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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】軌道部材および転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/64 20060101AFI20231020BHJP
   C21D 9/40 20060101ALI20231020BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
F16C33/64
C21D9/40 Z
F16C19/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019031601
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020133849
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大木 力
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221493(JP,A)
【文献】特開2014-238118(JP,A)
【文献】特開2006-291248(JP,A)
【文献】特開平7-27139(JP,A)
【文献】特開2014-20538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00
F16C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過共析鋼からなり、環状に設けられた軌道部材であって、
周方向に沿って延在する軌道面と、
径方向において前記軌道面とは反対側に位置する他の面とを有し、
前記軌道面の残留オーステナイト量は前記他の面の残留オーステナイト量よりも多く、
前記軌道面の残留オーステナイト量と前記他の面の残留オーステナイト量との差が5体積%以上であり、
前記他の面の残留オーステナイト量が2体積%以下であり、
前記周方向における前記軌道面の残留オーステナイト量のばらつきが2体積%以下であり、
前記軌道面の硬さが750Hv以上である、軌道部材。
【請求項2】
浸炭浸窒処理を含む熱処理が施されており、
前記軌道面の残留オーステナイト量と前記他の面の残留オーステナイト量との差が10体積%以上である、請求項1に記載の軌道部材。
【請求項3】
記周方向における前記軌道面の硬さのばらつきが20HV以下である、請求項1または2に記載の軌道部材。
【請求項4】
前記他の面の硬さが600Hv以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の軌道部材。
【請求項5】
全体の平均残留オーステナイト量が10体積%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の軌道部材。
【請求項6】
前記軌道面から前記他の面にかけて、前記径方向における残留オーステナイト量の低下率が2×10 2 体積%/m以上5×10 3 体積%/m以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の軌道部材。
【請求項7】
前記軌道面から前記他の面にかけて、前記径方向における硬さの低下率が5×10 3 HV/m以上4×10 4 HV/m以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の軌道部材。
【請求項8】
内輪軌道面と、前記内輪軌道面とは反対側に位置する内径面とを有する内輪と、
前記内輪軌道面と対向する外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面と接触する複数の転動体とを備え、
前記内輪が請求項1~7のいずれか1項に記載の軌道部材であり、
前記内輪軌道面が前記軌道部材の前記軌道面であり、
前記内径面が前記軌道部材の前記他の面であり、
前記内輪軌道面と前記内径面との間の距離は、3mm以上7mm以下である、転がり軸受
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材および転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の軌道部材は、焼入処理および焼戻処理を含む熱処理が施されることにより、製造されている。一般的に、焼戻処理は、被処理物である成形体全体が雰囲気炉内に収容されることにより、実施される。このように製造された軌道部材は残留オーステナイト量を多く含んでいる。そのため、高温環境下で使用されると、残留オーステナイト量が徐々に分解されることに伴い、該軌道部材の経年寸法変化は大きくなる。
【0003】
高温環境下で使用される軌道部材の寸法変化率は、軸受寿命の観点から、低く抑えられているのが好ましい。例えば内輪の内径面の寸法変化率が低く抑えられていれば、内輪の内径面と軸との嵌め合いに緩みが生じてクリープが発生することを抑制でき、軸受の破損を抑制できる。
【0004】
従来、軌道部材の寸法変化率を低く抑える対策として、軌道部材全体の平均残留オーステナイト量を減らすための焼戻処理が知られている。
【0005】
特開2017-227334号公報には、軌道部材全体の平均残留オーステナイト量を18体積%以下とするために、180℃以上230℃以下の温度で鋼材を焼き戻す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-227334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の上記焼戻処理方法では、成形体全体を焼き戻すため、成形体全体において残留オーステナイトが分解される。さらに、従来の上記焼戻処理方法では、成形体全体において、残留オーステナイトが分解されると同時に、マルテンサイトが分解される。
【0008】
そのため、従来の上記焼戻処理が施されることにより製造された軌道部材では、例えば高温環境下での使用が予定されないために上記条件での焼戻処理が施されずに製造された軌道部材と比べて、軌道面のマルテンサイト量が低く抑えられており、軌道面の硬さが低い。その結果、前者の軌道部材では、後者の軌道部材と比べて、軌道面とは反対側に位置する円周面、すなわち内輪の内径面または外輪の外径面、の寸法変化率は低く抑えられているが、軌道面の硬さが低下している。
【0009】
本発明の主たる目的は、上記円周面の寸法変化率が低く抑えられているとともに、軌道面の硬さの低下が抑制された軌道部材および転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る軌道部材は、炭素鋼からなり、環状に設けられた軌道部材であって、周方向に沿って延在する軌道面と、径方向において軌道面とは反対側に位置する他の面とを有している。軌道面の残留オーステナイト量は他の面の残留オーステナイト量よりも多い。軌道面の残留オーステナイト量と他の面の残留オーステナイト量との差が5体積%以上である。周方向における軌道面の残留オーステナイト量のばらつきが2体積%以下である。
【0011】
上記軌道部材は、浸炭浸窒処理を含む熱処理が施されており、軌道面の残留オーステナイト量と上記他の面の残留オーステナイト量との差が10体積%以上である。
【0012】
上記軌道部材では、軌道面の硬さが650Hv以上である。上記周方向における前記軌道面の硬さのばらつきが20HV以下である。
【0013】
上記軌道部材では、上記他の面の硬さが600Hv以上である。
上記軌道部材では、上記他の面の残留オーステナイト量が5体積%以下である。
【0014】
上記軌道部材では、全体の平均残留オーステナイト量が10体積%以下である。
上記軌道部材では、軌道面から上記他の面にかけて、径方向における残留オーステナイト量の低下率が2×102体積%/m以上5×103体積%/m以下である。
【0015】
上記軌道部材では、軌道面から上記他の面にかけて、径方向における硬さの低下率が5×103HV/m以上4×104HV/m以下である。
【0016】
本発明に係る転がり軸受は、内輪軌道面と、内輪軌道面とは反対側に位置する内径面とを有する内輪と、内輪軌道面と対向する外輪軌道面を有する外輪と、内輪軌道面と外輪軌道面と接触する複数の転動体とを備える。内輪が上記軌道部材である。内輪軌道面が軌道部材の軌道面である。内径面が軌道部材の他の面である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記円周面の寸法変化率が低く抑えられているとともに、軌道面の硬さの低下が抑制された軌道部材および転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に係る転がり軸受の一例を示す断面図である。
図2】本実施の形態に係る軸受部品における残留オーステナイト量の測定方法を説明するための概略図である。
図3】本実施の形態に係る転がり軸受の製造方法において、焼戻処理の一例を示す上面図である。
図4図3中の矢印IV-IVから視た断面図である。
図5】実施例1におけるシミュレーション解析に用いた解析モデルを示す図である。
図6図5に示される解析モデルを用いたシミュレーション解析により得られた、第1周面に対する加熱温度とそのときの第2周面の温度との関係を示すグラフである。
図7図5に示される解析モデルを用いたシミュレーション解析により得られた、被加熱部材内部の第1周面から第2周面にかけての温度分布を示す図である。
図8】実施例2における計算により得られた、周方向における均熱温度のばらつきと周方向における残留オーステナイト量のばらつきとの関係を示すグラフである。
図9】実施例2における計算により得られた、周方向における均熱温度のばらつきと周方向における硬さのばらつきとの関係を示すグラフである。
図10】実施例3における実験結果の、加熱時間に対する内周面および外周面の各温度変化を示すグラフである。
図11図10に示される内周面の温度変化の一部を拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さないものとする。
【0020】
<転がり軸受の構成>
本実施の形態に係る転がり軸受は、例えばラジアル玉軸受であって、より具体的には図1に示される深溝玉軸受1である。深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体である複数の玉13とを備えている。外輪11の中心軸は、内輪12の中心軸と重なるように配置されている。なお、本実施の形態に係る転がり軸受は、例えばラジアルころ軸受であって、より具体的には円錐ころ軸受であってもよい。
【0021】
外輪11は、内周面11Bと、外径面としての外周面11Cとを有している。外輪11の内周面11Bには、周方向に沿って延在する外輪軌道面11Aが形成されている。内輪12は、径方向において外周側を向いた外周面12Bと、内径面としての内周面12Cとを有している。内輪12の外周面12Bには、周方向に沿って延在する内輪軌道面12Aが形成されている。内輪12は、内輪軌道面12Aが外輪軌道面11Aと対向するように外輪11の内側に配置されている。
【0022】
複数の玉13は、転動面13Aにおいて外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されている。これにより、複数の玉13は、外輪11および内輪12の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。このような構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。なお、内輪12が、本実施の形態に係る軌道部材である。
【0023】
内輪12は、周方向に沿って延在する内輪軌道面12Aと、周方向に沿って延在し、かつ軸方向に沿って延びる円周面としての内周面12Cとを有している。内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量は、内周面12Cの残留オーステナイト量よりも多い。内輪12の残留オーステナイト量は、径方向において内輪軌道面12Aから内周面12Cに向かうにつれて、徐々に減少する傾向を示す。
【0024】
内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量と内周面12Cの残留オーステナイト量との差は、5体積%以上であり、好ましくは10体積%以上である。内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量は、例えば10体積%以上であり、好ましくは15体積%以上である。内周面12Cの残留オーステナイト量は、例えば10体積%未満であり、好ましくは5体積%以下である。内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量と内周面12Cの残留オーステナイト量との上記差は、従来の焼戻処理によって実現される軌道面の残留オーステナイト量と内周面の残留オーステナイト量との差超えであり、後述する本実施の形態に係る焼戻処理により実現される。なお、残留オーステナイト量は、X線回折によって測定されたマルテンサイト相およびオーステナイト相の各回折強度から算出される。
【0025】
上記周方向における内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量のばらつきは2体積%以下である。言い換えると、内輪軌道面12Aは、上記周方向において残留オーステナイト量が最大値を示す第1領域と、第1領域と上記周方向に間隔を隔てて配置されており、かつ、上記周方向において残留オーステナイト量が最小値を示す第2領域とを有している。内輪軌道面12Aの上記第1領域の残留オーステナイト量と上記第2領域の残留オーステナイト量との差が2体積%以下である。
【0026】
上記周方向における内周面12Cの残留オーステナイト量のばらつきは2体積%以下である。言い換えると、内周面12Cは、上記周方向において残留オーステナイト量が最大値を示す第3領域と、第3領域と上記周方向に間隔を隔てて配置されており、かつ、上記周方向において残留オーステナイト量が最小値を示す第4領域とを有している。内周面12Cの上記第3領域の残留オーステナイト量と上記第4領域の残留オーステナイト量との差が2体積%以下である。上記第1領域は、上記径方向において上記第3領域と重なる領域である。上記第2領域は、上記径方向において上記第4領域と重なる領域である。
【0027】
なお、上記周方向における各面の残留オーステナイト量のばらつきは、以下のように算出される。図2に示されるように、まず、第1測定点S1が内輪軌道面12A上の任意の箇所に設定される。次に、第1測定点S1から見て上記周方向にθ(30°)ずれた第2測定点S2、第2測定点S2から見て上記周方向にθ(30°)ずれた第3測定点S3、第3測定点S3から見て上記周方向にθ(30°)ずれた第4測定点S4、第4測定点S4から見て上記周方向にθ(30°)ずれた第5測定点S5、および第5測定点S5から見て上記周方向にθ(30°)ずれた第6測定点S6が、内輪軌道面12A上に設定される。このようにして、内輪12の接触面上に円周方向に沿って30°ずつずれた複数の測定点S1~S6が設定される。なお、各測定点S1~S6は、内輪軌道面12Aの上記軸方向の中央部に設定される。
【0028】
さらに、上記径方向において第1測定点S1とは反対側に位置する第7測定点S7、上記径方向において第2測定点S2とは反対側に位置する第8測定点S8、上記径方向において第3測定点S3とは反対側に位置する第9測定点S9、上記径方向において第4測定点S4とは反対側に位置する第10測定点S10、上記径方向において第5測定点S5とは反対側に位置する第11測定点S11、上記径方向において第6測定点S6とは反対側に位置する第12測定点S12が、内周面12C上に設定される。
【0029】
上記周方向における内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量のばらつきは、各測定点S1~S6において測定された残留オーステナイト量のうち最大値と最小値との差として算出される。上記周方向における内周面12Cの残留オーステナイト量のばらつきは、各測定点S7~S12において測定された残留オーステナイト量のうち最大値と最小値との差として算出される。
【0030】
また、内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量と内周面12Cの残留オーステナイト量との上記差は、上記複数の測定点S1~S12のうち、上記径方向に間隔を隔てて配置された2つの測定点間の残留オーステナイト量の差の最小値として算出される。
【0031】
内輪12の全体の平均残留オーステナイト量、すなわち内輪12の内輪軌道面12Aから内周面12Cまでの上記径方向の残留オーステナイト量の分布から算出される平均値は、20体積%以下である。好ましくは、内輪12の全体の平均残留オーステナイト量は、10体積%以下である。
【0032】
内輪軌道面12Aから内周面12Cにかけて、上記径方向における残留オーステナイト量の低下率が2×102体積%/m以上5×103体積%/m以下である。上記径方向における残留オーステナイト量の低下率は、内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量、内周面12Cの残留オーステナイト量、および上記径方向に沿った内輪12の断面の残留オーステナイト量から算出される。
【0033】
内輪軌道面12Aの硬さは、内周面12Cの硬さ超えである。内輪軌道面12Aの硬さと内周面12Cの硬さとの差は、例えば50Hv以上であり、好ましくは100Hv以上である。内輪軌道面12Aの硬さは、例えば650Hv以上であり、好ましくは700Hv以上であり、より好ましくは750Hv以上である。内周面12Cの硬さは、例えば600Hv以上700Hv以下である。なお、各表面の硬さは、JIS規格(JJS Z 2244:2009)に規定されるビッカース硬さ試験法にしたがって測定される。
【0034】
上記周方向における内輪軌道面12Aの硬さのばらつきは20HV以下である。言い換えると、内輪軌道面12Aは、上記周方向において硬さが最大値を示す第5領域と、第5領域と上記周方向に間隔を隔てて配置されており、かつ、上記周方向において硬さが最小値を示す第6領域とを有している。内輪軌道面12Aの上記第5領域の硬さと上記第6領域の硬さとの差が20HV以下である。上記第1領域は例えば上記第5領域と重なる領域である。上記第2領域は例えば上記第6領域と重なる領域である。
【0035】
なお、上記周方向における内輪軌道面12Aの硬さのばらつきは、上記測定点S1~S6において測定された硬さのうち最大値と最小値との差として算出される。また、内輪軌道面12Aの硬さと内周面12Cの硬さとの上記差は、上記複数の測定点S1~S12のうち、上記径方向に間隔を隔てて配置された2つの測定点間の硬さの差の最小値として算出される。
【0036】
内輪軌道面12Aから内周面12Cにかけて、上記径方向における硬さの低下率が5×103HV/m以上4×104HV/m以下である。上記径方向における硬さの低下率は、内輪軌道面12Aの硬さ、内周面12Cの硬さ、および上記径方向に沿った内輪12の断面の硬さから算出される。
【0037】
内輪12は、従来の焼戻処理が施されておりかつ内輪軌道面12Aの硬さが同等とされた従来の内輪と比べて、内周面12Cの残留オーステナイト量が低減されているため、内周面12Cの寸法変化率が低く抑えられている。また、内輪12は、従来の焼戻処理が施されておりかつ内周面12Cの残留オーステナイト量が同等とされた従来の内輪と比べて、内輪軌道面12Aのマルテンサイト量が増加しているため、内輪軌道面12Aの硬さが向上している。内輪12は、従来の内輪と比べて、内周面12Cの寸法安定性向上と内輪軌道面12Aの硬さ向上との両立が実現されている。
【0038】
上記周方向における内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量の上記ばらつきは、従来の焼戻処理によって実現される軌道面の残留オーステナイト量のばらつきと同等、あるいはそれ以上に抑制されており、後述する本実施の形態に係る焼戻処理により実現される。上記周方向における内周面12Cの残留オーステナイト量の上記ばらつきは、従来の焼戻処理によって実現される軌道面の残留オーステナイト量のばらつきよりも抑制されており、後述する本実施の形態に係る焼戻処理により実現される。
【0039】
さらに、内輪12は、従来の焼戻処理が施されておりかつ内輪軌道面12Aの硬さが同等とされた従来の内輪と比べて、上記周方向における内周面12Cの残留オーステナイト量のばらつきが低減されているため、上記周方向における内周面12Cの寸法変化率のばらつきも低く抑えられている。また、内輪12は、従来の焼戻処理が施されておりかつ内周面12Cの残留オーステナイト量が同等とされた従来の内輪と比べて、上記周方向における内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量のばらつきが同等、あるいはそれ以上に低減されているため、上記周方向における内輪軌道面12Aのマルテンサイト量のばらつきも同等、あるいはそれ以上に低減されている。そのため、内輪12は、従来の焼戻処理が施されておりかつ内周面12Cの残留オーステナイト量が同等とされた従来の内輪と比べて、上記周方向における内輪軌道面12Aの硬さのばらつきが同等、あるいはそれ以上に低減されている。
【0040】
<転がり軸受の製造方法>
本実施の形態に係る転がり軸受は、図3に示される本実施の形態に係る転がり軸受の製造方法により、製造される。図3に示されるように、本実施の形態に係る転がり軸受の製造方法は、内輪12(軌道部材)となるべき成形体を準備する工程(S10)と、成形体に対して焼入硬化処理を行う工程(S20)と、焼入硬化処理が施された成形体に対して焼戻処理を行う工程(S30)と、焼戻処理が施された成形体を研削加工する仕上工程(S40)とを備える。上記工程(S10)~(S40)により、内輪12が製造される。さらに、本実施の形態に係る転がり軸受の製造方法は、外輪11と玉13とを準備して、内輪12、外輪11、および玉13を組み立てる工程(S50)とをさらに備える。
【0041】
工程(S10)では、まず、炭素鋼組成を有する鋼材が準備される。鋼材は、例えば過共析鋼からなる。鋼材は、たとえば棒鋼や鋼線などとして準備される。次に、当該鋼材に対して切断、鍛造、旋削などの加工が施される。これにより、内輪12の概略形状に成形加工された鋼材(成形体)が作製される。上記成形体は、径方向において内側を向いた第1周面と、径方向において外側を向いた第2周面とを有している。第1周面が後工程(S40)において研削加工されることにより、内輪12の内周面12Cが形成される。第2周面が後工程(S40)において研削加工されることにより、内輪12の内輪軌道面12Aが形成される。
【0042】
工程(S20)では、先の工程(S10)において準備された成形体に対し、焼入硬化処理が実施される。工程(S20)では、まず、成形体に浸炭浸窒処理が実施される。次に、浸炭浸窒処理によって成形体中に浸入した窒素を拡散させるための窒素拡散処理が実施される。次に、成形体の全体がA1点以上の温度T1に加熱され、均熱のために保持時間t1(均熱時間)だけ保持される。次に、成形体がMs点(マルテンサイト変態点)以下の温度T2にまで冷却される。この冷却処理は、例えば油や水などの冷却液中に対象材が浸漬されることにより実施される。これにより、当該対象材が焼入処理される。なお、焼入硬化処理が実施された成形体の上記第2周面の残留オーステナイト量と上記第1周面の残留オーステナイト量との差は5体積%未満とされている。
【0043】
工程(S30)では、先の工程(S20)において焼入硬化処理が実施された成形体に対し、焼戻処理が実施される。焼戻処理では、成形体の上記第2周面が冷却部によって局所的に冷却されながら、上記第1周面が加熱部によって局所的に加熱される。つまり、第1周面に対する加熱開始時から加熱終了時まで、第2周面に対する冷却は継続して実施される。さらに、焼戻処理では、成形体がその周方向に沿って冷却部および加熱部に対して相対的に回転されながら、上記冷却および上記加熱が実施される。
【0044】
焼戻処理では、成形体の上記第1周面が焼戻温度T3に加熱され、均熱のために保持時間t2(焼戻時間)だけ保持される。成形体の上記第2周面の到達温度T4は、上記焼戻処理の間上記冷却が施されることにより、焼戻温度T3未満に保持される。なお、到達温度とは、測温される部位での最高温度である。
【0045】
焼戻温度T3および保持時間t2は、内周面12Cに要求される寸法安定性を実現する観点から、内周面12Cの残留オーステナイト量が予め定められた値以下となるように設定される。一方、上記第2周面の到達温度T4は、例えば内輪軌道面12Aに要求される硬さを実現する観点から当該硬さが予め定められた値以上となるように設定される。
【0046】
上記のように設定された焼戻温度T3、保持時間t2、および到達温度T4は、例えば図3および図4に示される加熱方法および冷却方法により実現され得る。
【0047】
図3および図4に示されるように、上記加熱は、例えば誘導加熱により実施される。加熱部としてのコイル30は成形体10において第1周面10Cのみと対向するように配置される。好ましくは上記加熱は高周波誘導加熱により実施される。コイル30には、3kHz以上の交流電流が供給される。上記加熱が高周波誘導加熱により実施される場合、それよりも低周波数の交流電流がコイル30に供給される誘導加熱と比べて、径方向において第2周面10A側の温度上昇が抑制されるため、焼戻温度T3と上記到達温度T4との差が大きくなる。なお、上記加熱は、誘導加熱に限られるものではなく、例えば接触加熱、遠赤外線加熱等であってもよい。図3に示されるように、上記加熱部は、成形体10の上記周方向における一部を加熱するように設けられていてもよい。コイル30は、例えば成形体10の上記周方向における一部と、上記径方向において対向するように配置されている。上記加熱部による上記加熱は、例えば熱電対等によって測定された第1周面10Cの温度が予め定められた設定温度に近づくように、フィードバック制御される。
【0048】
図4に示されるように、上記冷却は、例えば水などの冷却溶媒を成形体10の第2周面10Aに供給することにより実施される。好ましくは、上記冷却は、第1周面10Cを冷却しないように実施される。上記冷却は、第2周面10Aに供給される水が第1周面10Cには供給されないように実施される。冷却部としての噴射部31は、例えば成形体10において第2周面10Aのみと対向するように配置されて、第2周面10Aに対して水を噴射する。噴射部31から噴射される冷却溶媒の流量は、例えば20L/分以上40L/分以下である。図3に示されるように、上記冷却部は、成形体10の上記周方向における一部を冷却するように設けられていてもよい。上記加熱部および上記冷却部は、例えば上記径方向において成形体10の上記周方向における一部を挟むように配置されている。噴射部31は、例えば成形体10の上記周方向における一部と、上記径方向において対向するように配置されている。なお、上記冷却は、第2周面10Aのうち、少なくとも後工程(S40)において内輪軌道面12Aを形成するために研削加工が施される領域に対して実施されればよい。
【0049】
上記加熱および上記冷却は、コイル30および噴射部31に対し、成形体10を周方向に回転させることにより実施される。上記回転は、例えば成形体10を支持する図示しない支持部と、支持部を上記周方向に回転させる駆動部とによって実施される。支持部は、例えば軸方向が鉛直方向に沿うように配置された成形体10の、下方を向いた端面を支持するように設けられている。支持部の一部は、例えば成形体10、コイル30、および噴射部31とともに、上記加熱および上記冷却が実施される図示しないチャンバ内に配置されており、支持部の残部は、例えば上記チャンバの外に配置されている。駆動部は、例えば支持部の上記残部に接続されており、上記チャンバの外に配置されている。支持部および駆動部による成形体10の回転速度は、例えば100rpm以上150rpm以下である。
【0050】
なお、上記焼戻処理は、複数の成形体10に対して連続して実施されてもよい。この場合、支持部は、上記軸方向に積層された複数の成形体10のうち最も下方に位置しかつチャンバに投入される前の成形体を、下方から支持するように設けられていてもよい。つまり、支持部の全体がチャンバの外に配置されていてもよい。この場合、複数の成形体10は、例えばそのうちの1つの成形体10に対して上記焼戻処理が施された後に、1つの成形体10の上記軸方向の幅分だけ上方に搬送されて、該1つの成形体10の下に積層された成形体10に対する上記焼戻処理が開始される。上記焼戻処理が施された成形体10は、例えば上記チャンバの上方に設けられた搬出口からチャンバの外部に搬出される。
【0051】
なお、焼戻温度T3、保持時間t2、および到達温度T4の各設定値は、例えば以下の数式1、数式2および数式3に基づいて設定される。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
【数3】
【0055】
上記数式1は、焼戻温度T3(単位:℃)と上記到達温度T4(単位:℃)との関係を予測する予測式である。本発明者らは、上記加熱が第1周面に対する誘導加熱により実施され、かつ上記冷却が第2周面に対する水の噴射により実施される場合の、成形体を模擬した被加熱部材内の温度分布をシミュレーション解析した。上記数式1は、本発明者らが上記シミュレーション解析の結果から求めたものである。解析の結果、上記到達温度T4が焼戻温度T3に対して線形に変化することが確認された(図6参照)。シミュレーション解析の詳細は後述する。なお、加熱方法および冷却方法の少なくともいずれかが上記とは異なる方法により実施される場合、上記数式1が当該異なる方法における予測式に変更される。
【0056】
上記数式2は、焼戻処理時の到達温度T(単位:K)、保持時間t2(単位:秒)および焼戻処理後の第1周面の残留オーステナイト量γ(単位:体積%)の関係を予測する予測式である。上記数式2中のRは気体定数である。焼戻処理後の第1周面の残留オーステナイト量γは、数式2中の到達温度Tに焼戻温度T3を代入することにより算出される。焼戻処理後の第2周面の残留オーステナイト量γは、数式2中の到達温度Tに到達温度T4を代入することにより算出される。上記数式2は、非特許文献1(井上毅、「新しい焼もどしパラメータとその連続昇温曲線に沿った焼もどし効果の積算法への応用」鉄と鋼,66,10(1980)1533.)に記載されている硬さと焼戻温度との関係式に基づき、本発明者らが実験的に求めたものである。
【0057】
上記数式3は、焼戻処理時の到達温度T(単位:K)、保持時間t2(単位:秒)および焼戻処理後の第2周面の硬さM(単位:HV)の関係を予測する予測式である。焼戻処理後の第1周面の硬さMは、数式3中の到達温度Tに焼戻温度T3を代入することにより算出される。焼戻処理後の第2周面の硬さMは、数式3中の到達温度Tに到達温度T4を代入することにより算出される。上記数式3は、特開平10-102137号公報に記載されている残留オーステナイト量と焼戻温度との関係式に基づき、本発明者らが実験的に求めたものである。
【0058】
具体的には、焼戻温度T3、保持時間t2、および到達温度T4の各設定値は、上記数式1、数式2および数式3に基づいて、例えば以下のように設定され得る。
【0059】
まず、上記数式2から、第1周面の残留オーステナイト量および成形体10の全体の平均残留オーステナイト量が上記予め定められた値以下となるように、焼戻温度T3の上限値および保持時間t2の下限値が設定される。さらに、上記数式3から、第2周面の硬さが上記予め定められた値以上となるように、上記到達温度T4の下限値および保持時間t2の上限値が設定される。次に、上記数式1から、上記数式2に基づいて設定された焼戻温度T3の上限値が実現されるときの上記到達温度T4の上限値が見積もられる。あるいは、上記数式1から、上記数式3に基づいて設定された上記到達温度T4の下限値が実現されるときの上記焼戻温度T3の下限値が見積もられる。次に、上記のように見積もられた焼戻温度T3、到達温度T4、保持時間t2の各上限値または下限値に基づいて、それぞれの設定値が定められる。
【0060】
工程(S40)では、少なくとも上記成形体10の上記第2周面10Aに対して研削加工が実施される。これにより、内輪軌道面12Aを有する内輪12が形成される。なお、上記成形体の上記第1周面10Cに対する研削加工が実施されない場合、内周面12Cは焼戻処理が施された第1周面である。また、上記成形体の上記第1周面に対する研削加工が実施される場合、内周面12Cは焼戻処理が施された第1周面に対する研削加工により形成された面である。
【0061】
工程(S50)では、外輪11と玉13とが準備される。次に、先の工程(S40)において製造された内輪12と、準備された外輪11および玉13とが組み立てられる。これにより、図1に示される深溝玉軸受1が製造される。
【0062】
<変形例>
上記工程(S20)では、浸炭浸窒処理が実施されるが、浸炭浸窒処理は実施されなくてもよい。この場合の焼入処理後の成形体の残留オーステナイト量は、浸炭処理が実施される場合のそれと比べて全体的に少なくなる。そのため、この場合の内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量と内周面12Cの残留オーステナイト量との差は、浸炭浸窒処理が実施される場合のそれと比べて小さくなる。しかし、この場合にも上記焼戻処理が実施されていることにより、上記差は上記焼戻処理が実施されていない従来の内輪のそれと比べて大きくなる。つまり、浸炭浸窒処理が実施されずに製造された内輪12においても、上記焼戻処理が実施されていることにより、内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量と内周面12Cの残留オーステナイト量との差は5体積%以上とされ得る。
【0063】
また、内輪12とともに、外輪11も、本実施の形態に係る軌道部材として構成されていてもよい。この場合、外輪軌道面11Aの残留オーステナイト量と円周面としての外周面11Cの残留オーステナイト量との差が、5体積%以上であり、好ましくは10体積%以上である。
【0064】
<作用効果>
本実施の形態に係る軌道部材としての内輪12は、過共析鋼からなり、環状に設けられた軌道部材であって、上記周方向に沿って延在する軌道面12Aと、径方向において軌道面12Aとは反対側に位置する内周面12Cとを有している。軌道面12Aの残留オーステナイト量は内周面12Cの残留オーステナイト量よりも多い。軌道面12Aの残留オーステナイト量と内周面12Cの残留オーステナイト量との差が5体積%以上である。上記周方向における軌道面12Aの残留オーステナイト量のばらつきが2体積%以下である。
【0065】
従来の焼戻処理では、成形体の全体が雰囲気炉内で加熱されるため、軌道面となるべき領域の残留オーステナイトおよびマルテンサイトが分解される。そのため、このような従来の上記焼戻処理により製造される第1比較例としての内輪では、軌道面の残留オーステナイト量と内径面の残留オーステナイト量との差は5体積%未満となる。その結果、当該内輪では、内径面の寸法安定性と軌道面の硬さとはトレードオフの関係を示し、両者を同時に高めることは困難であった。
【0066】
また、焼戻処理において、仮に成形体の第1周面のみに対する局所的な加熱が実施されたとしても、第2周面に対する局所的な冷却が実施されなければ、焼戻処理における第2周面の到達温度が高くなり、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの分解が進行する。その結果、上記加熱のみが実施され上記冷却が実施されない焼戻処理により製造される第2比較例としての内輪においても、軌道面の残留オーステナイト量と内径面の残留オーステナイト量との差は5体積%未満となる。その結果、当該内輪においても、内径面の寸法安定性と軌道面の硬さとはトレードオフの関係を示し、両者を同時に高めることは困難である。
【0067】
これに対し、本実施の形態に係る焼戻処理では、成形体の第1周面が局所的に加熱されかつ成形体の第2周面が局所的に冷却される。上記内輪12は、本実施の形態に係る焼戻処理が施されることにより、製造されたものである。そのため、第2周面に基づいて形成された内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量は、第1周面に基づいて形成された内周面12Cの残留オーステナイト量よりも、5体積%以上多くなる。
【0068】
その結果、内輪12では、内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて多く、かつ内周面12Cの残留オーステナイト量が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて少なくされ得る。このような内輪12では、上記第1比較例および第2比較例の内輪と比べて、内周面12Cの寸法安定性および内輪軌道面12Aの硬さが同時に高められている。
【0069】
また、内輪12では、内周面12Cの残留オーステナイト量が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて同等とされ、かつ内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて多くされ得る。このような内輪12では、内周面12Cの寸法安定性が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと同等とされるとともに、内輪軌道面12Aの硬さが上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて大きく向上している。
【0070】
また、内輪12では、内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて同等とされ、かつ内周面12Cの残留オーステナイト量が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて少なくされ得る。このような内輪12では、内輪軌道面12Aの硬さが上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと同等とされるとともに、内周面12Cの寸法安定性が上記第1比較例および第2比較例の内輪のそれと比べて大きく向上している。
【0071】
また、上述のようにコイル30および噴射部31が上記周方向における成形体10の一部を加熱および冷却するように設けられており、かつ上記加熱および上記冷却がコイル30および噴射部31に対して固定された成形体10に施される場合、コイル30の環状部分と、環状部分の両端に接続されたリード部分との接続箇所付近で磁束密度が低下し、被加熱部材のうち上記径方向において当該接続箇所と対向するように配置された部分の温度が被加熱部材のうち上記径方向において環状部分と対向するように配置された他の部分の温度よりも低くなるおそれがある。
【0072】
これに対し、本実施の形態に係る焼戻処理では、上記加熱および上記冷却が、コイル30および噴射部31に対し、成形体10を周方向に回転させることにより実施される。上記内輪12は、本実施の形態に係る焼戻処理が施されることにより、製造されたものである。そのため、上述のようにコイル30および噴射部31が上記周方向における成形体10の一部を加熱および冷却するように設けられていても、第1周面に基づいて形成された内周面12Cおよび第2周面に基づいて形成された内輪軌道面12Aの各残留オーステナイト量の上記周方向のばらつきは、2体積%以下となる。その結果、内輪12では、上記周方向における内輪軌道面12Aの残留オーステナイト量のばらつきが、上記加熱および上記冷却がコイル30および噴射部31に対して固定された成形体10に施される場合のそれと比べて、低減されている。さらに、内輪12では、上記周方向における内周面12Cの残留オーステナイト量のばらつきが、上記加熱および上記冷却がコイル30および噴射部31に対して固定された成形体10に施される場合のそれと比べて、低減されている。このような内輪12では、上記加熱および上記冷却がコイル30および噴射部31に対して固定された成形体10に施される場合と比べて、上記周方向における内周面12Cの寸法安定性のばらつき、および上記周方向における内輪軌道面12Aの硬さのばらつきが、同時に低減されている。
【0073】
なお、上記焼戻処理を実施するための加熱部および冷却部が上記周方向における成形体10の全体に対して加熱および冷却を行うように設けられている場合、このような加熱部および冷却部は上記コイル30および噴射部31と比べて高価となるため、内輪の製造コストも高くなる。つまり、上記内輪12では、このような加熱部および冷却部を用いて製造される内輪と比べて、製造コストが低減されながらも、上記周方向における内周面12Cの寸法安定性のばらつき、および上記周方向における内輪軌道面12Aの硬さのばらつきが、同時に低減されている。
【0074】
好ましくは、内輪12は、浸炭浸窒処理を含む熱処理が施されている。この場合、上述のように、軌道面の残留オーステナイト量と円周面の残留オーステナイト量との差が10体積%以上とされ得る。そのため、このような内輪12では、上記第1比較例および第2比較例の内輪と比べて、内周面12Cの寸法安定性および内輪軌道面12Aの硬さが同時にかつ大きく向上している。
【0075】
本実施の形態に係る焼戻処理は、従来の焼戻処理と比べて、成形体の上記第2周面のマルテンサイトの分解を抑制することができる。そのため、内輪12の内輪軌道面12Aの硬さは、650Hv以上とされ得る。つまり、内輪軌道面12Aの硬さは、上記第1比較例および第2比較例の内輪の軌道面の硬さ超えとされ得る。さらに、上述のように、本実施の形態に係る焼戻処理によって、内輪軌道面12Aの各残留オーステナイト量の上記周方向のばらつきは2体積%以下となる。そのため、上記周方向における内輪12の内輪軌道面12Aの硬さのばらつきは、20Hv以下とされ得る。
【0076】
上記内輪12は、ラジアル軸受である深溝玉軸受1または円錐ころ軸受の内輪であり、内周面12Cは径方向において内輪軌道面12Aとは反対側に位置する面である。上記内輪12を備える深溝玉軸受1は、上記第1比較例および第2比較例の内輪を備える深溝玉軸受と比べて、内周面12Cの寸法安定性と内輪軌道面12Aの硬さとが同時に高められているため、高寿命である。
【実施例
【0077】
(実施例1)
上述した実施の形態に係る焼戻処理に関し、シミュレーション解析を行った。シミュレーション解析は、有限要素法による熱伝導解析により行った。まず、上記成形体を模擬した被加熱部材は、JIS規格 SUJ2からなり、軸方向の厚さが3mmのリングとした。また、該被加熱部材、上記焼入処理が施されたものとした。この被加熱部材を、図5に示される解析モデルを用いて上記焼戻処理を模擬し、そのときの被加熱部材内部の温度分布を解析した。本解析モデルでは、成形体の第1周面に対する上記加熱を誘導加熱、第2周面に対する上記冷却を水冷とする焼戻条件を設定した。また、第2周面に適当な熱伝達係数を与えて、水冷を模擬した。このような解析モデルにおいて、第1周面に対する加熱温度、すなわち焼戻温度を180℃以上490℃以下とし、保持時間を1分としたときの、成形体内部の温度分布を解析した。図6および図7に解析結果を示す。
【0078】
図6は、第1周面に対する加熱温度を180℃以上490℃以下とし、保持時間を1分としたときの、該加熱温度と上記冷却が施されている第2周面の到達温度との関係を示すグラフである。図6の横軸は第1周面に対する加熱温度(単位:℃)を示し、図6の縦軸は第2周面の到達温度(単位:℃)を示す。図6に示されるように、第2周面の到達温度は第1周面に対する加熱温度に対して線形に変化した。図6のグラフから、上記数式1が導出された。図6から、上記加熱および上記冷却が同時に実施されることにより、第1周面と第2周面との温度差を十分に大きくすることができ、第1周面の残留オーステナイト量と第2周面の残留オーステナイト量との差を5体積%以上とすることができることが確認された。
【0079】
図7は、第1周面に対する加熱温度を350℃とする加熱および上記冷却を開始してから30秒経過したときの、被加熱部材の内部の温度分布を示す図である。図7に示されるように、第1周面から第2周面に向かうにつれて、被加熱部材の内部の温度が徐々に低くなっており、第1周面の温度に対する低下量が第1周面からの距離に対して線形に変化することが確認された。また、上記工程(S50)における研削加工の取り代を考慮しても、軌道面が形成される領域の到達温度はマルテンサイトの分解が十分に抑制され得る温度に抑えられることが確認された。
【0080】
また、図7に示される上記加熱および上記冷却を、焼戻処理前の第1周面および第2周面の残留オーステナイト量が14.4体積%、硬さが780Hvである被加熱部材に実施した場合、第1周面の残留オーステナイト量が2体積%以下、第1周面の硬さが680Hvであるの対し、第2周面の残留オーステナイト量は14.1体積%、硬さは779Hvであった。
【0081】
(実施例2)
上述した実施の形態に係る焼戻処理に関し、上記周方向における外周面の温度のばらつきが残留オーステナイト量および硬さに与える影響を、上記数式2および3に基づいて評価した。
【0082】
図8は、第1周面の最高温度(到達温度)が230℃以上400℃以下、第1周面の最低温度が上記最高温度よりも20℃、50℃、または80℃低い温度とされ、かつ保持時間が1分とされたときの、上記最高温度と、上記最高温度で加熱されたときの残留オーステナイト量と上記最低温度で加熱されたときの残留オーステナイト量との差Δγとの関係を示すグラフである。上記最高温度で加熱されたときの残留オーステナイト量は、上記最高温度が上記数式(2)の到達温度T(単位:K)に代入され、上記保持時間が数式(2)の保持時間t2(単位:秒)に代入されることにより、算出された。上記最低温度で加熱されたときの残留オーステナイト量は、上記最低温度が上記数式(2)の到達温度T(単位:K)に代入され、上記保持時間が数式(2)の保持時間t2(単位:秒)に代入されることにより、算出された。
【0083】
図8の横軸は最高温度(単位:℃)を示し、図8の縦軸は上記最低温度で加熱されたときの残留オーステナイト量と上記最高温度で加熱されたときの残留オーステナイト量との差Δγ(単位:体積%)を示す。図8中、温度差ΔTが20℃であるときの上記最高温度と残留オーステナイト量の上記差Δγとの関係を示すグラフ、温度差ΔTが50℃であるときの上記最高温度と残留オーステナイト量の上記差Δγとの関係を示すグラフ、および温度差ΔTが80℃であるときの上記最高温度と残留オーステナイト量の上記差Δγとの関係を示すグラフが、示されている。つまり、図8では、上記周方向における内周面の温度のばらつきが上記最高温度と上記最低温度との差ΔTとして表され、上記周方向における内周面の残留オーステナイト量のばらつきが上記残留オーステナイト量の差Δγとして表されている。
【0084】
図8に示されるように、温度差ΔTが大きいほど、残留オーステナイト量の差Δγが大きくなった。また、温度差ΔTが大きいほど、残留オーステナイト量の差Δγが最大値を示す最高温度が高かった。残留オーステナイト量の差Δγの最大値は、温度差ΔTが20℃では2.8体積%、温度差ΔTが50℃では6.6体積%、温度差ΔTが80℃では9.6体積%であった。
【0085】
図8において、温度差ΔTが20℃であるときのグラフにおいて最高温度が300℃であるプロットは、300℃に加熱されたときの残留オーステナイト量と280℃に加熱されたときの残留オーステナイト量との差が2体積%以上であることを示している。
【0086】
図8において、温度差ΔTが20℃であるときのグラフにおいて最高温度が290℃であるプロットは、290℃に加熱されたときの残留オーステナイト量と270℃に加熱されたときの残留オーステナイト量との差が2体積%以下であることを示している。図8において、温度差ΔTが20℃であるときのグラフにおいて最高温度が250℃であるプロットは、250℃に加熱されたときの残留オーステナイト量と230℃に加熱されたときの残留オーステナイト量との差が1体積%以下であることを示している。
【0087】
図9は、第1周面の最高温度が230℃以上400℃以下、第1周面の最低温度が上記最高温度よりも20℃、50℃、または80℃低い温度とされ、かつ保持時間が1分とされたときの、上記最高温度と、上記最高温度で加熱されたときの硬さと上記最低温度で加熱されたときの硬さとの差ΔHVとの関係を示すグラフである。上記最高温度で加熱されたときの硬さは、上記最高温度が上記数式(3)の到達温度T(単位:K)に代入され、上記保持時間が数式(3)の保持時間t2(単位:秒)に代入されることにより、算出された。上記最低温度で加熱されたときの硬さは、上記最低温度が上記数式(3)の到達温度T(単位:K)に代入され、上記保持時間が数式(3)の保持時間t2(単位:秒)に代入されることにより、算出された。
【0088】
図9の横軸は最高温度(単位:℃)を示し、図9の縦軸は上記最低温度で加熱されたときの硬さと上記最高温度で加熱されたときの硬さとの差ΔHV(単位:HV)を示す。図9中、温度差ΔTが20℃であるときの上記最高温度と硬さの上記差ΔHVとの関係を示すグラフ、温度差ΔTが50℃であるときの上記最高温度と硬さの上記差ΔHVとの関係を示すグラフ、および温度差ΔTが80℃であるときの上記最高温度と硬さの上記差ΔHVとの関係を示すグラフが、示されている。つまり、図9では、上記周方向における内周面の温度のばらつきが上記最高温度と上記最低温度との差ΔTとして表され、上記周方向における内周面の硬さのばらつきが上記硬さの差ΔHVとして表されている。
【0089】
図9に示されるように、温度差ΔTが大きいほど、硬さの差ΔHVが大きくなった。また、温度差ΔTが大きいほど、硬さの差ΔHVが最大値を示す最高温度が高かった。硬さの差ΔHVの最大値は、温度差ΔTが20℃では10.6HV、温度差ΔTが50℃では28.0HV、温度差ΔTが80℃では47.3HVであった。最高温度が高いほど、硬さの差ΔHVは小さかった。
【0090】
図9に示されるように、温度差ΔTが20℃である場合、硬さの上記差ΔHVは20HV以下であった。温度差ΔTが20℃であるときのグラフにおいて最高温度が350℃以上である各プロットは、350℃以上に加熱されたときの硬さと330℃以上に加熱されたときの硬さとの差が10HV以下であることを示している。
【0091】
つまり、図8および図9に示される計算結果では、上記周方向における外周面の温度のばらつきが小さいほど、上記周方向における外周面の残留オーステナイト量のばらつきおよび硬さのばらつきが抑えられていた。
【0092】
(実施例3)
上述した実施の形態に係る焼戻処理での成形体の第1周面および第2周面の各温度と、各温度変化とを評価した。まず、JIS規格に定められたSUJ2からなり、かつ環状に設けられた複数の被加熱部材を準備した。各被加熱部材の上記径方向の幅、すなわち内周面と外周面との間の距離は、3mm以上7mm以下とした。次に、複数の熱電対および各熱電対の出力を収集するための無線式計測ユニットを準備し、各被加熱部材の上記周方向の一部領域の第1周面に対応する内周面および第2周面に対応する外周面にそれぞれ1つの熱電対を固定した。上記一部領域の内周面に固定された熱電対は、上記一部領域の外周面に固定された熱電対と、上記径方向において重なるように配置された。
【0093】
次に、実施例として、熱電対が取り付けられた各被加熱部材に対し、上述した実施の形態に係る焼戻処理での上記加熱および上記冷却を施した。具体的には、被加熱部材が上記支持部に支持されかつ上記駆動部によって被加熱部材の周方向に回転された状態で、被加熱部材の内周面が上記加熱部によって誘導加熱されると同時に、被加熱部材の外周面が上記冷却部(冷却ジャケット)に冷却された。上記加熱部および上記冷却部は、上記周方向における被加熱部材の一部を加熱および冷却するものとした。すなわち、上記加熱および上記冷却は、熱電対が固定された被加熱部材の上記一部領域と上記加熱部および上記冷却部との間の距離が上記駆動部による被加熱部材の回転に伴い変化する加熱条件下で、実施された。上記加熱および上記冷却が開始されるタイミングは、同時とした。
【0094】
上記駆動部による被加熱部材の回転数は、100rpm以上150rpm以下とした。上記加熱部による上記加熱は、熱電対によって測定された内周面の温度が予め定められた内周面の加熱温度(均熱温度)に近づくようにフィードバック制御された。フィードバック制御は、DAコンバータおよびプログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller)を用いて行われた。上記冷却部から被加熱部材の外周面に噴射された冷却液の流量は、20L/分以上40L/分以下とした。このような加熱処理での各被加熱部材の内周面および外周面の各温度の推移を評価した。
【0095】
図10および図11は、代表的な評価結果として、上記径方向の幅が3mmであった被加熱部材に、回転数が100rpm、内周面の到達温度が250℃、冷却液の流量が20L/分である加熱処理を施したときの温度変化を示すグラフである。図10および図11の横軸は加熱時間(単位:秒)であり、図10および図11の縦軸は測定された内周面および外周面の各温度(単位:℃)である。図11は、図10に示される内周面の温度変化のうち、内周面の温度が予め定められた到達温度に達した後の所定時間内での温度変化を示す部分拡大図である。
【0096】
図10および図11に示されるように、内周面の温度は、予め定められた到達温度である250℃に達した後、240℃以上260℃以下の温度範囲内を波状に推移していた。図11に示されるように、内周面の温度が到達温度に達した後、内周面の温度変化の振幅は15℃以下であり、かつ内周面の温度変化の周波数は被加熱部材の回転数と略同等であった。この結果から、内周面の温度が到達温度に達した後の内周面の温度変化は、主に被加熱部材の上記一部領域と上記加熱部および上記冷却部との間の距離の上記変化に起因していることが確認された。
【0097】
図10に示されるように、外周面の温度は、100℃に達した後、80℃以上120℃以下の温度範囲内を波状に推移していた。図11に示されるように、外周面の温度が100℃に達した後、比較的速やかに内周面の温度が250℃に達した。内周面の温度が250℃に達した後、外周面の温度変化の振幅は30℃以下であり、かつ外周面の温度変化の周波数は被加熱部材の回転数と略同等であった。図10および図11に示される被加熱部材では、外周面での熱伝達係数が19000W/m2K程度であった。さらに、このような実施例に係る被加熱部材では、加熱後の表面酸化による変色ムラが確認されなかった。
【0098】
一方、比較例として、熱電対が取り付けられた各被加熱部材に対し、上記周方向に回転されていない点でのみ上記実施例と異なる熱処理を施した。このような比較例に係る被加熱部材では、加熱後の表面酸化による変色ムラに基づいて、上記周方向における内周面の温度のばらつきが数十℃以上と見積もられた。
【0099】
以上の評価結果から、上記焼戻処理での上記周方向における内周面および外周面の温度のばらつきは被加熱部材を回転させることによって低減されることが確認された。
【0100】
さらに、被加熱部材が回転された状態において内周面の温度が到達温度に達した後の外周面の温度変化は、主に被加熱部材の回転数に依存していることが確認された。さらに、図10および図11に示されていない他の評価結果も考慮すれば、外周面での熱伝達係数は、駆動部よる被加熱部材の回転数、および冷却部から被加熱部材に供給される冷却液の流量等によって制御されることが確認された。
【0101】
(実施例4)
上述した実施の形態に係る焼戻処理に関し、上記径方向における温度分布が上記径方向における残留オーステナイト量の分布に与える影響を、上記実施例1のシミュレーション結果および上記数式2に基づいて評価した。同様に、上記径方向における温度分布が上記径方向における硬さの分布に与える影響を、上記実施例1のシミュレーション結果および上記数式3に基づいて評価した。
【0102】
上記シミュレーション結果から見積もられた被加熱部材の上記径方向における各部位の温度を上記数式(2)の到達温度Tに代入し、各部位の残留オーステナイト量を見積もった。その結果、被加熱部材の第2周面から第1周面にかけて上記径方向における残留オーステナイト量の低下率、すなわち第2周面からの距離に対する残留オーステナイト量の低下率は、2×102体積%/m以上5×103体積%/m以下であった。
【0103】
上記シミュレーション結果から見積もられた被加熱部材の上記径方向における各部位の温度を上記数式(3)の到達温度Tに代入し、各部位の硬さを見積もった。その結果、被加熱部材の第2周面から第1周面にかけて上記径方向における硬さの低下率、すなわち第2周面からの距離に対する硬さの低下率は、5×103HV/m以上4×104HV/m以下であった。
【0104】
さらに、上記実施例3で用いられた被加熱部材の、上記径方向における残留オーステナイト量の分布を評価した。さらに、上記実施例3で用いられた被加熱部材の、上記径方向における硬さの分布を評価した。評価方法は、上記実施の形態に記載した通りとした。
【0105】
回転数が100rpm、内周面の到達温度が250℃、冷却液の流量が20L/分である加熱処理が施された上記径方向の幅が7mmである被加熱部材では、上記残留オーステナイトの低下率が2×102体積%/mであって、上記硬さの低下率が5×103HV/mであった。回転数が150rpm、内周面の到達温度が400℃、冷却液の流量が40L/分である加熱処理が施された上記径方向の幅が3mmである被加熱部材では、上記残留オーステナイトの低下率が5×103体積%/mであって、上記硬さの低下率が4×104HV/mであった。
【0106】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 深溝玉軸受、10 成形体、10A 第2周面、10C 第1周面、11 外輪、11A 外輪軌道面、12C 内周面、12B 外周面、12 内輪、12A 内輪軌道面、13 玉、13A 転動面、14 保持器、30 コイル、31 噴射部。
図1
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図11