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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】波面整形装置を備えたラウドスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20231018BHJP
   H04R 9/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
H04R1/34 310
H04R9/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020512640
(86)(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2018073573
(87)【国際公開番号】W WO2019043210
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】2019480
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】505325017
【氏名又は名称】アルコンズ オーディオ ビー.ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】ALCONS AUDIO B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ハーン, フィリップ デレク エデゥアルド
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-027928(JP,Y1)
【文献】特表2006-519568(JP,A)
【文献】米国特許第03668335(US,A)
【文献】特開平10-336783(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101790124(CN,A)
【文献】特開昭49-024122(JP,A)
【文献】特開昭50-023215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/30- 1/34
H04R 9/00- 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに取り付けられた膜を備えたハウジングを備え、該膜は実質的に平坦な波面を有する音を生成するように振動すべく配置されているラウドスピーカであって、
膜の振動領域とラウドスピーカの外側との間に延びるサウンドチャンネルを備え、前記サウンドチャンネルの中心軸は、膜に垂直に延び、
前記サウンドチャンネルは波面整形部を含み、該波面整形部は膜から放出された生成音の実質的に平坦な波面を、少なくとも一方向から見て円形セグメントの形状の断面を有する波面に変換するように構成され、
前記サウンドチャンネルの波面整形部は、仕切り壁によって複数のサブチャンネルに分割され、前記仕切り壁は、前記波面整形部の入口開口部から前記波面整形部の出口開口部まで延び、
前記少なくとも一方向から見た断面にて、各サブチャンネルの側壁は、前記波面整形部の入口開口部から出口開口部まで互いに向かって収束し、
前記少なくとも一方向から見た断面にて、前記各仕切り壁の中心線は、前記波面整形部の出口開口部に隣接して互いに向かって収束
前記少なくとも一方向に直交する断面にて、各サブチャンネルの側壁は互いに広がり、音波の圧縮を回避するために、波面の面積が各サブチャンネルの軸方向の長さに沿って実質的に同じである、ラウドスピーカ。
【請求項2】
前記各仕切り壁の中心線は、前記少なくとも一方向から見た断面にて、前記波面整形部内で少なくとも実質的にその全長に亘って直線状の非曲線を形成する、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項3】
前記波面整形部は、膜から放出された生成音の実質的に平坦な波面を、円筒セグメントの形状の断面を有する波面に変換するように構成される、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項4】
前記仕切り壁は平坦な板である、請求項1乃至3の何れかに記載のラウドスピーカ。
【請求項5】
前記少なくとも一方向から見た断面にて、サウンドチャンネルの外側の収束する壁は、前記波面整形部の出口開口部でサウンドホーンの広がる壁に結合する、請求項1乃至の何れかに記載のラウドスピーカ。
【請求項6】
前記仕切り壁は、サウンドホーンの広がる壁の間の空間には延びない、請求項に記載のラウドスピーカ。
【請求項7】
前記波面整形部は、サウンドホーンと一体である、請求項5又は6の何れかに記載のラウドスピーカ。
【請求項8】
前記波面整形部は、取り外し可能な取付け手段によってラウドスピーカのハウジングに接続されている、請求項1乃至の何れかに記載のラウドスピーカ。
【請求項9】
磁場を生成する磁石ユニットが設けられ、膜は膜上にパターンで配置された導電体が設けられた平坦な膜であり、膜は電流が膜上の導電体パターンに供給されるときに力がかかるように磁場内に配置され、その力は膜を振動させて音を生成することができ、
前記導電体パターンは、前記膜の振動領域内の膜上に配備され、前記導電体パターンは、離れて配置された少なくとも2つの振動領域の膜上に設けられ、2つの振動領域と前記波面整形部の入口開口部との間に延びる少なくとも2つの内部サウンドチャンネルを備え、各内部サウンドチャンネルの外壁と内壁の間にある2つの内部サウンドチャンネルの中心軸は、膜から特定の距離にわたって互いに向かって傾斜している、請求項1乃至の何れかに記載のラウドスピーカ。
【請求項10】
波面整形部を備えたサウンドチャンネルを有し、波面整形部はラウドスピーカの実質的に平坦な波面を、少なくとも一方向から見た断面が円形セグメントである波面に変換するように配置された波面整形装置であって、
波面整形部を備えたサウンドチャンネルは仕切り壁によって多数のサブチャンネルに分割され、前記仕切り壁は、前記波面整形部の入口開口部から前記波面整形部の出口開口部まで延び、
前記少なくとも一方向から見た断面にて、各サブチャンネルの側壁は、前記波面整形部の入口開口部から出口開口部まで互いに向かって収束し、
前記少なくとも一方向に直交した断面にて、各サブチャンネルの側壁は互いに広がり、音波の圧縮を回避するために、波面の面積が各サブチャンネルの軸方向の長さに沿って実質的に同じである、波面整形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームに取り付けられた膜を備えたハウジングを備え、該膜は実質的に平坦な波面を有する音を生成するように振動すべく配置されているラウドスピーカに関し、ラウドスピーカは膜の振動領域とラウドスピーカの外側との間に延びるサウンドチャンネルを備え、前記サウンドチャンネルの中心軸は、膜に垂直に延び、サウンドチャンネルは波面整形部を含み、該波面整形部は膜から放出された生成音の実質的に平坦な波面を、少なくとも一方向から見て円形セグメントの形状の断面を有する波面に変換するように構成され、サウンドチャンネルの波面整形部は、仕切り壁によって複数のサブチャンネルに分割され、仕切り壁は、波面整形部の入口開口部から波面整形部の出口開口部まで延び、少なくとも一方向から見た断面にて、各サブチャンネルの側壁は、波面整形部の入口開口部から波面整形部の出口開口部まで互いに向かって収束する。そのようなラウドスピーカは米国特許3668335号(Beveridge)に開示されている。
【背景技術】
【0002】
そのようなラウドスピーカから放射される波面は、円形セグメントの断面を有する(例えば、球形または円筒形)。本発明の好ましい実施形態と同様に、米国特許3668335号では、波面は円柱セグメントを形成する。多くの音響用途では、全ての可聴周波数に対して一定のビーム幅角度(例えば約90°)の円形セグメント断面を持つスピーカから放射される波面を持つことが望ましい。さらに、音圧レベル(SPL)が特定の周波数の特定の軸外角度で妨害ピークまたは低下を示さないことが望ましい。また、軸外角度での音圧レベル(SPL)は、スピーカの予想される動作ではないため、スピーカの中心軸付近の音圧レベル(SPL)よりも高くないことが望ましい。
本発明は、これらの目標のうちの1つ以上を達成することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様に従って、少なくとも一方向から見た断面にて、各仕切り壁の中心線は、波面整形部の出口開口部に隣接して互いに収束する。
【0004】
本発明の第2の態様に従って、少なくとも一方向から見た断面にて、各仕切り壁の中心線は、前記波面整形部内で少なくとも実質的にその全長に亘って直線状の非曲線を形成する。
好ましくは、波面整形部は、膜から放出される生成音の実質的に平坦な波面を、円筒セグメントの形状の断面を有する波面に変換するように配置され、前記仕切り壁は平坦な板である。
【0005】
好ましくは、少なくとも一方向に直交する断面にて、各サブチャンネルの側壁は互いに広がり、音波の圧縮を回避するために、波面の面積が各サブチャンネルの軸方向の長さに沿って実質的に同じである。
【0006】
好ましくは、少なくとも一方向から見た断面にて、サウンドチャンネルの外側の収束する壁は、波面整形部の出口開口部でサウンドホーンの広がる壁に結合する。仕切り壁は、サウンドホーンの広がる壁の間の空間には延びないのが好ましい。波面整形部は、サウンドホーンと一体であるのが好ましい。波面整形部は、取り外し可能な取付け手段によってラウドスピーカのハウジングに接続されているのが好ましい。
【0007】
好ましい実施形態にて、ラウドスピーカは国際特許出願公開公報2004/080119号(De Haan)に開示されたようなタイプであり、この公開公報の内容は参照を以って本願への記載加入とする。ラウドスピーカは、磁場を生成する磁石ユニットを備え、平坦な膜は膜上にパターンで配置された導電体を備えており、膜は電流が膜上の導電体パターンに供給されるときに力がかかるように磁場内に配置され、その力は膜を振動させて音を生成することができ、導電体パターンは、膜の振動領域内の膜上に配備され、導電体パターンは、離れて配置された少なくとも2つの振動領域の膜上に設けられ、ラウドスピーカは2つの振動領域と波面整形部の入口開口部との間に延びる少なくとも2つの内部サウンドチャンネルを備え、各内部サウンドチャンネルの外壁と内壁の間にある2つの内部サウンドチャンネルの中心軸は、膜から特定の距離にわたって互いに向かって傾斜している。互いに最も離れて配置されることが好ましい2つの内部サウンドチャンネルの外壁は、膜から特定の距離にわたって互いに向かって傾斜している。互いに最も近くに配置された2つの内部サウンドチャンネルの内壁は、膜から少なくとも特定の距離に亘って互いに向かって傾斜しているのが好ましい。各内部サウンドチャンネルの内壁及び外壁は、互いに実質的に平行に延びるのが好ましい。特定の距離は、好ましくは内部サウンドチャンネルの幅の少なくとも0.5倍、より好ましくは内部サウンドチャンネルの幅の少なくとも1倍である。ハウジングの外側の内部サウンドチャンネルの内壁間の距離は、膜側の内壁間の距離の0.5倍未満であることが好ましく、0.2倍未満であることがより好ましい。
【0008】
本発明はまた、波面整形部を備えたサウンドチャンネルを有し、波面整形部はラウドスピーカの実質的に平坦な波面を、少なくとも一方向から見た断面が円形セグメントの形状である波面に変換するように配置された波面整形装置に関し、波面整形部を備えたサウンドチャンネルは仕切り壁によって多数のサブチャンネルに分割され、仕切り壁は波面整形部の入口開口部から波面整形部の出口開口部まで延び、少なくとも一方向から見た断面にて、各サブチャンネルの側壁は、波面整形部の入口開口部から出口開口部まで互いに向かって収束し、少なくとも一方向から見た断面にて、各仕切り壁の中心線は、波面整形部の出口開口部に隣接して互いに向かって収束する。好ましい実施形態にて、中心線は波面整形部内で少なくとも実質的にその全長に亘って直線状の非曲線を形成する。波面整形部は、ラウドスピーカの実質的に平坦な波面を、円筒セグメントの形状の断面を有する波面に変換するように配置されるのが好ましく、前記仕切り壁は平坦な板である。好ましくは、少なくとも一方向から見た断面にて、サウンドチャンネルの外側の収束する壁は、波面整形部の出口開口部でサウンドホーンの広がる壁に結合する。仕切り壁は、サウンドホーンの広がる壁の間の空間には延びないのが好ましい。
【0009】
本発明はまた、波面整形部を備えたサウンドチャンネルを有し、波面整形部はラウドスピーカの実質的に平坦な波面を、少なくとも一方向から見た断面が円形セグメントの形状である波面に変換するように配置された波面整形装置に関し、波面整形部を備えたサウンドチャンネルは仕切り壁によって多数のサブチャンネルに分割され、仕切り壁は波面整形部の入口開口部から波面整形部の出口開口部まで延び、少なくとも一方向に直交した断面にて、各サブチャンネルの側壁は互いに広がり、音波の圧縮を回避するために、波面の面積は各サブチャンネルの軸方向の長さに沿って実質的に同じである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図に示すように、本発明は実施形態によって詳細に記載される。
図1】本発明に用いられる従来技術のラウドスピーカの斜視図である。
図2図1のラウドスピーカの膜ユニットの斜視図である。
図3図1のラウドスピーカの断面図である。
図4】従来技術の波面整形装置の概略断面図である。
図5A図4の従来技術の波面整形装置の様々な周波数での円筒セグメントビーム幅角度のコンピュータシミュレーションのグラフである。
図5B図4の従来技術の波面整形装置の様々な周波数及び軸外角度での音圧レベル(SPL)のコンピュータシミュレーションのグラフである。
図5C図4の従来技術の波面整形装置の、軸上音圧レベル(SPL)に対する、様々な周波数及び軸外角度での相対音圧レベル(SPL)のコンピュータシミュレーションのグラフである。
図6A】波面整形装置を備えたラウドスピーカの斜視図である。
図6B】波面整形装置を備えたラウドスピーカの斜視図である。
図6C】波面整形装置を備えたラウドスピーカの斜視図である。
図7A図6A乃至図6Cのラウドスピーカ及び波面整形装置の概略断面図である。
図7B図6A乃至図6Cのラウドスピーカ及び波面整形装置の概略断面図である。
図8】波面整形装置の概略断面図である。
図9A図8の波面整形装置の様々な周波数での円筒セグメント波面ビーム幅角度のコンピュータシミュレーションのグラフである。
図9B図8の波面整形装置の様々な周波数及び軸外角度での音圧レベル(SPL)のコンピュータシミュレーションのグラフである。
図9C図8の波面整形装置の軸上音圧レベル(SPL)に対する、様々な周波数及び軸外角度での相対音圧レベル(SPL)のコンピュータシミュレーションのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に従って、国際公開公報2004/080119号に開示されたように、2つの実質的に同一の金属部分からなるハウジング1、2を備え、ハウジングはネジ3によって一緒に取り付けられる。各ハウジング部分1、2は、2つの長いスロット状の凹部又はサウンドチャンネル4、5を有し、スピーカで生成された音が外部に向かって伝播することを可能にする。更に、ハウジング部分1には電気接続点6、7が設けられており、この電気接続点に増幅器の音響信号線が接続される。ハウジング1、2には、スピーカで発生する熱を放散するための冷却フィン8が設けられている。
【0012】
ハウジング部分1、2は、図2に示されるフレームを囲み、このフレームは第1のフレーム形状のフレーム部材9及び2つのストリップ形状のフレーム部材10、11からなる。振動膜12がフレーム部材9に取り付けられて、導電体パターン14を備え、該導電体パターンは接続点6、7に接続され、電気信号が増幅器によってラウドスピーカに供給されたときに膜を振動させる。
【0013】
その目的のために、ラウドスピーカは、図3に示されるような磁石13を備え、該磁石は永久磁場を生成し、該磁場内に膜12の導電体パターン14が配置される。導電体パターン14は、膜12の片側に細長い長方形の螺旋状に配置された導電性ワイヤによって形成される。
【0014】
導電性ワイヤの2つの端部は、フレーム部材10上の電流フィードスルー接続部15、16に接続され、これらは接続点6、7に電気的に接続されている。電流フィードスルー接続部15、16は、フレーム部材10から電気的に絶縁されている。フレーム部材10、11の間で長手方向に互いに平行に延びる導電体パターン14の線は、2つの離間した振動領域17、18を形成する。
【0015】
図3に言及して、サウンドチャンネル4、5は、膜12の表面上の2つの離間した振動領域17、18の近くに位置する点から、ハウジング部分1、2の外側まで延びる。しかし、ラウドスピーカは一方向にのみ音を発する必要があるため、サウンドチャンネル4、5は片側で閉鎖プレートで閉じられる。サウンドチャンネル4、5は、最初、膜から見て、即ち磁石13間の領域では膜に垂直な方向に延び、続いてサウンドチャンネル4、5は、互いに向かって傾斜している。各サウンドチャンネル4、5の外壁19及び内壁20は互いに向かって傾斜し、サウンドチャンネル4、5の内壁20及び外壁19は互いに平行に延び続けている。ラウドスピーカの外側では、2つのサウンドチャンネル4、5の内壁19間にわずかな間隔のみが残り、その間隔は振動領域17、18間の間隔よりも少なくとも数倍小さい。このようにして、2つの振動領域17、18によって生成される音波の前面は互いに向けられ、組み合わされ、その結果、2つの波面間の不利な干渉が防止される。それにより、サウンドチャンネル4、5から放出される組み合わされた波面は、連続した平坦な矩形波面である。
【0016】
図4は、米国特許3668335号(Beveridge)に開示された従来技術の波面整形装置の概略断面図である。この従来技術の波面整形装置は、収束する湾曲した側壁135とその間の多数の収束する湾曲した仕切り壁131を有する波面整形部131、135を備え、静電スピーカの平坦な振動ダイヤフラム112の前に多数の収束する湾曲したサウンドチャンネル136を一緒に形成する。側壁135に隣接する外側のサウンドチャンネル136の長さは、スピーカの中心軸に隣接するサウンドチャンネル136よりも長いため、波面整形部131、135から出る波面は、円筒セグメントの形をしている。各仕切り壁131の中心線は、波面整形部の出口開口部に隣接して(即ち、サウンドチャンネルの最も狭い部分で)互いに平行である。波面整形装置は、広がる側壁132を備えた短いサウンドホーンを更に備え、仕切り壁131の広がる延長部131’は、側壁132間の空間に延び、それにより、サウンドチャンネル136をサウンドホーン内に延長する。
【0017】
図5Aは、図4の従来技術の波面整形装置の様々な周波数(対数目盛、Hz)での軸上SPLに対するSPLドロップ6dBによって定義される、円筒セグメントビーム幅角度(°)のコンピュータシミュレーションのグラフである。グラフは、300Hzと20,000Hzの間の周波数でのビーム幅角度が約90°であるのに対して、1000Hzと200Hzの間のビーム幅角度は120°を大きく上回り、約13,000Hzでは120°を超えていることを示している。
【0018】
図5Bは、図4の従来技術の波面整形装置の様々な周波数(対数目盛、Hz)及び軸外角度(°)での音圧レベル(SPL)のコンピュータシミュレーションのグラフである。グラフは、SPLが様々な軸外角度に対して、特に約2,000Hz、1,300Hz及び13,000Hz以上で、様々な鋭いピークとドロップを示す。
【0019】
図5Cは、図4の従来技術の波面整形装置の、軸上の音圧レベル(SPL)に対する、様々な周波数(対数目盛、Hz)及び軸外角度(°)での相対音圧レベル(SPL、dB)のコンピュータシミュレーションのグラフである。グラフは、特定の軸外角度(5°-30°)で、約14,000Hzで軸外SPLが軸上SPLよりも高いことを示している。これは望ましくない動作である。
【0020】
図6A乃至図6Cは、ねじによって図1乃至図3のラウドスピーカのハウジング1に取り外し可能に取り付けられた波面整形装置を示す。図7A及び図7Bに示すように、本発明の好ましい実施形態に従った波面整形装置は、収束する平坦な側壁35と、それらの間の空間に延在する多数の収束する平坦な仕切り壁31とを有する波面整形部31、35を含み、仕切り壁31は一緒になって多数の収束するサウンドチャンネル36を形成し、その結果、サウンドチャンネル36の側壁は、波面整形装置の出口開口部に隣接して互いに収束する。側壁35に隣接する外側のサウンドチャンネル36の長さは、スピーカの中心軸に隣接するサウンドチャンネル36よりも長いため、波面整形部31、35から出る波面は、円筒セグメントの形をしている。収束する仕切り壁31の数は、狭い出口でのサウンドチャンネル36の幅が最高可聴周波数(約20,000Hz)の波長、即ち、約17mmに近づくように選択されるべきである。
【0021】
波面整形装置は、図6A乃至図6C乃至図7A及び図7Bに示すように、サウンドホーン33を備えるのが好ましい。図7Aの断面図に示すように、波面整形部の外側の収束する壁35は、サウンドホーン33の広がる壁32に結合する。サウンドホーン33は、波面が環境内でさらに広がる前に、波面整形部を出る波面の漸進的な広がりを提供する。
【0022】
国際公開公報2004/080119号(DeHaan)に開示されたように、図7Bの断面図に見られるように、サウンドホーン33は、ラウドスピーカのサウンドチャンネル4、5の外端とサウンドホーンの外端との間に連続的に広がる壁34’、34を有し、壁部34'は波面整形部の側壁を形成する。それにより、各サウンドチャンネル36の側壁34'は互いに広がり、音波の圧縮を回避するために、波面の面積は各サウンドチャンネル36の軸方向の長さに沿って実質的に同じままである。
【0023】
この場合も、金属製のホーンを備えた波面整形装置は、ラウドスピーカの放熱に寄与する。
図8は、本発明に従った波面整形装置の概略断面図である。
図9Aは、図8の波面整形装置の様々な周波数(対数目盛、Hz)にて、軸上SPLに対して6dBのSPLドロップで定義される円筒セグメント波面ビーム幅角度(°)のコンピュータシミュレーションのグラフである。グラフは、全ての周波数でのビーム幅角度が約90°であることを示している。
【0024】
図9Bは、図8の波面整形装置の様々な周波数(対数目盛、Hz)及び軸外角度(°)での音圧レベル(SPL、dB)のコンピュータシミュレーションのグラフである。グラフは何れの周波数でも、SPLには軸外角度の鋭いピークまたはドロップが無いことを示している。更に、SPLは一般的に図5Bのグラフに示すよりも高い。
図9Cは、図8の波面整形装置の軸上音圧レベル(SPL)に対する様々な周波数(対数目盛、Hz)及び軸外角度(°)での相対音圧レベル(SPL)のコンピュータシミュレーションのグラフである。グラフは軸外SPLは軸上SPLよりも高くないことを示している。
【0025】
このように、本発明は、好ましい実施形態によって説明されてきた。しかし、この開示は単なる例示であることを理解されたい。構造及び機能の様々な詳細が提示されたが、添付の特許請求の範囲が表現される用語の一般的な意味によって拡張される範囲で行われた変更は、本発明の原理内にあると理解される。記載と図面は特許請求の範囲を解釈するのに使用される。特許請求の範囲は、求められる保護の範囲が、特許請求の範囲で使用される用語の厳密な文字通りの意味によって定義されるものとして理解されることを意味すると解釈されるべきではなく、記載及び図面は特許請求の範囲に見出されるあいまいさを解決する目的でのみ用いられる。特許請求の範囲が求める保護の範囲を決定するために、明細書に特定されている要素と同等の要素を考慮に入れる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C