IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図1
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図2
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図3
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図4
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図5
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図6
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図7
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図8
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図9
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図10
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図11
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図12
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図13
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図14
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図15
  • 特許-スクリュー圧縮機及び冷凍装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20231025BHJP
   F04C 18/52 20060101ALI20231025BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
F04C18/16 B
F04C18/52
F04C23/00 E
F04C23/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023019746
(22)【出願日】2023-02-13
(65)【公開番号】P2023122552
(43)【公開日】2023-09-01
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2022025726
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴司
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-162021(JP,A)
【文献】特表2007-532819(JP,A)
【文献】米国特許第06422846(US,B1)
【文献】特開昭51-040610(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 18/52
F04C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の螺旋溝(41)を有するスクリューロータ(40)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第1ロータ(31)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第2ロータ(32)と、前記スクリューロータ(40)が回転可能に保持されて前記スクリューロータ(40)の外周面を覆う仕切壁部(15)を有するケーシング(10)と、を備えたスクリュー圧縮機であって、
前記仕切壁部(15)は、第1圧縮室(21)を構成するための第1エンベロープ部(11)と、第2圧縮室(22)を構成するための第2エンベロープ部(12)と、を含み、
前記第1エンベロープ部(11)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第1ロータ(31)とによって、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する前記第1圧縮室(21)が形成され、
前記第2エンベロープ部(12)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第2ロータ(32)とによって、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する前記第2圧縮室(22)が形成され、
前記スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる前記第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、前記第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とが異なり、
前記第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)は、前記第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)よりも長い
スクリュー圧縮機。
【請求項2】
複数の螺旋溝(41)を有するスクリューロータ(40)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第1ロータ(31)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第2ロータ(32)と、前記スクリューロータ(40)が回転可能に保持されて前記スクリューロータ(40)の外周面を覆う仕切壁部(15)を有するケーシング(10)と、を備えたスクリュー圧縮機であって、
前記仕切壁部(15)は、第1圧縮室(21)を構成するための第1エンベロープ部(11)と、第2圧縮室(22)を構成するための第2エンベロープ部(12)と、を含み、
前記第1エンベロープ部(11)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第1ロータ(31)とによって、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する前記第1圧縮室(21)が形成され、
前記第2エンベロープ部(12)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第2ロータ(32)とによって、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する前記第2圧縮室(22)が形成され、
前記第2エンベロープ部(12)には、前記第2圧縮室(22)が前記第2ロータ(32)で閉じ切られるタイミングが、前記第1圧縮室(21)が前記第1ロータ(31)で閉じ切られるタイミングよりも遅くなるように、前記第2エンベロープ部(12)の内面から外面へ貫通する開口部(35)が設けられる
スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2のスクリュー圧縮機において、
前記開口部(35)は、前記第2エンベロープ部(12)に形成された貫通孔(36)である
スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項2のスクリュー圧縮機において、
前記開口部(35)は、前記第2エンベロープ部(12)の縁部に形成された切り欠き部(37)である
スクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つのスクリュー圧縮機において、
前記第1ロータ(31)は、複数の第1ゲート(51)が放射状に配置された第1ゲートロータ(50)で構成され、
前記第2ロータ(32)は、複数の第2ゲート(61)が放射状に配置された第2ゲートロータ(60)で構成され、
前記第1ゲート(51)及び前記第2ゲート(61)は、1つの前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)にそれぞれ噛み合う
スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項5のスクリュー圧縮機において、
前記第1ゲートロータ(50)の第1回転軸(55)と、前記第2ゲートロータ(60)の第2回転軸(65)とは、前記スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる仮想平面(F)に対して略直交している
スクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1つのスクリュー圧縮機において、
前記第1ロータ(31)は、複数の第1螺旋溝(71)を有する第1雌ロータ(70)で構成され、
前記第2ロータ(32)は、複数の第2螺旋溝(81)を有する第2雌ロータ(80)で構成され、
前記スクリューロータ(40)は、前記第1雌ロータ(70)及び前記第2雌ロータ(80)に噛み合う1つの雄ロータで構成される
スクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1つのスクリュー圧縮機(1)と、
前記スクリュー圧縮機(1)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(2a)と、を備える
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクリュー圧縮機及び冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1つのスクリューロータと複数のゲートの間に、吸入圧力の流体を中間圧力まで圧縮する第1圧縮室と、中間圧力の流体を吐出圧力まで圧縮する第2圧縮室とが形成されたスクリュー圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-162021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、二段圧縮が可能なスクリュー圧縮機では、低段側の第1圧縮室で圧縮した冷媒を、高段側の第2圧縮室で効率良く圧縮するために、第1圧縮室と第2圧縮室との容積比を適切に設定することが必要である。
【0005】
本開示の目的は、低段側の圧縮室と高段側の圧縮室との容積比を適切に設定したスクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、複数の螺旋溝(41)を有するスクリューロータ(40)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第1ロータ(31)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第2ロータ(32)と、前記スクリューロータ(40)が回転可能に保持されて前記スクリューロータ(40)の外周面を覆う仕切壁部(15)を有するケーシング(10)と、を備えたスクリュー圧縮機であって、前記仕切壁部(15)は、第1圧縮室(21)を構成するための第1エンベロープ部(11)と、第2圧縮室(22)を構成するための第2エンベロープ部(12)と、を含み、前記第1エンベロープ部(11)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第1ロータ(31)とによって、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する前記第1圧縮室(21)が形成され、前記第2エンベロープ部(12)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第2ロータ(32)とによって、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する前記第2圧縮室(22)が形成され、前記スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる前記第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、前記第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とが異なる。
【0007】
第1の態様では、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とが異なっている。これにより、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングとを変更して、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、複数の螺旋溝(41)を有するスクリューロータ(40)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第1ロータ(31)と、前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)に噛み合う第2ロータ(32)と、前記スクリューロータ(40)が回転可能に保持されて前記スクリューロータ(40)の外周面を覆う仕切壁部(15)を有するケーシング(10)と、を備えたスクリュー圧縮機であって、前記仕切壁部(15)は、第1圧縮室(21)を構成するための第1エンベロープ部(11)と、第2圧縮室(22)を構成するための第2エンベロープ部(12)と、を含み、前記第1エンベロープ部(11)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第1ロータ(31)とによって、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する前記第1圧縮室(21)が形成され、前記第2エンベロープ部(12)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記第2ロータ(32)とによって、前記中間圧力の流体を前記中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する前記第2圧縮室(22)が形成され、前記第2エンベロープ部(12)には、前記第2エンベロープ部(12)の内面から外面へ貫通する開口部(35)が設けられる。
【0009】
第2の態様では、第2エンベロープ部(12)に開口部(35)が設けられる。これにより、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングとを変更して、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様のスクリュー圧縮機において、前記開口部(35)は、前記第2エンベロープ部(12)に形成された貫通孔(36)である。
【0011】
第3の態様では、第2エンベロープ部(12)に貫通孔(36)を形成することで、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第2の態様のスクリュー圧縮機において、前記開口部(35)は、前記第2エンベロープ部(12)の縁部に形成された切り欠き部(37)である。
【0013】
第4の態様では、第2エンベロープ部(12)の縁部に切り欠き部(37)を形成することで、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1~4の態様の何れか1つのスクリュー圧縮機において、前記第1ロータ(31)は、複数の第1ゲート(51)が放射状に配置された第1ゲートロータ(50)で構成され、前記第2ロータ(32)は、複数の第2ゲート(61)が放射状に配置された第2ゲートロータ(60)で構成され、前記第1ゲート(51)及び前記第2ゲート(61)は、1つの前記スクリューロータ(40)の前記螺旋溝(41)にそれぞれ噛み合う。
【0015】
第5の態様では、1つのスクリューロータ(40)、第1ゲートロータ(50)、及び第2ゲートロータ(60)を備えたスクリュー圧縮機において、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第5の態様のスクリュー圧縮機において、前記第1ゲートロータ(50)の第1回転軸(55)と、前記第2ゲートロータ(60)の第2回転軸(65)とは、前記スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる仮想平面(F)に対して略直交している。
【0017】
第6の態様では、ケーシング(10)の保持姿勢を変更することなく、工作機械の回転工具を一方向に相対移動させながら、スクリューロータ(40)、第1ゲートロータ(50)、及び第2ゲートロータ(60)の回転軸を支持するための孔をそれぞれ加工することができ、ケーシング(10)の加工精度を確保することができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~4の態様の何れか1つのスクリュー圧縮機において、前記第1ロータ(31)は、複数の第1螺旋溝(71)を有する第1雌ロータ(70)で構成され、前記第2ロータ(32)は、複数の第2螺旋溝(81)を有する第2雌ロータ(80)で構成され、前記スクリューロータ(40)は、前記第1雌ロータ(70)及び前記第2雌ロータ(80)に噛み合う1つの雄ロータで構成される。
【0019】
第7の態様では、1つの雄ロータ、第1雌ロータ(70)、及び第2雌ロータ(80)を備えたスクリュー圧縮機において、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~4の態様の何れか1つのスクリュー圧縮機(1)と、前記スクリュー圧縮機(1)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(2a)と、を備える冷凍装置である。
【0021】
第8の態様では、スクリュー圧縮機(1)を備えた冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態1の冷凍装置の構成を示す冷媒回路図である。
図2図2は、スクリュー圧縮機の構成を背面側から見た断面図である。
図3図3は、スクリュー圧縮機の構成を示す側面断面図である。
図4図4は、圧縮機構の構成を示す斜視図である。
図5図5は、第1エンベロープ部の構成を示す平面図である。
図6図6は、第2エンベロープ部の構成を示す平面図である。
図7図7は、スクリュー圧縮機の吸入行程を示す平面図である。
図8図8は、スクリュー圧縮機の圧縮行程を示す平面図である。
図9図9は、スクリュー圧縮機の吐出行程を示す平面図である。
図10図10は、第1圧縮室及び第2圧縮室が閉じ切られる前の状態を示すスクリューロータ及び仕切壁部の展開図である。
図11図11は、第1圧縮室及び第2圧縮室が閉じ切られた状態を示すスクリューロータ及び仕切壁部の展開図である。
図12図12は、本実施形態2に係るスクリュー圧縮機において、第2エンベロープ部の構成を示す平面図である。
図13図13は、本実施形態3に係るスクリュー圧縮機において、第2エンベロープ部の構成を示す平面図である。
図14図14は、本実施形態4に係るスクリュー圧縮機の構成を示す断面図である。
図15図15は、第1エンベロープ部の構成を示す平面図である。
図16図16は、第2エンベロープ部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《実施形態1》
図1に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、冷凍装置(2)に設けられる。冷凍装置(2)は、冷媒が充填された冷媒回路(2a)を有する。冷媒回路(2a)は、スクリュー圧縮機(1)、放熱器(3)、減圧機構(4)、及び蒸発器(5)を有する。減圧機構(4)は、例えば、膨張弁である。冷媒回路(2a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0024】
冷凍装置(2)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(2)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0025】
図2及び図3に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(20)と、を備える。ケーシング(10)には、圧縮機構(20)が収容される。圧縮機構(20)は、駆動軸(25)を介してモータ(図示省略)と連結される。
【0026】
ケーシング(10)内には、低圧の冷媒が流入する低圧空間(S1)と、低圧の冷媒よりも高圧の中間圧の冷媒が流入する中間圧空間(S2)と、中間圧の冷媒よりも高圧の冷媒が流入する高圧空間(S3)と、が形成される。
【0027】
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)に設けられた仕切壁部(15)と、1つのスクリューロータ(40)と、第1ロータ(31)と、第2ロータ(32)と、を有する。
【0028】
仕切壁部(15)は、円筒状に形成される。仕切壁部(15)には、スクリューロータ(40)が装着される。仕切壁部(15)は、スクリューロータ(40)の外周面を覆う。第1ロータ(31)及び第2ロータ(32)は、仕切壁部(15)を貫通してスクリューロータ(40)に噛み合う。
【0029】
スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)の外径は、仕切壁部(15)の内径よりも若干小さく設定される。スクリューロータ(40)の外周面は、仕切壁部(15)の内周面と近接する。
【0030】
スクリューロータ(40)の外周部には、螺旋状に延びる複数の螺旋溝(41)が形成される。螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の軸方向一端から他端へ向かって延びる。スクリューロータ(40)の軸方向の両端部には、第1端部(42)と、第2端部(43)と、が設けられる。第1端部(42)及び第2端部は、それぞれ、螺旋溝(41)が形成されていない滑らかな円筒状の外周面を有する。スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の第1端部(42)と第2端部(43)の間に形成される。スクリューロータ(40)には、駆動軸(25)が連結される。駆動軸(25)とスクリューロータ(40)とは、一体に回転する。
【0031】
図2に示すように、第1ロータ(31)は、第1ゲートロータ(50)で構成される。第1ゲートロータ(50)は、放射状に配置された複数の歯である第1ゲート(51)を有する。第1ゲート(51)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合う。第1ゲートロータ(50)は、第1ゲートロータ室(17)に収容される。第1ゲートロータ室(17)は、ケーシング(10)内に区画形成され、仕切壁部(15)に隣接する。
【0032】
第2ロータ(32)は、第2ゲートロータ(60)で構成される。第2ゲートロータ(60)は、放射状に配置された複数の歯である第2ゲート(61)を有する。第2ゲート(61)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合う。第2ゲートロータ(60)は、第2ゲートロータ室(18)に収容される。第2ゲートロータ室(18)は、ケーシング(10)内に区画形成され、仕切壁部(15)に隣接する。
【0033】
圧縮機構(20)では、仕切壁部(15)における後述する第1エンベロープ部(11)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、第1ゲートロータ(50)の第1ゲート(51)とによって囲まれた空間が第1圧縮室(21)になる。
【0034】
圧縮機構(20)では、仕切壁部(15)における後述する第2エンベロープ部(12)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、第2ゲートロータ(60)の第2ゲート(61)とによって囲まれた空間が第2圧縮室(22)になる。
【0035】
第1ゲートロータ室(17)内には、軸受ハウジング(52)が設けられる。軸受ハウジング(52)は、玉軸受(53)を有する。第1ゲートロータ(50)の第1回転軸(55)は、玉軸受(53)を介して回転自在に支持される。
【0036】
第2ゲートロータ室(18)内には、軸受ハウジング(52)が設けられる。軸受ハウジング(52)は、玉軸受(53)を有する。第2ゲートロータ(60)の第2回転軸(65)は、玉軸受(53)を介して回転自在に支持される。
【0037】
第1ゲートロータ(50)の第1回転軸(55)と、第2ゲートロータ(60)の第2回転軸(65)とは、スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる仮想平面(F)に対して略直交している(図2参照)。具体的に、第1ゲートロータ(50)の第1ゲート(51)と、第2ゲートロータ(60)の第2ゲート(61)とが、同一の仮想平面(F)上に配置される。
【0038】
これにより、図示しない工作機械によってケーシング(10)を加工する際に、工作機械に保持させたケーシング(10)を一旦取り外して保持姿勢を調整するための段替え工程を行う必要が無く、作業効率が向上する。
【0039】
具体的に、工作機械の回転工具(図示省略)を、ケーシング(10)に向かって図2の紙面手前側から紙面奥側に移動させる場合について検討する。この場合、回転工具によって、スクリューロータ(40)用の孔をケーシング(10)に形成した後、工作機械の保持テーブル(図示省略)にケーシング(10)を保持した状態で、保持テーブルを90°手前側に回転させる。これにより、第1ゲートロータ(50)の第1回転軸(55)及び第2ゲートロータ(60)の第2回転軸(65)が図2の紙面手前側を向いた姿勢となる。そのため、ケーシング(10)の保持姿勢を変更することなく、回転工具を、図2の紙面手前側から紙面奥側に移動させるだけで、第1ゲートロータ(50)及び第2ゲートロータ(60)用の孔をそれぞれ加工することができる。その結果、ケーシング(10)の加工精度を確保することができる。
【0040】
〈スライドバルブ〉
図3に示すように、スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(27)が設けられる。スライドバルブ(27)は、仕切壁部(15)がその周方向の二箇所において径方向外側に膨出したバルブ収納部(16)内に収納される(図2参照)。
【0041】
スライドバルブ(27)は、仕切壁部(15)の軸心方向に沿ってスライド可能に構成される。スライドバルブ(27)は、バルブ収納部(16)に挿入された状態で、スクリューロータ(40)の外周面と対面する。スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(27)をスライド駆動するための駆動機構(28)が設けられる。
【0042】
スライドバルブ(27)は、スクリューロータ(40)の軸方向への位置を調整することが可能なバルブである。スライドバルブ(27)は、第1圧縮室(21)又は第2圧縮室(22)で圧縮途中の冷媒を吸入側へ戻して運転容量を変化させるアンロード機構として用いることができる。また、スライドバルブ(27)は、第1圧縮室(21)又は第2圧縮室(22)から冷媒を吐出するタイミングを調整することにより、圧縮比(内部容積比)を調節する圧縮比調節機構として用いることができる。
【0043】
仕切壁部(15)には、スライドバルブ(27)の位置に拘わらず常に第1圧縮室(21)及び第2圧縮室(22)に連通する固定吐出ポート(図示せず)がそれぞれ形成される。
【0044】
〈第1圧縮室及び第2圧縮室〉
第1圧縮室(21)は、二段圧縮の低段側となる圧縮室であり、ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の冷媒を、その吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する。第2圧縮室(22)は、二段圧縮の高段側となる圧縮室であり、中間圧力の冷媒を、その中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する。
【0045】
ケーシング(10)内には、第1圧縮室(21)の吸入側に連通する低圧空間(S1)と、第1圧縮室(21)の吐出側及び第2圧縮室(22)の吸入側に連通する中間圧空間(S2)と、第2圧縮室(22)の吐出側に連通する高圧空間(S3)と、が設けられる。
【0046】
具体的に、第1ゲートロータ室(17)には、低圧冷媒が流れる低圧配管(6)が接続される。第1ゲートロータ室(17)は、低圧配管(6)から低圧冷媒が供給されることで低圧空間(S1)となる。第1ゲートロータ室(17)は、第1圧縮室(21)の吸入開口に低圧冷媒を供給するように構成される。低圧冷媒は、第1圧縮室(21)で圧縮されて中間圧冷媒となる。
【0047】
第1圧縮室(21)で圧縮されて中間圧となった中間圧冷媒は、モータ(図示省略)が配置された空間を介して、第2ゲートロータ室(18)に供給される。第2ゲートロータ室(18)は、中間圧冷媒が供給されることで中間圧空間(S2)となる。
【0048】
仕切壁部(15)における中間圧空間(S2)側の軸方向端部には、切り欠き部(13)が設けられる(図4も参照)。切り欠き部(13)は、仕切壁部(15)の一部を切り欠くことで形成される。中間圧空間(S2)と第2圧縮室(22)とは、切り欠き部(13)を介して連通している。スクリューロータ(40)の第1端部(42)と、仕切壁部(15)との間には、油膜が形成される。これにより、仕切壁部(15)とスクリューロータ(40)の第1圧縮室(21)との間での冷媒の流通が抑制される。
【0049】
中間圧空間(S2)を流れる中間圧冷媒は、仕切壁部(15)の切り欠き部(13)を通って第2圧縮室(22)の吸入開口に供給される。中間圧冷媒は、第2圧縮室(22)で圧縮されて高圧冷媒となる。
【0050】
第2圧縮室(22)で圧縮されて高圧となった高圧冷媒は、高圧空間(S3)に供給される。高圧空間(S3)を流れる高圧冷媒は、ケーシング(10)の吐出口(図示省略)から吐出される。
【0051】
このように、低圧空間(S1)、第1圧縮室(21)、中間圧空間(S2)、第2圧縮室(22)、及び高圧空間(S3)が、流体の圧力が低い側から高い側へ向かって順に繋がっている。
【0052】
〈第1エンベロープ部及び第2エンベロープ部〉
図5及び図6に示すように、仕切壁部(15)は、第1エンベロープ部(11)と、第2エンベロープ部(12)と、を有する。第1エンベロープ部(11)は、スクリューロータ(40)の回転中に、第1圧縮室(21)が第1ゲートロータ(50)で閉じ切られる吸入閉じ切り位置になる前に、第1圧縮室(21)をその外周側の低圧空間(S1)から遮断するように構成される。
【0053】
第1エンベロープ部(11)の縁部は、スクリューロータ(40)における周方向のシール面(44)の縁部と平行な曲線を描く形状となっている。つまり、第1エンベロープ部(11)の縁部は、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する周方向のシール面(44)と、その全長に亘って重なり合うことが可能な形状となっている。
【0054】
第2エンベロープ部(12)は、スクリューロータ(40)の回転中に、第2圧縮室(22)が第2ゲートロータ(60)で閉じ切られる吸入閉じ切り位置になる前に、第2圧縮室(22)をその外周側の中間圧空間(S2)から遮断するように構成される。
【0055】
第2エンベロープ部(12)の縁部は、スクリューロータ(40)における周方向のシール面(44)の縁部と平行な曲線を描く形状となっている。つまり、第2エンベロープ部(12)の縁部は、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する周方向のシール面(44)と、その全長に亘って重なり合うことが可能な形状となっている。
【0056】
本実施形態では、スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とが異なるようにしている。具体的に、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)は、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)よりも長くなっている。
【0057】
これにより、第1圧縮室(21)が第1ゲートロータ(50)で閉じ切られるタイミングは、第2圧縮室(22)が第2ゲートロータ(60)で閉じ切られるタイミングよりも早くなる。その結果、第1圧縮室(21)の容積は、第2圧縮室(22)の容積よりも大きくなる。ここで、第1圧縮室(21)の容積が、第2圧縮室(22)の容積の2~3倍程度となるように、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とを設定するのが好ましい。
【0058】
このように、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングとを変更して、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0059】
-運転動作-
〈吸込、圧縮、及び吐出の各行程〉
スクリューロータ(40)が回転すると、螺旋溝(41)に噛み合う第1ゲートロータ(50)及び第2ゲートロータ(60)が回転する。これにより、圧縮機構(20)では、吸込行程、圧縮行程、及び吐出行程が連続的に繰り返し行われる。
【0060】
図7に示す吸込行程では、網掛けを付した第1圧縮室(21)が吸入側の空間に連通する。第1圧縮室(21)に対応する螺旋溝(41)は、第1ゲートロータ(50)の第1ゲート(51)と噛み合う。スクリューロータ(40)が回転すると、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って、第1圧縮室(21)の容積が拡大する。その結果、冷媒が第1圧縮室(21)へ吸い込まれる。
【0061】
スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図8に示す圧縮行程が行われる。圧縮行程では、網掛けを付した第1圧縮室(21)が閉じ切り状態となる。つまり、第1圧縮室(21)に対応する螺旋溝(41)は、第1ゲート(51)によって吸入側の空間から仕切られる。スクリューロータ(40)の回転に伴い、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ近づいていくと、第1圧縮室(21)の容積が徐々に小さくなっていく。その結果、第1圧縮室(21)内の冷媒が圧縮される。
【0062】
スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図9に示す吐出行程が行われる。吐出行程では、網掛けを付した第1圧縮室(21)が吐出側の端部(図の右側の端部)を介して固定吐出ポートと連通する。スクリューロータ(40)の回転に伴い、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ近づいていくと、圧縮された冷媒が第1圧縮室(21)から固定吐出ポートを通って吐出側の空間へ押し出されていく。
【0063】
なお、高段側の第2圧縮室(22)における吸込行程、圧縮行程、及び吐出行程についても、低段側の第1圧縮室(21)の各行程と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
〈閉じ切りタイミングについて〉
以下、第1圧縮室(21)における閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)における閉じ切りタイミングとが異なる点について説明する。
【0065】
図10に示すように、吸入行程中の第1圧縮室(21)を形成する1つの螺旋溝(41)に着目する。螺旋溝(41)は、その一部が第1エンベロープ部(11)に覆われて、残りの部分が低圧空間(S1)に臨む状態となっている。また、螺旋溝(41)には、その始端側から第1ゲート(51)が進入してきている。図10に示す状態において、螺旋溝(41)によって形成された吸入行程中の第1圧縮室(21)は、スクリューロータ(40)の外周面側において低圧空間(S1)と連通している。そして、この状態において、第1圧縮室(21)へは、スクリューロータ(40)の外周面側から低圧冷媒が流入する。
【0066】
図10に示す状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図11に示す状態となる。図11に示す状態では、螺旋溝(41)へ進入してきた第1ゲート(51)は、螺旋溝(41)の溝壁及び溝底に摺接する。スクリューロータ(40)の周方向のシール面(44)は、第1エンベロープ部(11)に重なり合う。
【0067】
これにより、第1圧縮室(21)は、第1エンベロープ部(11)と第1ゲート(51)の両方によって低圧空間(S1)から仕切られた閉空間となり、吸入行程が終了する(これを吸入閉じ切り位置という)。
【0068】
このように、吸入行程中の第1圧縮室(21)は、螺旋溝(41)が低圧空間(S1)に臨む位置から第1エンベロープ部(11)で覆われる位置へ移動して低圧空間(S1)から仕切られると同時に、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)を低圧空間(S1)から仕切ることになる。そして、スクリュー圧縮機(1)では、吸入閉じ切り位置になる前には、第1圧縮室(21)の冷媒が低圧空間(S1)へ抜けていくように、第1エンベロープ部(11)の形状が設定される。
【0069】
また、第2圧縮室(22)についても同様に、図11に示す状態になった時点では、第2圧縮室(22)が、第2エンベロープ部(12)と第2ゲート(61)の両方によって中間圧空間(S2)から仕切られた閉空間となり、吸入行程が終了する。
【0070】
このように、吸入行程中の第2圧縮室(22)は、螺旋溝(41)が中間圧空間(S2)に臨む位置から第2エンベロープ部(12)で覆われる位置へ移動して中間圧空間(S2)から仕切られると同時に、第2ゲート(61)が螺旋溝(41)を中間圧空間(S2)から仕切ることになる。そして、スクリュー圧縮機(1)では、吸入閉じ切り位置になる前には、第2圧縮室(22)の冷媒が中間圧空間(S2)へ抜けていくように、第2エンベロープ部(12)の形状が設定される。
【0071】
ここで、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)は、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)よりも長い。そのため、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングは、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングよりも早くなる。
【0072】
-本実施形態1の効果-
本実施形態の特徴によれば、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とが異なっている。これにより、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングとを変更して、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0073】
本実施形態の特徴によれば、1つのスクリューロータ(40)、第1ゲートロータ(50)、及び第2ゲートロータ(60)を備えたスクリュー圧縮機において、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0074】
本実施形態の特徴によれば、第1ゲートロータ(50)の第1回転軸(55)と、第2ゲートロータ(60)の第2回転軸(65)とは、スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる仮想平面(F)に対して略直交している。これにより、ケーシング(10)の保持姿勢を変更することなく、工作機械の回転工具を一方向に相対移動させながら、スクリューロータ(40)、第1ゲートロータ(50)、及び第2ゲートロータ(60)の回転軸を支持するための孔をそれぞれ加工することができ、ケーシング(10)の加工精度を確保することができる。
【0075】
本実施形態の特徴によれば、スクリュー圧縮機(1)と、スクリュー圧縮機(1)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(2a)と、を備える。これにより、スクリュー圧縮機(1)を備えた冷凍装置(2)を提供できる。
【0076】
《実施形態2》
以下、前記実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0077】
図12に示す例では、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)は、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)(図5参照)と同じ長さに設定される。
【0078】
第2エンベロープ部(12)には、第2エンベロープ部(12)の内面から外面へ貫通する開口部(35)が設けられる。開口部(35)は、第2エンベロープ部(12)に形成された貫通孔(36)である。貫通孔(36)は、第2エンベロープ部(12)の縁部における第2ゲートロータ(60)寄りの位置に形成される。
【0079】
ここで、吸入行程中の第2圧縮室(22)は、螺旋溝(41)が中間圧空間(S2)に臨む位置から第2エンベロープ部(12)の縁部で覆われる位置へ移動しても、貫通孔(36)から冷媒が中間圧空間(S2)に抜け出すこととなる。その後、スクリューロータ(40)がさらに回転して、第2エンベロープ部(12)における貫通孔(36)よりも後方位置(図12で上方位置)で螺旋溝(41)のシール面(44)が覆われると、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態となる。
【0080】
このように、第2エンベロープ部(12)に貫通孔(36)を形成することで、第2圧縮室(22)が第2ゲートロータ(60)で閉じ切られるタイミングは、第1圧縮室(21)が第1ゲートロータ(50)で閉じ切られるタイミングよりも遅くなる。その結果、第1圧縮室(21)の容積は、第2圧縮室(22)の容積よりも大きくなる。ここで、第1圧縮室(21)の容積が、第2圧縮室(22)の容積の2~3倍程度となるように、第2エンベロープ部(12)における貫通孔(36)の位置を設定するのが好ましい。
【0081】
-本実施形態2の効果-
本実施形態の特徴によれば、第2エンベロープ部(12)に開口部(35)が設けられる。これにより、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングとを変更して、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0082】
本実施形態の特徴によれば、開口部(35)は、第2エンベロープ部(12)に形成された貫通孔(36)である。第2エンベロープ部(12)に貫通孔(36)を形成することで、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0083】
《実施形態3》
図13に示す例では、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)は、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)(図5参照)と同じ長さに設定される。
【0084】
第2エンベロープ部(12)には、第2エンベロープ部(12)の内面から外面へ貫通する開口部(35)が設けられる。開口部(35)は、第2エンベロープ部(12)の縁部に形成された切り欠き部(37)である。切り欠き部(37)は、第2エンベロープ部(12)の縁部における第2ゲートロータ(60)寄りの位置を周方向に延びるように形成される。
【0085】
ここで、吸入行程中の第2圧縮室(22)は、螺旋溝(41)が中間圧空間(S2)に臨む位置から第2エンベロープ部(12)で覆われる位置へ移動しても、切り欠き部(37)から冷媒が中間圧空間(S2)に抜け出すこととなる。その後、スクリューロータ(40)がさらに回転して、第2エンベロープ部(12)における切り欠き部(37)よりも後方位置(図13で上方位置)で螺旋溝(41)が覆われると、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態となる。
【0086】
このように、第2エンベロープ部(12)に切り欠き部(37)を形成することで、第2圧縮室(22)が第2ゲートロータ(60)で閉じ切られるタイミングは、第1圧縮室(21)が第1ゲートロータ(50)で閉じ切られるタイミングよりも遅くなる。その結果、第1圧縮室(21)の容積は、第2圧縮室(22)の容積よりも大きくなる。ここで、第1圧縮室(21)の容積が、第2圧縮室(22)の容積の2~3倍程度となるように、第2エンベロープ部(12)における切り欠き部(37)の位置を設定するのが好ましい。
【0087】
-本実施形態3の効果-
本実施形態の特徴によれば、開口部(35)は、第2エンベロープ部(12)の縁部に形成された切り欠き部(37)である。第2エンベロープ部(12)の縁部に切り欠き部(37)を形成することで、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0088】
《実施形態4》
図14図16に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(20)と、を備える。ケーシング(10)には、圧縮機構(20)が収容される。圧縮機構(20)は、駆動軸(25)を介してモータ(26)と連結される。
【0089】
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)に設けられた仕切壁部(15)と、1つのスクリューロータ(40)と、第1ロータ(31)と、第2ロータ(32)と、を有する。第1ロータ(31)は、複数の第1螺旋溝(71)を有する第1雌ロータ(70)で構成される。第2ロータ(32)は、複数の第2螺旋溝(81)を有する第2雌ロータ(80)で構成される。スクリューロータ(40)は、第1雌ロータ(70)及び第2雌ロータ(80)に噛み合う1つの雄ロータで構成される。本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は、いわゆるトリロータ型の圧縮機である。
【0090】
仕切壁部(15)には、スクリューロータ(40)、第1雌ロータ(70)、及び第2雌ロータ(80)が装着される。仕切壁部(15)は、スクリューロータ(40)、第1雌ロータ(70)、及び第2雌ロータ(80)の外周面を覆う。第1雌ロータ(70)及び第2雌ロータ(80)は、スクリューロータ(40)に噛み合う。スクリューロータ(40)の駆動軸(25)は、軸受(73)を介して回転自在に支持される。第1雌ロータ(70)の第1回転軸(75)は、軸受(73)を介して回転自在に支持される。第2雌ロータ(80)の第2回転軸(85)は、軸受(73)を介して回転自在に支持される。
【0091】
図15及び図16に示すように、仕切壁部(15)は、第1エンベロープ部(11)と、第2エンベロープ部(12)と、を有する。圧縮機構(20)では、第1エンベロープ部(11)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、第1雌ロータ(70)の第1螺旋溝(71)の溝壁と、第2雌ロータ(80)の第2螺旋溝(81)の溝壁と、によって囲まれた空間が第1圧縮室(21)になる。圧縮機構(20)では、第2エンベロープ部(12)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、第1雌ロータ(70)の第1螺旋溝(71)の溝壁と、第2雌ロータ(80)の第2螺旋溝(81)の溝壁と、によって囲まれた空間が第2圧縮室(22)になる。
【0092】
第1圧縮室(21)は、二段圧縮の低段側となる圧縮室であり、ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の冷媒を、その吸入圧力よりも高圧の中間圧力まで圧縮する。第2圧縮室(22)は、二段圧縮の高段側となる圧縮室であり、中間圧力の冷媒を、その中間圧力よりも高圧の吐出圧力まで圧縮する。
【0093】
ケーシング(10)内には、第1圧縮室(21)の吸入側に連通する低圧空間(S1)と、第1圧縮室(21)の吐出側及び第2圧縮室(22)の吸入側に連通する中間圧空間(S2)と、第2圧縮室(22)の吐出側に連通する高圧空間(S3)と、が設けられる。
【0094】
このように、低圧空間(S1)、第1圧縮室(21)、中間圧空間(S2)、第2圧縮室(22)、及び高圧空間(S3)が、流体の圧力が低い側から高い側へ向かって順に繋がっている。
【0095】
第1エンベロープ部(11)は、スクリューロータ(40)の回転中に、第1圧縮室(21)が第1雌ロータ(70)及び第2雌ロータ(80)で閉じ切られる吸入閉じ切り位置になる前に、第1圧縮室(21)をその外周側の低圧空間(S1)から遮断するように構成される。
【0096】
第1エンベロープ部(11)の縁部は、スクリューロータ(40)における周方向のシール面(44)の縁部と平行な曲線を描く形状となっている。つまり、第1エンベロープ部(11)の縁部は、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する周方向のシール面(44)と、その全長に亘って重なり合うことが可能な形状となっている。
【0097】
第2エンベロープ部(12)は、スクリューロータ(40)の回転中に、第2圧縮室(22)が第1雌ロータ(70)及び第2雌ロータ(80)で閉じ切られる吸入閉じ切り位置になる前に、第2圧縮室(22)をその外周側の中間圧空間(S2)から遮断するように構成される。
【0098】
第2エンベロープ部(12)の縁部は、スクリューロータ(40)における周方向のシール面(44)の縁部と平行な曲線を描く形状となっている。つまり、第2エンベロープ部(12)の縁部は、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する周方向のシール面(44)と、その全長に亘って重なり合うことが可能な形状となっている。
【0099】
本実施形態では、スクリューロータ(40)の駆動軸(25)に沿って延びる第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とが異なるようにしている。具体的に、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)は、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)よりも長くなっている。
【0100】
これにより、第1圧縮室(21)が第1雌ロータ(70)及び第2雌ロータ(80)で閉じ切られるタイミングは、第2圧縮室(22)が第1雌ロータ(70)及び第2雌ロータ(80)で閉じ切られるタイミングよりも早くなる。その結果、第1圧縮室(21)の容積は、第2圧縮室(22)の容積よりも大きくなる。ここで、第1圧縮室(21)の容積が、第2圧縮室(22)の容積の2~3倍程度となるように、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とを設定するのが好ましい。
【0101】
このように、第1圧縮室(21)の閉じ切りタイミングと、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングとを変更して、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0102】
-本実施形態4の効果-
本実施形態の特徴によれば、1つのスクリューロータ(40)(雄ロータ)、第1雌ロータ(70)、及び第2雌ロータ(80)を備えたスクリュー圧縮機(1)において、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を適切に設定することができる。
【0103】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0104】
前記実施形態で説明した第1ゲートロータ(50)の構成や形状、並びにスクリューロータ(40)の溝数と第1ゲートロータ(50)の歯数の比は、前記実施形態に限定されるものではなく、変更してもよい。
【0105】
また、前記実施形態では、トリロータ型のスクリュー圧縮機(1)において、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とを異なる長さに設定することで、閉じ切りタイミングを変更するようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0106】
例えば、第1エンベロープ部(11)の軸方向長さ(D1)と、第2エンベロープ部(12)の軸方向長さ(D2)とを同じ長さに設定して、第2エンベロープ部(12)に、開口部(35)としての貫通孔(36)(図12参照)や切り欠き部(37)(図13参照)を形成することで、閉じ切りタイミングを変更するようにしてもよい。
【0107】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、明細書及び特許請求の範囲の「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本開示は、スクリュー圧縮機及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 スクリュー圧縮機
2 冷凍装置
2a 冷媒回路
10 ケーシング
11 第1エンベロープ部
12 第2エンベロープ部
15 仕切壁部
21 第1圧縮室
22 第2圧縮室
25 駆動軸
31 第1ロータ
32 第2ロータ
35 開口部
36 貫通孔
37 切り欠き部
40 スクリューロータ
41 螺旋溝
50 第1ゲートロータ
51 第1ゲート
55 第1回転軸
60 第2ゲートロータ
61 第2ゲート
65 第2回転軸
70 第1雌ロータ
71 第1螺旋溝
80 第2雌ロータ
81 第2螺旋溝
D1 軸方向長さ
D2 軸方向長さ
F 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16