(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム及びそれを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
F01N 3/05 20060101AFI20231018BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20231018BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20231018BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20231018BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F01N3/05
F01N3/08 B
F01N3/20 S
F01N3/18 F
F01N3/20 U
F01N3/22 301F
(21)【出願番号】P 2022521518
(86)(22)【出願日】2020-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2020120240
(87)【国際公開番号】W WO2021068945
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】201910964538.7
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519262467
【氏名又は名称】シャンハイ マリン ディーゼル エンジン リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ シャンリ
(72)【発明者】
【氏名】リー シャオボー
(72)【発明者】
【氏名】シェン タン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チウヤン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ミンサイ
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109989806(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106894867(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
ディーゼルエンジンの排ガスを脱硝するために使用されるSCR反応器と、
一端に排ガス出口を備え、他端が前記SCR反応器の排ガス出口に接続され、SCR出口弁を備えた、排気管と、
両端がそれぞれ前記SCR出口弁の両側に位置する前記排気管に接続され、空気圧弁を備えた、空気圧管と、
圧縮空気を搬送するために用いられ、前記SCR反応器に接続された、第1補助管と、
前記空気圧管に設けられた、スロットルオリフィスプレートと、
を備え、
前記舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムがガス交換状態にあるときに、前記SCR反応器及び前記排気管内の排ガスは、前記第1補助管から流入した圧縮空気によって押されて、前記空気圧管を通って、前記排ガス
出口より排出される、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記スロットルオリフィスプレートは、前記空気圧弁の上流に位置する、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記排気管に設けられ、かつ、前記排ガス出口と前記SCR出口弁との間に位置するターボチャージャをさらに備え、前記空気圧管は前記ターボチャージャの上流に位置する、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項4】
請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記SCR反応器の排ガス入口に接続される、入口管と、
一端が前記入口管に接続され、他端が前記排気管に接続され、SCRバイパス弁を備えた、バイパス管と、
をさらに備え、
前記バイパス管と前記排気管との接続箇所は、前記排ガス出口と前記SCR出口弁との間に位置する、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項5】
請求項1に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記SCR出口弁の両側に位置する前記排気管に両端がそれぞれ接続されて、前記SCR反応器内の気体と前記排ガス出口での気体との間の圧力差を感知するための差圧センサをさらに備えた、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項6】
請求項5に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記SCR反応器の排ガス入口に接続される、入口管と、
圧縮空気を搬送するために用いられ、前記入口管に接続され、第2制御弁を備えた、第2補助管と、
前記差圧センサ、前記第1補助管上
の第1制御弁、前記第2制御弁、及び前記空気圧弁に電気的に接続され、前記空気圧弁、前記第1制御弁、及び前記第2制御弁の開閉を制御するように構成された制御装置と、
をさらに備えた、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項7】
請求項6に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記制御装置は、前記ガス交換状態において、前記空気圧弁、前記第1制御弁、及び前記第2制御弁をいずれも開状態に保持するように制御するように構成されている、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項8】
請求項6に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記制御装置は、前記ガス交換状態後
の圧力安定状態において、前記第2制御弁を閉じ、かつ前記第1制御弁及び前記空気圧弁をいずれも開状態を保持するように制御するように構成されており、かつ、
前記差圧センサの監視値が所定の差圧範囲より低いとき、前記第1制御弁が開状態を保持するように制御するとともに、前記空気圧弁を閉じるように制御する、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項9】
請求項8に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記制御装置は、前記差圧センサの前記監視値が所定の差圧範囲より高いとき、前記空気圧弁が開状態を保持するように制御するとともに、前記第1制御弁を閉じるように制御する、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項10】
請求項6に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記制御装置は、ガス交換が所定のガス交換時間だけ持続するように前記舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを制御するように構成され、前記所定のガス交換時間は、前記SCR反応器、前記
入口管、及び前記排気管の断面積及び/又は長さに対応して設定される、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項11】
請求項6に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
前記第1補助管が煤吹出空気管であり、かつ/又は、
前記第2補助管は、尿素霧化空気管である、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム。
【請求項12】
船舶であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを備えた、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、舶用ディーゼルエンジンの排ガスの後処理の技術分野に関し、より具体的には、舶用ディーゼルエンジンのための高圧SCR(Selective Catalytic Reduction、即ち選択式触媒還元技術)のガス交換圧力安定化システム及びそれを備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
選択式触媒還元技術(SCR)は、ディーゼルエンジンの排ガス中のNOXを処理するプロセスであり、即ち、触媒の作用の下で、還元剤であるアンモニアや尿素を噴入し、排ガス中のNOXをN2とH2Oに還元するものである。SCRの使用は、ディーゼルエンジンの排ガス中のNOXの後処理の主流の技術である。SCR尿素供給噴射システムは、SCRシステムの中核となる部分であり、尿素水の供給、正確な計量、霧状噴射を行うための機構である。
【0003】
先行技術では、SCRシステムを搭載した舶用ディーゼルエンジンにおいて、3次規制(ティア3)適合から2次規制(ティア2)適合に切り替える場合、SCR反応器と管を浄化してSCR反応器と管における硫化物の生成と管の腐食を避けるために、SCR反応器と管を一定の圧力の圧縮空気で吹き払ってガス交換し、密封する必要がある。この段階では、圧縮空気の入口と出口の菅にスロットルオリフィスプレートを取り付けて、連続的に吹き払うことが多いが、このような方式では通常はガス交換が十分ではなく、信頼性も低くなる。
【0004】
したがって、上記の問題を少なくとも部分的に解決するために、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システム及びそれを備えた船舶を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要では、一連の簡略化した形式の概念を導入しているが、発明を実施するための形態では、さらに詳しく説明する。本発明の発明の概要は、保護が要求される解決手段の主要な特徴及び必須の技術的特徴を限定しようとするものではなく、ましてや保護が要求される解決手段の保護範囲を決定しようとするものでもない。
【0006】
上記課題を少なくとも部分的に解決するために、本発明は、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムであって、
ディーゼルエンジンの排ガスを脱硝するために使用されるSCR反応器と、
一端に排ガス入口を備え、他端が前記SCR反応器の排ガス入口に接続され、SCR入口弁を備えた、入口管と、
一端に排ガス出口を備え、他端が前記SCR反応器の排ガス出口に接続され、SCR出口弁を備えた、排気管と、
一端が前記吸気管に接続され、他端が前記排気管に接続され、SCRバイパス弁を備えた、バイパス管と、
両端がそれぞれ前記SCR出口弁の両側に位置する前記排気管に接続され、空気圧弁を備えた、空気圧管と、
前記SCR反応器に接続され、第1制御弁を備えた、第1補助管と、
前記吸気管に接続され、第2制御弁を備えた、第2補助管と、
を備え、
前記舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムがガス交換状態にあるときに、前記吸気管、前記SCR反応器、及び前記排気管内の排ガスは、前記第1補助管及び前記第2補助管から流入した圧縮空気によって押されて前記排ガス口より排出される、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを提供する。
【0007】
任意に、前記SCR出口弁の両側に位置する前記排気管に両端がそれぞれ接続されて、前記SCR反応器内の気体と前記排ガス出口での気体との間の圧力差を感知するための差圧センサをさらに備えており、
任意に、前記差圧センサ、前記第1制御弁、前記第2制御弁、及び前記空気圧弁に電気的に接続され、前記空気圧弁、前記第1制御弁、及び前記第2制御弁の開閉を制御するように構成された制御装置をさらに備えている。
【0008】
任意に、前記制御装置は、前記ガス交換状態において、前記空気圧弁、前記第1制御弁、及び前記第2制御弁がいずれも開くように制御するように構成されている。
【0009】
任意に、前記制御装置は、前記ガス交換状態後の前記圧力安定状態において、前記第2制御弁を閉じるように制御するように構成されており、かつ、
前記差圧センサの前記監視値が所定の差圧範囲より高いとき、前記制御装置は、前記空気圧弁を開くように制御するとともに、前記第1制御弁を閉じるように制御し、
前記差圧センサの前記監視値が所定の差圧範囲より低いとき、前記制御装置は、前記第1制御弁を開くように制御するとともに、前記空気圧弁を閉じるように制御する。
【0010】
任意に、前記制御装置は、ガス交換が所定のガス交換時間だけ持続するように前記舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを制御するように構成され、前記所定のガス交換時間は、前記SCR反応器、前記吸気管、及び前記排気管の断面積及び/又は長さに対応して設定される。
【0011】
任意に、前記第1補助管が煤吹出空気管であり、かつ/又は、
前記第2補助管は、尿素霧化空気管である。
【0012】
任意に、前記空気圧管は、さらにスロットルオリフィスプレートを備えている。
【0013】
任意に、前記排気管は、さらにターボチャージャーを備えている。
【0014】
本発明の他の態様によれば、さらに、上述の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを備えた船舶が提供される。
【0015】
本発明の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムは、SCR反応器、吸気管、排気管、バイパス管、空気圧管、第1補助管、第2補助管を備える。ディーゼルエンジンの排ガスを脱硝する必要がある場合、ディーゼルエンジンの排ガスを排ガス入口から流入させ、吸気管、SCR反応器、排気管をこの順に通過させ、排ガス出口から排出することができ、ディーゼルエンジンの排ガスがSCR反応器で脱硝することが可能である。ディーゼルエンジンの排ガスが脱硝を必要としない場合、ディーゼルエンジンの排気ガスは排ガス入口から流入し、バイパス管を通過して排ガス出口から排出されるようにでき、SCR反応器と排気管内の排気ガスを第1補助管と第2補助管から入る圧縮空気で押して排ガス出口から排出して、SCR反応器と関連する管を浄化することができる。本発明は、従来のSCRガス交換圧力安定化システムに比べ、既存の吸気配管をなくすことで構造を簡素化し、システムをコンパクトにするとともに、空気消費量を低減しながら十分なガス交換量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の図面を、本発明の理解の一部として使用する。添付図面は、本発明の一実施の形態を示し、その原理を説明するためのものである。添付図面において、
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10:SCR反応器 20:吸気管
21:SCR入口弁 30:排気管
31:SCR出口弁 40:バイパス管
41:SCRバイパス弁 50:空気圧管
51:空気圧弁 52:スロットルオリフィスプレート
60:差圧センサ 70:第1補助管
71:第1制御弁 80:第2補助管
81:第2制御弁 90:ターボチャージャ
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、本発明をより深く理解するために、多数の具体的な内容を示す。しかしながら、本発明の実施の形態が、これらの詳細の1つ以上がなくても実施できることは、当業者には明らかであろう。他の例では、本発明の実施の形態との混同を避けるために、当技術分野で周知のいくつかの技術的特徴については説明しない。
【0019】
本発明の実施の形態を十分に理解するために、以下の説明で詳細な構成を示す。本発明の実施の形態は、当業者が熟知している特定の細部に限定されないことは明らかである。
【0020】
本発明は、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを提供する。このシステムは、
図1に示すように、SCR反応器10、吸気管20、排気管30、バイパス管40、空気圧管50、第1補助管70、及び第2補助管80から構成されている。
【0021】
SCR反応器10は、舶用ディーゼルエンジンの排ガスに対して脱硝処理をするのに用いることができる。SCR反応器10内には、排ガス中のNOXと反応可能な触媒、例えば、尿素水などを備えており、SCR反応器10に流入した排ガス中のNOXは触媒と還元反応して、N2とH2Oを生成する。実際には、還元反応が起こる温度は触媒の組成により異なるが、一般的には250℃~400℃である。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態では、吸気管20の一端に排ガス入口が設けられ、他端はSCR反応器10の吸気口に接続され、吸気管20にはSCR入口弁21が設けられ、ディーゼルエンジンからの排ガスは、排ガス入口を通って吸気管20を経由してSCR反応器10に入る。排気管30の一端には排ガス出口が設けられ、他端はSCR反応器10の排気口に接続され、排気管30にはSCR出口弁31が設けられ、ディーゼルエンジンからの排ガスは、SCR反応器10を通過した後、排気管30を経て排ガス出口から排出される。バイパス管40の一端は、排ガス入口とSCR入口弁21との間に位置する接続箇所で吸気管20に接続されており、他端は、排ガス出口とSCR出口弁31との間に位置する接続箇所で排気管30に接続されており、バイパス管40にはSCRバイパス弁41が設けられている。出口弁31の両側には空気圧管50が接続され、空気圧管50には空気圧弁51とスロットルオリフィスプレート52が設けられる。
【0023】
ディーゼルエンジンからの排ガスがSCR反応器10を通過する必要がない場合には、排ガス入口から流入した排ガスをバイパス管40を介して排ガス出口から直接排出することが可能である。
【0024】
本実施の形態では、ディーゼルエンジンの排ガスが脱硝処理のためにSCR反応器10を通過する必要があるとき、すなわちSCR反応器10が運転状態に入る必要があるとき、SCR入口弁21及びSCR出口弁31を開き、SCRバイパス弁41を閉じ、ディーゼルエンジンの排ガスは排ガス入口から舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムに入り、吸気管20、SCR反応器10、排気管30をこの順に通過し、最終的に排ガス出口から排出される。ディーゼルエンジンからの排ガスがSCR反応器10を通過すると、排ガス中のNOXは触媒との間で還元反応を起こす。
【0025】
ディーゼルエンジンの排ガスが脱硝処理のためにSCR反応器10を通過する必要がないとき、すなわちSCR反応器10が非運転状態になるとき、SCR入口弁21及びSCR出口弁31を閉じ、SCRバイパス弁41を開くことができる。ディーゼルエンジンの排ガスは、排ガス入口から舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムに入り、バイパス管40を通って排ガス出口から排出される。この非運転状態では、吸気管20、SCR反応器10、排気管30にディーゼルエンジンからの排ガスが残留し、この排ガスによって、硫黄化合物が発生したり、設備や管を腐食させたりする可能性がある。本実施の形態では、第1補助管70がSCR反応器10に接続され、第2補助管80が吸気管20に接続されており、第1補助管70及び第2補助管80は、圧縮空気を搬送して吸気管20、SCR反応器10、及び排気管30に残留するディーゼルエンジンの排ガスを排ガス出口から外部に排出できる。
【0026】
本発明の舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムにより、SCR反応器10が非運転状態にあるとき、第1補助管70及び第2補助管80によって搬送される圧縮空気を利用して、吸気管20、SCR反応器10、及び排気管30に残っているディーゼルエンジンの排ガスを排ガス出口から排出することで、SCR反応器10及び関連する管を浄化できるので、システム全体の構造がシンプルになり、システムがコンパクトになると同時に、十分なガス交換が保証され、ガス消費量も低減される。
【0027】
さらに、ディーゼルエンジンの排ガスがSCR反応器10や関連する管に侵入して管が腐食しないように、すなわちガス交換後に圧力安定状態となるように、SCR反応器10内を一定の気圧に維持する必要がある。本発明の実施の形態では、さらに差圧センサ60と制御装置(不図示)とが設けられる。
【0028】
差圧センサ60は、SCR反応器10内の気体と排ガス出口を通過する気体との圧力差を検出できる。具体的には、差圧センサ60の両端は、SCR出口弁31の両側に位置する排気管30に接続されている。制御装置は、差圧センサ60、第1制御弁71、第2制御弁81、及び空気圧弁51に電気的に接続されている。本実施の形態では、制御装置は、第1制御弁71、第2制御弁81、及び空気圧弁51の開閉を制御可能である。
【0029】
具体的には、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムがガス交換状態にあるとき、制御装置は、空気圧弁51、第1制御弁71、及び第2制御弁81をいずれも開くように制御することができる。このとき、第1補助管70及び第2補助管80は、吸気管20、SCR反応器10、及び排気管30に残留するディーゼルエンジンの排ガスを排ガス出口から押し出す圧縮空気を送出できる。
【0030】
従って、制御装置は、ガス交換が所定のガス交換時間だけ持続するように、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを制御し、ここで、所定のガス交換時間は、SCR反応器10、吸気管20、及び排気管30の断面積及び/又は長さに応じて設定される。すなわち、SCR反応器10の規格や吸気管20及び排気管30の寸法には違いがあるため、十分なガス交換を行うためには、舶用ディーゼルエンジンごとに異なるガス交換時間を設定する必要がある。
【0031】
舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムは、ガス交換状態の終了した後に圧力安定状態になり、圧力安定状態の間は、第2制御弁81は閉じたままである。
【0032】
さらに、圧力安定状態において、差圧センサ60が感知した監視値が所定の差圧範囲より高い場合、すなわち、SCR反応器10内の気圧が排ガス出口における気圧よりも高い場合、SCR反応器10を保護するために、制御装置は、SCR反応器10の圧力除去を促進するように、空気圧管50に設けられた空気圧弁51を開くように制御するとともに、第1制御弁71を閉じるように制御し、最終的にSCR反応器10内の気体と排ガス出口を通過する気体との圧力差を所定の圧力差範囲に維持する。差圧センサ60によって感知された監視値が所定の差圧範囲内に達すると、SCR反応器10内の気圧が低すぎてディーゼルエンジンからの排ガスがSCR反応器10に入ることを避けるために空気圧弁51が閉じることが理解されよう。
【0033】
差圧センサ60によって感知された監視値が所定の差圧範囲より低い場合、すなわち、SCR反応器10内の気圧が排ガス出口における気圧よりも小さい場合、ディーゼルエンジンからの排ガスはSCR反応器10に入る可能性があって、制御装置は第1補助管70上の第1制御弁71を開くよう制御するとともに、空気圧弁51を閉じるように制御することで、圧縮空気が第1補助管70を介してSCR反応器10内に流入し、SCR反応器10内の圧力が徐々に増加し、最終的にSCR反応器10内の気体と排ガス出口を通過する気体との圧力差が所定の圧力差範囲に維持される。差圧センサ60によって感知された監視値が所定の差圧範囲内に達すると、SCR反応器10内の気圧が高くなりすぎないように、第1制御弁71が閉じることが理解されよう。
【0034】
好ましくは、第1補助管70は、圧力安定状態において、いつでも圧縮空気を補充する必要があるため、第1補助管70は、煤吹出空気管であることが好ましい。
【0035】
第2補助管80は、SCR反応器10が運転状態にあるときに、尿素水を噴霧するために圧縮空気を補充してよく、舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムのガス交換状態において圧縮空気を補充してよく、第2補助管80は、尿素霧化空気管であってよい。
【0036】
好ましくは、空気圧管50上にさらにスロットルオリフィスプレート52が設けられ、スロットルオリフィスプレート52は、空気圧管50内の気体の流れを保証して、SCR反応器10内の気圧を一定に保つことができる。また、排気管30上にはさらにターボチャージャ90が設けられており、ターボチャージャ90は、排ガス出口とバイパス管40と排気管30との接続部との間に設けられている。ターボチャージャ90は、ディーゼルエンジンの排ガスの慣性衝動を最大限に利用して、ディーゼルエンジンの吸気口(図示せず)の気体の圧力を上昇させることができる。
【0037】
本発明の別の態様によれば、上記のような舶用ディーゼルエンジン用高圧SCRガス交換圧力安定化システムを備えた船舶も提供される。
【0038】
本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、特に定義されない限り、本発明の技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書で使用される用語は、特定の実施の形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図していない。 本書でいう「設ける」及び「備える」とは、ある部品を他の部品に直接取り付けること、または、ある部品を中間部品によって他の部品に取り付けることを意味する場合がある。ある実施の形態において本明細書に記載された特徴は、その特徴がその他の実施の形態において適用できないか、または他に指定されていない限り、単独でまたは他の特徴と組み合わせて他の実施の形態に適用され得る。
【0039】
以上、本発明を実施の形態により説明したが、上記実施の形態は例示及び説明のためのものであり、本発明を記載した実施の形態に限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の教示に従って、より多様な変形及び修正を行うことができ、そのすべてが本発明によって主張される保護の範囲に入ることは、当業者には理解されよう。