IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インストルメントパネル 図1
  • 特許-インストルメントパネル 図2
  • 特許-インストルメントパネル 図3
  • 特許-インストルメントパネル 図4A
  • 特許-インストルメントパネル 図4B
  • 特許-インストルメントパネル 図5A
  • 特許-インストルメントパネル 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】インストルメントパネル
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20231011BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20231011BHJP
【FI】
B60K37/00 B
B60R21/205
B60K37/00 A
B60K37/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020139501
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035287
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木下 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田門 昌之
(72)【発明者】
【氏名】田中 研
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 智士
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06443484(US,B2)
【文献】米国特許第06135489(US,A)
【文献】特開昭61-043563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグを覆うように自動車に取り付けられるインストルメントパネルであって、
前記エアバッグに対向する位置に第1切込が設けられているパネル本体と、
前記パネル本体の前記第1切込を含む範囲を覆っているとともに前記第1切込に沿って第2切込が設けられている革製または布製の装飾シートと、
前記装飾シートを前記パネル本体に留める留め具と、
を備えており、
前記留め具は、
前記第2切込を覆うカバー板と、
前記カバー板の裏面から延びており、前記第1切込と前記第2切込を通過して前記パネル本体に固定されるアンカーと、
を備えており、
前記アンカーは、前記カバー板の裏面から垂直に延びている基部と、前記基部の先から前記カバー板に平行に延びている先端を備えたL字形状を有しており、
前記先端が前記第1切込と前記第2切込を通過した後に前記留め具が90度回転して前記カバー板が前記装飾シートに密着するとともに、前記先端が前記パネル本体の裏面に平行になり、かつ、当接する、
インストルメントパネル。
【請求項2】
前記カバー板の前記裏面から複数の前記アンカーが延びている、請求項1に記載のインストルメントパネル。
【請求項3】
前記装飾シートは複数の前記第2切込を有しており、それぞれの前記第2切込にそれぞれの前記アンカーが通過している、請求項2に記載のインストルメントパネル。
【請求項4】
前記先端が前記パネル本体の裏面に溶着されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のインストルメントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、エアバッグを覆うように自動車に取り付けられるインストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、インストルメントパネルの本体(パネル本体)の表面に革製(あるいは布製)のシート(装飾シート)が取り付けられているインストルメントパネルが開示されている。インストルメントパネルの内側にはエアバッグが配置されている。パネル本体のエアバッグに対向する位置には切込(スリット)が設けられている。膨張するエアバッグに押されてパネル本体が切込に沿って破断する。切込を設けることでエアバッグが円滑に膨張する。エアバッグの膨張を妨げないように、革製(あるいは布製)の装飾シートにも切込(スリット)が設けられている場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-210230号公報
【文献】特開2014-113883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
革製(あるいは布製)の装飾シートに切込を設けると見栄えが悪くなるおそれがある。本明細書は、革製(あるいは布製)の装飾シートがエアバッグの膨張を阻害することなく、また、見栄えを損なうことなく装飾シートをパネル本体に固定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、エアバッグを覆うように自動車に取り付けられるインストルメントパネルを開示する。インストルメントパネルは、エアバッグに対向する位置に第1切込が設けられているパネル本体と、第1切込を覆っている革製または布製の装飾シートを備える。装飾シートには第2切込が設けられている。第2切込はパネル本体の第1切込に沿っている。本明細書が開示するインストルメントパネルは留め具を備える。留め具は、第2切込を覆うカバー板と、カバー板の裏面から伸びているアンカーを備える。アンカーは、第1切込と第2切込を通過してパネル本体に固定される。アンカー(留め具)が装飾シートをパネル本体に固定する。
【0006】
本明細書が開示するインストルメントパネルは、装飾シートに切込(第2切込)を設けるとともに、第2切込を留め具で覆う。装飾シートの切込(第2切込)は留め具で覆われ、装飾シートの見栄えが損なわれない。また、膨張するエアバッグに押された装飾シートは第2切込に沿って破断する。装飾シートがエアバッグの膨張を妨げることがない。第1切込と第2切込が破断すると留め具も外れる。留め具がエアバッグの膨張を妨げることもない。なお、留め具のカバー板が装飾シートをパネル本体に押し付けるので、装飾シートが緩むことも防止される。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インストルメントパネルの正面図である。
図2】助手席前のインストルメントパネルの拡大図である。
図3】インストルメントパネルの分解図である。
図4A図1のIV-IV線に沿った断面図である(留め具装着前)。
図4B図1のIV-IV線に沿った断面図である(留め具装着後)。
図5A】変形例のインストルメントパネルの断面図である(留め具装着前)。
図5B】変形例のインストルメントパネルの断面図である(留め具装着後)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して実施例のインストルメントパネル10を説明する。図1は、インストルメントパネル10の正面図である。インストルメントパネル10は、自動車2のフロントガラスの下、運転席19Dと助手席19Pの前に配置される内装部品である。狭義の意味では、「インストルメントパネル」とは、運転席19Dの前の表示装置とスイッチを支持するカバーを意味する。本明細書における「インストルメントパネル」は、広義の意味であり、自動車の右フロントピラー13Rから左フロントピラー13Lまで延びており、運転席19Dと助手席19Pの前に配置されている内装部品を意味する。「インストルメントパネル」は、「ダッシュボード」と呼ばれることもある。
【0010】
インストルメントパネル10は、樹脂で作られたパネル本体11と、パネル本体11を覆っている装飾シート20と、装飾シート20をパネル本体11に留める留め具30を備えている。装飾シート20は、助手席19Pの前方にて、パネル本体11の一部を覆っている。
【0011】
インストルメントパネル10は、助手席19Pの前にて、エアバッグ3(助手席エアバッグ)を覆っている。図2に、助手席前のインストルメントパネル10の拡大図を示す。図3に、図2の範囲におけるインストルメントパネル10の分解図を示す。
【0012】
エアバッグ3は、バッグ本体、バッグ本体を収容するケース、バッグを膨張させるインフレータなどを含むが、図2図3では、エアバッグ3を簡略に描いてある。ケースの上面にエアバッグ本体が膨張するときに開くドアが設けられているが、ドアの図示も省略した。エアバッグ3は、インストルメントパネル10の内側に配置されている不図示のインパネクロスビーム(インパネリインフォースメント)に支持されている。エアバッグドアは、インストルメントパネル10のパネル本体11の裏面に支持される場合もある。
【0013】
パネル本体11には、エアバッグ3に対向する位置に切込(第1切込12)が設けられている。第1切込12は、エアバッグ3が膨張する際にパネル本体11が円滑に開くように設けられている。すなわち、膨張するエアバッグ3(正確にはエアバッグドア)に圧迫されたパネル本体11は第1切込12に沿って破断する。
【0014】
パネル本体11の一部は、装飾シート20で覆われている。装飾シート20は、パネル本体11の第1切込12を含む範囲を覆っている。装飾シート20は、革あるいは布で作られており、自動車2の車室の見栄えを良くするために備えられる。装飾シート20にも切込(第2切込21)が設けられている。第2切込21も、第1切込12と同様に、エアバッグ3が膨張する際に装飾シート20が円滑に開くように設けられている。膨張するエアバッグ3に圧迫された装飾シート20は、第2切込21に沿って破断する。
【0015】
第2切込21は、第1切込12に沿って設けられている。図3に示されているように、一つの第1切込12に沿って複数の第2切込21が設けられている。
【0016】
装飾シート20の中央部分(エアバッグ3に対向する部分)は、留め具30でパネル本体11に固定される。装飾シート20の縁は接着剤でパネル本体11に固定される。留め具30は、第2切込21を覆うカバー板31と、カバー板31の裏面から延びている複数のアンカー32を備えている(図2図3参照)。図2には、アンカー32を横断する断面が見えている。図2図3から理解されるように、アンカー32は、装飾シート20の第2切込21とパネル本体11の第1切込12を通過し、パネル本体11に固定される。アンカー32はL字形状を有しており、L字の先端32aがパネル本体11の裏面に溶着される。
【0017】
カバー板31が装飾シート20の第2切込21を覆うことで、第2切込21を乗員から隠す。カバー板31が第2切込21を隠すことで、装飾シート20の見栄えが保たれる。
【0018】
先に述べたように、エアバッグ3が膨張する際、パネル本体11は第1切込12に沿って破断し、装飾シート20は第2切込21に沿って破断する。留め具30のアンカー32が通過している第1切込12と第2切込21がともに破断するので、エアバッグ3が膨張するとき留め具30も円滑に外れる。留め具30はエアバッグ3の膨張を妨げない。
【0019】
留め具30のカバー板31が装飾シート20をパネル本体11に押し付けるので、装飾シート20が緩むこともない。
【0020】
留め具30は複数のアンカー32を備えており、それぞれのアンカー32は、装飾シート20の複数の第2切込21の夫々を通っている。複数のアンカー32が装飾シート20をしっかりと固定する。装飾シート20には長い切込を設けず、短い複数の切込(第2切込21)を設けることで、装飾シート20に皺が生じ難い。
【0021】
図1のIV-IV線に沿ったインストルメントパネル10の断面を図4A、4Bに示す。図4Aは、留め具30の装着前の断面を示しており、図4Bは、留め具30を装着した後の断面を示している。先に述べたように、留め具30のアンカー32はL字形状を有している。図4Aに示すように、アンカー32を装飾シート20の第2切込21に差し込む際、アンカー32のL字の先端32aを第2切込21に垂直に向け、アンカー32を第2切込21(及び第1切込12)に差し込む。
【0022】
アンカー32を差し込んだ後、留め具30を90度回転させる(図4Aの矢印参照)。そうすると、図4Bに示すように、アンカー32の先端32aがパネル本体11の裏面に当接するとともに、カバー板31が装飾シート20に密着する。図4Bの破線30aは、差し込む前の留め具を示している。
【0023】
最後に、アンカー32の先端32aをパネル本体11の裏面に溶着させる。図4Bの矢印Wが示す箇所が、溶着箇所を示している。L形状のアンカー32を有する留め具30は、取り付けが容易であり、外れ難い。
【0024】
以上説明したように、カバー板31とアンカー32を有する留め具30を採用することで、エアバッグ3の膨張を妨げることなく、また、見栄えを悪くすることもなく、革製(あるいは布製)の装飾シート20をパネル本体11に固定することができる。
【0025】
図5A図5Bを参照して変形例のインストルメントパネル110を説明する。図5Aは、留め具30を装着する前のインストルメントパネル110の断面を示しており、図5Bは、留め具30を装着した後のインストルメントパネル110の断面を示している。
【0026】
変形例のインストルメントパネル110では、装飾シート120は窪み123を備えており、第2切込21は窪み123の底に設けられている。なお、装飾シート120に窪み123を形成するために、パネル本体111も、装飾シート120の窪み123に対応するように窪みを有している。
【0027】
窪み123は、第2切込21の長手方向と平行な縁123aを有している。また、窪み123の深さは、留め具30のカバー板31の厚みと同じである。窪み123は、留め具30のカバー板31よりも大きい面積を有している。
【0028】
留め具30のアンカー32の先端32aを第2切込21(および第1切込12)に差し込み、留め具30を90度回転させる(図5A図5B)。図5Bに示すように、留め具30のカバー板31は、装飾シート120の窪み123に収まる。カバー板31の縁は、窪み123の縁123aと隣り合い、装飾シート120とカバー板31が面一となる。装飾シート120とカバー板31が面一となることで、留め具30の付近の見栄えが良くなる。
【0029】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0030】
2:自動車、 3:エアバッグ、 10、110:インストルメントパネル、 11、111:パネル本体、 12:第1切込、 20、120:装飾シート、 21:第2切込、 30:留め具、 31:カバー板、 32:アンカー、 123:窪み
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B