IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

特許7364426線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム
<>
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図1
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図2
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図3
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図4
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図5
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図6
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図7
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図8
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図9
  • 特許-線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20231011BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20231011BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B25J19/00 E
F16L3/08 D
H02G11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019197232
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070081
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 斉寛
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055356(JP,A)
【文献】特開2008-140660(JP,A)
【文献】特開2002-364779(JP,A)
【文献】特開2003-284225(JP,A)
【文献】特開2002-022064(JP,A)
【文献】特開2018-012143(JP,A)
【文献】特開2017-052040(JP,A)
【文献】特開平07-328981(JP,A)
【文献】特開平08-065867(JP,A)
【文献】特開平09-093764(JP,A)
【文献】特開2002-291131(JP,A)
【文献】特開2010-142895(JP,A)
【文献】特開2015-150622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00-19/00
A61B 17/28
B65G 47/90
B66C 1/42
F16L 3/08
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの表面に固定されるベース部と、
線条体に固定される固定部と、
前記ベース部と前記固定部との間に配置される離脱機構とを備え、
前記固定部が、前記線条体を支持する支持部と、該支持部との間に前記線条体を挟んで固定する固定部材とを有し、
前記離脱機構が、前記線条体に作用する力が所定の閾値よりも小さい場合に、前記固定部を前記ベース部に装着状態に維持し、前記線条体に作用する力が前記閾値以上である場合に、装着状態を解除する線条体支持装置。
【請求項2】
前記離脱機構が、前記閾値以上の力が前記線条体に作用したときに破断する易破断部である請求項1に記載の線条体支持装置。
【請求項3】
前記ベース部が、前記ロボットの表面に着脱可能に固定され、
前記固定部が、前記線条体に着脱可能に固定されている請求項2に記載の線条体支持装置。
【請求項4】
前記離脱機構が、前記ベース部および前記固定部のいずれか一方に設けられた凹部と、他方に設けられ前記凹部内に摩擦によって嵌合状態に維持される凸部とを備える請求項1に記載の線条体支持装置。
【請求項5】
前記凹部がアリ溝であり、前記凸部がアリ状突起である請求項4に記載の線条体支持装置。
【請求項6】
前記離脱機構が、前記ベース部および前記固定部の一方に設けられた磁性部材と、他方に設けられ前記磁性部材を磁気吸引力によって吸着する永久磁石とを備える請求項1に記載の線条体支持装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の線条体支持装置を備えるロボット。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットと、該ロボットを制御する制御装置と、前記離脱機構による装着状態が解除されたことを検出する検出部とを備え、
前記制御装置が、前記検出部により装着状態が解除されたことが検出されたときに、前記ロボットの動作を制御するロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線条体支持装置、ロボットおよびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットに装着するケーブル類を支持する支持装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この支持装置は、ケーブル類を処理するケーブル処理具を圧縮スプリング等の緩衝部材によって、アームの上方に上下動可能に吊り下げて支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-328981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブル類に負荷がかかると圧縮スプリングが伸縮することにより、ケーブル類にかかる負荷が軽減され、ケーブル類が損傷することを防止できる。しかしながら、特許文献1の支持装置は、負荷に応じて圧縮スプリングを伸縮させるための十分なスペースを上下方向に確保するために、ロボットのアームの上方に大きく突出する形態を有している。
【0005】
このため、支持装置が外部の物体と干渉し易く、アームを狭いスペースに挿入する作業を行うことが困難となる。したがって、ケーブル類にかかる負担を十分に軽減し、かつ、ロボットの外面からの突出量を可能な限り抑えたケーブル支持装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ロボットの表面に固定されるベース部と、線条体に固定される固定部と、前記線条体に作用する力が所定の閾値よりも小さい場合に、前記固定部を前記ベース部に装着状態に維持し、前記線条体に作用する力が前記閾値以上である場合に、装着状態を解除する離脱機構とを備える線条体支持装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る線条体支持装置を備えるロボットを示す斜視図である。
図2図1の線条体支持装置を示す斜視図である。
図3図2の線条体支持装置を示す分解図である。
図4図2の線条体支持装置により線条体を支持した状態を示す一部を破断した正面図である。
図5図4の線条体支持装置の離脱機構の作動により、接続部が破断した状態を示す正面図である。
図6図2の線条体支持装置の変形例により線条体を支持した状態を示す一部を破断した正面図である。
図7図6の線条体支持装置の離脱機構の作動により、ベース部材と支持部材とが分離した状態を示す正面図である。
図8図2の線条体支持装置の他の変形例を示す斜視図である。
図9図8の線条体支持装置の離脱機構の作動により、ベース部材と支持部材とが分離した状態を示す斜視図である。
図10図2の線条体支持装置の他の変形例により線条体を支持した状態を示す一部を破断した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る線条体支持装置1およびロボット100について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る線条体支持装置1は、図1に示されるように、ロボット100の外表面に沿ってケーブル等の線条体200を配線する際に用いる装置であり、図2から図4に示されるように、本体部材2と、固定部材(固定部)3とを備えている。
図1において、ロボット100の一例として6軸垂直多関節型ロボットを例示しているが、これに限定されるものではない。
【0009】
図1に示す例では、線条体200は、ロボット100のアーム110の側面に固定された第1線条体固定部111と、ロボット100の手首120の先端に装着されたツールSに固定された第2線条体固定部121においてそれぞれ固定されている。また、線条体200は、ロボット100のアーム110の先端近傍において本実施形態に係る線条体支持装置1により支持されている。
【0010】
すなわち、図1の例では、線条体支持装置1と第2線条体固定部121との間に配置されている線条体部分201が、手首120の動作によって変形する可動の線条体部分となっている。
また、第1線条体固定部111と線条体支持装置1との間の線条体部分202は、図1に示されるように、若干の弛みが与えられている。
【0011】
本体部材2は、図3に示されるように、ロボット100の表面に固定されるベース部4と、線条体200を支持する支持部(固定部)5と、ベース部4と支持部5とを接続する接続部6とを備えている。ベース部4は、例えば、ロボット100の外表面に設けられた座面101に密着させられる密着面4aと、座面101に設けられたネジ孔102に締結されるボルト8を貫通させる貫通孔7とを備えている。
【0012】
支持部5は、固定部材3を取り付けるボルト10を締結可能なネジ孔9を備えている。固定部材3はボルト10を貫通させる貫通孔11を備え、支持部5との間に線条体200を挟んで固定する板金12およびスポンジ等の弾性体13により構成されている。本体部材2の支持部5と固定部材3とにより、線条体200に固定される固定部が構成されている。
【0013】
接続部6は、ベース部4と支持部5との間に配置される柱状部分であって、ベース部4および支持部5と同一材質により一体的に構成されている。
接続部6には離脱機構14が設けられている。
【0014】
離脱機構14は、例えば、接続部6の一部に設けられ、線条体200に閾値を超える力が作用したときに破断する程度の横断面積まで縮小させたくびれ(易破断部)15により構成されている。
閾値は、線条体200が損傷を受けずに耐えることができる許容引張力、許容せん断力および許容捻じり力の内の最小値以下に設定されている。
【0015】
このように構成された本実施形態に係る線条体支持装置1の作用について以下に説明する。
ロボット100の動作により、アーム110およびツールSに固定されている線条体200も移動する。特に、線条体支持装置1と第2線条体固定部121との間の線条体部分201は、手首120の動作によって変形する可動の線条体200であるため、移動範囲が広く、周辺装置等に引っ掛かる可能性が高い。
【0016】
線条体200が周辺装置等に引っ掛かると、線条体200に大きな引張力、せん断力あるいは捻じり力等の力が作用する。
線条体200が周辺装置等に引っ掛かることなくロボット100が動作している通常の状態では、線条体200に作用する力が所定の閾値よりも小さく、この場合には、接続部6が破断することなく、本体部材2が、ベース部4と支持部5とを接続した状態に維持される。これにより、線条体支持装置1の位置を通過する所望のルートに線条体200を維持することができる。
【0017】
一方、線条体200が周辺装置に引っ掛かった場合には、線条体200に閾値以上の大きな力が作用するので、図5に示されるように、接続部6がくびれ15の位置で破断し、ベース部4と支持部5との接続が切り離される。すなわち、線条体支持装置1の位置における拘束が解除されることにより、線条体200の移動の自由度が増大し、線条体200に作用していた力が瞬時に軽減されるので、線条体200の損傷を防止することができる。
【0018】
この場合において、本実施形態に係る線条体支持装置1は、通常の状態において線条体200をロボット100の表面に近接する所望のルートに固定して支持することができる。また、本実施形態に係る線条体支持装置1は可動部を有しないので、ロボット100の表面からの突出量が十分に小さく抑えられている。したがって、狭いスペースにアーム110を挿入して行う作業においても、線条体支持装置1および線条体200が外部の物体と干渉することを効果的に防止することができるという利点がある。
【0019】
本体部材2の接続部6における離脱機構14の作動により、接続部6が破断した場合には、ボルト8を取り外すことにより、本体部材2のみを交換するだけで、線条体200をアーム110の同じ位置に再度支持させることができる。また、離脱機構14をくびれ15により構成することにより、線条体200にかかる力が引張力、せん断力あるいは捻じり力のいずれの場合であってもその許容値以下の力で破断させることができる。したがって、線条体200にかかるあらゆる力から線条体200を保護することができるという利点がある。
【0020】
なお、本実施形態においては、本体部材2のベース部4、支持部5および接続部6を同一材質により一体的に製造することとしたが、これに代えて、接続部6の材質をベース部4および支持部5よりも強度の低い材質によって構成してもよい。すなわち、上記実施形態においては、離脱機構14として、くびれ15によって接続部6に局所的に破断し易い易破断部を採用したが、これに代えて、強度の低い材質によって易破断部を構成してもよい。
【0021】
また、本実施形態においては、くびれ15によって局所的に強度を低減した離脱機構14を採用した。これに代えて、図6に示されるように、本体部材2をベース部材(ベース部)16と支持部材(固定部)17とにより構成し、ベース部材16に嵌合孔(凹部)18、支持部材17に嵌合孔18に嵌合して摩擦により嵌合状態に維持される嵌合部(凸部)19を設けてもよい。ベース部材16に凸部19、支持部材17に凹部18を設けてもよい。
【0022】
これにより通常の運転状態では、嵌合部19を嵌合孔18から引き抜く方向に作用する力は両者間の静止摩擦よりも小さく、嵌合部19が嵌合孔18に嵌合状態に維持される。一方、線条体200に嵌合部19を嵌合孔18から引き抜く方向に静止摩擦力を越える力が作用すると、図7に示されるように、嵌合孔18から嵌合部19が引き抜かれることによって、ベース部材16から支持部材17が切り離される。これにより、線条体200が損傷を受けることが防止される。この構造によれば、本体部材2を再利用することができる。
【0023】
また、嵌合孔18と嵌合部19との嵌合に代えて、図8に示されるように、ベース部材16に、線条体200の長さ方向に延びるアリ溝(凹部)20を設け、支持部材17にアリ溝20に係合するアリ状突起(凸部)21を設けてもよい。これにより、図9に矢印によって示すように、線条体200に長手方向に沿う引張力が作用するとアリ状突起21がアリ溝20から外れ、ベース部材16から支持部材17を切り離すことができる。アリ溝20とアリ状突起21は逆でもよい。
【0024】
また、図10に示されるように、ベース部材16または支持部材17の一方に永久磁石22を設け、他方に、磁気吸引力により永久磁石22に吸着される磁性部材23を配置してもよい。磁性部材23は永久磁石でもよい。
線条体200にかかる閾値以上の力が、磁気吸引力に抗してベース部材16から支持部材17を引き離す方向に作用することにより、ベース部材16から支持部材17を離脱させ、線条体200を保護することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、本体部材2の支持部5との間に線条体200を挟んで固定する板金12および弾性体13からなる固定部材3を採用したが、支持部5に線条体200を縛り付けるナイロンバンド等の結束具を採用してもよい。また、固定部材3を支持部5にボルト10により締結したが、これに代えて接着剤により固定してもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る線条体支持装置1を備えたロボット100と、ロボット100を制御する制御装置とを備えるロボットシステムにおいて、離脱機構14が作動してベース部4と支持部5とが分離したことを検出するセンサ(検出部)を設けてもよい。そして、検出部により、分離したことが検出された場合には、制御装置が、ロボット100の動作を中断させることにしてもよい。
センサとしては、接触式あるいは非接触式のいずれのものでもよい。また、離脱機構14によりベース部4と支持部5とが分離すると断線するケーブルを設けて、分離を検出してもよい。また、モータの電流値変動あるいはトルクセンサによるトルク値の変動から離脱機構14の作動を検出してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 線条体支持装置
3 固定部材(固定部)
4 ベース部
5 支持部(固定部)
14 離脱機構
15 くびれ(易破断部)
16 ベース部材(ベース部)
17 支持部材(固定部)
18 嵌合孔(凹部)
19 嵌合部(凸部)
20 アリ溝(凹部)
21 アリ状突起(凸部)
22 永久磁石
23 磁性部材
100 ロボット
200 線条体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10