(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-31
(45)【発行日】2023-11-09
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20231101BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20231101BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20231101BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20231101BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231101BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20231101BHJP
H02K 3/30 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
C08L27/12
H01G4/32 500
H10N30/857
H05K1/03 610H
H01B7/02 D
H02K3/30
(21)【出願番号】P 2021154040
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2019552728の分割
【原出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2017215659
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】立道 麻有子
(72)【発明者】
【氏名】硲 武史
(72)【発明者】
【氏名】小松 信之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 達也
(72)【発明者】
【氏名】横谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 章夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 友啓
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240144(JP,A)
【文献】特開2005-186370(JP,A)
【文献】特開2011-029294(JP,A)
【文献】特開昭61-167527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C08L 1/00-101/14
H01G 4/32
H10N 30/857
H05K 1/03
H01B 7/02
H02K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数1kHz、160℃での誘電正接が0.02%以下であり、
160℃での絶縁破壊強さが400V/μm以上であり、
比誘電率が2.5以下のフルオロポリマーを含み、
厚みが
1~10μ
mである
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
160℃での体積抵抗率が1.0E16Ω・cm以上である請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記フルオロポリマーは、結晶化度が65%以上である請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
前記フルオロポリマーは、融点が270℃以上である請求項1、2又は3記載のフィルム。
【請求項5】
前記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン/パーフロオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロポリマーである請求項1、2、3又は4記載のフィルム。
【請求項6】
フィルムコンデンサ、エレクトロウェッティングデバイス、回路用基板、電線用ケーブル、高周波用プリント基板、電子部品封止材、又は、モーター・トランス用電気絶縁に使用される請求項1、2、3、4
又は5記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムコンデンサ用フィルムには、その誘電率の高さから、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)を用いることが提案されている。また、フッ化ビニリデン(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)からなる共重合体を使用する方法も示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、VdFとTFEとの共重合体を用いた、周波数1kHz、30℃での比誘電率が8以上であり、周波数1kHz、30℃での比誘電率Aと、周波数1kHz、150℃での比誘電率Bとから、次式:
変化率(%)=(B-A)/A×100
に従って算出される変化率が-8~+8%であることを特徴とするフィルムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、機械的強度が向上したフッ素樹脂フィルムとして、誘電率が5以下であり、MD方向及びTD方向の引張り破断強度がいずれも40MPa以上であることを特徴とする高強度のフッ素樹脂フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/014123号
【文献】特開2002-219750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パワー半導体は家電機器、車載機器等で幅広く活用されているが、従来適用されてきたシリコン系半導体に比べて、より高温での動作が可能なSiC(シリコンカーバイド)半導体の適用により、パワー半導体の周辺部材として用いられるフィルムコンデンサにも高温での安定した動作が求められている。しかし、従来のフィルムコンデンサで提案されていたフィルムは、誘電正接が大きかったり、高温での体積抵抗率や絶縁破壊強さが低かったりするものしかなく、上記特性を全て満足させるフィルムが求められる。
【0007】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、高温においても、誘電正接が小さく、かつ、絶縁破壊強さに優れるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、周波数1kHz、160℃での誘電正接が0.02%以下であり、160℃での絶縁破壊強さが400V/μm以上であることを特徴とするフィルムである(以下「本発明の第1のフィルム」ともいう)。
本発明の第1のフィルムは、160℃での体積抵抗率が1.0E16Ω・cm以上であることが好ましい。
本発明の第1のフィルムは、ポリマーを含むことが好ましい。
前記ポリマーは、結晶化度が65%以上であることが好ましい。
前記ポリマーは、融点270℃以上のフルオロポリマーであることが好ましい。
前記ポリマーは、比誘電率が2.5以下のフルオロポリマーであることが好ましい。
前記ポリマーは、テトラフルオロエチレン/パーフロオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロポリマーであることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、テトラフルオロエチレン/パーフロオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロポリマーを含み、該フルオロポリマーの結晶化度が65%以上であることを特徴とするフィルムでもある(以下「本発明の第2のフィルム」ともいう)。
【0010】
本発明のフィルムは、厚みが1~100μmであることが好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムコンデンサ、エレクトロウェッティングデバイス、回路用基板、電線用ケーブル、高周波用プリント基板、電子部品封止材、又は、モーター・トランス用電気絶縁に使用されるものであることが好ましい。
なお、以下「本発明のフィルム」と記載する場合、上記本発明の第1のフィルム及び第2のフィルムの両方を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルムは、上記構成を有していることから、高温においても、誘電正接が小さく、かつ、絶縁破壊強さに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0013】
本発明の第1のフィルムは、周波数1kHz、160℃での誘電正接が0.02%以下である。上記誘電正接は、0.01%以下であることがより好ましい。上記誘電正接の下限は特に限定されず、小さいほどよく、例えば0%である。
上記誘電正接は、フィルムの表面にφ50mmのアルミ蒸着を実施し、その反対面にも全面にアルミ蒸着を実施してサンプルとし、LCRメーターを用いて、160℃で、周波数1kHzで測定して求める。
【0014】
本発明の第1のフィルムは、160℃での絶縁破壊強さが400V/μm以上である。上記絶縁破壊強さは、450V/μm以上が好ましく、500V/μm以上がより好ましい。上記絶縁破壊強さの上限は特に限定されず、高いほどよいが、例えば、1000V/μmであってもよく、800V/μmであってもよい。
上記絶縁破壊強さは、フィルムを下部電極に置き、上部電極としてφ25mm、重さ500gの分銅を置いて両端に電圧を100V/secで増加させて破壊する電圧を測定する。測定数は50点とし、上下5点を削除して平均値を算出し、厚みで除した値で絶縁破壊強さを求める。
【0015】
本発明の第1のフィルムは、160℃での体積抵抗率が1.0E16Ω・cm以上であることが好ましい。上記体積抵抗率としては、2.0E16Ω・cm以上がより好ましく、5.0E16Ω・cm以上が更に好ましく、1.0E17Ω・cm以上が特に好ましい。上記体積抵抗率の上限は特に限定されず、高いほどよいが、例えば、1.0E18Ω・cmである。
上記体積抵抗率は、フィルムを恒温槽(160℃、25%RH)内に設置した下部電極および上部電極で挟みこみ、デジタル超絶縁形/微小電流計にて50V/μmの電界をフィルムに印加し、漏れ電流を計測し算出する。
【0016】
本発明の第1及び後述の第2のフィルムは、厚みが100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、1μm以上であってよい。よく使用される厚みは2μm以上8μm以下、又は2μm以上5μm以下である。
上記厚みは、デジタル測長機を用いて測定できる。
【0017】
本発明の第1のフィルムは、ポリマーを含むことが好ましく、フルオロポリマーを含むことがより好ましい。本発明のフィルムは、有機フィルムであってよい。
【0018】
本発明の第1のフィルムは、ポリマーの結晶化度が65%以上であることが好ましい。上記結晶化度としては、70%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。結晶化度の上限は特に限定されないが、100%であってよい。
上記結晶化度は、フィルムをX線回折装置にて多重ピーク分離法を用いて測定する。具体的には、複数のフィルムを合計の厚みが40μm以上になるように重ねあわせた測定サンプルをサンプルホルダーにセットし、X線回折装置にて得られた回折角(2θ)が10~50°の範囲の回折スペクトルの結晶質部分と非晶質部分のピークをそれぞれ独立のピークに分離し、各ピークの積分強度(面積)を求めることにより結晶化度を算出する。具体的には、全ピークの積分強度のうちの結晶質部分のピークの積分強度の割合から結晶化度を算出する。本条件範囲はすべてのポリマーに適用する。
【0019】
本発明の第1のフィルムは、X線回折における結晶ピークの半価幅が0.5~1.5であることが好ましい。
上記半価幅は、X線回折装置で得られたスペクトルをピーク分離法によって結晶ピークと非晶ハローを分解し、得られた結晶ピークのバックグラウンドからピークトップまでの高さをhとした際、h/2に当たる部分の結晶ピークの幅より半価幅を算出する。
【0020】
上記フルオロポリマーとしては、TFE/パーフロオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕、TFE/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕などが挙げられる。
本発明のフィルムは、高温での誘電正接を0.02%以下、絶縁破壊強さを400V/μm以上とする点、高温での体積抵抗率の点から、フルオロポリマーを含むものが好ましく、TFE単位を含むフルオロポリマーがより好ましい。
【0021】
上記フルオロポリマーは、融点が270℃以上が好ましく、280℃以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば350℃であってよい。
上記融点は、示差走査熱量計を用い、ASTM D-4591に準拠して、昇温速度10度/分にて、熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
【0022】
上記フルオロポリマーは、比誘電率が2.5以下であることが好ましい。比誘電率は、2.3以下であることがより好ましく、2.2以下であることが更に好ましい。また、2.0以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましい。
上記比誘電率は、ヒートプレスにてフィルムを作成し、フィルムの表面にφ50mmのアルミ蒸着を実施し、その反対面にも全面にアルミ蒸着を実施してサンプルとし、LCRメーターを用いて容量(C)を測定し、容量、電極面積(S)、フィルムの厚み(d)から、式C=ε×ε0×S/d(ε0は真空の誘電率)で算出する値である。
【0023】
上記フルオロポリマーとしては、より低い誘電正接と、高温での優れた体積抵抗率及び絶縁破壊強さを有するフィルムが得られることから、PFA、及び、FEPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PFAが更に好ましい。
【0024】
上記PFAを構成するPAVEとしては、一般式(1):
CF2=CFO(CF2CFY1O)p-(CF2CF2CF2O)q-Rf (1)
(式中、Y1はF又はCF3を表し、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0~5の整数を表し、qは0~5の整数を表す。)、及び、一般式(2):
CFX=CXOCF2OR1 (2)
(式中、Xは、同一又は異なり、F又はCF3を表し、R1は、直鎖又は分岐した、炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基、若しくは、炭素数が5又は6の環状パーフルオロアルキル基を表す。)
からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
具体的には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)〔PBVE〕等が挙げられる。
【0025】
なかでも、上記PAVEとしては、バルキーな側鎖を有するものが好ましく、具体的には、PPVEが好ましい。
【0026】
上記PFAは、PAVEに基づく重合単位を全重合単位に対して1.0~10質量%含むことが好ましい。
上記PAVEに基づく重合単位の量は、全重合単位に対して、2.0質量%以上がより好ましく、3.5質量%以上が更に好ましく、4.0質量%以上が特に好ましく、5.0質量%以上が最も好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.0質量%以下が更に好ましく、6.5質量%以下が特に好ましく、6.0質量%以下が最も好ましい。なお、上記PAVEに基づく重合単位の量は、19F-NMR法により測定する。
上記PFAは、全重合単位に対して、TFE及びPAVEに基づく重合単位の合計が90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。上記PFAは、TFE及びPAVEに基づく重合単位のみからなることも好ましい。
なお、上記PFAはHFP単位を含まない。
【0027】
上記PFAは、主鎖炭素数106個当たり400個以下の不安定末端基を有していてもよい。上記不安定末端基は、-COF、-COOH、-CF2H、-COOCH3、-CH2OH、-CONH2、-CF=CF2等であり、上記個数は、これら不安定末端基の総数である。上記個数は、20個以下であってよく、10個以下であってもよい。下限は0個であってよい。特に、主鎖炭素数106個当たり20個以下の不安定末端基を有するPFAは、高周波領域(10GHz以上)での低誘電正接の点で好ましい。
【0028】
上記不安定末端基数は、赤外分光分析法により測定することができる。
まず、上記共重合体を溶融押出成形して、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記共重合体の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化処理されて不安定末端基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の不安定末端基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記共重合体における炭素原106個あたりの不安定末端基数Nを算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0029】
上記フッ素化処理は、公知の方法により実施することができる。例えば、重合により得られた共重合体とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。上記フッ素含有化合物(フッ素ラジカル源)としては、F2ガス、CoF3、AgF2、UF6、OF2、N2F2、CF3OF、フッ化ハロゲン(例えばIF5、ClF3)等が挙げられ、F2ガスが好ましい。
【0030】
上記F2ガス等のフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、不活性ガスと混合し5~50質量%、好ましくは15~30質量%に希釈して使用してもよい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0031】
上記フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態の上記共重合体とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、上記共重合体の融点以下、好ましくは20~220℃、より好ましくは100~200℃の温度下で行うことができる。
【0032】
上記PFAは、融点が280~322℃であることが好ましい。
上記融点は、290℃以上であることがより好ましく、315℃以下であることがより好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0033】
上記PFAは、ガラス転移温度(Tg)が70~110℃であることが好ましい。ガラス転移温度は、80℃以上がより好ましく、100℃以下がより好ましい。
上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定して得られる値である。
【0034】
上記PFAは、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0035】
上記FEPは、TFE単位及びHFP単位を含む。
【0036】
上記FEPは、TFE単位とHFP単位との質量比(TFE/HFP)が70~99/1~30(質量%)であることが好ましい。上記質量比(TFE/HFP)は、85~95/5~15(質量%)がより好ましい。
【0037】
上記FEPは、TFE単位及びHFP単位に加え、更にPAVE単位を含むTFE/HFP/PAVE共重合体であることも好ましい。上記FEPに含まれるPAVE単位としては、上述したPFAを構成するPAVE単位と同様のものを挙げることができる。なかでも、PPVEがより好ましい。
上記FEPは、全重合単位に対して、TFE、HFP及びPAVEに基づく重合単位の合計が90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。上記FEPは、TFE及びHFPに基づく重合単位のみからなってもよいし、TFE、HFP及びPAVEに基づく重合単位のみからなってもよい。
【0038】
上記FEPが、TFE/HFP/PAVE共重合体である場合、質量比(TFE/HFP/PAVE)が70~99.8/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましい。上記範囲内であると、より耐熱性に優れる。
上記質量比(TFE/HFP/PAVE)は、75~98/1.0~15/1.0~10(質量%)であることがより好ましい。
上記TFE/HFP/PAVE共重合体は、HFP単位及びPAVE単位を合計で1質量%以上含む。
【0039】
上記TFE/HFP/PAVE共重合体は、HFP単位が全単量体単位の25質量%以下であることが好ましい。HFP単位の含有量が上述の範囲内であると、より耐熱性に優れる。HFP単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは15質量%以下である。また、HFP単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。特に好ましくは、2質量%以上である。
なお、HFP単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0040】
上記TFE/HFP/PAVE共重合体において、PAVE単位の含有量は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。特に好ましくは3質量%以下である。また、PAVE単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。なお、PAVE単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0041】
上記FEPは、更に、他のエチレン性単量体(α)単位を含んでいてもよい。
他のエチレン性単量体(α)単位としては、TFE単位及びHFP単位、並びに、TFE/HFP/PAVE共重合体の場合には、更にPAVE単位と共重合可能な単量体単位であれば特に限定されず、例えば、フッ化ビニル〔VF〕、VdF、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等の含フッ素エチレン性単量体や、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化エチレン性単量体等が挙げられる。
【0042】
上記共重合体がTFE/HFP/PAVE/他のエチレン性単量体(α)共重合体である場合、質量比(TFE/HFP/PAVE/他のエチレン性単量体(α))は、70~98/0.1~25/0.1~25/0.1~25(質量%)であることが好ましく、70~98/0.1~25/0.1~20/0.1~15(質量%)であることがより好ましく、70~98/0.1~20/0.1~10/0.1~5(質量%)であることが更に好ましい。
上記TFE/HFP共重合体は、TFE単位以外の重合単位を合計で1質量%以上含む。
【0043】
上記FEPは、融点が270~322℃であることが好ましい。上記融点は、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0044】
上記FEPは、ガラス転移温度(Tg)が60~110℃であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることがより好ましい。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定により測定して得られる値である。
【0045】
上記FEPは、例えば、その構成単位となるモノマーや、重合開始剤等の添加剤を適宜混合して、乳化重合、溶液重合や懸濁重合を行う等の従来公知の方法により製造することができる。
【0046】
上記PFA及びFEPは、メルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、0.1~50g/10分であることがより好ましい。
上記MFRは、ASTM D3307-01に準拠し、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
【0047】
上記PFA及びFEPは、熱分解開始温度(1%質量減温度)が360℃以上であるものが好ましい。より好ましい下限は370℃である。上記熱分解開始温度は、上記範囲内であれば、上限を例えば410℃とすることができる。
上記熱分解開始温度は、加熱試験に供した共重合体の1質量%が分解する温度であり、示差熱・熱重量測定装置〔TG-DTA〕を用いて加熱試験に供した共重合体の質量が1質量%減少する時の温度を測定することにより得られる値である。
【0048】
上記PFA及びFEPは、動的粘弾性測定による170℃における貯蔵弾性率(E’)が60~400MPaであることが好ましい。
上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により170℃で測定する値であり、より具体的には、動的粘弾性装置で長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ巾20mm、測定温度25℃から250℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定する値である。170℃におけるより好ましい貯蔵弾性率(E’)は80~350MPaであり、更に好ましい貯蔵弾性率(E’)は100~350MPaである。
測定サンプルは、例えば、成形温度を共重合体の融点より50~100℃高い温度に設定し、3MPaの圧力で厚さ0.25mmに成形したフィルムを、長さ30mm、巾5mmにカットすることで作成することができる。
【0049】
上記PFA及びFEPは、フッ素樹脂であってよい。
【0050】
本発明の第1のフィルムは、フルオロポリマーを含み、かつ、結晶化度が65%以上であることが好ましい。特定のポリマーを使用することにより、高温での誘電正接を低下させることができ、更に、特定の面倍率以上に延伸することによって結晶化度を65%以上にすることができ、絶縁破壊強さ及び体積抵抗率をより一層向上させることができる。
本発明の第1のフィルムは、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種のフルオロポリマーを含み、かつ、結晶化度が65%以上であることがより好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種のフルオロポリマーを含み、かつ、結晶化度が70%以上であることがより好ましく、PFAを含み、かつ、結晶化度が75%以上であることが更に好ましく、PFAを含み、かつ、結晶化度が80%以上であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の第2のフィルムは、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、及び、TFE/HFP共重合体〔FEP〕からなる群より選択される少なくとも1種のフルオロポリマーを含み、該フルオロポリマーの結晶化度が65%以上である。
本発明の第2のフィルムは、上記構成を有することによって、高温においても、誘電正接が小さく、かつ、絶縁破壊強さに優れる。また、高温における体積抵抗率にも優れる。
本発明の第2のフィルムは、特定のポリマーを使用することにより、高温での誘電正接を低下させることができ、更に、特定のポリマーを特定の面倍率以上に延伸することによって結晶化度を65%以上にすることができ、絶縁破壊強さ及び体積抵抗率を向上させることができる。
【0052】
上記PFA及びFEPとしては、本発明の第1のフィルムにおいて使用できるPFA及びFEPを好適に使用できる。上記フルオロポリマーとしては、PFAがより好ましい。
【0053】
上記結晶化度は、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。結晶化度の上限は特に限定されないが、100%であってよい。ポリマーの結晶化度は、本発明の第1のフィルムにおけるポリマーの結晶化度を算出する方法で決定できる。
【0054】
その他、本発明の第1のフィルムにおいて好適な態様として記載したものは、本発明の第2のフィルムにおいても適用できる。
【0055】
本発明のフィルムは、PFA及び/又はFEPを含む場合、更に他のポリマーを含んでいてもよい。他のポリマーとしては、たとえば機械強度向上の観点で、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シリコーン樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)などが好ましく、強度を高めるためにはポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、PC、ポリスチレン、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などがあげられる。セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等も挙げられる。
【0056】
上記PFA及び/又はFEPと、他のポリマーとの質量比は、50/50~99/1であることが好ましく、75/25~99/1であることがより好ましい。
【0057】
フィルムの機械的強度を損なわずにフィルムのブロッキングを防ぐことが可能になる点から、本発明のフィルムは、シリカを含むこともできる。その配合量は、上記ポリマー100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが更に好ましい。
【0058】
本発明のフィルムは、高誘電性無機粒子、補強用フィラー、親和性向上剤等を含むものであってもよい。
【0059】
上記親和性向上剤としては、カップリング剤、官能基変性ポリオレフィン、スチレン改質ポリオレフィン、官能基変性ポリスチレン、ポリアクリル酸イミド、クミルフェノールなどがあげられ、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。尚、耐電圧の点からはこれらの成分は含まないことがより好ましい。
【0060】
本発明のフィルムは、例えば、ポリマーを溶融押出成形することによりフィルムを得る工程、及び、上記フィルムを延伸することにより、延伸フィルムを得る工程を含む製造方法により、好適に製造することができる。
【0061】
上記溶融押出成形は、250~380℃で行うことができる。
上記溶融押出成形は、また、溶融押出成形機を使用して行うことができ、シリンダー温度を250~350℃、ダイ温度を300~380℃とすることが好ましい。
【0062】
上記製造方法は、上記押出成形で得られたフィルムをロールにより巻き取る工程を含むことも好ましい。上記ロールの温度は、0~180℃とすることが好ましい。
【0063】
上記押出成形の後、得られたフィルムを延伸して延伸フィルムを得る。
上記延伸は、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は逐次二軸延伸でも同時二軸延伸であってもよい。
【0064】
上記一軸延伸では、押出成形において上記ポリマーを押し出した方向と同じ縦方向(MD)にフィルムを延伸する。
上記一軸延伸における延伸倍率は、4.5倍以上であることが好ましく、5.0倍以上であることがより好ましく、9.0倍以上であることが更に好ましい。
上記一軸延伸における延伸温度は、0~180℃であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
上記一軸延伸における延伸速度は、1E+2~1E+5%/分であることが好ましい。
【0065】
上記二軸延伸では、縦方向(MD)と垂直な横方向(TD)にフィルムを延伸する。
上記二軸延伸における延伸倍率は、MDおよびTDの各倍率で2.0~10倍であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましく、3.0倍以上であることが更に好ましく、4.0倍以上であることが特に好ましく、5.0倍以上であることが殊更に好ましい。
上記二軸延伸における延伸温度は、0~180℃であることが好ましく、20℃以上がより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、120℃以下がより好ましい。
上記二軸延伸における延伸速度は、1E+2~1E+5%/分であることが好ましい。
【0066】
上記二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても、同時二軸延伸であってもよい。
上記二軸延伸の方法としては、テンター式二軸延伸、チューブラー式二軸延伸等の方法が採用でき、テンター式二軸延伸が好ましい。
逐次二軸延伸法は、一般に縦延伸(MD方向)をロールの回転差を利用して延伸し、続いて横延伸ではロール状フィルムの端部(TD側)をクリップで掴みTD方向に延伸する方法である。場合によっては、縦延伸、横延伸、縦延伸の順にMD方向に引張を加える場合もある。
同時二軸延伸法は、ロール状フィルムの端部(TD側)をクリップで掴み、そのクリップ間隔がMD方向、TD方向の両方に広がることでフィルムを延伸する方法である。
【0067】
上記延伸は、単膜の状態で、面倍率4.5倍以上、原反フィルムの厚みは300μm以下、原反フィルムの膜厚のばらつきは10%以内の条件で行うことが好ましい。
特定のポリマーを使用することにより、高温での誘電正接を低下させることができ、更に、面倍率が4.5倍以上になるように延伸することによって、結晶化度を65%以上とすることができ、絶縁破壊強さ及び体積抵抗率をより一層向上させることができることが見出された。
上記面倍率は、5.0倍以上が好ましく、6.0倍以上がより好ましく、6.5倍以上が更に好ましく、9.0倍以上が特に好ましく、16倍以上が殊更に好ましく、25倍以上が最も好ましい。面倍率を高くすることで、結晶化度をより高くすることができ、体積抵抗率及び絶縁破壊強さを向上させることができる。
上記原反フィルムは、延伸を行う前のフィルムであり、例えば、上記押出成形で得られたフィルムであってよい。
【0068】
上記製造方法は、上記延伸の後、得られた延伸フィルムを熱固定する工程を含むことも好ましい。熱固定をすることにより、熱等の影響によるフィルムの収縮を抑制したり、耐久性が向上したりする効果が得られる。
上記熱固定の温度は、100~250℃であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、230℃以下であることがより好ましい。熱固定時間は短時間で良く、連続延伸では5分以下で良い。
【0069】
本発明のフィルムは、低い誘電正接と、高温での優れた体積抵抗率及び絶縁破壊強さを示すことから、種々の用途に利用可能である。
例えば、フィルムコンデンサ、エレクトロウェッティングデバイス、回路用基板、電線用ケーブル、高周波用プリント基板、電子部品封止材、モーター・トランス用電気絶縁等に使用可能である。
【0070】
本発明のフィルムは、フィルムコンデンサ用フィルムとして好適に使用できる。本発明のフィルムを備えるフィルムコンデンサも本発明の一つである。
上記フィルムコンデンサは、本発明のフィルムと、該フィルムの少なくとも一方の面に設けられた電極層とを有するものであってよい。
【0071】
フィルムコンデンサの構造としては、たとえば、電極層とフィルムが交互に積層された積層型(特開昭63-181411号公報、特開平3-18113号公報など)や、テープ状のフィルムと電極層を巻き込んだ巻回型(フィルム上に電極が連続して積層されていない特開昭60-262414号公報などに開示されたものや、フィルム上に電極が連続して積層されている特開平3-286514号公報などに開示されたものなど)などがあげられる。構造が単純で、製造も比較的容易な、フィルム上に電極層が連続して積層されている巻回型フィルムコンデンサの場合は、一般的には片面に電極を積層したフィルムを電極同士が接触しないように2枚重ねて巻き込んで、必要に応じて、巻き込んだ後に、ほぐれないように固定して製造される。
【0072】
電極層は、特に限定されないが、一般的に、アルミニウム、亜鉛、金、白金、銅などの導電性金属からなる層であって、金属箔として、または蒸着金属被膜として用いる。金属箔と蒸着金属被膜のいずれでも、また、両者を併用しても構わない。電極層を薄くでき、その結果、体積に対して容量を大きくでき、誘電体との密着性に優れ、また、厚さのバラつきが小さい点で、通常は、蒸着金属被膜が好ましい。蒸着金属被膜は、一層のものに限らず、たとえば耐湿性を持たせるためにアルミニウム層にさらに半導体の酸化アルミニウム層を形成して電極層とする方法(たとえば特開平2-250306号公報など)など、必要に応じて多層にしてもよい。蒸着金属被膜の厚さも特に限定されないが、好ましくは100~2,000オングストローム、より好ましくは200~1,000オングストロームの範囲とする。蒸着金属被膜の厚さがこの範囲である時に、コンデンサの容量や強度がバランスされ好適である。
【0073】
電極層として蒸着金属被膜を用いる場合、被膜の形成方法は特に限定されず、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを採用することができる。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0074】
真空蒸着法としては、たとえば成形品のバッチ方式と、長尺品で使用される半連続(セミコンテニアス)方式と連続(air to air)方式などがあり、現在は、半連続方式が主力として行われている。半連続方式の金属蒸着法は、真空系の中で金属蒸着、巻き取りした後、真空系を大気系に戻し、蒸着されたフィルムを取り出す方法である。
【0075】
半連続方式については、具体的には、たとえば特許第3664342号明細書の
図1を参照して記載されている方法で行うことができる。
【0076】
フィルム上に金属薄膜層を形成する場合、あらかじめフィルム表面に、コロナ処理、プラズマ処理など、接着性向上のための処理を施しておくこともできる。電極層として金属箔を用いる場合も、金属箔の厚さは特に限定されないが、通常は、0.1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは3~15μmの範囲である。
【0077】
固定方法は、特に限定されず、たとえば樹脂で封止したり絶縁ケースなどに封入したりすることにより、固定と構造の保護とを同時に行えばよい。リード線の接続方法も限定されず、溶接、超音波圧接、熱圧接、粘着テープによる固定などが例示される。巻き込む前から電極にリード線を接続しておいてもよい。絶縁ケースに封入する場合など、必要に応じて、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で開口部などを封止して酸化劣化などを防止してもよい。
【0078】
本発明のフィルムは高温での優れた体積抵抗率及び絶縁破壊強さを有することから、パワー半導体の周辺部材として用いられるフィルムコンデンサに特に好適である。
パワー半導体としては、ダイオード、トランジスタ、IC(集積回路)等が挙げられる。特に、高温での使用が可能なSiC(シリコンカーバイド)半導体を用いたパワー半導体の周辺部材として用いられるフィルムコンデンサの誘電性フィルムとして特に好適である。
【0079】
本発明のフィルムは、エレクトロウェッティングデバイスの誘電性フィルムとしても好適に使用できる。本発明のフィルムを備えるエレクトロウェッティングデバイスも本発明の一つである。
【0080】
上記エレクトロウェッティングデバイスは、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に、移動可能に配置された導電性液体と、第1電極と前記導電性液体との間に、第1電極を前記第2電極から絶縁するように配置された、本発明のフィルム(誘電性フィルム)と、を有するものであってよい。本発明のフィルムの上には、撥水層を設けてもよい。第1電極と第2電極との間には、導電性液体に加えて、絶縁性液体が保持されており、導電性液体と絶縁性液体が2層を構成していてよい。
【0081】
上記エレクトロウェッティングデバイスは、光学素子、表示装置(ディスプレイ)、可変焦点レンズ、光変調装置、光ピックアップ装置、光記録再生装置、現像装置、液滴操作装置、分析機器(例、試料の分析のため微小の導電性液体を移動させる必要がある、化学、生化学、および生物学的分析機器)に使用できる。
【実施例】
【0082】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0084】
フルオロポリマーの単量体組成
核磁気共鳴装置を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F-NMR測定を行い、各ピークの積分値およびモノマーの種類によっては元素分析を適宜組み合わせて求めた。
【0085】
融点
示差走査熱量啓を用い、ASTM D-4591に準拠して、昇温速度10度/分にて、熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
【0086】
厚み
デジタル測長機を用いて、基板に載せたフィルムを室温下にて測定した。
【0087】
結晶化度
フィルムをX線回折装置にて多重ピーク分離法を用いて結晶化度を測定した。具体的には、複数のフィルムを合計の厚みが40μm以上になるように重ねあわせた測定サンプルをサンプルホルダーにセットし、X線回折装置にて得られた回折スペクトルの結晶質部分と非晶質部分のピークをそれぞれ独立のピークに分離し、各ピークの積分強度(面積)を求めることにより結晶化度を算出する。
実施例1~5及び比較例1~3では、10~50°の範囲で得られた回折スペクトルを多重ピーク分離法によりピーク分離を行い、全ピークの積分強度のうちの結晶質部分のピークの積分強度の割合から結晶化度を算出した。
【0088】
メルトフローレート〔MFR〕
MFRは、ASTM D3307-01に準拠し、297℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)をMFRとした。
【0089】
比誘電率
真空中でフィルムの両面にアルミニウムを蒸着しサンプルとする。このサンプルをLCRメーターにて、30℃及び160℃で、周波数1kHzでの静電容量を測定する。得られた各静電容量から比誘電率を算出した。
【0090】
誘電正接
真空中でフィルムの両面にアルミニウムを蒸着しサンプルとする。このサンプルをLCRメーターにて、30℃及び160℃で、周波数1kHzでの誘電正接を測定する。
【0091】
体積抵抗率
フィルムを恒温槽内に設置した下部電極および上部電極で挟みこみ、デジタル超絶縁形/微小電流計にて50V/μmの電界をフィルムに印加し、漏れ電流を計測し、体積抵抗率を算出した。また、恒温槽の温度を160℃にし、恒温槽内で測定を実施した。
【0092】
絶縁破壊強さ
フィルムを下部電極に置き、上部電極としてφ25mm、重さ500gの分銅を置いて両端に電圧を100V/secで増加させて破壊する電圧を測定した。測定数は50点とし、上下5点を削除して平均値を算出し、厚みで除した値で絶縁破壊強さを求めた。測定恒温槽内(160℃、25%RH)で実施し、160℃下での絶縁破壊強さを測定した。
【0093】
以下に、実施例で用いた樹脂について説明する。
PFA:TFE/PPVE共重合体、不安定末端基数:炭素原子106個辺り110~400個、融点:305℃、比誘電率:2.1
PP(ポリプロピレン)フィルム:フィルム厚2.8μmの延伸フィルム
【0094】
実施例1
PFAを溶融押出成形機にて製膜し、フィルム厚100μmのフィルムを得た。その100μmのフィルムを、二軸延伸機にて80℃、1E+2~1E+5%/分の速度でMD、TD方向にそれぞれ2.5倍延伸し、フィルム厚8~10μmの延伸フィルムを得た。
【0095】
実施例2
PFAを溶融押出成形機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。その50μmのフィルムを、二軸延伸機にて40℃、1E+2~1E+5%/分の速度でMD、TD方向にそれぞれ4.0倍延伸し、フィルム厚8~10μmの延伸フィルムを得た。
【0096】
実施例3
PFAを溶融押出成形機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。その50μmのフィルムを、二軸延伸機にて60℃、1E+2~1E+5%/分の速度でMD、TD方向にそれぞれ4.0倍延伸し、フィルム厚8~10μmの延伸フィルムを得た。
【0097】
実施例4
PFAを溶融押出成形機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。その50μmのフィルムを、二軸延伸機にて80℃、1E+2~1E+5%/分の速度でMD、TD方向にそれぞれ4.0倍延伸し、フィルム厚8~10μmの延伸フィルムを得た。
【0098】
実施例5
PFAを溶融押出成形機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。その50μmのフィルムを、二軸延伸機にて100℃、1E+2~1E+5%/分の速度でMD、TD方向にそれぞれ4.0倍延伸し、フィルム厚8~10μmの延伸フィルムを得た。
【0099】
比較例1
PFAを溶融押出成形機にて製膜し、フィルム厚12.5μmのフィルムを得た。
【0100】
比較例2
FEPを溶融押出成形機にて製膜し、Tダイ成形押出機にて製膜し、フィルム厚50μmのフィルムを得た。二軸延伸機にて90℃でMD、TD方向にそれぞれ2.0倍延伸し、フィルム厚12.5μmの延伸フィルムを得た。
【0101】
比較例3
PPフィルムを用いた。
【0102】
得られた各フィルムについて、比誘電率、誘電正接、体積抵抗率および絶縁破壊強さ、結晶化度を測定した。結果を表1に示す。
【0103】