられている。
【0048】
好ましくは、水中トンネル内で火事が発生する時の防火能力を向上させるために、上記鉄筋コンクリート層の内側に耐火ボード層が更に設けられている。
【0049】
好ましくは、トンネルの防水需要を向上させるために、上記耐火ボード層の内側には、厚さが0.5~3cmの水密鋼板層が更に設けられている。
【0050】
本発明は、中空チャンバーを有する管体を含む水中トンネルを更に提供し、上記管体は両端に上記の岸側接続システムがそれぞれ接続された浮遊セグメントを含む。
【0051】
当該水中トンネル構造は、管体の浮遊セグメントの両端に上記の岸側接続システムを設置し、継手セグメントが岸側基盤を直接通過し、次に継手セグメントの引張力発生装置によって継手セグメントに軸方向引張力を提供することで、水中トンネルの管体全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させることができ、それにより管体の移動を更に拘束する役割を果たし、水中トンネルの管体の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性も高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが各方向の波や水流によって移動する時、管体の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0052】
好ましくは、2つの上記岸側接続システムの2つの引張力発生装置により加えられた軸方向引張力は、大きさが同じであり、方向が反対である。
【0053】
好ましくは、上記浮遊セグメント及び2つの継手セグメントはいずれも、鋼板層及び上記鋼板層内に位置する鉄筋コンクリート層を含み、全ての上記鋼板層は一体構造部材であり、全ての上記鉄筋コンクリート層は一体構造部材である。
【0054】
好ましくは、様々な水下作業条件環境に用いられるチャネルの需要に応じるために、上記管体の断面形状は円形、四角形、楕円形又は馬蹄形である。
【0055】
好ましくは、上記浮遊セグメントは複数の管体ユニットをつなぎ合わせて形成される。好ましくは、2つの岸側基盤の間に位置する上記管体の長さは50~3000mである。
【0056】
更に好ましくは、2つの岸側基盤の間に位置する上記管体の長さは200~2000mである。当該軸方向引張力が当該水中トンネルの管体の水平剛性に十分に大きな影響を与える可能性がある要因を考慮すると、その適合した水中トンネルの管体の長さが長すぎてはならず、設計要件に応じて、選択された水中トンネルの2つの岸側基盤の間に位置する上記管体の長さは50~3000mであり、より好ましくは200~2000mである。好ましくは、上記浮遊セグメントには、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置が設けられており、又は上記浮遊セグメントには、水面に浮遊可能なポンツーン装置が接続されている。
【0057】
本発明は、水中トンネルを更に提供し、上記管体は中空チャンバーを有し、上記管体は、一端には上記岸側接続システムが接続されており、他端には岸側基盤に固定された引き止めセグメントが接続されている浮遊セグメントを含む。
【0058】
好ましくは、上記引き止めセグメントは浮遊セグメントの端部に設けられた径方向突起部を含み、上記岸側基盤には上記突起部に適合した凹溝部が設けられている。
【0059】
好ましくは、上記突起部は、上記浮遊セグメントと一体成形された構造部材である。
【0060】
好ましくは、上記引き止めセグメントは、浮遊セグメントの端部に接続された重力式ケーソン構造である。
【0061】
好ましくは、上記重力式ケーソン構造は、鋼質又は鉄筋コンクリートのケーソン構造部材である。
【0062】
好ましくは、上記引き止めセグメントは、浮遊セグメントの端部に接続された複数の引張抵抗アンカーロッドであり、全ての上記引張抵抗アンカーロッドは、上記岸側基盤にアンカー固定されている。
【0063】
好ましくは、上記浮遊セグメント及び2つの継手セグメントはいずれも、鋼板層及び上記鋼板層内に位置する鉄筋コンクリート層を含み、全ての上記鋼板層は一体構造部材であり、全ての上記鉄筋コンクリート層は一体構造部材である。
【0064】
好ましくは、様々な水下作業条件環境に用いられるチャネルの需要に応じるために、上記管体の断面形状は円形、四角形、楕円形又は馬蹄形である。
【0065】
好ましくは、上記浮遊セグメントは複数の管体ユニットをつなぎ合わせて形成される。好ましくは、2つの岸側基盤の間に位置する上記管体の長さは50~3000mである。
【0066】
本発明は、
水中トンネルの浮遊セグメント及び2つの継手セグメントを製造するステップ1と、
水中トンネルの継手セグメントの2つの岸側基盤に合わせるための貫通孔を工事するステップ2と、
2つの上記継手セグメントをそれぞれ上記岸側基盤の貫通孔を通過させ、上記引張力発生装置により上記岸側基盤に接続するステップ3と、
上記浮遊セグメントの両端をそれぞれ2つの上記継手セグメントに接続し、水中トンネルの管体を形成するステップ4と、
上記浮遊セグメントに、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置を取り付け、又は上記浮遊セグメントに、水面に浮遊可能なポンツーン装置を接続するステップ5と、
2つの上記継手セグメントの引張力発生装置に軸方向引張力を加え、アンカー固定装置に引張力を加え、各引張力が受力の要件を満たすように調節した後、最終的に水中トンネルの工事を完成するステップ6と、を含む、水中トンネルの工事方法を更に提供する。
【0067】
本発明に記載の水中トンネルの工事方法は、水中トンネルの浮遊セグメント及び2つの継手セグメントを製造し、まず2つの継手セグメントを引張力発生装置で岸側基盤にそれぞれ接続し、次にセグメントに分けてつなぎ合わせて浮遊セグメントを形成し、最後に浮遊セグメントを2つの継手セグメントにそれぞれ接続した後、2つの引張力発生装置の管体への軸方向引張力を調節し、最終的に水中トンネルを形成する。当該工事方法は、操作が簡単で、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0068】
本発明は、
水中トンネルの浮遊セグメント、継手セグメント及び引き止めセグメントを製造するステップ1と、
水中トンネルの継手セグメントの岸側基盤に合わせるための貫通孔を工事するステップ2と、
上記継手セグメントを上記岸側基盤の貫通孔を通過させ、上記引張力発生装置により上記岸側基盤に接続するステップ3と、
水中トンネルに合わせるための引き止めセグメントを工事し、引き止めセグメントを上記岸側基盤に取り付けるステップ4と、
上記浮遊セグメントの両端をそれぞれ上記継手セグメント及び引き止めセグメントに接続し、水中トンネルの管体を形成するステップ5と、
上記浮遊セグメントに、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置を取り付け、又は上記浮遊セグメントに、水面に浮遊可能なポンツーン装置を接続するステップ6と、
上記継手セグメントの引張力発生装置に軸方向引張力を加え、アンカー固定装置に引張力を加え、各引張力が受力の要件を満たすように調節した後、最終的に水中トンネルの工事を完成するステップ7と、を含む、水中トンネルの工事方法を更に提供する。
【0069】
本発明に記載の水中トンネルの工事方法は、水中トンネルの浮遊セグメント、1つの継手セグメント及び1つの引き止めセグメントを製造し、まず1つの継手セグメントを引張力発生装置で岸側基盤に接続すると同時に、引き止めセグメントを岸側基盤に接続し、次にセグメントに分けてつなぎ合わせて浮遊セグメントを形成した後、浮遊セグメントを継手セグメント及び引き止めセグメントにそれぞれ接続し、水中トンネルの管体全体を形成し、次に2つの引張力発生装置の管体への軸方向引張力を調節し、最終的に水中トンネルを形成する。当該工事方法は、操作が簡単で、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0070】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0071】
1、本発明で使用される水中トンネルの設計方法は、管体の両端に軸方向引張力をそれぞれ加える方法によって、以下と同様の技術的効果を果たす。(1)ポンツーン式水中トンネルは断面管体を大きくする方法を使用し、断面が大きな管体を採用することによって管体の曲げ剛性を効果的に増加させることができる。(2)アンカー引き式水中トンネルは、管体の水平剛性を増加させるために、より多くの深水ケーブルを配置する方法を使用する。(3)アンカー引き式水中トンネルは、残留浮力の大きさを増大し、深水基盤の引抜き抵抗力に対する要求を向上させる。上記の(1)、(2)、(3)の3種類の設計方法と比べて、本発明で使用される方法は、実現がより容易になるだけでなく、工事リスクと工事コストもより低く、工事の実施と普及がより容易になる。
【0072】
2、本発明に記載の水中トンネルの岸側接続システムは、従来のポンツーン式水中トンネル水平剛性が比較的弱いという技術的問題、及び、従来のアンカー引き式水中トンネルの技術的思想による水平剛性が依然として比較的弱く、且つスラックとスナップ現象が発生しやすいという技術的問題に対して、水中トンネルの継手セグメントが岸側基盤を直接通過し、次に継手セグメントにおける引張力発生装置によって継手セグメントに軸方向引張力を提供することで、水中トンネルの管体全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させ、管体の移動を更に拘束する役割を果たすことができ、それにより水中トンネルの管体の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性も高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが各方向の波や水流によって移動する時、管体の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0073】
3、本発明に記載の水中トンネル構造は、管体の浮遊セグメントの両端に上記の岸側接続システムを設置し、継手セグメントが岸側基盤を直接通過し、次に継手セグメントの引張力発生装置によって継手セグメントに軸方向引張力を提供することで、水中トンネルの管体全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させることができ、それにより管体の移動を更に拘束する役割を果たし、水中トンネルの管体の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体の撓みと加速度を減らすことができ、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。当該水中トンネルの構造はアンカー引き式水中トンネルに適用され、当該構造の総運動エネルギーの消費が管体により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0074】
4、本発明に記載の水中トンネルの工事方法は、まず2つの継手セグメントを引張力発生装置で岸側基盤にそれぞれ接続し、次にセグメントに分けてつなぎ合わせて浮遊セグメントを形成し、最後に浮遊セグメントを2つの継手セグメントにそれぞれ接続した後、2つの引張力発生装置の管体への軸方向引張力を調節し、最終的に水中トンネルを形成する。当該工事方法は、操作が簡単で、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0075】
5、本発明に記載の水中トンネルの工事方法は、水中トンネルの浮遊セグメント、1つの継手セグメント及び1つの引き止めセグメントを製造し、まず1つの継手セグメントを引張力発生装置で岸側基盤に接続すると同時に、引き止めセグメントを岸側基盤に接続し、次にセグメントに分けてつなぎ合わせて浮遊セグメントを形成した後、浮遊セグメントを継手セグメント及び引き止めセグメントにそれぞれ接続し、水中トンネルの管体全体を形成し、次に2つの引張力発生装置の管体への軸方向引張力を調節し、最終的に水中トンネルを形成する。当該工事方法は、操作が簡単で、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルの受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブルや基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】水中トンネルの設計方法の原理図である。
図1a】従来の水中トンネル構造の剛性システムの概略図である。
図1b】本発明に記載の軸方向引張力を増加させた後の水中トンネル構造の剛性システムの概略図である。
図1c】本発明に記載の軸方向引張力を増加させた後の水中トンネルの管体の受力効果図である。
図2】従来技術における軸方向引張力なしの水中トンネルの固有周波数と本発明に記載の軸方向引張力ありの水中トンネルの固有周波数との関係図である。
図3】本発明に記載の水中トンネルの第1構造の概略図である。
図4図3における本発明に記載の水中トンネルの第1構造の水中トンネルの管体A-A断面概略図である。
図5図3における本発明に記載の水中トンネルの第1構造の水中トンネルの管体と引張力発生装置との相互接続の軸側図である。
図6】本発明に記載の水中トンネルの管体の管壁断面の4種類の構造設計図(6a~6d)である。
図7】本発明に記載の水中トンネルの管体の管壁と引張力発生装置との2種類の接続構成図(7a、7b)である。
図8】本発明に記載の水中トンネルの第2構造の概略図である。
図9】本発明に記載の水中トンネルの管体が円形である断面形状図である。
図10】本発明に記載の水中トンネルの管体が四角形である断面形状図である。
図11】本発明に記載の水中トンネルの管体が馬蹄形である断面形状図である。
【符号の説明】
【0077】
101、岸側基盤、1、管体、11、浮遊セグメント、12、継手セグメント、13、鋼板層、14、鉄筋コンクリート層、15、せん断部材、16、ゴム層、17、路面層、18、チャンバー、2、引張力発生装置、21、係留ラグ、22、ケーブル、23、アンカールーム、3、引き止めセグメント、31、突起部、32、凹溝部
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、試験例及び発明を実施するための形態と合わせて、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明に上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解すべきではなく、本発明の内容に基づいて実現される技術はいずれも、本発明の範囲に属する。
【0079】
<実施例1>
本実施例1は、水中トンネルの管体1の両端に沿って軸方向引張力をそれぞれ加える、水中トンネルの設計方法を提供する。当然ながら、水中トンネルの管体1の一端に沿って軸方向引張力を加え、他端に反力のみを提供してもよい。
【0080】
水中トンネルの管体1の受力を分析することにより、水中トンネルの管体1の両端にいずれも軸方向引張力を加える場合の前後に受力の変化を分析する。図1a~1cに示されるように、従来技術の水中トンネル構造の剛性システムは、管体1及びアンカー固定システムという2つの部分の剛性寄与で構成され(図1aに示される)、当該アンカー固定システムはケーブル22であってもよく、ポンツーンであってもよく、両者の組み合わせであってもよい。本実施例は、管体1に軸方向引張力を加えることによって(図1bに示される)、追加の剛性を増加させるため(原理は図1cに示される)、水中トンネル構造の固有周波数を効果的に増加させる。
【0081】
数学の観点から説明すると、水中トンネルの管体1は、工事で一般的に使用されるEuler-Bernoulliビームと簡略化され、マイクロセグメントを取り、従来の水中トンネルの管体1の運動方程式(式1に示される)は、右側が外部励起力であり、左側が左から右へ順に管体1の曲げ力(管体1の曲げ抵抗特性とアンカー固定方式による)、弾性力(アンカー固定システムによる)、減衰力(主に管体1の移動による)及び慣性力(主に管体1の加速度による)であるそれと平衡する4つの力であるように書くことができる。但し、本発明は、当該運動方程式の左側に、軸方向引張力の垂直力(即ち、トンネルの管体1が移動する時に軸方向引張力による幾何学的剛性によって生成される垂直力)という新しい力を導入する。従って、外力の大きさが変化しない条件下で、方程式のバランスを維持するために、軸方向引張力の増加に伴い、方程式の左側の他の力はそれに応じて減少し、これは、管体1の移動と変形が減少することを意味する。それにより、数式からも、軸方向引張力の増加に伴い、管部分の移動と変形が制限されることが示されている。水中トンネル構造の振動周波数に対する管体1の軸方向引張力の影響は、管体1を張り詰めた弦と見なし、弦の式(式3)で表すことができる。式から分かるように、弦の固有周波数が弦の長さ(トンネルの長さ)と弦の質量(管体1の質量)のみに関連し、前者に反比例し、且つ平方根の下の後者に反比例する。従来技術の水中トンネルシステムは、それ自体の固有周波数下で軸力が増加する場合、周波数の増加関係
【数1】
は、軸力なしの場合の水中トンネル構造の周波数
【数2】
と軸力あり、他の効果(f)を無視する場合の弦の周波数との平方和にほぼ等しい(式4及び図2に示される)。
【0082】
【数3】
【0083】
説明:式1は従来技術の水中トンネルの管体1の運動方程式であり、等号の左側は左から右へそれぞれ管体1の受けた:曲げ力、弾性力、減衰力、慣性力であり、等号の右側は外部励起力である。
【0084】
【数4】
【0085】
説明:式2は、本発明に係る水中トンネルの管体1の運動方程式であり、等号の左側は左から右へそれぞれ管体1の受けた:曲げ力、軸方向引張力の垂直力、弾性力、減衰力、慣性力であり、等号の右側は外部励起力である。新しいアイテムは、2番目のアイテム-軸方向引張力の垂直力である。
【0086】
【数5】
【0087】
は弦の固有振動周波数、Lは長さ、mは質量、Nは引張力である。
【0088】
【数6】
【0089】
上記水中トンネルの各端に沿って複数の傾斜力が加えられ、上記水中トンネルの軸方向に沿った全ての上記傾斜力の分力の合力の大きさは、上記水中トンネルの当該端部に加えられた軸方向引張力の大きさであり、上記水中トンネルの径方向に沿った対応する全ての上記傾斜力の分力は、径方向合力を0にするように互いに相殺する。水中トンネルの各端部に複数の傾斜力を加える方法を使用し、水中トンネルの軸方向における当該複数の傾斜力の分力の合力は、水中トンネルの各端の受けた軸方向引張力として、水中トンネルの両端に軸方向引張力を直接加えることに比べて、実現がより容易で、操作性がより高く、且つ水中トンネルの端部の垂直剛性と全体的な安定性を向上させることができる。
【0090】
また、水中トンネルの管体1の各端に加えられた各傾斜力に対応する受力点は、それぞれ上記水中トンネルの管体1表面の長手方向に沿って異なる位置に設けられる。当該各傾斜力に対応する受力点が水中トンネルの管体1表面の軸長方向に沿って各位置に設けられることによって、同じ断面の周方向のみに沿って設けられることを回避し、水中トンネルの管体1の応力が集中することを効果的に回避することができるため、水中トンネル端部の各位置の受力点をできる限り均一化にし、水中トンネルの受力構造の安定性を向上させる。特に、上記水中トンネルの管体1の同じ断面に沿って設けられた全ての受力点は対称に設けられ、且つ各上記受力点の受けた傾斜力の大きさが同じであり、上記傾斜力と上記水中トンネルの軸線との夾角も同じである。水中トンネルの管体1の各端部の各位置での受力点と受力の大きさがいずれも同じであることを効果的に保証することができると共に、その後の傾斜力の大きさの調整を容易にし、上記水中トンネルの径方向に沿った対応する全ての上記傾斜力の分力が径方向合力を0にするように互いに相殺することを効果的に保証することができる。
【0091】
上記の水中トンネルの管体1の各端に沿って加えられた全ての傾斜力と上記水中トンネルの軸線との夾角α(図3に示される)が30°未満であり、水中トンネルの管体1の垂直剛性が比較的大きいと保証すると同時に、各傾斜力の軸方向分力をより大きくすることができ、その軸方向分力の合力、即ち軸方向引張力も大きくなり、水中トンネルの水平剛性を効果的に向上させる。
【0092】
また、上記軸方向引張力の大きさは調節可能であり、軸方向引張力の大きさを調節することによって、運用期間に水中トンネルの管体1の構造の固有振動周波数を容易に調節することができ、即ち水中トンネルの管体1の構造は、作業条件環境に適応するために、それ自体の固有周波数を自動的に調節できるようになり、更に水中トンネルの安全性をより保証することができる。上記水中トンネルの管体1の両端の継手セグメント12は岸側基盤101を通過する。当該水中トンネルの管体1の両端の継手セグメント12は岸側基盤101の中空チャネルを直接通過し、当該継手セグメント12は、岸側基盤101の中空チャネルに固定して接続するものではなく、岸側基盤101の中空チャネルを通過するものに過ぎず、当該継手セグメント12は管体1に配置されて傾斜力を提供する複数のケーブル22によって岸側基盤101にそれぞれ固定され、それにより水中トンネルの継手セグメント12の固定を実現する。説明すべきことは、本発明に記載の岸側基盤101は川岸、湖岸又は海岸に位置して一定の負荷力を有する沙層、土層、岩層又はコンクリート層であり、又は上記の幾つかの基礎複合層である。
【0093】
上記水中トンネルは、浮遊セグメント11が河床又は海床にアンカー固定されたアンカー引き式水中トンネルであり、又は浮遊セグメント11がポンツーンに接続されたポンツーン式水中トンネルである。当該水中トンネルの設計方法は、河床又は海床にアンカー固定された現在汎用されているアンカー引き式水中トンネル、又は、浮遊セグメント11がポンツーンに接続されたポンツーン式水中トンネルの2種類の水中トンネル、又は、浮遊セグメント11にポンツーンとアンカーシステムが同時に接続されたような複合式ポンツーン-アンカー引き式水中トンネルの設計に適用される。実際の必要に応じて、浮遊セグメント11の拘束方式を選択することができる。
【0094】
本発明により提供される水中トンネルの設計方法は、従来のポンツーン式水中トンネルの水平剛性が比較的弱いという技術的問題、及び、従来のアンカー引き式水中トンネルの技術的思想による水平剛性が依然として比較的弱く、且つスラックとスナップ現象が発生しやすいという技術的問題に対して、水中トンネルの両端に管体1への軸方向引張力をそれぞれ加えることによって、水中トンネルの管体1全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させ、管体1の移動を更に拘束する役割を果たすことができ、それにより水中トンネルの管体1の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体1の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性も高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。図2に示されるように、軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体1は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体1の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが波や水流によって移動する時、管体1の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体1により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22の受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22や基盤を長期間使用するのに役立ち、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減する。
【0095】
また、本発明で使用される水中トンネルの設計方法は、管体1の両端に軸方向引張力をそれぞれ加える方法によって、以下と同様の技術的効果を果たす。
【0096】
(1)ポンツーン式水中トンネルは断面管体1を大きくする方法を使用する。断面が大きな管体1を採用することによって管体1の曲げ剛性を効果的に増加させることができる。
【0097】
(2)アンカー引き式水中トンネルは、管体1の水平剛性を増加させるために、より多くの深水ケーブル22を配置する方法を使用する。
【0098】
(3)アンカー引き式水中トンネルは、残留浮力の大きさを増大し、深水基盤の引抜き抵抗力に対する要求を向上させる。
【0099】
上記の(1)、(2)、(3)の3種類の設計方法と比べて、本発明で使用される方法は、実現がより容易になるだけでなく、工事リスクと工事コストもより低く、工事の実施と普及がより容易になる。
【0100】
<実施例2>
図3~5に示されるように、本実施例2は、水中トンネルの端部に位置し、管体の軸方向に沿って移動可能であり、引張力発生装置2が設けられている継手セグメント12を含む水中トンネルの岸側接続システムを更に提供し、上記引張力発生装置は上記継手セグメント12に軸方向引張力を加えるために用いられる。
【0101】
但し、上記継手セグメント12は岸側基盤101を通過し、岸側基盤101に固定又はヒンジにより接続されるものではなく、当該継手セグメント12は岸側基盤101に対して管体1の軸方向に沿って移動可能であり、当該継手セグメント12が引張力発生装置2の引張力を受ける時、岸側基盤101による継手セグメント12への反力が引張力発生装置による管体1の水平剛性の向上を削減する影響を回避する。
【0102】
引張力発生装置2は、上記岸側基盤101に接続され、引張力発生装置2を岸側基盤101に直接接続することで、水中トンネルの管体1の継手セグメント12と岸側基盤101との相対的な固定を効果的に保持することができる。引張力発生装置2は、上記水中トンネルの継手セグメント12の外周に沿って配置された複数のケーブル22を含み、各上記ケーブル22は、上記岸側基盤101又は固定構造にアンカー固定される。水中トンネルの管体1の体積が大きく、1本や2本のケーブル22によって水中トンネルの管体1に安定した軸方向引張力を提供することは難しいため、当該引張力発生装置2は水中トンネルの継手セグメント12の外周に沿って配置された複数のケーブル22を含み、複数のケーブル22は水中トンネルの継手セグメント12の周方向に沿った各位置に引張力をそれぞれ提供することができ、全てのケーブル22により提供される引張力の軸方向分力の合力を水中トンネルの各端の受けた軸方向引張力とすることが考えられる。このように分散して必要な各ケーブル22により提供される引張力がより小さくなり、実際の工事で実現がより容易になり、操作や実施がより容易になると共に、水中トンネルが各方向の波や水流によって運動衝撃が発生する時に安定性を保持することができる。上記固定構造は岸側基盤101に取り付けられた固定鋼構造部材であってもよく、当該鋼構造部材は岸側基盤101の地面上、堤防上乃至水面下に取り付けられてもよい。
【0103】
上記ケーブル22はいずれも上記水中トンネルの継手セグメント12に傾斜して接続され、各上記ケーブル22と上記水中トンネルの軸線との夾角αは30°未満である。各ケーブル22はいずれも、水中トンネルの継手セグメント12に傾斜して接続され、水中トンネルの両端の軸方向に沿って軸方向引張力を直接加えることに比べて、実現がより容易で、操作性がより高く、水中トンネル端部の垂直剛性と全体的な安定性を向上させることができる。特に、引張力発生装置2の各上記ケーブル22の引張力が調節可能であるため、上記引張力発生装置2は上記継手セグメント12により加えられた軸方向引張力の大きさを調節することができ、各ケーブル22の引張力を調節することによって、全てのケーブル22の引張力の軸方向分力の大きさを調節することができ、継手セグメント12の受けた軸方向引張力の大きさを調節し、それにより水中トンネルの管体1の構造の固有振動周波数への調節を実現し、即ち水中トンネルの管体1の構造は、様々な作業条件環境に適応するために、それ自体の固有周波数を自動的に調節できるようになり、更に水中トンネルの安全性をより保証することができる。
【0104】
上記全てのケーブル22は、上記水中トンネルの継手セグメント12の表面の長手方向に沿って異なる位置に配置される。各ケーブル22は水中トンネルの管体1の表面の軸長方向に沿って各位置に配置することで、水中トンネルの管体1の表面の各位置に傾斜力を提供し、同じ断面の周方向のみに沿って配置されたケーブル22の、水中トンネルの管体1への応力集中を回避することができ、それにより水中トンネル端部の各位置の受力点の分布をできる限り均一化にし、水中トンネルの受力構造の安定性を効果的に向上させることができる。
【0105】
また、水中トンネルの継手セグメント12の同じ断面に沿って配置された全ての上記ケーブル22は、上記水中トンネルの軸線との夾角がいずれも同じであり、且つ互いに対称に配置されている。それにより各ケーブル22の傾斜力をより容易に調節し、水中トンネルの継手セグメント12の受けた軸方向引張力の大きさをより容易に調節する。当該引張力発生装置2の各上記ケーブル22にはいずれも、各ケーブル22の端部に接続されたアンカールーム23を含む引張力調節機構が設けられており、各アンカールーム23には上記ケーブル22の引張力を調節可能なレギュレーターが設けられており、全ての上記アンカールーム23はいずれも上記岸側基盤101に設置される。アンカールーム23によって各ケーブル22の引張力を調節することは、より便利で信頼性がある。また、ケーブル22は長さが現場の岸側基盤101に基づいて柔軟に調節して配置され、ケーブル22の材質は鋼線ロック、鋼管、高強度ケーブル等の材質の構造部材を用いることができる。各継手セグメント12には、上記ケーブル22に接続するための複数の係留ラグ21が設けられている。
【0106】
当該ケーブル22の端部は、岸側基盤101内に位置するプレキャストコンクリートブロック内にアンカー固定され、又は岸側地面に位置する鋼構造部材内にアンカー固定され、鋼構造部材は比較的大きい引張強度を有することができ、両端の軸方向引張力の荷重作用により、水中トンネルの管体1に比較的大きい水平剛性を提供することができる。図6に示される4つの図(6a、6b、6c、6d)は、管壁断面の4種類の構造設計図であり、水中トンネルの管体1の使用状態に基づいて、海に隣接する側と接触する層を外層とし、トンネル側と接触する層を内層とし、各継手セグメント12は、外層とする環状鋼板層13を含み、当該管体2の内部は中空チャンバー18を有し、中空チャンバー18の内部に路面層17が敷設され、全ての上記係留ラグ21は上記鋼板層13に接続され、係留ラグ21は鋼板層13と一体成形された構造体であってもよく、そのうち、係留ラグ21は標準の対称ラグ(図7aに示される)であってもよく、引張力発生装置の方向へ傾斜する異形ラグ(図7bに示される)であってもよい。水中トンネルの受けた軸方向引張力の水平剛性の変化要件を満たすために、鋼板層13の厚さは5~15cmに選択することができる。当該鋼板層13の内側に環状鉄筋コンクリート層14が更に設けられており(図6aに示される)、同じ構造強度を保証する場合、鋼板層13に鉄筋コンクリート層14が内蔵されることで、工事コストを効果的に削減することができる。当該鉄筋コンクリート層14の厚さは60~195cmに選択される。コンクリート層と鋼板層13との間の接続強度を高めるために、鉄筋コンクリート層14内には、一端が上記鋼板層13に接続された複数のせん断部材15が設けられ(図6bに示される)、当該せん断部材15はスタッド又は形鋼部材を使用する。水中トンネルの衝突防止とエネルギー散逸作用を向上させるために、上記鋼板層13と鉄筋コンクリート層14との間に環状ゴム層16が更に設けられている(図6dに示される)。水中トンネル内で火事が発生する時の防火能力を向上させるために、鉄筋コンクリート層14の内側に耐火ボード層が更に設けられている。トンネルの防水需要を向上させるために、耐火ボード層の内側には、厚さが0.5~3cmの水密鋼板層13が更に設けられている(図6cに示される)。
【0107】
本発明の実施例2に記載の水中トンネルの岸側接続システムは、従来のポンツーン式水中トンネル水平剛性が比較的弱いという技術的問題、及び、従来のアンカー引き式水中トンネルの技術的思想による水平剛性が依然として比較的弱く、且つスラックとスナップ現象が発生しやすいという技術的問題に対して、水中トンネルの継手セグメント12が岸側基盤101を直接通過し、次に継手セグメント12の引張力発生装置2によって継手セグメント12に軸方向引張力を提供することで、水中トンネルの管体1全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させ、管体1の移動を更に拘束する役割を果たすことができ、それにより水中トンネルの管体1の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体1の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性も高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体1は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体1の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが各方向の波や水流によって移動する時、管体1の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体1により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22の受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22や基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0108】
説明すべきことは、上記継手セグメント12の管体1と岸側基盤101の中空チャネルが互いに適合し、且つ軸方向引張力の損失を低減するために、両者は低摩擦力に設置される。また、各上記継手セグメント12と岸側基盤101との間に環方向止水部材が更に設けられてもよく、環方向止水部材は継手セグメント12にスリーブされている。更に、環方向止水部材は弾性構造部材である。当該岸側基盤101の中空チャネルは、サイズが継手セグメント12より大きくするように設計することができ、このように、継手セグメント12を岸側基盤101の中空チャネルに取り付ける時、両者に隙間があり、当該隙間の位置に環方向止水部材が配置され、当該環方向止水部材は、管体1と岸側基盤101に同時に接続するとともに、一定の弾性を有するため一定の軸方向の相対変位に適合することができ、即ち当該継手セグメント12が軸方向引張力を受けた後に環方向止水部材は変位した後も依然として水密を保持する。
【0109】
<実施例3>
図3~5に示されるように、本実施例3は、浮遊セグメント11を備える管体1と中空チャンバー18を含む水中トンネルを提供する。上記浮遊セグメント11の両端に上記実施例2の岸側接続システムがそれぞれ接続されており、上記継手セグメント12はいずれも岸側基盤101を通過し、2つの上記継手セグメント12にはいずれも引張力発生装置2が設けられており、上記引張力発生装置2は対応する上記継手セグメント12に軸方向引張力を加えるために用いられる。
【0110】
但し、上記2つの軸方向引張力の大きさは同じであり、軸方向引張力の方向は反対である。当該浮遊セグメント11及び2つの継手セグメント12はいずれも、鋼板層13及び上記鋼板層13内に位置する鉄筋コンクリート層14を含み、全ての上記鋼板層13は一体構造部材であり、全ての上記鉄筋コンクリート層14は一体構造部材である。様々な水下作業条件環境に用いられるチャネルの需要に応じるために、当該管体1の断面形状は、円形(図9)、四角形(図10)、楕円形又は馬蹄形(図11)である。
【0111】
また、浮遊セグメント11は複数の管体1ユニットをつなぎ合わせて形成される。2つの岸側基盤101の間に位置する上記管体1の長さは50~3000mであり、好ましくは、100~2000mである。浮遊セグメント11には、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置が設けられており、又は上記浮遊セグメント11には、水面に浮遊可能なポンツーン装置が接続されている。
【0112】
当該水中トンネル構造は、管体1の浮遊セグメント11の両端に上記の岸側接続システムを設置し、継手セグメント12が岸側基盤101を直接通過し、次に継手セグメント12の引張力発生装置2によって継手セグメント12に軸方向引張力を提供することで、水中トンネルの管体1全体の水平剛性と垂直剛性を顕著に増加させることができ、それにより管体1の移動を更に拘束する役割を果たし、水中トンネルの管体1の固有振動周波数を増加させ、波のスペクトルの高エネルギー領域を回避することができ、水中トンネルの管体1の撓みと加速度を減らすことができ、同時に設計の冗長性を高めるため、水中トンネルの安全性及び信頼性を向上させる。軸方向引張力が増加するため、水中トンネルの管体1は「弦」のような高周波数固有振動構造システムになり、より速い周波数での振動により、管体1の周囲の水と組み合わせて減衰効果を効果的に発揮することができ、これにより、当該水中トンネルが各方向の波や水流によって移動する時、管体1の高周波数振動によってエネルギーをより速く消費することができ、当該特徴は、アンカー引き式水中トンネルにとって当該構造の総運動エネルギーの消費が管体1により多く集中することを意味し、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22の受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22や基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0113】
<実施例4>
図8に示されるように、本実施例4は、浮遊セグメント11を備える管体1と中空チャンバー18を含む水中トンネルを提供する。浮遊セグメント11の一端には上記岸側接続システムが接続されており、他端には岸側基盤101に固定された引き止めセグメント3が接続されている。当該引き止めセグメント3は浮遊セグメント11の端部に設けられた径方向突起部31を含み、岸側基盤101には上記突起部31に適合した凹溝部32が設けられている。突起部31は、上記浮遊セグメント11と一体成形された構造部材である。当該突起部31は凹溝部32と互いに合わせて大きなせん断力を提供することで、浮遊セグメント11の端部の径方向突起部31の岸側基盤101への固定を実現することができる。
【0114】
当該水中トンネルの岸側接続システムは、能動端として軸方向引張力を提供することができ、摩擦力をできる限り減少させるために、岸側接続システムの継手セグメント12と岸側基盤101を低摩擦力で接続することによって軸方向引張力の損失を低減させ、水中トンネルの滑らかな動作を保証する。引き止めセグメント3は、受動端として反力のみを提供し、同時に引き止めセグメント3と岸側基盤101との相対的な固定を維持するために、岸側基盤101に対する大きい摩擦力を提供することができる。
【0115】
<実施例5>
本実施例5も、水中トンネルを提供し、浮遊セグメント11の一端には岸側接続システムが設けられており、他端には岸側基盤101に固定された引き止めセグメント3が接続されている場合、当該引き止めセグメント3が浮遊セグメント11の端部に接続された重力式ケーソン構造であるという点で実施例4と異なっている。当該重力式ケーソン構造は鋼質又は鉄筋コンクリートのケーソン構造部材である。浮遊セグメント11の他端に位置する引き止めセグメント3の重量が他の部分より大きくすることで、当該浮遊セグメント11の引き止めセグメント3の岸側基盤101への固定を実現する。
【0116】
<実施例6>
本実施例6も、水中トンネルを提供し、浮遊セグメント11の一端には岸側接続システムが設けられており、他端には岸側基盤101に固定された引き止めセグメント3が設けられている場合、当該引き止めセグメント3は、浮遊セグメント11の端部に接続された複数の引張抵抗アンカーロッドであり、全ての引張抵抗アンカーロッドは岸側基盤101にアンカー固定されることで、当該浮遊セグメント11の引き止めセグメント3の岸側基盤101への固定を実現する。
【0117】
<実施例7>
本実施例は、
水中トンネルの、複数の管体1ユニットを含む浮遊セグメント11及び2つの継手セグメント12を製造するステップ1と、
水中トンネルの継手セグメント12の2つの岸側基盤101に合わせるための貫通孔を工事するステップ2と、
2つの上記継手セグメント12をそれぞれ上記岸側基盤101の貫通孔を通過させ、上記引張力発生装置2により上記岸側基盤101に接続するステップ3と、
上記浮遊セグメント11の両端をそれぞれ2つの上記継手セグメント12に接続し、水中トンネルの管体1を形成するステップ4と、
上記浮遊セグメント11に、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置を取り付け、又は上記浮遊セグメント11に、水面に浮遊可能なポンツーン装置を接続するステップ5と、
2つの上記継手セグメント12の引張力発生装置2に軸方向引張力を加え、アンカー固定装置に引張力を加え、各引張力が受力の要件を満たすように調節した後、最終的に図3に示される水中トンネルの工事を完成するステップ6と、を含む、水中トンネルの工事方法を提供する。
【0118】
本発明に記載の水中トンネルの工事方法は、まず2つの継手セグメント12を引張力発生装置2で岸側基盤101にそれぞれ接続し、次にセグメントに分けてつなぎ合わせて浮遊セグメント11を形成し、最後に浮遊セグメント11を2つの継手セグメント12にそれぞれ接続した後、2つの引張力発生装置2の管体1への軸方向引張力を調節し、最終的に水中トンネルを形成する。当該工事方法は、操作が簡単で、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22の受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22や基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0119】
<実施例8>
本実施例8は、管体1の一端に沿って軸方向引張力を加え、他端に反力のみを提供する水中トンネルを更に提供する。図8に示されるように、当該水中トンネルの工事方法は、
水中トンネルの浮遊セグメント11、継手セグメント12及び引き止めセグメント3を製造するステップ1と、
水中トンネルの継手セグメント12の岸側基盤101に合わせるための貫通孔を工事するステップ2と、
継手セグメント12を上記岸側基盤101の貫通孔を通過させ、上記引張力発生装置2により上記岸側基盤101に接続するステップ3と、
水中トンネルに合わせるための引き止めセグメント3を工事し、引き止めセグメント3を上記岸側基盤101に取り付けるステップ4と、
上記浮遊セグメント11の両端をそれぞれ上記継手セグメント12及び引き止めセグメント3に接続し、水中トンネルの管体1を形成するステップ5と、
上記浮遊セグメント11に、河床又は海床にアンカー固定可能なアンカー固定装置を取り付け、又は上記浮遊セグメント11に、水面に浮遊可能なポンツーン装置を接続するステップ6と、
上記継手セグメント12の引張力発生装置2に軸方向引張力を加え、アンカー固定装置に引張力を加え、各引張力が受力の要件を満たすように調節した後、最終的に図5に示される水中トンネルの工事を完成するステップ7と、を含む。
【0120】
当該水中トンネルの工事方法は、水中トンネルの浮遊セグメント11、1つの継手セグメント12及び1つの引き止めセグメント3を製造し、まず1つの継手セグメント12を引張力発生装置2で岸側基盤101に接続すると同時に、引き止めセグメント3を岸側基盤101に接続し、次にセグメントに分けてつなぎ合わせて浮遊セグメント11を形成した後、浮遊セグメント11を継手セグメント12及び引き止めセグメント3にそれぞれ接続し、水中トンネルの管体1全体を形成し、次に2つの引張力発生装置2の管体1への軸方向引張力を調節し、最終的に水中トンネルを形成する。当該工事方法は、操作が簡単で、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22の受けた応力の変化量を効果的に減少することができ、海床又は河床にアンカー固定されたケーブル22や基盤を長期間使用するのに役立ち、その工事リスクと工事コストもより低く、工事コストを効果的に節約し、保守の難易度を効果的に低減すると同時に、工事の実施と普及が容易になる。
【0121】
上記の実施例は、本発明を説明するものに過ぎず、本発明に記載の技術的解決手段を制限するものではない。本明細書は、上記の各実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、本発明は上記の発明を実施するための形態に限定されない。従って、本発明に対する如何なる修正や同等置換、発明の精神や範囲から逸脱しない技術的解決手段及びその改進は全て、本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【図(1a)】
【図(1b)】
【図(1c)】
図2
図3
図4
図5
図6
【図(7a)】
【図(7b)】
図8
図9
図10
図11