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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】リチウム蓄電池冷却用の新規熱媒液
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20231013BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231013BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20231013BHJP
【FI】
C09K5/10 F
H01M10/613
H01M10/6567
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021523679
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019079237
(87)【国際公開番号】W WO2020094428
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】18204600.3
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19156713.0
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19156712.2
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディートル,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ジーク,ロガー
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192642(JP,A)
【文献】国際公開第03/074626(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/095759(WO,A1)
【文献】特表平09-504812(JP,A)
【文献】特開昭61-236884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00-5/20
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1種の式(I)
【化1】
(式中、
R1は、水素又はC1~C4アルキルであり
R2は、C1~C4アルキルであり、
R3は、水素又はメチルであり
nは、算術平均で3.0~4.0の数である)
のアルキレングリコール誘導体
及び
(B)以下からなる群から選択される少なくとも1種の腐食防止剤
(Ba) オルトケイ酸エステル及び/又はアルコキシアルキルシラン
(Bb) アゾール誘導体
(Bc) 一般式(II)
【化2】
(式中、
R4は、6~10個の炭素原子を有する有機基であり
p及びqは互いに独立に、1~30の正の整数であり、
i=1~p及び1~qについて、各Xiは互いに独立に、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-、-CH(CH3)-CH2-O-、-CH2-C(CH3)2-O-、-C(CH3)2-CH2-O-、-CH2-CH(C2H5)-O-、-CH(C2H5)-CH2-O-、-CH(CH3)-CH(CH3)-O-、-CH2-CH2-CH2-O-、及び-CH2-CH2-CH2-CH2-O-からなる群から選択される)
の化合物
を含む熱媒液の、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)、及びリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を電解質(E)として含むリチウムイオン充電式電池を冷却するための使用であって、
但し、組成物が、
- 1wt%未満の水を含む
ことを条件とする、使用。
【請求項2】
電解質がLiPF6である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
リチウムイオン充電式電池が、二酸化リチウムコバルト充電式電池、チタン酸リチウム充電式電池、リチウムマンガン充電式電池、リチウムニッケルコバルトアルミニウム充電式電池、又はリン酸鉄リチウム充電式電池である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
電解質が非プロトン性有機溶媒(Eb)に溶解している、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
非プロトン性有機溶媒(Eb)が開鎖又は環状炭酸エステルである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
非プロトン性有機溶媒(Eb)が式(VII):
【化3】
(式中、
R2及びR3は、成分(A)について上で定義した通りであり、
r及びsは、算術平均で3.0~4.0の数であり、
各々のr及びsについて、R2及びR3は互いに独立に、同一であっても異なっていてもよ)
の化合物である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
熱媒液の、ASTM D445による-40℃での動粘性率が、600mm2/秒以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
熱媒液の50℃での比熱容量が、少なくとも2.0kJ/kg×Kである、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
熱媒液の熱伝導率が、少なくとも0.15W/m×Kである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
構造要素R 4 -N<が、n-ヘキシルアミン、2-メチルペンチルアミン、n-ヘプチルアミン、2-ヘプチルアミン、イソ-ヘプチルアミン、1-メチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-アミノオクタン、6-メチル-2-ヘプチルアミン、n-ノニルアミン、イソ-ノニルアミン、n-デシルアミン、及び2-プロピルヘプチルアミン、又はそれらの混合物からなる群から選択されるアミンから誘導される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
アゾール誘導体が、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、及び/又は水素化トリルトリアゾールからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
熱媒液が、
95~99.9wt%の成分(A)、及び
0.1~5wt%の成分(B)
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
n=3である式(I)のアルキレングリコール誘導体とn=4である式(I)のアルキレングリコール誘導体の比率が100:0~40:60である、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
熱媒液が、成分(A)、成分(B)、任意選択により、成分(B)とは別個の少なくとも1種の更なる腐食防止剤(C)、並びに、任意選択により、染料、消泡剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の更なる化合物からなる、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
R 1 が水素である、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
R 2 がメチル又はn-ブチルである、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
R 3 が水素である、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
R 4 が7~9個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
p及びqが互いに独立に1又は2である、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
i=1~p及び1~qについて、各X i が-CH 2 -CH 2 -O-である、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
組成物が0.75wt%未満の水を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
組成物が0.5wt%未満の水を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に水を含まない新規不凍液、及びリチウム充電式電池冷却用の、好ましくは自動車(モータービークル)、特に好ましくは乗用車及び実用車(いわゆる軽量車及び重量車)におけるリチウム充電式電池冷却用の、クーラントに関する。
【背景技術】
【0002】
移動用途のリチウム充電式電池、特に自動車におけるものは、約-40℃までの低い外部温度でも作動可能でなければならない。したがって、霜除けされたクーラント回路が不可欠である。
【0003】
更に、電池の急速充電中に温度が最大約100℃まで達するので、特定の部品に損傷を与えないように熱を除去しなければならない。
【0004】
リチウム充電式電池の場合、特に低い温度及び特に高い温度の両方が一般に不都合である。
【0005】
約180℃の高温で、ある種の充電式電池、例えば、酸化コバルト、酸化リチウムコバルト(III)、二酸化ニッケル、又は混合酸化物、例えばリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を含むものは熱暴走挙動を呈し、この場合、用いた酸化物が分解し、酸素を放出することによってセル内で発熱反応、例えば水素との反応が生じることがあり、その結果、発火又はセルの破壊が起きることがある。
【0006】
更に、電解質材料は高温で分解する傾向を有する。
【0007】
したがって、製造業者は、放電中のリチウム充電式電池の作動温度を+60℃に制限することを推奨することが多い。
【0008】
逆に、充電式電池の作動能力は、低温での様々な影響、例えば、電解質の凍結若しくは沈殿、電解質材料の粘度の増加、イオン移動の低減、又はセルの内部抵抗の上昇によって制限される。
【0009】
したがって、製造業者は、放電中の充電式電池を使用するのに約0℃~+40℃、最適には18℃~25℃の温度範囲を推奨することが多い。
【0010】
特に低い温度での充電も電極材料に重度のエージング及び不可逆的な損傷をもたらすことがあるので、充電での下限温度として典型的には0℃が推奨される。
【0011】
よって、クーラントの一目的は、充電式電池が最適に機能し且つ充電中と放電中の両方で損傷のリスクのない温度範囲に充電式電池を保つことである。
【0012】
これによって、こうして冷却される充電式電池をより効率的に温度管理することが可能になる。
【0013】
水及びモノアルキレングリコールをベースとし、任意選択によりグリセロールを併せた、内燃機関に用いられる従来の水性不凍液を使用することは、クーラントチャネルの完全な電気絶縁が施されていない充電式電池、燃料電池、及び/又は電池においては不可能であろう。なぜなら、これらの不凍液は、腐食防止剤としてその中に存在する塩及びイオン化可能な化合物のために、燃料電池又は電池の機能に悪影響を与えることとなる過度な導電率を有するからである。更に、例えば、電解液が漏出する事故が発生したときには、電池端子が冷却液と接触することによる短絡及び/又は電気分解による水素ガスの発生のリスクがあり、それは更なるリスクの可能性を抱える。
【0014】
また一方、電解質として使用される塩は、加水分解されることによって水と反応する。例として、例えば、A.V.Plakhotnykら、Journal of Fluorine Chemistry、126 (2005) 27~31から、非プロトン性有機溶媒に溶解したLiPF6の場合、含水率が0.5wt%であっても、用いたLiPF6の合計約10mol%が約23日間で加水分解されることが知られている。したがって、電解質LiPF6の加水分解は電解質の組成を改変し、それによって充電式電池の機能性が不明確に改変されることになる。加水分解は更に、毒性のあるフッ化水素酸の形成をもたらす。
【0015】
したがって、電解液との接触時に有意な反応を起こさないクーラントに対するニーズがある。
【0016】
WO 95/07323は、0.5wt%を下回る含水率を有し、プロピレングリコール及び任意選択によりエチレングリコールをベースとするが、内燃機関専用である、水を含まないクーラントを開示している。電気部品を冷却するための使用法については提示されていない。
【0017】
クーラントは、当初の通常低いその導電率を長期間維持し、通常イオンを形成する様々な分解過程に起因して、導電性が増大しないようにすることも必要である。
【0018】
通常はモノエチレングリコールである不凍液成分が様々な添加剤、例えば、腐食防止剤、酸化防止剤、消泡剤、苦味剤、及び染料と混合されている水を含まないクーラント濃縮物は、例えばUS 8,394,287など、先行技術に広く記載されている。US 8,394,287には更に、少なくとも1種の更なる不凍液成分、例えば、モノプロピレングリコール、高級エチレングリコール同族体、又はグリセロールが濃縮物中に存在することが記載されている。
【0019】
これらのクーラント濃縮物の目的は常に、後で水で希釈してクーラント(通常30~70vol%の含水率を有する)として使用することであり、希釈されていない濃縮物をクーラントとして使用することは意図されていない。
【0020】
いわゆる超濃縮物が記載されることも多く、これは、通常はモノエチレングリコール、又はそうでない場合はモノプロピレングリコールである比較的少量の不凍液成分中に上述の添加剤が含まれる、本質的に高度に濃縮された製剤である。
【0021】
これらの超濃縮物の目的は常に、後で不凍液成分で希釈してクーラント濃縮物を生成し、続いてそのクーラント濃縮物から実際のクーラントを生成することである。希釈されていない超濃縮物をクーラントとして使用することは意図されていない。
【0022】
充電式電池用のクーラントとしての使用は、上の文書には記載も示唆もされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の目的は、用いた電解液との接触時にそれと有意な反応を起こさずにリチウム充電式電池のセルでの冷却を可能にし、低導電率を有し、低温で使用可能のままであり、すなわち固化したり重度の粘度上昇を呈したりせず、高温でも熱を除去する能力がある、クーラントを開発することであった。
【0024】
更に、クーラントは低導電性を更に呈し、且つこれを作動中も保持しなければならず、よってとりわけ弱腐食性を必要とする。なぜなら、腐食はクーラントへのイオンの導入を引き起こし、これによって導電率が増加することになるからである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、
(A) 少なくとも1種の式(I)
【0026】
【化1】
(式中、
R1は、水素又はC1~C4アルキルであり、好ましくは水素、メチル、又はエチルであり、特に好ましくは水素又はメチルであり、極めて特に好ましくは水素であり、
R2は、C1~C4アルキル、好ましくはメチル、エチル、又はn-ブチルであり、特に好ましくはメチル又はn-ブチルであり、極めて特に好ましくはメチルであり、
R3は、水素又はメチルであり、好ましくは水素であり、
nは、算術平均で3.0~4.0の数である)
のアルキレングリコール誘導体
及び
(B) 以下からなる群から選択される少なくとも1種の腐食防止剤
(Ba) オルトケイ酸エステル及び/又はアルコキシアルキルシラン
(Bb) アゾール誘導体
(Bc) 一般式(II)
【0027】
【化2】
(式中、
R4は、6~10個の炭素原子を有する有機基であり、特に直鎖又は分枝の、好ましくは直鎖の、6~10個の炭素原子、好ましくは7~9個、特に好ましくは8個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、
p及びqは互いに独立に、1~30、好ましくは1~20、特に好ましくは1~10、極めて特に好ましくは1~5、特に1~3、とりわけ1又は2の正の整数であり、
i=1~p及び1~qについて、各Xiは互いに独立に、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-、-CH(CH3)-CH2-O-、-CH2-C(CH3)2-O-、-C(CH3)2-CH2-O-、-CH2-CH(C2H5)-O-、-CH(C2H5)-CH2-O-、-CH(CH3)-CH(CH3)-O-、-CH2-CH2-CH2-O-、及び-CH2-CH2-CH2-CH2-O-からなる群から選択され、好ましくは-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-、及び-CH(CH3)-CH2-O-からなる群から選択され、特に好ましくは-CH2-CH2-O-である)
の化合物
を含む熱媒液の、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)、及びリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を電解質(E)として含むリチウムイオン充電式電池を冷却するための使用であって、
但し、熱媒液が
- 1wt%未満の水、好ましくは0.75wt%未満、特に好ましくは0.5wt%未満、極めて特に好ましくは0.4wt%未満、特に0.3wt%未満、とりわけ0.2wt%未満の水を含む
ことを条件とする、使用によって達成された。
【0028】
例えばセルへの機械的損傷に起因して用いた成分(A)とリチウムイオン充電式電池に用いた電解質(E)とが互いに接触したとしても、成分(A)が電解質(E)と有意な反応を起こさないことは、本発明による組成物の利点である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
個々の成分について、以下でより詳細に説明する。
【0030】
成分(A)
少なくとも1種の式(I)
【0031】
【化3】
のアルキレングリコール誘導体において、
R1は、水素又はC1~C4アルキルであり、好ましくは水素、メチル、又はエチルであり、特に好ましくは水素又はメチルであり、極めて特に好ましくは水素であり、
R2は、C1~C4アルキル、好ましくはメチル、エチル、又はn-ブチルであり、特に好ましくはメチル又はn-ブチルであり、極めて特に好ましくはメチルであり、
R3は、水素又はメチルであり、好ましくは水素であり、
nは、算術平均で3.0~4.0の数である。
【0032】
好ましいアルキレングリコール誘導体(A)は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル
トリエチレングリコールモノエチルエーテル
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
トリエチレングリコールジメチルエーテル
トリエチレングリコールジエチルエーテル
トリエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル
テトラエチレングリコールモノメチルエーテル
テトラエチレングリコールモノエチルエーテル
テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
テトラエチレングリコールジメチルエーテル
テトラエチレングリコールジエチルエーテル
テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル
トリプロピレングリコールモノエチルエーテル
トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
トリプロピレングリコールジメチルエーテル
トリプロピレングリコールジエチルエーテル
トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル
テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル
テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル
テトラプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
テトラプロピレングリコールジメチルエーテル
テトラプロピレングリコールジエチルエーテル
テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル
【0033】
エチレングリコールエーテルは、プロピレングリコールエーテルより好ましい。
【0034】
更に、モノアルキルエーテルは、ジアルキルエーテルより好ましい。
【0035】
成分(A)が、n=3である実質的に純粋な式(I)の化合物、又はn=3である式(I)の化合物とn=4である式(I)の化合物の混合物である場合に、好ましい。混合物中の式(I)の化合物については、nは、算術平均で好ましくは3.0~3.6、特に好ましくは3.0~3.5、極めて特に好ましくは3.05~3.4、特に3.1~3.3、とりわけ3.15~3.25である。
【0036】
混合物中の化合物については、R1基及びR2基は同一であっても異なっていてもよく、好ましくはそれらは同一である。
【0037】
「実質的に純粋」とは、n=3又はn=4である式(I)の化合物の場合、より高い及びより低いnの値を有する同族化合物が同様にある程度まで存在することを意味すると理解されるものとする。
【0038】
n=3である式(I)の化合物の純度は、一般に少なくとも80wt%、好ましくは少なくとも85wt%、極めて特に好ましくは少なくとも90wt%、特に少なくとも95wt%、とりわけ少なくとも97.5wt%である。残りは、主としてn=2及びn=4である式(I)の化合物で構成される。
【0039】
対照的に、n=4である式(I)の化合物の場合、純度は通常50wt%を上回るに過ぎず、好ましくは少なくとも55wt%、特に好ましくは少なくとも60wt%である。残りは、主としてn=3である式(I)の化合物、及び、程度は低いが、n=5である式(I)の化合物で構成される。
【0040】
実質的に純粋な化合物を含む好ましい成分(A)は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル
トリエチレングリコールモノエチルエーテル
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
である。
【0041】
n=3である式(I)の化合物とn=4である式(I)の化合物の混合物を含む好ましい成分(A)は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテルのテトラエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノエチルエーテルのテトラエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルのテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとの混合物
である。
【0042】
好ましさは劣るが、異なるR1基を有するn=3である式(I)の化合物とn=4である式(I)の化合物の混合物が考えられる。
【0043】
そのような混合物は、
トリエチレングリコールモノメチルエーテルのテトラエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノメチルエーテルのテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノエチルエーテルのテトラエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノエチルエーテルのテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルのテトラエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルのテトラエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合物
である。
【0044】
好ましさは劣るが、各々のnについてR3が互いに独立に同一であっても異なってもいてもよい式(I)の混合アルキレングリコール誘導体、すなわち、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物からの式(I)のトリ及びテトラアルキレングリコール誘導体が考えられる。
【0045】
n=3である式(I)の化合物とn=4である式(I)の化合物の混合物の場合、その比率は、好ましくは100:0~40:60、特に好ましくは95:5~50:50、極めて特に好ましくは90:10~60:40、特に85:15~70:30、とりわけ85:15~75:25である。
【0046】
成分(B)
成分(B)は、以下からなる群から選択される少なくとも1種の腐食防止剤である。
(Ba) オルトケイ酸エステル及び/又はアルコキシアルキルシラン
(Bb) アゾール誘導体、及び
(Bc) 一般式(II)
【0047】
【化4】
の化合物。
【0048】
オルトケイ酸エステル(Ba)は、式Si(OR5)4の化合物であり、
式中、
R5は、各場合において1~6個の炭素原子を有する有機基、好ましくは直鎖又は分枝の、好ましくは直鎖の1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は6個の炭素原子を有するアリール基、特に好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、極めて特に好ましくは1又は2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0049】
その例として、
オルトケイ酸テトラメチル
オルトケイ酸テトラエチル
オルトケイ酸テトラ-n-ブチル
オルトケイ酸テトラフェニル
が挙げられ、好ましいのは、
オルトケイ酸テトラメチル
オルトケイ酸テトラエチル
であり、特に好ましいのは、
オルトケイ酸テトラエチル
である。
【0050】
オルトケイ酸エステルより好ましくないアルコキシアルキルシランは、好ましくはトリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、及びメトキシトリメチルシランである。
【0051】
本明細書の文脈において、アゾール誘導体(Bb)とは、窒素及び硫黄の群からの2又は3個のヘテロ原子を有する5員複素環化合物であって、環に組み込まれた硫黄原子を含まないか又は最大1個の硫黄原子を含み、任意選択により芳香族又は飽和6員環の縮環(annelation)を有するものを意味すると理解されるものとする。
【0052】
これらの5員複素環化合物(アゾール誘導体)は、典型的にはヘテロ原子として2個のN原子及び0個のS原子、3個のN原子及び0個のS原子、又は1個のN原子及び1個のS原子を含む。
【0053】
説明したアゾール誘導体の好ましい群は、以下の一般式:
【0054】
【化5】
(式中、
可変要素Rは、水素又はC1~C10アルキル基、特にメチル又はエチルであり、
可変要素Xは、窒素原子又はC-H部分である)
の縮環イミダゾール及び縮環1,2,3-トリアゾールである。
【0055】
一般式(III)のアゾール誘導体の典型的で好ましい例は、ベンゾイミダゾール(X=C-H、R=H)、ベンゾトリアゾール(X=N、R=H)、及びトリルトリアゾール(X=N、R=CH3)である。一般式(IV)のアゾール誘導体の典型的な例は、水素化1,2,3-トリルトリアゾール(X=N、R=CH3)である。
【0056】
説明したアゾール誘導体の更に好ましい群は、一般式(V):
【0057】
【化6】
(式中、
可変要素Rは、上で定義した通りであり、
可変要素R'は、水素、C1~C10アルキル基、特にメチル若しくはエチル、又は特にメルカプト基(-SH)である。考えられる限りでは、好ましさは劣るが、R'は、式-(CmH2m)-COOR"(式中、mは1~4の数である)のカルボキシアルキル基であってもよく、R"は、C1~C10アルキル、特にメチル若しくはエチル、又はC6~C12アリールである)
のベンゾチアゾールである。その例として、2-ベンゾチアジルチオアセテート又は3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオネートが挙げられる。一般式(V)のアゾール誘導体の典型的な例は、2-メルカプトベンゾチアゾールである。
【0058】
好ましいのはまた、一般式(VI):
【0059】
【化7】
(式中、
可変要素X及びYは2つとも窒素原子であるか、又は
窒素原子及びC-H部分であり、
例えば、1H-1,2,4-トリアゾール(X=Y=N)、又は好ましくはイミダゾール(X=N、Y=C-H)である)
の非縮環(non-annelated)アゾール誘導体である。
【0060】
本発明に関するアゾール誘導体として極めて特に好ましいのは、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、水素化トリルトリアゾール、又はそれらの混合物、特にベンゾトリアゾール又はトリルトリアゾール、とりわけトリルトリアゾールである。
【0061】
説明したアゾール誘導体は、市販されているか又は一般的な方法によって生成可能である。水素化ベンゾトリアゾール、例えば水素化トリルトリアゾールは、DE-A 1 948 794によって同様に得ることができ、市販もされている。
【0062】
成分(Bc)の一般式(II)において、
R4は、6~10個の炭素原子を有する有機基、特に直鎖又は分枝の、好ましくは直鎖の、6~10個の炭素原子、好ましくは7~9個、特に好ましくは8個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、
p及びqは互いに独立に、1~30、好ましくは1~20、特に好ましくは1~10、極めて特に好ましくは1~5、特に1~3、とりわけ1又は2の正の整数であり、
i=1~p及び1~qについて、各Xiは互いに独立に、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-、-CH(CH3)-CH2-O-、-CH2-C(CH3)2-O-、-C(CH3)2-CH2-O-、-CH2-CH(C2H5)-O-、-CH(C2H5)-CH2-O-、-CH(CH3)-CH(CH3)-O-、-CH2-CH2-CH2-O-、及び-CH2-CH2-CH2-CH2-O-からなる群から選択され、好ましくは-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-O-、及び-CH(CH3)-CH2-O-からなる群から選択され、特に好ましくは-CH2-CH2-O-である。
【0063】
式(II)の化合物において、構造要素R4-N<は、好ましくは脂肪酸及びエステルの水素化及びアミノ化によって、特に好ましくは上述の脂肪酸の水素化及びアミノ化又は脂肪アルコールのアミノ化によって得ることができる脂肪アミンから誘導される。
【0064】
R4基として、アルキル基はアルケニル基より好ましい。
【0065】
特定の一実施形態では、p及びqは互いに独立に1、2、又は3、特に好ましくは1又は2、極めて特に好ましくは1である。
【0066】
好ましい実施形態では、脂肪アミンは、n-ヘキシルアミン、2-メチルペンチルアミン、n-ヘプチルアミン、2-ヘプチルアミン、イソ-ヘプチルアミン、1-メチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-アミノオクタン、6-メチル-2-ヘプチルアミン、n-ノニルアミン、イソ-ノニルアミン、n-デシルアミン、及び2-プロピルヘプチルアミン、又はそれらの混合物である。
【0067】
n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、及びn-デシルアミンは特に好ましく、n-オクチルアミン及び2-エチルヘキシルアミン、特にn-オクチルアミンは極めて特に好ましい。
【0068】
とりわけ言及に値するのは、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、及びヘキサ-エトキシル化n-オクチルアミン及びそれらの混合物、並びにジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、及びヘキサ-エトキシル化n-ヘキシルアミン及びそれらの混合物であるものである。
【0069】
一般式(II)のアルコキシル化アミンにおいて、アルコキシル化度は、(p+q)の合計、すなわちアミンの分子当たりのアルコキシル化単位の平均総数に関係する。
【0070】
化合物(II)は、好ましくは、対応するアミンR4-NH2を好ましくは塩基性条件下で所望の平均の統計的アルコキシル化度までアルキレンオキシドと反応させることによって得ることができる。これは、構造単位Xiがエチレンオキシド又はプロピレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドから誘導される場合に特に好ましい。
【0071】
本発明による組成物は一般に以下を含む:
成分(A):95~99.9wt%、好ましくは96~99.8、特に好ましくは97~99.5、極めて特に好ましくは97.5~99wt%、特に98~99wt%。
成分(B):0.1~5wt%、好ましくは0.2~4、特に好ましくは0.5~3、極めて特に好ましくは1~2.5wt%、とりわけ1~2wt%。
【0072】
成分(C)-更なる任意選択による腐食防止剤
必須の腐食防止剤としての上記の成分(B)の少なくとも1種に加えて、本発明による組成物は、任意選択により、(B)で特定したものとは別個の少なくとも1種の更なる腐食防止剤を含むこともできる。
【0073】
しかし、本発明の好ましい実施形態では、組成物は、上述の成分(B)に加えて更なる腐食防止剤(C)を含まない。
【0074】
成分(C)の例は、2~15個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、又は芳香族アミンであって、エーテル酸素原子又はヒドロキシル基を更に含んでもよく、式(II)の化合物(Bc)とは別個のものである。
【0075】
アミン(C)は、好ましくは2~9個、特に4~8個の炭素原子を含む。アミン(C)は、好ましくは第三級アミンである。アミン(C)は、好ましくは0~3個のエーテル酸素原子、又は0~3個、好ましくは0~2個のヒドロキシル基を含む。アミン(C)の典型的な例は、エチルアミン、プロピルアミン、イソ-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソ-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、イソ-ノニルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、モノ-、ジ-、及びトリエタノールアミン、モノ-、ジ-、及びトリイソプロパノールアミン、ピペリジン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、アニリン、並びにベンジルアミンである。脂肪族及び脂環式アミン(C)は一般に飽和している。
【0076】
更なる腐食防止剤として、例えば参照により本明細書に組み込まれるWO 18/95759において式(V)及び(VI)の化合物として5頁34行から10頁10行に記載されるような、脂肪酸アルコキシレート及び脂肪アルコールアルコキシレートを使用することも考えられる。
【0077】
成分(C)は任意選択であり、本発明による組成物中に0~2wt%、好ましくは0~1.5wt%、特に好ましくは0~1wt%、極めて特に好ましくは0~0.7wt%の量で存在してもよい。
【0078】
特に好ましい実施形態では、成分(C)は存在しない。
【0079】
成分(D)-更なる添加剤
本発明による組成物は、以下からなる群から選択される少なくとも1種の更なる添加剤も任意選択により含んでもよい:
(Db) 染料
(Dc) 消泡剤
(Dd) 酸化防止剤、及び
(De) 乳化剤。
【0080】
これらの物質は市販されており、クーラントにおいて典型的に用いられ得る先行技術からの慣例的な化合物である。
【0081】
本発明による組成物における使用される乳化剤(De)の1つの機能は、それらが、冷却システムに由来する任意の汚染物質及び/又はアセンブリ流体(assembly fluid)、例えば、ポリアルキレングリコール又はグリセロールのオリゴマーを組成物中で乳化できることである。
【0082】
成分(D)は、各場合において任意選択であり、各々互いに独立に本発明による組成物中に0~0.5wt%、好ましくは0.001~0.3wt%、特に好ましくは0.002~0.2wt%の量で存在してもよい。
【0083】
成分(E)-電解液
電解質の目的は、充電均等化のために充電又は放電中にリチウムカチオンが陰極と陽極の間を移動することを保証することであり、そのためにリチウム塩(Ea)が適切である。
【0084】
本発明によって冷却しようとするリチウムイオン充電式電池に用いられる電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)、及びリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)からなる群から選択され、好ましくはヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、及び過塩素酸リチウム(LiClO4)からなる群から選択され、特に好ましくはヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)及びテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)からなる群から選択され、極めて特に好ましくはヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)である。
【0085】
これらの電解質塩は、典型的には非プロトン性有機溶媒(Eb)に溶解されて電解液塩(Ea)を液体に保ち、それによって充電式電池中でのリチウムイオンの移動性を保証する。
【0086】
電解液(すなわち(Ea)と(Eb)の合計)中の成分(Ea)の含有率は、例えば5~50wt%、好ましくは10~40wt%、とりわけ好ましくは15~30wt%であってもよい。
【0087】
非プロトン性溶媒(Eb)の例は、開鎖若しくは環状炭酸エステル、エーテル、例えば環状若しくは開鎖エーテル、例えばアルキレングリコールジアルキルエーテル、又はアセトニトリルであり、開鎖又は環状炭酸エステルが好ましい。
【0088】
開鎖炭酸エステルは、好ましくは炭酸ジアルキル、好ましくは炭酸ジ-C1~C4アルキル、特に好ましくは炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、又は炭酸ジ-n-ブチルである。
【0089】
環状炭酸エステルは、好ましくは炭酸エチレン及び炭酸プロピレンである。
【0090】
環状エーテルは、例えばテトラヒドロフランであり、アルキレングリコールジアルキルエーテルは、好ましくはエチレングリコールジアルキルエーテル、特に好ましくはエチレングリコールジ-C1~C4アルキルエーテル、極めて特に好ましくはエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、及びエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、特にエチレングリコールジメチルエーテルである。
【0091】
一実施形態では、成分(A)の炭酸エステルが、電解質用の溶媒(Eb)として単独で又は好ましくは他の上述の非プロトン性溶媒と併せて用いられてもよい。これらの炭酸エステルを熱媒液に使用することも考えられる。
【0092】
これらの炭酸エステルは、式(VII):
【0093】
【化8】
(式中、
R2及びR3は、成分(A)について上で定義した通りであり、
r及びsは、算術平均で3.0~4.0の数であり、
各々のr及びsについて、R2及びR3は互いに独立に、同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である)
の非プロトン性化合物である。
【0094】
式(VII)の化合物は、例えば、
トリエチレングリコールモノメチルエーテルの炭酸エステル
トリエチレングリコールモノエチルエーテルの炭酸エステル
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの炭酸エステル
テトラエチレングリコールモノメチルエーテルの炭酸エステル
テトラエチレングリコールモノエチルエーテルの炭酸エステル
テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの炭酸エステル
トリエチレングリコールモノメチルエーテルとテトラエチレングリコールモノメチルエーテルの混合炭酸エステル
トリエチレングリコールモノエチルエーテルとテトラエチレングリコールモノエチルエーテルの混合炭酸エステル
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの混合炭酸エステル
トリプロピレングリコールモノメチルエーテルの炭酸エステル
トリプロピレングリコールモノエチルエーテルの炭酸エステル
トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの炭酸エステル
テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルの炭酸エステル
テトラプロピレングリコールモノエチルエーテルの炭酸エステル
テトラプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの炭酸エステル
トリプロピレングリコールモノメチルエーテルとテトラプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合炭酸エステル
トリプロピレングリコールモノエチルエーテルとテトラプロピレングリコールモノエチルエーテルの混合炭酸エステル
トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとテトラプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの混合炭酸エステル。
【0095】
これらのうち、エチレングリコールエーテルの炭酸エステルは、プロピレングリコールエーテルの炭酸エステルより好ましい。
【0096】
炭酸エステルは一般に、それぞれの同族体の混合物の形態であり、以下の混合物が好ましい:
トリエチレングリコールモノメチルエーテルの炭酸エステル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルの炭酸エステル、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルとテトラエチレングリコールモノメチルエーテルの混合炭酸エステルの混合物、
トリエチレングリコールモノエチルエーテルの炭酸エステル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルの炭酸エステル、及びトリエチレングリコールモノエチルエーテルとテトラエチレングリコールモノエチルエーテルの混合炭酸エステルの混合物、並びに
トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの炭酸エステル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの炭酸エステル、及びトリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルとテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルの混合炭酸エステルの混合物。
【0097】
好ましい実施形態では、用いる成分(A)及び炭酸エステル(Eb)におけるR2基及びR3基は同一である。
【0098】
本発明による組成物の特性
本発明による組成物は以下の条件に従う:
【0099】
組成物は、1wt%未満の水、好ましくは0.75wt%未満、特に好ましくは0.5wt%未満、極めて特に好ましくは0.4wt%未満、特に0.3wt%未満、とりわけ0.2wt%未満の水を含む。0.15wt%を下回る、好ましくは0.1wt%を下回る、更には0.05wt%を下回る含水率に設定すると有利であり得る。
【0100】
本発明による低含水率により、例え熱媒液と電解質塩(Ea)が接触しても、長期的にも用いた電解質(Ea)の加水分解が低レベルにしか起きないことが保証される。
【0101】
組成物を燃料電池、充電式電池、及び/又は電池における冷却システム用のクーラントとして使用する場合、相当な導電率を有する水は、組成物の電気分解及び望ましくない水素発生を更にもたらすおそれがあり、それによって事故のリスクが上昇することになる。
【0102】
本発明による組成物が、10wt%以下、好ましくは8wt%以下、特に好ましくは6wt%以下、極めて特に好ましくは5wt%以下、特に4wt%以下、とりわけ3wt%以下の割合の、n≦2である式(I)のアルキレングリコール誘導体を含む場合、更に有利であり得る。
【0103】
n≦2である式(I)のアルキレングリコール誘導体の含有率が高いほど、更に望ましくない沸点の低下が生じることとなり、組成物の粘度の過度な低下も生じることとなる。低粘度の液体は容易に封止を破って漏出を引き起こすため、過度に低い粘度は特定の用途には望ましくないことがある。
【0104】
本発明による組成物が、5wt%以下、好ましくは4wt%以下、特に好ましくは3wt%以下、極めて特に好ましくは2.5wt%以下、とりわけ2wt%以下の割合の、n≧5である式(I)のアルキレングリコール誘導体を含む場合、更に有利であり得る。
【0105】
逆に言えば、確かに、高級同族体は組成物の粘度を高くし、それにより組成物のポンパビリティー(pumpability)を妨げる。高粘度によりポンプの出力が上昇することになり、それによりポンプのエネルギー消費量が上昇する。更に、高級同族体は上昇した融点を更に有するので、低温においてそれらが組成物から析出し得るというリスクがある。
【0106】
本発明による組成物の、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、及びグリセロールの割合が、各場合において20wt%以下、好ましくは15wt%以下、特に好ましくは10wt%以下、極めて特に好ましくは8wt%以下、とりわけ5wt%以下である場合、更に有利であり得る。
【0107】
本発明による組成物は、50℃での比熱容量が、好ましくは少なくとも2.0kJ/kg×K、特に好ましくは少なくとも2.1kJ/kg×K、極めて特に好ましくは少なくとも2.2kJ/kg×K、特に少なくとも2.3kJ/kg×Kである。
【0108】
本発明による組成物は、好ましくは少なくとも0.15W/m×Kの熱伝導率を有する。
【0109】
50C×m2/V以下、特に好ましくは45以下、極めて特に好ましくは40C×m2/V以下、特に35C×m2/V以下、とりわけ30C×m2/V以下の分極率を有する化合物もまた成分(A)として好ましく用いられる。
【0110】
使用
記載される組成物がリチウムイオン充電式電池の冷却用、好ましくはセルでの冷却用の熱媒液として使用できることは、記載される組成物の利点である。これによって、低温と高温の両方に対して充電式電池を最適な温度範囲に恒温調整し、充電式電池の操作の制限を取り除くことが可能となる。
【0111】
本発明によるクーラントは、リチウムイオン充電式電池のセルでの冷却に特に適しており、本明細書の文脈において、これは、充電式電池のセルが、セルの壁の一部分を介して、クーラントを含有する熱交換器と熱伝導するように接触していることを意味すると理解されるものとする。セルの壁がクーラントフローに密着して囲まれ、それによりクーラントに直接接触しているとさえ考えられる。
【0112】
本明細書は主として「クーラント」という従来の用語を使用しているが、これは熱の除去だけでなく、低温の充電式電池での熱の供給も指すと理解されるものとする。本明細書の文脈において及び本発明に関係する範囲では、「クーラント」は「熱媒液」と同義であると理解されるものとし、「冷却」は「温度制御」と同義であると理解されるものとする。
【0113】
本発明による熱媒液は、金属リチウムを用いないリチウムイオン充電式電池、特に好ましくは、二酸化リチウムコバルト充電式電池、チタン酸リチウム充電式電池、リチウムマンガン充電式電池、リチウムニッケルコバルトアルミニウム充電式電池、及びリン酸鉄リチウム充電式電池(これらの各々は、リチウムポリマー充電式電池として構成することもできる)の温度制御にとりわけ適している。特に好ましいのは、二酸化リチウムコバルト充電式電池、リチウムマンガン充電式電池、及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム充電式電池における使用であり、極めて特に好ましくはリチウムマンガン充電式電池及びリチウムニッケルコバルトアルミニウム充電式電池における使用である。
【0114】
一般的な使用法に従い、本明細書では「電池」及び「充電式電池」という用語は、「充電式電池」が充電式の個々の又は相互接続された化学エネルギー貯蔵手段として理解されるものとし、「電池」が充電式及び非充電式貯蔵手段の包括的用語として使用されるような方法で、使用される。よって「充電式電池」という用語は「電池」の部分集合である。
【0115】
本発明による組成物が最も重要な典型的に用いられるシーリング材と適合性があることは、本発明による組成物の更なる利点である。これは、例えば、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン(モノマー)ゴム、好ましくはEN 13956に従うもの)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、FKM(フルオロカーボンゴム、好ましくはDIN ISO 1629又はASTM D 1418に従うもの、例えばViton(登録商標))、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、及びHNBR(水素化アクリロニトリルブタジエンゴム)に当てはまる。
【0116】
本発明による組成物が最も重要な典型的に用いられる電池セル用壁材料と適合性があることは、本発明による組成物の更なる利点である。これは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)に当てはまる。
【0117】
本発明による組成物が熱ストレス及び酸化に対して安定であり、分解又は酸化の結果としての導電性生成物の形成が低減することにより、本発明による組成物の当初の低導電率が長期であっても保持されることは、本発明による組成物の利点である。
【0118】
本発明による組成物の1013hPa(標準圧力)における沸点は、好ましくは少なくとも200℃、好ましくは少なくとも210℃、特に好ましくは少なくとも220℃、極めて特に好ましくは少なくとも230℃、特に少なくとも250℃である。
【0119】
これによって、周囲温度が高くても組成物が液体のままであり、組成物上の蒸気圧が過度に増加することなく組成物が熱媒体として機能できることが保証される。したがって、本発明による組成物は高温であっても開放系に用いることができる。
【0120】
上記に明記した通り、本発明による組成物は、低過ぎず且つ高過ぎない有利な粘度を有する。
【0121】
本発明による組成物のASTM D445による100℃での動粘性率は、好ましくは最大4mm2/秒、特に好ましくは最大3mm2/秒、極めて特に好ましくは最大2mm2/秒である。
【0122】
更に、本発明による組成物が呈するASTM D445による-40℃での動粘性率は、好ましくは600mm2/秒以下、特に好ましくは500mm2/秒以下、極めて特に好ましくは400mm2/秒以下、特に350mm2/秒以下である。
【0123】
広い温度範囲にわたって、好ましくは-40℃~+100℃の温度範囲にわたって、本発明による組成物が水及びモノエチレングリコールをベースとする従来のクーラントよりも低い粘度を呈するだけでなく、従来のクーラントよりも小さい粘度変化も呈することは、本発明による組成物の利点である。
【0124】
例えば、50wt%の水と50wt%のモノエチレングリコールの混合物は約-37℃で既に固化し、したがって上述の好ましい温度範囲では用いることができない。このような混合物の動粘性率は、-20℃で約300mm2/秒である。
【0125】
本発明による典型的な混合物が-40℃で固体ではなく、-40℃で約250~500mm2/秒、及び-20℃で約100mm2/秒以下の動粘性率を有することは、本発明の利点である。
【0126】
したがって、本発明による組成物では、-40℃~+100℃の温度範囲での動粘性率の変化が約500mm2/秒以下であり、よって水とモノエチレングリコールの上述の混合物より少ない度合いで変動する。これによって、冷却システムが、搬送力出力がより低いポンプを用いることができることになるので、冷却システムにおいてクーラントを搬送するのに必要とされるエネルギーがより少なくなる。
【0127】
本明細書でパーセント、ppm、又は部で報告される量は、別段の記載がない限り、wt%、ppmw、又は重量部を指す。
【実施例
【0128】
成分(A)の電解質(E)との反応性をオンライン且つ非侵襲的な様式で決定するために、個々の及び/又は混合した成分の500MHz 1H-、470MHz 19F-、及び202MHz 31P-NMRスペクトルを、Bruker AV3-500p NMR分光計で外部DMSO標準に対して298Kで決定した。
【0129】
用いた電解液はSelectylite(登録商標)LP 57であり、これは、WO 2016/149442 A1によれば、LiPF6を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル(30:70(w/w))に溶かした1M溶液である。
【0130】
用いた成分(A)は、以下のトリエチレングリコールモノメチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノメチルエーテルに添加剤を添加した混合物であった:
【0131】
【表1】
【0132】
添加剤混合物に用いた成分は以下の作用を有する:
*非鉄金属の腐食に対する阻害剤としてのトリルトリアゾール
**アルキレングリコールエーテルの酸化を防止/低減するための酸化防止剤
***脂肪アルコールエトキシレートの混合物
【0133】
[実施例1]- 電解液単独のスペクトル
1H-NMRは、溶媒混合物のシグナルのみを示した。
【0134】
31P-NMRは、-144ppmでLiPF6の七重線、並びに-19ppm及び-34ppmで微量のジフルオロリン酸及びフッ化ホスホリルを示す弱いシグナルを示した。
【0135】
19F-NMRスペクトルは、-74ppmで二重線、並びに-85ppm及び-90ppmで微量のジフルオロリン酸及びフッ化ホスホリルを示す弱い二重線を示した。
【0136】
[実施例2]- 成分(A)と成分(E)の混合物
電解質溶液と上記の成分(A)の混合物とを周囲温度で約50:50(v/v)の比率で混合し、この温度で7日間保存した後、NMRスペクトルを298K及び333Kで記録した。
【0137】
1H-NMRは、実施例1からの溶媒混合物のシグナルだけでなく、成分(A)のシグナルも示した。
【0138】
31P-NMRは、実施例1からのスペクトルと比較して更なるシグナルは示さなかった。実施例1において-19ppm及び-34ppmで見られた弱いシグナルは、恐らく成分(A)で希釈したためにもはや検出できなかった。
【0139】
19F-NMRスペクトルは、実施例1からのスペクトルと比較して更なるシグナルは示さなかった。実施例1において-85ppm及び-90ppmで見られた弱いシグナルは、恐らく成分(A)で希釈したためにもはや検出できなかった。
【0140】
ジフルオロリン酸及びフッ化ホスホリルに関するシグナルの強化も、リン酸エステルを示す新たなシグナルの出現も、NMRスペクトル中に見られなかったため、周囲温度での7日間の間及び298K及び333KでのNMR測定において、成分(A)とLiPF6の間で反応が起こらなかったことは明らかである。
【0141】
先に実施例1で観察されたジフルオロリン酸及びフッ化ホスホリルに関するシグナルが実施例2で成分(A)を混合した後に消失したことは、希釈の作用に起因する。
【0142】
[実施例3~7]- 成分(A)及び(E)とクーラントの慣例的な構成物質との混合物
電解質溶液と上記の成分(A)の混合物を、表に示した体積比で周囲温度(約20℃)で混合し、この温度で7日間保存した後、31P-及び19F-NMRスペクトルを298K及び333Kで記録した。
【0143】
【表2】
【0144】
実施例3~7での観察は、実施例2の観察に一致する。ジフルオロリン酸及びフッ化ホスホリルに関するシグナルの強化も、リン酸エステルを示す新たなシグナルの出現も、NMRスペクトル中に見られなかった。よって、周囲温度での7日間の間及び298K及び333KでのNMR測定において、LiPF6と成分(A)又は追加で添加した構成物質との間で反応が起こらなかったことは明らかである。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
(A)少なくとも1種の式(I)
【化9】
(式中、
R 1 は、水素又はC 1 ~C 4 アルキルであり、好ましくは水素、メチル、又はエチルであり、特に好ましくは水素又はメチルであり、極めて特に好ましくは水素であり、
R 2 は、C 1 ~C 4 アルキル、好ましくはメチル、エチル、又はn-ブチルであり、特に好ましくはメチル又はn-ブチルであり、極めて特に好ましくはメチルであり、
R 3 は、水素又はメチルであり、好ましくは水素であり、
nは、算術平均で3.0~4.0の数である)
のアルキレングリコール誘導体
及び
(B)以下からなる群から選択される少なくとも1種の腐食防止剤
(Ba) オルトケイ酸エステル及び/又はアルコキシアルキルシラン
(Bb) アゾール誘導体
(Bc) 一般式(II)
【化10】
(式中、
R 4 は、6~10個の炭素原子を有する有機基であり、特に直鎖又は分枝の、好ましくは直鎖の、6~10個の炭素原子、好ましくは7~9個、特に好ましくは8個の炭素原子を有する、アルキル又はアルケニル基であり、
p及びqは互いに独立に、1~30、好ましくは1~20、特に好ましくは1~10、極めて特に好ましくは1~5、特に1~3、とりわけ1又は2の正の整数であり、
i=1~p及び1~qについて、各X i は互いに独立に、-CH 2 -CH 2 -O-、-CH 2 -CH(CH 3 )-O-、-CH(CH 3 )-CH 2 -O-、-CH 2 -C(CH 3 ) 2 -O-、-C(CH 3 ) 2 -CH 2 -O-、-CH 2 -CH(C 2 H 5 )-O-、-CH(C 2 H 5 )-CH 2 -O-、-CH(CH 3 )-CH(CH 3 )-O-、-CH 2 -CH 2 -CH 2 -O-、及び-CH 2 -CH 2 -CH 2 -CH 2 -O-からなる群から選択され、好ましくは-CH 2 -CH 2 -O-、-CH 2 -CH(CH 3 )-O-、及び-CH(CH 3 )-CH 2 -O-からなる群から選択され、特に好ましくは-CH 2 -CH 2 -O-である)
の化合物
を含む熱媒液の、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF 6 )、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF 4 )、過塩素酸リチウム(LiClO 4 )、リン酸リチウム(Li 3 PO 4 )、及びリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を電解質(E)として含むリチウムイオン充電式電池を冷却するための使用であって、
但し、組成物が、
- 1wt%未満、好ましくは0.75wt%未満、特に好ましくは0.5wt%未満、極めて特に好ましくは0.4wt%未満、特に0.3wt%未満、とりわけ0.2wt%未満の水を含む
ことを条件とする、使用。
[2]
電解質がLiPF 6 である、態様1に記載の使用。
[3]
リチウムイオン充電式電池が、二酸化リチウムコバルト充電式電池、チタン酸リチウム充電式電池、リチウムマンガン充電式電池、リチウムニッケルコバルトアルミニウム充電式電池、又はリン酸鉄リチウム充電式電池である、態様1又は2に記載の使用。
[4]
電解質が非プロトン性有機溶媒(Eb)に溶解している、態様1から3のいずれか一つに記載の使用。
[5]
非プロトン性有機溶媒(Eb)が開鎖又は環状炭酸エステルである、態様4に記載の使用。
[6]
非プロトン性有機溶媒(Eb)が式(VII):
【化11】
(式中、
R 2 及びR 3 は、成分(A)について上で定義した通りであり、
r及びsは、算術平均で3.0~4.0の数であり、
各々のr及びsについて、R 2 及びR 3 は互いに独立に、同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である)
の化合物である、態様4に記載の使用。
[7]
熱媒液の、ASTM D445による-40℃での動粘性率が、600mm 2 /秒以下である、態様1から6のいずれか一つに記載の使用。
[8]
熱媒液の50℃での比熱容量が、少なくとも2.0kJ/kg×Kである、態様1から7のいずれか一つに記載の使用。
[9]
熱媒液の熱伝導率が、少なくとも0.15W/m×Kである、態様1から8のいずれか一つに記載の使用。
[10]
構造要素R 4 -N<が、n-ヘキシルアミン、2-メチルペンチルアミン、n-ヘプチルアミン、2-ヘプチルアミン、イソ-ヘプチルアミン、1-メチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-アミノオクタン、6-メチル-2-ヘプチルアミン、n-ノニルアミン、イソ-ノニルアミン、n-デシルアミン、及び2-プロピルヘプチルアミン、又はそれらの混合物からなる群から選択されるアミンから誘導される、態様1から9のいずれか一つに記載の使用。
[11]
アゾール誘導体が、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、及び/又は水素化トリルトリアゾールからなる群から選択される、態様1から10のいずれか一つに記載の使用。
[12]
熱媒液が、
95~99.9wt%の成分(A)、及び
0.1~5wt%の成分(B)
を含む、態様1から11のいずれか一つに記載の使用。
[13]
n=3である式(I)のアルキレングリコール誘導体とn=4である式(I)のアルキレングリコール誘導体の比率が100:0~40:60である、態様1から12のいずれか一つに記載の使用。
[14]
熱媒液が、成分(A)、成分(B)、任意選択により、成分(B)とは別個の少なくとも1種の更なる腐食防止剤(C)、並びに、任意選択により、染料、消泡剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の更なる化合物からなる、態様1から13のいずれか一つに記載の使用。