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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-26
(45)【発行日】2023-11-06
(54)【発明の名称】鉄道車両の車軸の監視
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/04 20060101AFI20231027BHJP
   B61K 9/04 20060101ALI20231027BHJP
   G01M 17/10 20060101ALI20231027BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231027BHJP
【FI】
B61L25/04
B61K9/04
G01M17/10
B60L3/00 N
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020543720
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018079511
(87)【国際公開番号】W WO2019081770
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】1717699.1
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522264319
【氏名又は名称】ヒタチ、レイル、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI RAIL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ガイ、ラシュトン
(72)【発明者】
【氏名】レンファン、ルオ
(72)【発明者】
【氏名】アダム、ワゼンツク
(72)【発明者】
【氏名】マーク、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マット、ジョーンズ
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0208841(US,A1)
【文献】特開2013-169965(JP,A)
【文献】特開2007-192828(JP,A)
【文献】特開2001-080481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/04
B61K 9/04
G01M 17/10
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の輪軸組立体の車軸を、運転中にリアルタイムで監視するための装置であって、
前記装置は、
輪軸組立体に取り付けられた無線センサノードを備え、
前記輪軸組立体は、対向する車輪の間に搭載された車軸を含み、
各車輪は、前記車軸の対向するそれぞれの端部に取り付けられ、
前記無線センサノードは、前記輪軸組立体の振動からの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するための振動エネルギーハーベスターと、パラメータを測定するためのセンサと、測定された前記パラメータまたは測定された前記パラメータに関連するデータを無線送信するための無線送信機とを含み、
前記装置は、処理されたデータを生成するために、測定された前記パラメータを処理するためのプロセッサを更に備え、
前記センサは、前記車軸の端部に搭載された加速度計であり、
前記センサおよび前記プロセッサは、それぞれ、前記車軸に沿った共振振動の形態である、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による前記車軸の振動周波数を、運転中にリアルタイムで測定および処理するように配置されており、
前記共振振動は、対向する前記車輪の間に搭載された前記車軸を含む前記輪軸組立体の共振周波数で発生する、装置。
【請求項2】
前記車軸に沿った共振振動は、1000から2000Hzの周波数範囲内にある、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数範囲は、1250から1750Hzである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記無線センサノードと一体であり、
前記無線送信機は、処理された前記データを無線で送信するように配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動のための基準値を予め決定する基準値モジュールと、
既定の基準値に対して、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による現在の共振振動を比較する基準値比較モジュールと、
比較することにより、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による現在の共振振動のパラメータを決定するための分析モジュールとを含み、
前記パラメータは、前記処理されたデータの一部を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記無線センサノードは、監視期間の間、連続的に作動されることにより、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動を連続的に測定するとともに、基準値に対して常に、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動を連続的に比較する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記鉄道車両からかけられる前記車軸への負荷に関連する既定の参照周波数値に対して、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の周波数を比較するための比較モジュールと、比較することに基づいて、前記鉄道車両からかけられる前記車軸への負荷を計算する計算モジュールとを含む負荷計算モジュールを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、2つの前記無線センサノードを備え、
各無線センサノードは、前記車軸の対向するそれぞれの端部に取り付けられ、
各無線センサノードは、前記車軸のそれぞれの端部に搭載された加速度計であるセンサを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、
第1の無線センサノードの前記センサによって測定された、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の第1の周波数を、第2の無線センサノードの前記センサによって測定された、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の第2の周波数に対して比較するための、前記プロセッサ内の測定比較モジュールと、
比較することに基づいて、前記車軸に沿った前記共振振動を計算するための、前記プロセッサ内の比較出力モジュールと、を更に含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記測定比較モジュールは、前記第1の無線センサノードおよび前記第2の無線センサノードのそれぞれの前記センサによって測定された、前記車軸に沿った共振振動であって、前記車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の1つ以上の高調波周波数の異なる比率を比較する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記鉄道車両は、機関車、客車または貨物車両若しくは貨車である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
鉄道車両の輪軸組立体の車軸を、運転中にリアルタイムで監視するための方法であって、
前記輪軸組立体は、対向する車輪の間に搭載された車軸を含み、
各車輪は、前記車軸の対向するそれぞれの端部に取り付けられ、
前記方法は、
a.前記輪軸組立体に取り付けられた無線センサノードを提供するステップであって、
前記無線センサノードが、
前記輪軸組立体の振動からの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するための振動エネルギーハーベスターと、
パラメータを測定するためのセンサであって、前記車軸の端部に搭載された加速度計であるセンサと、
測定された前記パラメータまたは測定された前記パラメータに関連するデータを無線送信するための無線送信機とを含む、ステップと、
b.前記鉄道車両が動いている間に、前記振動エネルギーハーベスターが、前記無線送信機に電力を供給するために、電気的エネルギーに変換される入力振動エネルギーを受けるステップと、
c.前記鉄道車両が動いている間に、前記センサを使用して、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による前記車軸の共振振動周波数を、リアルタイムで測定するステップであって、前記センサが、前記車軸に沿った共振振動を測定し、前記共振振動は、対向する前記車輪の間に搭載された前記車軸を含む前記輪軸組立体の共振周波数で発生する、ステップと、
d.前記鉄道車両が動いている間に、前記無線送信機を使用して、前記車軸に沿った共振振動における測定された前記車軸の共振振動周波数であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動周波数または測定された前記共振振動周波数に関連するデータを無線送信するステップと、
e.処理されたデータを生成するために、前記車軸に沿った共振振動における測定された前記車軸の共振振動周波数であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動周波数を処理するステップと、を備える、方法。
【請求項13】
前記車軸に沿った共振振動は、1000から2000Hzの周波数範囲内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記周波数範囲は、1250から1750Hzである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(e)において、前記無線センサノードと一体であるプロセッサによって、前記処理されたデータが処理され、
前記ステップ(d)において、前記処理されたデータが無線送信される、請求項12乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記処理するステップ(e)は、ステップ(c)およびステップ(d)とリアルタイムで同時に実行される、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記処理するステップ(e)は、
(i)前記車軸に沿った共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動のための既定の基準値に対して、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による現在の共振振動を比較するサブステップと、
(ii)比較することにより、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による現在の共振振動のパラメータを決定するサブステップであって、前記パラメータが、前記処理されたデータの一部を含むサブステップとを含む、請求項12乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無線センサノードは、監視期間の間、連続的に作動されることにより、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動を連続的に測定し、
前記ステップ(e)において、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動は、常に、既定の基準値に対して連続的に比較される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理するステップ(e)は、
(I)前記鉄道車両からかけられる前記車軸への負荷に関連する既定の参照周波数値に対して、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の周波数を比較するサブステップと、
(II)比較することに基づいて、前記鉄道車両からかけられる前記車軸への負荷を計算するサブステップとを含む、請求項12乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップ(a)において、
2つの前記無線センサノードが、前記輪軸組立体に取り付けられており、
各無線センサノードは、前記車軸の対向するそれぞれの端部に取り付けられ、
各無線センサノードは、前記車軸のそれぞれの端部に搭載された加速度計であるそれぞれのセンサを含み、
各無線センサノードは、測定された前記車軸の共振振動周波数であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動周波数に対するデータを提供するために、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による前記車軸のそれぞれの共振振動周波数値を測定するように作動される、請求項12乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記処理するステップ(e)は、
(x)第1の無線センサノードの前記センサによって測定された、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の第1の周波数を、第2の無線センサノードの前記センサによって測定された、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の第2の周波数に対して比較するサブステップと、
(y)比較することに基づいて、前記車軸に沿った前記共振振動を計算するサブステップとを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
サブステップ(x)は、前記第1の無線センサノードおよび前記第2の無線センサノードのそれぞれの前記センサによって測定された、前記車軸に沿った前記車軸の共振振動であって、車輪/線路の接触面からの前記輪軸組立体への衝撃による共振振動の1つ以上の高調波周波数の異なる比率を比較することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記鉄道車両は、機関車、客車または貨物車両若しくは貨車である、請求項12乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための装置を提供する。また、本発明は、鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の車軸の破損は、鉄道の歴史を通じて重大な鉄道事故の原因の1つであり、金属疲労に対する調査が始められている。運転中における鉄道の車軸の破損を防止するためには、車軸の検査を実行するとともに、車軸の亀裂を検査した後に車軸の端部の装置を誤って再組み立てした場合には損傷を修復する、といった重要な追加のメンテナンス作業が発生する。
【0003】
運転中または最小限の介入によるメンテナンス中に、車軸の亀裂の形成を調査する重要な作業があるが、車軸の亀裂の監視装置を(運転中に)大規模に展開することに成功した試験はない。これは、部分的には、目標の亀裂に依存する測定が、運転中の列車に存在する他の全ての騒音との関連で実行することが本質的に困難であることが原因であるとともに、エネルギーおよび情報が利用しにくいため、鉄道の車軸の端部の振動と騒音とを監視することが難しいことが原因である。
【0004】
振動エネルギーハーベスターを備え、車軸の端部に搭載された無線センサノードの最近の開発は、この問題の一部を解決している。しかしながら、線路上の車輪の相互作用によって生成される騒音から、車軸の破損による追加の振動を区別することは、両者が所定の速度での車輪の回転から駆動される同一の基本周波数を有するため、依然として困難である。
【0005】
従来技術では、鉄道の車軸の亀裂を測定する従来の取り組みは、車軸が曲がるような破壊による破壊音、または車軸の曲げによって引き起こされる振動、および亀裂が進展するときの振動の変化を検査している。これらの検査は、運転中の検査ではなく、検査リグで行われている。
【0006】
振動式無線センサノード(vibration powered wireless sensor nodes)(WSNs)は、鉄道車両の軸受、線路および車輪の健全さを検出するために使用されている。センサは、上述したように振動を監視するが、監視する周波数は500Hzに制限されている。
【0007】
したがって、当該技術分野では、知られた装置および方法と比較して、改善された測定を提供することができる、鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための装置および方法の必要性がある。
【0008】
また、当該技術分野では、運転中の車軸の状態を、好ましくはリアルタイムで監視することができる、鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための装置および方法の必要性がある。
【0009】
さらに、当該技術分野では、運転中の車軸の状態を監視することができるとともに、車軸についての少なくとも1つの追加の作動パラメータまたは動作パラメータを、再び運転中、好ましくはリアルタイムで提供することができる、鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための装置および方法の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、少なくとも部分的に、これらの必要性の1つ以上を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、
鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための装置を提供し、
前記装置は、
輪軸組立体に取り付けられた無線センサノードを備え、
前記輪軸組立体は、対向する車輪の間に搭載された車軸を含み、
各車輪は、前記車軸の対向するそれぞれの端部に取り付けられ、
前記無線センサノードは、前記輪軸組立体の振動からの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するための振動エネルギーハーベスターと、パラメータを測定するためのセンサと、測定された前記パラメータまたはそれに関連するデータを無線送信するための無線送信機とを含み、
前記装置は、処理されたデータを生成するために、測定された前記パラメータを処理するためのプロセッサを更に備え、
前記センサは、前記車軸の端部に搭載された加速度計であり、
前記センサおよび前記プロセッサは、それぞれ、前記車軸に沿った共振振動の形態である、車軸の衝突による振動周波数(axle percussion vibration frequency)を測定および処理するように配置されている。
【0012】
また、本発明は、
鉄道車両の輪軸組立体の車軸を監視するための方法を提供し、
前記輪軸組立体は、対向する車輪の間に搭載された車軸を含み、
各車輪は、前記車軸の対向するそれぞれの端部に取り付けられ、
前記方法は、
a.前記輪軸組立体に取り付けられた無線センサノードを提供するステップであって、
前記無線センサノードが、
前記輪軸組立体の振動からの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するための振動エネルギーハーベスターと、
パラメータを測定するためのセンサであって、前記車軸の端部に搭載された加速度計であるセンサと、
測定された前記パラメータまたはそれに関連するデータを無線送信するための無線送信機とを含む、ステップと、
b.前記鉄道車両が動いている間に、前記振動エネルギーハーベスターが、前記無線送信機に電力を供給するために、電気的エネルギーに変換される入力振動エネルギーを受けるステップと、
c.前記鉄道車両が動いている間に、前記センサを使用して、前記車軸の衝突による共振振動周波数を測定するステップであって、前記センサが、前記車軸に沿った共振振動を測定するステップと、
d.前記鉄道車両が動いている間に、前記無線送信機を使用して、測定された、前記車軸の衝突による共振振動周波数またはそれに関連するデータを無線送信するステップと、
e.処理されたデータを生成するために、前記車軸に沿った前記共振振動の、測定された、前記車軸の衝突による振動周波数を処理するステップと、を備える。
【0013】
本発明の装置および方法の好ましい特徴は、それぞれの従属請求項に規定されている。
【0014】
本発明の好ましい実施形態の装置および方法は、任意にリアルタイムで運転中の鉄道の車軸の測定を提供するといった問題を解決し、当該測定は、亀裂の検出のためのプロトコルおよび任意に車軸への負荷の測定のためのプロトコルに利用され得る。鉄道車両が線路に沿って移動するとき、車輪とレールとの相互作用による複数の衝撃がある。車軸組立体は、衝撃に応じて振動する。振動エネルギー式の無線センサは、車輪とレールとの相互作用によって刺激された輪軸の鳴動を検出するとともに、振動を分析し、更なる分析のための主要なパラメータを送信する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態の装置および方法は、衝突による振動が運転中の車軸を検査するために使用されることができ、リアルタイムでの測定および分析が、車軸の状態を監視するために使用されることができるとともに、車軸への負荷を測定するために使用されることができる、といった本発明者らによる研究結果に基づいている。
【0016】
衝突による振動は、車輪/線路の接触面からの輪軸組立体への衝撃により発生する。したがって、好ましい実施形態は、車軸の健全さおよび車軸への負荷の変化を検出するために、車輪とレールとの衝撃によって引き起こされた車軸の「鳴動」の影響を利用する。衝突による振動の測定は、振動エネルギーハーベスターを備える加速度計が搭載された車軸の端部を使用して行われる。
【0017】
本発明は、輪軸の運転期間中、リアルタイムで測定された、車輪とレールとの衝撃が、輪軸の振動を引き起こすために使用されることができ、その振動が、車軸の様子または状態、特に車軸における亀裂の有無および/または車軸への負荷を検出するために使用されることができる、といった本発明者らによる研究結果に基づいている。
【0018】
対照的に、知られた車軸検査方法は、車軸の状態および/または車軸への負荷などの作業状態/動作状態を診断するために、衝突による振動、特に輪軸の運転期間中、リアルタイムで測定された衝突による振動を使用しない。
【0019】
上述したように、従来技術では、振動式無線センサノード(WSNs)が鉄道車両の軸受、線路および車輪の健全さを検出するために使用され、センサが振動を監視するが、監視する周波数は500Hzに制限されており、車軸の衝突による振動を検出するためには低すぎる。車軸の検査が予め検査リグで実行されている場合、他の振動モード、特に衝突による振動モードを引き起こすような衝撃はない。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、衝突による振動モードは、典型的には1000から2000Hz、より典型的には1250から1750Hzの周波数範囲内にあり、例えば約1500Hzである。これらの周波数は、鉄道車両の軸受、線路および車輪の健全さを検出するために使用される知られた振動式無線センサノード(WSNs)で使用される最大500Hzの周波数よりも高くなっている。
【0021】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例示として説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態による鉄道車両の輪軸組立体の構成要素を監視するための装置を示す概略端面図である。
図2図2は、図1に示す装置の処理システムを示す概略図である。
図3図3は、図1に示す装置のセンサが、運転中の旅客列車からの高帯域振動測定(high bandwidth vibration measurements)に使用されたときの、センサの出力を表す概略グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1乃至図3を参照すると、鉄道車両8の輪軸組立体6の構成要素4を監視するための装置2が示されている。鉄道車両8は、機関車、客車または貨物車両若しくは貨車であってもよい。輪軸組立体6は、監視される構成要素であって、対向する車輪10、12の間に搭載された車軸4を含んでいる。各車輪10、12は、車軸4の対向するそれぞれの端部14、16に取り付けられている。走行時には、車輪10、12は、鉄道の線路54のそれぞれのレール50、52上を走行する。
【0024】
無線センサノード18は、輪軸組立体6に取り付けられている。図示された実施形態では、無線センサノード18は、輪軸組立体6の振動からの機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するための振動エネルギーハーベスター20を備えている。センサ22は、パラメータを測定するために設けられ、特に、センサ22は、車軸4の端部14、16に搭載された加速度計である。更なる処理および/または分析のために、測定されたパラメータまたはそれに関連するデータを遠隔地に無線送信するための無線送信機24が設けられている。遠隔地は、検査済みの輪軸組立体6を含む鉄道車両8内であってもよく、または輪軸組立体6を含む、機関車内若しくは列車のその他の車両内であってもよい。通常、列車内の各輪軸組立体6は、本明細書に記載される監視装置を有している。
【0025】
好ましくは、図示されるように、装置2は、2つの無線センサノード18を備えている。各無線センサノード18は、車軸4の対向するそれぞれの端部14、16に取り付けられ、各無線センサノード18は、車軸4のそれぞれの端部14、16に搭載された加速度計である、それぞれのセンサ22を含んでいる。
【0026】
装置2は、処理されたデータを生成するために、測定されたパラメータを処理するためのプロセッサ26を更に備えている。図示された実施形態では、プロセッサ26は無線センサノード18と一体であり、無線送信機24は、処理されたデータを無線で送信するように配置されている。しかしながら、代替の実施形態では、プロセッサ26は、無線センサノード18から離れており、無線送信機24は、処理されたデータを生成するために、プロセッサ26によって遠隔処理される測定されたデータを無線で送信するように配置されている。
【0027】
センサ22およびプロセッサ26は、それぞれ、車軸の衝突による振動、特に、車軸に沿った共振振動の形態である、車軸の衝突による振動を測定および処理するように配置されている。車軸に沿った共振振動は、典型的には1000から2000Hz、より典型的には1250から1750Hzの周波数範囲内にあり、例えば約1500Hzである。
【0028】
センサ22は、衝突による振動を測定し、その測定から、衝突による振動の周波数が決定される。決定される周波数は、車軸の状態と車軸への負荷に依存する。
【0029】
プロセッサ26は、車軸の衝突による振動のための基準値を予め決定する基準値モジュール28と、既定の基準値に対して、車軸の衝突による現在の振動を比較する基準値比較モジュール30と、比較することにより、車軸の衝突による現在の振動のパラメータを決定するための分析モジュール32とを含んでいる。パラメータは、処理されたデータの一部を含んでいる。通常、無線センサノード18は、監視期間の間、連続的に作動されることにより、車軸の衝突による振動を連続的に測定するとともに、基準値に対して常に、車軸の衝突による振動を連続的に比較する。
【0030】
これらの構成要素は、車軸の衝突による振動周波数値が、連続的に測定されることを可能にするとともに、暗騒音を除去または最小限に抑えるように、基準値に対して比較されることを可能にする。測定された周波数値は、リアルタイムかつ輪軸組立体6の運転中に、車軸の状態の兆候を提供するために使用され得る。
【0031】
好ましい実施形態では、プロセッサ26は、車軸への負荷に関連する既定の参照周波数値に対して、車軸の衝突による振動の周波数を比較するための比較モジュール36と、比較することに基づいて、車軸への負荷を計算する計算モジュール37とを含む負荷計算モジュール34を含んでいる。
【0032】
これらの構成要素は、車軸の衝突による振動周波数値が、連続的に測定されることを可能にするとともに、リアルタイムかつ輪軸組立体6の運転中に、車軸への負荷の兆候を提供するために、調整された参照値に対して比較されることを可能にする。
【0033】
上述し、図示されたように、好ましくは、装置2は、2つの無線センサノード18を備えている。これらのノード18は、独立して作動されてもよい。装置2は、第1の無線センサノード18のセンサ22によって測定された、車軸の衝突による振動の第1の周波数を、第2の無線センサノード18のセンサ22によって測定された、車軸の衝突による振動の第2の周波数に対して比較するための、プロセッサ26内の測定比較モジュール38を更に備えていてもよい。プロセッサ26内の比較出力モジュール40は、比較することに基づいて、車軸4に沿った共振振動を計算するために提供される。測定比較モジュール38は、第1の無線センサノード18および第2の無線センサノード18のそれぞれのセンサ22によって測定された、車軸の衝突による振動の1つ以上の調波周波数の異なる比率を比較する。
【0034】
装置2は、輪軸組立体6の構成要素、特に車軸4を監視する方法で使用される。
【0035】
この方法では、上述した無線センサノード18が、輪軸組立体6に取り付けられ、センサ22、特に加速度計が、車軸4の端部14、16に搭載される。上述したように、好ましい実施形態では、2つの無線センサノード18があり、各々が輪軸組立体6に取り付けられ、各それぞれのセンサ22は、車軸4のそれぞれの端部14、16に搭載されている。
【0036】
鉄道車両が動いている間に、振動エネルギーハーベスター20が、無線送信機24に電力を供給するために、電気的エネルギーに変換される入力振動エネルギーを受ける。プロセッサ26が無線センサノード18に組み込まれている場合、振動エネルギーハーベスター20は、プロセッサ26を作動するために、電気的エネルギーを提供してもよい。振動エネルギーハーベスター20は、無線センサノード18の他の構成要素を作動するために、電気的エネルギーを提供してもよい。
【0037】
また、鉄道車両が動いている間や運転期間中、車軸の衝突による振動がセンサ22を使用して測定され、測定された、車軸の衝突による振動またはそれに関連するデータが、無線送信機24を使用して無線送信される。
【0038】
センサは車軸に沿った共振振動を測定し、車軸に沿った共振振動は、典型的には1000から2000Hz、より典型的には1250から1750Hzの周波数範囲内にあり、例えば約1500Hzである。センサ22は、衝突による振動を測定し、その測定から、衝突による振動の周波数が決定される。決定される周波数は、車軸の状態と車軸への負荷に依存する。
【0039】
図3は、装置が運転中の旅客列車からの高帯域振動測定に使用されたときのグラフの例であり、このグラフは、センサ出力dBと周波数Hzとの関係を示している。グラフは、本発明の装置を使用して運転中に検査された特定の輪軸に関するセンサ出力の振動スペクトルを示している。この例では、約1500Hzを中心とする周波数において、明確な振動出力ピークプロファイルが示されている。列車の輪軸の車軸からの衝突による振動は、通常、この範囲に含まれるが、振動出力ピークプロファイルは、車軸と輪軸との間で異なり得る。
【0040】
測定された、車軸の衝突による振動、特に車軸4に沿った共振振動のデータは、衝突による振動の周波数を含み得る処理されたデータを生成するために、無線センサノード18と一体であるか、または無線センサノード18から離れているプロセッサ26によって処理される。
【0041】
処理されたデータが無線センサノード18と一体であるプロセッサ26によって処理されるとき、処理されたデータは無線送信される。
【0042】
プロセッサ26による処理は、車軸の衝突による振動を測定し、車軸の衝突による振動またはそれに関連するデータを送信するための測定ステップおよび送信ステップとリアルタイムで同時に実行される。
【0043】
好ましい実施形態では、処理するステップは、(i)車軸の衝突による振動のための既定の基準値に対して、車軸の衝突による現在の振動を比較するサブステップと、(ii)比較することにより、車軸の衝突による現在の振動のパラメータを決定するサブステップであって、パラメータが、処理されたデータの一部を含むサブステップとを含んでいる。好ましくは、無線センサノードは、監視期間の間、連続的に作動されることにより、車軸の衝突による振動を連続的に測定する。処理の間、車軸の衝突による振動周波数は、常に、既定の基準値に対して連続的に比較される。このようにして、車軸の衝突による振動周波数値は、連続的に測定され、暗騒音を除去または最小限に抑えるように、基準値に対して比較されることが可能になる。そして、車軸の衝突による振動周波数値は、車軸の状態の兆候を提供することができる、車軸の衝突による振動周波数の正確な値を提供することができる。これは、亀裂やその他の欠陥が車軸にあるかどうかを分析するために使用されることができる。
【0044】
この方法および装置は、車軸への負荷を測定するために使用されてもよい。処理するステップ(e)は、好ましくは、(I)車軸への負荷に関連する既定の参照周波数値に対して、車軸の衝突による振動の周波数を比較するサブステップと、(II)比較することに基づいて、車軸への負荷を計算するサブステップとを含んでいる。これは、測定された、車軸の衝突による振動周波数が既定の参照周波数値に対して調整されることを可能にし、車軸への負荷が計算されることを可能にする。
【0045】
装置が、2つの無線センサノード18を備えている場合、各無線センサノード18は、上述したように、車軸4の対向するそれぞれの端部14、16に取り付けられ、各無線センサノード18は、測定された、車軸の衝突による振動に対するデータを提供するために、車軸の衝突によるそれぞれの振動周波数値を測定するように作動される。処理するステップ(e)において、好ましくは、(x)第1の無線センサノード18のセンサ22によって測定された、車軸の衝突による振動の第1の周波数を、第2の無線センサノード18のセンサ22によって測定された、車軸の衝突による振動の第2の周波数に対して比較するサブステップと、(y)比較することに基づいて、車軸に沿った共振振動を計算するサブステップとが存在する。比較は、典型的には、第1の無線センサノード18および第2の無線センサノード18のそれぞれのセンサ22によって測定された、車軸の衝突による振動の1つ以上の調波周波数の異なる比率を比較する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態は、車軸の亀裂の形成の目的においては従来技術では調査されていない振動を監視するために、振動エネルギーハーベスターからの利用可能な電力を利用する装置および関連する方法を提供する。特に、車軸における衝突による振動が監視される。衝突による振動は、共振周波数において、車軸の「鳴動」を引き起こす。共振周波数が変化した場合、または衝突による振動が、所望の共振周波数における車軸の「鳴動」を引き起こさない場合、車軸の潜在的な欠陥が強調されるとともに更に調査され得る。この監視プロトコルは、運転中およびリアルタイムで実施され得る。
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、衝突による振動が車輪とレールとの衝撃によって引き起こされることを提供するとともに、衝突による振動が、組立体が衝撃エネルギーを受けたときに存在する、車輪および車軸組立体を含む輪軸の固有振動、すなわち共振周波数で発生することを提供する。車軸の様子を監視するために車輪とレールとの衝撃によって引き起こされる振動を使用することは、車軸の健全さ/状態を監視することへの新しいアプローチであり、多くの技術的利点を示している。
【0048】
第1に、衝突による振動周波数は車軸への負荷に依存するため、貨物車両と車軸への負荷とを監視することができる。
【0049】
第2に、車軸の様子の小さな変化が、監視可能な振動周波数スペクトルの変化を生み出すため、装置および方法が高感度を有する。
【0050】
第3に、衝突による振動の周波数出力は、システム内の他の振動騒音源よりも高く、典型的には約1500Hzであり、分析されるための騒音のないまたは低騒音の信号を提供する。
【0051】
第4に、衝突による振動周波数は列車の速度に依存しないため、他の騒音源から区別されることができる。
【0052】
第5に、振動式無線センサノード(WSN)からの連続的またはほぼ連続的な監視は、衝突による振動のための基準値の確立を可能にし、任意の車軸のための、衝突による振動周波数における信頼性の高い分析を可能にする。
【0053】
第6に、衝突による振動周波数と知られた負荷との経時的な相関は、衝突による振動周波数の負荷感知能力の調整を可能にし、車軸への負荷が計算されることを可能にする。
【0054】
第7に、車軸の両端部で行われた測定の(例えば、高調波の異なる比率の)比較は、装置の感度を高めることができる。
【0055】
第8に、長期の測定は、衝突による振動周波数の経時的な変化のための一貫した傾向を得ることを可能にし、装置および方法の感度を更に高めて、信頼性の高い、車軸の状態監視および車軸への負荷測定を達成することができる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態に対する様々な修正は、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3