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特許7365241サンプルの分析方法、分析装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】サンプルの分析方法、分析装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20231012BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20231012BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N21/59 Z
G01N21/64 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019572517
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FI2018050511
(87)【国際公開番号】W WO2019002688
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】20175607
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519459399
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ ホールディングス プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】エクリン カティヤ
(72)【発明者】
【氏名】ファラレロ アドヤリー
(72)【発明者】
【氏名】スヴァント トンミ
(72)【発明者】
【氏名】ライティオ マリカ ジェイ
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-507518(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205736(WO,A1)
【文献】特表2010-527469(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080187(WO,A1)
【文献】特開2013-152452(JP,A)
【文献】特開2004-286666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 21/59
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の別個のサンプル(3)を保持するように構成されたプラットフォーム(1)のサンプル容器(2)内に配列された1つ以上のサンプル(3)を分析する方法であって、前記方法が、
選択的に、電磁放射を使用して前記サンプル(3)を照射するステップと、
各サンプル(3)によって透過または放出された電磁放射を測定するステップ(201)と、
各サンプル(3)の前記測定を所定の間隔で複数回繰り返すステップ(202)と、
各測定に基づいて、複数のセル(23)を含む結果のマトリックスを形成するステップであって、前記結果のマトリックスの各セル(23)が、前記プラットフォーム(1)のサンプル容器(2)に対応し、各サンプル(3)の測定値が、前記結果のマトリックスの前記各セル(23)の視覚特性を決定するための入力として使用され、前記視覚特性が前記セル(23)の色及び透明度であり、各セル(23)の透明度が、前記各サンプル(3)の測定値に基づいて決定され、前記測定値が前記各サンプル(3)によって透過または放出された電磁放射を表しており、各セル(23)の色が、前記サンプル(3)により放出された電磁放射の波長に基づいて決定されるか、又は、電磁放射を使用して前記サンプル(3)を照射した場合は前記サンプル(3)を照射するために使用された前記電磁放射の波長に基づいて決定される、形成するステップ(203)と、
前記結果を時間に関して連続したマトリックスとして表示するステップ(204)と、を含む、方法。
【請求項2】
電磁放射を測定する前記ステップ(201)において、前記サンプル(3)の吸光度値が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、380nm~750nmの波長範囲内に入る設定された波長の周囲で最大20nmの帯域幅を有する電磁放射を使用して、前記サンプル(3)を照射するステップ(101)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記設定された波長が、前記セル(23)の前記視覚特性を決定するためのさらなる入力として使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各セル(23)の色が、前記設定された波長に対応する色の補色になるように選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル(3)の発光が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル(3)の蛍光が測定される、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル(3)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が監視される、請求項1、6、または7に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプル(3)によって放出される前記電磁放射の波長が、前記セル(23)の前記視覚特性を決定するためのさらなる入力として使用される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各セル(23)の前記色は、前記色に対応する波長が前記サンプル(3)によって放出される前記電磁放射の波長から20nm以内になるように選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各セル(23)の前記色は、前記色が人間の目によって知覚される前記サンプル(3)の前記色に対応するように選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記セル(23)の前記透明度が、アルファブレンディングによって設定され、前記セル(23)のアルファチャネル値が、前記測定値と正の相関を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記測定値が、連続した測定間の前記測定値の変化を示すビデオファイルを作成するために使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プラットフォーム(1)が、マイクロプレートであり、前記サンプル容器(2)が、前記マイクロプレートのウェルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された、分析装置(10)。
【請求項16】
分析装置(10)を動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記プログラムがコンピュータによって実行されると、分析装置(10)に請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による複数のサンプルを受容するように構成されたプラットフォームのサンプル容器内に配列された1つ以上のサンプルを分析する方法に関する。本発明はまた、分析装置、および他の独立請求項で定義される分析装置を動作させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレート(例えば、マイクロタイタープレート、マイクロウェルプレート、マルチウェルプレート、またはマルチウェルとも呼ばれる)は、複数のウェル、すなわち行および列に配列されたキャビティを含む平坦なプレートである。ウェルは、サンプルを受容し、小さな試験管として機能するように構成されている。典型的なマイクロプレートは、6、24、96、384、または1536のウェルを含むが、より大きなマイクロプレートも存在する。ウェルは長方形のマトリックスに配列され、辺の比は典型的には、2:3である。サンプルは通常、液体であるが、マイクロプレートは、例えば、粉末の形態のサンプルにも使用され得る。マイクロプレートは典型的には、プラスチック材料で作製されている。プレートは、透明、不透明、または色付きであり、例えば白色または黒色であってもよい。ただし、すべてのマイクロプレートが必ずしもすべての用途に適しているわけではない。
【0003】
マイクロプレートは、ライフサイエンスで広く使用されている。サンプルは、マイクロプレートのウェル内に配置され、マイクロプレートリーダーで分析される。マイクロプレートリーダーは、マイクロプレート内のサンプルの生物学的、化学的、または物理的な事象を検出することができる。マイクロプレートリーダーは、吸光度または発光などの異なる現象に基づき得る。
【0004】
吸光度検出は、異なる種類のアッセイに使用され得る。吸光度検出では、分光光度計を使用してサンプルの吸光度(光学密度)を測定する。吸光度の変化は、サンプル中の何らかの生物学的、化学的、または物理的な変化と相関している。吸光度ベースのアッセイは、他の理由の中でも、しばしばサンプル中に可視的な色の変化もあることから人気がある。
【0005】
蛍光は発光の一形態であり、光または他の電磁放射を吸収した物質による光(光子)の放出に基づいている。エネルギーの吸収は、分子の軌道電子をより高い電子状態に励起し、基底状態への緩和は光子を放出する。蛍光測定では、サンプルによって吸収された励起光でサンプルを照射し、サンプルによって放出された光を検出器で測定する。他のアッセイでは、例えば、サンプル内の化学反応(化学発光)の結果として、発光放出が作成される。
【0006】
蛍光色素分子は、ある波長の光エネルギーを吸収し、それに応じて、別のより長い波長の光エネルギーを再放出する。各蛍光色素分子は、光を吸収する波長の明確な範囲、および光を放出する波長の別の明確な範囲を有する。この特性は、それらを分析機器および分析技術による生物学的産物の特定の検出に使用できるようにする。
【0007】
マイクロプレートは、エンドポイントアッセイと動態アッセイとの両方に使用され得る。エンドポイントアッセイでは、各サンプルは、1回の測定で分析され、この測定は、サンプル内で特定の反応を起こすことが可能になった後に実行される。動態検査では、特定の測定が所定の時間間隔で繰り返される。動態検査では、大量のデータが収集され得る。また、動態検査は、吸光度、蛍光、発光などの異なる現象に基づき得る。動態検査の結果は典型的には、曲線として表示され、測定信号は、時間の関数として表される。特に大きなマイクロプレートの場合、個々のサンプルの挙動を解釈することは困難である。
【0008】
同様の問題は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの他の分析技術でも発生する。PCRは、特定のDNA配列の多数のコピーを生成するために使用される。プロセスの進行は、蛍光を利用することによって監視することができる。サンプルは、容器またはキャビティを含む液体に、またはマイクロプレート形式で配列することができ、電磁放射の形態の励起エネルギーは、サンプルに方向付けられる。サンプルから放出された電磁放射は、検出器によって監視される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、複数の別個のサンプルを受容するように構成されたプラットフォームのサンプル容器内に配列された1つ以上のサンプルを分析する改善された方法を提供することである。本発明による方法の特徴は、請求項1に記載されている。本発明の別の目的は、改善された分析装置を提供することである。本発明のさらに別の目的は、分析装置を動作させるための改善されたコンピュータプログラムを提供することである。
【0010】
本発明による方法は、各サンプルによって透過または放出された電磁放射を測定するステップと、測定を所定の間隔で複数回繰り返すステップと、各測定に基づいて、複数のセルを含む結果マトリックスを形成するステップであって、結果マトリックスの各セルが、プラットフォームのサンプル容器に対応し、各サンプルの測定値が、結果マトリックスのそれぞれのセルの視覚特性を決定するための入力として使用される、形成するステップと、結果を時間に関して連続したマトリックスとして表示するステップと、を含む。
【0011】
本発明による方法を用いると、動態アッセイの結果をより確実に解釈することができる。これは、多数のサンプルを分析する場合に特に重要かつ便利である。例えば、384以上のウェルなどの多数のウェルを有するマイクロプレートをサンプルプラットフォームとして使用する場合、ユーザーインターフェイスの限られた空間では結果を数値として簡単に示すことができない。結果マトリックスの視覚特性を決定するための入力として測定値を使用すると、一度に大量のデータをディスプレイ上に示すことができ、分析装置のユーザーは、結果が信頼できそうなものであるかどうかを迅速に検出することができ、修正されたパラメータを用いた分析を繰り返すか、または次のサンプルセットの分析に進むことができる。
【0012】
サンプル容器は、開いた穴または閉じたキャビティであり得る。それらは、マイクロプレートのウェルなどのプラットフォームの不可欠な部分、またはラック内の試験管などのプラットフォームに挿入された別個の容器のいずれかである。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、測定ステップにおいて、サンプルの吸光度値が測定される。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、この方法は、380nm~750nmの波長範囲内に入る設定された波長の周囲で最大20nmの帯域幅を有する電磁放射を使用して、サンプルを照射するステップを含む。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、設定された波長は、セルの視覚特性を決定するためのさらなる入力として使用される。セルの視覚特性を決定するための入力として設定された波長を使用することによって、結果マトリックスは、マイクロプレートまたは他のプラットフォーム内のサンプルのセットによりよく似るように構成することができ、方法のユーザーは結果をより簡単に解釈することができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、各セルの色は、その色が人間の目によって知覚されるサンプルの色に対応するように選択される。したがって、各セルの色は、設定された波長に対応する色の補色になるように選択される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、サンプルの発光の量または強度が測定される。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、サンプルの蛍光の量または強度が測定される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、サンプルによって放出された電磁放射の波長は、セルの視覚特性を決定するためのさらなる入力として使用される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、各セルの色は、セルの色に対応する波長が、サンプルによって放出された電磁放射の波長から20nm以内になるように選択される。各セルの色は、サンプルから放出された電磁放射の色に対応し得る。セルの視覚特性を決定するための入力として放出波長を使用することによって、結果マトリックスは、マイクロプレートまたは他のプラットフォーム内のサンプルのセット内の蛍光色素分子の挙動をよりよく模倣するように構成することができ、方法のユーザーは結果をより簡単に解釈することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、各セルの透明度は、それぞれのサンプルの測定値に基づいて決定される。各セルの透明度は測定値と相関しているため、ユーザーは、興味深いサンプルを簡単に見つけることができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、セルの透明度は、アルファブレンディングによって設定され、セルのアルファチャネル値は、測定値と正の相関を有する。したがって、測定値がより高いサンプルは、ディスプレイ上の透明度がより低いセルとして示される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、測定値は、連続した測定間の測定値の変化を示すビデオファイルを作成するために使用される。
【0024】
プラットフォームは、マイクロプレートおよびマイクロプレートのサンプル容器ウェルであり得る。
【0025】
本発明による分析装置は、上記で定義された方法を実施するように構成される。装置は、例えば、マイクロプレートリーダーまたはPCR分析器であり得る。
【0026】
本発明によるコンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータによって実行されると、マイクロプレートリーダーまたはPCR分析器などの分析装置に上記で定義された方法を実行させる命令を含む。
【0027】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】マイクロプレートの一例を示す。
図2】マイクロプレートリーダーの主な要素を示す。
図3】フロー図としてマイクロプレートリーダーの動作の一例を示す。
図4】分光光度計の概略図を示す。
図5a】結果マトリックスの例を示す。
図5b】結果マトリックスの例を示す。
図5c図5aおよび図5bの結果マトリックスに対応するマイクロプレートを示す。
図6】測定された吸光度値を視覚化するために使用される色を決定するための図を示す。
図7】本発明による方法をフロー図として示す。
図8】マイクロプレートリーダーの動作の別の例をフロー図として示す。
図9】PCR監視のための配列を概略的に示す。
図10】結果マトリックスの色を決定するためのステップの一例をフロー図として示す。
図11】結果マトリックスのセルの透明度を決定するためのステップの一例を示す。
図12】180°の色相を有する色の補色を決定するステップを示す。
図13a】結果マトリックスのさらなる例を示す。
図13b】結果マトリックスのさらなる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
マイクロプレートは、ライフサイエンスで広く使用されている。図1は、マイクロプレート1の例を示している。マイクロプレートは、複数のウェル2、すなわち、行および列に配列されたキャビティを含む。ウェル2は、サンプルを受容し、小さな試験管として機能するように構成されている。ウェルの底は、平坦、円形、またはV字型であり得る。図1のマイクロプレート1は、8行および12列に配列された96のウェルを含む。マイクロプレート1の他の一般的なサイズは、6、24、384、または1536のウェルを含むが、他のサイズも利用可能である。側面間の比は、通常、2:3である。通常、サンプルは液体であるが、マイクロプレート1は、粉末またはその他の形態のサンプルにも使用され得る。
【0030】
マイクロプレート1のウェル2内に配置されたサンプルは、マイクロプレートリーダーを使用して分析され得る。マイクロプレートリーダーは、マイクロプレート1内のサンプルの生物学的、化学的、または物理的な事象を検出することができる。マイクロプレートリーダーは、吸光度または発光などの異なる現象に基づき得る。吸光度検出は一般的な技術であり、多くの異なる種類のアッセイに使用され得る。吸光度検出では、分光光度計を使用してサンプルの吸光度(光学密度)を測定する。サンプルは、しばしば色付きである。サンプルの色の色相または強度の変化は、サンプル中の何らかの生物学的、化学的、または物理的な変化と相関している。サンプルの色に可視変化があるため、吸光度ベースのアッセイが一般的である。以下では、吸光度測定のためのマイクロプレートリーダーの使用について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、例えば、蛍光または他の形態の発光に基づくアッセイにも適している。フォトルミネセンスに基づく異なるサンプル測定方法は、先行技術から知られており、サンプルからの光の放出は、サンプルへの光の励起により得られる。サンプルによって放出される光が測定されると、サンプルの異なる特性が決定され得る。
【0031】
図2は、典型的なマイクロプレートリーダー10の主な構成要素を概略的に示している。マイクロプレートリーダー10は、吸光度ベースのアッセイ、発光ベースのアッセイ、または蛍光ベースのアッセイなどの特定の種類のアッセイ用に構成され得る。マイクロプレートリーダー10は、例えば、分光蛍光計またはマルチモード装置であり得、これは、上述のすべてのアッセイなどの異なる目的に適している。マイクロプレートリーダー10は、例えば、AlphaScreen(増幅発光近接ホモジニアスアッセイスクリーン)測定にも使用され得る。AlphaScreen測定ならびに光化学測定技術およびLOCI(発光酸素チャネリングイムノアッセイ)は、例えば、Ullmanらの米国特許第6,406,913号に記載されている。
【0032】
マイクロプレートリーダー10は、マイクロプレート1のウェル2内に配列されたサンプルを分析するために使用され得る。典型的に、吸光度ベースのアッセイで使用されるマイクロプレート1は透明である。発光ベースまたは蛍光ベースのアッセイでは、サンプル間のクロストークを最小限に抑え、信号強度を高めるために不透明なプレートも、しばしば使用される。マイクロプレートリーダー10は、マイクロプレート1内に配列されたサンプルによって透過または放出された電磁放射を測定するように構成されている。例えば、マイクロプレートリーダー10は、サンプルの吸光度値を決定するように構成され得る。マイクロプレートリーダー10は、特定の波長または波長範囲の電磁放射を産生することができる照射手段11を含む。電磁放射は、可視光(波長範囲約380~750nm)、紫外光(10~380nm)、または赤外光(750nm~1mm)であり得る。照射手段11は、マイクロプレート1のウェル2内のサンプルを照射するように構成されている。照射手段11は、必ずしもマイクロプレートリーダー10の必須部分ではない。例えば、生物発光などの化学発光を測定するためにマイクロプレートリーダー10が使用される場合、照射手段11は不要である。
【0033】
マイクロプレートリーダー10は、検出手段13をさらに含む。検出手段13は、サンプルによって透過または放出された電磁放射を測定するように構成されている。吸光度測定の場合、検出手段13は、マイクロプレート1のウェル2内のサンプルを透過した放射束を測定するように構成されている。蛍光または発光測定などの他の種類の測定では、検出手段13は、サンプルによって放出される電磁放射を測定することができる。マイクロプレートリーダー10は、異なる測定のための2つ以上の異なる検出手段13を含むことができる。
【0034】
マイクロプレートリーダー10は、入力手段14を介して制御される。入力手段14は、例えば、操作ボタン、キーボード、および/またはタッチディスプレイを含むことができる。入力手段14を介して、マイクロプレートリーダー10のユーザーは、マイクロプレートリーダー10の動作を制御し、パラメータを調整し、かつ/またはマイクロプレートリーダー10の設定を変化させることができる。分析の結果は、ディスプレイ12上に表示され得る。ディスプレイ12は、マイクロプレートリーダー10の一体部分であっても、マイクロプレートリーダー10に接続された外部ディスプレイであってもよい。入力手段14、照射手段11、検出手段13、およびディスプレイ12は、中央処理装置(CPU)15と通信する。入力手段14およびディスプレイ12は、CPU15に直接接続される必要はない。マイクロプレートリーダー10は、PCなどの外部汎用コンピュータにインストールされたソフトウェアを介して制御することもできる。したがって、入力手段14は、例えば、外部コンピュータに接続されたキーボードを含むことができる。また、ディスプレイ12は、外部コンピュータに接続することもできる。すべての接続は、有線または任意の無線手段で実装されてもよく、外部コンピュータは、リモートサーバーまたはクラウドサーバーであってもよい。
【0035】
マイクロプレートリーダー10の動作の例は、図3のフロー図として示されている。図3の例では、マイクロプレートリーダー10は、吸光度測定に使用される。動作の最初のステップで、所望の波長が設定される101。設定された波長は、マイクロプレート1のウェル2内に配置されたサンプルを照射するための動作の第2のステップで使用される102。ユーザーは、入力手段14を介して所望の波長を選択することができる。典型的に、正確な波長はユーザーによって選択されるが、実際には、マイクロプレートリーダー10は、特定の帯域幅の電磁放射を産生することができる。通常、狭い帯域幅が優先される。許容される帯域幅は、用途によって異なる。場合によっては、20nmの帯域幅で十分である。いくつかの用途では、帯域幅は、最大10nmである必要がある。いくつかの用途では、帯域幅は、2.5nmを超えてはならない。
【0036】
吸光度および蛍光測定では、サンプルの照射に使用される波長の選択は通常、吸光度最大値が発生する波長に基づいている。「吸光度最大値」という表現は、電磁放射の波長を指し、この波長では、吸光度値にピークがあり、すなわち、隣接する波長よりも少ない波長の放射がサンプルを通過する。サンプルは、いくつかの局所的な吸光度最大値がある。例えば、局所的な吸光度最大値は、紫外光、可視光、および赤外光の波長範囲で見られる。可視光の波長範囲にいくつかの局所的な吸光度最大値がある可能性もある。選択された波長は、典型的に、局所的な吸光度最大値に対応するか、または少なくとも局所的な吸光度最大値に近くなる。例えば、選択された波長は、局所的な吸光度最大値の20nm以内であり得る。一例によれば、選択された波長は、局所的な吸光度最大値の10nm以内にある。別の例によれば、選択された波長は、局所的な吸光度最大値の2.5nm以内にある。サンプルを照射するための特定の波長範囲が選択される場合、波長範囲は、好ましくは、局所的な吸光度最大値を包む。典型的に、ユーザーは局所的な吸光度最大値がどこで発生するかを知っており、ユーザーが所望する波長または波長範囲を設定することができる。マイクロプレートリーダー10は、吸光度最大値を決定するようにも構成され得る。結果は、典型的に、波長の関数として吸光度の量を示す、吸光度曲線として示される。次に、ユーザーは、機器によって提示された結果に基づいて、適切な波長を選択してもよい。あるいは、マイクロプレートリーダー10は、特定の波長を提案することができ、特定の波長はその後、ユーザーによって確認され得る。
【0037】
図3の例では、方法は、サンプルの局所的な吸光度最大値が決定される予備ステップ100を含む。ただし、このステップは必要ないが、しばしば、吸光度最大値は分かっており、その場合、ユーザーは事前の知識に基づいて吸光度測定の波長を設定することができる。
【0038】
動作の第2のステップでは、マイクロプレート1のウェル内に配置されたサンプルは、特定の波長または波長範囲を有する電磁放射で照射される102。
【0039】
動作の第3のステップでは、検出手段13を使用して、サンプルを透過した放射束を決定する103。
【0040】
動作の第4のステップでは、サンプルの吸光度値が決定される104。材料の吸光度は、一般に、入射放射と材料を透過した放射電力の比の常用対数として定義される。したがって、吸光度は次の式で表すことができる。
【数1】
式中:
0は、サンプルによって受けられる放射束である。
Pは、サンプルによって透過される放射束である。
【0041】
吸光度は、無次元である。
【0042】
吸光度値は、電磁放射の特定の波長に対して決定される。使用される波長は、典型的に、サンプルの局所的な吸光度最大値が発生することが分かっている波長である。吸光度最大値の波長が分かっている場合、サンプルの照射に使用される波長または波長範囲は、ユーザーによって選択され得る。あるいは、マイクロプレートリーダー10は、マイクロプレートリーダー10の動作範囲全体または動作範囲の一部にわたって吸光度値を決定するスペクトル分析を実行するために使用され得る。測定された吸光度値は、特定の細胞代謝産物の量、または細胞呼吸、膜の完全性、特定の酵素(すなわち、ラクターゼデヒドロゲナーゼ)またはサンプル中に存在する他のタンパク質の活性などの特定の生物学的機能に相関する場合がある。
【0043】
動作の第5ステップでは、決定された吸光度値がマトリックス105として視覚化される。分析の結果は、ディスプレイ12上に表示される。
【0044】
サンプルがいくつかの局所的な吸光度最大値を有する場合、いくつかの設定された波長を使用して吸光度測定を実行することができる。その結果、結果を表示するためにいくつかの結果マトリックスが形成される。
【0045】
他の種類の測定におけるマイクロプレートリーダー10の動作は、上述した動作と同様である。蛍光測定は、フロー部として図8に示されている。蛍光測定では、照射手段11は、励起源として使用される。特定の波長が設定され301、設定された波長の周りの狭い帯域幅を有する電磁放射を使用してサンプルが照射され302、サンプルによって放出された電磁放射が検出手段13を使用して測定される303。測定値は、マトリックスとして視覚化される304。
【0046】
蛍光測定では、サンプルによって放出された電磁放射は、測定前に波長フィルターを通過してもよい。波長フィルターは、放出された光子を励起光子から分離する。1つのサンプルにいくつかの蛍光色素分子が存在してもよい。したがって、いくつかの測定を実行することができ、各測定の結果を別個のマトリックスとして表示することができる。ユーザーは次いで、ユーザーインターフェイスディスプレイ上に表示されるマトリックスを選択してもよい。また、いくつかのマトリックスを同時に表示することもできる。
【0047】
図4は、吸光度測定用に構成されたマイクロプレートリーダー10の一例をより詳細に示している。図4の例では、照明手段11は、光源16を含む。光源16は、例えば、キセノンフラッシュランプであり得る。光源16は、例えば、石英ハロゲンランプでもあり得る。光源16は、可視光(波長範囲約380~750nm)、紫外光(10~380nm)、または広いスペクトルの赤外光(750nm~1mm)などの電磁放射を産生する。特定の波長を選択するために、照明手段11は、モノクロメーター17をさらに含む。モノクロメーター17は、狭い帯域幅の光ビームを産生する。一例によれば、モノクロメーター17の後の光の帯域幅は、2.5nm未満である。ただし、いくつかの用途では、より広い帯域幅でも十分である。モノクロメーターの代わりに、干渉フィルターも波長選択の手段として使用することができる。光源はまた、LEDまたはレーザーなどの狭帯域光源でもよい。その場合、モノクロメーター、干渉フィルター、または波長選択のための他の外部手段は必要ない場合がある。
【0048】
光源16からの光ビームは、マイクロプレートリーダー10の光学系を介してモノクロメーター17に透過される。図4の例では、光源16とモノクロメーター12との間の光学系は、ミラー18と入射スリット19と、を含む。しかしながら、マイクロプレートリーダー10の光学系は、多くの異なる方法で構築され得る。
【0049】
図4の例では、光は、モノクロメーター17から出口スリット21および光ファイバ22を介して読み取りステーション20に透過される。光は、マイクロプレート1のウェル2内に配置されたサンプル3を通過する。サンプル3を通過した光の強度は、シリコンフォトダイオードまたは光電子増倍管などの検出器13によって測定される。図4の例では、検出器13は、あるサンプル3から別のサンプルに移動する。しかしながら、マイクロプレートリーダー10は、いくつかのサンプル3を同時に測定できるようにするためのいくつかの検出器13を含むことができる。
【0050】
マイクロプレートリーダー10が他の種類の測定に使用された場合、照明手段11および検出手段13は、異なるように構成され得る。例えば、蛍光測定では、検出手段13は、照明手段11によって励起されたときに、サンプルによって放出される電磁放射を測定するように構成されるであろう。また、通常、背景蛍光を除去するために、または1つのサンプル内の複数の蛍光色素分子に由来する蛍光シグナルを分離するために、検出器の前にローパスまたはバンドパス放出フィルターなどの放出フィルターも必要である。放出された光子を励起光子から分離するために、波長フィルターも必要になる場合がある。
【0051】
図5aおよび5bは、マイクロプレートリーダー10の結果ビューの例を示している。図5cは、対応するマイクロプレート1を示している。図5aおよび5bの例では、吸光度測定にマイクロプレートリーダー10が使用されている。図5aは、吸光度値が数値として示される結果ビューを示しており、通常、この値は0~4の範囲にある。吸光度値は、いくつかのセル23を含むマトリックスとしてディスプレイ12上に示される。マトリックスの各セル23は、マイクロプレート1のウェル2に対応している。マイクロプレート1のウェル2の数およびマトリックス内の対応するセル23の数が大きいため、関心のある吸光度値、例えば低値および高値を迅速に検出することは困難な場合がある。したがって、セル23をフレーム24で囲むことによって、最高および最低の吸光度値を有するセル23が自動的に強調表示される。結果マトリックスは、他の種類の測定の場合にも同様であるであろう。例えば、蛍光測定の場合、吸光度の値の代わりに、サンプルによって放出される放射に対応する値が示されることになる。
【0052】
ユーザーが特に低いまたは高い測定値を示すそれらのセル23を迅速に検出できるようにするために、個々の値が色で表されるヒートマップを使用してデータを視覚化することもできる。図5bは、ヒートマップの一例を示している。マイクロプレートリーダー10のユーザーは、異なるビューを切り替えるか、またはそれらを同時に示すことを選択することができる。
【0053】
図13aおよび13bの結果ビューは、図5aおよび5bのビューと同様である。ただし、この場合、マイクロプレート1は、384のウェル2を含む。また、図13aおよび13bの例では、セル23をフレーム24で囲むことによって、最高および最低の吸光度値を有するセル23が自動的に強調表示される。図13aの数値ビューと図13bのヒートマップビューとの違いは、明らかに本発明の利点を示している。数値ビューでは、ユーザーは、ほとんど何も区別できない。ヒートマップビューでは、ユーザーは、アッセイが期待どおりに機能したかどうかをすぐに見ることができる。この例では、セルA2~I2は陽性対照であり、セルJ2~P2は陰性対照である。これらのセルの色は、アッセイが適切に機能したことを示している。ユーザーは、陽性対照とは十分に異なるヒットを識別することもできる。ヒットは異なる色で示され、追跡調査のために選択され得る。追加のデータ分析は必要ない。したがって、本発明による方法および分析装置は、分析の信頼性および速度を改善する。
【0054】
サンプルの吸光度値などの測定値3は、セル23の色の強度によって視覚化される。したがって、各セル23の色強度または実際の透明度もしくは半透明度は、それぞれのサンプル3の測定値に基づいて決定される。コンピュータグラフィックスでは、色相に影響を与えずに色の透明度を変化させることは、一般的に、アルファブレンディングによって達成される。これは、前景色を背景色とブレンドするプロセスであり、この場合は好ましくは黒である。ブレンドされた色は、前景色および背景色の加重平均として計算され、前景色は、1~0.1の値を有する。アルファチャネル値、すなわち、セル23の前景色の値は、測定値と正の相関を有する。セル23の測定値が高いほど、セル23が受けるアルファチャネル値が高くなる。したがって、低吸光度または他の測定値を有するサンプル3は、高吸光度または他の測定値を有するサンプル3よりも透明な(低い強度の色の)セル23として結果マトリックスに示される。
【0055】
RGB色空間を使用する場合、サンプル3色の彩度を下げることは、最終的に色の色相の色合いが、色に応じて白色、黒色、または灰色に変化することにつながるであろう。これは、加法カラーモードであるRGBモードでは、色の色相が赤、緑、青チャネルの個々の値の影響を受けるためである。アルファブレンディングでは、R、G、およびBの値の実際の量は変化しないため、色の色相は影響を受けない。
【0056】
本発明による方法は、図7にフロー図として示されている。方法の最初のステップでは、マイクロプレート1のウェル2内に、または複数の別個のサンプルを収容するように適合されたプラットフォームのいくつかの他の種類のサンプル容器内に配列されたサンプル3によって放出または透過された電磁放射が測定される201。標準のマイクロプレート1の代わりに、プラットフォームは、例えば、PCRアレイであってもよい。第2のステップでは、上述した測定ステップ201が、所定の時間間隔で繰り返される202。測定の数は、アッセイによって異なる。測定は、所定の時間間隔で所定の回数繰り返すことができる。あるいは、測定は、所定の時間期間にわたって継続することができる。また、測定の数または分析の継続時間は固定されていないが、測定の数または分析の継続時間は、測定結果に基づいて決定される可能性もある。例えば、サンプル3の反応が終了するか、または反応速度が特定の制限値を下回るまで、測定を継続することができる。2つの連続した測定間の期間は一定である必要はない。例えば、化学的または生物学的プロセスの反応速度は、プロセスの開始時に速くなることがあり、測定は、プロセスの開始時に短い時間間隔で繰り返されることがある。
【0057】
方法の第3のステップでは、結果マトリックスが形成される203。各結果マトリックスは、1回の測定の説明に関連して上述の説明された様式で形成される。したがって、結果マトリックスは、複数のセル23を含み、各セル23は、マイクロプレート1のウェル2またはいくつかの他の種類のプラットフォームのサンプル容器に対応する。各サンプル3の測定値は、結果マトリックス内のそれぞれのセル23の視覚特性を決定するための入力として使用される。例えば、セルの透明度は、吸光度または蛍光値などの測定値に基づいて決定することができる。結果のマトリックスは、追加でタイムスタンプが提供され得る。動作の第4のステップでは、結果は、時間に関して連続したマトリックスとして表示される204。したがって、結果はアニメーションとして表すことができ、個々のサンプル3またはセルの色の変化が明確に示される。
【0058】
方法のステップは、図7に示される順序で行う必要はない。例えば、結果をリアルタイムで表示することができ、この場合、各測定ステップの後に結果マトリックスが形成および表示される。結果をリアルタイムで表示する代わりに、またはそれに加えて、結果をメモリに保存することができる。結果は、マイクロプレートリーダー10または他の分析装置のメモリ、および/または外部コンピュータに保存することができる。外部コンピュータは、リモートサーバーまたはクラウドサーバーとすることができる。
【0059】
結果は、生データとして保存され得、次いで、結果マトリックスの形成に使用される。その代わりに、またはそれに加えて、各測定後に結果マトリックスを形成することができ、結果マトリックスは、画像形式で保存することができる。測定値は、連続した測定間の測定値の変化を示すビデオファイルを作成するための入力としても使用され得る。ビデオファイルは、マイクロプレートリーダー10または他の分析装置のメモリ、および/または外部コンピュータに保存することができる。外部コンピュータは、リモートサーバーまたはクラウドサーバーとすることができる。ビデオファイルは、オフラインでもオンラインでも再生することができる。この実施形態は、別個であるが関連している実験からのヒートマップをビデオ形式に組み合わせ、それにより、サンプル結果のいかなる変化も視覚的に直接監視できるようにするのにも特に有用であろう。
【0060】
本発明は、各セルの測定値が時間の関数として曲線として表示される、動態アッセイの結果をグラフとして表示する従来の方法に対する明確な改善である。特に、サンプルの数が数個、例えば、5個を超える場合、従来の分析方法での個々のサンプルの挙動は、解釈するのが困難である。本発明を用いると、動態検査を利用する科学者は、大量のデータをより容易に解釈することができる。結果は、リアルタイムでも事後的でも読み取り可能な形式で示すことができる。
【0061】
本発明の特定の実施形態は、本発明による方法が可視光の波長範囲における吸光度測定に使用される場合に適用され得る。吸光度測定のために設定された波長は、セル23の視覚特性を決定するためのさらなる入力として使用され得る。ヒートマップ内の各セル23の色は、人間の目で知覚されるサンプル3の色に対応するように選択され得る。したがって、各セル23の色は、吸光度測定のために設定された波長に対応する色の補色になるように選択され得る。
【0062】
図6は、セルの色の選択を示す例示的かつ簡略化された図を示している。図6の図は、可視光(カラーホイールの主な色)の異なる波長範囲を表す6つのセクターで構成されている。マイクロプレートリーダー10が可視光の波長範囲で動作している場合、波長測定3に設定された波長は、図6の6つの範囲のうちの1つに含まれる。設定された波長は典型的には、局所的な吸光度最大値に近くなる。したがって、サンプル3、その波長の光を吸収する。その結果、ユーザーによって知覚されるサンプル3の色は、吸光度測定のために設定された波長に対応する色の補色である。補色は、図6の図の反対側のセクターに位置している。したがって、マトリックスのセル23で使用される色は、吸光度測定のために設定された波長を含むセクターの反対側に位置しているセクターから選択される。一例として、図5aおよび図5bに示されるように、設定された波長が460nmである場合、すなわち、サンプル3を照射するために使用される光が青の場合、結果マトリックスのセル23は橙色で示される。本発明による方法では、結果マトリックスは、肉眼で見られるようにサンプル3の視覚色を反映する。これにより、色付きのサンプルの処理に慣れているユーザーにとって結果の読み取りがより直感的になり、同時にプロセスエラーを見つけることができるため、信頼性もより向上する。本発明の一実施形態によれば、使用される色空間は好ましくは、RGBまたはARGBであり、好ましくは、0~255の値を有する3つすべての色チャネルに8ビットを含むが、他の好適な数の色および色プロファイルも利用され得る。
【0063】
蛍光測定では、ヒートマップ内の各セル23の色は、色が蛍光色素分子の最大発放出波長の色に対応するように選択することができ、蛍光色素分子は、検出器によって検出されるか、または人間の目で見られる波長である。
【0064】
測定結果を連続したマトリックスとして表し、マトリックスのセル23の色を選択するための入力として設定された波長を使用することによって、実際の実験の現実的なレプリカを作成することができる。したがって、色付きのサンプルの分析に慣れている科学者は、測定結果を簡単に解釈することができる。同様に、測定結果を連続したマトリックスとして表し、マトリックスのセル23の色を選択するための入力として検出波長を使用すると、ユーザーが結果を解釈するのに役立つ。
【0065】
図5aおよび図5bの例では、結果マトリックスの2つのセル23が、異なる色のフレーム24で境界されている。フレーム24は、最低および最高の測定値でセル23を強調表示するため、および/またはマトリックス内のセル23の選択を示すために使用される。吸光度測定の場合、フレーム24の色は、吸光度測定のために設定された波長に対応する色と同様であり得る。色の波長は、例えば、吸光度測定のために設定された波長の20nm以内であり得る。好ましくは、フレーム24の色は、設定された波長に対応する。したがって、フレーム24の色は、セル23の色の補色であり、これにより、フレーム24を見つけやすくする。あらゆるフレーム化されていないセル23を互いに分離するために使用される境界26の色は、フレーム24またはセル23の色以外の任意の色、例えば黒色、白色または濃い灰色である。同じ色が背景色として使用されることが好ましい。
【0066】
上述した色の選択は、電磁放射の波長が可視光の範囲にある場合に適用することができる。吸光度または蛍光測定は、紫外線および/または赤外線の波長範囲で行うこともできる。電磁放射の波長が紫外線または赤外光の波長範囲にある場合、セル23は、所定の色で示され得る。セル23の色は、例えば、黒色または白色であり得る。また、蛍光または発光測定などの他の種類の測定では、セル23は、所定の色で示され得る。セル23の色も、ユーザーによって選択され得る。
【0067】
図10は、結果マトリックスのセル23の視覚特性を決定するためのステップの例をフロー図として示している。図10の例では、サンプル3の吸光度値が決定される。サンプル3を照射するために使用される電磁放射の波長は、方法の入力として使用される。別の入力は信号レベルであり、サンプルの吸光度値に対応する。方法の第1のステップ401では、波長が可視光の波長範囲内にあるかどうかが決定される。波長が可視光の波長範囲内にある場合、光の色は波長に基づいて計算される402。次のステップでは、計算されたRGBまたはARGB色がHSV色に変換される403。第4のステップでは、HSV色の色相値を180度反転することによって補色が決定される404。取得されたHSV色は、ARGB色に変換される405。色のアルファチャネルは、信号レベルに基づいて調整される406。この方法は、波長色およびアルファ調整された補色を返す。波長色は、強調表示フレーム24の色として使用され得る。サンプルを照射するために使用される電磁放射の波長が可視光の波長範囲外の場合、補色を決定するためのステップ402~405は省略される。代わりに、黒色が補色として使用され、所定の強調表示色が波長色として使用される402a。
【0068】
図11は、結果マトリックスのセル23の透明度または不透明度を決定するステップの例を示している。図11の例では、吸光度測定の場合に吸光度値である信号の値が0未満である場合、不透明度値50がセル23に与えられる。信号が3を超える場合、不透明度値255がセル23に与えられる。信号値が0~3の場合、不透明度値は、式opacity=signal value*68.33+50によって計算される。
【0069】
図12は、図10の方法の一部の修正バージョンを示している。補色を決定するための入力として使用されるHSV色の色相が180である場合、補色を決定するステップ404が修正される。修正されたステップ404aでは、色相値は180度調整され、調整された値に対してモジュロ演算が実施される。
【0070】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはDNAシーケンサーによりサンプル核酸を増幅するために使用される機器などの核酸分析機器にも適用され得る。
【0071】
方法がPCR分析に適用される場合、プロセスは、図8に示される蛍光測定に非常に類似している。PCR分析器の主な構成要素は、図2に示されるものと同じである。照射手段11は、エネルギー源として使用される。照射手段11は、ランプ、レーザー、またはLEDなどの光源を含むことができる。光源からの光は、フィルターを通過し得る。光は、サンプルに方向付けられる。サンプルは、アレイまたはマイクロプレート形式の容器またはキャビティを含む液体中に配列され得る。サンプルによって放出される光は、検出手段13によって測定される。放出された光は、測定される前にフィルターを通過し得る。
【0072】
図9は、PCR監視の配列を概略的に示している。分析されるサンプルは、好適なプラットフォーム1のサンプル容器2内に配置される。サンプルを加熱するために、加熱ブロック28などの熱源が使用される。電磁放射は、光源11によってサンプルに方向付けられる。光源11は、例えば、ランプ、レーザー、またはLEDであり得る。光源による励起のため、サンプルは光を放出する。サンプルによって放出された光は、フィルター27を通過し、検出器13によって監視される。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇内で変更できることは当業者に理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b