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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20231017BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022072417
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2018137954の分割
【原出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2022100366
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】向井 章
(72)【発明者】
【氏名】梶原 瑛祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大望
(72)【発明者】
【氏名】蔵口 雅彦
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-529639(JP,A)
【文献】特開2017-059599(JP,A)
【文献】特表2016-539496(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132284(WO,A1)
【文献】特開2012-004486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 21/338
H01L 29/812
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極であって、前記第1電極から前記第2電極への方向は第1方向に沿う、前記第2電極と、
第3電極であって、前記第3電極の前記第1方向における位置は、前記第1電極の前記第1方向における位置と、前記第2電極の前記第1方向における位置と、の間にある、前記第3電極と、
Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1層であって、前記第1層は、第1~第5部分領域を含み、前記第4部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、前記第5部分領域から前記第2電極への方向は、前記第2方向に沿い、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第2方向に沿い、前記第1部分領域は、前記第1方向において、前記第4部分領域と前記第3部分領域との間にあり、前記第2部分領域は、前記第1方向において、前記第3部分領域と前記第5部分領域との間にある、前記第1層と、
シリコン及び窒素を含む第1絶縁層であって、前記第1絶縁層は、第1層間領域及び第2層間領域を含み、前記第1部分領域から前記第1層間領域への方向は、前記第2方向に沿い、前記第2部分領域から前記第2層間領域への方向は、前記第2方向に沿う、前記第1絶縁層と、
Alx2Ga1-x2N(0<x1<x2≦1)を含む第2層であって、前記第2層は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第1層間領域との間に設けられた第1中間領域と、前記第2方向において前記第2部分領域と前記第2層間領域との間に設けられた第2中間領域と、を含む、前記第2層と、
AlNを含む第3層であって、前記第3層は、第1~第3窒化物領域を含み、前記第1層間領域は、前記第2方向において前記第1中間領域と前記第1窒化物領域との間にあり、前記第2層間領域は、前記第2方向において前記第2中間領域と前記第2窒化物領域との間にあり、前記第3窒化物領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第3電極との間にあり、前記第3窒化物領域の結晶性は、前記第1窒化物領域の結晶性よりも高く、前記第2窒化物領域の結晶性よりも高い、前記第3層と、
を備えた、半導体装置。
【請求項2】
第2絶縁層をさらに備え、
前記第2絶縁層は、第1~第3絶縁領域を含み、
前記第1窒化物領域は、前記第2方向において、前記第1層間領域と前記第1絶縁領域との間にあり、
前記第2窒化物領域は、前記第2方向において、前記第2層間領域と前記第2絶縁領域との間にあり、
前記第3絶縁領域は、前記第2方向において、前記第3窒化物領域と前記第3電極との間にある、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3絶縁領域の少なくとも一部は、前記第方向において、前記第1層間領域と前記第2層間領域との間に設けられた、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3層は、第4窒化物領域及び第5窒化物領域をさらに含み、
前記第4窒化物領域は、前記第1方向において、前記第1中間領域と前記第3絶縁領域との間に設けられ、
前記第5窒化物領域は、前記第1方向において、前記第2中間領域と前記第3絶縁領域との間に設けられた、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第4窒化物領域の結晶性は、前記第1窒化物領域の前記結晶性よりも高く、前記第2窒化物領域の前記結晶性よりも高く、
前記第5窒化物領域の結晶性は、前記第1窒化物領域の前記結晶性よりも高く、前記第2窒化物領域の前記結晶性よりも高い、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第3層は、第6窒化物領域及び第7窒化物領域をさらに含み、
前記第6窒化物領域は、前記第1方向において、前記第1層間領域と前記第3絶縁領域との間に設けられ、
前記第7窒化物領域は、前記第1方向において、前記第2層間領域と前記第3絶縁領域との間に設けられた、請求項3~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2絶縁層は、シリコンを含む、請求項2~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁層は、酸素及び窒素よりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3窒化物領域は、シリコンを含む、請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第3絶縁領域の前記第2方向に沿う厚さは、20nm以上60nm以下である、請求項2~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1層間領域及び前記第2層間領域の少なくともいずれかは、アモルファス部分を含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1窒化物領域及び前記第2窒化物領域の少なくともいずれかは、アモルファス部分を含む、請求項1~11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第3窒化物領域は、結晶部分を含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記結晶部分のc軸は、前記第2方向に沿う、請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体装置は、ノーマリオフの動作を行う、請求項1~1のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば窒化物半導体を用いた半導体装置がある。半導体装置において、特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9337332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性の向上が可能な半導体装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、半導体装置は、第1~第3電極、第1~第3層、及び、第1絶縁層を含む。前記第1電極から前記第2電極への方向は第1方向に沿う。前記第3電極の前記第1方向における位置は、前記第1電極の前記第1方向における位置と、前記第2電極の前記第1方向における位置と、の間にある。前記第1層は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。前記第1層は、第1~第5部分領域を含む。前記第4部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿う。前記第5部分領域から前記第2電極への方向は、前記第2方向に沿う。前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第2方向に沿う。前記第1部分領域は、前記第1方向において、前記第4部分領域と前記第3部分領域との間にある。前記第2部分領域は、前記第1方向において、前記第3部分領域と前記第5部分領域との間にある。前記第1絶縁層は、第1層間領域及び第2層間領域を含む。前記第1部分領域から前記第1層間領域への方向は、前記第2方向に沿う。前記第2部分領域から前記第2層間領域への方向は、前記第2方向に沿う。前記第2層は、Alx2Ga1-x2N(0<x1<x2≦1)を含む。前記第2層は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第1層間領域との間に設けられた第1中間領域と、前記第2方向において前記第2部分領域と前記第2層間領域との間に設けられた第2中間領域と、を含む。前記第3層は、Alx3Ga1-x3N(0<x1<x3≦1)を含む。前記第3層は、第1~第3窒化物領域を含む。前記第1層間領域は、前記第2方向において前記第1中間領域と前記第1窒化物領域との間にある。前記第2層間領域は、前記第2方向において前記第2中間領域と前記第2窒化物領域との間にある。前記第3窒化物領域は、前記第2方向において前記第3部分領域と前記第3電極との間にある。前記第3窒化物領域の結晶性は、前記第1窒化物領域の結晶性よりも高く、前記第2窒化物領域の結晶性よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図3図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図4図4(a)~図4(d)は、半導体装置の特性を例示する模式図である。
図5図5は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図6図6は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図7図7は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る半導体装置110は、第1~第3電極51~53、第1層10、第2層20、第3層30、及び、第1絶縁層41を含む。この例では、第2絶縁層42がさらに設けられている。
【0009】
第1電極51から第2電極52への方向は、第1方向に沿う。第1方向をX軸方向とする。X軸方向に対して垂直な方向をZ軸方向とする。X軸方向及びZ軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0010】
第3電極53の第1方向(X軸方向)における位置は、第1電極51の第1方向における位置と、第2電極52の第1方向における位置と、の間にある。
【0011】
第1層10は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。1つの例において、組成比x1は、0以上0.1以下である。例えば、第1層10は、GaN層である。
【0012】
第1層10は、第1~第5部分領域11~15を含む。第4部分領域14から第1電極51への方向は、第2方向に沿う。第2方向は、第1方向と交差する。第2方向は、例えば、Z軸方向である。第5部分領域15から第2電極52への方向は、第2方向(例えば、Z軸方向)に沿う。第3部分領域13から第3電極53への方向は、第2方向に沿う。第1部分領域11は、第1方向(X軸方向)において、第4部分領域14と第3部分領域13との間にある。第2部分領域12は、第1方向において、第3部分領域13と第5部分領域15との間にある。
【0013】
第1絶縁層41は、第1層間領域IL1及び第2層間領域IL2を含む。第1部分領域11から第1層間領域IL1への方向は、第2方向(例えばZ軸方向)に沿う。第2部分領域12から第2層間領域IL2への方向は、第2方向に沿う。
【0014】
第2層20は、Alx2Ga1-x2N(0<x1<x2≦1)を含む。1つの例において、組成比x2は、0.3以上0.95以下である。例えば、第2層20は、AlGaN層である。
【0015】
第2層20は、第1中間領域21及び第2中間領域22を含む。第1中間領域21は、第2方向(例えばZ軸方向)において、第1部分領域11と第1層間領域IL1との間に設けられる。第2中間領域22は、第2方向において、第2部分領域12と第2層間領域IL2との間に設けられる。
【0016】
第3層30は、Alx3Ga1-x3N(0<x1<x3≦1)を含む。1つの例において、組成比x3は、0.8以上1以下である。例えば、第3層0は、AlN層である。
【0017】
第3層30は、第1~第3窒化物領域31~33を含む。第1層間領域IL1は、第2方向(例えばZ軸方向)において、第1中間領域21と第1窒化物領域31との間にある。第2層間領域IL2は、第2方向において、第2中間領域22と第2窒化物領域32との間にある。第3窒化物領域33は、第2方向において、第3部分領域13と第3電極53との間にある。
【0018】
第3窒化物領域33の少なくとも一部は、第1方向(X軸方向)において、第1中間領域21と第2中間領域22との間にある。
【0019】
第3窒化物領域33の一部が、第1方向(X軸方向)において、第1部分領域11及び第2部分領域12の間にあっても良い。例えば、第1層10の一部が除去された領域に、第3窒化物領域33の一部が埋め込まれても良い。
【0020】
第2絶縁層42は、第1~第3絶縁領域i1~i3を含む。第1窒化物領域31は、第2方向(例えばZ軸方向)において、第1層間領域IL1と第1絶縁領域i1との間にある。第2窒化物領域32は、第2方向において、第2層間領域IL2と第2絶縁領域i2との間にある。第3絶縁領域i3は、第2方向において、第3窒化物領域33と第3電極53との間にある。
【0021】
この例では、第2方向(例えば軸方向)において、第3電極53の一部と第1中間領域21との間に、第1層間領域IL1の一部、第1窒化物領域31の一部、及び、第1絶縁領域i1の一部が設けられる。第2方向(例えば軸方向)において、第3電極53の別の一部と第2中間領域22との間に、第2層間領域IL2の一部、第2窒化物領域32の一部、及び、第2絶縁領域i2の一部が設けられる。
【0022】
この例では、第3絶縁領域i3の少なくとも一部は、第方向(例えば軸方向)において、第1層間領域IL1と第2層間領域IL2との間に設けられる。
【0023】
この例では、第3層30は、第4窒化物領域34及び第5窒化物領域35をさらに含む。第4窒化物領域34は、第1方向(X軸方向)において、第1中間領域21と第3絶縁領域i3との間に設けられる。第5窒化物領域35は、第1方向において、第2中間領域22と第3絶縁領域i3との間に設けられる。第3層30は、例えば、第2層20の側面と、第3絶縁領域i3との間に設けられる。
【0024】
この例では、第3層30は、第6窒化物領域36及び第7窒化物領域37をさらに含む。第6窒化物領域36は、第1方向(X軸方向)において、第1層間領域IL1と第3絶縁領域i3との間に設けられる。第7窒化物領域37は、第1方向において、第2層間領域IL2と第3絶縁領域i3との間に設けられる。
【0025】
例えば、第4窒化物領域34、第3窒化物領域33及び第5窒化物領域35は、互いに連続的である。例えば、第1窒化物領域31及び第6窒化物領域36は、互いに連続的である。例えば、第2窒化物領域32及び第7窒化物領域37は、互いに連続的である。
【0026】
第3層30の第3窒化物領域33の第2方向(例えばZ軸方向)に沿う厚さを厚さt33とする。厚さt33は、例えば、0.5nm以上10nm以下である。第2絶縁層42の第3絶縁領域i3の第2方向(例えばZ軸方向)に沿う厚さを厚さti3とする。厚さti3は、例えば10nm以上100nm以下である。これらの厚さの例については、後述する。
【0027】
この例では、基板5s及びバッファ層6がさらに設けられている。基板5sは、例えば、シリコン基板である。基板5sは、例えば、サファイア基板でも良い。バッファ層6は、例えば、窒化物半導体を含む。バッファ層6は、組成が互いに異なる複数の膜を含む積層部材を含んでも良い。
【0028】
基板5sの上に、バッファ層6が設けられる例えば、バッファ層6の上に、第1層10及び第2層20がこの順に設けられる。例えば、第2層20の上に、第1絶縁層41が設けられる。例えば、第1絶縁層41、及び、第1層10の第3部分領域13の上に、第3層0が設けられる。例えば、第3層30の上に第2絶縁層42が設けられる。第2絶縁層42の上に、第3電極53が設けられる。この例では、第1層10の第4部分領域14の上に、第1電極51が設けられる。第1層10の第5部分領域15の上に、第2電極52が設けられる。例えば、第1電極51は、第4部分領域14と電気的に接続される。例えば、第2電極52は、第5部分領域15と電気的に接続される。
【0029】
例えば、第1部分領域11の第1中間領域21の近傍に2次元電子ガス(2DEG)が発生する。例えば、第2部分領域12の第2中間領域22の近傍に2次元電子ガス(2DEG)が発生する。
【0030】
例えば、第1電極51は、ソース電極として機能する。例えば、第2電極52は、ドレイン電極として機能する。例えば、第3電極53は、ゲート電極として機能する。第3層30の第3窒化物領域33は、ゲート絶縁膜の一部として機能する。第2絶縁層42の第3絶縁領域i3は、ゲート絶縁膜の別の一部として機能する。半導体装置110は、例えば、HEMT(high-electron mobility transistor)である。
【0031】
半導体装置110におけるしきい値は、比較的高い。半導体装置110は、ノーマリオフの動作を行う。
【0032】
実施形態において、第3窒化物領域33の結晶性は、第1窒化物領域31の結晶性よりも高く、第2窒化物領域32の結晶性よりも高い。第3窒化物領域33の結晶性が高いことにより、オン状態において、高い移動度が得やすくなる。
【0033】
一方、第1窒化物領域31の結晶性、及び、第2窒化物領域32の結晶性が低いことにより、動作が安定化し易くなる。例えば、耐圧が向上する。例えば、電流コラプスが抑制できる。例えば、第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32においてトラップが生じ難くなる。第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32において、高い絶縁性が得易くなる。
【0034】
例えば、第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32の少なくともいずれかは、アモルファス部分を含む。第1窒化物領域31の全体、及び、第2窒化物領域32の全体がアモルファスでも良い。第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32の少なくともいずれかがアモルファスであることが、より望ましい。第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32の少なくともいずれかがアモルファスの場合には、例えば、欠陥密度が低いため、例えば、電流コラプスの発生を抑制できる。
【0035】
一方、第3窒化物領域33は、結晶部分を含む。第3窒化物領域33の全体が結晶でも良い。上記の結晶部分のc軸は、第2方向(例えばZ軸方向)に沿う。
【0036】
第3窒化物領域33が結晶部分を含むことで、例えば、第1電極51に電圧を加えたとき(オン状態)に、第3部分領域13の第3窒化物領域33の近傍に、移動可能なキャリアが生じると考えられる。キャリアは、例えば、2DEGでも良い。このキャリアにより、高い移動度が得られると考えられる。第3窒化物領域33の結晶性が高い場合、例えば、AlN中に生成する帯電した欠陥によるキャリア散乱が抑制できる。第3窒化物領域33の結晶性が高い場合、例えば、界面に二次元電子ガスが形成される。移動度を向上させることができる。
【0037】
実施形態によれば、例えば、高い移動度が得られる。例えば、特性の向上が可能な半導体装置が得られる。例えば、高い耐圧が得られる。例えば、電流コラプスが抑制できる。
【0038】
結晶性(結晶状態)に関する情報は、例えば、透過電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscope)またはX線回折などにより得られる。
【0039】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図2は、第1層10(第3部分領域13)、第3層30(第3窒化物領域33)、及び、第2絶縁層42(第3絶縁領域i3)を含む領域の断面TEM(Transmission Electron Microscope)像である。図2に示すように、第3部分領域13及び第3窒化物領域33が結晶であることが分かる。一方、第3絶縁領域i3(この例では、SiO)はアモルファスである。第3窒化物領域33の結晶格子は、第3部分領域13の結晶格子を引き継いでいる。例えば、第3窒化物領域33は、第3部分領域13に対してエピタキシャル成長している。
【0040】
実施形態において、第4窒化物領域34(側面部分)の結晶性は、第1窒化物領域31の結晶性よりも高く、第2窒化物領域32の前記結晶性よりも高くても良い。第5窒化物領域35(側面部分)の結晶性は、第1窒化物領域31の結晶性よりも高く、第2窒化物領域32の結晶性よりも高くても良い。
【0041】
例えば、第1絶縁層41は、シリコンと窒素とを含む。第1絶縁層41は、例えば、SiN膜である。
【0042】
第1絶縁層41において、第1層間領域IL1及び第2層間領域IL2の少なくともいずれかは、アモルファス部分を含む。これにより、第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32における結晶性が低くなり易い。例えば、第1窒化物領域31及び第2窒化物領域32がアモルファスになり易い。
【0043】
第2絶縁層42は、例えば、シリコンを含む。第2絶縁層42は、酸素及び窒素よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2絶縁層42は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、及び、酸窒化シリコンよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。高い絶縁性が得られる。
【0044】
第2絶縁層42がシリコンを含む場合、第3窒化物領域33がシリコンを含んでも良い。例えば、第2絶縁層42に含まれるシリコンの一部が、第3窒化物領域33に移動(拡散)する場合がある。これにより、第3窒化物領域33における電気的な特性が制御され、オン状態において、第3部分領域13の第3窒化物領域33の近傍に、キャリアが生じ易くなる。高い移動度が得やすくなる。
【0045】
以下、半導体装置110の製造方法の例について説明する。
図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図3(a)に示すように、積層体SBが設けられる。積層体SBは、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む第1層10と、Alx2Ga1-x2N(0<x1<x2≦1)を含む第2層20と、第1絶縁層41と、を含む。第2層20は、第1層10の上に設けられる。第1絶縁層41は、第2層20の上に設けられる。この積層体SBの第1絶縁層41の一部、及び、第2層20の一部を除去して、第1層10の一部10pを露出させる。例えば、RIEなどが実施される。第1絶縁層41は、例えばアモルファスである。
【0046】
図3(b)に示すように、Alx3Ga1-x3N(0<x1<x3≦1)を含む第3層30を形成する。第3層30は、第1層10の一部10p、第2層20の残りの部分、及び、第1絶縁層41の残りの部分に形成される。
【0047】
第3層30のこの形成は、第3層を300℃以上500℃以下の温度で形成することを含む。例えば、第3層30が、約400℃のCVD(chemical vapor deposition)により形成される。CVDは、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)である。
【0048】
第3層30は、比較的低い温度により形成される。第3層30の内の、第1層10の一部10pの上の領域30cは、第1層10の一部10pの結晶性を引き継ぐ。一方、第1絶縁層41の残りの部分の上の領域30a及び30bは、その下地である第1絶縁層41の影響により、アモルファスになり易い。
【0049】
このように、第3層30は、第1層10の一部10pの上の領域30cと、第1絶縁層41の残りの部分の上の領域30a及び30bと、を含む。第1層10の一部10pの上の領域30cの結晶性は、第1絶縁層41の残りの部分の上の領域30a及び30の結晶よりも高くなる。
【0050】
このように、この製造方法においては、第3層30を比較的低い温度で形成することで、第3層30の複数の領域30a~30cにおいて、結晶性に差を形成できる。例えば、高い生産性で、特性の向上が可能な半導体装置を製造することができる。
【0051】
図3(c)に示すように、この後、第2絶縁層42をさらに形成しても良い。第2絶縁層42は、第1層10の一部10pの上の領域30c、及び、第1絶縁層41の残りの部分の上の領域30a及び30bの上に形成される。第2絶縁層42は、第1層10の一部10pの上の領域30cの上の領域42pを含む。領域42pは、例えば、第3絶縁領域i3(図1参照)に対応する。
【0052】
この後、第1層10の一部10pの上の領域30の上の上記の領域42pに電極(例えば第3電極53)を形成する。さらに、第1電極51及び第2電極52を形成しても良い。
【0053】
以下、半導体装置110における動作の例について説明する。
図4(a)~図4(d)は、半導体装置の特性を例示する模式図である。
図4(a)及び図4(c)は、半導体装置110に対応する。半導体装置110においては、第3層30の第3窒化物領域33の厚さt33は、薄い。図4(b)及び図4(d)は、半導体装置119に対応する。半導体装置119においては、第3層30の第3窒化物領域33の厚さt33は、半導体装置110における厚さt33よりも厚い。図4(a)及び図4(b)は、第1状態ST1に対応する。第1状態ST1においては、ゲート電圧Vgは、0ボルト(V)である。第1状態ST1は、オフ状態に対応する。図4(c)及び図4(d)は、第2状態ST2に対応する。第2状態ST2においては、ゲート電圧Vgは、0Vよりも大きく、しきい値電圧Vthよりも大きい。第2状態ST2は、オン状態に対応する。これらの図には、第3部分領域13、第3窒化物領域33及び第3絶縁領域i3を含む領域におけるエネルギーバンドの状態が模式的に示されている。これらの図には、伝導帯CB、電子帯VB及びフェルミレベルEFが例示されている。
【0054】
図4(b)に示すように、半導体装置119においては、第1状態ST1(オフ状態)において、2次元電子ガス10G(2DEG)が生じている。このため、しきい値電圧が低く、ノーマリオンになる。一方、図4(a)に示すように、半導体装置110においては、第1状態ST1(オフ状態)において、2次元電子ガス10Gが生じていない。このため、しきい値電圧が高く、ノーマリオフである。
【0055】
図4(d)に示すように、半導体装置119においては、第2状態ST2(オン状態)におけるバンド状態は、第1状態ST1におけるバンド状態と実質的に同様である。
【0056】
一方、図4(c)に示すように、半導体装置110においては、第2状態ST2(オン状態)において、キャリア(例えば2次元電子ガス10G)が生じる。例えば、第2状態ST2において、第3部分領域13(例えばGaN)における伝導帯CBが上昇し、第3部分領域13における伝導帯CBが、第1状態ST1に比べて大きく傾斜する。一方、第3絶縁領域i3に存在するドナー性の界面準位E1がフェルミレベルEFを超える。これにより、界面準位E1のキャリアが、第3窒化物領域33を超えて、第3部分領域13に移動する。これにより、第3部分領域13に、移動可能なキャリアが生じると考えられる。
【0057】
以下、半導体装置110の動作の例について説明する。以下では、第3層30の第3窒化物領域33の厚さt33を変えたときの特性の評価結果の例について説明する。この実験において、第1層10は、GaNである。第2層20は、AlGaN(Al組成比は0.25)である。第2層20の厚さは、30nmである。第3層30は、AlNである。第1絶縁層41は、SiNである。第1絶縁層41の厚さは、10nmである。第2絶縁層42は、SiO2である。第2絶縁層42の厚さ(厚さti3)は、30である。第1絶縁層41及び第2絶縁層42は、アモルファスである。この実験では、厚さt33が0nm~4.2nmの複数の試料が作製される。厚さt33が0nmである試料においては、第3層30が設けられない。これらの試料において、移動度及びしきい値電圧が評価される。
【0058】
図5は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図5の横軸は、厚さt33(nm)に対応する。縦軸は、移動度μ(cm/Vs)に対応する。図5から分かるように、厚さt33が0.4nm以上2.5nm以下の範囲において、厚さt33が増大すると移動度μが上昇する。この現象は、厚さt33が0.4nm以上の範囲において、オン状態において、第3部分領域13の第3窒化物領域33の近傍に、キャリアが生じることと関係すると考えられる。
【0059】
図6は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示するグラフ図である。
図6の横軸は、厚さt33(nm)に対応する。縦軸は、しきい値電圧Vth(V)に対応する。図6から分かるように、厚さt33が1.7nmを超えると、厚さt33が増大するとしきい値電圧Vthが低下する。厚さt33が2.5nmを超えると、しきい値電圧Vthは、負で、絶対値が大きくなる。厚さt33が過度に厚くなると、キャリアが過度に増え、しきい値電圧Vthが低下する。しきい値電圧Vthが過度に低下すると、ノーマリオフの動作が得難くなる。
【0060】
上記の結果から、厚さt33(第3窒化物領域33の第2方向(Z軸方向)に沿う厚さ)は、0.8nm以上4.2nm以下であることが好ましい。厚さt33は、1.7nm以上2.5nm以下であることがさらに好ましい。
【0061】
一方、実施形態において、厚さti3(第3絶縁領域i3の第2方向(Z軸方向)に沿う厚さ)は、20nm以上60nm以下であることが好ましい。これにより、良好な絶縁性と、実用的なしきい値電圧Vthが得られる。厚さti3は、20nm以上30nm以下でも良い。
【0062】
実施形態において、第1電極51及び第2電極52の少なくともいずれかは、例えば、Alを含む合金を含む。第3電極53は、例えば、TiNを含む。
【0063】
(第2実施形態)
本実施形態は、半導体装置の製造方法に係る。製造方法は、例えば、図3(a)~図3(c)に関して説明した処理を含む。
【0064】
図7は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図7に示すように、積層体SBの第1絶縁層41の一部及び第2層20の一部を除去して、第1層10の一部10pを露出させる(ステップS110)。例えば、図3(a)に関して説明した処理が行われる。
【0065】
第3層30を形成する(ステップS120)。例えば、図3(b)に関して説明した処理が行われる。第1層10の一部10pの上の領域30cの結晶性は、第1絶縁層41の残りの部分の上の領域30a及び0bの結晶よりも高い。
【0066】
第2絶縁層42を形成する(ステップS130)。例えば、図3(c)に関して説明した処理が行われる。さらに、電極を形成する(ステップS140)。
【0067】
実施形態によれば、特性の向上が可能な半導体装置及びその製造方法が提供できる。
【0068】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0069】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれる電極、層、絶縁層、基板及びバッファ層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0070】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0071】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置及びその製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置及びその製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0072】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと解される。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
5s…基板、 6…バッファ層、 10…第1層、 10p…一部、 11~15…第1~第5部分領域、 20…第2層、 21、22…第1、第2中間領域、 30…第3層、 30a~30c…領域、 31~37…第1~第7窒化物領域、 41、42…第1、第2絶縁層、 42p…領域、 51~53…第1~第3電極、 μ…移動度、 110…半導体装置、 IL1、IL2…第1、第2層間領域、 SB…積層体、 i1~i3…第1~第3絶縁領域、 t33、ti3…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7