(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231011BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B41J2/165 501
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165
(21)【出願番号】P 2019174941
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 啓典
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012392(JP,A)
【文献】特開2009-184144(JP,A)
【文献】特開2010-089376(JP,A)
【文献】特開2000-177111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0196304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に移動するキャリッジと、
被吐出媒体を走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部と、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
前記異常ノズルを回復させるためのメンテナンス動作を行うメンテナンス部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
入力された画像データを、前記ノズルから液体を吐出するための吐出データに変換し、
前記キャリッジを前記走査方向に移動させつつ
、前記吐出データに基づいて前記ノズルから液体を吐出させる吐出パスと、前記搬送部に被吐出媒体を搬送させる搬送動作と、を行わせる吐出動作によって被吐出媒体に液体を吐出させ、
前記吐出動作の前に、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定する異常判定を行い、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行ったうえで、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルを全て使用可能な前記吐出動作である第1吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な時間である第1時間と、
前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わずに、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルのうち前記異常ノズルでない前記ノズルのみが使用可能な前記吐出動作である第2吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な第2時間と、に基づいて、
前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせるか、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせるかを決定
し、
前記第1吐出動作によって前記画像データに対応する画像を1回記録するのに必要な時間に関する第1参照時間情報と、前記第2吐出動作によって前記画像データに対応する画像を1回記録するのに必要な時間に関する第2参照時間情報と、を予め記憶する記憶部、を備え、
前記制御装置は、さらに、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
前記画像データに対応する画像を1回だけ記録させるとき、及び、同じ前記画像データに対応する画像を所定回数未満繰り返し記録させるときには、
前記第1参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第1時間を算出し、
前記第2参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第2時間を算出し、
同じ前記画像データに対応する画像を前記所定回数以上繰り返し記録させるときには、
前記画像データに基づいて、前記第1吐出動作によって当該画像を1回記録するのに必要な第1記録時間と、前記第2吐出動作によって当該画像を1回記録するのに必要な第2記録時間と、を算出し、
前記第1記録時間と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第1時間を算出し、
前記第2記録時間と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第2時間を算出することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
入力された前記画像データに基づく前記第1記録時間及び前記第2記録時間の算出に必要な算出時間を算出し、
同じ前記画像データに対応する画像を前記所定回数以上繰り返し記録させるときであっても、
前記算出時間が、前記第1参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて算出される前記第1時間に関する所定条件を満たす場合には、
前記第1参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第1時間を算出し、
前記第2参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第2時間を算出することを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に移動するキャリッジと、
被吐出媒体を走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部と、
前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、
前記異常ノズルを回復させるためのメンテナンス動作を行うメンテナンス部と、
制御装置と、を備え、
被吐出媒体として、第1被吐出媒体、及び、前記第1被吐出媒体よりもサイズの小さい第2被吐出媒体のいずれかに選択的に前記ノズルから液体を吐出させることができるように構成され、
前記制御装置は、
前記キャリッジを前記走査方向に移動させつつ前記ノズルから液体を吐出させる吐出パスと、前記搬送部に被吐出媒体を搬送させる搬送動作と、を行わせる吐出動作によって被吐出媒体に液体を吐出させ、
前記吐出動作の前に、
前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定する異常判定を行い、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
前記吐出動作において前記第1被吐出媒体に前記ノズルから液体を吐出させるときには、
前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行ったうえで、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルを全て使用可能な前記吐出動作である第1吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な時間である第1時間と、
前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わずに、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルのうち前記異常ノズルでない前記ノズルのみが使用可能な前記吐出動作である第2吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な第2時間と、に基づいて、
前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせるか、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせるかを決定
し、
前記吐出動作において前記第2被吐出媒体に前記ノズルから液体を吐出させるときには、
前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
前記第1時間が前記第2時間よりも短い場合には、前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせ、
前記第2時間が前記第1時間よりも短い場合には、前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせることを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記メンテナンス部は、動作に必要な時間が各々で異なる複数種類の前記メンテナンス動作のうちのいずれかを選択的に行い、
前記制御装置は、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
前記異常判定の結果に基づいて、複数種類の前記メンテナンス動作のうちのいずれを行わせるかを決定し、
決定した前記メンテナンス動作を行ったうえで、前記第1吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な前記第1時間と、前記第2時間とに基づいて、
前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせるか、前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせるかを決定することを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
第1吐出モードと、前記第1吐出モードよりも高解像度で被吐出媒体に液体のドットが形成されるように前記ノズルから液体を吐出させる第2吐出モードのうちのいずれかで選択的に、前記吐出動作を行わせ、
前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、
前記第1吐出モードで前記吐出動作を行わせるときには、
前記第1時間と前記第2時間とに基づいて、前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせるか、前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせるかを決定し、
前記第2吐出モードで前記吐出動作を行わせるときには、
前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドが、前記搬送方向に配列された複数の前記ノズルによって構成されるノズル列、を有し、
前記制御装置は、
前記第2吐出動作において、
前記第1吐出動作で前記ノズル列を構成する複数の前記ノズルのうち前記異常ノズルに割り当てられる液体の吐出を含む全ての液体の吐出を、当該ノズル列を構成する複数の前記ノズルのうち前記異常ノズルでない前記ノズルに割り当てて、前記吐出パスを行わせ、
前記吐出パスにおける液体の吐出の前記ノズルへの割り当てに合わせて、前記搬送動作での被吐出媒体の搬送量を前記第1吐出動作と異ならせることを特徴とする請求項
1~6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1にはノズルからインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが記載されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、ヘッドの複数のノズルの各々について個別に、インクの吐出の有無、及び、吐出方向の検査を行う。そして、インクの吐出がないノズルがあった場合、及び、吐出方向に異常のあるノズルがあった場合には、メンテナンス動作を実行し、再度上記検査を行う。
【0003】
また、ノズルから液体する液体吐出装置の一例として、特許文献2にはノズルからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置が記載されている。特許文献2に記載のインクジェット記録装置では、記録ヘッドの主走査方向への走査と、記録用紙の副走査方向への搬送とを交互に行うことによって、記録用紙への記録を行う。また、特許文献2に記載のインクジェット記録装置では、記録ヘッドの複数のノズルの中に異常ノズルがない場合には、記録ヘッドの走査において記録ヘッドの全てのノズルを使用し、記録用紙の搬送時に、記録ヘッドの全てのノズルが配置される領域の副走査方向の長さだけ、記録用紙を搬送させる。一方、記録ヘッドの複数のノズルの中に異常ノズルがある場合には、記録ヘッドの走査において記録ヘッドの複数のノズルのうち副走査方向に連続して並ぶ正常ノズルのみを使用し、記録用紙の搬送時に、これらの正常ノズルが配置される領域の長さだけ、記録用紙を搬送させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-175849号公報
【文献】特開平9-24607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載されているような異常ノズルの検査(インクの吐出の有無、及び、吐出方向の検査)を、記録用紙への記録の前に行い、異常ノズルがある場合に、メンテナンス動作を実行してから、記録用紙への記録を行う場合を考える。この場合、異常ノズルの数や異常ノズルの分布などの条件によって、メンテナンス動作によって異常ノズルを回復させるために必要な時間が変わる。その結果、記録指令が入力されてから記録用紙への記録が完了するまでの時間が変わる。
【0006】
一方、記録用紙への記録の前に、異常ノズルの検査を行い、異常ノズルがある場合に、特許文献2に記載されているように、メンテナンス動作を実行せずに、使用するノズルの数及び記録用紙の搬送量を減らして記録を行う場合を考える。この場合には、異常ノズルの数や異常ノズルの分布などの条件によって使用可能なノズルの数が変わり、記録が完了するまでに繰り返される記録ヘッドの走査及び記録用紙の搬送の回数が変わる。その結果、記録指令が入力されてから記録用紙への記録が完了するまでの時間が変わる。
【0007】
そのため、記録用紙への記録の前に異常ノズルの検査を行う場合において、記録指令が入力されてから記録用紙への記録が完了するまでの時間を考慮せずに、異常ノズルがある場合に一律に、特許文献1のようにメンテナンス動作を行って異常ノズルを回復させてから記録を行うことや、特許文献2のように使用するノズルの数及び記録用紙の搬送量を減らして記録を行うことは不合理である。
【0008】
本発明の目的は、異常ノズルがある場合に、吐出指令が入力されてから被吐出媒体への液体の吐出が完了するまでの時間を考慮した適切な動作を行って、被吐出媒体へ液体を吐出することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に移動するキャリッジと、被吐出媒体を走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部と、前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、前記異常ノズルを回復させるためのメンテナンス動作を行うメンテナンス部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、入力された画像データを、前記ノズルから液体を吐出するための吐出データに変換し、前記キャリッジを前記走査方向に移動させつつ、前記吐出データに基づいて前記ノズルから液体を吐出させる吐出パスと、前記搬送部に被吐出媒体を搬送させる搬送動作と、を行わせる吐出動作によって被吐出媒体に液体を吐出させ、前記吐出動作の前に、前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定する異常判定を行い、前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行ったうえで、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルを全て使用可能な前記吐出動作である第1吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な時間である第1時間と、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わずに、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルのうち前記異常ノズルでない前記ノズルのみが使用可能な前記吐出動作である第2吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な第2時間と、に基づいて、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせるか、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせるかを決定し、前記第1吐出動作によって前記画像データに対応する画像を1回記録するのに必要な時間に関する第1参照時間情報と、前記第2吐出動作によって前記画像データに対応する画像を1回記録するのに必要な時間に関する第2参照時間情報と、を予め記憶する記憶部、を備え、前記制御装置は、さらに、前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、前記画像データに対応する画像を1回だけ記録させるとき、及び、同じ前記画像データに対応する画像を所定回数未満繰り返し記録させるときには、前記第1参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第1時間を算出し、前記第2参照時間情報と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第2時間を算出し、同じ前記画像データに対応する画像を前記所定回数以上繰り返し記録させるときには、前記画像データに基づいて、前記第1吐出動作によって当該画像を1回記録するのに必要な第1記録時間と、前記第2吐出動作によって当該画像を1回記録するのに必要な第2記録時間と、を算出し、前記第1記録時間と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第1時間を算出し、前記第2記録時間と当該画像を記録する回数とに基づいて、前記第2時間を算出する。
また、本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に移動するキャリッジと、被吐出媒体を走査方向と交差する搬送方向に搬送する搬送部と、前記複数のノズルの少なくとも一部について、液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かに応じた信号を出力する信号出力部と、前記異常ノズルを回復させるためのメンテナンス動作を行うメンテナンス部と、制御装置と、を備え、被吐出媒体として、第1被吐出媒体、及び、前記第1被吐出媒体よりもサイズの小さい第2被吐出媒体のいずれかに選択的に前記ノズルから液体を吐出させることができるように構成され、前記制御装置は、前記キャリッジを前記走査方向に移動させつつ前記ノズルから液体を吐出させる吐出パスと、前記搬送部に被吐出媒体を搬送させる搬送動作と、を行わせる吐出動作によって被吐出媒体に液体を吐出させ、前記吐出動作の前に、前記信号出力部からの信号に基づいて、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあるか否かを判定する異常判定を行い、前記異常判定で、前記複数のノズルの中に前記異常ノズルがあると判定した場合に、前記吐出動作において前記第1被吐出媒体に前記ノズルから液体を吐出させるときには、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行ったうえで、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルを全て使用可能な前記吐出動作である第1吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な時間である第1時間と、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わずに、前記吐出パスにおいて前記複数のノズルのうち前記異常ノズルでない前記ノズルのみが使用可能な前記吐出動作である第2吐出動作によって被吐出媒体への液体の吐出を成すのに必要な第2時間と、に基づいて、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせるか、前記吐出動作の前に前記メンテナンス動作を行わせずに前記第2吐出動作を行わせるかを決定し、前記吐出動作において前記第2被吐出媒体に前記ノズルから液体を吐出させるときには、前記メンテナンス動作を行わせたうえで前記第1吐出動作を行わせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1時間と第2時間とに基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで、吐出パスにおいて全てのノズルを使用可能な第1吐出動作を行うか、メンテナンス動作を行わずに、吐出パスにおいて一部のノズルのみを使用可能な第2吐出動作を行うかを適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された検出用電極、及び、検出用電極と高電圧電源回路及び判定回路との接続関係を説明するための図である。
【
図3】(a)はノズルからインクが吐出された場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図であり、(b)はノズルからインクが吐出されなかった場合の検出用電極の電圧値の変化を示す図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)は第1記録動作で使用可能なノズルを説明するための図であり、(b)は第2記録動作で使用可能なノズルを説明するための図である。
【
図6】記録指令が入力されたときの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、サブタンク3、インクジェットヘッド4(本発明の「液体吐出ヘッド」)、プラテン5、搬送ローラ6,7(本発明の「搬送部」)、メンテナンスユニット8(本発明の「メンテナンス部」)などを備えている。
【0014】
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介してキャリッジモータ86(
図4参照)に接続されており、キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0015】
サブタンク3は、キャリッジ2に搭載されている。ここで、プリンタ1は、カートリッジホルダ14を備えており、カートリッジホルダ14に4つのインクカートリッジ15が取り外し可能に装着されている。4つのインクカートリッジ15には、走査方向の右側に配置されたものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインク(本発明の「液体」)が貯留されている。サブタンク3は、4本のチューブ13を介してカートリッジホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ15と接続されている。これにより、4つのインクカートリッジ15からサブタンク3に上記4色のインクが供給される。
【0016】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載され、サブタンク3の下端部に接続されている。インクジェットヘッド4には、サブタンク3から上記4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド4は、走査方向に並んだ4列のノズル列9を有する。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0017】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙P(本発明の「被吐出媒体」)の全長にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4及びプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図4参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0018】
メンテナンスユニット8は、キャップ61と、吸引ポンプ62と、廃液タンク63とを備えている。キャップ61は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ61と対向する。
【0019】
また、キャップ61は、キャップ昇降機構88(
図4参照)によって昇降可能となっている。そして、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させて複数のノズル10とキャップ61とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ61を上昇させると、キャップ61の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ61に覆われる。なお、キャップ61はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ61は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0020】
吸引ポンプ62はチューブポンプなどであり、キャップ61及び廃液タンク63と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上述したように複数のノズル10がキャップ61によって覆われた状態で吸引ポンプ62を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージ(本発明の「メンテナンス動作」)を行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク63に貯留される。
【0021】
また、本実施形態では、後述する制御装置80の制御により、メンテナンスユニット8に、吸引ポンプ62の駆動時間が異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行うことができる。そして、これら複数種類の吸引パージは、吸引ポンプ62の駆動時間が長いものほど、ノズル10からのインクの排出量が多い。なお、本実施形態では、吸引ポンプ62の駆動時間の違いによって、上記複数種類の吸引パージ間で、動作に必要な時間が異なる。
【0022】
なお、ここでは、便宜上、キャップ61が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ61が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタのインク)を吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックインク及びカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ61が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0023】
また、
図2に示すように、キャップ61内には、矩形の平面形状を有する検出用電極66が配置されている。検出用電極66は、抵抗69を介して高電圧電源回路67に接続されている。そして、検出用電極66には、高電圧電源回路67により所定の正の電位(例えば300V程度)が付与される。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と検出用電極66との間に所定の電位差が生じる。検出用電極66には、判定回路68が接続されている。判定回路68は、検出用電極66から出力された電圧信号の電圧値と、閾値Vtとを比較し、その結果に応じた信号を出力する。
【0024】
より詳細に説明すると、インクジェットヘッド4と、検出用電極66との間には電位差が生じているため、ノズル10から吐出されたインクは帯電している。キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、
図3(a)に示すように、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が、インクジェットヘッド4が駆動されていないときの電圧値V1から上昇し、電圧値V1よりも高い電圧値V2に達する。そして、帯電したインクが検出用電極66に着弾した後、検出用電極66の電圧値が徐々に低下して電圧値V1に戻る。すなわち、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66の電圧値が変化する。
【0025】
一方で、ノズル10からインクが吐出されていない場合には、
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66の電圧値は、電圧値V1からほとんど変化しない。そこで、判定回路68は、これらを区別するために閾値Vt(V1<Vt<V2)が設定されている。そして、判定回路68は、インクジェットヘッド4の駆動期間Tdにおいて、検出用電極66から出力される電圧信号の最大の電圧値と閾値Vtとを比較し、その判定結果に応じた信号を出力する。なお、本実施形態では、検出用電極66と、高電圧電源回路67と抵抗69と判定回路68とを合わせたものが、本発明の「信号出力部」に相当する。そして、この信号出力部は、ノズル10が、インクが吐出されない異常ノズルであるか否かによって、判定回路68から異なる信号を出力する。
【0026】
また、ここでは、高電圧電源回路67により、検出用電極66に正の電位が付与されているが、高電圧電源回路67により、検出用電極66に負の電位(例えば-300V程度)が付与されていてもよい。この場合には、上述したのとは逆に、キャリッジ2を上記メンテンナンス位置に位置させた状態で、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させると、帯電したインクが検出用電極66に近づき、検出用電極66にインクが着弾するまで、検出用電極66の電圧値が電圧値V1から低下し、検出用電極66にインクが着弾した後、検出用電極66の電圧値が徐々に上昇して電圧値V1に戻る。
【0027】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1の動作は、制御装置80によって制御される。
図4に示すように、制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83、フラッシュメモリ84、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)85などからなり、インクジェットヘッド4、キャリッジモータ86、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、高電圧電源回路67、吸引ポンプ62などの動作を制御する。
【0028】
また、制御装置80には、判定回路68からの信号が入力される。これにより、制御装置80には、判定回路68からの信号に基づく、ノズル10が異常ノズルであるか否かの情報が入力される。
【0029】
なお、制御装置80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0030】
<記録時の制御>
次に、プリンタ1において、記録用紙Pに記録を行うときの処理について説明する。プリンタ1では、制御装置80が、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録パス(本発明の「吐出パス」)と、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ6,7に記録用紙Pを搬送方向に搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返す記録動作(本発明の「吐出動作」)によって、記録用紙Pに画像を記録する。
【0031】
また、プリンタ1では、上記記録動作として、第1記録動作(本発明の「第1吐出動作」)と第2記録動作(本発明の「第2吐出動作」)のうちいずれかを選択的に行うことができる。第1記録動作では、
図5(a)に示すように、記録パスにおいてインクジェットヘッド4の複数のノズル10が全て使用可能である。第2記録動作では、例えば、
図5(b)に示すように、記録パスにおいてインクジェットヘッド4の複数のノズル10のうち、搬送方向に連続して並ぶ異常ノズルでないノズル10のみが使用可能である。ここで、
図5(a)、(b)では使用可能なノズル10を実線で示している。また、
図5(b)では、×を付したノズル10が異常ノズルを示している。
【0032】
そして、第2記録動作では、第1記録動作で、ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち異常ノズルに割り当てられる画像のドット(インクの吐出)を含む全てのドットが、同じノズル列9を構成するノズル10のうち異常ノズルでないノズル10に割り当てられる。また、第1記録動作では、
図5(a)に示すように、使用可能なノズル10が搬送方向において長さL1の範囲にわたって配置されているのに対して、第2記録動作では、
図5(b)に示すように、使用可能なノズル10が搬送方向において長さL1よりも短い長さL2の範囲にわたって配置されている。したがって、第2記録動作では、第1記録動作よりも、1回の記録パスで記録される領域の搬送方向の長さが短く、搬送動作での記録用紙Pの搬送量が小さい。そのため、第2記録動作では、第1記録動作よりも、記録用紙Pへの記録を行うのに必要な記録パス及び搬送動作の回数が多い。
【0033】
また、プリンタ1では、記録用紙Pとして、第1記録用紙(本発明の「第1被吐出媒体」)、及び、第1記録用紙よりもサイズの小さい第2記録用紙(本発明の「第2被吐出媒体」)のいずれかに選択的に画像を記録することができる。ここで、第1記録用紙とは、例えば、A4、B5サイズ等の普通紙であり、第2記録用紙とは、例えば、はがきである。
【0034】
また、プリンタ1では、通常記録モード(本発明の「第1吐出モード」)と、通常記録モードよりも高解像度で画像を構成するドットが形成されるようにノズル10からインクを吐出させる高解像度記録モード(本発明の「第2吐出モード」)のうち、いずれかで選択的に画像を記録することができる。
【0035】
そして、プリンタ1において、記録用紙Pに記録を行うときには、制御装置80は、
図6のフローに沿って処理を行う。
図6のフローは、プリンタ1に記録用紙Pへの記録を指示する記録指令が入力されたときに開始される。
【0036】
図6に示すように、記録指令が入力されると、制御装置80は、まず、異常判定処理を実行する(S101)。異常判定処理では、制御装置80は、キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させた状態で、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させるようにインクジェットヘッド4を駆動し、このときに判定回路68から出力される信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定する異常判定を行う。
【0037】
続いて、制御装置80は、S101の異常判定処理の結果に基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の中に異常ノズルがあるか否かを判定する(S102)。異常ノズルがない場合には(S102:NO)、後述のS114に進む。異常ノズルがある場合には(S102:YES)、制御装置80は、S101の異常判定処理の結果に基づいて、メンテナンス動作の種類を決定する(S103)。
【0038】
S103では、制御装置80は、異常ノズルの数、異常ノズルの分布等に基づいて、メンテナンス動作として、上記複数種類の吸引パージのうちのいずれを行わせるかを決定する。例えば、異常ノズルの数が多いほど、メンテナンス動作を、吸引ポンプ62の駆動時間が長い(インクの排出量の多い)吸引パージに決定する。あるいは、例えば、搬送方向の両端部に位置する異常ノズルの割合が大きいほど、吸引ポンプ62の駆動時間が長い(インクの排出量の多い)吸引パージに決定する。
【0039】
続いて、制御装置80は、第2記録用紙への記録である場合(S104:YES)、及び、高解像度記録モードでの記録である場合には(S104:NO、S105:YES)、後述のS113に進む。
【0040】
一方、第1記録用紙への記録であり(S104:NO)、且つ、通常記録モードでの記録である場合には(S105:NO)、制御装置80は、続いて、S101の異常判定処理の結果が示す異常ノズルの搬送方向の位置に基づいて、第2記録動作で記録を行う場合に使用するノズル10を決定する(S106)。
【0041】
続いて、制御装置80は、同じ画像データに対応する画像を所定部数以上連続して記録(本発明の「所定回数以上繰り返し記録」)するか否かを判定する(S107)。このとき、画像データに対応する画像は1枚の記録用紙Pに記録されるものであってもよいし、複数枚の記録用紙Pにわたって記録されるものであってもよい。なお、以下では、「同じ画像データに対応する画像」のことを、単に「同じ画像」とすることがある。
【0042】
画像を1部だけ記録(本発明の「1回だけ記録」)する場合、及び、同じ画像を所定部数未満連続して記録(本発明の「所定回数未満繰り返し記録」)する場合には(S107:NO)、制御装置80は、第1参照記録時間R1(本発明の「第1参照時間情報」)及び第2参照記録時間R2(本発明の「第2参照時間情報」)と、記録部数とに基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を算出し(S108)、後述のS112に進む。
【0043】
ここで、第1参照記録時間R1とは、予め実験などによって得られた、第1記録動作で画像を1部記録(本発明の「画像を1回記録」)するのに必要な時間の想定値である。第2参照記録時間R2とは、予め実験などによって得られた、第2記録動作で画像を1部記録(本発明の「画像を1回記録」)するのに必要な時間の想定値である。第1参照記録時間R1及び第2参照記録時間R2は、プリンタ1の製造時などに、予め、フラッシュメモリ84(本発明の「記憶部」)に記憶されている。
【0044】
また、第1時間T1とは、メンテナンス動作を行ったうえで、第1記録動作によって記録が指示された全ての記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な時間である。また、第2時間T2とは、メンテナンス動作を行わずに、第2記録動作によって記録が指示された全ての記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な時間である。
【0045】
S108では、第1参照記録時間R1に記録部数を乗じることによって得られる時間に、S103で決定したメンテナンス動作を行うのに必要な時間を足し合わせた時間を、第1時間T1として算出する。また、第2参照記録時間R2に記録部数を乗じることによって得られる時間を、第2時間T2として算出する。なお、メンテナンス動作としての各吸引パージを行うのに必要な時間の情報は、予め、フラッシュメモリ84に記憶されている。
【0046】
一方、同じ画像を所定部数以上連続して記録する場合には(S107:YES)、制御装置80は、続いて、記録指令とともに入力された画像データを解析して、第1記録動作によって画像を1部記録するのに必要な第1記録時間U1と、第2記録動作によって画像を1部記録するのに必要な第2記録時間U2と、を算出するのに必要な算出時間Kが、上記S108と同様にして算出した第1時間T1である時間T1aよりも長いか否かを判定する(S109)。なお、本実施形態では、算出時間Kが時間T1aよりも長いという条件が、本発明の「所定条件」に相当する。
【0047】
算出時間Kが時間T1aよりも長い場合には(S109:YES)、上述したのと同様、第1参照記録時間R1及び第2参照記録時間R2と、記録部数とに基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を算出し(S108)、S112に進む。
【0048】
算出時間Kが時間T1a以下の場合には(S109:NO)、制御装置80は、画像データに基づいて第1記録時間U1及び第2記録時間U2を算出し(S110)、第1記録時間U1及び第2記録時間U2と記録部数とに基づいて、第1時間T1及び第2時間T2を算出し(S111)、S112に進む。S111では、制御装置80は、例えば、第1記録時間U1に記録部数を乗じて得られる時間に、S103で決定したメンテナンス動作に必要な時間を足し合わせた時間を、第1時間T1として算出する。また、制御装置80は、第2記録時間U2に記録部数を乗じて得られる時間を第2時間T2として算出する。
【0049】
S112では、S108あるいはS111で算出した第1時間T1が第2時間T2以下であるか否かを判定する。第1時間T1が第2時間T2以下の場合には(S112:YES)、制御装置80は、S103で決定したメンテナンス動作を行わせるメンテナンス処理を実行する(S113)。
【0050】
続いて、制御装置80は、第1データ変換処理を実行する(S114)。ここで、記録指令とともに入力される画像データは、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の3色のデータである。第1データ変換処理では、制御装置80は、R,G,Bの画像データを、インクジェットヘッド4が吐出可能な4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のデータに色変換する。さらに、第1データ変換処理では、制御装置80は、上記4色のデータにおける画像の各ドットを、第1記録動作で使用可能なノズル10(インクジェットヘッド4の全てのノズル10)に割り当てる。これにより、画像データが、上記4色のインクについて、各ドットに対してノズル10が割り当てられた、第1記録動作でインクジェットヘッド4の複数のノズル10からインクを吐出するための吐出データに変換される。
【0051】
続いて、制御装置80は、第1記録動作を行わせる第1記録処理を実行する(S115)。S115の第1記録処理では、第1記録動作の記録パスにおいて、S114で得られた吐出データに基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる。
【0052】
第1時間T1が第2時間T2以よりも長い場合には(S112:NO)、制御装置80は、続いて、第2データ変換処理を実行する(S116)。第2データ変換処理では、制御装置80は、R,G,Bの3色の画像データを、インクジェットヘッド4が吐出可能な4色のデータに色変換する。さらに、第2データ変換処理では、制御装置80は、上記4色のデータにおける画像の各ドットを、第2記録動作で使用可能なノズル10(異常ノズルでないノズル10)に割り当てる。これにより、画像データが、上記4色のインクについて、各ドットに対してノズル10が割り当てられた、第2記録動作でインクジェットヘッド4の複数のノズル10からインクを吐出するための吐出データに変換される。
【0053】
続いて、制御装置80は、第2記録動作を行わせる第2記録処理を実行する(S117)。S117の第2記録処理では、第2記録動作の記録パスにおいて、S116で得られた吐出データに基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズル10から記録用紙Pに向けてインクを吐出させる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1時間T1と第2時間T2とが同じである場合に、制御装置80が、メンテナンス処理、第1データ変換処理及び第1記録処理を実行するようにしたが、これには限られない。第1時間T1と第2時間T2とが同じである場合に、制御装置80が、第2データ変換処理及び第2記録処理を実行するようにしてもよい。
【0055】
<効果>
異常ノズルがあると判定された場合、メンテナンス動作を行ってインクジェットヘッド4の全てのノズル10を使用可能な状態にしてから、記録パスにおいて全てのノズル10を使用可能な第1記録動作を行うことによって、記録用紙Pへの画像の記録を行うことができる。また、異常ノズルがあると判定された場合、メンテナンス動作を行わずに、記録パスにおいて異常ノズルでないノズル10のみを使用可能な第2記録動作を行うことによっても、記録用紙Pへの画像の記録を行うことができる。
【0056】
一方、本実施形態では、異常ノズルの数や分布等の条件によって行うメンテナンス動作の種類が変わるため、メンテナンス動作を行ってから第1記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な時間が、異常ノズルの数や分布等の条件によって変わる。そのため、異常ノズルの数や分布等の条件によって、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作を行って記録用紙Pへの記録を成すのにかかる時間がかわる。
【0057】
また、第2記録動作では、第1記録動作よりも使用可能なノズル10の数が少なく、搬送動作での記録用紙Pの搬送量も小さいため、記録用紙Pへの画像の記録を行うために必要な記録パスの回数が多く、第1記録動作よりも記録用紙Pへの画像の記録を行うのに必要な時間が長い。また、異常ノズルの数や分布等の条件によって、第2記録動作で使用可能なノズル10の数が変わるため、異常ノズルの数や分布等の条件によって、第2記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な時間が変わる。
【0058】
そのため、異常ノズルがある場合に、メンテナンス動作を行ってから第1記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を行う場合と、メンテナンス動作を行わずに第2記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を行う場合のうち、どちらの場合において、記録指令が入力されてから記録用紙Pへの画像の記録が完了するまでの時間が短くなるかは、異常ノズルの数や分布等の条件によって変わる。
【0059】
そこで、本実施形態では、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な第1時間T1と、メンテナンス動作を行わせずに第2記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な第2時間T2とを算出する。そして第1時間T1と第2時間T2とに基づいて、メンテナンス動作を行わせたうえで、第1記録動作を行わせて記録用紙Pに画像を記録するか、メンテナンス動作を行わせずに、第2記録動作を行わせて記録用紙Pに画像を記録するかを決定する。具体的には、第1時間T1が第2時間T2以下の場合には、メンテナンス動作を行わせたうえで第1記録動作を行わせて記録用紙Pに画像を記録する。また、第2時間T2が第1時間T1よりも短い場合には、メンテナンス動作を行わせずに第2記録動作を行わせて記録用紙Pに画像を記録する。これにより、異常ノズルがある場合において、記録指令が入力されてから、記録用紙Pへの画像の記録が完了するまでの時間を極力短くすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、メンテナンス動作として、必要な時間(吸引ポンプ62の駆動時間)が異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行うことができる。これに対して、本実施形態では、異常ノズルの数や分布に基づいてどのメンテナンス動作を行わせるかを決定し、決定したメンテナンス動作を行う場合の第1時間T1と、第2時間T2とに基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作を行うか、メンテナンス動作を行わずに第2記録動作を行うかを決定する。これにより、異常ノズルがある場合において、記録指令が入力されてから、記録用紙Pへの画像の記録が完了するまでの時間を極力短くすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、画像データに基づいて第1記録時間U1を算出し、第1記録時間U1に基づいて第1時間T1を算出する場合には、予め記憶された第1参照記録時間R1に基づいて第1時間T1を算出する場合よりも、第1時間T1を正確に算出することができる。同様に、画像データに基づいて第2記録時間U2を算出し、第2記録時間U2に基づいて第2時間T2を算出する場合には、予め記憶された第2参照記録時間R2に基づいて第2時間T2を算出する場合よりも、第2時間T2を正確に算出することができる。
【0062】
一方で、画像データに基づいて第1記録時間U1及び第2記録時間U2を算出するためにはある程度の時間が必要である。また、同じ画像データに対応する画像を繰り返し記録する回数が多くなるほど、第1記録時間U1に基づいて算出した第1時間T1と、第1参照記録時間R1に基づいて算出した第1時間T1との差、及び、第2記録時間U2に基づいて算出した第2時間T2と、第2参照時間情報R2に基づいて算出した第2時間T2との差が大きくなる。また、全ての画像の記録に必要な時間も長くなる。
【0063】
そこで、本実施形態では、画像を1部だけ記録するとき、及び、同じ画像を所定部数未満繰り返し記録するときには、第1参照記録時間R1と当該画像の記録部数とに基づいて第1時間T1を算出し、第2参照記録時間R2と当該画像の記録部数とに基づいて第2時間T2を算出する。これにより、全ての画像を記録するのに必要な時間が短い場合に、第1時間T1及び第2時間T2を算出するのに必要な時間が長くならないようにすることができる。
【0064】
一方、同じ画像を上記所定部数以上繰り返し記録するときには、画像データに基づいて、第1記録時間U1及び第2記録時間U2を算出する。そして、第1記録時間U1と当該画像の記録部数とに基づいて第1時間T1を算出し、第2記録時間U2と当該画像の記録部数とに基づいて第2時間T2を算出する。これにより、算出される第1時間T1及び第2時間T2が正確なものとなり、メンテナンス動作を行わせたうえで第1吐出動作を行わせるか、メンテナンス動作を行わせずに第2吐出動作を行わせるかを適切に決定することができる。
【0065】
ただし、同じ画像を上記所定部数以上連続して記録する場合であっても、画像データに基づいて第1記録時間U1及び第2記録時間U2を算出するのに必要な時間があまりにも長い場合には、第1記録時間U1に基づいて第1時間T1を算出し、第2記録時間U2に基づいて第2時間T2を算出すると、記録指令が入力されてから、記録用紙Pへの画像の記録が全て完了するまでの時間が却って長くなってしまうことがある。そこで、本実施形態では、画像データに基づいて第1記録時間U1及び第2記録時間U2を算出するのに必要な時間が、第1参照記録時間R1と画像の記録部数とに基づいて算出される第1時間T1である時間T1aよりも長い場合には、同じ画像を上記所定部数以上連続して記録する場合であっても、第1参照記録時間R1と当該画像の記録部数とに基づいて第1時間T1を算出し、第2参照記録時間R2と当該画像の記録部数とに基づいて第2時間T2を算出する。これにより、第1時間T1及び第2時間T2を算出するのに必要な時間が長くなりすぎないようすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、解像度が高い高解像記録モードで記録を行う場合には、これよりも解像度の低い通常記録モードで記録を行う場合と比較して、第2記録動作に必要な時間が、第1記録動作に必要な時間に対して大幅に長くなる。そのため、メンテナンス動作を行わせずに第2記録動作を行わせて画像を記録するのに必要な時間が、メンテナンス動作を行わせたうえで第1記録動作を行わせて画像を記録するのに必要な時間に対して長くなる可能性が高い。
【0067】
そこで、本実施形態では、解像度の低い通常記録モードで記録を行う場合には、異常判定で、複数のノズル10の中に異常ノズルがあると判定した場合に、第1時間T1と第2時間T2とに基づいて、メンテナンス動作を行わせたうえで第1記録動作を行わせて画像を記録するか、メンテナンス動作を行わせずに第2記録動作を行わせて画像を記録するかを決定する。一方で、解像度の高い高解像度記録吐出モードで記録を行う場合には、異常判定で、複数のノズルの中に異常ノズルがあると判定した場合に、メンテナンス動作を行わせたうえで第1記録動作を行わせて画像を記録する。
【0068】
また、記録用紙Pがサイズの小さい第2記録用紙である場合には、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作を行って画像を記録しても、それほど時間はかからない。そこで、本実施形態では、サイズの大きい第1記録用紙に記録を行うときには、異常判定で、複数のノズルの中に異常ノズルがあると判定した場合に、第1時間T1と第2時間T2とに基づいて、メンテナンス動作を行わせたうえで第1記録動作を行わせて記録を行うか、メンテナンス動作を行わせずに第2記録動作を行わせて画像を記録するかを決定する。一方で、サイズの小さい第2記録用紙に記録を行うときには、異常判定で、複数のノズルの中に異常ノズルがあると判定した場合に、メンテナンス動作を行わせたうえで第1記録動作を行わせて画像を記録する。これにより、記録用紙Pのサイズが小さい場合の処理を簡単にすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、第2記録動作において、第1記録動作でノズル列9を構成する複数のノズル10のうち異常ノズルに割り当てられる画像のドット(インクの吐出)を含む画像を構成する全てのドットを、当該ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち異常ノズルでないノズル10に割り当てる。そして、これに合わせて搬送動作での搬送量を第1吐出動作よりも小さくする。これにより、異常ノズルでないノズル10のみを用いて、記録用紙Pへの画像の記録を行うことができる。
【0070】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0071】
上述の実施形態では、異常ノズルがある場合に、サイズの大きい第1記録用紙に画像を記録するときには、第1時間T1と第2時間T2との大小関係に基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって画像を記録するか、メンテナンス動作を行わずに第2記録動作によって画像記録するかを決定した。一方で、サイズの小さい第2記録用紙に画像を記録するときには、常に、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって画像を記録した。しかしながら、これには限られない。例えば、記録用紙Pのサイズによらず、第1時間T1と第2時間T2との大小関係に基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって画像を記録するか、メンテナンス動作を行わずに第2記録動作によって画像記録するかを決定してもよい。
【0072】
上述の実施形態では、異常ノズルがある場合に、解像度の低い通常記録モードで画像を記録するときには、第1時間T1と第2時間T2との大小関係に基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって画像を記録するか、メンテナンス動作を行わずに第2記録動作によって画像記録するかを決定した。一方で、解像度の高い高解像度記録モードで画像を記録するときには、常に、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって画像を記録した。しかしながら、これには限られない。例えば、記録する画像の解像度によらず、第1時間T1と第2時間T2との大小関係に基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで第1記録動作によって画像を記録するか、メンテナンス動作を行わずに第2記録動作によって画像記録するかを決定してもよい。
【0073】
また、同じ画像を所定部数以上連続して記録する場合において、算出時間Kが時間T1a未満であるか否かによって、画像データに基づく記録時間U1,U2に基づいて時間T1,T2を算出するか、参照記録時間R1,R2に基づいて時間T1,T2を算出するかを決定したが、これには限られない。
【0074】
例えば、時間T1aに0より大きく1未満の係数を乗じることによって得られる時間を時間T1bとして、同じ画像を所定部数以上連続して記録する場合において、算出時間Kが時間T1b未満であるか否かによって、画像データに基づく記録時間U1,U2に基づいて時間T1,T2を算出するか、参照記録時間R1,R2に基づいて時間T1,T2を算出するかを決定してもよい。なお、この場合には、算出時間Kが時間T1b未満であるという条件が、本発明の「所定条件」に相当する。あるいは、算出時間Kが、時間T1aについての別の所定条件を満たすか否かによって、上記決定を行ってもよい。
【0075】
あるいは、同じ画像を所定部数以上記録する場合に、算出時間Kによらず、画像データに基づいて記録時間U1,U2を算出し、記録時間U1,U2に基づいて時間T1,T2を算出してもよい。
【0076】
また、本実施形態では、同じ画像を所定部数以上繰り返し記録するか否かによって、画像データに基づく記録時間U1,U2に基づいて時間T1,T2を算出するか、参照記録時間R1,R2に基づいて時間T1,T2を算出するかを変えたが、これには限られない。例えば、画像の記録部数によらず、記録時間U1,U2に基づいて時間T1,T2を算出してもよい。あるいは、画像の記録部数によらず、参照記録時間R1,R2に基づいて時間T1,T2を算出してもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、メンテナンス動作として、吸引ポンプ62の駆動時間が異なる複数種類の吸引パージのいずれかを選択的に行わせたが、これには限られない。
【0078】
例えば、メンテナンス動作として、インクジェットヘッド4を駆動させてノズル10からインクを排出させ、インクジェットヘッド4の駆動回数が異なる複数種類のフラッシングのいずれかを選択的に行わせてもよい。なお、この場合には、複数種類のフラッシング間で、インクジェットヘッド4の駆動回数の違いにより、動作に必要な時間が異なる。また、この場合には、インクジェットヘッド4が、本発明の「液体吐出ヘッド」と「メンテナンス部」とを兼ねることになる。
【0079】
あるいは、例えば、少なくとも1種類の吸引パージと少なくとも1種類のフラッシングとを含む、動作に必要な時間が各々で異なる複数種類のメンテナンス動作のうちのいずれかを選択的に行うように構成してもよい。なお、この場合には、メンテナンスユニット8と、インクジェットヘッド4とをあわせたものが、本発明の「メンテナンス部」に相当する。
【0080】
さらには、動作に必要な時間の異なる複数種類のメンテナンス動作のいずれかを選択的に行わせることにも限られない。プリンタが1種類のメンテナンス動作のみを行うことができるものであってもよい。この場合であっても、異常ノズルの数や分布によって、第2記録動作によって記録用紙Pに画像を記録するのに必要な時間が変わるため、第1時間T1と第2時間T2とに基づいて、メンテナンス動作を行ったうえで、第1記録動作によって記録用紙Pに画像を記録するか、メンテナンス動作を行わずに、第2記録動作によって記録用紙Pに画像を記録するかを決定する意義はある。
【0081】
また、上述の実施形態では、パージとして吸引パージを行ったが、これには限られない。例えば、サブタンク3とインクカートリッジ15とを接続するチューブ13の途中部分に加圧ポンプが設けられていてもよい。あるいは、プリンタにインクカートリッジと接続された加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ61で覆われた状態で、上記加圧ポンプを駆動させることで、インクジェットヘッド4内のインクを加圧してノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる加圧パージを行ってもよい。なお、この場合には、キャップ61と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「メンテナンス部」に相当する。
【0082】
さらには、パージにおいて、吸引ポンプ62による吸引と加圧ポンプによる加圧の両方を行ってもよい。この場合には、メンテナンスユニット8と加圧ポンプとを合わせたものが、本発明の「メンテナンス部」に相当する。
【0083】
また、上述の実施形態では、第1時間T1が第2時間T2以下の場合に、メンテナンス動作を行わせたうえで、第1記録動作を行わせて記録用紙Pへの画像の記録を行わせる。また、第1時間T1が第2時間T2よりも長い場合に、メンテナンス動作を行わせずに、第2記録動作を行わせて記録用紙Pへの画像の記録を行わせる。しかしながら、これには限られない。
【0084】
例えば、異常ノズルをできるだけ回復させるという観点から、第1時間T1が第2時間T2以下の場合に加えて、第1時間T1が第2時間T2よりも長く且つその差が所定時間未満の場合にも、メンテナンス動作を行わせたうえで、第1記録動作を行わせて記録用紙Pへの画像の記録を行わせてもよい。そして、第1時間T1が第2時間T2よりも長く且つその差が所定時間以上の場合に、メンテナンス動作を行わせずに第2記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を行わせてもよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、第2記録動作において、第1記録動作においてノズル列9を構成するノズル10のうち異常ノズルに割り当てられるドットを含む、画像を構成する全てのドットを、当該ノズル列9を構成する複数のノズル10のうち異常ノズルでないノズル10に割り当て、搬送動作での記録用紙Pの搬送量を小さくした。しかしながら、これには限られない。例えば、ブラックインクを吐出するあるノズル10が異常ノズルであると判定された場合に、第2記録動作において、当該ノズル10に割り当てられているドットを、当該ノズル10と搬送方向の位置が同じ、カラー3色のインクを吐出する3つノズル10に割り当て、これら3つのノズル10から記録用紙P上で重なるように3色のインクを吐出させてもよい。なお、この場合には、第1記録動作と第2記録動作とで搬送動作における記録用紙Pの搬送量は同じである。
【0086】
また、上述の実施形態では、第1時間T1を、メンテナンス動作に必要な時間と、第1記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な時間とを合計した時間として算出したが、これには限られない。例えば、第1時間T1を、メンテナンス動作に必要な時間と、第1記録動作によって記録用紙Pへの画像の記録を成すのに必要な時間とを合計に、メンテナンス動作の後、キャリッジ2を、第1記録動作による画像の記録を開始するための位置に移動させるのに必要な時間等を加えた時間として算出してもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、ノズル10から検出用電極66に向けてインクを吐出させたときの検出用電極66の電圧値に応じて、判定回路68から、異常ノズルであるか否かを示す信号を出力したが、これには限られない。
【0088】
例えば、上下方向に延びた検出用電極を配置し、ノズル10から検出用電極と対向する領域を通過するようにインクを吐出させたときの検出用電極の電圧値に応じて、判定回路から、異常ノズルであるか否かについての信号を出力してもよい。あるいは、ノズル10から吐出されたインクを検出する光センサ(本発明の「信号出力部」)を設け、光センサから、異常ノズルであるか否かについての信号を出力してもよい。
【0089】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路(本発明の「信号出力部」)を接続して、電圧検出回路から制御装置80に、異常ノズルであるか否かについての信号を出力するようにしてもよい。
【0090】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子(本発明の「信号出力部」)を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、ノズル10が異常ノズルであるか否かについての信号を出力するようにしてもよい。
【0091】
また、以上の例では、ノズル10からインクが吐出されたか否かを検出し、インクが吐出されないノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えば、ノズル10からのインクの吐出速度や吐出方向等を検出するための構成を設け、インクの吐出速度や吐出方向等が異常なノズル10を異常ノズルと判定としてもよい。
【0092】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Pに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録するプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0093】
1 プリンタ
2 キャリッジ
4 インクジェットヘッド
6,7 搬送ローラ
8 メンテナンスユニット
9 ノズル列
10 ノズル
66 検出用電極
67 高電圧電源回路
68 判定回路
69 抵抗
80 制御装置