(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】一段階フィルム積層によるLEDの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231010BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231010BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020563919
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2018087460
(87)【国際公開番号】W WO2019218336
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】519454187
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス ナイン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フォン、アンナ ヤーチン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ、ルー
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-130459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0057714(US,A1)
【文献】特開2015-046607(JP,A)
【文献】特開2011-013567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0230084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
H01L 33/50
G03B 21/14
G02F 1/13357
H01S 5/00-5/50
F21S 2/00
F21V 8/00
H01L 31/04
C03C 4/12
C09K 11/08
H05B 33/00-33/28
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
前記燐光体が、以下の方法:(1)処理剤中での燐光体の十分な分散を確実にするための時間の間前記燐光体を前記処理剤と接触させる工程と、(2)前記処理剤でコートされた前記燐光体を乾燥させて、それが前記シリコーンバインダーとともにすぐに使用できる工程とによって予備処理される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを製造するための方法、特に、一段階フィルム積層によってデュアルカラーLED及び/又はマルチカラーLEDを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルカラーLED(又はマルチカラーLED)は現在、アイフォンのようなスマートフォンにおいてフラッシュ及び屋外照明としてますます普及している。フラッシュにおける適用に関して、一般的に、異なった色(例えば、アンバー及びホワイト)を有する2つのLEDがある。それらの比率を調節することによって、カメラは、フラッシュの色を調節して、周辺光のホワイトバランスであるとされているものに合わせることができる。フラッシュLEDは、着色燐光体フィルムの重要な適用例である。2色以上を有する屋外LEDストリップランプもまた、市場においてますます普及している。
【0003】
しかしながら、デュアルカラーLEDを製造するための現行の方法は一般的に、2つの工程を含む:(1)2つの異なった色のLEDを別々に作製する工程、及び(2)次に2つの異なった色のLEDを一緒に組み立てる工程(
図1を参照のこと、古い方法1と称される)。デュアルカラーLEDを製造するための別の現行の方法もまた、2つの工程を含む:(1)2つのLEDの間にバッフルを加える工程、及び(2)次に2つの異なったシリコーン溶液に燐光体を分配する工程(
図1を参照のこと、古い方法2と称される)。最近、上記の2つの古い方法は、低い製造能率(2つの工程を必要とする)、低い色品質(燐光体粒子がシリコーン溶液中に沈殿する傾向があるため)など、いくつかの欠陥に苦しんでいる。
【0004】
したがって、高い製造能率を有する高色品質デュアルカラーLEDを製造することができる、デュアルカラーLED及びマルチカラーLEDなどのLEDを製造するための新規な方法を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の例示的な実施形態の目的は、先行技術における上記の及び/又は他の欠陥を克服することである。着色燐光体組成物のレオロジー性能(例えば、最大tanδ、最小G’及び硬化時間)を制御することによって、一段階フィルム積層によって2つ以上のLEDに2つ以上の着色燐光体フィルムを積層することができ、このため、それは、高い製造能率を有する高色品質デュアルカラーLEDを製造し得ることを本発明者は予想外に見出している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、硬化触媒及びシリコーンバインダーの比率を調節するか、又はヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物を使用することによって、2つ以上の着色燐光体組成物が、詳細なレオロジー性能(例えば、最大tanδ及びゲル化時間)を有することができる。
【0007】
このように、本発明の例示的な実施形態は、一段階フィルム積層によって2つ以上のLEDに2つ以上の着色燐光体フィルムを積層する工程を含む、LEDを製造するための方法を提供し、そこで着色燐光体フィルムのそれぞれが、最大tanδを有する互いに異なった着色燐光体組成物を含み、それぞれの最大tanδの差が0~30%の範囲内で変化する。
【0008】
本発明の一実施形態において、異なった着色燐光体組成物のそれぞれがゲル化時間を有し、それぞれのゲル化時間の差が0~50%の範囲内で変化する。
【0009】
本発明の一実施形態において、それぞれの最大tanδの差は0~15%の範囲内で変化する。
【0010】
本発明の一実施形態において、着色燐光体組成物が硬化触媒、シリコーンバインダー及び燐光体を含み、ゲル化時間及び最大tanδの差が、触媒及びシリコーンバインダーの比率、及び/又はシリコーンバインダー及び燐光体の比率を調節することによって制御される。
【0011】
本発明の一実施形態において、燐光体は、特に、赤色又は緑色燐光体が燐光体フィルムに含まれるとき、処理剤で予備処理される。いくつかの実施形態において、処理剤は、使用される硬化触媒と同じである。予備処理方法は、(1)処理剤中での燐光体の十分な分散を確実にするための時間の間燐光体を処理剤と接触させる工程と、(2)処理剤でコートされた燐光体を乾燥させて、それがシリコーンバインダーとともにすぐに使用できる工程とを含む。
【0012】
本発明の一実施形態において、着色燐光体組成物は、ヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物と燐光体とを含む。
【0013】
他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明、図面及び請求の範囲から明らかになる。
【0014】
本発明は、添付した図面を参照して本発明の典型的な実施形態の説明を考慮に入れてより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】デュアルカラーLEDを製造するための現行の方法(古い方法1及び2)並びに本発明のLEDを製造するための方法(例えば、デュアルカラーLED)を示す概略図である。
【
図2】本発明における未硬化シリコーンバインダー系のレオロジープロファイルを示す図である。
【
図3】本発明におけるLEDを製造するための方法(例えば、デュアルカラーLED)の例示的な実施形態(実施例2)を示す概略図である。
【
図4】本発明におけるLEDを製造するための方法(例えば、デュアルカラーLED)の例示的な実施形態(実施例3)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以後、本開示の好ましい実施形態のために詳細な説明が与えられる。実施形態の詳細な説明において、簡潔さ及び簡明さのために、説明が実際的実施形態の全ての特徴を詳細に記述することは不可能であることが指摘されるべきである。任意の実施形態の実際的実施のプロセスにおいて、ちょうど工学プロジェクト又は設計プロジェクトのプロセスにおけるように、開発者の特定の目標を達成するために及びいくつかのシステム関連の又はビジネス関連の制約を満たすために、通常様々な決定がなされ、それはまた、実施形態によって異なることは理解されるはずである。さらに、このような開発プロセスにおいて行われる試みは複雑であり且つ時間がかかり得るが、本開示において開示される技術的内容に基づく設計、製造及び生産などのいくつかの変型はまさしく、本開示において開示される内容に関連した当業者の従来技術における慣例的な技術的手段であり、それは、本開示の不十分な開示とみなされるべきではないこともまた、理解され得る。
【0017】
特に定義されない限り、請求の範囲及び説明において使用される全ての技術的又は科学的用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するべきである。用語「a」、「an」等は量の制限を意味しないが、少なくとも1つの存在を意味する。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含する(including)」等は、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」及び「包含する(including)」の前の要素又は対象が「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」及び「包含する(including)」の後に説明される要素又は対象及びそれらの等価物を網羅するが、他の要素又は対象を除外しないことを意味する。一般的に、本明細書中で用いられるとき或る範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「to」又は「through」である。
【0018】
本発明において、着色燐光体組成物のレオロジー性能(例えば、最大tanδ及びゲル化時間)を制御することによって、一段階フィルム積層によって2つ以上のLEDに2つ以上の着色燐光体フィルムを積層し得ることを本発明者は見い出す。一実施形態において、2つ以上の着色燐光体組成物が、硬化触媒及びシリコーンバインダーの比率、及び/又はシリコーンバインダー及び燐光体の比率を調節することによって詳細なレオロジー性能(例えば、最大tanδ及びゲル化時間)を有することができる。別の実施形態において、2つ以上の着色燐光体組成物が、ヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物を使用することによって詳細なレオロジー性能(例えば、最大tanδ及びゲル化時間)を有することができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、LEDを製造するための方法は、一段階フィルム積層によって2つ以上のLEDに2つ以上の着色燐光体フィルムを積層する工程を含み、そこで着色燐光体フィルムのそれぞれが、最大tanδを有する互いに異なった着色燐光体組成物を含み、それぞれの最大tanδの差が0~30%の範囲内で変化する。
【0020】
本発明の一実施形態において、それぞれの最大tanδの差は0~30%、0~20%、0~15%、0~10%、10~30%、10~20%、10~15%、15~30%、15~20%、又は20~30%の範囲内で変化する。
【0021】
用語「それぞれの最大tanδの差」は、本明細書中で用いられるとき、次式によって表される:
【数1】
【0022】
本発明の一実施形態において、着色燐光体フィルムのそれぞれは、ゲル化時間を有することができる互いに異なった着色燐光体組成物を含み、それぞれのゲル化時間の差は0~50%の範囲内で変化する。
【0023】
本発明の一実施形態において、それぞれのゲル化時間の差は0~50%、0~40%、0~35%、0~30%、0~20%、0~10%、10~50%、10~40%、10~35%、10~30%、10~20%、20~50%、20~40%、20~35%、20~30%、30~50%、30~40%、30~35%、35~50%、35~40%、又は40~50%の範囲内で変化する。
【0024】
用語「それぞれのゲル化時間の差」は、本明細書中で用いられるとき、次式によって表される:
【数2】
【0025】
用語「最大tanδ(又はMax.tanδ)」は、本明細書中で用いられるとき、最大tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率を意味し、それは、加熱温度におけるシリコーンバインダー系の流動性能力を特性決定するために使用される。用語「ゲル化時間」は、本明細書中で用いられるとき、Max.tanδからtanδ=1までの時間によって定義され、それは、シリコーンバインダー系がどれくらいの速さで硬化するのかを特性決定するために使用される。前記ゲル化時間及びMax.tanδは、燐光体一段階フィルム積層の達成のための2つの最も重要なレオロジー性能である。
【0026】
一般的には、未硬化シリコーンバインダー系は、温度上昇と共に最初に流動し、次いで硬化される。
図2は、未硬化シリコーンバインダー系のレオロジープロファイルを示す。本発明において、前記レオロジープロファイルは、以下の条件を用いて回転式レオメーターによって測定される:(1)25℃/分で25~150℃;(2)30分間150℃;及び(3)0.1%の変形、1.0Hzの振動数、及び8mmの鋼板の使用。
【0027】
シリコーンバインダー系の硬化性能は様々な燐光体によって影響されるので。一段階フィルム積層のために、2つ以上の異なった着色燐光体組成物を調節して、詳細なレオロジー性能(例えば、ゲル化時間及び最大tanδ)を提供するのがよい。本発明の一実施形態において、それぞれのゲル化時間の差は0~50%、0~40%、0~35%、0~30%、0~20%、0~10%、10~50%、10~40%、10~35%、10~30%、10~20%、20~50%、20~40%、20~35%、20~30%、30~50%、30~40%、30~35%、35~50%、35~40%、又は40~50%の範囲内で変化する;及び/又はそれぞれの最大tanδの差は0~30%、0~20%、0~15%、0~10%、10~30%、10~20%、10~15%、15~30%、15~20%、又は20~30%の範囲内で変化する。他方、触媒が多くなればなるほど、着色燐光体組成物は迅速に硬化する。したがって、ゲル化時間及び最大tanδの差は、触媒及びシリコーンバインダーの比率、及び/又はシリコーンバインダー及び燐光体の比率を調節することによって制御され、詳細なレオロジー性能を提供し得ることを本発明者は予想外に見出した。
【0028】
本発明の一実施形態において、着色燐光体組成物は硬化触媒、シリコーンバインダー及び燐光体を含み、ゲル化時間及び最大tanδの差は、触媒及びシリコーンバインダーの比率、及び/又はシリコーンバインダー及び燐光体の比率を調節することによって制御される。大部分の実施形態において、燐光体をシリコーンバインダー及び触媒と一緒に添加し、トルエンなどの溶剤を添加して簡単なフィルムコーティングのために組成物の粘度を約2000~8000mPa・sに調節する。混合後に、スラリー燐光体組成物を自動アプリケーターによってPET剥離ライナー上にコートする。次に、湿潤燐光体フィルムを室温で5分間乾燥させ、次に約70℃の温度の炉内に30分間置く。乾燥された燐光体フィルムは一般的に約50~150μmである。
【0029】
本発明において、硬化触媒は、様々なスズ又はチタン触媒などのオルガノシロキサンの縮合硬化をもたらす本技術分野に公知の任意の触媒から選択され得る。硬化触媒は、ケイ素に結合したヒドロキシ(=シラノール)基の縮合を促進してSi-O-Si結合を形成するために使用されてもよい任意の硬化触媒であり得る。例には、アミン並びに鉛、スズ、チタン、亜鉛、及び鉄の錯体が含まれるがそれらに限定されない。他の例には、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、n-ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びジシアンジアミドなどの塩基性化合物;及びテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、アセチルアセトナトチタン、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナト)、テトラ酪酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、コバルトアセチルアセトナト、鉄アセチルアセトナト、スズアセチルアセトナト、オクチル酸ジブチルスズ、ジブチルスズラウレート、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、安息香酸亜鉛p-tert-ブチル、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、及びアルミニウムトリイソプロポキシドなどの金属含有化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、及びジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンなどの有機チタンキレートが含まれるがそれらに限定されない。いくつかの実施形態において、硬化触媒には、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、安息香酸亜鉛p-tert-ブチル、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、及びアルミニウムトリイソプロポキシドが含まれる。例えば、米国特許第8,193,269号明細書(その全開示内容を、本明細書において完全に示されるかのように参照によって組み込む)を参照のこと。硬化触媒の他の例には、アルミニウムアルコキシド、アンチモンアルコキシド、バリウムアルコキシド、ホウ素アルコキシド、カルシウムアルコキシド、セリウムアルコキシド、エルビウムアルコキシド、ガリウムアルコキシド、ケイ素アルコキシド、ゲルマニウムアルコキシド、ハフニウムアルコキシド、インジウムアルコキシド、鉄アルコキシド、ランタンアルコキシド、マグネシウムアルコキシド、ネオジムアルコキシド、サマリウムアルコキシド、ストロンチウムアルコキシド、タンタルアルコキシド、チタンアルコキシド、スズアルコキシド、バナジウムアルコキシド酸化物、イットリウムアルコキシド、亜鉛アルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、チタン又はジルコニウム化合物、特にチタン及びジルコニウムアルコキシド、並びに上記のアルコキシドのキレート及び低縮合物及び重縮合物、二酢酸ジアルキルスズ、オクタン酸スズ(II)、ジアクリル酸ジアルキルスズ、酸化ジアルキルスズ及び二重金属アルコキシドが含まれるがそれらに限定されない。二重金属アルコキシドは、特定の比率で2つの異なった金属を含有するアルコキシドである。いくつかの実施形態において、硬化触媒には、チタンテトラエチレート、チタンテトラプロピレート、チタンテトライソプロピレート、テトラ酪酸チタン、チタンテトライソオクチレート、チタンイソプロピレートトリステアロイレート、チタントリイソプロピレートステアロイレート、チタンジイソプロピレートジステアロイレート、ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムテトライソプロピレート、テトラ酪酸ジルコニウムが含まれる。例えば、米国特許第7,005,460号明細書(その全開示内容を、本明細書において完全に示されるかのように参照によって組み込む)を参照のこと。さらに、硬化触媒には、ドイツ特許第4427528C2号明細書及び欧州特許第0639622B1号明細書(それらの両方を、本明細書において完全に示されるかのように参照によって組み込む)において説明されているチタネート、ジルコネート及びハフネートが含まれる。いくつかの実施形態において、硬化触媒は、Dow Corning(登録商標)LF-9000フィルム封入剤触媒(DOW CORNING CORPORATIONから市販されている)を含む。
【0030】
本発明において、赤色燐光体等のような特定の燐光体を取り扱うときに処理剤が使用される。処理剤は、約2~10倍高い濃度である間有効な組成物中の触媒と似ている。
【0031】
本発明において、シリコーンバインダーは、オルガノシロキサンコポリマーを形成するために当技術分野に公知の任意のシリコーンバインダーから選択され得る。いくつかの実施形態において、シリコーンバインダーは有機溶剤中に溶解され得る。また、シリコーンバインダーは、国際公開第2013/134018号パンフレット(その内容を、本明細書において完全に示されるかのように参照によって組み込む)に記載されているシリコーンバインダーであり得る。いくつかの実施形態において、シリコーンバインダーは、Dow Corning(登録商標)LF-1020(DOW CORNING CORPORATIONから市販されている)を含む。
【0032】
本発明において、燐光体は、当技術分野に公知の任意の燐光体から選択され得る。その例には、YAG-04燐光体(Intematix Corporationから市販されている)、NYAG4454-L燐光体(Intematix Corporationから市販されている)、BR-102L燐光体(MitsubishiChemical Corporationから市販されている)、GAL550燐光体(Intematix Corporationから市販されている)又はそれらの任意の組合せが含まれるがそれらに限定されない。
【0033】
本発明の一実施形態において、特に、赤色又は緑色燐光体が燐光体フィルム中に含まれるとき、燐光体は処理剤で予備処理され得る。いくつかの実施形態において、処理剤は好ましくは、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、n-ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びジシアンジアミドなどの塩基性化合物である。予備処理方法は、(1)処理剤中での燐光体の十分な分散を確実にするための時間の間燐光体を処理剤と接触させる工程と、(2)処理剤でコートされた燐光体を乾燥させて、それがシリコーンバインダーとともにすぐに使用できる工程とを含む。燐光体予備処理は、燐光体がシリコーンバインダーの硬化性能に及ぼす影響を小さくする一方法である。
【0034】
例えば、予備処理方法は、
- 燐光体及び処理剤を1:1の比率に秤量する工程と、
- 燐光体及び処理剤を密閉シール容器内に充填する工程と、
- 4時間の間処理剤中に燐光体を混合及び浸漬して、処理剤溶液中での燐光体の十分な分散を確実にする工程と、
- 燐光体を濾過するか又は他の方法を使用して燐光体を処理剤から除去する工程と、
- 湿潤燐光体を乾燥炉内に置き、8時間の間150℃まで加熱して、調合物のためにすぐに使用できる乾燥された燐光体を提供する工程とを含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、着色燐光体組成物は、ヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物と燐光体とを含む。ヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物は、ヒドロシリル化触媒を含むことができる。いくつかの実施形態において、ヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物は、Dow Corning(登録商標)LF-1112燐光体フィルムバインダーA&BKit(DOW CORNING CORPORATIONから市販されている)を含む。また、ヒドロシリル化硬化性オルガノシロキサン組成物は、国際公開第2016/022332A1号パンフレット(その内容を、本明細書において完全に示されるかのように参照によって組み込む)に記載されているものであり得る。
【0036】
本発明において、LEDを製造するための方法は、製造能率を大幅に改良することができ(すなわち、一工程においてデュアルカラー及びマルチカラーLED)、所有経費を下げる。さらに、それは燐光体の分散の均一性を改良することができ、それによってLEDの色品質を改良することができる。
【0037】
「およその(about)」1つの特定の値から、及び/又は「およその(about)」別の特定の値までのように、範囲を本明細書において表すことができる。このような範囲が表されるとき、例には、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似値として表されるとき、先行詞「約(about)」の使用によって特定の値が別のアスペクトを形成することは理解されよう。範囲のそれぞれの端点は、他方の端点に関連して、並びに他方の端点とは無関係に有意であることがさらに理解されよう。
【0038】
別段の明らかな記載のない限り、本明細書で説明する任意の方法は、その工程が特定の順序で実施されることを要求すると解釈されるべきでは決してない。したがって、方法のクレームがその工程が従う順序を実際に説明しないか又は工程が特定の順序に限定されなければならないということがクレーム又は説明において具体的に別記されない場合、特定の順序を意味することを決して意図しない。
【実施例】
【0039】
参考実施例1:YAG-04燐光体フィルムの調製
参考実施例1において使用される材料は以下の通りである。
シリコーンバインダー1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されているDow Corning(登録商標)LF-1020燐光体フィルムバインダー、5g;
触媒1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されているDow Corning(登録商標)LF-9000フィルム封入剤触媒、0.075g;及び
燐光体1:Intematix Corporationから市販されている、YAG-04燐光体、5g。
参考実施例1において、シリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率はそれぞれ100:1、100:1.5及び100:2である。そしてシリコーンバインダー1の、燐光体1に対する比率は100:100である。
【0040】
試料の調製(実施例としてシリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率=100:1.5とする)
(1)5gの燐光体1を5gのシリコーンバインダー1及び0.075g触媒1とともに提供し、並びに0.3gのトルエンを粘度を調節するための有機溶剤として添加し、ThinkyARV-310プラネタリー真空ミキサー内で混合して混合スラリーを提供する工程;
(2)Hohsen自動アプリケーターを使用して、混合スラリーをPET剥離ライナー上にコートする工程;
(3)室温で5分間PET剥離ライナーを乾燥させ、次にそれを70℃の温度の乾燥炉内に30分間置き、75μmの厚さを有する乾燥フィルムをもたらす工程。
【0041】
試験手順
レオロジー性能は、下の条件を用いてTA ARES G2レオメーターによって測定される:(1)25℃/分で15~150℃;(2)30分間150℃;及び(3)0.5%の歪、1.0Hzの振動数、及び8mm鋼板の使用。
【0042】
【0043】
参考実施例2:NYAG4454-L燐光体フィルムの調製
参考実施例2において使用される材料は以下の通りである。
シリコーンバインダー1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-1020燐光体フィルムバインダー、5g;
触媒1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-9000フィルム封入剤触媒、0.1g;及び
燐光体2:Intematix Corporationから市販されている、NYAG4454-L燐光体、5g。
参考実施例2において、シリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率はそれぞれ100:2、100:2.5及び100:3である。そしてシリコーンバインダー1の、燐光体2に対する比率は100:100である。
【0044】
試料の調製(実施例としてシリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率=100:2とする)
(1)5gの燐光体2を5gのシリコーンバインダー1及び0.1g触媒1とともに提供し、並びに0.3gのトルエンを粘度を調節するための有機溶剤として添加し、ThinkyARV-310プラネタリー真空ミキサー内で混合して混合スラリーを提供する工程;
(2)Hohsen自動アプリケーターを使用して、混合スラリーをPET剥離ライナー上にコートする工程;
(3)室温で5分間PET剥離ライナーを乾燥させ、次にそれを70℃の温度の乾燥炉内に30分間置き、75μmの厚さを有する乾燥フィルムをもたらす工程。
【0045】
試験手順
レオロジー性能は、下の条件を用いてTA ARES G2レオメーターによって測定される:(1)25℃/分で15~150℃;(2)30分間150℃;及び(3)0.5%の歪、1.0Hzの振動数、及び8mm鋼板の使用。
【0046】
【0047】
実施例1:一段階フィルム積層
上記の参考実施例1及び2から、詳細なレオロジー性能のために、NYAG4454-L燐光体のためのシリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率はYAG-04燐光体のための前記「100:1.5」と比較して100:2に減少されることが指摘され得る。ゲル化時間の差は1%の範囲内で変化し、それぞれの最大tanδの差は2.8%の範囲内で変化する。
【0048】
参考実施例1及び2において得られる燐光体フィルムは、Fulin PLC-100A真空ラミネーターによって積層される。積層条件は以下の通りである。
積層温度:124.6℃;
積層時間:300秒;及び
真空:0.34kPa
【0049】
この実施例において、均一な燐光体の分散及びより良い色品質を示す、一段階フィルム積層において2つの異なった着色燐光体フィルムをLED上に良好に積層する。
【0050】
実施例2:赤色燐光体予備処理及びデュアルカラー燐光体フィルム積層
2.1冷白色燐光体フィルム3C調合物:
使用される材料は以下の通りである。
シリコーンバインダー1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-1020燐光体フィルムバインダー、5g;
触媒1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-9000フィルム封入剤触媒、0.075g;及び
燐光体1:Intematix Corporationから市販されている、YAG-04燐光体。
燐光体3:Mitsubishi Chemical Corporationから市販されている、BR-102L燐光体。
【0051】
3C調合物において、シリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率は100:1.5である。そしてシリコーンバインダー1の、燐光体1及び3に対する比率は100:56である。燐光体1の、燐光体3に対する比率は40:1である。BR-102Lは、以下の手順に従って処理剤で予備処理される:
- 燐光体3及び処理剤を1:1の比率で秤量する。
- それらを適切な容器内に入れ、それを密閉する。
- ミキサーを使用して4時間の間燐光体を処理剤内に浸漬し、溶液中での燐光体の十分な分散を確実にする。
- 燐光体を濾過して燐光体を処理剤から分離する。
- 湿潤燐光体を乾燥炉内に置き、8時間の間150℃まで加熱する。
- 乾燥された燐光体を調合物のためにすぐに使用できる。
【0052】
試料の調製
(1)2.732gの燐光体1及び0.068gの燐光体3を5gのシリコーンバインダー1及び0.075g触媒1とともに提供し、並びに0.3gのトルエンを粘度を調節するための有機溶剤として添加し、ThinkyARV-310プラネタリー真空ミキサー内で混合して混合スラリーを提供する工程;
(2)Hohsen自動アプリケーターを使用して、混合スラリーをPET剥離ライナー上にコートする工程;
(3)室温で5分間PET剥離ライナーを乾燥させ、次にそれを70℃の温度の乾燥炉内に30分間置き、80μmの厚さを有する乾燥フィルムをもたらす工程。
【0053】
試験手順
レオロジー性能は、下の条件を用いてTA ARES G2レオメーターによって測定される:(1)25℃/分で15~150℃;(2)20分間150℃;及び(3)0.5%の歪、1.0Hzの振動数、及び8mm鋼板の使用。
【0054】
2.2温白色燐光体フィルム3W調合物:
使用される材料は以下の通りである。
シリコーンバインダー1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-1020燐光体フィルムバインダー、5g;
触媒1:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-9000フィルム封入剤触媒、0.050g;及び
燐光体1:Intematix Corporationから市販されている、YAG-04燐光体。
燐光体3:MitsubishiChemical Corporationから市販されている、BR-102L燐光体。
【0055】
3W調合物において、シリコーンバインダー1の、触媒1に対する比率は100:1である。そしてシリコーンバインダー1の、燐光体1及び3に対する比率は100:139である。燐光体1の、燐光体3に対する比率は2:1である。BR-102Lは、上記の同様な手順に従って処理剤で予備処理される。
【0056】
試料の調製
(1)4.633gの燐光体1及び2.317gの燐光体3を5gのシリコーンバインダー1及び0.050g触媒1とともに提供し、並びに0.5gのトルエンを粘度を調節するための有機溶剤として添加し、ThinkyARV-310プラネタリー真空ミキサー内で混合して混合スラリーを提供する工程;
(2)Hohsen自動アプリケーターを使用して、混合スラリーをPET剥離ライナー上にコートする工程;
(3)室温で5分間PET剥離ライナーを乾燥させ、次にそれを70℃の温度の乾燥炉内に30分間置き、86μmの厚さを有する乾燥フィルムをもたらす工程。
【0057】
試験手順
レオロジー性能は、下の条件を用いてTA ARES G2レオメーターによって測定される:(1)25℃/分で15~150℃;(2)20分間150℃;及び(3)0.5%の歪、1.0Hzの振動数、及び8mm鋼板の使用。
【0058】
2.3レオロジー性能
冷白色及び温白色燐光体フィルムのレオロジー性能を以下の表に記載する。
【0059】
【0060】
2.4積層:
冷白色及び温白色燐光体フィルム3C及び3Wは、Fulin PLC-100A真空ラミネーターによって積層される。詳細な積層条件:
積層温度:124.6℃;
積層時間:300秒;及び
真空:0.34kPa
【0061】
図3に示されるように、均一な燐光体の分散及びより良い色品質を示す、一段階フィルム積層において、冷白色及び温白色燐光体フィルム3C及び3WをLED上に良好に積層する。
【0062】
実施例3:ヒドロシリル化硬化デュアルカラー燐光体フィルムの調製及び積層
3.1冷白色燐光体フィルム4C調合物:
使用される材料は以下の通りである。
シリコーンバインダー4:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-1112燐光体フィルムバインダーPartA+PartB(1:1)、5g;
燐光体1:Intematix Corporationから市販されている、YAG-04燐光体。
燐光体4:Intematix Corporationから市販されている、GAL550燐光体。
4C調合物において、シリコーンバインダー4の、燐光体1及び4に対する比率は100:27である。燐光体1の、燐光体4に対する比率は5:1である。
【0063】
試料の調製
(1)1.125gの燐光体1及び0.225gの燐光体4をシリコーンバインダー4の2.5gのA液及びシリコーンバインダー4の2.5gのB液とともに提供し、並びに0.3gのプロピルプロピオネートを粘度を調節するための有機溶剤として添加し、ThinkyARV-310プラネタリー真空ミキサー内で混合して混合スラリーを提供する工程;
(2)Hohsen自動アプリケーターを使用して、混合スラリーをPET剥離ライナー上にコートする工程;
(3)室温で5分間PET剥離ライナーを乾燥させ、次にそれを70℃の温度の乾燥炉内に30分間置き、52μmの厚さを有する乾燥フィルムをもたらす工程。
【0064】
試験手順
レオロジー性能は、下の条件を用いてTA ARES G2レオメーターによって測定される:(1)20℃/分で15~125℃;(2)30分間125℃;及び(3)0.5%の歪、1.0Hzの振動数、及び8mm鋼板の使用。
【0065】
3.2温白色燐光体フィルム4W調合物:
使用される材料は以下の通りである。
シリコーンバインダー4:DOW CORNING CORPORATIONから市販されている、Dow Corning(登録商標)LF-1112燐光体フィルムバインダーPartA+PartB(1:1)、5g;
燐光体1:Intematix Corporationから市販されている、YAG-04燐光体。
燐光体5:MitsubishiChemical Corporationから市販されている、MPR-1003燐光体。
【0066】
4W調合物において、シリコーンバインダー4の、燐光体1及び5に対する比率は100:110である。燐光体1の、燐光体5に対する比率は10:1である。
【0067】
試料の調製
(1)5gの燐光体1及び0.5gの燐光体5をシリコーンバインダー4の2.5gのA液及びシリコーンバインダー4の2.5gのB液とともに提供し、並びに0.5gのプロピルプロピオネートを粘度を調節するための有機溶剤として添加し、ThinkyARV-310プラネタリー真空ミキサー内で混合して混合スラリーを提供する工程;
(2)Hohsen自動アプリケーターを使用して、混合スラリーをPET剥離ライナー上にコートする工程;
(3)室温で5分間PET剥離ライナーを乾燥させ、次にそれを70℃の温度の乾燥炉内に30分間置き、86μmの厚さを有する乾燥フィルムをもたらす工程。
【0068】
試験手順
レオロジー性能は、下の条件を用いてTA ARES G2レオメーターによって測定される:(1)20℃/分で15~125℃;(2)30分間125℃;及び(3)0.5%の歪、1.0Hzの振動数、及び8mm鋼板の使用。
【0069】
レオロジー性能
冷白色及び温白色燐光体フィルムのレオロジー性能を以下の表に記載する。
【0070】
【0071】
実施例3に示されるように、ヒドロシリル化硬化性組成物の場合、燐光体は、シリコーンバインダー系のレオロジー性能、それによって硬化性能に影響を与えない。それで、シリコーンバインダーの、燐光体に対する混合比率を調節することは必要でない。
【0072】
積層:
冷白色及び温白色燐光体フィルム4C及び4Wは、Fulin PLC-100A真空ラミネーターによって積層される。積層条件は以下の通りである。
積層温度:121.8℃;
積層時間:300秒;及び
真空:0.34kPa
【0073】
図4に示されるように、均一な燐光体の分散及びより良い色品質を示す、一段階フィルム積層において、冷白色及び温白色燐光体フィルム4C及び4WをLED上に良好に積層する。
【0074】
上記の説明は単に本発明の実施形態であり、本発明の範囲を制限することを意図しない。当業者は、本発明に対してあらゆる種類の変型及び変更を行なうことができよう。本発明の趣旨及び原理の範囲内で行われる任意の変更、代替物及び改良は、添付した請求の範囲の範囲内にあるものとする。