(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】深部領域温熱療法におけるエネルギー堆積の操向のためのシステム、方法、および装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20231102BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61N1/40
A61B5/055 390
(21)【出願番号】P 2020537540
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 US2019012712
(87)【国際公開番号】W WO2019136446
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519018336
【氏名又は名称】ネオサーマ オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】イリシウ, アンナ-マリア
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0168001(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273230(US,A1)
【文献】米国特許第05548218(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038101(US,A1)
【文献】国際公開第2017/194530(WO,A1)
【文献】国際公開第95/027533(WO,A1)
【文献】特開2009-195614(JP,A)
【文献】国際公開第2017/201625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/40
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムであって、
a)対象を収容するために十分な寸法の基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、前記対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、前記対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.前記対の各コイルは、
蝶の形状に構成される所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または前記分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、
前記対の各コイル上に印加される
無線周波数(RF
)の振幅を制御する1つまたは複数の
RF発生器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記蝶の一方の半分は、他方の半分と重複される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記蝶の一方の半分は
、他方の半分と50%重複され、それによって、前記コイルの長さは、各コイル対間の前記分離距離の1.5倍に等しい、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
一対の各コイルは、2つの個々のコイルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
スイッチをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記スイッチは、別個のタイムスライスの中で前記セクタおよび振幅を選択するソリッドステートスイッチである、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
処置監視、調節、および報告のための磁気共鳴サーモグラフィ撮像(MRTI)装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
各セクタはさらに、各コイル
の長さに沿って設置された1つまたは複数の直列の同調コンデンサを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記基部およびコイル対は、異なる対象サイズおよび治療用途に適合するように可変である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
空冷装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記印加されるRFは、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
局所領域的温熱療法を必要とする対象において局所領域的温熱療法を誘発するための装置であって、前記装置は、複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御するために構成されており、前記装置は、
(I)前記対象を収容するための、基部と、
(II)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、前記対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、前記対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.前記対の各コイルは、
蝶の形状に構成される所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または前記分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
(III)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、前記対の各コイル上に印加される
無線周波数(RF
)の振幅を制御する1つまたは複数の
RF発生器と
を備え、各セクタ内のコイルのサイズおよび前記基部のサイズは、前記対象のサイズおよび所望される加熱深度に基づいて調節され、
複数のH場は、前記基部上に設置された前記対象における前記所望される深度において標的化された加熱を生じさせるように発生させられる、装置。
【請求項13】
前記対象は、哺乳類である、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記哺乳類は、ヒトと、家畜動物と、農業用動物とから成る群から選択される、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
前記対象は、ヒトである、請求項
12に記載の装置。
【請求項16】
前記所望される加熱深度は、10cmを上回る、請求項
12に記載の装置。
【請求項17】
前記印加されるRFは、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択される、請求項
12に記載の装置。
【請求項18】
複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムであって、
a)置換可能な基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、前記対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、前記対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.前記対の各コイルは、
蝶の形状に構成される所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または前記分離距離を上回り、
iv.各コイルの長さは、各コイル対間の前記分離距離の1.5倍に等しい、または前記分離距離の1.5倍を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、前記対の各コイル上に印加される
無線周波数(RF
)の振幅を制御する1つまたは複数の
RF発生器と、
d)ソリッドステートスイッチと、
e)空冷装置
と
を備える、システム。
【請求項19】
前記印加されるRFは、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択される、請求項
18に記載のシステム。
【請求項20】
MRTI装置をさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2018年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/614,993号の利益を主張し、その出願は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、複数の磁場が、作成され、それらの間でE場を相加的に組み合わせるように、誘導結合されたコイル対を使用することによって深部集中型加熱を伴う局所領域的温熱療法を誘発することに関する。本発明は、誘導結合されたシステムが、組織の誘電率に関係なくE場を標的化し、筋肉組織の主として表面の加熱の発生を回避することを可能にする。本発明は、広帯域RF発生器も位相制御アンテナも要求しない、単純かつコスト効率的な設計の使用を可能にする。
【背景技術】
【0003】
標的化深部温熱療法は、癌処置、腫瘍アブレーション、および他の疾患の処置等の療法用途に関して公知である(Andersonらの米国特許出願公開第20180015294 A1号)。誘導結合された(H場)アンテナに基づいたRF温熱療法のためのシステムが、主に、放射されたE場または結合されたE場を用いて加熱する他のシステムに優る利点を可能にする。関連する組織全ての透磁性は、1に近く、そのため、H場の場パターンを予測することは、非常に正確であることが公知である。加熱のためのE場を発生させる配向および方法に起因して、脂肪組織内の優先的加熱が、適切に設計された誘導結合されたシステムを用いて回避されることができる。
【0004】
H場を用いた現行の加熱方法は、深く、すなわち、10cmを上回る、体格の大きい患者における所望される臨床的深度まで加熱するための能力を欠いている。本発明は、上記に識別されるこれらの課題に対処するためのシステムおよび方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第20180015294号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、誘導結合されたシステムにおいて標的化加熱を生じさせることが、些細なものではないことを実証した。誘導結合されたシステムの適合を含む、本分野における従来のシステムは、結果として生じるE場の場所を制御するために使用される方法が、利用可能および/または使用されていないため、10cmを上回る、臨床的に意義のある深度において加熱することに失敗してきた。腹部の仮想ヒトモデルの周囲の他の誘導システムのシミュレーションでは、表面平形コイル、円周方向コイル巻線、およびヘルムホルツベースの円周方向のコイル対を利用するシステムは、E場発生パターンが、常時、骨格および腹部筋肉における大きいエネルギー堆積によって制限されるため、深部における容認可能な加熱を発生させることができなかった。本発明は、複数のH場を使用することにより、(主に、渦電流の発生を通して)相加的E場を生じさせ、これは、位相制御等の方法によってシステムの複雑性またはコストを増大させることなく、低周波数において臨床的に意義のある加熱を達成することができる。特に、本設計は、ヒトまたは大型動物の関連のある幾何学形状における位相制御アンテナに良好に応答しない、13.56MHz、27.1MHz、および40.68MHzの産業用、科学用、ならびに医療用の空き周波数における、意義のある深部加熱を可能にする。加えて、本システムは、MRI対応かつ透過的であり、磁気共鳴サーモグラフィ撮像等の技法を利用するための同時動作を可能にする。
【0007】
本発明の一実施形態では、複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムが、提供される。本システムは、
a)対象を収容するために十分な寸法の基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と
を備える。
【0008】
本発明の別の実施形態では、局所領域的温熱療法を必要とする対象において局所領域的温熱療法を誘発するための方法が、提供される。本方法は、
a)複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御するための装置を提供することであって、装置は、
(I)対象を収容するための基部と、
(II)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
(III)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と
を備える、ことと、
b)対象のサイズおよび所望される加熱深度に基づいて、各セクタ内のコイルサイズおよび基部のサイズを調節することと、
c)基部上に対象を設置することと、
d)複数のH場を発生させることにより、対象における所望される深度において標的化された加熱を生じさせることと
を含む。
【0009】
本発明の付加的な実施形態では、複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムが、提供される。本システムは、
a)置換可能な基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または分離距離を上回り、
iv.各コイルの長さは、各コイル対間の分離距離の1.5倍に等しい、または分離距離の1.5倍を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と、
d)ソリッドステートスイッチと、
e)空冷装置と、随意に、
f)MRTI装置と
を備える。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムであって、
a)対象を収容するために十分な寸法の基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、前記対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、前記対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.前記対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または前記分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)前記比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と
を備える、システム。
(項目2)
前記所定の設計は、蝶の形状に構成される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記蝶の一方の半分は、他方の半分と重複される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記蝶の一方の半分は、前記他方の半分と50%重複され、それによって、前記コイルの長さは、各コイル対間の前記分離距離の1.5倍に等しい、項目2に記載のシステム。
(項目5)
一対の各コイルは、2つの個々のコイルを含む、項目1に記載のシステム。
(項目6)
スイッチをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記スイッチは、別個のタイムスライスの中で前記セクタおよび振幅を選択するソリッドステートスイッチである、項目6に記載のシステム。
(項目8)
処置監視、調節、および報告のための磁気共鳴サーモグラフィ撮像(MRTI)装置をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目9)
各セクタはさらに、各コイルの前記長さに沿って設置された1つまたは複数の直列の同調コンデンサを備える、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記基部およびコイル対は、異なる対象サイズおよび治療用途に適合するように可変である、項目1に記載のシステム。
(項目11)
空冷装置をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記印加されるRFは、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択される、項目1に記載のシステム。
(項目13)
局所領域的温熱療法を必要とする対象において局所領域的温熱療法を誘発するための方法であって、
a)複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御するための装置を提供することであって、前記装置は、
(I)前記対象を収容するための、基部と、
(II)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、前記対の各コイルは、前記他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、前記対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.前記対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または前記分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
(III)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、前記対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と
を備える、ことと、
b)前記対象のサイズおよび所望される加熱深度に基づいて、各セクタ内のコイルのサイズおよび前記基部のサイズを調節することと、
c)前記基部上に前記対象を設置することと、
d)複数のH場を発生させることにより、前記対象における前記所望される深度において標的化された加熱を生じさせることと
を含む、方法。
(項目14)
前記対象は、哺乳類である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記哺乳類は、ヒトと、家畜動物と、農業用動物とから成る群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記対象は、ヒトである、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記所望される加熱深度は、10cmを上回る、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記印加されるRFは、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択される、項目13に記載の方法。
(項目19)
複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムであって、
a)置換可能な基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、前記対の各コイルは、前記他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、前記対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.前記対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または前記分離距離を上回り、
iv.各コイルの長さは、各コイル対間の分離距離の1.5倍に等しい、または前記分離距離の1.5倍を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、前記対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と、
d)ソリッドステートスイッチと、
e)空冷装置と、随意に、
f)MRTI装置と
を備える、システム。
(項目20)
前記印加されるRFは、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択される、項目19に記載のシステム。
(項目21)
実質的に図1から図5Bに開示されるような装置。
(項目22)
実質的に図5Aに開示されるようなシステム。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本特許または出願申請書は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を伴う本特許または特許出願公開文書の複写物は、要求および必要な手数料の支払に応じて、特許庁によって提供されるであろう。
【0011】
【
図1】
図1は、2つのH場が、(隠された軸において)反対の位相で発生させられるように配列される単一のコイルを示す。コイルは、いかなる点においても給電され得るが、実践的には、左側または右側の最長縁のうちの一方上で給電され得る。本電磁気設計はまた、各電流回転方向に1つずつ、かつ緊密に重ねられた、2つのコイルを用いて遂行される。
【0012】
【
図2】
図2は、例えば、間に20cmの筋肉組織が、設置されている、(20)(例えば、25cm)の距離だけ分離される、
図1からの一対のコイル(10aおよび10b)を含有する、セクタ(1)を示すモデル描写である。示されるように、各コイルの幅(30a、30b)は、各コイル対(10a、10b)間の分離距離(20)に等しい。
【0013】
【
図3】
図3は、コイル対によって発生された、2つの反対の位相のH場を示す、EM-FDTDソフトウェアを用いて解明された、結果として生じるH場プロット(対称的スライス)である。
【0014】
【
図4】
図4は、発生させられた渦電流、特に、コイル対による、中心における相加的領域を示す、EM-FDTDソフトウェアを用いて解明された、結果として生じるE場プロット(対称的スライス)である。
【0015】
【
図5A】
図5Aは、システムが、デジタル制御信号(青色)を利用することにより、電力供給し(黒色)、別個のタイムスライスおよび振幅において、二重H場誘電結合コイル対の3つのセクタの選択を切り替えるために、ソリッドステートスイッチおよび1つまたは複数のRF発生器にコマンドすることを示す、概略図である。
【0016】
【
図5B】
図5Bは、本発明の例示的システムの略画である。本システムは、異なる対象の解剖学的構造に従うように、異なるサイズのRF(図示せず)およびMRIコイル(図示せず)の「アプリケータ」(30)と入替可能である、MRI対応ソリッドステートスイッチ(図示せず)およびRFトラップ(図示せず)とを含有する「基部」(10)を利用する。また、示されるものは、交換可能な発泡体パッド(
図6D参照、水色で示される)を通して拡散されるべき、加圧空気を用いた対象の冷却および快適性のための溝(20)である。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【
図7C】
図7Cは、蝶コイルの配列、およびヒト組織をシミュレートするための豚挽肉を含有する箱を示す。
【0021】
【
図8】
図8は、温度プローブ設置のための軸を示す。
【0022】
【0023】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムと、それを使用して、対象において局所領域的温熱療法を誘発するための方法とを開示する。
【0026】
本発明の一実施形態は、複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムである。本システムは、
a)対象を収容するために十分な寸法の基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と
を備える。
【0027】
本明細書で使用される場合、「比吸収率」または「SAR」は、エネルギーが、無線周波数(RF)電磁場に暴露されたときに人体によって吸収される率の測度を指す。これはまた、超音波を含む、組織によるエネルギーの他の形態の吸収を指し得る。これは、組織の質量あたり吸収される電力として定義され、キログラム毎ワット(W/kg)の単位を有する。20W/kgを上回るSARは、臨床的に意義があると見なされる。
【0028】
いくつかの実施形態では、所定の設計は、実質的に
図1および
図2に示されるように、「蝶」の形状で構成される。「蝶」の構成が、本明細書に描写され、説明されているが、所望される深部加熱効果が取得される限り、コイル対は、他の形状で構成され得る。「蝶」構成に関して、ある実施形態では、蝶の一方の半分は、他方の半分と重複される。ある実施形態では、蝶の一方の半分は、他方の半分と50%重複され、それによって、コイルの長さは、コイル対間の分離距離の1.5倍に等しい。ある実施形態では、各単一のコイルは、2つの個々のコイルを含み、2つの個々のコイルは、例えば、2つのコイルとして製造され、それぞれ、0°および180°において電力供給され、同一の機能を達成する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本システムはさらに、2017年7月18日に出願された、Andersonらの第USSN15/653,462号(参照によって本明細書に援用される)において以前に説明されたスイッチング装置を備える。そのようなスイッチング装置を組み込むことによって、本発明は、1~10個、または好ましくは、1個、2個、3個、もしくは4個のRF発生器等の1つまたは複数のRF発生器と、スイッチングネットワークとを含有し、コイルの対を制御し、深部における選択的加熱を生じさせる、非常にコスト効率的かつ競争力のあるシステムを可能にする。ある実施形態では、スイッチング装置は、不慮のホットスポット生成を回避しながら所望される領域を加熱するために、別個のタイムスライスにおいてセクタおよび振幅を選択するソリッドステートスイッチを備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、本システムはさらに、治療監視、調節、および報告のための磁気共鳴サーモグラフィ撮像(MRTI)システムを備える。
【0031】
いくつかの実施形態では、各セクタはさらに、場の均質性を向上させ、放射されるE場の大きさを低減させ、調整を改良するために、1つまたは複数のコイルの長さに沿って設置される、1つまたは複数の直列の同調コンデンサを備える。
【0032】
いくつかの実施形態では、異なるサイズの対象を処置する、または構成要素コストを最小限にしながら付加的な療法的治療選択肢を提供するために、基部のサイズは、調節可能/置換可能であり、かつ、コイルのサイズは、調節可能/置換可能である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本システムはさらに、手技全体を通して対象の快適性を最大限にするために、例えば、基部内の膜を通した空冷装置を備える。例示的空冷装置は、例えば、0.5以下の充填密度と、対象を支持するために十分な弾性率とを伴う、連続気泡化された、拡散空冷発泡体であることができる。空冷装置は、これが、MRI室において最小限の空間を占め、したがって、通常のMRIワークフローに最小限の影響を及ぼすため、RF温熱療法において重要である。空気が、外側から中に取り込まれ、2インチの導波路を通過する。空気の主要な経路は、以下のとおりである。すなわち、空気が、対象の冷却(濃青色)と、電気構成要素の冷却(水色)(
図6A)とに分割され、これは、ガスケットおよびOリング(
図6B、黒色で示される)を介して、デバイスのヒンジにおいてシールされ、空気は、Berkeley comfortモデル(https://www.cbe.berkeley.edu/research/briefs-thermmodel.htmを参照)を使用して「涼」感覚を提供するために適切な空気速度になるように設計され、空気は、次いで、溝の中に送出され(
図6C)、これは、使い捨て可能な挿入発泡体パッドを通して拡散される(
図6D、水色で示される)。
【0034】
本発明の別の実施形態は、局所領域的温熱療法を必要とする対象において局所領域的温熱療法を誘発するための方法である。本方法は、
a)複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御するための装置を提供することであって、装置は、
(I)対象を収容するための基部と、
(II)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または分離距離を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
(III)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と
を備える、ことと、
b)対象のサイズおよび所望される加熱深度に基づいて、各セクタ内のコイルサイズおよび基部のサイズを調節することと、
c)基部上に対象を設置することと、
d)複数のH場を発生させることにより、対象における所望される深度において標的化された加熱を生じさせることと
を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「対象」は、哺乳類、好ましくは、ヒトである。ヒトに加えて、本発明の範囲内の哺乳類のカテゴリは、例えば、農業用動物、家畜動物、実験動物等を含む。農業用動物のいくつかの例は、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ等を含む。家畜動物のいくつかの例は、イヌ、ネコ等を含む。実験動物のいくつかの例は、霊長目動物、ラット、ハツカネズミ、ウサギ、モルモット等を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、所望される加熱深度は、2cmを上回る、5cmを上回る、10cmを上回る、15cmを上回る、20cmを上回る、25cmを上回る、30cmを上回る、35cmを上回る、40cmを上回る、45cmを上回る、または50cmを上回る。ある実施形態では、所望される加熱深度は、約55cmである。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態は、複数のH場を発生させることにより、深部E場発生を相加的に組み合わせかつ制御し、臨床的に容認可能な集中型加熱をもたらすためのシステムである。本システムは、
a)置換可能な基部と、
b)1つまたは複数のセクタであって、
i.各セクタは、少なくとも一対のコイルを備え、対の各コイルは、他のコイルに略平行であり、他のコイルに面し、対の各コイルは、ある距離だけ分離され、
ii.対の各コイルは、所定の設計で配列され、
iii.各コイルの幅は、各コイル対間の分離距離に等しい、または分離距離を上回り、
iv.各コイルの長さは、各コイル対間の分離距離の1.5倍に等しい、または分離距離の1.5倍を上回る、
1つまたは複数のセクタと、
c)比吸収率(SAR)パターンを所望される方向に移動させるために、対の各コイル上に印加されるRFの振幅を制御する1つまたは複数の無線周波数(RF)発生器と、
d)ソリッドステートスイッチと、
e)空冷装置と、随意に、
f)MRTI装置と
を備える。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステムおよび方法において印加される無線周波数(RF)は、13.56MHz、27.1MHz、または40.68MHzから選択されることができる。
【0039】
本発明の別の実施形態は、実質的に
図1から
図5Bに開示されるような装置である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、実質的に
図5Aに開示されるようなシステムである。
【実施例】
【0041】
本発明はさらに、以下の実施例によって例証され、これは、例証の目的のために提供され、本発明をいかようにも限定することを意図されるものではない。当業者は、本質的に同一の結果をもたらすように変更または修正され得る、種々の重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【0042】
(実施例1)
システム設定および結果
システムを、
図7Aに示されるように接続した。コイルを、180度に位相係止された2つの無線周波数発生器によって電力供給した(
図7B)。各発生器は、インラインでコイルに接続される整合ネットワークを有していた。2つの蝶コイルを、肉箱の上部および底部に取り付けた(
図7C)。ヒト組織をシミュレートするために、箱を、100ポンドの豚挽肉(脂肪含有量約10~15%)で充填した。発生器毎の電力メータを、SWRおよび電力測定のためのネットワークを整合させた後に、接続した。
【0043】
温度点の設置を制御するために、プローブを、深部導入器を使用して設置さした。電磁場の影響を受けない、光ファイバ温度システムを用いて温度を測定した。プローブ設置点のための軸が、
図8に示されている。各正の軸が、示されている。試験毎に、プローブ位置を、示される軸を使用して保存した。
【0044】
試験結果を記録し、これは、
図9(1インチ深度試験)、
図10(4インチ深度試験)、および
図11(中心線試験)に示された。実際の温度結果は、熱的シミュレーションと良好に一致した。
【0045】
上記に引用される特許、特許出願、および公開文書は全て、本明細書に完全に記載されたかのように、参照によってそれらの全体として本明細書に援用される。
【0046】
本発明は、上記のように説明されるが、それが、多くの方法において変動され得ることが、明らかである。そのような変形例は、本発明の精神および範囲からの逸脱として見なされるものではなく、そのような修正は全て、以下の請求項の範囲内に含まれると意図される。