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特許7375855個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】個人認証装置、個人認証方法および個人認証プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/32 20130101AFI20231031BHJP
【FI】
G06F21/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022082198
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2018539708の分割
【原出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2022110122
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2016181898
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】越仲 孝文
(72)【発明者】
【氏名】西光 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】荒川 隆行
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-065363(JP,A)
【文献】特開2007-202869(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F12/14
21/00-21/88
G09C 1/00-5/00
H04K 1/00-3/00
H04L 9/00-9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを識別する第1の識別情報と、前記ユーザを連続的に識別する第2の識別情報と、を格納可能な記憶手段と、
前記ユーザに入力される情報を分析し第1の識別情報を生成する分析手段と、
前記ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出する送出手段と、
前記第1の音響信号が前記ユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測する観測手段と、
前記第1の音響信号および前記第2の音響信号から音響特性を算出する算出手段と、
前記音響特性から前記ユーザに関する音響特徴量を、前記ユーザの第2の識別情報として抽出する抽出手段と、
前記ユーザの同一性を判定する判定手段と、
前記記憶手段を制御する記憶制御手段と、
アプリケーションの動作を制御するアプリケーション制御手段と、を備え、
前記アプリケーションの起動時に、前記判定手段は、前記記憶手段に登録される第1の識別情報と前記生成された第1の識別情報とを照合して、前記ユーザの同一性を判定し、前記記憶制御手段は、前記ユーザが同一であると判定された場合、前記抽出された第2の識別情報を前記記憶手段に登録し、
前記アプリケーションの実行中に、前記判定手段は、前記記憶手段に登録される第2の識別情報と、前記アプリケーションの実行中に抽出された第2の識別情報と、を照合して前記ユーザの同一性を判定し、
前記抽出手段が前記音響特徴量を抽出できない場合に、前記アプリケーション制御手段は前記アプリケーションを終了させる、
個人認証装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記記憶手段に登録された第1の識別情報と前記分析手段によって生成された第1の識別情報とが一致し、前記記憶手段に登録された第2の識別情報と前記抽出手段によって抽出された第2の識別情報とが一致する場合、前記ユーザが登録済ユーザであると判定する、請求項1に記載の個人認証装置。
【請求項3】
前記記憶制御手段は、前記アプリケーションが停止した場合に、前記記憶手段に登録された第2の識別情報を前記記憶手段から削除する、請求項1または2に記載の個人認証装置。
【請求項4】
前記記憶制御手段は、前記記憶手段に登録された第2の識別情報と前記抽出手段によって抽出された第2の識別情報とが不一致の場合に、不正なユーザとして前記抽出手段によって抽出された第2の識別情報を前記記憶手段に登録する、請求項1から3のいずれか一項に記載の個人認証装置。
【請求項5】
前記アプリケーション制御手段は、前記抽出手段が所定回数音響特徴量を取得できない場合に前記アプリケーションを停止する、請求項1から4のいずれか一項に記載の個人認証装置。
【請求項6】
コンピュータが、
ユーザに入力される情報を分析し、前記ユーザを識別する第1の識別情報を生成し、
前記ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出し、
前記第1の音響信号が前記ユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測し、
前記第1の音響信号および前記第2の音響信号から音響特性を算出し、
前記音響特性から前記ユーザに関する音響特徴量を、前記ユーザを連続的に識別する第2の識別情報として抽出し、
アプリケーションの起動時に、
記憶手段に予め登録される第1の識別情報と前記生成された第1の識別情報とを照合して、前記ユーザの同一性を判定し、
前記ユーザが同一であると判定された場合、前記抽出された第2の識別情報を前記記憶手段に登録し、
前記アプリケーションの実行中に、前記記憶手段に登録される第2の識別情報と、前記アプリケーションの実行中に抽出された第2の識別情報と、を照合して前記ユーザの同一性を判定し、
前記音響特徴量を抽出できない場合に、前記アプリケーションを終了させる、
ことを備える個人認証方法。
【請求項7】
ユーザに入力される情報を分析し、前記ユーザを識別する第1の識別情報を生成し、
前記ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出し、
前記第1の音響信号が前記ユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測し、
前記第1の音響信号および前記第2の音響信号から音響特性を算出し、
前記音響特性から前記ユーザに関する音響特徴量を、前記ユーザを連続的に識別する第2の識別情報として抽出し、
アプリケーションの起動時に、
記憶手段に予め登録される第1の識別情報と前記生成された第1の識別情報とを照合して、前記ユーザの同一性を判定し、
前記ユーザが同一であると判定された場合、前記抽出された第2の識別情報を前記記憶手段に登録し、
前記アプリケーションの実行中に、前記記憶手段に登録される第2の識別情報と、前記アプリケーションの実行中に抽出された第2の識別情報と、を照合して前記ユーザの同一性を判定し、
前記音響特徴量を抽出できない場合に、前記アプリケーションを終了させる、
ことをコンピュータに実行させる個人認証プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人を認証するための個人認証装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の個人差に基づいた個人認証(Biometrics-based authentication)は、パスワード等に比べ漏えいや盗難の危険性が低い為、個人を特定し権利を確認する目的や、セキュリティ保護の目的で導入される例が増えている。生体の個人差に基づいた個人認証技術としては、指紋(Fingerprint)、静脈(Vein)、顔(Face)、虹彩(Iris)、音声(Voice)などを用いるものが知られている。この中でも音の情報を使った方式は、特殊なデバイスを用意することなく、電話機やマイクロホンといった汎用的に使用されている安価なデバイスで個人認証を行う事が可能である。
【0003】
特許文献1は、指紋、顔、マウス動作等の組合せを基とするバイオメトリクス認証方式を用いて、ログイン中に、常にユーザを監視する手法について開示する。
【0004】
特許文献2は、使用される機器と互換性を有しかつ容易に機器間認証を実現できる信号伝送装置と、常時に個人認証(生体認証)が出来る個人認証装置について開示する。
【0005】
特許文献3は、外耳の音響特性に基づいて、人間を登録、認証、識別する手法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-13831号公報
【文献】特開2004-65363号公報
【文献】特表2009-509575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に開示されるような、所定の場所または時刻等において行う生体認証には以下のような問題がある。
【0008】
先ず、所定の場所または時刻等において、生体情報を取得して行う個人認証の場合、ユーザに認証を行うための動作を強いるという問題がある。例えば、指紋や静脈を用いた個人認証の場合、専用のスキャナに指を載せるといったユーザの動作が必要である。また、顔や虹彩を用いた個人認証の場合、カメラに顔を向ける等のユーザの動作が必要である。また、音声や骨伝導音を用いた個人認証の場合、パスワードを発声する等のユーザの動作が必要である。このため、ユーザは、認証の都度、心理的および肉体的負担を負う。更に、所定の場所または時刻等において、生体情報を取得して行う個人認証の場合、ユーザ(照合対象者)を連続的に(常時)認証し続けることは困難である。よって、一旦認証した後に、ユーザが、故意に、別の人物にすり替わった場合は、検知ができず、セキュリティ性能が低い。更に、個人情報を識別するための音響特性を堅牢性の高い記憶装置に予め格納しておく必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑み、認証対象となるユーザの心理的および肉体的負担が少なく、簡単にセキュリティを担保できる個人認証装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の観点に係る個人認証装置は、
ユーザを識別する第1の識別情報、および、当該識別以外の手法によってユーザを連続的に識別する第2の識別情報を格納可能な記憶手段と、
ユーザに入力される情報を分析し第1の識別情報を生成する分析手段と、
ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出する送出手段と、
第1の音響信号がユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測する観測手段と、
第1の音響信号および第2の音響信号から音響特性を算出する算出手段と、
音響特性からユーザに関する音響特徴量を第2の識別情報として抽出する抽出手段と、
記憶手段に登録される第1の識別情報と分析手段によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、記憶手段に登録される第2の識別情報と抽出手段から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、ユーザは同一であると判定する判定手段
とを備える。
【0011】
本発明の第1の観点に係る個人認証方法は、
ユーザに入力される情報を分析し、ユーザを識別する第1の識別情報を生成し、
ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出し、
第1の音響信号がユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測し、
第1の音響信号および第2の音響信号から音響特性を算出し、
音響特性からユーザに関する音響特徴量を、ユーザを連続的に識別する第2の識別情報として抽出し、
記憶手段に予め登録される第1の識別情報と分析手段によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、記憶手段に予め登録される第2の識別情報と抽出手段から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、ユーザは同一であると判定する
ことを備える。
【0012】
本発明の第3の観点に係る個人認証プログラムは、
ユーザに入力される情報を分析し、ユーザを識別する第1の識別情報を生成し、
ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出し、
第1の音響信号がユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測し、
第1の音響信号および第2の音響信号から音響特性を算出し、
音響特性からユーザに関する音響特徴量を、ユーザを連続的に識別する第2の識別情報として抽出し、
記憶手段に予め登録される第1の識別情報と分析手段によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、記憶手段に予め登録される第2の識別情報と抽出手段から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、ユーザは同一であると判定する
ことをコンピュータに実行させる。
【0013】
尚、個人認証プログラムは非一時的な記憶媒体に格納されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、認証対象となるユーザの心理的および肉体的負担が少なく、簡単にセキュリティを担保できる個人認証装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる個人認証装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態の個人認証装置の具体的なハードウェア構成例を示す構成図である。
図3】本発明の第1の実施形態の個人認証装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4A】送出音響信号の例を示すグラフである。
図4B】観測音響信号の例を示すグラフである。
図5】音響特性としてのインパルス応答の例を示すグラフである。
図6】本発明の第2の実施形態にかかる個人認証装置の構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の第2の実施形態の個人認証装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施形態にかかる個人認証装置の構成例を示すブロック図である。
図9】本発明にかかる各実施形態を実施するための情報処理装置の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態においては、ユーザを認証するためにID(Identification)情報とパスワード情報とを使用する。ID情報としては、連続的に(常時)認証するにはユーザに過度の負担がかかるが、変化が少なく、一度で高精度の認証ができる情報、例えば、指紋の特徴量、虹彩の特徴量、ユーザが任意に定めたテキスト文字列がある。パスワード情報としては、常時認証してもユーザに過度の負担がかからない情報、例えば、ヘッドホン等を装着した状態での外耳音響特徴量がある。これらの組み合わせにより、簡単に強固なセキュリティを実現することが可能となる。
【0017】
(個人認証装置)
本発明の第1の実施形態に係る個人認証装置100について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態にかかる個人認証装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示す個人認証装置100は、送出部11、観測部12、算出部13、抽出部14、判定部16、記憶部17、アプリケーション制御部18、ID取得部19および分析部20を備える。
【0018】
送出部11は、ユーザの頭部の一部に音響信号を送出する。ここで、音響信号が送出される頭部の一部は、より具体的には、頭部において空洞が形成されている領域であって、装飾品や音響効果を発現させる機器を装着できるまたは近づけることのできる領域の少なくとも一部であってもよい。
【0019】
観測部12は、送出部11から送出された音響信号がユーザの頭部の一部を伝搬した後の音響信号を観測する。また、音響信号の伝搬路とされる頭部の一部は、より具体的には、頭部を構成する頭蓋骨、脳、感覚器およびその間の空洞の少なくとも一部であってもよい。
【0020】
算出部13は、送出部11から送出された音響信号と、観測部12で観測された音響信号とに基づいて、ユーザの頭部の一部を伝搬する音響信号の音響特性を算出する。
【0021】
抽出部14は、算出された音響特性から、認証対象のユーザ(認証対象ユーザ)に関する特徴量を抽出する。特徴量の抽出は、所定の算術演算によって行われてもよい。
【0022】
記憶部17は、ユーザのID情報およびパスワード情報を記憶する。ID情報は、変動することが少なく、一度の認証で高い認証精度を得ることができる識別情報であり、例えば、ユーザの指紋情報(指紋特徴量)、ユーザの虹彩情報(虹彩特徴量)、ユーザが任意に定めたテキスト文字列である。パスワード情報は、ID情報以外の、ユーザを連続的に識別可能な情報であり、例えば、本実施形態においてはユーザの外耳認証情報(音響特徴量)を使用する。
【0023】
ID受付部19は、ユーザからIDとなる情報の入力を受け付ける。受付は、キーボード、スキャナ等の入力装置を介して行われる。例えば、指紋特徴量をID情報とする場合、ユーザの指紋画像をスキャナから読み取る。
【0024】
分析部20は、ID受付部19が取得した情報を、記憶部17に格納されるID情報と照合可能な情報に分析し、分析結果を出力する。例えば、指紋の場合、読み取られた指紋画像を分析し、指紋の特徴量を分析結果として出力する。
【0025】
判定部16は、抽出部14により得られた音響特徴量(パスワード情報)と、記憶部17に格納された音響特徴量とを照合し、これらの特徴量が一致するか否かを判定する。更に、判定部16は、分析部20により得られた指紋特徴量(ID情報)と、記憶部17に格納された指紋特徴量とを照合し、これらの特徴量が一致するか否かを判定する。ID情報およびパスワード情報が一致する場合、判定部16は、当該認証対象ユーザは登録済みユーザ(ユーザ同一)であると判定し、判定結果を出力する。ID情報およびパスワード情報の少なくとも片方が一致しない場合、判定部16は、当該認証対象ユーザは登録済みユーザではないと判定し、判定結果を出力する。
【0026】
アプリケーション制御部18は、アプリケーションプログラムの制御を行う。例えば、アプリケーション制御部18は、判定部16による判定結果が登録済みユーザであればアプリケーションを起動する若しくは起動状態を維持するよう制御し、当該判定結果が登録済みユーザでなければアプリケーションを起動させない若しくは起動中のアプリケーションを終了するよう制御する。
【0027】
ここで、本実施形態におけるアプリケーションとは、アプリケーションを使用するユーザの個人情報(氏名等)を特定すべきであり、かつ、他人への利用を禁止すべきアプリケーション、または、ユーザの不存在を検知したいアプリケーションである。例えば、国家や地域の安全に関わる業務(例えば、警察、警備員、軍隊)において使用する、なりすましを防止すべきアプリケーション、秘匿性のある内容を伝達する無線通信または無線通話に使用する、盗聴を防止すべきアプリケーション、医療現場や工事現場における作業中の作業者を認証すべきアプリケーションがこれに当たる。
【0028】
図2は、図1に示す本実施形態の個人認証装置100を実現する具体的ハードウェア構成例を示す構成図である。個人認証装置100は、例えば、情報処理装置1、サウンドプロセッサ2、マイクロホンアンプ3、イヤホン4およびマイクロホン5を備えている。情報処理装置1は、具体的に、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータである。なお、符号6は、認識対象とされるユーザを示す。
【0029】
パスワード情報(音響特徴量)について説明する。情報処理装置1から伝達される音は、サウンドプロセッサ2でD/A(デジタル/アナログ)変換され、イヤホン4に届けられる。イヤホン4はマイクロホン5を備えている。イヤホン4はユーザの耳に装着または挿入され、マイクロホン5が発する音は耳内で反響し、イヤホン4はその反響音を集音する。集音された反響音は、マイクロホンアンプ3にて増幅された後、サウンドプロセッサ2にてA/D(アナログ/デジタル)変換され、情報処理装置1に伝達される。
【0030】
図2に示すハードウェア構成例において、イヤホン4は送出部11の一例である。また、マイクロホン5、サウンドプロセッサ2およびマイクロホンアンプ3は、観測部12の一例である。図2に示すようにマイクロホン5とイヤホン4は、相対的な位置関係が変化しないよう一体型であることが望ましい。ただし、両者の相対的な位置関係が大きく変わらない場合にはその限りではない。また、ここではイヤホン4とマイクロホン5の例として、外耳道入口の中に挿入する、マイクロホン一体型のイヤホンを挙げているが、両者の実現例としては、耳介を覆うタイプのヘッドホンにマイクロホンを設定したものであってもよい。また、両者を実現する他の例としては、電話機の受話器部分にマイクロホンを設置したものであってもよい。その他、左の外耳道入口に設置したイヤホンで送出した音響信号を、右耳の外耳道入口に設置したマイクロホンで観測する、またはこの反対を行ってもよい。尚、音響特徴量の抽出は、両耳から行っても良いし、右または左の片耳のみから行っても良い。
【0031】
ID受付部19、分析部20、算出部13、抽出部14、判定部16およびアプリケーション制御部18はそれぞれ情報処理装置1中の、プログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)及びメモリにより実現される。
【0032】
また、記憶部17は、情報処理装置1中のハードディスク等の記憶媒体により実現される。尚、ID受付部19においてはIDを入力するための入力装置(スキャナ、キーボード等)が必要となるが、それらは情報処理装置1に備えられているものとする。尚、情報処理装置1に必要な入力装置が備えられていない場合、情報処理装置1に外付けの入力装置を接続してもよい。
【0033】
(個人認証装置の動作)
次に、本実施形態における個人認証装置100の動作の一例について図3に示すフローチャートを参照して説明する。以下の実施形態においては、ユーザのID情報(テキスト文字列、指紋特徴量などの生体情報)およびパスワード情報(音響特徴量)が、システム管理者によって、記憶部17に予め格納されているものとする。
【0034】
ステップS100において、ID受付部19は、ID情報を受け付ける。本実施形態においては、ユーザの指紋がID情報であることを前提として説明する。情報処理装置1の画面より読み取られた指紋画像は、分析部20に送信される。分析部20は当該指紋画像を分析し、指紋の特徴量を分析結果として出力する。
【0035】
ステップS105において、判定部16は、分析結果が記憶部17に格納されるID情報と一致するか判定する。一致する場合、処理はステップS110に進められる。一致しない場合、処理はステップS210に進められる。
【0036】
ステップS110において、ユーザがイヤホン4を耳に装着すると、送出部11は、認証対象となるユーザの頭部の一部に向けて音響信号を送出する。例えば、ステップS110において、イヤホン4が外耳道入口から外耳道に向けて音響信号を送出する。音響信号としては、インパルス応答(Impulse Response)を計測する目的で広く用いられているM系列信号(maximal length sequence)や、TSP(Time Stretched Pulse)信号等を使う方法が考えられる。
【0037】
図4Aは、送出部11が送出する音響信号の例を示すグラフである。図4Aのグラフにおいて、横軸は時刻tを示し、縦軸は時刻tにおける送出された音響信号の信号値x(t)を示す。以下、送出部11が送出した音響信号を、送出音響信号という場合がある。
【0038】
ステップS120において、観測部12は、ステップS110で送出部11から送出された音響信号がユーザの頭部の一部を伝搬した後の音響信号を観測する。例えば、ステップS120において、イヤホン4から伝播された音響信号をマイクロホン5が検出する。検出された音響信号は、マイクロホンアンプ3にて増幅され、サウンドプロセッサ2にてA/D変換され、情報処理装置1に伝送される。
【0039】
図4Bは、観測部12で観測された音響信号の例を示すグラフである。図4Bのグラフにおいて、横軸は時刻tを示し、縦軸は時刻tにおける観測された音響信号の信号値y(t)を示す。以下、観測部12で観測された音響信号を、観測音響信号という場合がある。
【0040】
ステップS130において、算出部13は、送出音響信号と観測音響信号との変化からユーザの頭部の一部の音響特性を算出する。音響特性としては、インパルス応答(Impulse Response)およびインパルス応答をフーリエ変換またはラプラス変換することによって得られる伝達関数(Transfer Function)等が考えられる。音響特性は、例えば、音響信号が生体内でどのように反射および/または減衰するかの情報を含む。例えば、外耳道口にイヤホン4及びマイクロホン5が設置され、外耳道中を反射する音響特性が算出部13によって算出される場合、音響特性として、外耳道インパルス応答(Ear Canal Impulse Response)や外耳道伝達関数(Ear Canal Transfer Function)が用いられてもよい。
【0041】
図5は、算出部13により算出された音響特性としてのインパルス応答の例を示すグラフである。図5に示すグラフにおいて、横軸が時刻tを示し、縦軸が時刻tにおける観測された音響信号のインパルス応答の値g(t)を示す。
【0042】
なお、送出音響信号の信号値x(t)と、観測音響信号の信号値y(t)と、インパルス応答の値g(t)との間には以下の式(1)に示す関係性がある。
【0043】
【数1】
また、x(t),y(t),g(t)をそれぞれフーリエ変換することによって得られた値X(f),Y(f),G(f)間では、以下の式(2)に示す関係性がある。ここで、fは周波数帯域である。また、G(f)は伝達関数である。
【0044】
Y(f)=G(f)X(f) …(2)
ステップS140において、抽出部14は、算出部13により算出された音響特性から音響特徴量を抽出する。音響特徴量には、インパルス応答や伝達関数をそのまま使ってもよい。すなわち、抽出部14は、音響特性としてのインパルス応答の各時刻の値や伝達関数の各周波数の値を音響特徴量とする。また、音響特性としてのインパルス応答や伝達関数に対し、主成分分析を行い次元圧縮することで得られる特徴量、あるいは、非特許文献1に記載されているmfcc(mel-frequency cepstrum coefficients)を音響特徴量に用いることが考えられる。
【0045】
ステップS180において判定部16は、抽出部14により得られた音響特徴量と、記憶部17に格納されている登録済みユーザの音響特徴量とを照合する。
【0046】
ステップS190において、音響特徴量の照合の結果が一致し、認証対象とされたユーザが登録済みユーザ(同一ユーザ)に該当すると判定されると、処理はステップS200へ進められる。照合の結果が一致せず、認証対象とされたユーザが登録済みユーザに該当しないと判定されると、処理はステップS210へ進められる。この判定は1対1認証となる。
【0047】
1対1認証では、認証対象となるユーザと、登録済みユーザとの音響特徴量を1対1で照合する。この場合、予めユーザID(IDentification)などでどの登録済みユーザとの照合を行うかを与えてもよい。照合方法としては、例えば、判定部16は、音響特徴量同士の距離を計算し、距離が閾値よりも小さい場合に同一人であると判定し、距離が閾値よりも大きい場合に異なる人間であると判定してもよい。距離尺度としてはユークリッド距離(Euclid distance)、コサイン距離(cosine distance)等の距離尺度が考えられるが、他の距離を用いてもよい。
【0048】
また、上記では、記憶部17に、予め音響特徴量が保存されている例について説明したが、記憶部17は、音響特徴量の代わりに統計モデルを保存してもよい。統計モデルとしては、1名に対し複数回特徴量を取得して得られる、その平均値と分散値またはそれらを用いて算出された関係式であってもよい。あるいは特許文献1に示されているような、GMM(Gaussian Mixture Model)や、SVM(Support Vector Machine)、ニューラルネットワークを使ったモデル等が考えられる。
【0049】
ステップS200において、判定部16は、所定時間(例えば1秒)が経過するのを待つ。その後ステップS170において、アプリケーション制御部18は、アプリケーションを起動させる。またはアプリケーションが実行中であればそのままの状態にしておき、処理をステップS110へ戻す。
【0050】
ステップS210において、アプリケーション制御部18は、登録済みユーザではないユーザに対してアプリケーションを使用させないように、例えば、使用中のアプリケーションプログラムを終了させる。この際、登録済みユーザではない、不正なユーザの音響特徴量を記憶部17に格納させてもよい。
【0051】
この他、アプリケーション制御部18は、登録済みユーザからの要求により、アプリケーションプログラムを終了させてもよい。または、アプリケーション制御部18は、登録済みユーザがイヤホン4を耳から外したこと等により、抽出部14によって音響特徴量(反響音)が全くまたは殆ど取得できなかったことを契機に、アプリケーションプログラムを終了させてもよい。この場合、判定部16は直ちに照合結果をアプリケーション制御部18に通知するのではなく、数回の照合の後に、何らかの理由で音響特徴量が取得できていないとして、アプリケーション制御部18にアプリケーション停止を通知してもよい。
【0052】
以上で第1の実施形態にかかる個人認証装置100の動作を終了する。
【0053】
本発明の第1の実施形態によると、認証対象となるユーザの心理的および肉体的負担が少なく、簡単にセキュリティを担保できる個人認証装置を提供することができる。これは、アプリケーション起動時のみに行う第1の認証と、アプリケーション実行時に連続的に行う第2の認証とを合わせて行うからである。
【0054】
本実施形態では、第2の認証として、ユーザの頭部の一部を伝搬する音響信号の音響特性が個人毎に異なるという特徴を用いて、個人認証を行っている。ユーザの頭部の一部を伝搬する音響特性は、顔や指紋等の外部から観測可能な特徴とは異なり生体内部の特徴であるため、漏洩する危険性が低く、盗難が困難である。また、音響特性を知るためには、送出音響信号と、観測音響信号の2つが必要なため、盗聴などにより取得され偽造される危険が少ない。また、認証対象のユーザが行う動作は、マイクロホンが埋め込まれたヘッドホンやイヤホンを装着する、もしくは、受話部分にマイクロホンが埋め込まれた携帯電話等を耳にかざすだけであり、ユーザの心理的、肉体的な負担が少ない。また、本実施形態の個人認証方法を音楽配信や、トランシーバ、通話といった音声を伝達する情報配信用デバイスと組み合わせて用いることで、ユーザに対し、追加の肉体的・精神的負担無しに個人認証を提供できる。
【0055】
また、音響特性の取得は1秒程度の短い時間で行うことが可能であり、アプリケーション実行中、ユーザを常時認証することができる。このため、認証を最初の一度または何らかのアプリケーションを使用する直前のみに認証行う場合と比べて、認証後に他人に成り替わる(なりすまし)等の不正があった場合にそれを検知できる。
【0056】
<第2の実施形態>
本発明の第1の実施形態においては2種類の識別情報を用いてユーザを識別したが、識別情報は記憶部に予め格納されていることを前提とした。本発明の第2の実施形態においては、2つの識別情報のうちの片方(ID情報)は原則固定とするが、もう片方(パスワード情報)は変動的とし、同一ユーザであってもアプリケーション実行毎に新たに登録するようにする。これにより更に高いセキュリティ性能を実現することができる。
【0057】
(個人認証装置)
本発明の第2の実施形態に係る個人認証装置200について図面を参照して説明する。図6は、第2の実施形態にかかる個人認証装置200の構成例を示すブロック図である。図6に示す個人認証装置200は、送出部11、観測部12、算出部13、抽出部14、記憶制御部15、判定部16a、記憶部17、アプリケーション制御部18、ID受付部19および分析部20を備える。
【0058】
記憶部17は、ユーザのID情報およびパスワード情報を記憶する。パスワード情報は、ID情報以外の、ユーザを連続的に識別可能な情報であり、例えば、本実施形態においてはユーザの外耳認証情報(音響特徴量)を使用する。尚、本実施形態においては、アプリケーション起動毎に、パスワード情報は更新して記憶される。尚、ID情報も記憶部17に格納されるが、これは認証対象ユーザではなく、システム管理者等が当該ユーザに対応するID情報を登録するものであり、ユーザはシステム管理者を介してしかID情報を変更できないものとする。
【0059】
記憶制御部15は、アプリケーション起動時における認証対象ユーザの登録(以下、これを初回登録と記載することがある)時に、当該ユーザの音響特徴量(パスワード情報)を記憶部17に格納する。更に、各アプリケーションの終了時に、記憶制御部15は、認証対象ユーザの音響特徴量を記憶部17から削除する。即ち、パスワードとなる音響特徴量は、アプリケーション実行毎に、たとえ同一ユーザであっても、記憶および削除される。このように短期間でパスワードを変更する、いわゆるワンタイムパスワード方式が採用される。従って、予め音響特徴量を記憶部17に格納する必要が無い。更に、アプリケーションの実行毎に音響特徴量が記憶部17に記憶されるので、高いセキュリティを担保できる。
【0060】
記憶部17は、認証対象ユーザの初回登録時に、当該ユーザに対応する特徴量を記憶する。以下、記憶部17に特徴量が記憶されているユーザを、登録済みユーザと称呼する場合がある。
【0061】
判定部16aは、抽出部14により得られた音響特徴量(パスワード情報)と、初回登録時に記憶部17に格納された音響特徴量とを照合し、これらの特徴量が一致するか否かを判定する。更に、判定部16aは、分析部20により得られた指紋特徴量(ID情報)と、記憶部17に格納された指紋特徴量とを照合し、これらの特徴量が一致するか否かを判定する。
【0062】
抽出部14による音響特徴量の抽出は、両耳から行っても良いし、右または左の片耳のみから行っても良い。本実施形態においては、認証を必要とする所定動作を行う間、ユーザはイヤホン4の常時装着を要求される。よって、長時間に亘る所定動作である場合、ユーザが耳に痛みや違和感を覚えることも想定される。この場合には、ユーザはイヤホン4を装着する耳をもう片方の耳に適宜変更しても良い。尚、認証する耳の変更時には、後述する初回登録の動作が再度必要となる。
【0063】
ID受付部19、分析部20、算出部13、抽出部14、記憶制御部15、判定部16aおよびアプリケーション制御部18はそれぞれ情報処理装置1中の、プログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)及びメモリにより実現される。また、記憶部17は、情報処理装置1中のハードディスク等の記憶媒体により実現される。
【0064】
その他においては第1の実施形態と同様である。
【0065】
(個人認証装置の動作)
次に、本実施形態における個人認証装置200の動作の一例について図7に示すフローチャートを参照して説明する。以下の実施形態においては、予めユーザのID情報(テキスト文字列、指紋特徴量などの生体情報)が、システム管理者によって、記憶部17に格納されているものとする。
【0066】
ステップS100、S105、S110~S140においては、第1の実施形態(図3)と同様である。
【0067】
ステップS150において、判定部16aは、今回の音響特徴量の抽出が当該ユーザにとって初めての抽出であるかを判断する。具体例として、判定部16aは抽出回数をカウントするためのカウンタメモリを備えたり、記憶部17に音響特徴量(パスワード情報)のデータが存在するかを検索したりすることにより、当該判断を行う。初めての抽出、即ち、初回登録であると判断されると、処理はステップS160へ進められ、初回登録ではない(2回目以上)と判断されると、処理はステップS180へ進められる。
【0068】
初回登録の場合、ステップS160において記憶制御部15は、抽出部14で抽出された音響特徴量を記憶部17に格納する。ステップS170において、アプリケーション制御部18は、記憶部17内に音響特徴量があることを検出すると、アプリケーションプログラムを起動させる。
【0069】
初回登録でない場合、ステップS180において判定部16aは、抽出部14により得られた音響特徴量と、記憶部17に格納されている登録済みユーザの音響特徴量とを照合する。
【0070】
ステップS190において、照合の結果が一致し、認証対象とされたユーザが登録済みユーザに該当すると判定されると、処理はステップS200へ進められる。照合の結果が一致せず、認証対象とされたユーザが登録済みユーザに該当しないと判定されると、処理はステップS210へ進められる。
【0071】
ステップS200において、判定部16aは、所定時間(例えば1秒)が経過するのを待ち、処理をステップS110へ戻す。
【0072】
ステップS210において、アプリケーション制御部18は、登録済みユーザではないユーザに対してアプリケーションを使用させないように、例えば、使用中のアプリケーションプログラムを終了させる。この際、記憶制御部15に、登録済みユーザではない、不正なユーザの特徴量を記憶部17に格納させてもよい。アプリケーション終了の前後、アプリケーション制御部18は、記憶部17内の登録済ユーザの特徴量のデータを消去するよう、記憶制御部15に指示する。記憶制御部15は、アプリケーションプログラム終了の度、登録済ユーザの特徴量のデータを消去する。
【0073】
以上で第2の実施形態にかかる個人認証装置200の動作を終了する。
【0074】
本発明の第2の実施形態によると、認証対象となるユーザの心理的および肉体的負担が少なく、簡単にセキュリティを担保できる個人認証装置を提供することができる。
【0075】
第2の実施形態においては、第1の実施形態の効果に加え、アプリケーション開始毎に記憶部17内にユーザの音響特徴量データを登録し、当該アプリケーション終了毎に、記憶部17内の登録された音響特徴量データを消去する。これにより、パスワードとして使用される音響特徴量データが短時間(一回のアプリケーション使用時間のみ)しか照合対象とならないため、簡単に高いセキュリティを担保できる。
【0076】
更に、片耳認証をしていたユーザが、長時間のアプリケーション使用等により認証に使用していた耳に違和感をもち、もう片方の耳に認証対象を切り替えたい場合でも、情報処理装置1にID情報(音響特徴量)を再度入力することで、容易に認証対象とする耳を切り替えることができる。
【0077】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態にかかる個人認証装置300は、図8に示すように、送出部31、観測部32、算出部33、抽出部34、分析部35、判定部36および記憶部37を備える。図8に示す個人認証装置300の一例は、図1に示す第1の実施形態の個人認証装置100であってもよい。個人認証装置300の他の例は、図6に示す第2の実施形態の個人認証装置200であってもよい。
【0078】
記憶部37は、ユーザを識別する第1の識別情報(ID情報)、および、当該識別以外の手法によってユーザを連続的に識別する第2の識別情報(パスワード情報)を格納可能に設計される。
【0079】
分析部35は、ユーザに入力される情報を分析し第1の識別情報を生成する。
【0080】
送出部31は、ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出する。
【0081】
観測部32は、第1の音響信号がユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測する。
【0082】
算出部33は、第1の音響信号および第2の音響信号から音響特性を算出する。
【0083】
抽出部34は、音響特性からユーザに関する音響特徴量を第2の識別情報として抽出する。
【0084】
判定部36は、記憶部37に登録される第1の識別情報と分析部35によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、記憶部37に登録される第2の識別情報と抽出部34から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、ユーザは同一であると判定する。
【0085】
本発明の第3の実施形態によると、認証対象のユーザの心理的および/または肉体的な負担が少なく、セキュリティ性能が高い個人認証を提供することができる。この理由は、判定部36が、ユーザを識別する第1の識別情報(ID情報)、および、当該識別以外の手法によってユーザを識別する第2の識別情報(パスワード情報)を基に、ユーザの同一性を判断するからである。これによりユーザはアプリケーション実行時のID認証後、イヤホン等を装着するのみで無意識にパスワード認証が常時実行され、セキュリティ性能が高く、連続的な個人認証が可能となる。
(情報処理装置の構成)
上述した本発明の各実施形態において、図1図6および図8に示す各個人認証装置の各構成要素は、機能単位のブロックを示している個人認証装置の各構成要素の一部又は全部は、例えば図9に示すような情報処理装置1とプログラムとの任意の組み合わせを用いて実現される。情報処理装置1は、一例として、以下のような構成を含む。
【0086】
・CPU(Central Processing Unit)501
・ROM(Read Only Memory)502
・RAM(Random Access Memory)503
・RAM503にロードされるプログラム504
・プログラム504を格納する記憶装置505
・記録媒体506の読み書きを行うドライブ装置507
・通信ネットワーク509と接続する通信インターフェース508
・データの入出力を行う入出力インターフェース510
・各構成要素を接続するバス511
本願の各実施形態における個人認証装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム504をCPU501が取得して実行することで実現される。個人認証装置の各構成要素の機能を実現するプログラム504は、例えば、予め記憶装置505やRAM503に格納されており、必要に応じてCPU501が読み出す。なお、プログラム504は、通信ネットワーク509を介してCPU501に供給されてもよいし、予め記録媒体506に格納されており、ドライブ装置507が当該プログラムを読み出してCPU501に供給してもよい。
【0087】
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、個人認証装置は、構成要素毎にそれぞれ別個の情報処理装置とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、個人認証装置が備える複数の構成要素が、一つの情報処理装置1とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0088】
また、個人認証装置の各構成要素の一部又は全部は、その他の汎用または専用の回路、プロセッサ等やこれらの組み合わせによって実現される。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。
【0089】
個人認証装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0090】
個人認証装置の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0091】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
[付記1]
ユーザを識別する第1の識別情報、および、前記識別以外の手法によって前記ユーザを連続的に識別する第2の識別情報を格納可能な記憶手段と、
前記ユーザに入力される情報を分析し前記第1の識別情報を生成する分析手段と、
前記ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出する送出手段と、
前記第1の音響信号が前記ユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測する観測手段と、
前記第1の音響信号および前記第2の音響信号から音響特性を算出する算出手段と、
前記音響特性から前記ユーザに関する音響特徴量を前記第2の識別情報として抽出する抽出手段と、
前記記憶手段に登録される第1の識別情報と前記分析手段によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、前記記憶手段に登録される第2の識別情報と前記抽出手段から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、前記ユーザは同一であると判定する判定手段
とを備える、個人認証装置。
[付記2]
前記第2の識別情報の照合結果が一致せずに前記ユーザは同一と判定されない場合、前記記憶手段に登録される第2の識別情報を削除する記憶制御手段
を更に備える付記1に記載の個人認証装置。
[付記3]
前記記憶手段に前記第2の識別情報が格納されていない場合、前記記憶制御手段は、前記抽出される第2の識別情報を前記記憶手段に格納する
付記1または付記2に記載の個人認証装置。
[付記4]
前記ユーザは同一と判定される場合、所定間隔毎に、前記送出手段は前記第1の音響信号を送出する
付記1に記載の個人認証装置。
[付記5]
前記ユーザは同一と判定される場合、前記ユーザにアプリケーションプログラムを実行させるアプリケーション制御手段を更に備える
付記1乃至付記4に記載の個人認証装置。
[付記6]
ユーザに入力される情報を分析し、前記ユーザを識別する第1の識別情報を生成し、
前記ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出し、
前記第1の音響信号が前記ユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測し、
前記第1の音響信号および前記第2の音響信号から音響特性を算出し、
前記音響特性から前記ユーザに関する音響特徴量を、前記ユーザを連続的に識別する第2の識別情報として抽出し、
記憶手段に予め登録される第1の識別情報と前記分析手段によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、前記記憶手段に予め登録される第2の識別情報と前記抽出手段から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、前記ユーザは同一であると判定する
ことを備える個人認証方法。
[付記7]
前記第2の識別情報の照合結果が一致せずに前記ユーザは同一と判定されない場合、前記記憶手段に登録される第2の識別情報を削除する
ことを更に備える付記6に記載の個人認証方法。
[付記8]
前記記憶手段に前記第2の識別情報が格納されていない場合、前記抽出される第2の識別情報を前記記憶手段に格納する
付記6または付記7に記載の個人認証方法。
[付記9]
前記ユーザは同一と判定される場合、所定間隔毎に、前記第1の音響信号を送出する
付記6に記載の個人認証方法。
[付記10]
前記ユーザは同一と判定される場合、前記ユーザにアプリケーションプログラムを実行させる
ことを更に備える付記6乃至付記9に記載の個人認証方法。
[付記11]
ユーザに入力される情報を分析し、前記ユーザを識別する第1の識別情報を生成し、
前記ユーザの頭部の一部に第1の音響信号を送出し、
前記第1の音響信号が前記ユーザの頭部の一部を伝播した後の音響信号である第2の音響信号を観測し、
前記第1の音響信号および前記第2の音響信号から音響特性を算出し、
前記音響特性から前記ユーザに関する音響特徴量を、前記ユーザを連続的に識別する第2の識別情報として抽出し、
記憶手段に予め登録される第1の識別情報と前記分析手段によって生成される第1の識別情報とを照合した結果が一致し、前記記憶手段に予め登録される第2の識別情報と前記抽出手段から抽出される第2の識別情報とを照合した結果が一致した場合に、前記ユーザは同一であると判定する
ことをコンピュータに実行させる個人認証プログラム。
[付記12]
前記第2の識別情報の照合結果が一致せずに前記ユーザは同一と判定されない場合、前記記憶手段に登録される第2の識別情報を削除する
ことを更に備える付記11に記載の個人認証プログラム。
[付記13]
前記記憶手段に前記第2の識別情報が格納されていない場合、前記抽出される第2の識別情報を前記記憶手段に格納する
付記11または付記12に記載の個人認証プログラム。
[付記14]
前記ユーザは同一と判定される場合、所定間隔毎に、前記第1の音響信号を送出する
付記11に記載の個人認証プログラム。
[付記15]
前記ユーザは同一と判定される場合、前記ユーザにアプリケーションプログラムを実行させる
ことを更に備える付記11乃至付記14に記載の個人認証プログラム。
【0092】
以上、本実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0093】
この出願は2016年9月16日に出願された日本出願特願2016-181898を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0094】
1 :情報処理装置
2 :サウンドプロセッサ
3 :マイクロホンアンプ
4 :イヤホン
5 :マイクロホン
6 :ユーザ
11 :送出部
12 :観測部
13 :算出部
14 :抽出部
15 :記憶制御部
16 :判定部
16a :判定部
17 :記憶部
18 :アプリケーション制御部
28 :アプリケーション制御部
31 :送出部
32 :観測部
33 :算出部
34 :抽出部
35 :記憶制御部
36 :判定部
37 :記憶部
100 :個人認証装置
200 :個人認証装置
300 :個人認証装置
500 :情報処理装置
501 :CPU
503 :RAM
504 :プログラム
505 :記憶装置
506 :記録媒体
507 :ドライブ装置
508 :通信インターフェース
509 :通信ネットワーク
510 :入出力インターフェース
511 :バス
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9