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特許7372604エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-24
(45)【発行日】2023-11-01
(54)【発明の名称】エンコーダ装置、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20231025BHJP
   B25J 19/02 20060101ALI20231025BHJP
【FI】
G01D5/244 E
B25J19/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021565151
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2019049083
(87)【国際公開番号】W WO2021124377
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098165
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 聡
(72)【発明者】
【氏名】阿部 桂
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044859(JP,A)
【文献】特開2018-132432(JP,A)
【文献】特開2015-049042(JP,A)
【文献】特開2012-103089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0145621(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/244
B25J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部の位置情報を検出する位置検出部と、
前記移動部の移動によって移動する磁石と、
前記磁石の移動による磁界の変化によって電気信号を発生する電気信号発生部と、
前記位置検出部からの制御信号によって変化する前記電気信号発生部の出力を前記位置検出部へ出力する回路部と
を備えるエンコーダ装置。
【請求項2】
前記電気信号発生部から出力された電荷を蓄積する蓄積部を有し、
前記電気信号発生部の出力は、前記制御信号によって前記蓄積部の電荷を放電すると変化する請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記回路部は、前記電気信号発生部の出力によって前記位置検出部の電位が低下した後の前記電気信号を前記位置検出部へ出力し、
前記位置検出部は、前記位置検出部の電位が低下した後の前記電気信号により初期化される請求項1または2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記電気信号により、前記位置検出部に電力を供給する電力供給部を備え、
前記回路部は、前記電力供給部の電位が基準値以上であると、前記位置検出部の電位が低下した後の前記電気信号を前記位置検出部へ出力する請求項3に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記回路部は、前記電力供給部の電位が上昇して所定時間経過すると前記位置検出部の電位が低下した後の前記電気信号を前記位置検出部に出力する遅延部を含む請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記位置検出部は、前記移動部の位置情報の検出処理が終わると、前記制御信号を出力して前記電気信号発生部の出力を変化させる請求項1から4のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記電気信号は、前記移動部の移動によって間欠的に繰り返して出力される請求項1から6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記移動部は回転軸を含み、
前記磁石は輪帯状又は扇形の部分を含み、
前記電気信号発生部は、前記磁石に沿って複数個配置される請求項1から7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記位置検出部は、前記回転軸の1回転以内の角度位置情報を検出する角度検出部と、
前記位置情報として前記回転軸の多回転情報を検出する多回転情報検出部と、を備える請求項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
前記移動部に動力を供給する動力供給部と、を備える駆動装置。
【請求項11】
移動物体と、
前記移動物体を移動させる請求項10に記載の駆動装置と、を備えるステージ装置。
【請求項12】
請求項10に記載の駆動装置と、
前記駆動装置によって相対移動するアームと、を備えるロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、エンコーダ装置の使用方法、駆動装置、ステージ装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンコーダ装置として、ウィーガントワイヤまたはその他の磁気発電素子を用いた自己発電手段によって無電源多回転検出回路を駆動することにより、無電源でも多回転を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-26397号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、移動部の位置情報を検出する位置検出部と、その移動部の移動によって移動する磁石と、その磁石の移動による磁界の変化によって電気信号を発生する電気信号発生部と、その位置検出部からの制御信号によって変化するその電気信号発生部の出力をその位置検出部へ出力する回路部とを備えるエンコーダ装置が提供される。
【0005】
第2の態様によれば、電源から電力が供給されて移動部の位置情報を検出する位置検出部と、その移動部の移動によって移動する磁石と、その磁石の移動による磁界の変化によって電気信号を発生する電気信号発生部と、その電気信号によりその位置検出部に電力を供給する電力供給部と、を備え、その位置検出部は、その電源からの電力の供給が断たれると、その電気信号によるその電力供給部からの電力が供給されるまでにその位置情報の検出を行うエンコーダ装置が提供される。
【0006】
第3の態様によれば、第1又は第2の態様のエンコーダ装置と、その移動部に動力を供給する動力供給部と、を備える駆動装置が提供される。
第4の態様によれば、移動物体と、その移動物体を移動させる第3の態様の駆動装置と、を備えるステージ装置が提供される。
第5の態様によれば、第3の態様の駆動装置と、その駆動装置によって相対移動するアームと、を備えるロボット装置が提供される。
【0007】
第6の態様によれば、電源から電力が供給されて移動部の位置情報を検出する位置検出部と、その移動部の移動によって移動する磁石と、その磁石の移動による磁界の変化によって電気信号を発生する電気信号発生部と、その電気信号によりその位置検出部に電力を供給する電力供給部と、を備えるエンコーダ装置の使用方法であって、その位置検出部は、前記電源からの電力の供給が断たれると、その電気信号によるその電力供給部からの電力が供給されるまでにその位置情報の検出を行うことを含む使用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るエンコーダ装置を示す図である。
図2】(A)は図1中の磁石、電気信号発生ユニット、及び磁気センサを示す斜視図、(B)は図2(A)の磁石等を示す平面図、(C)は図2(A)の磁気センサを示す回路図である。
図3】(A)は図2(A)の磁石及び電気信号発生ユニットを示す平面図、(B)及び(C)はそれぞれ図3(A)の断面図、(D)は変形例を示す平面図、(E)は図3(D)の側面図である。
図4図1のエンコーダ装置の電力供給系及び多回転情報検出部の構成を示す図である。
図5図1のエンコーダ装置の順回転時の動作を示す図である。
図6】高速回転時の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)は、それぞれ図6の動作に対応する所定の信号を示す図である。
図8】第2の実施形態に係るエンコーダ装置の電力供給系及び多回転情報検出部の構成を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る電源オフ時の動作の一例を示すフローチャートである。
図10】(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)は、それぞれ図9の動作に対応する所定の信号を示す図である。
図11】駆動装置の一例を示す図である。
図12】ステージ装置の一例を示す図である。
図13】ロボット装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
第1の実施形態につき図1から図7を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECを示す。図1において、エンコーダ装置ECは、モータM(動力供給部)の回転軸SF(移動部)の回転位置情報を検出する。回転軸SFは、例えばモータMのシャフト(回転子)であるが、モータMのシャフトに変速機などの動力伝達部を介して接続されるとともに負荷に接続される作用軸(出力軸)であってもよい。エンコーダ装置ECが検出した回転位置情報は、モータ制御部MCに供給される。モータ制御部MCは、エンコーダ装置ECから供給された回転位置情報を使って、モータMの回転(例えば、回転位置、回転速度など)を制御する。モータ制御部MCは、回転軸SFの回転を制御する。
【0010】
エンコーダ装置ECは、位置検出系(位置検出ユニット)1及び電力供給系(電力供給ユニット)2を備える。位置検出系1は、回転軸SFの回転位置情報を検出する。エンコーダ装置ECは、いわゆる多回転アブソリュートエンコーダであり、回転軸SFの回転の数を示す多回転情報、及び1回転未満の角度位置(回転角)を示す角度位置情報を含む回転位置情報を検出する。エンコーダ装置ECは、回転軸SFの多回転情報を検出する多回転情報検出部3、及び回転軸SFの角度位置を検出する角度検出部4を備える。
【0011】
位置検出系1の少なくとも一部(例えば角度検出部4)は、例えば、エンコーダ装置ECが搭載される装置(例えば駆動装置、ステージ装置、ロボット装置)の電源(例えば、主電源)が投入されている状態(通常状態)で、この装置から電力の供給を受けて動作する。また、位置検出系1の少なくとも一部(例えば多回転情報検出部3)は、例えば、エンコーダ装置ECが搭載される装置の電源(例えば、主電源)が投入されていない状態(非常時状態、バックアップ状態等)で、電力供給系2から電力の供給を受けて動作する。例えば、エンコーダ装置ECが搭載される装置からの電力の供給が断たれた状態において、電力供給系2は位置検出系1の少なくとも一部(例えば多回転情報検出部3)に対して断続的(間欠的)に電力を供給し、位置検出系1は、電力供給系2から電力が供給された際に回転軸SFの回転位置情報の少なくとも一部(例えば多回転情報)を検出する。
【0012】
多回転情報検出部3は、例えば、磁気によって多回転情報を検出する。多回転情報検出部3は、例えば、磁石11、磁気検出部12、検出部13、及び記憶部14を備える。磁石11は、回転軸SFに固定された円板15に設けられる。円板15は回転軸SFとともに回転するため、磁石11は回転軸SFと連動して回転する。磁石11は回転軸SFの外側に固定され、磁石11及び磁気検出部12は、回転軸SFの回転によって互いの相対位置が変化する。磁石11が形成する磁気検出部12上の磁界の強さ及び向きは、回転軸SFの回転によって変化する。磁気検出部12は、磁石11が形成する磁界を検出し、検出部13は、磁石が形成する磁界を磁気検出部12が検出した結果に基づいて、回転軸SFの位置情報を検出する。記憶部14は、検出部13が検出した位置情報を記憶する。
【0013】
角度検出部4は、光学式または磁気式のエンコーダであり、スケールの一回転内の位置情報(角度位置情報)を検出する。例えば光学式エンコーダであるとき、例えばスケールのパターンニング情報を受光素子で読み取ることにより、回転軸SFの1回転以内の角度位置を検出する。スケールのパターンニング情報とは、例えばスケール上の明暗のスリットである。角度検出部4は、多回転情報検出部3の検出対象と同じ回転軸SFの角度位置情報を検出する。角度検出部4は、発光素子21、スケールS、受光センサ22、及び検出部23を備える。
【0014】
スケールSは、例えば回転軸SFに固定された円板5に設けられている。スケールSは、インクリメンタルスケール及びアブソリュートスケールを含む。スケールSは、円板15に設けられてもよいし、円板15と一体化された部材であってもよい。例えば、スケールSは、円板15において磁石11と反対側の面に設けられていてもよい。スケールSは、磁石11の内側と外側の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0015】
発光素子21(照射部、発光部)は、スケールSに光を照射する。受光センサ22(光検出部)は、発光素子21から照射されスケールSを経由した光を検出する。図1において、角度検出部4は透過型であり、受光センサ22は、スケールSを透過した光を検出する。なお、角度検出部4は反射型であってもよい。そして、受光センサ22は、検出結果を示す信号を検出部23へ供給する。検出部23は、受光センサ22の検出結果を使って、回転軸SFの角度位置を検出する。例えば、検出部23は、アブソリュートスケールからの光を検出した結果を使って第1分解能の角度位置を検出する。また、検出部23は、インクリメンタルスケールからの光を検出した結果を使って、第1分解能の角度位置に内挿演算を行うことにより、第1分解能よりも高い第2分解能の角度位置を検出する。
【0016】
本実施形態において、エンコーダ装置ECは、信号処理部25を備える。信号処理部25は、位置検出系1による検出結果を演算して処理する。信号処理部25は、合成部26及び外部通信部27を備える。合成部26は、検出部23が検出した第2分解能の角度位置情報を取得する。また、合成部26は、多回転情報検出部3の記憶部14から回転軸SFの多回転情報を取得する。合成部26は、検出部23からの角度位置情報、及び多回転情報検出部3からの多回転情報を合成し、回転位置情報を算出する。例えば、検出部23の検出結果がθ(rad)であり、多回転情報検出部3の検出結果がn回転である場合に、合成部26は、回転位置情報として(2π×n+θ)(rad)を算出する。回転位置情報は、多回転情報と、1回転未満の角度位置情報とを組にした情報でもよい。
【0017】
合成部26は、回転位置情報を外部通信部27に供給する。外部通信部27は、有線または無線によって、モータ制御部MCの通信部MCCと通信可能に接続されている。外部通信部27は、デジタル形式の回転位置情報を、モータ制御部MCの通信部MCCに供給する。モータ制御部MCは、角度検出部4の外部通信部27からの回転位置情報を適宜復号する。モータ制御部MCは、回転位置情報を使ってモータMへ供給される電力(駆動電力)を制御することにより、モータMの回転を制御する。
【0018】
電力供給系2は、第1及び第2の電気信号発生ユニット31A,31B、バッテリ(電池)32、及び切替部33を備える。電気信号発生ユニット31A,31Bは、それぞれ回転軸SFの回転によって電気信号を発生する。この電気信号は、例えば、電力(電流、電圧)が時間変化する波形を含む。電気信号発生ユニット31A,31Bは、それぞれ例えば、回転軸SFの回転に基づいて変化する磁界によって、電気信号として電力を発生する。例えば、電気信号発生ユニット31A,31Bは、多回転情報検出部3が回転軸SFの多回転位置の検出に用いる磁石11が形成する磁界の変化によって、電力を発生する。電気信号発生ユニット31A,31Bは、それぞれ回転軸SFの回転によって、磁石11との相対的な角度位置が変化するように配置される。電気信号発生ユニット31A,31Bは、例えば、電気信号発生ユニット31A,31Bと磁石11との相対位置がそれぞれ所定の位置になった際に、パルス状の電気信号を発生する。
【0019】
バッテリ32は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号に基づいて、位置検出系1で消費される電力の少なくとも一部を供給する。バッテリ32は、例えばボタン型電池、乾電池などの一次電池36及び充電可能な二次電池37(図4参照)を含む。バッテリ32の二次電池は、例えば電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号(例えば電流)によって充電可能である。バッテリ32は、保持部35に保持される。保持部35は、例えば、位置検出系1の少なくとも一部が設けられる回路基板などである。保持部35は、例えば、検出部13、切替部33、及び記憶部14を保持する。保持部35には、例えば、バッテリ32を収容可能な複数の電池ケース、及びバッテリ32と接続される電極、配線などが設けられる。
【0020】
切替部33は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号に基づいて、バッテリ32から位置検出系1への電力の供給の有無を切り替える。例えば、切替部33は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号のレベルが閾値以上になることでバッテリ32から位置検出系1への電力の供給を開始させる。例えば、切替部33は、電気信号発生ユニット31A,31Bで闇値以上の電力が発生することでバッテリ32から位置検出系1への電力の供給を開始させる。また、切替部33は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号のレベルが閾値未満になることでバッテリ32から位置検出系1への電力の供給を停止させる。例えば、切替部33は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電力が閾値未満になることでバッテリ32から位置検出系1への電力の供給を停止させる。例えば、電気信号発生ユニット31A,31Bにパルス状の電気信号が発生する場合、切替部33は、この電気信号のレベル(電力)がローレベル(以下、Lレベルという。)からハイレベル(以下、Hレベルという。)に立ち上がった際に、バッテリ32から位置検出系1への電力の供給を開始させ、この電気信号のレベル(電力)がLレベルヘ変化してから所定の時間経過後に、バッテリ32から位置検出系1への電力の供給を停止させる。また、エンコーダ装置ECは、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生した電気信号(パルス信号)を、バッテリ32から位置検出系1への電力の供給におけるスイッチング信号(トリガー信号)として用いる構成である。
【0021】
図2(A)は、図1中の磁石11、電気信号発生ユニット31A,31B、及び磁気検出部12である2つの磁気センサ51,52を示す斜視図、図2(B)は図2(A)の磁石11等を回転軸SFに平行な方向から見た平面図、図2(C)は磁気センサ51の回路図である。なお、図2(A)等において、図1の回転軸SFを直線で表している。
図2(A)、(B)において、磁石11は、回転によって、回転軸SFの中心を通る直線(対称軸)に平行な方向である軸方向(又はアキシャル方向ともいう。)における磁界の向き及び強さが変化するように構成されている。磁石11は、例えば回転軸SFと同軸の円環状の部材である。一例として、磁石11は、回転軸SFを囲むように順に配置されたそれぞれ開き角が90°の扇型のN極16A、S極16B、N極16C、及びS極16Dよりなる第1の円環状磁石と、N極16A~S極16Dと同じ形状でN極16A~S極16Dの一面にそれぞれ貼り合わせて配置されたS極17A、N極17B、S極17C、及びN極17Dよりなる第2の円環状磁石とから構成されている。磁石11は、回転軸SFの回りの円周方向(又は周方向、回転方向ともいう。)に沿って4対の極性を持つように着磁されて磁力が発生する永久磁石である。磁石11の主たる面である表面(図1のモータMと反対側の面)及び裏面(モータMと同じ側の面)は、それぞれ、回転軸SFとほぼ垂直である。言い替えると、磁石11において、表面側のN極16A~S極16Dと、裏面側のS極17A~N極17Dとは角度(例、互いのN極とS極との位置)が90°(位相で180°)ずれており、N極16A~S極16DのN極とS極との境界と、S極17A~N極17DのS極とN極との境界とは、周方向の位置(角度位置)がほぼ一致している。なお、上記の第1の円環状磁石と第2の円環状磁石とは、移動方向(ここでは周方向、回転方向)又は軸方向に連続して一体化され複数の極性を有する1つの磁石であり、それら磁石の内側に空間を有する中空状の磁石であってもよい。
【0022】
ここでは説明の便宜上、回転軸SFの先端側(図1のモータMと反対側)から見た場合の、反時計回りの回転を順回転、時計回りの回転を逆回転という。また、順回転の角度を正の値で表し、逆回転の角度を負の値で表す。なお、回転軸SFの後端側(図1のモータM側)から見た場合の、反時計回りの回転を順回転、時計回りの回転を逆回転と定義してもよい。
【0023】
ここで、磁石11に固定した座標系において、周方向におけるS極16DとN極16Aとの境界の角度位置を位置11aで表し、位置11aから順次90°回転した角度位置(N極とS極との境界)をそれぞれ位置11b,11c,11dで表す。
位置11aから反時計回りに90°の第1区間において、磁石11の表面側にN極が配置され、磁石11の裏面側にS極が配置されている。この第1区間において、磁石11の磁界の軸方向の向きは、概ね磁石11の表面側から裏面側へ向かう軸方向AD1(図3(C)参照)に平行である。第1区間において、磁界の強さは、位置11aと位置11bとの中間において最大となり、位置11a,11bの近傍で最小となる。
【0024】
位置11bから反時計回りに90°の第2区間(磁石11の表面側にS極が、磁石11の裏面側にN極が配置されている区間)において、磁石11の磁界の軸方向の向きは、概ね磁石11の裏面側から表面側へ向かう向き(例えば、軸方向AD1(図3(C)の向き)に対して逆向きである。第2区間において、磁界の強さは、位置11bと位置11cとの中間において最大となり、位置11b,11cの近傍で最小となる。同様に、位置11cから反時計回りに90°の第3区間、及び位置11dから反時計回りに90°の第4区間において、磁石11の磁界の軸方向の向きは、それぞれ概ね磁石11の表面側から裏面側へ向かう向き、及び裏面側から表面側へ向かう向きである。
【0025】
このように、磁石11が形成する磁界の軸方向の向きは、位置11a~11dにおいて順次反転する。磁石11は、磁石11の外部に固定された座標系に対し、磁石11の回転に伴って軸方向の磁界の向きが反転する交流磁界を形成する。電気信号発生ユニット31A,31Bは、磁石11の主たる面の法線方向と交差する方向における磁石11の外側面に配置されている。
【0026】
本実施形態において、電気信号発生ユニット31A,31Bは、それぞれ、回転軸SFに直交する磁石11の径方向(ラジアル方向とも称する。)又は該径方向に平行な方向に離れて、磁石11と非接触に設けられている。第1の電気信号発生ユニット31Aは、第1感磁性部41A、第1発電部42A、第1組の第1磁性体45A、及び第1組の第2磁性体46Aを備える。なお、第1磁性体45A及び第2磁性体46Aのうちの一方は省略可能である。第1感磁性部41A、第1発電部42A、第1磁性体45A、及び第2磁性体46Aは、磁石11の外部に固定されており、磁石11の回転に伴って磁石11上の各位置との相対位置が変化する。例えば、図2(B)では、第1電気信号発生ユニット31Aから反時計回りに45°の位置に、磁石11の位置11bが配置されており、この状態から磁石11が順方向(反時計回り)に1回転すると、電気信号発生ユニット31Aの近傍を位置11a,11d,11c,11bがこの順に通過する。
【0027】
第1感磁性部41Aは、ウィーガントワイヤなどの感磁性ワイヤである。第1感磁性部41Aには、磁石11の回転に伴う磁界の変化によって大バルクハウゼンジャンプ(ウィーガント効果)が生じる。第1感磁性部41Aは、射影像が長方形で円柱状の部材であり、その軸方向が磁石11の周方向に設定されている。以下では、第1感磁性部41Aの軸方向、すなわち第1感磁性部41Aの円形(又は多角形状等でもよい)の断面に垂直な方向を第1感磁性部41Aの長さ方向ともいう。また、例えば、感磁性部(例えば、第1感磁性部41A)の断面に垂直な方向(軸方向、長さ方向、長手方向)における感磁性部の長さは、感磁性部の断面に平行な方向(短手方向)における感磁性部の長さより長く構成されている。第1感磁性部41Aは、その軸方向(長さ方向)に交流磁界が印加され、その交流磁界が反転する際に、軸方向の一端から他端に向かう磁壁が発生する。このように、本実施形態における感磁性部(例えば、第1感磁性部41Aなど)の長さ方向(軸方向)は、磁化が向き易い方向である磁化容易方向ともいう。
【0028】
第1、第2磁性体45A,46Aは例えば鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性材料から形成されている。第1、第2磁性体45A,46Aはヨークともいうことができる。第1磁性体45Aは、磁石11の表面と第1感磁性部41Aの一端との間に設けられ、第2磁性体46Aは、磁石11の裏面と第1感磁性部41Aの他端との間に設けられている。第1、第2磁性体45A,46Aの先端部は、磁石11の表面及び裏面において、周方向の同じ角度位置に配置されている。第1、第2磁性体45A,46Aの先端部における磁石11の極性は互いに常に逆であり、第1磁性体45Aの先端部がN極16A(又はS極16B)の近傍にあるときは、第2磁性体46Aの先端部はS極17A(又はN極17B)の近傍にある。このため、第1、第2磁性体45A,46Aは、磁石11の周方向において同じ位置にある磁石11の互いに異なる極性の2つの部分(例えばN極16A及びS極17A)からの磁力線を第1感磁性部41Aの長さ方向に導いている。そして、磁石11、第1磁性体45A、第1感磁性部41A、及び第2磁性体46Aによって、第1感磁性部41Aの長さ方向に向かう磁力線を含む磁気回路MC1(図3(A)参照)が形成される。なお、図1の円板15の周縁部には段差(不図示)が設けられ、円板15の周縁部と磁石11の裏面との間には、第2磁性体46Aを差し込むことができるスペースが確保されている。
【0029】
第1発電部42Aは、第1感磁性部41Aに巻き付けられて配置される高密度コイルなどである。第1発電部42Aには、第1感磁性部41Aにおける磁壁の発生に伴って電磁誘導が生じ、誘導電流が流れる。図2(B)に示した磁石11の位置11a~11dが電気信号発生ユニット31A(磁性体45A,46Aの先端部)の近傍を通過する際に、第1発電部42Aにパルス状の電流(電気信号、電力)が発生する。
【0030】
第1発電部42Aに発生する電流の向きは、磁界の反転前後の向きに応じて変化する。例えば、磁石11の表面側を向く磁界から裏面側を向く磁界への反転時に発生する電流の向きは、磁石11の裏面側を向く磁界から表面側を向く磁界への反転時に発生する電流の向きの反対になる。第1発電部42Aに発生する電力(誘導電流)は、例えば高密度コイルの巻き数により設定できる。
【0031】
図2(A)に示すように、第1感磁性部41A、第1発電部42A、及び第1、第2磁性体45A,46Aの第1感磁性部41A側の部分は、ケース43Aに収納されている。ケース43Aには端子42Aa,42Abが設けられている。第1発電部42Aの高密度コイルは、その一端及び他端がそれぞれ端子42Aa,42Abと電気的に接続されている。第1発電部42Aで発生した電力は、端子42Aa,42Abを介して、第1電気信号発生ユニット31Aの外部へ取り出し可能である。
【0032】
第2電気信号発生ユニット31Bは、第1電気信号発生ユニット31Aが配置される角度位置から0゜より大きく180°よりも小さい角度をなす角度位置に配置される。電気信号発生ユニット31A,31Bの間の角度は、例えば22.5°以上67.5°以下の範囲から選択され、図2(B)では約45°である。第2電気信号発生ユニット31Bは、第1電気信号発生ユニット31Aと同様の構成である。第2電気信号発生ユニット31Bは、第2感磁性部41B、第2発電部42B、第2組の第1磁性体45B、及び第2組の第2磁性体46Bを備える。第2感磁性部41B、第2発電部42B、及び第2組の第1、第2磁性体45B,46Bは、それぞれ第1感磁性部41A、第1発電部42A、及び第1組の第1、第2磁性体45A,46Aと同様であり、その説明を省略する。第2感磁性部41B、第2発電部42B、及び第1、第2磁性体45B,46Bの第2感磁性部41B側の部分は、ケース43Bに収納されている。ケース43Bには端子42Ba,42Bbが設けられている。第2発電部42Bで発生した電力は、端子42Ba,42Bbを介して、第2電気信号発生ユニット31Bの外部へ取り出し可能である。なお、感磁性部(例えば、第1感磁性部41A、第2感磁性部41B)の少なくとも一部は、磁石11の径方向又はその平行方向における磁石11の外側に離間して配置される。例えば、該感磁性部は、回転軸SFに直交する磁石11の面(すなわち、磁石の複数の極性が配列された面)をそれぞれ一面、他面とした場合、磁石11の一面又は他面に直交し、磁石の移動方向に沿った磁石11の側面(又は回転軸SFの軸方向に平行な側面)に対して外側に離間して配置されている。
【0033】
磁気検出部12は、磁気センサ51,52を含む。磁気センサ51は、回転軸SFの回転方向において、第2感磁性部41B(第2電気信号発生ユニット31B)に対して0°より大きく180°未満の角度位置で配置される。磁気センサ52は、回転軸SFの回転方向において、磁気センサ51に対して22.5°より大きく67.5°未満の角度位置(図2(B)では約45°)で配置される。
【0034】
図2(C)に示すように、磁気センサ51は、磁気抵抗素子56と、磁気抵抗素子56に一定の強さの磁界を与えるバイアス磁石(図示せず)と、磁気抵抗素子56からの波形を整形する波形整形回路(図示せず)とを備える。磁気抵抗素子56は、エレメント56a,56b,56c、及び56dを直列に結線したフルブリッジ形状である。エレメント56a,56cの間の信号線は、電源端子51pに接続され、エレメント56b,56dの間の信号線は、接地端子51gに接続されている。エレメント56a,56bの間の信号線は、第1出力端子51aに接続され、エレメント56c,56dの間の信号線は、第2出力端子51bに接続されている。磁気センサ52は、磁気センサ51と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0035】
次に、本実施形態の第1電気信号発生ユニット31Aの動作につき説明する。以下では、図2(B)の第1電気信号発生ユニット31Aの第1感磁性部41A及び第1発電部42Aを一体的に感磁性部材47として説明する。感磁性部材47の長さ方向は第1感磁性部41Aの長さ方向と同じであり、感磁性部材47の長さ方向の中心は第1感磁性部41Aの長さ方向の中心と同じである。なお、第2電気信号発生ユニット31Bの動作は第1電気信号発生ユニット31Aと同様であるため、その説明を省略する。
【0036】
図3(A)は図2(A)の磁石11及び電気信号発生ユニット31Aを示す平面図、図3(B)及び(C)は図3(A)の磁石11を断面で表した図である。図3(A)、(B)において、磁石11は回転軸SFの回りの回転方向(以下、θ方向ともいう)に沿って平板状で、θ方向に互いに異なる複数の極性(N極16A~S極16D)を有し、θ方向に直交する厚さ方向(本実施形態では回転軸SFの軸方向AD1(アキシャル方向)でもある)にも互いに異なる2つの極性(N極16A及びS極17A等)を有する。このため、軸方向AD1を磁石11の互いに異なる極性の部分(N極16A及びS極17A等)の配向方向(着磁方向)ということもできる。磁石11は、θ方向への回転によって、軸方向又は配向方向AD1における磁界の向き及び強さが変化する。
【0037】
また、感磁性部材47(又は感磁性部)は、その長さ方向が平板状の磁石11の表面(一面、又は裏面)に平行になるように、磁石11の外側面の近傍に配置されている。図3(A)において、感磁性部材47の長さ方向を方向LD1とすると、長さ方向LD1は磁石11の表面に平行である。本実施形態では、感磁性部材47の長さ方向LD1は、θ方向(周方向)に略平行であるとともに、磁石11の着磁方向(例えば、磁極の向きが固定された特定の方向)である軸方向(アキシャル方向)AD1に略直交している。さらに、図3(C)に示すように、磁石11の磁力線のうち、感磁性部材47の長さ方向の略中心(例えば、感磁性部材47又は感磁性部41A,41Bの長さ方向の長さの半分の位置)を通過する磁力線MF1の接線方向(ここでは軸方向AD1に平行な方向)に対して略直交するように、感磁性部材47の長さ方向が配置されている。なお、感磁性部材47の長さ方向LD1は、θ方向に直交する厚さ方向に略直交するように配置されている。また、第1、第2磁性体45A及び46Aは、θ方向において同じ角度位置にある磁石11の互いに異なる極性の2つの部分(例えばN極16A及びS極17A)からの磁力線を感磁性部材47の一端47a及び他端47bを介して感磁性部材47の長さ方向LD1に導いている。
【0038】
磁石11の側面に発生する磁力線を含む電気信号発生ユニット31Aにおけるパルス生成に不要な磁場成分は、感磁性部材47の長さ方向に直交しており、その不要な磁場成分は、磁石11の回転による交流磁界の反転によって生じる感磁性部材47の長さ方向の大バルクハウゼンジャンプ(ウィーガント効果)による感磁性部材47の一端から他端に向かう磁壁の発生には悪影響を与えない。このため、感磁性部材47を磁石11の近傍に配置して、電気信号発生ユニット31Aを小型化しても、その不要な磁場成分に影響されることなく、磁石11の回転による軸方向の交流磁界の反転によって、電気信号発生ユニット31Aを用いて効率的に安定した高出力のパルスを発生することができる。
【0039】
図4は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECの電力供給系2及び多回転情報検出部3の回路構成を示す。図4において、電力供給系2は、第1電気信号発生ユニット31A、整流スタック61、第2電気信号発生ユニット31B、整流スタック62、及びバッテリ32を備える。また、電力供給系2は、図1に示した切替部33として、レギュレータ(平滑部)63を備える。
【0040】
整流スタック61は、第1電気信号発生ユニット31Aから流れる電流を整流する整流器である。整流スタック61の第1入力端子61aは、第1電気信号発生ユニット31Aの端子42Aaと接続されている。整流スタック61の第2入力端子61bは、第1電気信号発生ユニット31Aの端子42Abと接続されている。整流スタック61の接地端子61gは、シグナルグランドSGと同電位が供給される接地線GLに接続されている。多回転情報検出部3の動作時に、接地線GLの電位は、回路の基準電位になる。整流スタック61の出力端子61cは、バッファ回路74の入力部に接続され、バッファ回路74の出力部は、レギュレータ63の制御端子63a及びアンド回路72の第1入力部に接続されている。
【0041】
整流スタック62は、第2電気信号発生ユニット31Bから流れる電流を整流する整流器である。整流スタック62の第1入力端子62aは、第2電気信号発生ユニット31Bの端子42Baと接続されている。整流スタック62の第2入力端子62bは、第2電気信号発生ユニット31Bの端子42Bbと接続されている。整流スタック62の接地端子62gは、接地線GLに接続されている。整流スタック62の出力端子62cは、バッファ回路74の入力部に接続されている。バッファ回路74の出力信号(以下、イネーブル信号という。)7Bは、入力部の信号が所定の閾値以下でLレベルとなり、その信号がその閾値より大きくなるとHレベルになる信号である。整流スタック61,62の出力端子61c,62cと接地線GLとの間に、出力端子61c,62cに生じるパルス信号(パルス電流)を一時的に蓄積するためのコンデンサ69Aが接続されている。以下では、出力端子61c,62cに生じるパルス信号をWW出力7A(ウィーガントワイヤの出力の意味)と称する。さらに、出力端子61c,62cと接地線GLとの間に、放電用のスイッチング素子70が接続され、計数器67からスイッチング素子70の制御端子に放電信号7Dが供給されている。スイッチング素子70が例えばMOS型FETである場合、出力端子61c,62cはドレイン電極Dに接続され、ソース電極Sが接地線GLに接続され、その制御端子はゲート電極Gになる。放電信号7Dがハイレベルになると、スイッチング素子70が導通して、出力端子61c,62cに生じるWW出力7A(コンデンサ69Aの電位)が急速に低下して基準電位になる。このようにスイッチング素子70を導通させてWW出力7Aを基準電位にすることを、以下では電気信号発生ユニット31A,31Bを放電させる、又はWW出力7Aを放電させるともいう。
【0042】
レギュレータ63は、バッテリ32から位置検出系1へ供給される電力を調整(平滑化)する。レギュレータ63は、バッテリ32と位置検出系1との間の電力の供給経路に設けられるスイッチ64を含んでもよい。レギュレータ63は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号をもとにスイッチ64の動作を制御する。
レギュレータ63の入力端子63bは、電源切替器38を介してバッテリ32に接続されている。レギュレータ63の出力端子63cは、電源線PL及びアンド回路72の第2入力部に接続されている。レギュレータ63の接地端子63gは、接地線GLに接続されている。レギュレータ63の入力端子63bと接地線GLとの間に入力側のコンデンサ69B(第2コンデンサ)が接続され、出力端子63cと接地線GLとの間に出力側のコンデンサ69C(第1コンデンサ)が接続されている。レギュレータ63の制御端子63aはイネーブル端子であり、レギュレータ63は、制御端子63aにバッファ回路74から閾値以上のイネーブル信号7B(電圧)が供給された状態で、出力端子63cの電位(電源線PLの電位)を所定電圧に維持する。レギュレータ63の出力電圧(上記の所定電圧)は、計数器67がCMOSなどで構成される場合に例えば3Vである。記憶部14の不揮発性メモリ68の動作電圧は、例えば、所定電圧と同じ電圧に設定される。なお、所定電圧は、電力供給に必要な電圧であり、一定の電圧値のことだけでなく、段階的に変化する電圧であってもよい。
【0043】
スイッチ64は、第1端子64aが入力端子63bと接続され、第2端子64bが出力端子63cと接続される。レギュレータ63は、バッファ回路74(電気信号発生ユニット31A,31B)から制御端子63aに供給されるイネーブル信号7Bを制御信号として用いて、スイッチ64の第1端子64aと第2端子64bとの間の導通状態と絶縁状態とを切り替える。例えば、スイッチ64は、MOS,TFT,FETなどのスイッチング素子を含み、第1端子64aと第2端子64bとはソース電極とドレイン電極であり、ゲート電極が制御端子63aと接続される。スイッチ64は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号(電力)によってゲート電極が充電され、ゲート電極の電位が閾値以上になると、ソース電極とドレイン電極との間が導通可能な状態(オン状態)になる。なお、スイッチ64はレギュレータ63の外部に設けられてもよく、例えばリレー等の外付けであってもよい。
【0044】
また、アンド回路72は、イネーブル信号7BがHレベルで、かつレギュレータ63の出力信号が所定の閾値以上(Hレベル)のときにHレベルになる信号7E(第2信号)を遅延回路73に出力する。遅延回路73は、信号7Eを用いて生成したリセット信号7Rを計数器67及び不揮発性メモリ68に供給する。リセット信号7Rは、入力する信号7EがHレベルになってから所定の遅延時間をおいてHレベルになり、その後で信号7EがLレベルになるとLレベルになる信号である。リセット信号7Rは、信号7Eと同等に第2信号とみなすこともできる。計数器67及び不揮発性メモリ68は、リセット信号7RがLレベルの期間では、計数動作を停止する。計数器67及び不揮発性メモリ68が計数動作を停止することを以下では計数器67及び不揮発性メモリ68を初期化する、又はリセットするともいう。バッファ回路74、アンド回路72、及び遅延回路73から信号リレー回路75が構成されている。
【0045】
多回転情報検出部3は、磁気検出部12として、磁気センサ51,52、及びアナログコンパレータ65,66を含む。磁気検出部12は、磁石11が形成する磁界を、バッテリ32から供給される電力を用いて検出する。また、多回転情報検出部3は、図1に示した検出部13として計数器67を含み、記憶部14として不揮発性メモリ68を含む。
磁気センサ51の電源端子51pは、電源線PLに接続されている。磁気センサ51の接地端子51gは、接地線GLに接続されている。磁気センサ51の出力端子51cは、アナログコンパレータ65の入力端子65aに接続されている。本実施形態において、磁気センサ51の出力端子51cは、図2(C)に示した第2出力端子51bの電位と基準電位との差に相当する電圧を出力する。アナログコンパレータ65は、磁気センサ51から出力される電圧を所定電圧と比較する比較器である。アナログコンパレータ65の電源端子65pは、電源線PLに接続されている。アナログコンパレータ65の接地端子65gは、接地線GLに接続されている。アナログコンパレータ65の出力端子65bは、計数器67の第1入力端子67aに接続されている。アナログコンパレータ65は、磁気センサ51の出力電圧が閾値以上である場合にHレベルとなりその出力電圧が閾値未満である場合にLレベルとなる信号を、出力端子65bから出力する。なお、アナログコンパレータ65を2つの入力端子を持つように構成し、その2つの入力端子に図2(C)の磁気センサ51の出力端子51a及び51bを接続し、アナログコンパレータ65では出力端子51a及び51bの電圧を比較してもよい。
【0046】
磁気センサ52及びアナログコンパレータ66は、磁気センサ51及びアナログコンパレータ65と同様の構成である。磁気センサ52の電源端子52p及び接地端子52gは、それぞれ電源線PL及び接地線GLに接続されている。磁気センサ52の出力端子52cは、アナログコンパレータ66の入力端子66aに接続されている。アナログコンパレータ66の電源端子66p及び接地端子66gは、それぞれ電源線PL及び接地線GLに接続されている。アナログコンパレータ66の出力端子66bは、計数器67の第2入力端子67bに接続されている。アナログコンパレータ66は、磁気センサ52の出力電圧が閾値以上である場合にHレベルとなりその出力電圧が閾値未満である場合にLレベルとなる信号を、出力端子66bから出力する。
【0047】
計数器67は、回転軸SFの多回転情報を、バッテリ32から供給される電力を用いて計数する。計数器67は、例えばCMOS論理回路などを含む。計数器67は、電源線PLに接続された電源端子67p、及び接地線GLに接続された接地端子67gを介して供給される電力を用いて動作する。計数器67は、第1入力端子67aを介して供給される電圧及び第2入力端子67bを介して供給される電圧を検出信号として、計数処理を行う。さらに、計数器67は、計数処理及び不揮発性メモリ68への書き込み処理が完了した後、放電信号7DをHレベルに設定してスイッチング素子70を導通させて、コンデンサ69Aに蓄積された電荷を放電することにより電気信号発生ユニット31A,31Bを放電させる(WW出力7Aのレベルを低下させる)。これによって、イネーブル信号7BがLレベルになり、レギュレータ63がオフになる。なお、以下では、電気信号発生ユニット31A,31Bを放電させることを、WW出力7Aをリセットするとも称する。
【0048】
不揮発性メモリ68は、検出部13が検出した回転位置情報の少なくとも一部(例えば多回転情報)を、バッテリ32から供給される電力を用いて記憶する(書き込み動作を行う)。不揮発性メモリ68は、検出部13が検出した回転位置情報として、計数器67による計数の結果(多回転情報)を記憶する。不揮発性メモリ68の電源端子68p及び接地端子68gは、それぞれ電源線PL及び接地線GLに接続されている。計数器67及び不揮発性メモリ68は、遅延回路73から出力されるリセット信号7RがLレベルの期間では、計数動作及び記憶部への書き込み動作を停止する。さらに、計数器67及び不揮発性メモリ68は、電源線PLの電圧が所定の閾値以上で、かつリセット信号7RがHレベルの期間に、計数動作及び記憶部への書き込み又は記憶部からの読み込みを行う。リセット信号7Rの遅延時間(アンド回路72の出力信号7Eが立ち上がってからリセット信号7Rが立ち上がるまでの時間)は、電源線PLの電圧がその所定の閾値以上となって、磁気検出部12及び計数器67が正確に動作するまでの時間をわずかに超える時間に設定されている。図1の記憶部14は、不揮発性メモリ68を含み、電力が供給されている間に書き込まれた情報を、電力が供給されない状態においても保持可能である。
【0049】
本実施形態において、整流スタック61,62と接地線GLとの間には、コンデンサ69Aが設けられている。コンデンサ69Aは、いわゆる平滑コンデンサであり、バッファ回路74への入力信号の脈動を低減する。また、レギュレータ63の入力端子63bと接地線GLとの間に入力コンデンサ69Bが接続され、レギュレータ63の出力端子63cと接地線GLとの間に出力コンデンサ69Cが接続されている。入力コンデンサ69B及び出力コンデンサ69Cはそれぞれレギュレータ63の動作の安定化(負荷応答性の改善、脈動(リッップル)の改善、及び発振防止等)を行うための平滑コンデンサである。コンデンサ69B,69Cの定数は、例えば、磁気検出部12により回転位置情報を検出して不揮発性メモリ68に回転位置情報を書き込むまでの期間に、バッテリ32から磁気検出部12及び不揮発性メモリ68への電力供給が維持されるように設定されてもよい。なお、入力コンデンサ69Bは省略可能である。また、出力コンデンサ69Cの電荷は、微少なリーク電流によって徐々に放電される。
【0050】
出力コンデンサ69Cの電荷が空の状態の場合、電気信号発生ユニット31A,31Bによる間欠動作中のレギュレータ63のオン時には、出力コンデンサ69Cに充電を行う必要があり、そのためにバッテリ32の電圧が瞬間的に降下する。出力コンデンサ69Cが充電された後はバッテリ32の電圧は復帰し、レギュレータ63は安定に動作する。これに関して、例えば計数器67での計数動作が完了した後、出力コンデンサ69Cの出力を放電してリセット信号7Rをローレベルにする構成を採用することも可能である。しかしながら、この構成では、回転軸SFが高速回転してレギュレータ63がオンになる間隔が短くなった場合に、バッテリ32の電圧が十分に復帰する前に、次のWW出力7Aが立ち上がってレギュレータ63がオンになるようになり、徐々にバッテリ32の電圧が降下して、電源線PLの電圧が閾値より常時小さくなり、磁気検出部12等が正確に動作できなくなる恐れがある。また、バッテリ32の電圧が復帰する時間は、バッテリ32の内部抵抗が大きくなった場合にはさらに顕著になる。これに対して、本実施形態では、計数器67での計数動作が完了した後、スイッチング素子70によって電気信号発生ユニット31A,31BのWW出力7Aを放電しているため、回転軸SFが高速回転しても電源線PLの電圧が確実にHレベルになる(詳細後述)。
【0051】
また、バッテリ32は例えばボタン型電池等の一次電池36及び充電可能な二次電池37を備える。二次電池37は、モータ制御部MCの電源部MCEと電気的に接続されている。電源部MCEは、例えば交流電源(不図示)から得られる電力で図1のモータMを駆動するとともに、その電力から得られる直流電圧をバッテリ32の二次電池37に供給可能である。モー夕制御部MCの電源部MCEが電力を供給可能な期間(例えば主電源がオン状態の期間)の少なくとも一部において、電源部MCEから二次電池37へ電力が供給され、この電力によって二次電池37が充電される。モータ制御部MCの電源部MCEが電力を供給不能な期間(例えば主電源がオフ状態の期間)において、電源部MCEから二次電池37への電力の供給は絶たれる。
【0052】
また、二次電池37は、電気信号発生ユニット31A,31Bからの電気信号の伝達経路にも電気的に接続されてもよい。この場合、二次電池37は、電気信号発生ユニット31A,31Bからの電気信号の電力により充電可能である。例えば、二次電池37は、整流スタック61とレギュレータ63との間の回路と電気的に接続される。二次電池37は、電源部MCEからの電力の供給が絶たれた状態において、回転軸SFの回転により電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号の電力によって、充電することが可能となる。なお、二次電池37は、モータMに駆動されて回転軸SFが回転することにより不図示の発電機で発生する電力によって充電されてもよい。
【0053】
本実施形態に係るエンコーダ装置ECは、外部からの電力の供給が絶たれた状態において、一次電池36と二次電池37とのいずれから位置検出系1へ電力を供給するかを選択する。電力供給系2は、電源切替器(電源選択部、選択部)38を備え、電源切替器38は、位置検出系1に対して一次電池36と二次電池37とのいずれから電力を供給するかを切り替える(選択する)。電源切替器38の第1入力端子は、一次電池36の正極と電気的に接続され、電源切替器38の第2入力端子は、二次電池37と電気的に接続される。電源切替器38の出力端子は、レギュレータ63の入力端子63bと電気的に接続される。
【0054】
電源切替器38は、例えば、二次電池37の残量に基づいて、位置検出系1に対して電力を供給する電池を、一次電池36または二次電池37に選択する。例えば、二次電池37の残量が閾値以上である場合、電源切替器38は、二次電池37から電力を供給させ、一次電池36から電力を供給させない。この閾値は、位置検出系1で消費される電力に基づいて設定され、例えば位置検出系1へ対して供給すべき電力以上に設定される。例えば、電源切替器38は、位置検出系1で消費される電力を二次電池37からの電力でまかなうことが可能な場合、二次電池37から電力を供給させ、一次電池36から電力を供給させない。また、二次電池37の残量が閾値未満である場合、電源切替器38は、二次電池37から電力を供給させず、一次電池36から電力を供給させる。電源切替器38は、例えば、二次電池37の充電を制御する充電器を兼ねていてもよく、充電の制御に使われる二次電池37の残量の情報を用いて、二次電池37の残量が閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0055】
このように二次電池37を併用することで、一次電池36の消耗を遅らせることができる。したがって、エンコーダ装置ECは、バッテリ32のメンテナンス(例、交換)がない、あるいはメンテナンスの頻度が低い。
なお、バッテリ32は、一次電池36と二次電池37の少なくとも一方を備えればよい。また、上述の実施形態においては、一次電池36または二次電池37から択一的に電力を供給するが、一次電池36及び二次電池37から並行して電力を供給してもよい。例えば、位置検出系1の各処理部(例えば磁気センサ51、計数器67、不揮発性メモリ68)の消費電力に応じて、一次電池36が電力を供給する処理部と、二次電池37が電力を供給する処理部とが定められてもよい。なお、二次電池37は、電源部MECから供給される電力と、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号の電力との少なくとも一方を用いて、充電されればよい。
【0056】
次に、電力供給系2及び多回転情報検出部3の通常の基本的な動作について説明する。図5は、回転軸SFが反時計回りに回転(順回転)するときの多回転情報検出部3の動作を示すタイミングチャートである。回転軸SFが反時計回りに回転(逆回転)するときの多回転情報検出部3の動作を示すタイミングチャートは、図4のチャートを時間に沿って反転したものとなるため、その説明を省略する。
【0057】
図5の「磁界」において、実線は第1電気信号発生ユニット31Aの位置での磁界を示し、破線は第2電気信号発生ユニット31Bの位置での磁界を示す。「第1電気信号発生ユニット」、「第2電気信号発生ユニット」は、それぞれ、第1電気信号発生ユニット31Aの出力、第2電気信号発生ユニット31Bの出力を示し、一方向に流れる電流の出力を正(+)とし、その逆方向に流れる電流の出力を負(-)とした。「イネーブル信号」は、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する電気信号によりレギュレータ63の制御端子63aに印加されるイネーブル信号7B(電位)を示し、Hレベルを「H」で表し、Lレベルを「L」で表した。「レギュレータ出力」は、レギュレータ63の出力(電源線PLの電位)を示し、Hレベルを「H」で表し、Lレベルを「L」で表した。
【0058】
図5の「第1磁気センサ上の磁界」、「第2磁気センサ上の磁界」は、磁気センサ51及び52上に形成される磁界である。磁石11が形成する磁界を長破線で示し、バイアス磁石が形成する磁界を短破線で示し、これらの合成磁界を実線で示した。「第1磁気センサ」、「第2磁気センサ」は、それぞれ、磁気センサ51及び52を常時駆動したときの出力を示し、第1出力端子からの出力を破線で表し、第2出力端子からの出力を実線で表した。「第1アナログコンパレータ」、「第2アナログコンパレータ」は、それぞれ、アナログコンパレータ65及び66からの出力を示す。磁気センサ及びアナログコンパレータが常時駆動された場合の出力を「常時駆動」に示し、磁気センサ及びアナログコンパレータが間欠駆動された場合の出力を「間欠駆動」に示した。
【0059】
回転軸SFが反時計回りに回転する場合、第1電気信号発生ユニット31Aは、角度位置45°及び225°において、順方向に流れる電流パルス(「第1電気信号発生ユニット」の+)を出力する。また、第1電気信号発生ユニット31Aは、角度位置135°及び315°において、逆方向に流れる電流パルス(「第1電気信号発生ユニット」の-)を出力する。第2電気信号発生ユニット31Bは、角度位置90°及び270°において、逆方向に流れる電流パルス(「第2電気信号発生ユニット」の-)を出力する。また、第2電気信号発生ユニット31Bは、角度位置180°及び0°(360°)において、順方向に流れる電流パルス(「第2電気信号発生ユニット」の-)を出力する。そのため、イネーブル信号は、角度位置45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°、及び0°のそれぞれにおいて、Hレベルに切り替わる。また、レギュレータ63は、イネーブル信号がHレベルに維持された状態に対応して、角度位置45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°、及び0°のそれぞれにおいて、電源線PLに所定電圧を供給する。
【0060】
本実施形態において、磁気センサ51の出力と磁気センサ52の出力は、90°の位相差を有しており、検出部13は、この位相差を利用して回転位置情報を検出する。磁気センサ51の出力は、角度位置22.5°から角度位置112.5°の範囲において、正のサイン波状である。この角度範囲において、レギュレータ63は角度位置45°、90°において電力を出力する。磁気センサ51及びアナログコンパレータ65は、角度位置45°,90°のそれぞれにおいて供給される電力により駆動される。アナログコンパレータ65から出力される信号(以下、A相信号という)は、電力供給を受けていない状態でLレベルに維持されており、角度位置45°,90°のそれぞれにおいてHレベルになる。
【0061】
また、磁気センサ52の出力は、角度位置157.5から247.5°の範囲において、正のサイン波状である。この角度範囲において、レギュレータ63は、角度位置180°,225°において電力を出力する。磁気センサ52及びアナログコンパレータ66は、角度位置180°,225°のそれぞれにおいて供給される電力により駆動される。アナログコンパレータ66から出力される信号(以下、B相信号という)は、電力供給を受けていない状態でLレベルに維持されており、角度位置180°,225°のそれぞれにおいてHレベルになる。
【0062】
ここで、計数器67に供給されるA相信号がHレベル(H)であり、計数器67に供給されるB相信号がLレベルである場合に、これら信号レベルの組を(H、L)のように表す。図5では、角度位置180°において信号レベルの組が(L、H)であり、角度位置225°において信号レベルの組が(H、H)、角度位置270°において信号レベルの組が(H、L)である。
【0063】
計数器67は、検出したA相信号とB相信号の一方または双方がHレベルである場合に、不揮発性メモリ68に信号レベルの組を記憶させる。計数器67は、次に検出したA相信号とB相信号の一方または双方がHレベルである場合に、前回のレベルの組を不揮発性メモリ68から読み出し、前回のレベルの組と今回のレベルの組と比較して回転軸SFの回転方向を判定する。
【0064】
例えば、前回の信号レベルの組が(H、H)であって、今回の信号レベルが(H、L)である場合には、前回の検出において角度位置225°であり、今回の検出において角度位置270°であるので、反時計回り(順回転)であることがわかる。計数器67は、今回のレベルの組が(H、L)であって、かつ前回のレベルの組が(H、H)である場合、カウンタをアップすることを示すアップ信号を不揮発性メモリ68に供給する。不揮発性メモリ68は、計数器67からのアップ信号を検出した場合に、記憶している多回転情報を1増加した値に更新する。また、逆回転の場合には、計数器67は、カウンタをダウンすることを示すダウン信号を不揮発性メモリ68に供給する。この歳に、不揮発性メモリ68は記憶した多回転情報を1減少させた値に更新する。このように、本実施形態に係る多回転情報検出部3は、回転軸SFの回転方向を判定しながら、多回転情報を検出できる。
【0065】
次に、本実施形態のエンコーダ装置ECにおいて、回転軸SFを高速回転した場合の動作(間欠動作シーケンス)の一例につき図6のフローチャート及び図7の波形図を参照して説明する。回転軸SFを高速回転した場合には、図5のイネーブル信号の周期TE等が短くなる。
まず、図6のステップ102において、図4の電気信号発生ユニット31A又は31BのWW出力7Aが発生し、バッファ回路74のイネーブル信号7B(図7(C)参照)がHレベルになる。WW出力7Aは、図7(A)に示すように間欠的に短周期で発生するが、以下では図7(B)~(E)に示すように、WW出力7Aの1周期内での動作につき説明する。また、電気信号発生ユニット31A,31Bで発生する信号は図5に示すようにパルス状であるが、出力端子61c,62cと接地線GLとの間にコンデンサ69Aが設けられているため、WW出力7Aは比較的緩やかに基準電位に低下する。そして、ステップ104において、イネーブル信号7Bに応じてレギュレータ63がオン(作動)になり、レギュレータ63の出力端子63cに接続された電源線PLの電位が点線の波形で示すように上昇する(図7(B)参照)。このときにアンド回路72の信号7EがHレベルになる。
【0066】
さらに、ステップ106において、所定時間δtの経過後に遅延回路73のリセット信号7RがHレベルになり(図7(B)参照)、ステップ108において計数器67及び不揮発性メモリ68が作動を開始し、ステップ110において、計数器67が回転情報(上述のアップ信号又はダウン信号)を不揮発性メモリ68に書き込む。図7(B)のデータ7RDは、計数器67と不揮発性メモリ68との間で交換される信号の一例を示す。そして、ステップ112において、計数器67は放電信号7DをHレベルに設定し(図7(E)参照)、これに応じてスイッチング素子70が導通してWW出力7Aが低下し(放電され)、ステップ114において、バッファ回路74のイネーブル信号7BがLレベルとなり、ステップ116において、アンド回路72の出力7EがLレベルになり(図7(D)参照)、レギュレータ63がオフ(作動停止)になり、電源線PLの電位が低下する。そして、ステップ118において、リセット信号7RがLレベルになり(図7(B)参照)、計数器67及び不揮発性メモリ68が作動停止になる。その後、WW出力7Aが立ち上がると、動作はステップ102に戻り、ステップ104~118の動作が繰り返される。
【0067】
この動作によれば、図7(A)に示すように、WW出力7Aの各パルス信号が短い周期で間欠的に発生していても、計数器67の処理が終了する毎にWW出力7Aをリセットしてレギュレータ63をオフにすることによって、レギュレータ63の出力端子に接続されている電源線PLの電位(点線の曲線)はほとんど低下しない。このため、WW出力7Aのパルス信号が発生してレギュレータ63がオンになったときのバッテリ32の電圧低下を抑制でき、バッテリ32の電圧は確実に元の電圧に復帰できる。したがって、回転軸SFが高速回転していても、バッテリ32から位置検出系1(多回転情報検出部3)への電力の供給及び遮断を正確に行うことができ、バッテリ32の電力消費を小さくして、回転軸SFの回転情報を高精度に求めることができる。これによって、バッテリ32のメンテナンス(例えば交換)をなくすか、あるいはバッテリ32のメンテナンスの頻度を低くできる。
【0068】
上述のように、本実施形態に係るエンコーダ装置ECは、回転軸SF(移動部)の回転位置情報を検出する位置検出系1(位置検出部)と、回転軸SFの回転(移動)によって回転する磁石11と、磁石11の回転による磁界の変化によってWW出力7A(電気信号)を発生する電気信号発生ユニット31A(電気信号発生部)と、位置検出系1からの放電信号7D(制御信号)によってコンデンサ69Aに蓄積された電荷を放電させたことによって電気信号発生ユニット31Aから出力されるWW出力7A又はイネーブル信号7B(第1信号)を位置検出系1へ出力する信号リレー回路5(回路部)と、を備えている。
【0069】
本実施形態によれば、例えば位置検出系1での位置検出処理が終了した後、放電信号7Dによって電気信号発生ユニット31Aを放電させて(WW出力7Aを低下させて)、レギュレータ63をオフにすることによって、それ以降のバッテリ32の電力消費を防止できる。また、レギュレータ63の出力ではなく、電気信号発生ユニット31Aの出力を放電しているため、レギュレータ63の出力(位置検出系1の電源の電位)の低下を抑制できる。このため、回転軸SFが高速回転するときに、各WW出力7A(パルス信号)が発生する毎のレギュレータ63から位置検出系1への充電量を少なくすることができ、バッテリ32の電圧の落ち込み量を小さくして、バッテリ32の電圧の復帰時間を短縮できる。このため、回転軸SFが高速回転している場合でも、バッテリ32の電力消費を小さくして、位置検出系1に対する電力の供給を行うことができ、回転軸SFの回転情報を高精度に求めることができる。
【0070】
また、本実施形態においては、出力コンデンサ69Cを備えている。このコンデンサ69Aによって、レギュレータ63の動作が安定化(負荷応答性の改善等)される。さらに、出力コンデンサ69Cは放電されないため、回転軸SFが高速回転するときに、各WW出力7Aが発生する毎のレギュレータ63から出力コンデンサ69Cへの充電量を少なくすることができ、バッテリ32の電圧の落ち込み量を小さくして、バッテリ32の電圧の復帰時間を短縮できる。
【0071】
また、信号リレー回路75は、位置検出系1の電源線PLの電位が低下した後のWW出力7Aによるリセット信号7R(信号7Eと同等の第2信号)を位置検出系1の計数器67及び不揮発性メモリ68に出力し、計数器67及び不揮発性メモリ68はリセット信号7Rにより初期化される(計数動作を停止する)。これによって、電位の低下による不安定な信号による誤動作が防止される。
また、本実施形態によれば、磁石11の側面に発生する磁力線を含む電気信号発生ユニット31Aにおけるパルス生成に不要な磁場成分は、感磁性部材47の長さ方向に直交しており、その不要な磁場成分は、磁石11の回転による交流磁界の反転による感磁性部材47の長さ方向の一端から他端に向かう磁壁の発生には悪影響を与えない。このため、感磁性部材47を磁石11の近傍に配置して、電気信号発生ユニット31Aを小型化しても、その不要な磁場成分に影響されることなく、磁石11の回転による軸方向の交流磁界の反転によって、電気信号発生ユニット31Aを用いて効率的に高い信頼性(安定した出力)で高出力のWW出力7A(パルス信号)を発生することができる。
【0072】
また、エンコーダ装置ECは、電気信号発生ユニット31Aに電気信号が発生してから短時間のうちに、バッテリ32から多回転情報検出部3に電力が供給され、多回転情報検出部3がダイナミック駆動(間欠駆動)する。多回転情報の検出及び書き込みの終了後は、多回転情報検出部3への電源供給は絶たれるが、計数値は、記憶部14に格納されているので保持される。このようなシーケンスは、外部からの電力供給が絶たれた状態においても、磁石11上の所定位置が電気信号発生ユニット31Aの近傍を通過するたびに繰り返される。また、記憶部14に記憶されている多回転情報は、次にモータMが起動される際にモータ制御部MCなどに読み出され、回転軸SFの初期位置などの算出に利用される。このようなエンコーダ装置ECは、電気信号発生ユニット31Aで発生する電気信号に応じて、位置検出系1で消費される電力の少なくとも一部をバッテリ32が供給するので、バッテリ32を長寿命にすることができる。このため、バッテリ32のメンテナンス(例えば交換)をなくしたり、メンテナンスの頻度を減らしたりすることができる。例えば、バッテリ32の寿命がエンコーダ装置ECの他の部分の寿命よりも長い場合、バッテリ32の交換を不要にすることもできる。
【0073】
ところで、ウィーガントワイヤ等の感磁性ワイヤを利用すると、磁石11の回転が極めて低速であっても、電気信号発生ユニット31Aからパルス電流(電気信号)の出力が得られる。そのため、例えばモータMへ電力供給がなされていない状態などにおいて、回転軸SF(磁石11)の回転が極めて低速な場合にも、電気信号発生ユニット31Aの出力を電気信号として利用できる。なお、感磁性ワイヤ(第1感磁性部41A)としては、アモルファス磁歪線なども使用可能である。この場合、例えば、エンコーダ装置ECは、上記した電気信号発生ユニット(例、31A、31B)から発生した電気信号(電流)を上記した整流スタック(例、整流器)を用いて全波整流し、整流された電力を多回転情報検出部3などに供給するように構成してもよい。
【0074】
[第2の実施形態]
第2の実施形態につき図8から図10を参照して説明する。なお、図8図9図10において図4図6図7に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図8は、本実施形態に係るエンコーダ装置ECAを示す。図8において、図4のバッファ回路74の代わりに3個の入力部を有するオア回路71が設けられている。そして、電気信号発生ユニット31A,31Bに接続された整流スタック61,62の出力端子61c,62cに生じるWW出力7Aがオア回路71の第1入力部に供給されている。また、モータ制御部MCの電源部MCEから、通常動作とバックアップ動作との切り替えを示す切り替え信号7NDがオア回路71の第2入力部及び計数器67の切り替え信号入力部に供給されている。さらに、計数器67から計数動作が終了したことを示すための処理完了信号7TCがオア回路71の第3入力部に供給されている。WW出力7A、切り替え信号7ND、及び処理完了信号7TCの少なくとも一つがHレベル(ハイレベル)になると、オア回路71の出力はHレベルになり、WW出力7A、切り替え信号7ND、及び処理完了信号7TCの全部がLレベル(ローレベル)になると、オア回路71の出力はLレベルになる。オア回路71の出力はイネーブル信号7Bとしてアンド回路72の第1入力部及びレギュレータ63の制御端子63aに供給されている。アンド回路72の出力信号7Eは遅延回路73を介してリセット信号7Rとして計数器67及び不揮発性メモリ68に供給される。オア回路71、アンド回路72、及び遅延回路73から信号リレー回路75Aが構成されている。
【0075】
電源部MCEは、基本的には第1の実施形態と同様に、例えば交流電源(不図示)から得られる電力で図1のモータMを駆動するとともに、その電力から得られる直流電圧をバッテリ32の二次電池37に供給する。さらに、本実施形態では一例として、電源部MCEは、通常動作では、切り替え信号7NDをHレベルに設定し、直流電圧をバッテリ32の二次電池37に供給し、二次電池37の電力が電源切替器38を介してレギュレータ63の入力端子63bに供給される。この際に、オア回路71のイネーブル信号7BがHレベルになっているため、レギュレータ63は連続的にオン状態となり、電源線PLの電位は連続的にHレベルになる。このため、磁気検出部12、計数器67、及び不揮発性メモリ68は連続的に作動している。また、切り替え信号7NDは計数器67にも供給されているため、計数器67では、切り替え信号7NDがHレベルであることから、現在の状態が通常動作であることを認識できる。この場合、計数器67では、一例として所定のサンプリングレートでアナログコンパレータ65,66の出力を取り込んで回転軸SFの多回転の回転情報を求め、求めた情報を不揮発性メモリ68に書き込む。
【0076】
バックアップ動作では、一例として電源部MCE(主電源)がオフとなり、図1のモータM(回転軸SF)の駆動が停止され、電源部MCEからバッテリ32に対する電力の供給が停止される。この際に、電源部MCEでは切り替え信号7NDをLレベルに設定する。これによって、計数器67では通常動作からバックアップ動作に切り替わったことを認識できる。バックアップ動作では、バッテリ32の電力の消費量を抑制するため、電気信号発生ユニット31A,31BのWW出力7Aが所定の閾値以上になっている期間でレギュレータ63をオンにして、その期間内で磁気検出部12、計数器67、及び不揮発性メモリ68に電力を供給して回転軸SFの回転情報を求める。
【0077】
ただし、通常動作からバックアップ動作に移行する際に、最初にWW出力7Aが立ち上がったタイミングで磁気検出部12等に電力を供給できない恐れがある。そこで、本実施形態では、切り替え信号7NDがLレベルに設定されたときに、計数器67では処理完了信号7TCをHレベルに設定して、レギュレータ63をオンにして、磁気検出部12等に電力を供給させる。なお、通常動作時には、一例として処理完了信号7TCは常にHレベルであってもよい。その後、回転情報が求められた後、計数器67では切り替え信号7NDをLレベルに設定する。この後は上述のバックアップ動作に円滑に移行できる。これ以外の本実施形態の構成は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0078】
次に、本実施形態のエンコーダ装置ECAにおいて、例えば回転軸SFを高速回転している状態から電源部MCE(主電源)をオフにして、通常動作からバックアップ動作に移行する場合の動作の一例につき、図9のフローチャート及び図10の波形図を参照して説明する。この動作は、例えば電源部MCEがオンで回転軸SFが高速回転している状態で、非常停止等で電源部MCEがオフになり、その状態から回転軸SFが慣性で高速回転から停止状態に移行するような場合に発生する。
【0079】
まず、図9のステップ120において、電源部MCE(主電源)がオフになり、切り替え信号7NDがLレベルになる(図10(A)参照)。これに応じてステップ122で、計数器67は処理完了信号7TCをHレベルに設定する(図10(B)参照)。この後、ステップ104で、オア回路71のイネーブル信号7BがHレベルになり、レギュレータ63が作動し、電源線PLの電位がHレベルになり、アンド回路72の信号7EがHレベルになる。そして、ステップ106で、所定時間経過後にリセット信号7RがHレベルになり(図10(C)参照)、ステップ108において計数器67及び不揮発性メモリ68が作動を開始し、ステップ110において、計数器67が回転情報(上述のアップ信号又はダウン信号)を不揮発性メモリ68に書き込む。これによって電源オフ時の回転情報のバックアップが完了する。
【0080】
その後、ステップ124で、計数器67は処理完了信号7TCをLレベルに設定し(図10(B)参照)、ステップ112において、計数器67は放電信号7DをHレベルに設定し(図10(E)参照)、これに応じてスイッチング素子70が導通してWW出力7Aが低下する(電気信号発生ユニット31A,31Bが放電される)。そして、オア回路71のイネーブル信号7BがLレベルになり、ステップ116において、レギュレータ63がオフ(作動停止)になり、アンド回路72の出力7EがLレベルになる。そして、ステップ118において、リセット信号7RがLレベルになり(図10(C)参照)、計数器67及び不揮発性メモリ68が作動停止になる。その後、動作は図6のステップ102に移行する。そして、WW出力7Aが立ち上がると、図6のステップ104~118の動作が繰り返される。
【0081】
この動作によれば、回転軸SFが高速回転中に電源部MCE(主電源)がオフになった時点の直前又は直後等に、WW出力7Aが立ち上がったような場合でも、計数器67の処理完了信号7TCによってオア回路71のイネーブル信号7Bが確実にHレベルになり、レギュレータ63がオンになって磁気検出部12等に電力が供給され、回転軸SFの回転情報が求められて不揮発性メモリ68に書き込まれる。そして、この後でWW出力7Aが立ち上がると、第1の実施形態の間欠動作シーケンスと同様にバッテリ32の電力を効率的に使用して回転軸SFの回転情報が求められる。そのため、回転軸SFが高速回転していても、通常動作から間欠動作シーケンスに円滑に移行できる。
【0082】
上述のように、本実施形態に係るエンコーダ装置ECAは、電源部MCEから電力が供給されて回転軸SF(移動部)の回転位置情報を検出する位置検出系1(位置検出部)と、回転軸SFの回転によって回転する磁石11と、磁石11の回転に伴う磁界の変化によってWW出力7A(電気信号)を発生する電気信号発生ユニット31A(電気信号発生部)と、WW出力7Aによりバッテリ32(又は電源部MCE)からの電力を位置検出系1に供給するレギュレータ63(電力供給部)と、を備えている。さらに、エンコーダ装置ECAの位置検出系1は、電源部MCEからの電力の供給が絶たれると(その電力又は電源部MCEがオフになるときに)、WW出力7Aによるレギュレータ63からの電力が供給されるまでにその回転位置情報の検出を行うようにしている。
【0083】
また、本実施形態に係るエンコーダ装置ECAの使用方法は、位置検出系1が、電源部MCEからの電力の供給が絶たれると(その電力がオフになるときに)、WW出力7Aによるレギュレータ63からの電力が供給されるまでにその回転位置情報の検出を行うステップ122,108,110,124を含んでいる。
本実施形態によれば、回転軸SFが高速回転中に電源部MCEがオフになった場合でも、例えば計数器67の処理完了信号7TCによってレギュレータ63がオンになって位置検出系1の磁気検出部12等に電力が供給され、回転軸SFの回転情報が求められて記憶される。そのため、電源部MCEがオフになっても、そのときの回転軸SFの回転情報を正確に求めて記憶した後、電気信号発生ユニット31AのWW出力7Aを用いてレギュレータ63の動作を制御する間欠動作シーケンスに円滑に移行できる。
また、電気信号発生ユニット31Aは、磁石11の回転に伴う磁界の変化によって磁気特性が変化する感磁性部41Aを有し、感磁性部41Aの磁気特性に基づいてWW出力7Aを発生しており、信号リレー回路75A(信号出力部)を備え、電源部MCEがオフになったときに、レギュレータ63を作動させて、バッテリ32の出力を平滑化して位置検出系1に供給している(ステップ120,122,104)。その感磁性部41A及び信号リレー回路75Aによる効果等は第1の実施形態と同様である。
【0084】
なお、本実施形態において、計数器67がレギュレータ63を作動させるための処理完了信号7TCを出力しているため、円滑に電気信号発生ユニット31A,31Bの出力を利用できる。なお、処理完了信号7TCを出力する素子は必ずしも計数器67である必要はない。
また、上述の各実施形態においては、図3(A)に示すように、電気信号発生ユニット31Aの第1、第2磁性体45A,46Aの先端部が、磁石11の表面(N極16A~S極16D)及び裏面(S極17A~N極17D)の同じ角度位置で互いに異なる極性の部分の近傍に配置されているため、電気信号発生ユニット31Aをさらに小型化できる。なお、図3(D)及び(E)に示す変形例の電気信号発生ユニット31Cのように、感磁性部材47の一端側の第1磁性体45Cの先端部を磁石11の表面のある極性の部分(例えばN極16A又はS極16B等)の近傍に配置し、感磁性部材47の他端側の第2磁性体46Cの先端部を磁石11の表面の異なる極性の部分(例えばS極16D又はN極16A等)の近傍に配置してもよい。この場合、第1、第2磁性体45C,46Cは、回転方向において異なる位置にある磁石11の互いに異なる極性の2つの部分(例えばN極16A及びS極16D)からの磁力線を感磁性部材47の長さ方向に導いている。電気信号発生ユニット31Cにおいても、磁石11から第1磁性体45C、感磁性部材47、及び第2磁性体46Cを通るように磁気回路MC2が形成されるため、磁石11の側面の不要な磁界に影響されることなく、磁石11の回転による交流磁界の反転によって、感磁性部材47が効率的に安定したパルスを出力できる。なお、磁石11の構成は任意であり、電気信号発生ユニット31A,31Bの構成も任意である。
【0085】
また、上述の実施形態では2つの電気信号発生ユニット31A,31Bが設けられているが、エンコーダ装置EC,ECAは1つの電気信号発生ユニット31Aを備えるのみでもよい。さらに、エンコーダ装置EC,ECAは、3つ以上の電気信号発生ユニットを備えてもよい。
なお、上述の実施形態のように、複数の電気信号発生ユニットが設けられる場合に、電気信号発生ユニット31Aから出力される電力は、多回転情報を検出するための検出信号として利用されてもよいし、検出系などへの供給に利用されてもよい。
【0086】
なお、上述の第1実施形態において、磁石11は、周方向に4極と厚さ方向に2極とを有する8極の磁石であるが、このような構成に限定されず適宜変更できる。例えば、磁石11は、周方向の極数が2極又は4極以上であってもよい。
なお、上述の実施形態において、位置検出系1は、位置情報として回転軸SF(移動部)の回転位置情報を検出するが、位置情報として所定方向の位置、速度、加速度の少なくとも一つを検出してもよい。エンコーダ装置EC,ECAは、ロータリーエンコーダを含んでもよいし、リニアエンコーダを含んでもよい。また、エンコーダ装置EC,ECAは、発電部及び検出部が回転軸SFに設けられ、磁石11が移動体(例えば回転軸SF)の外部に設けられることで、磁石と検出部との相対位置が移動部の移動に伴って変化するものでもよい。また、位置検出系1は回転軸SFの多回転情報を検出しなくてもよく位置検出系1の外部の処理部により多回転情報を検出してもよい。
【0087】
上述の実施形態において、電気信号発生ユニット31A,31Bは、磁石11と所定の位置関係となった際に電力(電気信号)を発生する。位置検出系1は電気信号発生ユニット31A,31Bに発生する電力(信号)の変化を検出信号に用いて、移動部(例、回転軸SF)の位置情報(例えば多回転情報又は角度位置情報を含む回転位置情報)を検出(計数)してもよい。例えば、電気信号発生ユニット31A,31Bをセンサ(位置センサ)として用いてもよく、位置検出系1は、電気信号発生ユニット31A,31B及び1つ以上のセンサ(例えば、磁気センサ、受光センサ)により、移動部の位置情報を検出してもよい。また、電気信号発生ユニットの数が2つ以上である場合、位置検出系1は、2つ以上の電気信号発生ユニットをセンサとして用いて位置情報を検出してもよい。例えば、位置検出系1は、2つ以上の電気信号発生ユニットをセンサとして用い、磁気センサを用いないで移動部の位置情報を検出してもよいし、受光センサを用いないで移動部の位置情報を検出してもよい。また、上記の磁気センサと同様に、位置検出系1は、2つ以上の電気信号発生ユニットをセンサとして用いて、2つ以上の電気信号に基づいて回転軸SFの回転方向を判別してもよい。
【0088】
また、電気信号発生ユニット31A,31Bは、位置検出系1で消費される電力の少なくとも一部を供給してもよい。例えば、電気信号発生ユニット31A,31Bは、位置検出系1のうち消費電力が相対的に小さい処理部に対して、電力を供給してもよい。また、電気供給系2は、位置検出系1の一部に対して電力を供給しなくてもよい。例えば、電力供給系2は、検出部13に間欠的に電力を供給し、記憶部14へ電力を供給しなくてもよい。この場合、電力供給系2の外部に設けられる電源、バッテリなどから記憶部14に対して、間欠的または連続的に電力が供給されてもよい。発電部は、大バルクハウゼンジャンプ以外の現象により電力が発生するものでもよく、例えば移動部(例えば回転軸SF)及び位置検出系1の一部に対して電力を供給しなくてもよい。例えば、電力供給系2は、検出部13に間欠的に電力を供給し、記憶部14へ電力を供給しなくてもよい。この場合、電力供給系2の外部に設けられる電源、バッテリなどから記憶部14に対して、間欠的または連続的に電力が供給されてもよい。発電部は、大バルクハウゼンジャンプ以外の現象により電力が発生するものでもよく、例えば移動部(例えば回転軸SF)の移動に伴う磁界の変化に伴う電磁誘導により、電力を発生するものでもよい。検出部の検出結果を記憶する記憶部は、位置検出系1の外部に設けられてもよく、エンコーダ装置EC,ECAの外部に設けられてもよい。
【0089】
[駆動装置]
駆動装置の一例について説明する。図11は、駆動装置MTRの一例を示す図である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。この駆動装置MTRは、電動モータを含むモータ装置である。駆動装置MTRは、回転軸SFと、回転軸SFを回転駆動する本体部(駆動部)BDと、回転軸SFの回転位置情報を検出するエンコーダ装置ECとを有している。なお、エンコーダ装置ECの代わりにエンコーダ装置ECAを備えていてもよい。
【0090】
回転軸SFは、負荷側端部SFaと、反負荷側端部SFbとを有している。負荷側端部SFaは、減速機など他の動力伝達機構に接続される。反負荷側端部SFbには、固定部を介してスケールSが固定される。このスケールSの固定とともに、エンコーダ装置ECが取り付けられている。エンコーダ装置ECは、上述した実施形態、変形例、あるいはその組み合わせに係るエンコーダ装置である。
【0091】
この駆動装置MTRは、エンコーダ装置ECの検出結果を使って、図1に示したモータ制御部MCが本体部BDを制御する。駆動装置MTRは、エンコーダ装置ECのバッテリ交換の必要性が無いもしくは低いので、メンテナンスコストを減らすことができる。なお、駆動装置MTRは、モータ装置に限定されず、油圧や空圧を利用して回転する軸部を有する他の駆動装置であってもよい。
【0092】
[ステージ装置]
ステージ装置の一例について説明する。図12は、ステージ装置STGを示す。このステージ装置STGは、図11に示した駆動装置MTRの回転軸SFのうち負荷側端部SFaに、回転テーブル(移動物体)TBを取り付けた構成である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。
【0093】
ステージ装置STGは、駆動装置MTRを駆動して回転軸SFを回転させると、この回転が回転テーブルTBに伝達される。その際、エンコーダ装置ECは、回転軸SFの角度位置等を検出する。従って、エンコーダ装置ECからの出力を用いることにより、回転テーブルTBの角度位置を検出することができる。なお、駆動装置MTRの負荷側端部SFaと回転テーブルTBとの間に減速機等が配置されてもよい。
【0094】
ステージ装置STGは、エンコーダ装置ECのバッテリ交換の必要性が低い又は無いので、メンテナンスコストを減らすことができる。なお、ステージ装置STGは、例えば、旋盤等の工作機械に備える回転テーブル等に適用できる。
[ロボット装置]
ロボット装置の一例について説明する。図13は、ロボット装置RBTを示す斜視図である。なお、図13には、ロボット装置RBTの一部(関節部分)を模式的に示した。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。このロボット装置RBTは、第1アームAR1と、第2アームAR2と、関節部JTとを有している。第1アームAR1は、関節部JTを介して、第2アームAR2と接続されている。
【0095】
第1アームAR1は、腕部101、軸受101a、及び軸受101bを備えている。第2アームAR2は、腕部102及び接続部102aを有する。接続部102aは、関節部JTにおいて、軸受101aと軸受101bの間に配置されている。接続部102aは、回転軸SF2と一体的に設けられている。回転軸SF2は、関節部JTにおいて 軸受101aと軸受101bの両方に挿入されている。回転軸SF2のうち軸受101bに挿入される側の端部は、軸受101bを貫通して減速機RGに接続されている。
【0096】
減速機RGは、駆動装置MTRに接続されており、駆動装置MTRの回転を例えば100分の1等に減速して回転軸SF2に伝達する。図13に図示しないが、駆動装置MTRの回転軸SFのうち負荷側端部SFaは、減速機RGに接続されている。また、駆動装置MTRの回転軸SFのうち反負荷側端部SFbには、エンコーダ装置ECのスケールSが取り付けられている。
【0097】
ロボット装置RBTは、駆動装置MTRを駆動して回転軸SFを回転させると、この回転が減速機RGを介して回転軸SF2に伝達される。回転軸SF2の回転により接続部102aが一体的に回転し、これにより第2アームAR2が、第1アームAR1に対して回転する。その際、エンコーダ装置ECは、回転軸SFの角度位置等を検出する。従って、エンコーダ装置ECからの出力により、第2アームAR2の角度位置を検出することができる。
【0098】
ロボット装置RBTは、エンコーダ装置ECのバッテリ交換の必要性が無いもしくは低いので、メンテナンスコストを減らすことができる。なお、ロボット装置RBTは、上記の構成に限定されず、駆動装置MTRは、関節を備える各種ロボット装置に適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1…位置検出系、3…多回転情報検出部、4…角度検出部、11,11A…磁石、12…磁気検出部、13…検出部、14…記憶部、21…発光素子(照射部)、22…受光センサ(光検出部)、31A,31B…電気信号発生ユニット、32…バッテリ、33…切替部、36…一次電池、37…二次電池、41A,41B…感磁性部、42A,42B…発電部、43A,43B…ケース、45A…第1磁性体、46A…第2磁性体、47…感磁性部材、51,52…磁気センサ、63…レギュレータ、67…計数器、70…スイッチング素、71…オア回路、72…アンド回路、73…遅延回路、75,75A…信号リレー回路、EC,ECA…エンコーダ装置、SF…回転軸、AR1…第1アーム、AR2…第2アーム、MTR…駆動装置、RBT…ロボット装置、STG…ステージ装置
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