(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法及び診断プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/3842 20190101AFI20231024BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231024BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20231024BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G01R31/3842
H02J7/00 Q
G01R31/396
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2021161866
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513213966
【氏名又は名称】横河ソリューションサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉武 哲
(72)【発明者】
【氏名】数見 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 浩司
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-273413(JP,A)
【文献】特開2018-57137(JP,A)
【文献】特開2017-129493(JP,A)
【文献】特開2021-89140(JP,A)
【文献】特開2020-63983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
H02J 7/00
G01R 31/396
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池システムを構成する複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記一部の電池セルのデータに基づいて、前記蓄電池システムを診断する診断部と、
を備え、
前記データは、電圧及び積算電流量を含み、
前記一部の電池セルは、
低SOC(State Of Charge)状態で、最小電圧の電池セルであるMINセルとしてデータ取得された電池セルと、
低SOC状態で、最大電圧の電池セルであるMAXセルとしてデータ取得された電池セルと、
高SOC状態で、MINセルとしてデータ取得された電池セルと、
高SOC状態で、MAXセルとしてデータ取得された電池セルと、
を含み、
前記診断部は、
前記複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断するバランス判断部、
電池セル間の容量のアンバランス量を算出するアンバランス量算出部、
及び、
電池セルの容量に関する値を算出する容量算出部、
の少なくとも1つを含む、
診断装置。
【請求項2】
前記バランス判断部は、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルとの同異に基づいて、前記複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記アンバランス量算出部は、同電圧での電池セルどうしの積算電流量の差を、前記アンバランス量として算出する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記一部の電池セルのうち、前記取得部によるデータ取得頻度が所定の閾値以上の電池セルのデータに基づいて、前記蓄電池システムを診断する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の診断装置。
【請求項5】
前記容量算出部は、前記一部の電池セルのデータから得られる電圧及び積算電流量の関係を示す測定QV曲線と、参照QV曲線との比較結果に基づいて、電池セルの容量に関する値を算出し、
前記診断装置は、前記測定QV曲線及び前記参照QV曲線の少なくとも一方が得られるように、前記取得部によって取得された特定の電池セルの測定データを補完するデータ補完部を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の診断装置。
【請求項6】
前記データ補完部は、前記特定の電池セルとは異なる他の電池セルのデータを用いて、前記特定の電池セルのデータを補完する、
請求項5に記載の診断装置。
【請求項7】
蓄電池システムを構成する複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを取得することと、
取得した前記一部の電池セルのデータに基づいて、前記蓄電池システムを診断することと、
を含む診断方法であって、
前記データは、電圧及び積算電流量を含み、
前記一部の電池セルは、
低SOC(State Of Charge)状態で、最小電圧の電池セルであるMINセルとしてデータ取得された電池セルと、
低SOC状態で、最大電圧の電池セルであるMAXセルとしてデータ取得された電池セルと、
高SOC状態で、MINセルとしてデータ取得された電池セルと、
高SOC状態で、MAXセルとしてデータ取得された電池セルと、
を含み、
前記診断することは、
前記複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断すること、
電池セル間の容量のアンバランス量を算出すること、
及び、
電池セルの容量に関する値を算出すること、
の少なくとも1つを含む、
診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、
蓄電池システムを構成する複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを取得し、
取得した前記一部の電池セルのデータに基づいて、前記蓄電池システムを診断する、
処理を実行させる診断プログラムであって、
前記データは、電圧及び積算電流量を含み、
前記一部の電池セルは、
低SOC(State Of Charge)状態で、最小電圧の電池セルであるMINセルとしてデータ取得された電池セルと、
低SOC状態で、最大電圧の電池セルであるMAXセルとしてデータ取得された電池セルと、
高SOC状態で、MINセルとしてデータ取得された電池セルと、
高SOC状態で、MAXセルとしてデータ取得された電池セルと、
を含み、
前記診断する処理は、
前記複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断する処理、
電池セル間の容量のアンバランス量を算出する処理、
及び、
電池セルの容量に関する値を算出する処理、
の少なくとも1つを含む、
診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断方法及び診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルの診断に関するさまざまな手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池セルを含む蓄電池システムには、一部の電池セルのデータだけを出力するものもある。
【0005】
本発明は、一部の電池セルのデータから蓄電池システムを診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る診断装置は、蓄電池システムを構成する複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを取得する取得部と、取得部によって取得された一部の電池セルのデータに基づいて、蓄電池システムを診断する診断部と、を備え、データは、電圧及び積算電流量を含み、一部の電池セルは、低SOC(State Of Charge)状態で、最小電圧の電池セルであるMINセルとしてデータ取得された電池セルと、低SOC状態で、最大電圧の電池セルであるMAXセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態で、MINセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態で、MAXセルとしてデータ取得された電池セルと、を含み、診断部は、複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断するバランス判断部、電池セル間の容量のアンバランス量を算出するアンバランス量算出部、及び、電池セルの容量に関する値を算出する容量算出部、の少なくとも1つを含む。
【0007】
一側面に係る診断方法は、蓄電池システムを構成する複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを取得することと、取得した一部の電池セルのデータに基づいて、蓄電池システムを診断することと、を含む診断方法であって、データは、電圧及び積算電流量を含み、一部の電池セルは、低SOC(State Of Charge)状態で、最小電圧の電池セルであるMINセルとしてデータ取得された電池セルと、低SOC状態で、最大電圧の電池セルであるMAXセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態で、MINセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態で、MAXセルとしてデータ取得された電池セルと、を含み、診断することは、複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断すること、電池セル間の容量のアンバランス量を算出すること、及び、電池セルの容量に関する値を算出すること、の少なくとも1つを含む。
【0008】
一側面に係る診断プログラムは、コンピュータに、蓄電池システムを構成する複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを取得し、取得した一部の電池セルのデータに基づいて、蓄電池システムを診断する、処理を実行させる診断プログラムであって、データは、電圧及び積算電流量を含み、一部の電池セルは、低SOC(State Of Charge)状態で、最小電圧の電池セルであるMINセルとしてデータ取得された電池セルと、低SOC状態で、最大電圧の電池セルであるMAXセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態で、MINセルとしてデータ取得された電池セルと、高SOC状態で、MAXセルとしてデータ取得された電池セルと、を含み、診断する処理は、複数の電池セルがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断する処理、電池セル間の容量のアンバランス量を算出する処理、及び、電池セルの容量に関する値を算出する処理、の少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一部の電池セルのデータから蓄電池システムを診断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電池セルの電圧及び電流を模式的に示す図である。
【
図3】アンバランス状態でのQV曲線の例を示す図である。
【
図4】バランス状態でのQV曲線の例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る診断装置の概略構成の例を示す図である。
【
図6】バランス状態での電池セルの分類の例を示す図である。
【
図7】アンバランス状態での電池セルの分類の例を示す図である。
【
図15】容量算出部の概略構成の例を示す図である。
【
図16】参照QV曲線及び測定QV曲線の例を示す図である。
【
図18】別の種類の電池セルの参照QV曲線及び測定QV曲線の例を示す図である。
【
図21】容量算出部の概略構成の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<序>
開示される技術は、リチウムイオン電池等の蓄電池、より具体的には電池セルや蓄電池システムの容量劣化の診断に関する。電池セルは、扱うことのできる蓄電池の最小単位を示す。電池セルは、単に蓄電池と呼ぶこともでき、矛盾の無い範囲において適宜読み替えられてよい。蓄電池システムは、複数の電池セルが並列や直列に接続された構成を備える。
【0013】
図1は、電池セルの電圧及び電流を模式的に示す図である。電池セルの電圧を、電池電圧Vと称し図示する。電池セルの電流を、電池電流Iと称し図示する。電池セルの特性は、例えばQV曲線によって表される(QV特性)。QV曲線は、電池電圧V及び積算電流量の関係を示す曲線である。積算電流量は、クーロンカウンティンによる容量(Q)に対応し、単位はAhである。
【0014】
図2は、QV曲線の例を示す図である。グラフの横軸は積算電流量(Ah)を示し、縦軸は電圧(V)を示す。電池電圧Vは、充放電に応じて、すなわち積算電流量に応じて変化する。電池セルは、定められた範囲内の電池電圧Vで使用される。その範囲内の最小電圧を、下限電圧V
LLと称し図示する。最大電圧を、上限電圧V
ULと称し図示する。
【0015】
電池電圧Vが下限電圧VLLのとき、電池セルのSOC(State Of Charge)は0%(完放電状態)である。電池電圧Vが上限電圧VULのとき、SOCは100%(満充電状態)である。電池セルDUTの最大容量は、上限電圧VULから下限電圧VLLにまで電池セルを放電させたとき、又は、下限電圧VLLから上限電圧VULまで電池セルを充電させたときの積算電流量に相当する。なお、初期の最大容量に対する現時点での最大容量の比率(%)は、SOH(State Of Health)等とも称される。「容量」は、「SOH」に適宜読み替えられてよい。任意の時点での電池電圧Vを、電池電圧VCと称し図示する。電池電圧VCでの残存容量は、下限電圧VLLから電池電圧VCまで電池セルを充電させたとき、又は、電池電圧VCから下限電圧VLLまで電池セルを放電させたときの積算電流量に相当する。
【0016】
SOCが比較的低い状態を「低SOC状態」と称し。SOCが比較的高い状態を「高SOC状態」と称する。低SOC状態の例は、SOCが約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満等である。高SOC状態の例は、SOCが約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上等である。
【0017】
蓄電池システムは、実効容量の確保等の観点から、セルバランスが取れている状態で運用されることが望ましい。セルバランスについて、
図3及び
図4を参照して説明する。セルバランスが取れていない(崩れている)状態を、「アンバランス状態」と称する。セルバランスが取れている状態を、「バランス状態」と称する。
【0018】
図3は、アンバランス状態でのQV曲線の例を示す図である。グラフ線C1~グラフ線C4それぞれは、異なる電池セルのQV曲線を示す。なお、グラフ線C1~グラフ線C4に示される電池セルの順に、容量は大きくなる。
【0019】
低SOC状態では、グラフ線C2に示される電池セルの電池電圧Vが最も小さい(低い)。複数の電池セルそれぞれの電池電圧Vのうち、最も小さい電圧を、最小電圧VMINと称する。最小電圧VMINが下限電圧VLLに到達すると、残りのグラフ線C1、グラフ線C3及びグラフ線C4に示される電池セルは、電池電圧Vが下限電圧VLLに到達していないにもかかわらず、それ以上は放電できなくなる。
【0020】
高SOC状態では、グラフ線C1に示される電池セルの電池電圧Vが最も大きい(高い)。複数の電池セルそれぞれ電池電圧Vのうち、最も大きい電圧を、最大電圧VMAXと称する。最大電圧VMAXが上限電圧VULに到達すると、残りのグラフ線C2~グラフ線C4に示される電池セルは、電池電圧Vが上限電圧VULに到達していないにもかかわらず、それ以上は充電できなくなる。
【0021】
アンバランス状態では、低SOC状態で最小電圧VMINの電池セルと、高SOC状態で最大電圧VMAXの電池セルとが異なっている。高SOC状態で最大電圧VMAXの電池セル(グラフ線C1)は、下限電圧VLLまでは放電できない。この放電できない部分(使用不可部分)の存在が、実効容量低下の要因となる。
【0022】
図4は、バランス状態でのQV曲線の例を示す図である。低SOC状態では、グラフ線C1に示される電池セルの電池電圧Vが、最小電圧V
MINとなる。高SOC状態では、グラフ線C1に示される電池セルの電池電圧Vが、最大電圧V
MAXとなる。
【0023】
バランス状態では、低SOC状態で最小電圧VMINの電池セルと、高SOC状態で最大電圧VMAXの電池セルとが同じである。この場合、同じ電池セルを、下限電圧VLLから上限電圧VULまで充電させ、また、上限電圧VULから下限電圧VLLまで放電させることができる。その分、実効容量が確保しやすくなる。
【0024】
一般的な蓄電池システムにおいて最大容量を実測することは、さまざまな理由から困難である。例えば、実際の蓄電池システムは、余裕を持たせたり寿命を長くしたりするために、SOCが0%~100%の範囲で使用してはいない。系統安定化など常時使用する蓄電池システムでは、フル充放電する期間を設けることが困難である。フル充放電するには1Cの充放電レートであれば2時間、0.2Cの充放電レートであれば10時間と時間がかかる。複数の電池セルが直列に接続された蓄電池システムでは、アンバランス状態だと各電池セルをフル充放電することができないため、個々の電池セルの最大容量を実測することができない。
【0025】
以上のようなことから、実際の蓄電池システムでは、最大容量は以下の手法により表示されているが、それぞれ課題がある。例えば、稼働時間や充放電サイクル数などの条件に応じて統計処理的に減衰させる手法があるが、想定外の電池セルがあった場合に実際と一致しない。あらかじめマージンをもって最大容量を設定しておく手法があるが、電池セルが有効に使用されない。定期的にフル充放電を行い最大容量を実測して反映する手法が用いられることがあるが、蓄電池システムが利用できない場合がある。個々の電池セルのばらつきによる実行容量減少の要因は加味できない。
【0026】
加えて、蓄電池システムには、複数の電池セルのうちの一部の電池セルのデータだけを出力するものも少なくない。開示される技術によれば、一部の電池セルのデータから蓄電池システムを診断することができる。
【0027】
<実施形態>
図5は、実施形態に係る診断装置の概略構成の例を示す図である。先に、診断装置1の診断対象となる蓄電池システム9について説明し、その後、診断装置1について説明する。
【0028】
蓄電池システム9は、複数の電池セルDUTと、電圧検出部91と、電流検出部92と、出力部93とを含む。この例では、複数の電池セルDUTは、直列に接続されている。蓄電池システム9は、組電池やESS(エネルギーストレージシステム)等とも称される。
【0029】
電圧検出部91は、複数の電池セルDUTそれぞれの電池電圧Vを検出する。電圧検出部91は、例えば図示しない電圧計等を含んで構成される。電流検出部92は、電池セルDUTの電池電流Iを検出する。各電池セルDUTが直列に接続されているので、電池電流Iは各電池セルDUTに共通の電流である。電流検出部92は、例えば図示しない電流計等を含んで構成される。電圧検出部91及び電流検出部92の検出結果は、出力部93に送られる。
【0030】
出力部93は、複数の電池セルDUTのうちの一部の電池セルDUTのデータを出力する。例えば、出力部93は、複数の電池セルDUTのうち、最大電圧VMAXの電池セルDUTのデータ及び最小電圧VMINの電池セルDUTのデータだけを出力する。他にも、予め指定された電池セルDUTがある場合には、出力部93は、その電池セルDUTのデータも出力してよい。
【0031】
データは、例えば所定の周期で出力される。周期の例は、数秒、数十秒、数分等である。データの例は、電池セルDUTの電池電圧V(最大電圧VMAX及び最小電圧VMIN等)、積算電流量、SOC、セルID等である。積算電流量は、電流検出部92によって検出された電池電流Iを積算することによって求められる。SOCは、種々の公知の手法を用いて求められる。セルIDは、電池セルDUTを特定するための識別子(Identifier)である。
【0032】
診断装置1について説明する。診断装置1は、取得部2と、記憶部3と、データ補完部4と、診断部5と、出力部6とを含む。
【0033】
取得部2は、蓄電池システム9の出力部93によって出力された電池セルDUTのデータを取得する。出力部93が一部の電池セルDUTのデータだけを出力するので、取得部2は、一部の電池セルDUTのデータだけを取得する。ここで、電池セルDUTの特徴とデータ取得パターンとの間に関係性が存在し、従って、電池セルDUTをデータ取得パターンごとに分類することができる。これについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0034】
図6は、バランス状態での電池セルの分類の例を示す図である。電池セルDUTは、分類1~分類7のいずれかに分類される。最小電圧V
MINの電池セルDUTとしてデータ取得される電池セルDUTを、MAXセルと称する。最大電圧V
MAXの電池セルDUTとしてデータ取得される電池セルDUTを、MINセルと称する。
【0035】
分類1の電池セルDUTは、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得され、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得されることが多い。この電池セルDUTは、最小容量の電池セルDUTであり、容量劣化が最も進んでいる。QV曲線の広範囲に対応するデータが取得される。
【0036】
分類2の電池セルDUTは、低SOC状態でMAXセルとしてデータ取得され、高SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることが多い。この電池セルDUTは、最大容量の電池セルDUTであり、容量劣化が最も進んでいない。QV曲線の広範囲に対応するデータが取得される。
【0037】
分類3の電池セルDUTは、低SOC状態でMAXセルとしてデータ取得されることがある。分類4の電池セルDUTは、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得されることがある。分類5の電池セルDUTは、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることがある。分類6の電池セルDUTは、高SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることがある。分類3~分類6の電池セルDUTは、平均的な容量の電池セルDUTではあるが、SOCが平均的なSOCからシフトしている。分類3及び分類4の電池セルDUTは、SOCが高くなる方向に(QV曲線が左側に)シフトしている。分類5及び分類6の電池セルDUTは、SOCが低くなる方向に(QV曲線が右側に)シフトしている。
【0038】
分類7の電池セルDUTは、データ取得されることがほとんどない。この電池セルDUTは、平均的な容量の電池セルDUTであり、SOCも分類3~分類6の電池セルDUTほどはシフトしていない。
【0039】
図7は、アンバランス状態での電池セルの分類の例を示す図である。電池セルDUTは、分類11~分類17のいずれかに分類される。
【0040】
分類11の電池セルDUTは、低SOC状態及び高SOC状態のいずれでもMAXセルとしてデータ取得されることが多い。この電池セルDUTは、SOCが大きくなる方向にシフトしている。
【0041】
分類12の電池セルDUTは、低SOC状態及び高SOC状態のいずれでもMINセルとしてデータ取得されることが多い。この電池セルDUTは、SOCが小さくなる方向にシフトしている。
【0042】
分類13の電池セルDUTは、低SOC状態でMAXセルとしてデータ取得されることが多い。分類14の電池セルDUTは、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得されることが多い。分類15の電池セルDUTは、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることが多い。分類16の電池セルDUTは、高SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることが多い。分類13の電池セルDUTは、分類11の電池セルDUTよりも容量が大きい電池セルDUTであり、SOCが高くなる方向にシフトしている。分類14の電池セルDUTは、分類11の電池セルDUTよりも容量が小さい電池セルDUTであり、SOCが高くなる方向にシフトしている。分類15の電池セルDUTは、分類12の電池セルDUTよりも容量が小さい電池セルDUTであり、SOCが低くなる方向にシフトしている。分類16の電池セルDUTは、分類12の電池セルDUTよりも容量が大きい電池セルDUTであり、SOCが低くなる方向にシフトしている。
【0043】
分類17の電池セルDUTは、データ取得されることがほとんどない。この電池セルDUTは、平均的な容量の電池セルDUTであり、SOCも分類13~分類16の電池セルDUTほどはシフトしていない。
【0044】
以上で説明したように、容量及びSOCシフトに関して平均的な電池セルDUTとは異なる特徴を有する電池セルDUTは、低SOC状態及び高SOC状態の少なくとも一方で、MAXセル又はMINセルとしてデータ取得されることが多い。蓄電池システム9の診断においては、それらの電池セルDUTの監視(データ取得)や診断が重要になる。逆に、平均的な電池セルDUT(分類7や分類17)の監視や診断の必要性は低い。すなわち、取得部2(
図5)によって取得された一部の電池セルDUTのデータがあれば、蓄電池システム9の診断が可能である。
【0045】
図5に戻り、記憶部3は、診断装置1において実行される処理に必要な種々の情報を記憶する。記憶される情報として、取得データ31、頻度データ32、参照データ33及び診断プログラム34が例示される。
【0046】
取得データ31は、取得部2によって取得されたデータである。取得データ31は、蓄電池システム9の運用開始後、すなわちオペレーション中に取得されたデータであり、一部の電池セルDUTのQV曲線の少なくとも一部に対応するデータである。
【0047】
図8及び
図9は、取得データの例を示す図である。
図8には、分類13の電池セルDUT(セルID=xxxとして模式的に図示)のデータが示される。低SOC状態で多くのデータが取得される。
図9には、分類14の電池セルDUT(セルID=yyyとして模式的に図示)のデータが示される。高SOC状態で多くのデータが取得される。他の分類についても、先に
図6及び
図7を参照して説明したようにデータ取得される。
【0048】
図5に戻り、頻度データ32は、電池セルDUTごとのデータ取得頻度を示す。例えば、取得部2によって電池セルDUTごとのデータ取得回数がカウントされる。カウント結果が、頻度データ32として記憶部3に記憶される。
【0049】
図10及び
図11は、頻度データの例を示す図である。電池セルDUTの数は数百に及ぶ(数百種類のデータIDが存在する)。
図10には、1回の充電動作におけるMAXセルのデータ取得頻度(取得回数)が例示される。
図11には、1回の充電動作におけるMINセルのデータ取得頻度が例示される。
【0050】
理解されるように、大半の電池セルDUTは、1度もデータ取得されない。それらの電池セルDUTは、主に分類7や分類17に分類される平均的な電池セルDUTであり、管理の必要性は低い。1度以上データ取得された電池セルDUTであっても、そのデータ取得頻度が低ければ、依然として管理の必要性は低い。一方で、データ取得頻度がある程度高い電池セルDUTは、分類1~6や分類11~16の電池セルDUTであり、管理対象となり得る。これらの管理対象となり得るデータだけが選択され、蓄電池システム9の診断に用いられてもよい。データ選択には、閾値判断が用いられてよい。データ取得頻度が閾値以上の電池セルDUTのデータが選択される。
図10及び
図11のグラフには、閾値の例として、閾値=500の線が示される。
【0051】
図5に戻り、参照データ33は、電池セルDUTの容量劣化の基準となる(比較対象となる)データであり、例えばQV曲線に対応するデータを含む。参照データ33は、容量劣化が進む前の電池セルDUTの実測値に基づくデータであってよい。例えば、蓄電池システム9の運用開始時に、所定の充放電レートで蓄電池システム9をフル充放電(SOC=0%~100%で充放電)させる。その間に取得部2によって取得されたデータのうちの特定の電池セルDUT、例えば分類1や分離2の電池セルDUTのデータが、参照データ33として記憶部3に記憶される。なお、データの一部が欠損しており、補完が必要になる場合には、後述のデータ補完部4によって補完される。
【0052】
診断プログラム34は、診断装置1の処理、例えば取得部2、後述の診断部5や出力部6による処理(取得処理、診断処理、出力処理等)をコンピュータに実行させるプログラムである。診断装置1の少なくとも一部の機能は、例えば、汎用のコンピュータを診断プログラム34に従って動作させることによって実現される。コンピュータは、例えば、バス等で相互に接続される通信装置、表示装置、記憶装置、メモリ及びプロセッサ等を含んで構成される。プロセッサが、診断プログラム34を記憶装置等から読み出してメモリに展開することで、コンピュータを、診断装置1として機能させる。なお、診断プログラム34は、インターネットなどのネットワークを介して配布されてもよい。診断プログラム34は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。なお、当然ながら、汎用のコンピュータではなく、診断プログラム34に従って動作する専用のハードウェアが用いられてもよい。
【0053】
取得部2によって取得された測定データ(取得データ31及び参照データ33)は、データ補完部4による補完や診断部5による診断に用いられる。一実施形態において、取得部2によって測定データが取得された測定データのうち、特定の電池セルDUTの測定データだけが選択され用いられてよい。データ選択には、先に説明した閾値判断が用いられてよい。例えば、データ補完部4は、データ取得頻度が閾値以上の電池セルDUTのデータを補完する。診断部5は、データ取得頻度が閾値以上の電池セルDUTのデータに基づいて、蓄電池システム9を診断する。
【0054】
データ補完部4は、後述の診断部5(の算出部52の容量算出部522)での算出に用いることのできるQV曲線が得られるように、取得データ31に含まれる1つの電池セルDUTの測定データを補完する。補完の手法はとくに限定されないが、直線補間、多次式による補完等が用いられてよい。取得データ31に含まれる1つの電池セルの測定データが、取得データ31に含まれる他の電池セルのデータを用いて補完されてもよい。測定データの欠損部分ごとに異なる補完手法が用いられてもよい。
【0055】
図12は、取得データの補完の例を示す図である。或る電池セルDUT(セルID=zzzとして模式的に図示)のデータが示される。QV曲線に対応するデータの一部、この例では、積算電流量=X
1Ah付近、積算電流量=X
2Ah付近、及び積算電流量=X
3A付近のデータが欠損している。ノイズ等の影響によって、ほぼ同電圧の他の電池セルDUTが、MAXセルやMINセルとしてデータ取得されたことが理由と考えられる。欠損している部分を他の電池セルDUTに置き換えることで補完可能である。積算電流量=X
4Ah付近にも欠損があるが、その前後の測定データが得られているので、直線補間や、その周辺の測定データで生成した多項式等による補間が用いられてもよい。
【0056】
他の電池セルDUTに置き換える補完についてさらに述べる。例えば、先に
図6を参照して説明した分類3及び分類6の一方の分類の電池セルDUTのデータが、他方の分類の電池セルDUTのデータで補完されてよい。これらの電池セルDUTは互いに同程度の容量を有すると考えられるため、適切な補完が可能である。分類4及び分類5の一方の分類の電池セルDUTが、他方の電池セルDUTのデータで補完されてもよい。これらの電池セルDUTも互いに同程度の容量を有すると考えられるため、適切な補完が可能である。
【0057】
図5に戻り、また、データ補完部4は、参照データ33の一部(QV曲線の一部)が欠損している場合には、参照データ33も補完する。補完手法は上述と同様であってよい。なお、データ補完部4によって補完された参照データ33も、単に参照データ33と称する。
【0058】
診断部5は、取得部2によって取得されたデータ、すなわち取得データ31や参照データ33に基づいて、蓄電池システム9を診断する。
【0059】
図13は、診断部の概略構成の例を示す図である。診断部5は、バランス判断部51と、算出部52とを含む。
【0060】
バランス判断部51は、取得データ31に基づいて、蓄電池システム9のセルバランスが、バランス状態及びアンバランス状態のいずれであるのかを判断する。例えば、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルDUTと、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルDUTとの同異に基づく判断が行われる。その場合、バランス判断部51は、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることが多く、且つ、高SOC状態でMINセルとしてデータ取得されることが多い電池セルDUT(分類1の電池セルDUT)が存在する場合に、バランス状態であると判断してよい。そのような電池セルDUTが存在しない場合、バランス判断部51は、アンバランス状態であると判断してよい。
【0061】
算出部52は、蓄電池システム9のセルバランスや容量に関する値を算出する。算出部52は、アンバランス量算出部521と、容量算出部522とを含む。
【0062】
アンバランス量算出部521は、その名のとおり、アンバランス量を算出する。アンバランス量は、アンバランス状態における複数の電池セルDUT間の積算電流量のずれを示す指標である。
【0063】
図14は、アンバランス量の例を示す図である。アンバランス量を、アンバランス量UBと称し図示する。同電圧でみたときに、グラフ線C5に示される電池セルDUTの積算電流量と、グラフ線C6に示される電池セルDUTの積算電流量とが異なっている。アンバランス量UBは、同電圧の電池セルDUTどうしの積算電流量の差として算出される。この例では、2つの電池セルDUTからアンバランス量UBが算出されるが、3つ以上の電池セルDUT間の任意のアンバランス量UBが算出されてよい。また、異なる複数の電圧それぞれでのアンバランス量UBが算出されてもよい。アンバランス量UBの大きさから、複数の電池セルDUT間の容量ずれの相対的な大きさが把握される。アンバランス量UBの符号(正負)から、複数の電池セルDUT間の容量ずれの方向が把握される。
【0064】
図13に戻り、容量算出部522は、電池セルDUTの容量に関する値を算出する。一実施形態において、容量算出部522は、取得データ31から得られるQV曲線と、参照データ33から得られるQV曲線との比較結果に基づいて、電池セルDUTの容量に関する値を算出する。取得データ31から得られるQV曲線を、「測定QV曲線」とも称する。測定QV曲線は、容量劣化後のQV曲線ともいえる。参照データ33から得られるQV曲線を、「参照QV曲線」とも称する。参照QV曲線は、容量劣化前のQV曲線ともいえる。
【0065】
図15は、容量算出部の概略構成の例を示す図である。容量算出部522は、機能ブロックとして、第1算出部522aと、第2算出部522bと、最大容量算出部522cとを含む。具体的な算出手法について、
図16及び
図17を参照して説明する。
【0066】
図16は、参照QV曲線及び測定QV曲線の例を示す図である。グラフ線C
refは、参照QV曲線を示す。グラフ線C
DUTは、測定QV曲線を示す。下限電圧V
LLは例えば約2.8Vであり、上限電圧V
ULは例えば約4.2Vである。グラフ線C
refとグラフ線C
DUTとを比較すると、電池セルDUTの容量劣化の要因は、2つに分けて説明することができる。
【0067】
第1の要因は、電池電圧Vの大きさの変化(縦軸方向における電池電圧Vのシフト)である。電池電圧Vが大きくなることで、上限電圧VULへの到達が早まり、最大容量が減少する。例えばリチウムイオン電池であれば、電池セルの充放電動作及び充電状態での放置によるLiの負極内での固定化等に由来する劣化によって発生する正極電位と負極電位の初期設計値からのズレが、電池電圧Vのシフトとして現れる。
【0068】
第2の要因は、電池電圧Vの傾きの変化である。傾きが大きくなることで、上限電圧V
ULへの到達が早まり、最大容量が減少する。活物質固定化等による失活要因の容量減少が、電池電圧Vの傾き変化として現れる。
図16にも表れるように、三元系等複数の容量保持電位をもった材料を複合的に使った電池セルの場合は、積算電流量の増加に伴い電池電圧Vは比較的単調に増加する。このような特性の電池セルが失活や電極構造の部分的破壊による容量劣化した際、積算電流量に対する電池電圧Vの増加の程度すなわち傾きが大きくなる。少しの積算電流量でも電池電圧Vが大きく変化するようになる
【0069】
第1算出部522aは、上述の第1の要因(正負極電位ズレ)、すなわち測定QV曲線(グラフ線CDUT)及び参照QV曲線(グラフ線Cref)の電圧差に起因する容量の劣化量を算出する。この容量の劣化量を、「容量劣化量ΔQ」と称する。電圧差を、「電圧差ΔV」と称する。例えば、第1算出部522aは、測定QV曲線及び参照QV曲線それぞれの微分曲線の特徴点の電圧どうしの差を、電圧差ΔVとして算出する。
【0070】
図17は、微分曲線の例を示す図である。グラフ線C
ref及びグラフ線C
DUTは、
図16のグラフ線C
ref及びグラフ線C
DUTの微分曲線に対応する。この例では、2つの微分曲線において最初に出現する極大値の電圧どうしの差が、電圧差ΔVとして算出される。なお、極大値は、最大値を含む意味に解されてよい。
【0071】
第1算出部522aは、QV曲線の傾き、より具体的には電池電圧Vに対する積算電流量の傾き(dQ/dV)に、電圧差ΔVを乗算することによって、電圧差ΔVに起因する容量劣化量ΔQを算出する。例えば下記の式(1)が用いられる。ここでの乗算に用いられる傾き(dQ/dV)は、電池電圧Vが特徴点の電圧以上の電圧での傾きであってよい。上限電圧V
UL付近の領域での傾きが用いられてよく、例えば上限電圧V
ULが4.2V、電圧差ΔVが0.05Vであれば、4.15V~4.2Vの間の平均の傾きが用いられてよい。
【数1】
【0072】
第2算出部522bは、上述の第2の要因(失活)、すなわち参照QV曲線の傾きに対する測定QV曲線の傾きの変化に起因する容量劣化後の最大容量を算出する。ここでの最大容量は、第2の要因のみを考慮した仮の最大容量であるので、「仮最大容量QDUT」と称する。
【0073】
具体的に、再び
図16を参照すると、第2算出部522bは、参照QV曲線(グラフ線C
ref)及び測定QV曲線(グラフ線C
DUT)それぞれについて、積算電流量に対する電池電圧Vの傾き(dV/dQ)を算出する。ここで算出される傾きは、電池電圧Vが特徴点の電圧以上の電圧での傾きであってよい。SOCが比較的高い電圧範囲(例えば約3.8V~約4.0V)での傾き(dV/dQ)が算出されてよい。これは、例えば負極がグラファイトの場合、高SOC状態側に負極の容量保持能力に優れた領域(ステージ1、ステージ2等とも呼ばれる領域)が寄与し、高SOC状態側の劣化では正極活物質の失活が見えやすくなると考えられるからである。
【0074】
図16において、算出された参照QV曲線(グラフ線C
ref)の傾きを有する直線が、(dV/dQ)
refとして破線で示される。算出された測定QV曲線(グラフ線C
DUT)の傾きを有する直線が、(dV/dQ)
DUTとして破線で示される。
【0075】
第2算出部522bは、算出した測定QV曲線の傾きと参照QV曲線の傾きとの比率に、参照最大容量Q
refを乗算することによって、仮最大容量Q
DUTを算出する。例えば下記の式(2)が用いられる。参照最大容量Q
refは、参照QV曲線から得られる最大容量であり、劣化前の電池セルDUTの最大容量に相当する。
【数2】
【0076】
最大容量算出部522cは、第2算出部522bによって算出された仮最大容量Q
DUTから、第1算出部522aによって算出された容量劣化量ΔQを減算することによって、電池セルDUTの最大容量Q
DUTMAXを算出する。例えば下記の式(3)が用いられる。こうして算出された最大容量Q
DUTMAXは、上述の第1の要因(正負極電位ズレ)及び第2の要因(失活)の両方の要因が考慮された最大容量である。
【数3】
【0077】
第1算出部522a、第2算出部522b及び最大容量算出部522cによる算出に必要な取得データ31は、電池セルDUTのQV曲線の一部のデータで足りる。上記の例では、特徴点付近の電圧範囲(例えば3.4V~3.6V等)、及び、上限電圧VUL付近の電圧範囲(例えば4.15V~4.2V等)の測定データがあれば、容量劣化量ΔQ、仮最大容量QDUT及び最大容量QDUTMAXが算出可能である。それらの範囲以外の測定を行わないことで、診断時間を短くすることができる。
【0078】
なお、電池セルには、充電末期に電池電圧Vが大きく上昇するような電池セルも存在する。そのような種類の電池セルでも、上述の算出手法は適用可能である。これについて、
図18及び
図19を参照して説明する。
【0079】
図18は、別の種類の電池セルの参照QV曲線及び測定QV曲線の例を示す図である。
図19は、微分曲線の例を示す図である。上限電圧V
UL付近すなわち充電末期で電池電圧Vが大きく上昇する。この場合でも、これまで説明した手法と同様に、電池電圧Vに対する積算電流量の傾き(dQ/dV)に電圧差ΔVを乗算することによって容量劣化量ΔQを算出することができる。測定QV曲線の傾き(dV/dQ)
DUTと参照QV曲線の傾き(dV/dQ)
refとの比率に、参照最大容量Q
refを乗算することによって、仮最大容量Q
DUTを算出することができる。最大容量Q
DUTMAXを算出することもできる。
【0080】
なお、上記では、微分曲線が、積算電流量を電池電圧Vで微分した曲線(dQ/dV)である例について説明した。ただし、先にも述べたように、微分曲線は、電池電圧Vを積算電流量で微分した曲線(dV/dQ)であってもよい。
【0081】
図20は、微分曲線の別の例を示す図である。例示される微分曲線は、電池電圧Vを積算電流量で微分した曲線(dV/dQ)である。容量劣化の進行状態の異なる5通りの微分曲線が、グラフ線C11~グラフ線C15として例示される。グラフ線C11~グラフ線C15の順に、電池セルの容量劣化が進んでいる。このような微分曲線にも特徴点(例えば最初に出現する極大値)が存在する。従って、電圧差ΔVを算出することができる。
【0082】
上記の容量算出部522による算出手法とは別の算出手法について、
図21及び
図22を参照して説明する。
図21は、容量算出部の概略構成の別の例を示す図である。例示される容量算出部522Aは、電池セルDUTのQV曲線を近似する関数モデルを用いて、電池セルDUTの容量に関する値を算出する。そのための機能ブロックとして、容量算出部522Aは、関数モデル生成部522dと、フィッティング部522eと、最大容量算出部522fとを含む。
【0083】
図22は、別の算出手法を説明するための図である。
図22の(A)に示されるように、関数モデル生成部522dは、参照QV曲線にフィッティングされた関数モデルV
refを生成する。関数モデルV
refは、参照QV曲線の一部を近似する関数モデルあってよい。この例では、関数モデルV
refは、参照QV曲線のうち、矢印AR1で示される線形領域及び矢印AR2で示される非線形領域に対応する部分を近似する。なお、近似範囲外の領域のグラフ線は一点鎖線で示される。線形領域は、電池電圧Vが積算電流量に対して概ね線形に変化する領域であり、特徴点の電圧以上の電圧の領域であってよい。非線形領域は、電池電圧Vが積算電流量に対して非線形に変化する領域であり、線形領域よりも高電圧側(高SOC状態側)の領域である。線形領域と非線形領域の境界の電池電圧Vを、閾値電圧V
ref_thと称し図示する。関数モデルV
refは、特徴点の電圧(閾値電圧V
ref_th)以上の電圧での関数モデルともいえる。
【0084】
例示される関数モデルV
refは、線形領域ではV
ref=f
ref(I
ref)となり、非線形領域ではV
ref=f
ref(I
ref)+g
ref(I
ref)となるように定められる。I
refは、
図22の(A)のグラフにおける積算電流量である。関数f
ref(I
ref)は、例えば、積算電流量I
refを変数とする1次関数である。関数g
ref(I
ref)は、例えば、積算電流量I
refを変数とする指数関数や多次関数である。関数f
ref(I
ref)及び関数g
ref(I
ref)のパラメータ(係数等)は、参照QV曲線(グラフ線C
ref)の対応する部分を近似するように調整される。近似調整には、最小二乗法等の一般的な手法が用いられてよい。
【0085】
フィッティング部522eは、関数モデル生成部522dによって生成された関数モデルV
refを、取得データ31にフィットさせる。関数モデルV
refのパラメータが、取得データ31を近似するように調整される。
図22の(B)及び(C)において、フィッティング後の関数モデルV
refが、関数モデルV
DUTとして示される。関数モデルV
DUTは、電池セル
DUTのQV曲線を近似する関数モデルである。なお、近似範囲外の領域のグラフ線は一点鎖線で示される。
図22の(B)のグラフは、
図22の(A)のグラフとの横軸の関係を把握しやすい位置に描かれている。
図22の(C)のグラフは、
図22の(A)のグラフとの縦軸の関係を把握し易い位置に描かれている。関数モデルV
DUTにおける線形領域と非線形領域の境界の電池電圧Vを、閾値電圧V
DUT_thと称し図示する。関数モデルV
DUTは、閾値電圧V
DUT_th以上の電圧での関数モデルともいえる。
【0086】
この例では、関数モデルV
DUTは、関数f
DUT(I
DUT)及び関数g
DUT(I
DUT)を用いて表される。I
DUTは、
図22の(B)及び(C)のグラフにおける積算電流量である。関数f
DUT(I
DUT)は、上述の関数f
ref(I
ref)のパラメータを調整した関数である。関数g
DUT(I
DUT)は、上述の関数g
ref(I
ref)のパラメータを調整した関数である。
【0087】
フィッティング部522eによるフィッティングに必要な測定データ42は、電池セルDUTのQV曲線の一部のデータで足りる。
図22の(B)には、必要な取得データ31の範囲として、範囲R1及び範囲R2が例示される。範囲R1は、特徴点及びその周辺を含む範囲である。範囲R2は、線形領域と非線形領域との境界及びその周辺を含む範囲である。これら範囲R1及び範囲R2の測定データがあれば、線形領域及び非線形領域に対応する関数f
DUT(I
C)及び関数g
DUT(I
C)をフィッティングさせることが可能である。
【0088】
最大容量算出部522fは、フィッティング部522eによるフィッティング後の関数モデルV
refすなわち関数モデルV
DUTを用いて、電池セルDUTの最大容量Q
DUTMAXを算出する。関数モデルV
DUTに示される電池電圧Vが上限電圧V
ULとなる積算電流量I
Cが、求めたい最大容量となり得る。ただし、
図22の(A)及び(C)から理解されるように、関数モデルV
refの横軸と、関数モデルV
DUTの横軸とが一致していない。この横軸のずれを補正することで(横軸を揃えることで)、最大容量Q
DUTMAXを算出することができる。
【0089】
ここで、低SOC状態の領域の特徴点での残存容量(Ah)は、充電時は電池エネルギー吸収に伴う最初に起こる反応であるため、容量劣化が進む前の電池セルと進んだ後の電池セルとで同量であると近似(仮定)する。この場合、関数モデルVDUTの微分曲線の特徴点の位置を、関数モデルVrefの微分曲線の特徴点の位置に揃えればよい。
【0090】
関数モデルVrefの特徴点での積算電流量を、積算電流量I1と称し図示する。積算電流量I1は、例えば参照データ41のうちの範囲R1の測定データから算出された微分曲線(dQ/dV)の特徴点の電圧に対応する積算電流量として算出される。関数モデルVDUTの特徴点での積算電流量を、積算電流量I2と称し図示する。積算電流量I2は、例えば取得データ31のうちの範囲R1の測定データから算出された微分曲線(dQ/dV)の特徴点の電圧に対応する積算電流量として算出される。関数モデルVrefの横軸と関数モデルVDUTの横軸の差をΔIとすると、ΔI=I2-I1となる。関数モデルVDUTにおける積算電流量IDUTからΔIを減算することにより、横軸を補正することができる。
【0091】
最大容量算出部522fによる算出は、関数モデルVref及び関数モデルVDUTそれぞれの微分曲線の特徴点の位置が揃うように補正することを含む。具体的に、最大容量算出部522fは、非線形領域での関数モデルVDUTすなわちfDUT(IDUT)+gDUT(IDUT)が上限電圧VULと等しくなる積算電流量IDUTを算出し、さらに、ΔIで補正した値(IDUT-ΔI)を、最大容量QDUTMAXとして算出する。これにより、横軸のずれを考慮した適切な最大容量が算出される。
【0092】
最大容量算出部522fは、最大容量Q
DUTMAX限らず、関数モデルV
DUTやこれの微分曲線を用いて、容量に関するさまざまな値を算出してよい。例えば、
図22の(C)に示されるように電圧差ΔVを算出できるので、第1の要因(正負極の電位ズレ)に起因する容量劣化量ΔQが算出できる。第2の要因(失活)に起因する容量劣化後の仮最大容量Q
DUTも算出できる。
【0093】
図5に戻り、診断部5は、蓄電池システム9の実効容量を算出したり、電池セルDUTの交換等のメンテナンスの要否を判断したりする機能を有してもよい。実効容量は、例えば、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルDUTの下限電圧V
LLでの積算電流量と、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルの上限電圧V
ULでの積算電流量との差として算出される。メンテナンスの要否は、これまで説明した診断結果に基づいて判断されてよい。例えば、アンバランス状態の場合、アンバランス量UBが所定のアンバランス量よりも大きい場合、最大容量Q
DUTMAXが所定の容量未満の場合等に、メンテナンスが必要であると判断されてよい。
【0094】
出力部6は、診断部5の診断結果を、蓄電池システム9の診断結果として出力する。出力の例は、ユーザへの提示(表示等)、図示しない外部サーバ装置へのデータ送信等である。例えば、出力部6は、バランス判断部51の判断結果、すなわち蓄電池システム9のセルバランスがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるのかを示す状態を出力する。出力部6は、算出部52のアンバランス量算出部521によって算出されたアンバランス量UBを出力する。出力部6は、容量算出部522の算出結果、例えば最大容量算出部522cや最大容量算出部522fによって算出された電池セルDUTの最大容量QDUTMAXを出力する。その電池セルDUTの分類に関する情報が一緒に出力されてもよい。例えば、分類1の電池セルDUTであれば、最小容量の電池セルDUTであり容量劣化が最も進んでいる旨とともに、その最大容量QDUTが出力される。分類2の電池セルDUTであれば、最大容量の電池セルDUTであり容量劣化が最も進んでいない旨とともに、その最大容量QDUTが出力される。他の分類に関する情報についても、先に説明したとおりである。参照最大容量Qrefからの減少量(Qref-QDUTMAX)が出力されてもよい。診断終了時の電池セルDUTの電池電圧Vから算出される残存容量が出力されてもよい。
【0095】
出力部6は、第1算出部522aによって算出された容量劣化量ΔQや、第2算出部522bによって算出された仮最大容量QDUTを出力してもよい。容量劣化量ΔQは、第1の要因(正負極電位ずれ)に起因する容量劣化量である旨とともに表示等されてよい。仮最大容量QDUTは、第2の要因(失活)に起因する容量劣化だけを考慮した仮の容量劣化量である旨とともに表示されてよい。劣化要因の把握に資することができる。出力部6は、診断部5によって算出された蓄電池システム9の実効容量や、電池セルDUTの交換等のメンテナンスの要否等を出力してもよい。
【0096】
例えば以上のようにして、蓄電池システム9を診断することができる。
【0097】
以上、開示される技術のいくつかの実施形態について説明した。開示される技術は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、診断部5(
図5及び
図13)が、バランス判断部51、アンバランス量算出部521及び容量算出部522の3つの機能ブロックを含む例について説明した。ただし、これらの機能ブロックのすべてが診断部5に含まれる必要はない。例えば、診断部5は、バランス判断部51、アンバランス量算出部521及び容量算出部522の少なくとも1つを含むだけでもよい。バランス判断部51によってバランス状態及びアンバランス状態を判断するだけでも、蓄電池システム9の診断につながる。アンバランス量算出部521によってアンバランス量UBを算出するだけでも、蓄電池システム9の診断につながる。容量算出部522によって電池セルDUTの容量に関する値を算出するだけでも、蓄電池システム9の診断につながる。
【0098】
上記実施形態では、容量算出部522(
図13及び
図15)が、第1算出部522a、第2算出部522b及び最大容量算出部522cの3つの機能ブロックを含む例について説明した。ただし、これらの機能ブロックのすべてが容量算出部522に含まれる必要はない。例えば、容量算出部522は、第1算出部522a及び第2算出部522bの少なくとも一方を含むだけでもよい。第1算出部522aによって容量劣化量ΔQを算出するだけでも、蓄電池システム9の診断につながる。第2算出部522bによって仮最大容量Q
DUTを算出するだけでも、蓄電池システム9の診断につながる。
【0099】
上記では、主に、診断装置1等の装置の形態、また、診断プログラム43等のプログラムの側面から実施形態を説明した。ただし、装置やプログラムによって実現される各種の処理すなわち診断方法も、実施形態の1つである。
【0100】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、診断装置である。
図5~
図13等を参照して説明したように、診断装置1は、取得部2と、診断部5と、を備える。取得部2は、蓄電池システム9を構成する複数の電池セルDUTのうちの一部の電池セルDUTのデータ(電圧及び積算電流量を含むデータ)だけを取得する。診断部5は、取得部2によって取得された一部の電池セルDUTのデータに基づいて、蓄電池システム9を診断する。一部の電池セルDUTは、低SOC状態でMINセル(最小電圧の電池セルDUT)としてデータ取得された電池セルDUTと、低SOC状態でMAXセル(最大電圧の電池セルDUT)としてデータ取得された電池セルDUTと、高SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルDUTと、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルDUTと、を含む。診断部5は、バランス判断部51、アンバランス量算出部521、及び、容量算出部522の少なくとも1つを含む。バランス判断部51は、複数の電池セルDUTがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断する。アンバランス量算出部521は、電池セルDUT間の容量のアンバランス量UBを算出する。容量算出部522は、電池セルDUTの容量に関する値を算出する。
【0101】
上記の診断装置1によれば、一部の電池セルDUTのデータ、より具体的には、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルDUTのデータ、低SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルDUTのデータ、高SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルDUT、及び高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルDUTのデータが取得される。先に
図6及び
図7等を参照して説明したように、このような一部の電池セルDUTは、蓄電池システム9の診断の観点から管理(データ取得)の必要性が高い。診断装置1では、管理の必要性の高いそれらの電池セルDUTのデータに基づいて、バランス判断、アンバランス量UBの算出、容量に関する値の算出等が行われる。このようにして、一部の電池セルDUTのデータから蓄電池システム9を診断することができる。
【0102】
図6、
図7及び
図13等を参照して説明したように、バランス判断部51は、低SOC状態でMINセルとしてデータ取得された電池セルDUTと、高SOC状態でMAXセルとしてデータ取得された電池セルDUTとの同異に基づいて、複数の電池セルDUTがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断してよい。例えばこのようにして、一部の電池セルDUTのデータからセルバランスを判断することができる。
【0103】
図13及び
図14等を参照して説明したように、アンバランス量算出部521は、同電圧での電池セルDUTどうしの積算電流量の差を、アンバランス量UBとして算出してよい。例えばこのようにして、一部の電池セルDUTのデータからアンバランス量UBを算出することができる。
【0104】
図5、
図10及び
図11等を参照して説明したように、診断部5は、一部の電池セルDUTのうち、取得部2によるデータ取得頻度が所定の閾値以上の電池セルDUTのデータに基づいて、蓄電池システム9を診断してよい。管理の必要性の高い電池セルDUTのデータだけを用いたより的確な診断が可能になる。
【0105】
図5、
図12及び
図15~
図22等を参照して説明したように、容量算出部522(又は容量算出部522A)は、一部の電池セルDUTのデータから得られる電圧及び積算電流量の関係を示す測定QV曲線と、参照QV曲線との比較結果に基づいて、電池セルDUTの容量に関する値を算出し、診断装置1は、測定QV曲線及び参照QV曲線の少なくとも一方が得られるように、取得部2によって取得された特定の電池セルDUTの測定データを補完するデータ補完部4を備えてよい。その場合、データ補完部4は、特定の電池セルDUTとは異なる他の電池セルDUTのデータを用いて、特定の電池セルDUTのデータを補完してよい。例えばこのようにして容量に関する値を算出することができる。算出に必要なデータ(例えば取得データ31)は、電池セルDUTのQV曲線の一部のデータで足りるので、診断時間を短くすることができる。例えば、電気自動車やハイブリッド車等で使用された後の電池セルや蓄電池システムに対して性能評価を行いリユースに使うか、材料取り出しのリサイクルに回すか等の判断のもととなる診断時間の短縮が可能である。
【0106】
診断装置1による電池セルDUTや蓄電池システム9の診断方法も、開示される技術の1つである。診断方法は、蓄電池システム9を構成する複数の電池セルDUTのうちの一部の電池セルのDUTデータ(電圧及び積算電流量を含むデータ)だけを取得することと、取得した一部の電池セルDUTのデータに基づいて、蓄電池システム9を診断することと、を含む。一部の電池セルDUTについては、先に説明したとおりである。診断することは、複数の電池セルDUTがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断すること、電池セルDUT間の容量のアンバランス量UBを算出すること、及び、電池セルDUTの容量に関する値を算出すること、の少なくとも1つを含む。上述の診断装置1による効果と同様の効果が奏される。
【0107】
図5等を参照して説明した診断プログラム43も、開示される技術の1つである。診断プログラム43は、コンピュータに、蓄電池システム9を構成する複数の電池セルDUTのうちの一部の電池セルDUTのデータ(電圧及び積算電流量を含むデータ)だけを取得し、取得した一部の電池セルDUTのデータに基づいて、蓄電池システム9を診断する、処理を実行させる。一部の電池セルDUTについては、先に説明したとおりである。診断する処理は、複数の電池セルDUTがバランス状態及びアンバランス状態のいずれであるかを判断する処理、電池セルDUT間の容量のアンバランス量を算出する処理、及び、電池セルDUTの容量に関する値を算出する処理、の少なくとも1つを含む。上述の診断装置1による効果と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0108】
1 診断装置
2 取得部
3 記憶部
31 取得データ
32 頻度データ
33 参照データ
34 診断プログラム
4 データ補完部
5 診断部
6 出力部
9 蓄電池システム
51 バランス判断部
52 算出部
521 アンバランス量算出部
522 容量算出部
522a 第1算出部
522b 第2算出部
522c 最大容量算出部
522d 関数モデル生成部
522e フィッティング部
522f 最大容量算出部
DUT 電池セル