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特許7366519基材用耐腐食コーティングのための持続可能な添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】基材用耐腐食コーティングのための持続可能な添加剤
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/00 20060101AFI20231016BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C23F11/00 B
C23C26/00 A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018003993
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2018135598
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】15/410,140
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(73)【特許権者】
【識別番号】518014070
【氏名又は名称】ウニベルシダーヂ フェデラル ヂ ミナス ジェライス-ウエフィエミジェー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キンレン, パトリック ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シュエット, ウェイニー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ピメンタ, ルシア ピニェイロ サントス
(72)【発明者】
【氏名】パリッシュ, キャサリン ジェーン
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】井上 猛
【審判官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-233322(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105385413(CN,A)
【文献】特表2010-521582(JP,A)
【文献】M Lebrini et.al., Inhibition Effect of Alkaloids Extract from Annona Squamosa Plant on the Corrosion of C38 Steel in Normal Hydrochloric Acid Medium, Int. J. Electrochem. Sci., 5(2010),pp.1698-1712
【文献】R M. Saleh et.al., Corrosion inhibition by Naturally Occurring Substances. VII. The effect of aqueous extracts of some leaves and fruit-peels on the corrosion of steel, Al, Zn and Cu in acids, Br.Corros.J., 1982年,Vol.17,No.3,p.131-135
【文献】K. K. Alaneme et. al., Corrosion Inhibition Behaviour of Biden Pilosa Extract on Aluminium Matrix Composites in 1M HCl Solution, The Journal of the Association of Professional Engineers of Trinidad and Tobago, Vol.44, No2, October/December 2016,pp.35-42
【文献】J. M. Ferreira Jr. et. al., Evaluation of Antioxidant Activity and Inhibition of Corrosion by Brazilian Plant Extracts and Constituents, Int. J. Electrochem. Sci., 11(2016),pp.3862-3875
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00-11/18
C23C 22/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マローロ、インガー、マンゴー;タンポポ;オオバコ;カモミラ・レクティタ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物に由来する抽出物を含む組成物をアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、又はそれらの組合せを含む基材に適用すること、並びに
基材表面を含む基材の腐食を防止することを含み、
抽出物が、80%超のDPPH値%及び80%超のCIE値%の双方を示す、基材の腐食を防止するための方法。
【請求項2】
基材に組成物を適用する工程において、組成物が、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;セイヨウタンポポ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材に組成物を適用する工程において、組成物が、マローロ;マニフィーラ・インディカ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基材に組成物を適用する工程において、組成物が、5%から20%の範囲の濃度で前記組成物中に存在する、マローロ;マニフィーラ・インディカ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含むか、又は、基材に組成物を適用する工程において、前記基材がアルミニウム合金2024 T3又はアルミニウム合金7075を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、又はそれらの組合せを含む基材の腐食を防止するための組成物であって、マローロ、インガー、マンゴー;タンポポ;オオバコ;カモミラ・レクティタ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物に由来する抽出物を含み、
抽出物が、80%超のDPPH値%及び80%超のCIE値%の双方を示す、組成物。
【請求項6】
マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;セイヨウタンポポ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
マローロ;マニフィーラ・インディカ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
5%から20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;マニフィーラ・インディカ;及びそれらの混合物を含む植物種に由来する抽出物を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
プライマーを更に含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
プライマーがポリウレタン含有化合物を含む、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金と共に使用するための腐食防止剤の分野に関する。より具体的には、本開示は、耐腐食組成物及び六価クロムを含有しない耐腐食組成物を作成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、業界は、環境に有害で発癌性があると考えられる化合物の使用を排除するための強力な規制上のニーズに対応し続けている。代表的な化合物は、腐食防止配合物に関連して使用される六価クロムを含む。その結果、不快なクロム配合物と比較して適切又は優れた腐食防止を有するクロム代替配合物を特定する必要が存在する。
【0003】
所定の程度の腐食防止を呈する実行可能な化合物でありうるクロム含有化合物のための潜在的な置換化合物のリストは大きい。しかしながら、実行可能な腐食防止候補を特定するには、重要な試験並びにそのような試験を行うための相当量の実験及び資本が必要である。
【0004】
六価クロムを含有する耐腐食性コーティングの耐腐食性に近似する又はこれを超える耐腐食性コーティングの代替物及びその製造方法が有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ、及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含む組成物を基材に適用すること、並びに、基材表面を含む基材の腐食を防止することを含む、基材の腐食を防止するための方法を検討する。
【0006】
別の態様において、基材に組成物を適用する工程では、組成物は、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;セイヨウタンポポ;コセンダングサ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む。
【0007】
更に別の態様において、基材に組成物を適用する工程では、組成物は、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む。
【0008】
更なる態様において、基材に組成物を適用する工程では、組成物は、約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む。
【0009】
別の態様において、基材に組成物を適用する工程では、基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、及びそれらの組合せを含む。
【0010】
更なる態様において、基材は、アルミニウム合金2024 T3又はアルミニウム合金7075を含む。
【0011】
更なる態様において、本開示は、基材の腐食を防止するための、バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含む組成物を検討する。
【0012】
別の態様において、組成物は、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;セイヨウタンポポ;コセンダングサ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種から選択される植物に由来する抽出物を含む。
【0013】
更なる態様において、組成物は、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ L;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む。
【0014】
別の態様において、組成物は、約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種から選択される植物に由来する抽出物を含む。
【0015】
更に別の態様において、組成物は、植物の種子、植物の果肉、植物の皮、植物の葉、及びそれらの組合せに由来する抽出物を含む。
【0016】
更なる態様では、組成物はプライマーを更に含む。
【0017】
更に別の態様において、組成物は、プリウレタン含有化合物を含むプライマーを更に含む。
【0018】
更に別の態様において、上記の植物抽出物を含む組成物は、コーティング配合物に組み込まれている添加剤である。
【0019】
更なる態様は、腐食を防止するための、バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含むコーティングに関する。
【0020】
別の態様において、コーティングは、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;セイヨウタンポポ;コセンダングサ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種から選択される植物に由来する抽出物を含む。
【0021】
更なる態様において、コーティングは、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む群から選択される植物に由来する抽出物を含む組成物を含む。
【0022】
別の態様において、コーティングは、約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの混合物を含む植物種に由来する抽出物を含む組成物を含む。
【0023】
更なる態様は、基材の腐食を防止するための、バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含むコーティングを含む基材に関する。
【0024】
更なる態様において、基材は、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;セイヨウタンポポ;コセンダングサ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含むコーティングを含む。
【0025】
別の態様において、基材は、約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの混合物を含む植物種に由来する抽出物を有する組成物を含むコーティングを含む。
【0026】
更なる態様において、基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、及びそれらの組合せを含む。
【0027】
別の態様において、基材は、アルミニウム合金2024 T3、アルミニウム合金7075、及びそれらの組合せを含む。
【0028】
更なる態様は、バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含むコーティングを有する基材を含む物体に関する。
【0029】
別の態様において、物体は、約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの混合物を含む植物種に由来する抽出物を有する組成物を含む基材を含む。
【0030】
更なる態様において、物体は、定常構造、又は、限定せずにビークルを含む、可動構造を含む。
【0031】
更に別の態様において、ビークルは、有人航空機、無人航空機、有人宇宙船、無人宇宙船、有人回転翼機、無人回転翼機、有人地上ビークル、無人地上ビークル、有人海上ビークル、無人海上ビークル、有人海面下ビークル、無人海面下ビークル、及びそれらの組合せを含む。
【0032】
本開示のバリエーションは一般用語で記載されており、ここから添付の図面を参照することになるが、それらの図面は必ずしも一定の縮尺比で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】1000ppmの濃度で抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料に関して、適用された電位(V)に応じてプロットされた電流密度(A/cm)を示すグラフである。
図2】1000ppmの濃度で抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料に関して、5000秒の間、-0.953Vでの分極曲線(アノード掃引)を示すグラフである。
図3】1000ppmの濃度で抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料に関して、5000秒の間、-0.60Vでの分極曲線(アノード掃引)を示すグラフである。
図4】抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料に対して、1000ppmの濃度の試験された植物抽出物に関して、5000秒の間、-0.60Vでの分極曲線(アノード掃引)を示すグラフである。
図5】1000ppmの濃度で抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料と、1000ppmの濃度の植物抽出物に関して、適用された電位(V)に応じてプロットされた電流密度(A/cm)を示すグラフである。
図6】そのような試料のDPPH%掃去ラジカル試験の植物抽出物試料に関して、腐食防止効率%(CIE%)に応じた相関プロットを示すグラフである。
図7-11】本開示の態様を概説するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の態様は、耐腐食特性を有すると現在決定されている植物属及び植物種からの特定の植物抽出物を含む耐腐食性組成物に関する。本開示の更なる態様は、耐腐食性組成物を含む基材のためのコーティング、並びに基材表面、特にアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金組成物に組成物及びコーティングを適用することを含む基材表面の腐食を防止する方法に関する。
【0035】
本明細書において「腐食防止コーティング」と同等にも称される、成功した腐食防止コーティングは、抗酸化剤特性を呈する天然に存在する植物種からの抽出化合物(例えば、「抽出物」)を含む、化合物を取り込むことにより、作製されうる。多くの天然に存在する抗酸化化合物が種々の植物種に存在し、それらから抽出されていることが見出されている。しかしながら、全ての天然に存在する抗酸化化合物候補物質が、特定の基材物質に対する腐食を防止する目的でコーティング配合物に適切な耐腐食性を付与するとは限らない。「十分な腐食防止特性」とは、例えば六価クロム含有化合物のような非天然耐腐食性配合物の耐腐食特性とほぼ同等又はそれ以上の耐腐食特性を意味する。
【0036】
実際に、多くの天然に存在する植物属及びそのような属の種は、ある程度の抗酸化特性を示しうるが、そのような属及び種の全てが、これに限定されるものではないが、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金等を含む基材上の腐食を防止することを含む、腐食を防止する目的のための耐腐食性配合物に、十分な程度の耐腐食性に寄与する抽出物を生成するわけではないことが決定されている。したがって、重要な労働集約的な試行錯誤の努力は、腐食からの保護の観点から、基材を保護するための耐腐食性配合物に含める候補植物属又は植物種からの必要な有効量の抽出物を得るために費やすことができ、それは、そのような耐腐食性配合物が、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等のような基材材料に対して準標準程度の腐食保護をもたらすことを発見するためのみに費やすことができる。
【0037】
本開示によれば、基材の腐食を防止する目的で耐腐食性配合物に所定の定量可能な耐腐食特性を提供する植物属及び植物種からの植物抽出物を予測的に選択する方法が現在発見されている。好ましくは、基材はアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などを含む。
【0038】
DPPH(ジフェニルピコリルヒドラジル)は、安定で商業的に入手可能な有機窒素ラジカルであり、517nmでUV-可視吸収極大を有する。還元すると、DPPH溶液の紫色の溶液の色が薄れ、反応を分光光度計によって比色計でモニターすることが可能になる。溶液の開始紫色が黄色っぽい色になるまでの損失は、溶液の抗酸化能(すなわち、ラジカル捕捉)が増加したことを示している。したがって、抗酸化能(すなわち、ラジカル捕捉)は、DPPHの防止百分率(%)として表される。分光光度計は、ブランク/コントロールのDPPH溶液及び試料の吸収を測定する。ブランクDPPH溶液の吸収値から試験した溶液(試料)を引いたものは、捕捉されたラジカルの量である。
【0039】
本開示によれば、選択された植物はDPPHアッセイで試験され、その後線形掃引ボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー分析のために提出した。既知の特徴を有する化合物のコレクションは、参照点を生成するための「コントロール」としてサンプリングされた。例えば、チオール基を有するチオフェノールは、満足のいく腐食防止力を有することが知られており、電気化学試験におけるコントロールとして使用された。本開示によれば、-0.6Vに保持された電位で、基材に適用された腐食防止配合物(1ppmから1000ppmの範囲の濃度で試験されたもの)の添加剤として有用であることが判明した植物抽出物は、チオフェノール及び他のコントロール基準点と比較して、約500ppmから約1000ppmの範囲の濃度で特に良好な結果を示した。
【0040】
本開示によれば、ある程度の抗酸化能を有すると考えられる、天然に豊富に見出される植物を含む植物が同定され、収集される。より具体的には、キク科5種、バンレイシ科3種、アトロパープレア(Astropurpurea)科1種、トウダイグサ(Eurphorbiaceae)科1種を採取し、葉、枝、果実、パルプ、皮及び種子に分離し、その後抽出プロセスに付した。
【0041】
植物抽出物を得る更に検討された態様は、植物種子、植物果肉、植物の皮又はそれらの組合せを処理して試料を得ること;試料に溶媒を添加すること;及び乾燥した抽出物を溶媒から沈殿させることを含む方法により、植物集出物試料を抽出することを検討する。溶媒は試料から実質的に除去されることが理解される。試料を「処理する」とは、自然の植物形態(例えば、種子、葉、皮など)を還元形態に還元するために達成することができる任意の化学的又は物理的プロセスを含む。このような処理には、これに限定されないが、浸出、粉砕などが含まれる。さらに、試料の浸出は、典型的には溶媒の添加によって試料を軟化又は破壊するプロセスを指すと理解される。
【0042】
更なる抽出プロセスは以下の通りに実行された:コセンダングサ、セイヨウタンポポ及びカモミラ・レクティタ(Chamomilla recutida)の地上部分、マローロの種子及び皮、並びにニフィーラ・インディカ及びアオノキリンソウの葉を液体窒素下で冷凍し、粉砕し、抽出前に冷凍乾燥させた。アルコール、メタノール又はエタノール、及び水と混合したエタノール(又はエタノール70%、及び、7:3(v/v)のエタノール:水と同等に称される。)のような極性有機溶媒を用いて植物材料を抽出することにより、抽出物を得た。20分間の撹拌下、1グラム(1.0g)の植物材料を、3.0mLのメタノールで抽出した。抽出は三回実施した。減圧下45℃で、生じた組み合わされた液体抽出物をエバポレートした。得られた抽出物を4℃で光から避けた。アノナ・スカモサの皮について、最良の溶媒エクストラクターは、エタノール/水(7:3)、又はエタノール70%v/vとも称される溶液であった。20分間の撹拌下、1グラム(1.0g)の植物材料を、3.0mLのメタノール70%v/vで抽出した。抽出は三回実施した。減圧下50℃で、生じた組み合わされた液体抽出物をエバポレートした。残りの水を冷凍乾燥し、抽出物を4℃で光から避けた。
【0043】
ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイを実施することにより、5の異なる植物種から37の植物抽出物を抽出した。そのようなDPPHアッセイは、電子を抗酸化剤含有化合物から酸化剤へ移すためのアッセイの能力に基づく。DPPHラジカル捕捉において60%の効率を表す3つの植物試料が、潜在的な抗酸化剤源として選択された。加えて、チオフェノール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアゾール及び6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾールもまた、DPPHラジカル捕捉アッセイにおけるコントロールとして評価され確立され、それぞれ、90.69%;88.55%及び88.42%のラジカル捕捉能を示した。アルファトコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)及び没食子酸もまた、ポジティブコントロールとして使用され、それぞれ、90.17%;89.01%及び88.80%のラジカル捕捉を示した。
【0044】
1)DPPHアッセイ、及び2)電気化学的技術(直線掃引ボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー分析)を行って腐食を決定した植物抽出物試料について得られた結果の相互関係を示すことにより、アルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金を含む基材材料に使用するための耐腐食性配合物に耐腐食性を付与する候補材料の能力に関して、それらの有効性を正確に予測できることが判明した。
【0045】
1)DPPHラジカル捕捉アッセイ、及び2)電気化学的技術(直線掃引ボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー分析)を行った試料に関して得られた特定の結果は様々であるが、特定の抽出物が、値間でほぼ1:1(+/-10%)の相関関係を示し、値が約80.00以上であるとき、植物抽出物は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金を含む基材の腐食を防止するために、アルミニウム及びアルミニウム合金基材のための腐食防止配合物に組み入れることができる腐食防止特性を有することが判明した。
【実施例
【0046】
実施例1~7
耐腐食特性を有する化合物チオフェノール2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾールをコントロールとして使用した。追加で、アルファ-トコフェロール、アスコルビン酸及び没食子酸(Sigma-Aldrich)を、既知で認識されている抗酸化活性を有する標準化合物として使用した。
【0047】
DPPHラジカル捕捉アッセイ-抗酸化試験(Erkin, Cetin, and Ayranci, 2011;Roesler, Carharino, Malta, Eberlin & Pastore, 2007)を、Thermo Scientific Spectrophotometer(Multiskan GO processed by SkanIt Software 3.2.1.4RE)中で行った。各物質の6つの異なる濃度(1000、500、250、125、62.5及び31.25μg/mL)を有する96ウェルマイクロプレート上でアッセイを実施した。DPPHメタノール溶液(250μL)0.004%(w/v)を、試験される化合物のメタノール溶液(10μL)に添加した。30分後、517nmでの吸光度を決定した。コントロールを抽出なしで上記のように調製し、メタノールをベースライン補正に使用した。ラジカル捕捉を、防止割合として表し、式:
腐食防止%=[(ADPPH-AExt)/ADPPH]×0.100
[式中、ADPPHは、DPPHブランク試料の吸光度値であり;AExtは、抽出試料の吸光度値と対応するブランクの吸光度値との間の差として評価された抽出試料の吸光度値である。]
を介して計算した。
【0048】
回転ディスク実験-Series G-750ポテンショスタットを備えた1000rpmの回転銅ディスク電極回転機を使用して、白金カウンター電極及びガラスColonel Ag/AgCl参照電極で、Pine Research Instrument上で直線掃引ボルタンメトリー(LSV)を行った。Gamry Frameworkのソフトウェアが使用された。銅ディスク(1cm)作用電極(OD10mm)を、測定値間で研磨された電極と共に使用した。LSVを電位走査として測定し、0.002V/秒の走査速度で、-0.157Vから-1.150Vの間で行った。測定前に、ポンプを介して空気を溶液に導入した。5000秒にわたり-0.953Vで、電流減衰値を決定した。大部分の市販の(既知の)化合物に関して、電流プラトーは-0.7から-0.6Vの間に存在することを観察した。電流プラトーは、腐食防止剤の機能を示すことができるため、クロノアンペロメトリー実験を-0.6Vに維持した電位で行った。リン酸緩衝食塩水(PBS)バッファータブレット(Sigma P4417)を用いて溶液を調製した。99%+純銅の純度は、Baird DV4アーク/スパーク発光分析装置を用いて確認された。二つの異なる実験を行った:
1.-0.157Vから-1.150Vの範囲で適用された電位に従った電流の測定;
2.5000秒中-0.953V及び-0.6Vでの分極曲線(アノード掃引)、電流減衰v.時間
【0049】
初回の実験を以下の濃度で行った:1000、500、100及び10ppm。-0.6Vに維持された電位での実験を1000ppmで実施した。各実験のセットの前に、ブランク試料(100mLのPBS)を行った。
【0050】
腐食防止効率百分率(CIE%)は、以下の式を使用して計算される。
CIE%=[1-i(防止剤あり)(S)/i(防止剤なし)(B)×100、
[式中、CIE%は、腐食防止効率百分率であり;I(阻害剤あり)(S)は、決定された電位における抽出試料に関して5000秒で測定された電流であり、I(阻害剤なし)(B)は、100mLのリン酸緩衝溶液を含む、相当するブランク試料に関して5000秒で測定された電流である。
【0051】
図1~3は、上記で同定されたコントロール材料の評価の結果を示す。経時的に測定された電流で、-0.800Vに維持されたポテンショスタットを用いて、安定状態のクロノアンペロメトリーを使用した。図3を参照のこと。使用された手順は以下の通りであった。較正され、研磨された銅、アルミニウム及び白金ディスク作用電極が、11.3mmのOD×1.5mmの厚さの寸法を有するようにした。150mLのビーカーを、固定し、リン酸緩衝食塩水(Sigma Aldrich-P4417-100TAB;0.137M、0.8%のNaCl及び0.01Mのリン酸バッファー、0.0027Mの塩化カリウム)を含む5%のNaCl溶液で満たした。白金ワイヤ参照電極光を脱イオン水で洗い流し、拭き取り、ビーカーの側面に固定した。ポテンショスタット作用電極ケーブルを回転ディスク回転機と接続し、電極がビーカー内で互いに接触しないことを確認した。速度を1000rpmに調整して電源を入れた。既知の腐食防止剤の濃度を有するブランク電解質及び溶液を確証のために試験した。
【0052】
本開示の態様は、銅回転ディスク電極を利用する。銅回転ディスク電極は、生じている酸素還元を観察するアッセイを可能にする。特定の理論に縛られるものではないが、銅はアルミニウム腐食の動力学に関与する主要な要素であるため、銅回転ディスク電極の使用は、アルミニウム及びアルミニウム合金基材を用いた使用のための候補材料の耐腐食電位を決定するのに重要であると考えられる。耐腐食性に関する事前分析には、アルミニウム及びアルミニウム合金基材と共に使用するための化合物の耐腐食性の適切な可能性を識別しそうにない電極(例えば鋼電極)を利用した。例えば、リン酸カリウムは、アルミニウム成分の腐食を防ぐことが知られているが、CIE%に関する既知のアッセイ試験は、鋼電極の使用により、リン酸カリウムに関してネガティブな結果をもたらすであろう。
【0053】
チオフェノール及び6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾールは、アルミニウム合金における腐食防止(Vukmirovic et al., 2003)、また、1000ppmでのDPPH捕捉活性(それぞれ、90.69%及び88.42%)を提供すると報告された。更に、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアゾールは、アルミニウム腐食の文献では既知である(浸漬手順-ASTM G31-72において低パフォーマンスの腐食防止を示す。)。しかしながら、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアゾールは、250、500及び1000ppmの試料濃度(それぞれ74.81%、83%及び83.5%)で良好なDPPHラジカル捕捉活性を示した。ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、強力な合成抗酸化剤として知られる。BHTは、250、500及び1000ppm(それぞれ69%、85%及び89%で)で良好なDPPHラジカル捕捉%を示した。没食子酸、アルファトコフェロール及びアスコルビン酸を、DPPH抗酸化剤試験におけるポジティブコントロールとして使用した。実施例1A-7B、表1を参照のこと。
【0054】
実施例8~39
8種を採取し、抽出プロセスへ付した。最適溶媒として選択されたメタノールを使用して、異なる溶媒及び溶媒混合物を評価した。DPPHラジカル捕捉アッセイを実施することにより、5の異なる植物種から37の植物抽出物を抽出した。試験された試料(500ppm及び1000ppm)に関するDPPHの防止割合(%)を上の表1に示す。その後、植物抽出物試料に線形掃引ボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー実験を施すことにより、腐食防止効率割合(CIE%)を試験し、植物試料及びコントロール試料に関するDPPH%とCIE%の両方の結果を下の表2に示す。
【0055】
チオフェノール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾール、アルファトコフェロール(ビタミンE)、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビン酸(ビタミンC)及び没食子酸を、線形掃引ボルタンメトリー及びクロノアンペロメトリー実験における既知の腐食防止コントロールとして評価した。適用された電位を示す図1に、電流変異曲線を示す。クロノアンペロメトリー実験を、-0.953Vに維持した電位で行い、結果を図2に示した。1000ppmの濃度で防止剤に適用された電位(V)に応じて電流密度(A/cm)をプロットした。プロットされた結果は、チオフェノールを除く試験された防止剤に関して、-0.953Vの電位ではプラトーは存在しないことを示した。
【0056】
電位を変更し、-0.70Vに維持された電位を用いてアノード掃引曲線を得た(図3を参照のこと。)。いくつかの化合物が-0.60Vに近いプラトーを有することを観察した場合、-0.60Vに維持された電位で新しい実験を行った。
【0057】
マローロの種子、果肉及び皮並びにアノナ・スカモサの果実を分離させ、冷凍し、冷凍乾燥させた。液体窒素下で、事前冷却モルタル及びすりこぎを使用して種子を粉砕した。冷凍粉末を管に移し、二日間冷凍乾燥させた。20分間の超音波処理下、ヘキサン及びエタノール(70%v/v)での浸軟により、計量した材料を連続的に抽出した。浸軟は、例えば溶媒のような液体に浸すことによって固体が柔らかくなるか又は構成要素に分離する方法であると理解される。種子/溶媒の割合は1:3(w/v)であった。減圧下(700mm Hg、減圧ポンプ)、ロトエバポレーターを使用して、溶媒を除去した。生じたヘキサン抽出物を、薄黄色の油の形態、乾燥重量収率31.5%で得た。生じたエタノール抽出物を、褐色のシロップの形態、乾燥重量収率14%で得た。マローロの皮及びアノナ・スカモサの果肉を、粉砕及び冷凍乾燥後、20分間の超音波処理下でエタノール75%での浸軟により抽出した。皮/溶媒の割合は1:3(w/v)であった。圧力下(700mm Hg、減圧ポンプ)、ロトエバポレーターを使用して、溶媒を除去した。生じたエタノール抽出物を、褐色のシロップの形態、乾燥重量収率22.4%で得た。生じたアノナ・スカモサの皮の抽出物を、暗色のシロップの形態、乾燥重量20.2%で得た。
【0058】
液体窒素下、事前冷却したすりこぎ及びモルタルを使用して、インガー種の葉を粉砕し、冷凍粉末を管に移し、二日間冷凍乾燥させた。20分間の超音波処理下、メタノール(MeOH)で計量した材料を抽出した。減圧下での溶媒の除去後、葉のメタノール抽出物を得た。葉の抽出物を、4℃の冷暗下で維持した。
【0059】
得られた抽出物を、DPPHラジカル捕捉剤アッセイで検査した。得られた抽出物を、DPPHラジカル捕捉剤アッセイで検査した。各物質の5つの異なる濃度(500、250、125、62.5及び31.25μg/mL)を有する96ウェルマイクロプレート上で、抗酸化剤試験(Erkan, Cetin., & Ayranci. 2011;Roesler, Catharino, Malta, Eberlin, & Pastore, 2007)を行った。DPPH MeOH溶液(250μL)0.004%(w/v)を、試験される化合物のMeOH溶液(10μL)に添加した。492nmでの吸光度を30分後に決定した。コントロールを抽出なしで上記のように調製し、メタノールをベースライン補正に使用した。ラジカル捕捉を、防止割合として表し、以下の式:
を使用して計算した。
防止%=[(ADPPH-Aext)/ADPPH].100
[式中、ADPPHは、DPPHブランク試料の吸光度値であり、AExtは試験溶液の吸光度値である。]AExtを試験溶液の吸光度値とそのブランクの吸光度値との間の差として評価した。乾燥した抽出物及び単離した化合物の500μg/mLの最終濃度で、IC%値を報告する。
【0060】
様々な植物種の一般に認められた「省略表現」の記載は、例えば、マローロ(A.crassiflora)はマローロ(Annona crassiflora)と同等の用語であること等のように、許容できる程度に省略形で記載する。更に、EtOHは、エタノールと同等の化学的な「省略表現」であり、MeOHは、メタノールと同等の「省略表現」である。各10gの量の抽出物を、5つの植物から以下の通り得た:
1-マローロ-種子の抽出物
2-マローロ-皮の抽出物
3-インガー種-葉の抽出物
4-マニフィーラ・インディカ-葉の抽出物
5-アノナ・スカモサ-皮の抽出物

コントロール実施例1A及び1B
コントロール実施例2A及び2B
コントロール実施例3A及び3B
コントロール実施例4A及び4B
コントロール実施例5A及び5B
コントロール実施例6A及び6B
コントロール実施例7A及び7B
実施例8A及び8B
実施例9A及び9B
実施例10A及び10B
実施例11A及び11B
実施例12A及び12B
実施例13A及び13B
実施例14A及び14B
実施例15A及び15B
実施例16A及び16B
実施例17A及び17B
実施例18A及び18B
実施例19A及び19B
実施例20A及び20B
実施例21A及び21B
実施例22A及び22B
実施例23A及び23B
実施例24A及び24B
実施例25A及び25B
実施例26A及び26B
実施例27A及び27B
実施例28A及び28B
実施例29A及び29B
実施例30A及び30B
実施例31A及び31B
実施例32A及び32B
実施例33A及び33B
実施例34A及び34B
実施例35A及び35B
実施例36A及び36B
【0061】
以下の三(3)の植物抽出物は、1000ppmで良好なDPPHラジカル捕捉活性を示した(「良好な」DPPHアッセイは、>85%のDPPHラジカル捕捉アッセイ活性であると理解される。):コセンダングサ、マローロ、及びアノナ・スカモサ。コセンダングサの葉及び枝をメタノールで抽出し、1000ppmのメタノール抽出物は85.05%の抗酸化剤活性を示した。マローロの果実を、種子、果肉及び皮に分離し、メタノールで抽出し、表1及び2表される抗酸化剤活性を示した。
【0062】
1)高い比率のDPPHラジカル捕捉試験結果(約80%超);及び2)高い比率のCIE割合に関する最高のパフォーマンスの植物抽出物の結果を、必要なレベルの腐食防止を有すると知られている(比較のための)様々なコントロール化合物[チオフェノール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾール、アルファトコフェロール(ビタミンE)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸(ビタミンC)、及び没食子酸]のパフォーマンスと併せて、以下表2に記載する。
【0063】
表2に示すように、1000ppmの濃度のコセンダングサ、アノナ・スカモサの皮及びマローロの皮の植物抽出物試料はすべて、80%超のDPPH値%及びCIE値%を生成する。
【0064】
図4は、抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料に対して、1000ppmの濃度の試験された植物抽出物に関して、5000秒の間、-0.60Vでの分極曲線(アノード掃引)を示すグラフである。図5は、1000ppmの濃度で抗酸化作用を有することが知られているコントロール化合物試料と、1000ppmの濃度の植物抽出物に関して、適用された電位(V)に応じてプロットされた電流密度(A/cm)を示すグラフである。図6は、DPPH%掃去ラジカル試験の植物抽出物試料に関して、腐食防止効率(CIE%)に応じた相関プロットを示すグラフである。
【0065】
表3で以下に示す抽出物試料を、5%及び205の濃度でメタノールに溶解し、その後、以下の通りにプライマー配合物に取り込んだ:8部のDuxone DXPUポリウレタン;1部のDuxone DX700触媒。Duxone DX 700溶媒希釈剤もまた添加した。(Duxone製品は、DuPontにより製造される)。ふるい上での濾過を介して、固体を除去した。ソルゲル(Desogel EAP-9(Gol Airlines))を含むプライマーを使用して、アルミニウム2024 T3パネルをコーティングした。その後、抽出物配合物を塗布することによりパネルをコーティングした。参照のため、20%の濃度のVanlube 829の配合物(RT Vanderbilt Co.)もまた調製した。アルミニウム2024 T3パネルをVanlube 829を塗布することによりコーティングした。その後、ASTM D7091-13に従ったひっかき試験のためにパネルを調製した。336時間の塩水噴霧試験(ASTM B117)後、マローロの皮及びマニフィーラ・インディカの葉の抽出物を含有する抽出物/プライマー配合物試料でコーティングされたアルミニウムパネルが見え、走査電子顕微鏡法(SEM)後に、Vanlube 829でコーティングされたパネルと実質的に同様にある程度まで、パネルを腐食から保護しているように見えた。他の植物抽出物試料を得るために使用される本明細書に記載する方法及びプロトコールを介して、マニフィーラ・インディカの抽出物試料を得た。ひっかき試験ASTM 1654を介して条件づけられたパネルの5%塩水噴霧試験の試験結果を以下表3に示す。上の表3で試験、報告された抽出物のそれぞれは、85%超の腐食防止効率を表した。
【0066】
図7~10は、本開示の態様を概説するフローチャートである。本開示の一態様によれば、図7は、植物抽出物試料についてジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイを実施すること 71、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ腐食防止値を得ること 72、植物抽出物試料の腐食防止効率割合を得ること 73、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイの値を、植物抽出物試料の腐食防止効率割合と比較すること 74、及び基材材料の腐食防止コーティングに使用するために、約80%超のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ値と、約80%超の腐食防止効率割合の両方を呈する植物抽出物を選択すること 75を含む、アルミニウム及びアルミニウム合金の必要なレベルの腐食防止を有する植物抽出物を選択するための予測方法70を概説する。
【0067】
本開示の更なる態様によれば、図8は、植物抽出物試料についてジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイを実施すること 81、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ腐食防止値を得ること 82、植物抽出物試料について直線掃引ボルタンメトリー試験を実施すること 86、複数の植物抽出物試料のそれぞれの腐食防止効率割合を得ること 83、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイの値を、植物抽出物試料の腐食防止効率割合と比較すること 84、及び腐食防止コーティングに使用するために、約80%超のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ値と、約80%超の腐食防止効率割合とを呈する植物抽出物を選択すること 85を含む、アルミニウム及びアルミニウム合金の必要なレベルの腐食防止を有する植物抽出物を選択するための予測方法80を概説する。図7に示す態様は、図8に示す方法に取り込むことができる。
【0068】
本開示の別の態様によれば、図9は、複数の植物抽出物試料を抽出すること 91、植物抽出物試料についてジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイを実施すること 81、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ腐食防止値を得ること 82、植物抽出物試料について直線掃引ボルタンメトリー試験を実施すること 86、植物抽出物試料の腐食防止効率割合を得ること 83、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイの値を、植物抽出物試料の腐食防止効率割合と比較すること 84、及び腐食防止コーティングに使用するために、約80%超のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ値と、約80%超の腐食防止効率割合の両方を呈する植物抽出物を選択すること 85を含む、アルミニウム及びアルミニウム合金の必要なレベルの腐食防止を有する植物抽出物を選択するための予測方法90を概説する。図97-8に示される態様は、図9に示される方法に取り込むことができる。
【0069】
本開示の更に別の態様によれば、図10は、試料を得るために植物の種子、植物の果肉、植物の皮又はそれらの組合せを処理すること 101、試料に溶媒を添加すること 102、溶媒から抽出物を得ること 103、植物抽出物試料についてジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイを実施すること 81、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ腐食防止値を得ること 82、植物抽出物試料について直線掃引ボルタンメトリー試験を実施すること 86、植物抽出物試料の腐食防止効率割合を得ること 83、植物抽出物試料のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイの値を、植物抽出物試料の腐食防止効率割合と比較すること 84、及び腐食防止コーティングに使用するために、約80%超のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉アッセイ値と、約80%超の腐食防止効率割合の両方を呈する植物抽出物を選択すること 85を含む、アルミニウム及びアルミニウム合金の必要なレベルの腐食防止を有する植物抽出物を予測的に選択するための予測方法100を概説する。図7~9に示される態様は、図10に示される方法に取り込むことができる。
【0070】
図11は、本開示の態様を示すフローチャートであり、これにより、植物抽出物を含む組成物を基材112に適用すること及び基材114の腐食を防止することを含む、腐食を防止するための方法110が示される。
【0071】
本開示の変形例及び代替例は、例えば、より大きな部品及び構造体の製作に使用される構成要素及び部品の製造並びに使用を含む、任意の寸法の構成要素及び部品など、様々な構成要素及び部品を含むがこれらに限定されない、様々なアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金基材の製造並びにコーティングに関する。そのような構成要素及び部品は、ブリッジトラス、支柱、一般的な構造物、建物等を含むがこれらに限定されない静止物の外部又は内部に配置されるように設計された構成要素及び部品を含むが、これらに限定されない。
更なる構成要素及び部品は、大気及び宇宙ビークルとその他の物体、並びに、宇宙又は例えば有人若しくは無人ビークル及び物体のような他の上部大気環境での使用されるように設計された構造物を含むが、これらに限定されない全てのビークルタイプを含むがこれらに限定されない非静止物の製造に使用される構成要素及び部品を含むが、これらに限定されない。検討された物体は、例えば、航空機、宇宙船、衛星、ロケット、ミサイルなどのビークルを含むがこれらに限定されず、したがって、有人及び無人の航空機、有人及び無人の宇宙船、有人及び無人の地球上ビークル、有人及び無人の地球外ビークル、並びに有人及び無人の平らな表面及び有人及び無人の表面下の水媒介輸送ビークルと物体を含む。
【0072】
更なる態様が以下の条項に従って説明される。
【0073】
条項1.バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含む組成物を基材に適用すること、並びに基材表面を含む基材の腐食を防止することを含む基材の腐食を防止するための方法。
【0074】
条項2.基材に組成物を適用する工程において、組成物が、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;セイヨウタンポポ;コセンダングサ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項1に記載の方法。
【0075】
条項3.基材に組成物を適用する工程において、組成物が、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項1又は2に記載の方法。
【0076】
条項4.基材に組成物を適用する工程において、組成物が、約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
条項5.基材に組成物を適用する工程において、基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、及びそれらの組合せを含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
条項6.基材に組成物を適用する工程において、前記基材がアルミニウム合金2024 T3又はアルミニウム合金7075を含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
条項7.基材の腐食を防止するための組成物であって、バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含む、組成物。
【0080】
条項8.マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;セイヨウタンポポ;コセンダングサ;セイヨウオオバコ;カモミラ・レクティタ;ソリダゴ・キレンシス(Solidago chilensis);及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項7に記載の組成物。
【0081】
条項9.マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項7又は8に記載の組成物。
【0082】
条項10.約5%から約20%の範囲の濃度で組成物中に存在する、マローロ;アノナ・スカモサ;マニフィーラ・インディカ;コセンダングサ;及びそれらの混合物を含む植物種に由来する抽出物を含む、条項7から9のいずれか一項に記載の組成物。
【0083】
条項11.植物属に由来する抽出物が、植物種、植物の果肉、植物の皮、植物の葉、及びそれらの組合せから抽出される、条項7から10のいずれか一項に記載の組成物。
【0084】
条項12.プライマーを更に含む、条項7から11のいずれか一項に記載の組成物。
【0085】
条項13.プライマーがポリウレタン含有化合物を含む、条項12に記載の組成物。
【0086】
条項14.コーティング配合物中の添加剤として使用される、条項12に記載の組成物。
【0087】
条項15.バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含む、腐食を防止するためのコーティング。
【0088】
条項16.マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項15に記載のコーティング。
【0089】
条項17.バンレイシ、インガー、マンゴー;タンポポ;センダングサ;オオバコ;カモミラ;アオノキリンソウ;及びそれらの組合せを含む植物属に由来する抽出物を含む、腐食を阻害するための化合物を含む基材。
【0090】
条項18.化合物が、マローロ;インガー(種);マニフィーラ・インディカ;アノナ・スカモサ;コセンダングサ;及びそれらの組合せを含む植物種に由来する抽出物を含む、条項17に記載の基材。
【0091】
条項19.アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、及びそれらの組合せを含む、条項17又は18に記載の基材。
【0092】
条項20.基材が、アルミニウム合金2024 T3、アルミニウム合金7075、及びそれらの組合せを含む、条項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
本開示の要素又はその例示的態様を提示する際に、冠詞「1つの(「a」「an」)」「その(「the」)」及び「前記(「said」)」は、要素の一又は複数が存在することを意味すると意図される。用語「備える(「comprising」)」「含む(「including」)」及び「有する(「having」)」は、包括的であり、列挙された要素以外に追加的要素が存在しうることを意味すると意図される。本開示は特定の態様について記載されてきたが、これらの態様の詳細は、限定と解釈されるべきではない。本開示の好ましい変形例及び代替例が例示及び記載されたが、開示の主旨及び範囲から逸脱しなければ、その中で様々な変更及び代用を行うことができると理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11