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特許7360559モジュラー・マルチレベル電力変換器および可変速発電電動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】モジュラー・マルチレベル電力変換器および可変速発電電動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20231004BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231004BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022550327
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035637
(87)【国際公開番号】W WO2022059211
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】511238158
【氏名又は名称】日立三菱水力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪東 明
(72)【発明者】
【氏名】菊井 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智道
(72)【発明者】
【氏名】清藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅一
(72)【発明者】
【氏名】中出 陽介
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143626(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正側端子(P端子)および負側端子(N端子)と交流系統の3相交流端子(U端子,V端子,W端子)間に接続されたモジュラー・マルチレベル電力変換器であって、K個(Kは1以上の自然数)の電圧源特性のエネルギー貯蔵要素を介して任意の電圧を出力可能な2端子の単位変換器を直列接続した2端子アームを、前記正側端子と前記3相交流端子間に3個(UPアーム,VPアーム,WPアーム)、前記負側端子と前記3相交流端子間に3個(UNアーム,VNアーム,WNアーム)備え、前記正側端子側の3個の2端子アームと前記負側端子側の3個の2端子アームと前記3相交流端子との間に2端子コイルを含む誘導素子と、前記正側端子側の3個のアームと前記負側端子側の3個のアームの電流を検出する6個のアーム電流変成器と、前記3相交流端子を流れる交流電流(IU,IV,IW)を検出あるいは演算する交流電流変成器と、前記3相交流端子の電圧変成器と、前記直流電源の正側端子を流れる電流(IDC)を検出あるいは演算する直流電流変成器と、前記交流電流変成器の信号から有効電流成分と無効電流成分を演算出力する交流電流演算器と、この有効電流成分と無効電流成分の演算出力が指令値に一致するように交流3相毎に交流電圧指令を演算して2分岐出力する交流電流調整器と、前記直流電流変成器からの電流信号と指令値が一致するように1個の直流電圧指令を演算して6分岐出力する直流電流調整器と、前記交流電圧指令と前記直流電圧指令を加減算して前記正側端子側の3個のアームと前記負側端子側の3個のアームを構成するパルス幅変調装置への変調率を出力する変調率演算器を備えたモジュラー・マルチレベル電力変換器において、
このモジュラー・マルチレベル電力変換器を構成する(6×k)個のコンデンサの平均電圧を検出・演算するコンデンサ平均電圧検出器と、このコンデンサ平均電圧検出値が指令値と一致するように前記交流電流調整器への有効電流成分指令を演算出力するコンデンサ電圧調整器と、前記交流電流変成器からの電流信号と交流電圧変成器からの電圧信号を入力して有効電力を演算出力する有効電力検出器と、この有効電力検出値と有効電力指令値が一致するように前記直流電流調整器への直流電流指令値を演算出力する有効電力調整器と、前記交流電圧変成器の3相電圧信号から正相電圧振幅を演算する正相電圧検出器と、この正相電圧振幅が第1設定値以下となると出力レベル0から1に、第2設定値以上になると出力レベル1から0に切り替える第1レベル検出器と、この第1レベル検出器の出力レベルが1の期間は前記直流電流調整器への有効電力指令値の絶対値を0あるいは定格直流電流の0.2倍以下の第1制限値に抑制する第1の有効電力指令抑制器と、前記交流電圧変成器の3相電圧信号から逆相電圧振幅を演算する逆相電圧検出器と、この逆相電圧振幅が第3設定値以上となると出力レベル0から1に、第4設定値以下になると出力レベル1から0に切り替える第2レベル検出器と、この第2レベル検出器の出力レベルが1の期間は前記直流電流調整器への有効電力指令値の絶対値を定格直流電流の0.3倍以上0.7倍以下の第2制限値に抑制する第2の有効電力指令抑制器と、を備えたことを特徴とするモジュラー・マルチレベル電力変換器。
【請求項2】
直流電源の正側端子(P端子)および負側端子(N端子)と交流系統の3相交流端子(U端子,V端子,W端子)間に接続されたモジュラー・マルチレベル電力変換器であって、K個(Kは1以上の自然数)の電圧源特性のエネルギー貯蔵要素を介して任意の電圧を出力可能な2端子の単位変換器を直列接続した2端子アームを、前記正側端子と前記3相交流端子間に3個(UPアーム,VPアーム,WPアーム)、前記負側端子と前記3相交流端子間に3個(UNアーム,VNアーム,WNアーム)備え、前記正側端子側の3個の2端子アームと前記負側端子側の3個の2端子アームと前記3相交流端子との間に2端子コイルを含む誘導素子と、前記正側端子側の3個のアームと前記負側端子側の3個のアームの電流を検出する6個のアーム電流変成器と、前記3相交流端子を流れる交流電流(IU,IV,IW)を検出あるいは演算する交流電流変成器と、前記3相交流端子の電圧変成器と、前記直流電源の正側端子を流れる電流(IDC)を検出あるいは演算する直流電流変成器と、前記交流電流変成器の信号から有効電流成分と無効電流成分を演算出力する交流電流演算器と、この有効電流成分と無効電流成分の演算出力が指令値に一致するように交流3相毎に交流電圧指令を演算して2分岐出力する交流電流調整器と、前記直流電流変成器からの電流信号と指令値が一致するように1個の直流電圧指令を演算して6分岐出力する直流電流調整器と、前記交流電圧指令と前記直流電圧指令を加減算して前記正側端子側の3個のアームと前記負側端子側の3個のアームを構成するパルス幅変調装置への変調率を出力する変調率演算器を備えたモジュラー・マルチレベル電力変換器において、
このモジュラー・マルチレベル電力変換器を構成する(6×k)個のコンデンサの平均電圧を検出・演算するコンデンサ平均電圧検出器と、このコンデンサ平均電圧検出値が指令値と一致するように前記交流電流調整器への有効電流成分指令を演算出力するコンデンサ電圧調整器と、前記交流電流変成器からの電流信号と交流電圧変成器からの電圧信号を入力して有効電力を演算出力する有効電力検出器と、この有効電力検出値と有効電力指令値が一致するように前記直流電流調整器への直流電流指令値を演算出力する有効電力調整器と、前記交流電圧変成器の3相電圧信号から正相電圧振幅を演算する正相電圧検出器と、この正相電圧振幅が第1設定値以下となると出力レベル0から1に、第2設定値以上になると出力レベル1から0に切り替える第1レベル検出器と、この第1レベル検出器の出力レベルが1の期間は前記直流電流調整器からの直流電流指令値の絶対値を0あるいは定格直流電流の0.2倍以下の第1制限値に抑制する第1の直流電流指令抑制器と、前記交流電圧変成器の3相電圧信号から逆相電圧振幅を演算する逆相電圧検出器と、この逆相電圧振幅が第3設定値以上となると出力レベル0から1に、第4設定値以下になると出力レベル1から0に切り替える第2レベル検出器と、この第2レベル検出器の出力レベルが1の期間は前記直流電流調整器への直流電流指令値の絶対値を定格直流電流の0.3倍以上0.7倍以下の第2制限値に抑制する第2の直流電流指令抑制器と、を備えたことを特徴とするモジュラー・マルチレベル電力変換器。
【請求項3】
前記コンデンサの交流系統周波数の電圧脈動率を(電圧最大値-電圧最小値)/(電圧最大値+電圧最小値)で定義し、この電圧脈動率が定格有効電力出力時に10%を超えることを特徴とする請求項1または2に記載のモジュラー・マルチレベル電力変換器。
【請求項4】
請求項1または2に記載のモジュラー・マルチレベル電力変換器を第1のモジュラー・マルチレベル電力変換器とし、この直流端と背後接続した第2のモジュラー・マルチレベル電力変換器の交流端に交流回転電気機械を接続したことを特徴とする可変速発電電動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラー・マルチレベル電力変換器(以下、本発明では「MMC変換器」と称する。)に関する。特に2台のMMC変換器の直流側を背後接続して周波数変換装置を構成し、1台のMMC変換器の交流側を電力系統に、他の1台のMMC変換器の交流側を交流回転電気機械に接続した可変速発電電動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MMC変換器の回路は、コンデンサなどの電圧源特性のエネルギー蓄積素子を電圧源とするPWM変換器の変調率を制御することによって所要の電圧を発生させる単位変換器からなる。単位変換器のエネルギー蓄積素子の電圧は、交流周波数で決まる周期の充放電によって変動する。この単位変換器を直列接続した2端子アームを6台設け、このうち3台を正側アームとし、その第1端子を交流電源の各相端子に接続し、星形結線した第2端子を直流電源の正側端子に接続する。残り3台を負側アームとし、その第2端子を交流電源の各相端子に接続し、星形結線した第1端子を直流電源の負側端子に接続する。各相の負側アームから正側アームに貫通する電流を抑制する誘導性素子を設ける。
【0003】
MMC変換器の制御は、外部からの運転指令に応じで交流電流指令と直流電流指令を演算する機能(以下、本発明では「上位制御装置」と称する。)、上位制御装置からの指令に応じてアーム電流を調整する電流制御機能(以下、本発明では「変換器電流制御」と称する。)、単位変換器に設けたPWM変換器の変調率をアーム内で相互調整することによってエネルギー蓄積素子の平均電圧を単位変換器間で平衡に保つ機能(以下、本発明では「段間制御」と称する。)、アーム内のエネルギー蓄積素子の平均電圧をアーム間で平衡に保つ機能(以下、本発明では「相間平衡制御」と称する。)からなる。
【0004】
特許文献1には、MMC変換器の基本的な回路構成が開示されている。
特許文献2には、MMC変換器の基本的な制御構成が開示されている。
特許文献3には、MMC変換器を構成する単位変換器のコンデンサ電圧間の平衡を維持する方法が開示されている。
特許文献4には、直流側を背後接続した2台のMMC変換器のうちの1台の交流側を交流回転電気機械に接続して可変速発電電動装置を実現する方法が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、概念的な上位制御装置の機能ブロック線図が、包括的に示されている。
特許文献5には、実用的な上位制御装置の機能ブロック図が、明示的に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5189105号公報
【文献】特許第5197623号公報
【文献】特許第4999930号公報
【文献】特許第6243083号公報
【文献】特許第5993675号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ahmed ZAMA,'Modeling and Control of Modular Multilevel Converters(MMCs) for HVDC applications',Nov.2018,Figure III-40,p.111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
MMC変換器には、従来からの3レベル変換器などに比べて出力容量当たりの容積が大きくなる欠点があった。特に、地下に設置する場合も多い揚水発電所や洋上風力発電所など、設置面積や容積制限の厳しい用途に適用する際の課題となる。
【0009】
MMC変換器が大型化する原因は、エネルギー蓄積素子として使用するコンデンサである。従来のMMC変換器の場合、コンデンサがアーム容積の過半を占める場合が多い。コンデンサの蓄積エネルギーを減らすことによってコンデンサを小型化できるが、交流周波数で決まる周期の充放電による電圧脈動の増加が隘路となる。
【0010】
図17にコンデンサ容量と電圧脈動の関係を示す。横軸のコンデンサ容量係数Kcは、全てのコンデンサが定格電圧で充電された時のエネルギーをMMC変換器の定格有効電力出力で割った時定数[秒]を交流周波数1周期で単位化した値である。交流系統の周波数をF0、MMC変換器の定格出力(有効電力)をP0、MMC変換器を構成する6アームは各々K個の単位変換器の直列接続とする。
【0011】
ここで、単位変換器のコンデンサ容量をC、コンデンサの定格電圧をV0とすると、Kcは式(1)となる。
【0012】
【数1】
【0013】
図17の縦軸は電圧脈動率r、コンデンサ電圧の最大値Vc_max、平均値Vc_ave、最小値Vc_minを示す。
ここで、脈動率rは単位化した無次元数で
r=(Vc_max-Vc_min)/(Vc_max+Vc_min)
で定義している。
電圧Vc_max、Vc_ave、Vc_minはコンデンサ定格電圧V0で単位化した値を示す。
【0014】
MMC変換器を設計する際は、コンデンサの電圧利用率を最大にするため、電圧最大値Vc_maxが定格V0となるように調整する。図17は、調整後の電圧脈動率r、平均値Vc_ave、最小値Vc_minの変化を示す。
【0015】
図17は、交流系統の周波数F0が60Hz、MMC変換器は強め力率0.85の場合を示す。一般に、力率が下がるにつれて縦軸の値は高くなる。しかしコンデンサ容量係数Kcに対する電圧脈動率r、平均値Vc_ave、最小値Vc_minの傾向は変わらない。
【0016】
コンデンサ容量を下げると、コンデンサ平均電圧Vc_aveに比例してMMC変換器の直流定格電圧が下がり、反比例して直流電流定格を上げる必要がある。これによって単位変換器を構成する自己消弧素子と逆並列ダイオードの電流容量の大型化を招く。更にコンデンサ容量を下げると、アームを構成するK個の単位変換器のコンデンサ電圧の平衡が崩れやすくなり、系統事故波及による交流電圧電源変動などの外乱で運転継続できなくなる。
【0017】
MMC変換器と従来からの3レベル変換器の寸法・容積を比較する際、MMC変換器で不要となる高調波フィルタなどの付帯設備を含めるか変換器単品で比較するかで比較結果は異なる。また、MMC変換器の場合は従来からの3レベル変換器に比べて発生損失を50%程度まで削減できるため冷却装置を小型化できる。従って、冷却装置を含めるか否かで比較結果は異なる。しかし、冷却装置の寸法は、冷媒が水か空気かによっても大きく異なる。
【0018】
ここでは、高調波フィルタを含め、冷却装置を除いて比較する。この条件でMMC変換器の寸法・容積を従来からの3レベル変換器並みに抑制するためには、10%を超えるMMC変換器のコンデンサ電圧脈動率を許容する必要がある。あるいは、前述のコンデンサ容量係数Kcを3より小さく設定する必要がある。
【0019】
コンデンサ容量を大きくして電圧脈動率を5~8%程度に抑えればMMC変換器の制御は格段に容易になる。一方、装置容積は図17横軸のコンデンサ容量係数Kcにほぼ比例して大きくなるため、従来からの3レベル変換器とは比較にならぬほど大型になる。
【0020】
特に、直流側を背後接続した2台のMMC変換器のうちの1台の交流側を交流回転電気機械に接続して揚水発電電動機や風力発電機に適用する場合、これらの設備は電力系統の後続端に位置する場合が多く、ループ送電網に直接接続されることを前提にしたMMC変換器の構成が適切とは言えない。後続端接続の場合、交流系統側の地絡事故波及などの外乱は大きく、非対称事故後の地絡相除去から再閉路までの期間は欠相状態(2相運転)で運転継続する必要がある。これらの機能は、従来の固定速発電設備では常識的に発電設備として大前提として要求される機能である。
【0021】
MMC変換器を使う場合、しかもコンデンサ容量を抑制して小型軽量化を図る場合、系統事故波及時にコンデンサ電圧の平衡が崩れやすく、特に非対称事故時にコンデンサ電圧の平衡を保って運転継続する機能の実現は困難である。
【0022】
本発明は、図17の矢印で示す範囲、具体的には、「コンデンサ容量係数Kcが3以下」、あるいは「コンデンサ電圧脈動率rが10%%以上」に調整してMMC変換器の小型軽量化を実現しながら系統事故波及時なのどの課題を解決するのに好適である。
【0023】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、MMC変換器の長所である低損失と、欠点である装置の小型化と系統事故波及時の運転継続性能向上とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、MMC変換器を構成する単位変換器のコンデンサの平均電圧でMMC変換器の有効電流成分を調整し、系統事故時に正相電圧が低下した時、逆相電圧が上昇した時にMMC変換器の直流電流指令を抑制し、系統事故波及時に運転継続するのに好適なMMC変換器を提供する。
【0025】
以下、これらの機能を実現するための手段について説明する。
【0026】
特許文献4の3端子リアクトルを用いたMMC変換器60の構成を図18に示す。MMC変換器60は交流系統2とユニット変圧器4を介して接続され、ユニット変圧器4の第1端子(AT,BT,CT)と交流系統2の間に3台の電圧変成器と3台の電流変成器からなる信号変成器5を設ける。MMC変換器60の直流側端子(P,N)には直流電源3が接続される。MMC変換器60の直流側端子(P,N)は高抵抗8(8P,8N)で接地して電位固定し、電流変成器9(9P,9N)で直流電圧(VDC_fB)を差動計測する。
【0027】
ユニット変圧器4の第2端子(U,V,W)と正側の直流端子Pの間に3台の2端子の正側アーム7Pを設け、交流端子U,V,Wと負側の直流端子Nの間に3台の2端子の負側アーム7Nを設け、交流端子U,V,Wと前記正側アーム7Pの第1端子間、交流端子U,V,Wと前記負側アーム7Nの第2端子間に電流変成器10を設ける。
【0028】
各相の交流端子(U,V,W)、正側アーム7Pの第1端子、負側アーム7Nの第2端子間に3端子リアクトル6U,6V,6Wを設ける。各相の交流端子(U,V,W)を3端子リアクトル6(6U,6V,6W)の中間端子(UC,VC,WC)に接続し、3台の正側アーム7Pの第1端子を3端子リアクトル6の正側端子(UP,VP,WP)に接続し、3台の負側アーム7Nの第2端子を3端子リアクトル6の負側端子(UN,VN,WN)に接続する。
【0029】
以上の構成で、変換器電流制御装置11は、電流変成器10の検出電流(IP_U,IP_V,IP_W,IN_U,IN_V,IN_W)を入力し、交流電流(IAC_U,IAC_V,IAC_W)と各相の負側アーム7Nから正側アーム7Pに流れる貫通電流(IPN_U,IPN_V,IPN_W)を次式で演算する。
【0030】
IAC_U=IP_U+IN_U
IAC_V=IP_V+IN_V
IAC_W=IP_W+IN_W
IPN_U=(1/2)×(IP_U-IN_U)
IPN_V=(1/2)×(IP_V-IN_V)
IPN_W=(1/2)×(IP_W-IN_W)
【0031】
この交流電流と貫通電流を入力して、2端子の正側アーム7Pおよび負側アーム7Nの端子Cを介してゲートパルスを出力する。
【0032】
以下、非特許文献1に基づいて上位制御装置の構成を、特許文献4に基づいて変換器電流制御の構成を説明する。
【0033】
19は交流信号演算器で、信号変成器5からの電圧・電流信号を入力して有効電力(P_fB)、無効電力(Q_fB)、正相電圧位相(θp)を演算出力する。
【0034】
23は直流電力検出器で、直流電圧(Pdc_fB)とP側アーム電流(IP_U,IP_V,IP_W)とから直流電力(Pdc_fB)を次式で演算する。
【0035】
IDC=IP_U+IP_V+IP_W
Pdc_fB=VDC_fB×IDC
【0036】
61はMMC変換器エネルギー検出器で、6台のアーム7(正側アーム7P,負側アーム7N)の単位変換器のコンデンサ電圧を入力し、全コンデンサに蓄積されるエネルギーの合計値(Wmmc_fB)を演算する。
【0037】
62は上位制御装置で、外部からの有効電力指令(P_ref)、無効電力指令(Q_ref)、直流電圧指令(VDC_ref)と計測値(P_fB,Q_fB,VDC_fB)を突き合わせして電流指令値(Id_ref,Iq_ref,Iz_ref)を変換器電流制御装置11に出力する。
【0038】
電流指令値(Id_ref,Iq_ref)と交流電流指令(IAC_U_ref,IAC_V_ref,IAC_W_ref)、正相電圧位相(θp)の関係は式(2)となる。
【0039】
【数2】
【0040】
また、正側アームの電流指令(IP_U_ref,IP_V_ref,IP_W_ref)、負側アームの電流指令(IN_U_ref,IN_V_ref,IN_W_ref)と交流電流指令(IAC_U_ref,IAC_V_ref,IAC_W_ref)、直流電流指令(Iz_ref)の関係は次式となる。
【0041】
IP_U_ref=(1/2)×IAC_U_ref+Iz_ref
IP_V_ref=(1/2)×IAC_V_ref+Iz_ref
IP_W_ref=(1/2)×IAC_W_ref+Iz_ref
IN_U_ref=(1/2)×IAC_U_ref-Iz_ref
IN_V_ref=(1/2)×IAC_V_ref-Iz_ref
IN_W_ref=(1/2)×IAC_W_ref-Iz_ref
【0042】
図19は、非特許文献1に示された包括的な上位制御装置62の構成を示す。上位制御装置62は変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63の出力を利得64と利得65で交流有効電力調整器(APacR)66と直流有効電力調整器(APdcR)67に分配出力する。
【0043】
直流電圧調整器(AVdcR)68の出力は、モード切替指令によって有効電力指令(P_ref)と切替器69で切り替え可能とし、交流有効電力調整器(APacR)66と直流有効電力調整器(APdcR)67に分配出力する。
【0044】
無効電力調整器(AQR)70は無効電流指令(Id_ref)を出力し、交流有効電力調整器(APacR)66は有効電流指令(Iq_ref)を出力し、直流有効電力調整器(APdcR)67は直流電流指令(Iz_ref)を出力する。
【0045】
スイッチ(SW_ac1)71、スイッチ(SW_dc1)72、スイッチ(SW_ac2)73、スイッチ(SW_dc2)74は非特許文献1には記載がないが、本発明の特徴を説明するために追加した。また、利得75と利得76は単位換算を明示するために追加した。
【0046】
非特許文献1では、利得64と利得65の調整、切替器69によって運転モードに応じて柔軟な制御系の動作切替や調整が可能であると説明されている。
【0047】
非特許文献1によれば、有効電流指令(Iq_ref)と直流電流指令(Iz_ref)の出力は、交流有効電力(P_fB)、直流電圧(VDC_fB)、全コンデンサエネルギーの合計値(Wmmc_fB)の何れか、あるいはこれらの組み合わせと突き合わせて制御する選択肢があると主張している。
【0048】
一方、本発明では単位変換器のコンデンサ容量削減を目的とし、その電圧脈動率rが10%を超えるMMC変換器を対象とする。同時に系統事故波及時などの交流系統側の外乱にも安定に運転継続可能な制御方式の実現を目的としている。大きな電圧脈動率rを許容するほど制御方法の選択肢が狭まり、特に、有効電流指令(Iq_ref)の制御方法が限られることが分かった。
【0049】
系統事故波及時の挙動は、系統に接続されたMMC変換器の変換する有効電力が発電方向(以下、「発電運転」と称する。)、電動方向(以下、「電動運転」と称する。)によって異なる。また、系統事故モードが対称事故か非対称事故かによって異なる。
【0050】
MMC変換器の場合、電動運転時に発生する非対称事故、特に事故相除去から再閉路まで2相給電の欠相運転時にコンデンサ間の電圧平衡を保って運転継続することが課題と分かった。
【0051】
本発明では、上位制御装置62において、切替器69はp側に固定、スイッチ(SW_ac1)71とスイッチ(SW_dc2)74は開側に断路固定、スイッチ(SW_dc1)72とスイッチ(SW_ac2)73は閉側に短絡固定、利得64はαw=0に固定(「開側に固定」と等価)、利得65は(1-αw)=1に固定(「閉側に固定」と等価)する。この結果、有効電流指令(Iq_ref)は変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63で出力する。
【0052】
以上の構成が課題の解決に好適であることが分かった。
【0053】
以上の構成で、系統事故波及を交流系統の正相電圧低下と逆相電圧上昇で検出し、検出時の直流電流指令(Iz_ref)を抑制することによってコンデンサ電圧間の不平衡を抑制する。これによって系統事故波及時の運転継続を実現する効果がある。
【0054】
別の選択肢として、上位制御装置62において、図20に示すように、スイッチ(SW_ac2)73は開側に断路固定、スイッチ(SW_ac1)71、スイッチ(SW_dc1)72およびスイッチ(SW_dc2)74は閉側に短絡固定、利得64はαw=1に固定(「閉側に固定」と等価)、利得65は(1-αw)=0に固定(「開側に固定」と等価)する方法が考えられる。この場合は、有効電流指令(Iq_ref)は交流有効電力調整器(APacR)66で制御し、直流電流指令(Iz_ref)は変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63で制御する。
【0055】
この構成によれば、有効電力指令(P_ref)が加算されるものの、変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63のみで直流電流指令(Iz_ref)を出力するので高速にコンデンサ蓄積エネルギーを調整することができる。
【0056】
一方、加算する有効電力指令(P_ref)によってコンデンサ蓄積エネルギーを設定値どおりに調整することができず、設定値との偏差に対応するコンデンサ電圧分以上の尤度をとる必要がでるため、装置の大型化を招く欠点がある。
【0057】
また、装置の大型化を防ぐためにコンデンサ蓄積エネルギーの設定値との偏差をなくす方法としては、図20の構成でスイッチ(SW_dc2)74を開側に固定し、直流有効電力調整器(APdcR)67を動作させる方法が考えられる。
【0058】
しかし、この方法によれば、変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63に内側にフィードバック調整器として直流有効電力調整器(APdcR)67が加わるため、変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63の応答速度を下げざるを得なくなる。この結果、系統事故波及時のコンデンサ蓄積エネルギー調整が遅れ、コンデンサ電圧の平衡を保てない欠点がある。
【0059】
以上の通り、上位制御装置62の構成選択肢は制限される。本発明では、前述のとおり切替器69はp側に固定、スイッチ(SW_ac1)71とスイッチ(SW_dc2)74は開側に断路固定、スイッチ(SW_dc1)72とスイッチ(SW_ac2)73は閉側に短絡固定、利得65は(1-αw)=1に固定(「閉側に固定」と等価)、利得64はαw=0に固定(「開側に固定」と等価)とする。
【0060】
また、非特許文献1では、変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63は全コンデンサの蓄積エネルギーを調整している。これは、全コンデンサの電圧値の根2乗平均値を調整するのと等価である。コンデンサの蓄積エネルギーは、全コンデンサ分を合計しても交流系統周波数で変動することに変わりはない。従って、移動平均なのどの低周波濾波器を通した後で変換器エネルギー調整器(AWmmcR)63に入力する必要がある。
【0061】
一方、特許文献5では全コンデンサ電圧の平均値を入力する方法が開示されている。本発明では、コンデンサ容量を抑制するために、装置の定格出力では10%超の電圧脈動を前提としている。電圧脈動の増加とともにコンデンサの算術平均電圧と根2乗平均電圧の差も増加する。このため、特許文献5の方式は使えない可能性がある。
【0062】
図21に、コンデンサの算術平均電圧と根2乗平均電圧について、各々の交流系統の1周期平均を比較した結果を示す。図21は、単位変換器をアーム当たり12個直列接続した場合(K=12)、即ち6アーム合計で72個のコンデンサ電圧について比較した結果である。両者の差は0.4%程度に過ぎない。以上の通り、特許文献5の方法が本発明にも有効であることが分かった。
【0063】
以下、本発明では、非特許文献1の変換器エネルギー調整器(AWmmcR)に代えてコンデンサ電圧調整器(AVcR)を用いる。これによって、高速で安定にコンデンサ電圧を調整する効果がある。
【発明の効果】
【0064】
本発明にかかるモジュラー・マルチレベル電力変換器は、装置の小型化と系統事故波及時の運転継続性能確保を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、本発明にかかるMMC変換器の実施例1の回路構成を示す図である。
図2図2は、アーム(正側アーム、負側アーム)の回路構成を示す図である。
図3図3は、実施例1にかかる電力指令抑制回路の構成を示す図である。
図4図4は、本発明のモジュラー・マルチレベル電力変換システムにおいて、運転中に交流系統で対称事故が発生した場合の説明図である。
図5図5は、全コンデンサの平均電圧制御出力を交流電流の有効分指令とするが正相電圧検出による有効電力指令抑制回路を使用しない場合の、発電運転で対称事故発生時の波形を示す図である。
図6図6は、全コンデンサの平均電圧制御出力を交流電流の有効分指令とし、正相電圧検出による有効電力指令抑制回路を使用した場合の、発電運転で対称事故発生時の波形を示す図である。
図7図7は、本発明のモジュラー・マルチレベル電力変換システムにおいて、運転中に交流系統で非対称事故が発生した場合の説明図である。
図8図8は、全コンデンサの平均電圧制御出力を交流電流の有効分指令とし、正相電圧検出のみ有効電力指令抑制回路に使用し、逆相電圧検出による有効電力指令抑制回路を使用しない場合の、電動運転で非対称事故発生時の波形を示す図である。
図9図9は、全コンデンサの平均電圧制御出力を交流電流の有効分指令とし、正相電圧検出と逆相電圧検出による有効電力指令抑制回路を共に使用した場合の、電動運転で非対称事故発生時の波形を示す図である。
図10図10は、実施例1にかかる電力指令抑制回路の別の構成を示す図である。
図11図11は、本発明にかかるMMC変換器の実施例2の回路構成を示す図である。
図12図12は、実施例2にかかる電流指令抑制回路の構成を示す図である。
図13図13は、本発明にかかる可変速発電電動装置の実施例3の回路構成を示す図である。
図14図14は、本発明にかかる可変速発電電動装置の実施例3の別の回路構成を示す図である。
図15図15は、図14の可変速発電電動装置を構成する交流系統側MMC変換器の回路構成を示す図である。
図16図16は、実施例1と実施例3にかかる有効電力制御回路の構成を示す図である。
図17図17は、MMC変換器の単位変換器を構成するコンデンサの容量と、コンデンサの電圧脈動率、最大電圧値、平均電圧値、最小電圧値の関係を示す図である。
図18図18は、従来のMMC変換器の構成を示す図である。
図19図19は、従来のMMC変換器の上位制御系の構成と本発明の関係を示す図である。
図20図20は、従来のMMC変換器の上位制御系の別の構成を示す図である。
図21図21は、MMC変換器の単位変換器を構成するコンデンサ電圧の1周期平均値について根2乗平均値と算術平均値の相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に、本発明にかかるモジュラー・マルチレベル電力変換器および可変速発電電動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
図1は、本発明にかかるモジュラー・マルチレベル電力変換器(以下、MMC変換器と称する。)の実施例1の回路構成を示す図である。図1では、上述した図18に示すMMC変換器60と共通の構成要素に同じ番号を付している。MMC変換器60と共通の構成要素については重複を避けるために説明を省略する。
【0068】
1はMMC変換器で、交流系統2とユニット変圧器4を介して接続し、直流側端子(P,N)で直流電源3と接続する。
【0069】
各相の交流端子(U,V,W)と、正側アーム(7UP,7VP,7WP)の第1端子と、負側アーム(7UN,7VN,7WN)の第2端子との間に3端子リアクトル6U,6V,6Wを設ける。
【0070】
10は電流変成器で、3端子リアクトル6U,6V,6Wを構成する6コイルの電流(IP_U,IP_V,IP_W,IN_U,IN_V,IN_W)を検出して変換器電流制御装置11に出力する。
【0071】
図2は、アーム7(正側アーム7UP,7VP,7WP、負側アーム7UN,7VN,7WN)の回路構成を示す図である。
【0072】
アーム7は、第1端子Aと第2端子Bの間に単位変換器を構成するハーフブリッジ回路12をK個(Kは自然数)直列接続した構成である。なお、図2では、「No.i」のハーフブリッジ回路12以外については回路構成の記載を省略している。
【0073】
ハーフブリッジ回路12は正側端子Yと負側端子Xの2端子を備え、双方向チョッパ回路を構成する自己消弧素子13H,13L、逆並列ダイオード14H,14Lをコンデンサ15に接続する。
【0074】
ゲートドライブユニット(GDU)16H,16Lから自己消弧素子13H,13Lへの点弧・消弧指令で目標電圧をXY端子間に出力するよう、変換器電流制御装置11からの指令に基づきPWM制御する。
【0075】
17は電圧検出器で、信号変換器(CONV)18を経由してコンデンサ15の電圧をコンデンサ電圧検出器21に出力する。
【0076】
コンデンサ電圧検出器21は、コンデンサ瞬時電圧値の全数(6×K個)平均値を演算し、全数平均値を交流系統1周期で時間平均した値Vcを演算し、コンデンサ電圧調整器(AVcR)22に出力する。
【0077】
コンデンサ電圧調整器(AVcR)22は、コンデンサ電圧値Vcが設定値になるよう有効電流指令(Iq_ref)を演算し、変換器電流制御装置11に出力する。
【0078】
前述のとおり、交流信号演算器19は、信号変成器5からの電圧・電流信号を入力して有効電力(P_fB)、無効電力(Q_fB)、正相電圧位相(θp)を演算出力する。
【0079】
正相電圧位相(θp)は、ユニット変圧器4の巻線構成と交流系統2の相順に応じて第2端子側(U,V,W)に換算した値を出力する。交流系統2の相順がA→B→Cの場合、図18の実施例では第1端子(AT,BT,CT)の検出位相に対して30度進めて出力する。
【0080】
更に、交流信号演算器19は、交流系統2の正相電圧振幅(Vp_fB)と逆相電圧振幅(Vn_fB)を演算出力する。
【0081】
20は無効電力調整器(AQR)で、交流信号演算器19からの無効電力検出値(Q_fB)が設定値になるよう無効電流指令(Id_ref)を演算し、変換器電流制御装置11に出力する。
【0082】
前述のとおり23は直流電力検出器で、MMC変換器1の直流端有効電力(Pdc_fB)を出力する。24は切替器で、直流端有効電力(Pdc_fB)と接続端子S1を経由して外部で計測した有効電力(Pac_fB)を選択し、直流有効電力調整器(APdcR)25に出力する。
【0083】
直流有効電力調整器(APdcR)25は、切替器24からの検出値が設定値(P_ref_mod)になるよう直流電流指令(Iz_ref)を演算し、変換器電流制御装置11に出力する。
【0084】
以上の構成で、電力指令制限器26は、交流信号演算器19からの正相電圧振幅(Vp_fB)と逆相電圧振幅(Vn_fB)に応じて有効電力指令(P_ref)を制限し、補正指令(P_ref_mod)を直流有効電力調整器(APdcR)25に出力する。
【0085】
図3は、電力指令制限器26の実施例を示す図で、正相電圧振幅(Vp_fB)は利得27で交流系統2の定格電圧(V_rate)で単位化して正相制限器28に入力する。同様に、逆相電圧振幅(Vn_fB)は利得29で単位化して逆相制限器30に入力する。
【0086】
31は低値選択回路(LVG)で、正相制限器28と逆相制限器30の出力を比較選択して制限値(P_ref_max)を制限器32に出力し、有効電力指令(P_ref)の絶対値を制限値(P_ref_max)以下に抑制する。
【0087】
正相制限器28は、単位化した正相電圧振幅がx1以下になると出力をαに制限し、x2以上に戻ると制限値を元の1.0に戻す構成としている。この構成により、簡便な構成で、対称事故時に確実で安定に有効電力指令を制限する効果がある。
【0088】
逆相制限器30は、単位化した逆相電圧振幅がy2以上になると出力をβに制限し、y1以下に戻ると制限値を元の1.0に戻す構成としている。この構成により、簡便な構成で、特に事故相除去から再閉路まで欠相運転を要する非対称事故時に確実で安定に有効電力指令を制限する効果がある。
【0089】
以下、交流系統側の事故波及時に、電力指令制限器26の有無を比較し、電力指令制限器26の効果を説明する。
【0090】
前述のとおり、系統事故波及時の挙動は、系統事故モードが対称事故か非対称事故かによって異なる。
【0091】
図4は、MMC変換器が2回線送電線の後続端に接続され、交流系統2で対称事故が発生した時の運転条件を示す。
【0092】
2回線送電線は先行端遮断器52Fと後続端遮断器52Bで構成される。以下、第1回線の3相を(1A,1B,1C)、第2回線の3相を(2A,2B,2C)と称する。
【0093】
ここでは2台のMMC変換器の直流側を背後接続し、1台はユニット変圧器4を介して交流系統2に接続し、他の1台のMMC変換器の交流側を交流回転電気機械40と接続して可変速発電電動装置を構成する場合を示す。
【0094】
次に、図4下段のタイムチャートを説明する。時刻t1で第1回線において3相地絡事故が発生し、73が短絡する。時刻t2で第1回線の先行端遮断器52Fと後続端遮断器52Bが動作して開路する。時刻t3で消弧されて73が開路する。時刻t4で先行端遮断器52Fを再閉路し、時刻t5で後続端遮断器52Bを再閉路する。
【0095】
前述のとおり、系統事故波及時の挙動は、発電運転か電動運転かにより異なる。以下、図5図6では発電運転時の挙動を比較する。
【0096】
図5は、図1図2の構成で、図3の電力指令制限器26が無い場合について、前述の図4の交流系統事故波及時の挙動を示す。
【0097】
図5の上段は、図1に示す有効電力(P_fB)、無効電力(Q_fB)をMMC変換器1の定格有効電力出力で単位化した値、有効電力は電動時、無効電力は交流系統2側に供給時を正符号とする。直流電圧(VDC)は、電流変成器9(9P,9N)の差動から演算した電圧値を設定値で単位化した値で、低周波濾波器を通す前の値である。
【0098】
図5では、有効電力(P_fB)、無効電力(Q_fB)共にMMC変換器1の定格運転時を示す。この場合の定格力率は0.85である。符号は電動側を正としたため、図5の初期状態では有効電力(P_fB)は負となっている。
【0099】
図5の中段は、信号変成器5で計測したユニット変圧器4の第1端子側の相電圧3信号をユニット変圧器4の定格電圧で単位化した値、電流変成器10の検出電流(IP_U,IP_V,IP_W,IN_U,IN_V,IN_W)から演算出力したユニット変圧器4の第2端子側の交流電流(IAC_U,IAC_V,IAC_W)3信号をMMC変換器1の定格値で単位化した値である。
【0100】
図5の下段は3段構成で、上段はMMC変換器1のU相、中段はV相、下段はW相のコンデンサ電圧の瞬時値を示す。MMC変換器はアームを構成する単位変換器を12個直列接続(K=12)した例を示す。
【0101】
以下、U相について説明する。U相には正側12個、負側12個のコンデンサがあるが、煩雑さを避けるため4信号に集約する。ここでは、正側アーム(UP,VP,WP)を構成するK個のコンデンサ電圧信号に代え、12個のコンデンサの最大値(Vc_UPmax)と最小値(Vc_UPmin)の2信号に集約する。同様に、負側アーム(UN,VN,WN)を構成するK個のコンデンサ電圧の最大値(Vc_UNmax)と最小値(Vc_UNmin)で代表する。以上の4信号はコンデンサの定格電圧V0で単位化し、同じ縦軸座標で重ね表示する。
【0102】
V相、W相も同様に各々4信号で同様に代表するが、重複を避けるため説明を省略する。
【0103】
図5に示す波形では時刻t5以降も波形表示している。これは数値解析結果である。以下の理由で経済的な合理性を備えたMMC変換器では運転継続できない。
【0104】
最大の隘路は図5の下段に示すコンデンサ電圧である。コンデンサ電圧の定格電圧V0は繰り返し許容電圧を意味する。この他、コンデンサ電圧定格には非繰り返し許容電圧が規定されている。
【0105】
現時点の公知技術で安全性と経済的な合理性整合性を同時に担保するためには、MMC変換器に使用する際は、電圧最大値をV0の2倍以下に抑制する必要がある。それ以前に、自己消弧素子13H,13Lと逆並列ダイオード14H,14Lを保護するためには、非繰り返しのコンデンサ電圧をV0の凡そ1.5倍以下に抑制する必要がある。
【0106】
前述のコンデンサ許容電圧に照らすと、先行端遮断器52Fと後続端遮断器52Bが動作する時刻t2の前にコンデンサ電圧は許容値を超え、MMC変換器1を保護停止する必要がある。コンデンサ電圧の急激な上昇は、MMC変換器1を小型化するためにコンデンサ容量を削減したのが原因である。
【0107】
例えば、定格出力時の電圧脈動率を5から8%に抑制するため、前述の図17に示したようにコンデンサ容量を2倍にする場合、図5と全く同一条件でもコンデンサ電圧最大値がV0の1.5倍を超えることはない。
【0108】
図6は、図5と同様に図1図2の構成で、ただし図3の電力指令制限器26を用いる場合について、前述の図4の交流系統事故波及時の挙動を示す。
【0109】
図6において、図3の正相制限器28は(x1=0.8,x2=0.95,α=0)に設定、逆相制限器30は(y1=0.1,y2=0.2,β=0.6)に設定している。コンデンサ電圧脈動率rが10%%以上のMMC変換器に好適なαの設定値は、0ないし0.2以下であることが分かっている。
【0110】
図6の上段、中段、下段の波形で表示する波形と表示方法は前の図5と同じであり、重複を避けるため説明を省略する。
【0111】
図6の下段に示すコンデンサ電圧は、前述の許容電圧である1.5倍以下(1.2倍程度)、コンデンサ電圧の最大値と最小値が開く現象もなく平衡が保たれている。
【0112】
以上より、電力指令制限器26によってMMC変換器1は時刻t5後も安定に運転継続できることが分かる。
【0113】
図4の対称事故の場合、逆相制限器30は動作しない。MMC変換器1をループ送電系統に直接接続するため欠相事故を想定しなくとも良い場合、あるいは電力系統運用上の重要性が厳しくないため欠相運転時の運転継続を要求されぬ場合には、逆相電圧検出と逆相制限器30を省略し、簡素化する効果がある。
【0114】
前述のとおり、系統事故波及時の挙動は、系統事故モードが対称事故か非対称事故かによって異なる。
【0115】
図7は、MMC変換器が2回線送電線の後続端に接続され、交流系統2で欠相運転を伴う非対称事故が発生した時の運転条件を示す。
【0116】
2回線送電線構成、2台のMMC変換器の直流側を背後接続し、1台はユニット変圧器4を介して交流系統2に接続し、他の1台のMMC変換器の交流側を後述の交流回転電気機械40と接続して可変速発電電動装置を構成は前の図4と同じである。
【0117】
次に、図7下段のタイムチャートを説明する。時刻t1で第1回線の1A相と第2回線の2A相で同時に地絡事故が発生し、73が短絡する。時刻t2で第1回線の先行端遮断器52Fと後続端遮断器52Bが動作して開路する。時刻t3で消弧されて73が開路する。時刻t4で先行端遮断器52Fを再閉路し、時刻t5で後続端遮断器52Bを再閉路する。時刻t2から時刻t5までの期間は、MMC変換器1はB相とC相の2相通電状態(A相欠相状態)となる。
【0118】
前述のとおり、系統事故波及時の挙動は、発電運転か電動運転かにより異なる。以下、図8図9では揚水運転時の挙動を比較する。
【0119】
図8は、図1図2の構成で、図3の電力指令制限器26のうち、正相制限器28は図6と同様に(x1=0.8,x2=0.95,α=0)に設定し、逆相制限器30は意図的に(y1=1.1,y2=1.2)に設定し、逆相制限器30が動作しないようにした場合について、前述の図7の交流系統事故波及時の挙動を示す。
【0120】
図8では、有効電力(P_fB)、無効電力(Q_fB)共にMMC変換器1の定格運転時を示す。この実施例の定格力率は0.85である。
【0121】
図8の上段、中段、下段の波形で表示する波形と表示方法は前の図6と同じであり、重複を避けるため説明を省略する。有効電力(P_fB)は符号も含めて表示方法を揃えた。図8は電動運転のため正符号となる。
【0122】
図8の下段に示すコンデンサの電圧波形を見ると、時刻t3以降に電圧平衡が崩れ始め、V相、W相、U相の順に最大値と最小値の差が大きい。V相の場合、P側アーム、N側アーム共に最小値は0となり蓄積エネルギーを完全放出した状態になっている。一方の最大値はコンデンサの最大許容値の目安となる2倍を超えている。
【0123】
図9は、図8と同じ図1図2の構成、図3の電力指令制限器26のうち、正相制限器28も図8と同様に(x1=0.8,x2=0.95,α=0)に設定している。唯一の相違点は逆相制限器30の設定で、前述の図6と同様に(y1=0.1,y2=0.2,β=0.6)に設定している。コンデンサ電圧脈動率rが10%%以上のMMC変換器に好適なβの設定値は、0.3以上0.7以下であることが分かっている。以上の場合について、前述の図7の交流系統事故波及時の挙動を示す。
【0124】
図9の上段、中段、下段の波形で表示する波形と表示方法は前の図8と同じであり、重複を避けるため説明を省略する。
【0125】
図9の下段に示すコンデンサ電圧は、前述の許容電圧である1.5倍以下(1.35倍程度)、コンデンサ電圧の最大値と最小値が開く現象もなく平衡が保たれている。
【0126】
以上より、電力指令制限器26を構成する逆相制限器30の効果によって、MMC変換器1は時刻t2からt5までの欠相運転を経た後も安定に運転継続できることが分かる。
【0127】
図10は、電力指令制限器26を構成する逆相制限器30の別の実施例を示す。
【0128】
逆相制限器30の別の実施例である逆相制限器33では、単位化した逆相電圧振幅がy2以上になると出力をβ1に制限し、y4以上になるとβ2に制限する。単位化した逆相電圧振幅がy3以下に戻ると制限値をβ1まで戻し、y1以下に戻ると制限値を元の1まで戻す構成としている。
【0129】
図10の構成により、逆相電圧発生レベルに応じて電力指令の制限値を3段で調整できるため、有効電力低下を抑えることができる。特にMMC変換器1を交流発電電動装置に適用する場合、電動運転時の有効電力低下による速度低下を抑える効果がある。特にポンプ水車を駆動する可変速揚水発電システムに適用する場合、欠相運転期間中の失速によりポンプ水車の逆流領域に落ち込むリスクを減らす効果がある。
【実施例2】
【0130】
図11は、本発明にかかるMMC変換器の実施例2の回路構成を示す図である。図11では、図1に示す実施例1のMMC変換器1と共通の構成要素に同じ番号を付している。MMC変換器1と共通の構成要素については重複を避けるために説明を省略する。
【0131】
34はMMC変換器で、35は電流指令制限器である。
【0132】
図12は、電流指令制限器35の実施例を示す図で、正相電圧振幅(Vp_fB)は利得27で交流系統2の定格電圧(V_rate)で単位化して正相制限器36に入力する。同様に、逆相電圧振幅(Vn_fB)は利得29で単位化して逆相制限器37に入力する。
【0133】
38は低値選択回路(LVG)で、正相制限器36と逆相制限器37の出力を比較選択して制限値(Iz_ref_max)を制限器321に出力し、直流電流指令(Iz_ref_org)の絶対値を制限値(Iz_ref_max)以下に抑制する。
【0134】
図11図12の実施例によれば、変換器電流制御装置11への直流電流指令(Iz_ref_org)を直接制限するため、系統事故波及時の正相電圧振幅(Vp_fB)と逆相電圧振幅(Vn_fB)の変化を検出してから迅速にMMC変換器39を制御する効果がある。
【実施例3】
【0135】
図13は、本発明にかかるMMC変換器1とMMC変換器39を用いた可変速発電電動装置に関する実施例3の回路構成を示す図である。図13では、図1に示す実施例1のMMC変換器1と共通の構成要素に同じ番号を付している。MMC変換器1と共通の構成要素については重複を避けるために説明を省略する。
【0136】
39はMMC変換器で、MMC変換器1の直流電源として直流正側端子(P)、負側端子(N)と各々直流側を背後接続し、交流回転電気機械40各相の交流端子(R,S,T)と正側アーム7Pの第1端子と、負側アーム7Nの第2端子との間に3端子リアクトル6R,6S,6Tを設ける。
【0137】
10は電流変成器で、3端子リアクトル6R,6S,6Tを構成する6コイルの電流(IP_R,IP_S,IP_T,IN_R,IN_S,IN_T)を検出して交流信号演算器46に出力する。
【0138】
41は信号変成器で、3台の電圧変成器と3台の電流変成器からなる。交流回転電気機械40の電機子中性点は高抵抗42を介して接地する。
【0139】
図13の実施例では、交流回転電気機械40の回転軸にポンプ水車43を直結する。ポンプ水車43は案内羽根44の開閉制御機能を有する。MMC変換器39の交流出力を可変周波数にすることにより、ポンプ水車43の可変速運転を実現する。
【0140】
45は回転位相検出器で、電気角で表した交流回転電気機械40の回転軸の位相θrを出力する。
【0141】
46は交流信号演算器で、信号変成器41からの電圧・電流信号と回転位相θrを入力し、下記の式(3)に従って所謂瞬時有効電力(Pac_syn)と無効電力(Qac_syn)を一定時間間隔で演算する。ここで信号変成器41からの相電圧を(V_R,V_S,V_T)、電流を(I_R,I_S,I_T)とする。ただし、ここでは交流回転電気機械40の相順をR→S→Tとする。
【0142】
【数3】
【0143】
更に、瞬時有効電力(Pac_syn)と無効電力(Qac_syn)を回転位相検出器45からの回転位相(θr)の1周期で移動平均して交流回転電気機械40の有効電力(Pac_fB)と無効電力(Qac_fB)を出力する。
【0144】
図13の実施例では、有効電力(Pac_fB)信号はMMC変換器1の外部端子(S1)を経由して前述の切替器24を経由して前述の直流有効電力調整器(APdcR)25に出力する。
【0145】
211はコンデンサ電圧検出器で、コンデンサ瞬時電圧値の全数(6×K個)平均値を演算し、全数平均値を回転位相(θr)の1周期で時間平均した値Vcを演算し、コンデンサ電圧調整器(AVcR)221に出力する。
【0146】
201は無効電力調整器(AQR)で、交流回転電気機械40の電流値を最小にするために力率1運転を実現させる。無効電力調整器(AQR)201は、交流信号演算器46からの無効電力検出値(Qac_fB)が設定値(Qref=0)になるよう無効電流指令(Id_ref)を演算し、変換器電流制御装置47に出力する。
【0147】
コンデンサ電圧調整器(AVcR)221は、コンデンサ電圧値Vcが設定値になるよう有効電流指令(Iq_ref)を演算し、変換器電流制御装置47に出力する。
【0148】
直流電流指令は(Iz_ref=0)に固定して変換器電流制御装置47に出力する。
【0149】
変換器電流制御装置47は、電流変成器10の検出電流(IP_R,IP_S,IP_T,IN_R,IN_S,IN_T)を入力し、交流電流(IAC_R,IAC_S,IAC_T)と各相の負側アーム7Nから正側アーム7Pに流れる貫通電流(IPN_R,IPN_S,IPN_T)を演算する。
【0150】
電流指令値(Id_ref,Iq_ref)と交流電流指令(IAC_R_ref,IAC_S_ref,IAC_T_ref)、回転位相(θr)の関係は式(4)となる。
【0151】
【数4】
【0152】
また、正側アームの電流指令(IP_R_ref,IP_S_ref,IP_T_ref)、負側アームの電流指令(IN_R_ref,IN_S_ref,IN_T_ref)と交流電流指令(IAC_R_ref,IAC_S_ref,IAC_T_ref)、直流電流指令(Iz_ref)の関係は次式となる。
【0153】
IP_R_ref=(1/2)×IAC_R_ref+Iz_ref
IP_S_ref=(1/2)×IAC_S_ref+Iz_ref
IP_T_ref=(1/2)×IAC_T_ref+Iz_ref
IN_R_ref=(1/2)×IAC_R_ref-Iz_ref
IN_S_ref=(1/2)×IAC_S_ref-Iz_ref
IN_T_ref=(1/2)×IAC_T_ref-Iz_ref
【0154】
図13の実施例によれば、MMC変換器39側の直流電流指令(Iz_ref)を0に固定するため、MMC変換器1側の直流電流指令との干渉を回避できる。これにより、安定な交流可変速電動装置を実現する効果がある。
【0155】
図13のMMC変換器1に代え、図11に示す実施例2のMMC変換器34を用いても良い。
【実施例4】
【0156】
図14は、本発明にかかるMMC変換器49とMMC変換器48を用いた可変速発電電動装置に関する実施例4の回路構成を示す図である。図14では、図13に示す実施例3のMMC変換器39と共通の構成要素に同じ番号を付している。MMC変換器39と共通の構成要素については重複を避けるために説明を省略する。
【0157】
図15は、図14の一部を構成するMMC変換器49を示す。図15では、図1に示す実施例1のMMC変換器1と共通の構成要素に同じ番号を付している。MMC変換器1と共通の構成要素については重複を避けるために説明を省略する。
【0158】
図15に記載の変換器電流制御装置50は、電流変成器10の検出電流(IP_U,IP_V,IP_W,IN_U,IN_V,IN_W)を入力し、交流電流(IAC_U,IAC_V,IAC_W)と各相の負側アーム7Nから正側アーム7Pに流れる貫通電流(IPN_U,IPN_V,IPN_W)を演算する。
【0159】
実施例4では直流電流指令を(Iz_ref=0)に固定する。
【0160】
電流指令値(Id_ref,Iq_ref)と交流電流指令(IAC_U_ref,IAC_V_ref,IAC_W_ref)、正相位相(θp)の関係は、前述の式(2)となる。
【0161】
直流電力検出器23で検出する直流電力(Pdc_fB)は外部端子(S2)を経由し、図14のMMC変換器48に出力する。電力指令制限器26から出力する補正指令(P_ref_mod)は、外部端子(C1)を経由し、図14のMMC変換器48に出力する。
【0162】
図14のMMC変換器48において、51は切替器で、交流流端有効電力(Pac_fB)と接続端子(S2)を経由して入力する直流端有効電力(Pdc_fB)を選択し、直流有効電力調整器(APdcR)52に出力する。
【0163】
直流有効電力調整器(APdcR)52は、切替器51からの検出値が設定値(P_ref_mod)になるよう直流電流指令(Iz_ref)を演算し、変換器電流制御装置53に出力する。
【0164】
変換器電流制御装置53は、電流変成器10の検出電流(IP_R,IP_S,IP_T,IN_R,IN_S,IN_T)を入力し、交流電流(IAC_R,IAC_S,IAC_T)と各相の負側アーム7Nから正側アーム7Pに流れる貫通電流(IPN_R,IPN_S,IPN_T)を演算する。
【0165】
電流指令値(Id_ref,Iq_ref,Iz_ref)と交流電流指令(IAC_R_ref,IAC_S_ref,IAC_T_ref)、回転位相(θr)の関係は、前述の式(4)となる。
【0166】
図14図15の実施例によれば、MMC変換器49側の直流電流指令(Iz_ref)を0に固定するため、MMC変換器48側の直流電流指令との干渉を回避できる。これにより、安定な交流可変速電動装置を実現すると同時に、特に発電運転時にエネルギー流の上流となる交流回転電気機械40の有効電力出力を制御するため、回転軸に直結したポンプ水車側からの外乱に対して安定に運転できる効果がある。
【実施例5】
【0167】
図16は、本発明にかかるMMC変換器54の実施例5の回路構成を示す図である。図16では、図1に示す実施例1のMMC変換器1と共通の構成要素に同じ番号を付している。MMC変換器1と共通の構成要素については重複を避けるために説明を省略する。
【0168】
55は絶対値演算器で、外部端子(S1)を経由して入力した交流側有効電力Pac_fBと交流信号演算器19で検出するユニット変圧器4の第1端子側有効電力P_fBを突き合わせした差信号dを入力し、その絶対値eを出力する。交流側有効電力Pac_fBとしては、前述の交流信号演算器46の出力を用いる。
【0169】
56は出力切替器で、通常時はα=1を出力する。入力信号eが設定値e1を超えるとα=0を出力する。入力信号eが設定値e2を下回ると再びα=1を出力する。
【0170】
57と58は利得で、各々の利得はαと(1-α)とする。57はα=1の時に加算器を通してユニット変圧器4の第1端子側有効電力P_fBを、58はα=0の時に加算器を通して交流側有効電力Pac_fBを選択出力して切替器59に入力する。
【0171】
出力切替器56の設定値e1は、通常運転時の入力信号eより大きな値に設定する。入力信号eはMMC変換器54と背後接続したMMC変換器の損失相当となる。
【0172】
本実施例では、交流系統2の事故波及時に設定値を超え、交流側有効電力Pac_fBによる有効電力制御に切り替わるよう、e1をMMC変換器54の定格有効電力の0.1倍、e2を0.05倍に設定する。
【0173】
図16の実施例によれば、通常運転時はユニット変圧器4の第1端子で計測する有効電力で有効電力制御するため、外部からの有効電力指令に対して精度高く調整することができる。また、系統事故波及時には交流回転電気機械40などの交流端有効電力で有効電力制御するためMMC変換器を安定に運転継続する効果がある。
【符号の説明】
【0174】
1,34,39,48,49,54,60 MMC変換器
2 交流系統
3 直流電源
4 ユニット変圧器
5,41 信号変成器
6,6U,6V,6W,6R,6S,6T 3端子リアクトル
7P,7UP,7VP,7WP 正側アーム
7N,7UN,7VN,7WN 負側アーム
8,8P,8N,42 高抵抗
9,9P,9N,10 電流変成器
11,47,50,53 変換器電流制御装置
12 ハーフブリッジ回路
13H,13L 自己消弧素子
14H,14L 逆並列ダイオード
15 コンデンサ
16H,16L ゲートドライブユニット
17 電圧検出器
18 信号変換器
19,46 交流信号演算器
20,70,201 無効電力調整器
21,211 コンデンサ電圧検出器
22,221 コンデンサ電圧調整器
23 直流電力検出器
24,51,59,69 切替器
25,52,67 直流有効電力調整器
26,電力指令制限器
27,29,57,58,64,65,75,76 利得
28,36 正相制限器
30,33,37 逆相制限器
31,38 低値選択回路
32,321 制限器
35 電流指令制限器
40 交流回転電気機械
43 ポンプ水車
44 案内羽根
45 回転位相検出器
55 絶対値演算器
56 出力切替器
61 MMC変換器エネルギー検出器
62 上位制御装置
63 変換器エネルギー調整器
66 交流有効電力調整器
71,72,73,74 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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