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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】量子制御デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20231107BHJP
   B82Y 10/00 20110101ALI20231107BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20231107BHJP
【FI】
H01L29/06 601N
B82Y10/00
B82Y30/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021553761
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CA2020050291
(87)【国際公開番号】W WO2020181362
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】62/815,974
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521404646
【氏名又は名称】インフィニット ポテンシャル ラボラトリーズ リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】フィリオン-グルドー フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】レヴェスク ピエール ルイ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン ジャン-フィリップ ダブリュー
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-532181(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015738(WO,A1)
【文献】特開2010-135761(JP,A)
【文献】特表2011-512525(JP,A)
【文献】特開2000-286245(JP,A)
【文献】特開2017-123078(JP,A)
【文献】特開2006-135263(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2006-0025999(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/66
B82Y 10/00
B82Y 30/00
G06N 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面を備える基材と、
前記基材表面の上にあり空洞を画成する絶縁体層であって、前記空洞への開口部を画成する絶縁体表面を備える、絶縁体層と、
前記絶縁体表面の上にあり前記空洞への前記開口部の上に定置される標的領域を備える、場反応性層と、
前記基材から前記空洞内へと延在し先端部において終端する突起であって、前記突起は前記標的領域の量子状態と相互作用する電場を生むように構成されており、前記先端部は前記空洞内に定置され、前記突起が生む前記電場を集中させるように構成されている、突起と、
を備える、量子制御デバイス。
【請求項2】
前記先端部は前記空洞内で前記標的領域から100nm未満に定置される、請求項1に記載の量子制御デバイス。
【請求項3】
前記突起は2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する、請求項1に記載の量子制御デバイス。
【請求項4】
前記突起の前記先端部は、前記電場を前記標的領域において少なくとも1×109V/mの大きさまで集中させるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の量子制御デバイス。
【請求項5】
前記場反応性層は複数の層を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の量子制御デバイス。
【請求項6】
前記複数の層は、
前記標的領域を包含している標的層と、
前記絶縁体層と前記標的層の間に配設されている中間層と、を備え、
前記中間層の厚さは、前記突起の前記先端部と前記場反応性層の前記標的領域の間の距離の一部である、請求項5に記載の量子制御デバイス。
【請求項7】
前記基材の下にある、電気コンタクトを備えるアドレッシング層を備え、前記電気コンタクトは、前記突起の基部と対向する、請求項1~4のいずれか1項に記載の量子制御デバイス。
【請求項8】
前記電気コンタクトは前記基材から電気信号を受け取るように構成されており、前記電気信号は前記標的領域の前記量子状態を特徴付けるものであり、前記基材は前記突起から前記電気コンタクトへと前記電気信号を伝達するように構成されている、請求項7に記載の量子制御デバイス。
【請求項9】
前記標的領域上へと光線を導くように構成されているレーザと、
前記光線を受けることに反応して前記標的領域から放射される電子を受け取るように構成されている、電子分光計と、
を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の量子制御デバイス。
【請求項10】
前記標的領域から光子を受け取るように構成されている光学分光計を備える、請求項9に記載の量子制御デバイス。
【請求項11】
前記絶縁体層、前記場反応性層、前記空洞、またはこれらの任意の組合せによって画成される光導波路を備え、
前記光導波路は、前記標的領域の前記量子状態に結合する光子を伝播させるように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の量子制御デバイス。
【請求項12】
基材上の突起から電場を生成することであって、前記突起は、前記基材の基材表面から絶縁体層によって画成される空洞内へと延在し、前記絶縁体層は前記基材表面の上に配設されており、前記空洞への開口部を画成する絶縁体表面を備える、生成することと、
場反応性層の標的領域において前記電場を受けることであって、前記場反応性層は前記絶縁体層の上に配設されており、前記標的領域は前記空洞の前記開口部の上に定置されている、受けることと、
前記場反応性層の前記標的領域の量子状態と相互作用するように前記電場を制御することと、
を含む、量子制御方法。
【請求項13】
前記突起において前記電場を生成することは、前記突起の先端部を用いて前記電場を集中させることを含み、
前記標的領域において前記電場を受けることは、前記標的領域において前記集中させた電場を受けることを含む、
請求項12に記載の量子制御方法。
【請求項14】
前記集中させた電場は前記標的領域において少なくとも1×109V/mの大きさを有する、請求項13に記載の量子制御方法。
【請求項15】
前記突起から前記基材の下にあり前記突起の基部の反対側にある電気コンタクトへと電気信号を伝達することであって、前記電気信号は前記標的領域の前記量子状態を特徴付けるものである、伝達すること、
を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の量子制御方法。
【請求項16】
前記場反応性層の前記標的領域において光線を受けること
を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の量子制御方法。
【請求項17】
前記光線に反応して前記標的領域から放射された電子を電子分光計において受けること
を含む、請求項16に記載の量子制御方法。
【請求項18】
前記量子状態と相互作用するように前記電場を制御することは、前記場反応性層の前記標的領域の前記量子状態を変更するために前記電場の大きさを変更することを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の量子制御方法。
【請求項19】
前記電場を生成している間に、前記突起から前記場反応性層の前記標的領域へと電子を伝達すること
を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の量子制御方法。
【請求項20】
前記先端部は前記空洞内で前記標的領域から100nm未満に定置される、請求項13又は14に記載の量子制御方法。
【請求項21】
前記突起は2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の量子制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2019年3月8日出願の米国仮特許出願第62/815,974号に対する優先権を主張し、当該出願の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の記載は、量子制御デバイス、および量子制御デバイスを動作させるための方法に関する。
【0003】
有用なデバイスを作り出すために材料に電場を印加する場合がある。例えば、電気エネルギーを貯蔵できるコンデンサを作り出すために、強誘電物質に電場を印加する場合がある。別の例では、物体を変位させることのできるアクチュエータを作り出すために、圧電物質に電場を印加する場合がある。現在のところ、電場は主として、物質の古典的特性に基づくデバイスにおいて使用されている。これらの古典的特性は、巨視的なスケールの(例えば、10μmよりも大きい)長さで現れる物質の特性をもたらし得る。しかしながら、電場が物質の量子特性と相互作用する能力によって、新しいタイプの有用なデバイスがもたらされる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】基材と突起とを有する例示の量子制御デバイスの概略図である。
図1B】密閉空間が誘電体材料によって完全に充填されている、図1Aの例示の量子制御デバイスの概略図である。
図1C】場反応性層(field-responsive layer)が標的層と中間層とを含む、図1Aの例示の量子制御デバイスの概略図である。
図2A】理論上の境界を有する例示の200nmグラフェンフレークに対する電場のシミュレーション上の影響を示す、4つの等高線図を提示する図である。
図2B】理論上の境界を有する例示の200nmグラフェンフレークに対する電場および12T磁場のシミュレーション上の影響を示す、4つの等高線図を提示する図である。
図3A】基材上に配設された複数の突起を含む例示の量子制御デバイスの概略斜視図である。
図3B図3Aの例示の量子制御デバイスの概略断面図である。
図4A】基材から絶縁体層の対応する空洞内へと延在して矩形のアレイを画成している複数の突起の、概略上面図である。
図4B】基材から絶縁体層の対応する空洞内へと延在して六角形のアレイを画成している複数の突起の、概略上面図である。
図4C】基材から絶縁体層の対応する空洞内へと延在して矩形のアレイを画成している複数の突起のサブセットの、概略上面図である。
図5A】基材に回折パターンのアレイが形成されている例示の量子制御デバイスの概略断面図である。
図5B図5Aの例示の量子制御デバイスの概略底面図である。
図6A】基材上にレンズのアレイが形成されている例示の量子制御デバイスの概略断面図である。
図6B図6Aの例示の量子制御デバイスの概略底面図である。
図7A】複数の空孔を含む導電層を有する例示の量子制御デバイスの概略断面図である。
図7B図7Aの例示の量子制御デバイスの概略底面図である。
図8図3Aの例示の量子制御デバイスの2つの実例のものであって、これらの実例が互いに面して場反応性層を共有している、概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここに記載されている内容のいくつかの態様では、電場を使用して量子状態と相互作用する量子制御デバイスが提示される。特に、量子制御デバイスは、基材表面を有する基材を含み得る。絶縁体層が基材表面の上に配設され、空洞を画成する。絶縁体層は、空洞への開口部を画成する絶縁体表面を含む。量子制御デバイスはまた、絶縁体表面の上の場反応性層も含む。場反応性層は、空洞への開口部の上に定置される標的領域を含む。量子制御デバイスは、基材から空洞内へと延在し先端部で終端する突起を更に含む。突起は、標的領域の量子状態と相互作用する電場を生むように構成されている。先端部は空洞内に定置され、突起が生む電場を集中させるように構成されている。
【0006】
ここに記載されている内容のいくつかの態様では、量子制御デバイスは、基材と空洞のアレイを画成する絶縁体層とを含み得る。場反応性層は絶縁体層の上に配設されており、対応する空洞と各々位置合わせされている標的領域のアレイを含む。量子制御デバイスはまた、基材から対応する空洞内へと延在する突起も含み得る。突起は、[1]突起に近接した標的領域の量子状態と相互作用し、[2]標的領域の量子状態と隣り合う標的領域の量子状態との間の量子結合を制御する、電場を生むように構成されている。突起のアレイは、量子制御デバイスが各標的領域の量子状態を相関させ、このことにより1つまたは複数の集合的な量子状態を確立することを可能にし得る。
【0007】
ここで図1Aを参照すると、基材102およびそこから延在する突起104を有する例示の量子制御デバイス100の概略断面図が提示されている。図1Aに示すように、基材102は、平面状の表面であり得る基材表面106を含む。基材102は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン-ゲルマニウム合金、およびヒ化ガリウムなどの、半導体材料で形成され得る。しかしながら、他の材料(例えば、絶縁体または金属材料)が可能である。突起104は基材表面106から空洞108内へと延在しており、柱状の構造体を画成し得る。しかしながら、他の形状(例えば、角錐形、半球形、くさび形状、等)が可能である。突起104は、図1Aに示すように基材102の一部であってもよく、または別法として、基材102に結合された別個の構造体であってもよい。突起104は基材102と同じ材料で形成されても、基材102とは異なる材料で形成されてもよい。例えば、突起104は、金属材料(例えば、Mo、W、Cu、等)、半導体材料(例えば、Si、Ge、Si-Ge合金、GaN、GaAs、等)、炭素質材料(例えば、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、カーボンナノロッド、等)、またはセラミック材料(例えば、六方晶窒化ホウ素、金属酸化物、等)で形成され得る。他の材料が可能である。
【0008】
例示の量子制御デバイス100は、基材表面106の上に配設され空洞108を画成する、絶縁体層110を含む。絶縁体層110は、空洞108への開口部114を画成する絶縁体表面112を含む。絶縁体表面112は平面状の表面であってもよく、また更に基材表面106と平行であってもよい。絶縁体層110は、図1Aに示すように基材表面106と接触していてもよく、または別法として、1つもしくは複数の中間層を介して基材102に結合されてもよい。そのような中間層は、基材102への絶縁体層110の結合を改善し得る。
【0009】
いくつかの実装形態では、空洞108は、絶縁体層110を完全に貫通して配設される。これらの実装形態では、空洞108は、長手軸線と断面領域とによって画成され得る。長手軸線は、直線状、曲線状、またはこれらの何らかの組合せであってもよい。断面領域は、任意のタイプの外周(例えば、円、六角形、楕円形、平行四辺形、等)によって境界付けることができる。断面領域はまた、長手軸線に沿って一定のままであっても、絶縁体層110にわたる距離に伴って変化してもよい。例えば、空洞108は、直線状の長手軸線と半径が一定の円形の断面領域とによって画成される、円筒形の空洞であってもよい。別の例では、空洞108は、直線状の長手軸線と絶縁体表面112からの距離に伴ってサイズが小さくなる断面領域とによって画成される、円錐台形状を有し得る。空洞108の他の形状が可能である。
【0010】
いくつかの実装形態では、絶縁体層110は、1×108Ω・cm以上の電気抵抗率を有する材料で形成される。そのような材料の例としては、酸化アルミニウム(例えば、Al23)、酸化シリコン(例えば、SiO2、SiOx、等)、窒化シリコン(例えば、Si34)、酸窒化ケイ素(例えば、SiOxy)、酸化ハフニウム(例えば、HfO2)、窒化チタン(例えば、TiN)、などが挙げられる。いくつかの実装形態では、材料は、室温で1×1010Ω・cm以上の電気抵抗率を有する。いくつかの実装形態では、材料は、室温で1×1012Ω・cm以上の電気抵抗率を有する。いくつかの実装形態では、材料は、室温で1×1014Ω・cm以上の電気抵抗率を有する。
【0011】
例示の量子制御デバイス100はまた、絶縁体表面112の上に配設されており標的領域118を含む、場反応性層116も含む。標的領域118は、空洞108への開口部114の上に定置され、開口部114の上で突起104に対向して中心に配置され得る。ただし、標的領域118の他の位置が可能である(例えば、中心から外れている、突起104からずらされている、等)。いくつかの場合には、場反応性層116はパターン化された層であり、2つ以上の材料で形成され得る。いくつかの場合には、場反応性層116は複数の層を含む。複数の層は、強磁性層、および反強磁性層、超電導層、またはこれらの任意の組合せを含み得る。他のタイプの層が可能である。また更に、複数の層は、他の層(例えば、強磁性層、反強磁性層、超電導層、等)同士の間にサンドイッチされた強磁性層、反強磁性層、および超電導層のうちの1つまたは複数を有する、サンドイッチ状の構造体を画成し得る。
【0012】
場反応性層116は、電場に反応して変化する、標的領域118と関連付けられた1つまたは複数の量子状態を有し得る。1つまたは複数の量子状態の例としては、電子バンド構造、電子スピン、核スピン、磁気秩序、磁気モーメント、強誘電秩序、強誘電モーメント、原子秩序、光遷移、フォノン分散、1つまたは複数の離散的エネルギー準位、などに基づくものが挙げられる。量子状態の重ね合わせおよび量子状態のもつれ合いに基づくものなどを含め、他のタイプの量子状態が可能である。
【0013】
標的領域118は、1つもしくは複数の量子状態が標的領域118内に現れるのを可能にする、1つもしくは複数の量子状態と電場の間の相互作用を高める、またはその両方である、反応性層116の原子構造の特徴を含み得る。原子構造は、2次元原子構造、3次元原子構造、非晶質原子構造、またはこれらの何らかの組合せであり得る。例えば、場反応性層116はグラフェンの層を含む場合があり、これは2次元原子構造に相当する。他の2次元原子構造の例としては、六方晶窒化ホウ素(例えば、h-BN)の層、硫化モリブデン(例えば、MoS2)の層、および硫化タングステン(例えば、WS2)の層が挙げられる。別の例では、場反応性層116は、場反応性層116の外側表面または内側表面上などに、ダイヤモンドで形成された3次元の島状部(island)を含み得る。3次元の島状部は、部分的にまたは全体が場反応性層内に埋め込まれ得る。更に別の例では、場反応性層116は、金属ガラス(例えば、金、銀、鉄とホウ素の非晶質合金)で形成されたナノ粒子を含み得る。金属ガラスは磁気モーメントを有し得る。
【0014】
いくつかの実装形態では、標的領域118は、場反応性層116の原子構造における侵入部(inclusion)を含む。侵入部は、原子(または原子団)が原子構造における格子間空間を占有する結果生じ得る。いくつかの実装形態では、標的領域は、場反応性層の原子構造における置換部(substitution)を含む。置換部は、原子構造における1つまたは複数の原子と他の原子との化学的置換または同位体置換の結果生じ得る。いくつかの実装形態では、標的領域118は、場反応性層116の原子構造における空所を含む。
【0015】
いくつかの実装形態では、標的領域118は、場反応性層116の表面上の原子または分子を含む。原子または分子は、複数の原子または分子を含んでもよく、したがって、個々の原子、原子のクラスター、化学官能基、ナノ粒子、1つまたは複数の分子、原子または分子の2次元の島状部、原子の規則的な配置に基づく積層ヘテロ構造、原子のパターン化された被覆層、などであり得る。原子または分子は、場反応性層116の外側表面上に配設され得る。原子または分子はまた、場反応性層116の内側表面上にも配設され得る。いくつかの場合には、場反応性層116の外側表面および内側表面の両方の上に、原子または分子が配設されている。
【0016】
例示の量子制御デバイス100は、先端部120において終端する突起104を更に含む。いくつかの変形形態では、突起104の複数の実例が、基材102から空洞108内へと延在し得る(すなわち、複数の突起104)。突起104は、2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有し得る。いくつかの場合には、突起104は、20:1~200:1の範囲内の高さ対幅比を有し得る。突起104は、標的領域118の量子状態と相互作用する電場を生むように構成されている。先端部120は空洞108内に定置され、突起104が生む電場を集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部120は、電場を標的領域118において少なくとも1×105V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部120は、電場を標的領域118において少なくとも1×109V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部120は、電場を標的領域118において少なくとも1×1010V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部120は、電場を標的領域118において少なくとも1×1011V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部120は、電場を標的領域118において少なくとも1×1012V/mの大きさまで集中させるように構成されている。
【0017】
電場の集中は、先端部120の形状および標的領域118に対する先端部120の配置によって助長され得る。例えば、先端部120は円錐形状を有してもよく、その細くなるテーパは、実質的に狭くなった表面から電場を発生させることを可能にする。先端部120はまた、電場を集中させるのを助けるテクスチャ化表面およびナノ粒子の一方または両方も含み得る。先端部120は、電場を集中させるのを助ける下位構造、例えば格子結合器を更に含み得る。別の例では、先端部120は、空洞108内で標的領域118から100nm未満に定置され得る。そのような配置は、標的領域118が高電場(例えば、少なくとも1×105V/mの大きさ)を経験することを可能にし得る。いくつかの場合には、先端部120は、空洞108内で標的領域118から20nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部120は、空洞108内で標的領域118から15nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部120は、空洞108内で標的領域118から10nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部120は、空洞108内で標的領域118から5nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部120は、空洞108内で標的領域118から1nm未満に定置される。
【0018】
いくつかの実装形態では、突起104は、高い電場(または強い印加電圧)下での電子放射に耐性のある材料で形成される。例えば、突起104は、少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成され得る。そのような材料の例としては、半導体材料(例えば、Si、Ge、およびSi-Ge合金)、金属材料(例えば、Mo、W、およびCu)、セラミック材料(例えば、h-BN、WOx、およびMoOx)、ならびに炭素質材料(例えば、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、およびカーボンナノロッド)が挙げられる。いくつかの場合には、突起104は、少なくとも4.2eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、突起104は、少なくとも4.4eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、突起104は、少なくとも4.6eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、突起104は、少なくとも4.8eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、突起104は、少なくとも5.0eVの仕事関数を有する材料で形成される。
【0019】
半導体材料で形成される場合、突起104は、突起104内にp型ドーパント、n型ドーパント、または両方の空間分布を定めるドーピングプロファイルを含み得る。空間分布は、単純(例えば、均一な分布)であっても、複雑(例えば、突起104に沿って1つまたは複数のp-n接合を確立する分布)であってもよい。いくつかの場合には、突起104は導電材料で形成される。導電材料は、室温で100Ω・cm未満の電気抵抗率を有し得る。例えば、導電材料は、2~50Ω・cmの範囲内の室温電気抵抗率を有する、ドープシリコン材料であってもよい。また別の場合には、導電材料は、1×10-1Ω・cm未満の電気抵抗率を有し得る。いくつかの変形形態では、突起104は、活性化させると(例えば、突起104に電圧が印加されると)導電性になる材料で形成される。材料は活性化させると100Ω・cm未満の電気抵抗率へと移行する。いくつかの場合には、突起104はコーティングされた外面を含み得る。例えば、突起104は第1の材料(例えばSi)で形成され、第1の材料よりも高い仕事関数を有する第2の材料(例えばPt)でコーティングされてもよい。いくつかの変形形態では、第2の材料は超伝導材料であってもよい。
【0020】
いくつかの実装形態では、基材102、絶縁体層110、および場反応性層116は、空洞108内に密閉空間122を画成する(図1Aにおける点線を参照されたい)。密閉空間122は、突起と絶縁体層の間に第1のクリアランス容積124を含む。第1のクリアランス容積124は、突起104の側部と空洞108の側壁の間の容積を含み得る。いくつかの場合には、密閉空間122はまた、突起104と場反応性層116の間に第2のクリアランス容積126も含み得る。第2のクリアランス容積126は、突起104の先端部120と場反応性層116の内側表面の間の容積を含み得る。密閉空間122は、突起104を絶縁体層110から電気的に隔離するように動作可能である。密閉空間122はまた、絶縁体層110が絶縁体層110の対応する空洞内において突起104を他の突起から電気的に隔離するのも補助し得る(例えば、量子制御デバイスが量子制御デバイスのアレイの一部である場合)。
【0021】
密閉空間122は、全部分を含め、その任意の部分内に真空を含み得る。いくつかの場合には、密閉空間122は10-5トール以下の真空圧を閉じ込めている。いくつかの場合には、密閉空間122は10-8トール以下の真空圧を閉じ込めている。密閉空間122はまた、誘電体材料で少なくとも部分的に充填され得る。そのような充填によって、密閉空間122を1つまたは複数の内部チャンバへと区切ること、または別法として、密閉空間122を完全に充填することができる。図1Bには、密閉空間122が誘電体材料によって完全に充填されている、図1Aの例示の量子制御デバイス100の概略図が提示されている。誘電体材料は、1~10までの範囲の誘電率を有する材料であってもよい。いくつかの場合には、誘電体材料は10よりも大きい誘電率を有する。いくつかの場合には、誘電体材料は100よりも大きい誘電率を有する。誘電体材料はまた、0.05V/nmよりも大きい、および多くの変形形態では1V/nmよりも大きい、絶縁耐力も有し得る。そのような材料の例としては、酸化シリコン(例えば、SiO2)、窒化シリコン(例えば、Si34)、窒化ホウ素(例えば、hーBN)、およびダイヤモンドが挙げられる。いくつかの場合には、誘電体材料は、絶縁体層110と同じ材料で形成され得る。
【0022】
いくつかの実装形態では、絶縁体層110は、空洞108の少なくとも一部を画成する、突起104を取り囲む内側側壁134を含む。内側側壁134は、空洞108への開口部114において絶縁体表面112に接し得る。いくつかの場合には、内側側壁134は、間隙を作り出すように突起104から変位される(例えば、図1A図1Cを参照)。間隙は、突起104の第1のクリアランス容積124に寄与し得る。いくつかの場合には、内側側壁134は、突起104の表面の少なくとも一部に沿って突起104に接触し得る。そのような接触によって、突起104を絶縁体層110内に埋め込むことができる。
【0023】
更なる実装形態では、開口部114は空洞108の第1の開口部114であり、絶縁体表面112は絶縁体層110の第1の絶縁体表面112である。絶縁体層110は、基材表面106に結合されており第1の絶縁体表面112の反対側にある第2の絶縁体表面136を含む。そのような結合は、第2の絶縁体表面136と基材表面106の間の直接接触を含み得るか、または別法として、1つもしくは複数の中間層を介して行われ得る。1つまたは複数の中間層は、基材102への絶縁体層110の結合を改善し得る。いくつかの場合には、基材表面106、第1の絶縁体表面112、および第2の絶縁体表面136は、平面状の表面である。これらの実施形態では、内側側壁134は絶縁体層110の厚さの中に延在し、空洞108の第2の開口部138において第2の絶縁体表面136に接する。突起104は、基材102から空洞108の第2の開口部138を通って延在し、絶縁体層110の厚さ未満の基材102からの高さまで延在する。
【0024】
例示の量子制御デバイス100は、突起104の基部132の反対側にある電気コンタクト130を含む、基材102の下にあるアドレッシング層128を含み得る。アドレッシング層128は、図1Aに示すように基材102と接触していてもよく、または別法として、1つもしくは複数の中間層を介して基材102に結合されてもよい。そのような中間層は、基材102へのアドレッシング層128の結合を改善し得る。電気コンタクト130は、基材102に電圧を送達するように構成され得る。電気コンタクト130はまた、基材102から標的領域118の量子状態を表す電気信号を受け取るようにも構成され得る。この能力において、電気コンタクト130は、標的領域118の量子状態を特徴付けるために使用され得る。
【0025】
アドレッシング層128を有する実装形態では、基材102は、電場を生むために電圧を突起104に伝達する、および突起104からの電気信号を電気コンタクト130に伝達するように構成され得る。基材102の電圧ポテンシャルは、突起104の先端部120の電圧ポテンシャルから独立して制御され得る。そのような独立した制御は、アドレッシング層128および電気コンタクト130によって補助され得る。
【0026】
動作中、例示の量子制御デバイス100は、基材102(または存在する場合の電気コンタクト130)と場反応性層116(またはその上の層)の間の電圧ポテンシャルを経験する。特に、基材102(または電気コンタクト130)に電圧を印加することができ、この電圧は次いで突起104へと伝達されて、電圧ポテンシャルを確立する。電圧は連続的に適用してもまたは電圧パルスを介して適用してもよい。電圧パルスは、1ミリ秒以下の持続時間を有し得る。いくつかの場合には、持続時間は1ピコ秒以下である。いくつかの場合には、持続時間は100フェムト秒以下(例えば、10~40フェムト秒)である。
【0027】
電圧ポテンシャルを確立するために、電圧をレーザで補足してもよい。例えば、レーザは、標的領域118、突起104(もしくはそれらの複数の場合)、または両方によって受けられる、電磁放射のコヒーレントなビームを生成し得る。受けられると、電磁放射のコヒーレントなビームの電場成分は、突起104(またはそれらの複数の場合)と標的領域118の間の電圧ポテンシャルを変更する(例えば、電圧ポテンシャルを高める)ことができる。電圧ポテンシャルは、ある持続時間を有するパルスを含み得る。いくつかの場合には、パルスの持続時間は1ピコ秒以下である。いくつかの場合には、パルスの持続時間は100フェムト秒以下(例えば、10~40フェムト秒)である。
【0028】
これに反応して電場が生成され、このとき電場は、突起104の先端部120から延びて標的領域118に浸透する。先端部120は部分的に、電場を高い大きさへと集中させるように機能し、その場合標的領域118は、少なくとも1×105V/mの大きさの電場を受けることができる。多くの場合において、大きさは1×109V/mよりも大きい。電場を受けると、標的領域118の1つまたは複数の量子状態が現れ得るか、またはその特徴(例えば、数、占有率、スピン、エネルギー、サイズ、空間分布、他の量子状態への結合、等)が変更され得る。このようにして、電圧ポテンシャルは、標的領域118の1つまたは複数の量子状態の操作を可能にすることができ、いくつかの場合には、場反応性層116の量子状態の操作を可能にし得る。
【0029】
電圧の大きさもしくは周波数の変更によって、または電圧パルスの印加によってなどの、電場の制御によって、1つまたは複数の量子状態との相互作用が可能になり得る。そのような相互作用は、標的領域118(または場反応性層116)の特性を変化させ、1つまたは複数の量子状態によって表される情報の保存および操作を可能にし得る。そのような特性の例としては、光学特性(例えば、光透過、光反射、光放射、偏光、位相、等)、磁気特性(例えば、磁気モーメント、磁気秩序、インダクタンス、等)、熱特性(例えば、比熱、熱伝導性、等)、電気特性(例えば、抵抗率、静電容量、等)、およびこれらの組合せ(例えば、光電子効果、磁気熱量効果、等)が挙げられる。他の特性が可能であり、そのような量子特性は2つ以上の量子状態の相関に基づく。
【0030】
いくつかの実装形態では、電場の制御は、標的領域118内に、複数の離散的エネルギー準位を各々有する1つまたは複数の量子状態をもたらし得る、静電ポテンシャル井戸を確立し得る。複数の離散的エネルギー準位は、電場によって、人工的な原子として機能するように標的領域118を誘導するべく操作され得る。この能力において、標的領域118は、エネルギー準位の対応する離散スペクトルにポピュレートする、離散的な数の電子を含み得る。したがって、標的領域118は、電場によって制御される有効核電荷を有する原子と類似して動作し得る。そのような動作は、標的領域118の表面上の、または別法として標的領域118内に埋め込まれた(例えば侵入部)、量子系によって、実現、制御、もしくは強化され得る。量子系としては、個々の原子、原子のクラスター、化学官能基、ナノ粒子、1つまたは複数の分子、原子または分子の2次元の島状部、原子の規則的な配置に基づく積層ヘテロ構造、原子のパターン化された被覆層、などを挙げることができる。いくつかの場合には、電場は、リュードベリ原子として動作するように標的領域118を誘導することができる。これらの場合には、標的領域118の電子のうちの1つまたは複数を高エネルギーへと励起して、高い主量子数を有する人工的な原子を作り出すことができる。
【0031】
いくつかの実装形態では、標的領域118の表面上の量子系を操作する(例えば、位置を制御する、秩序または配位を変更する、量子状態を変える、等)ために、電場の制御が使用され得る。量子系としては、個々の原子、原子のクラスター、化学官能基、ナノ粒子、1つまたは複数の分子、原子または分子の2次元の島状部、原子の規則的な配置に基づく積層ヘテロ構造、原子のパターン化された被覆層、などを挙げることができる。量子系は、各々が複数の離散的エネルギー準位を有する複数の量子状態を有し得る。また更に、標的領域118は、量子系と関連付けられたエネルギー準位の対応する離散スペクトルにポピュレートする、離散的な数の電子を含み得る。これらの場合には、標的領域118の電子のうちの1つまたは複数を高エネルギーへと励起して、高い主量子数を有する原子(または人工的な原子)を作り出すことができる。いくつかの場合には、量子系としては、リュードベリ原子(例えば、イオン化Cs原子)、リュードベリに似た状態を有する分子(例えば、H2、P2、Cl2、アセチレン、等といった等極二原子分子)、または、標的領域118の表面上のリュードベリに似た状態を有する物質が挙げられる。
【0032】
いくつかの実装形態では、場反応性層116は、図1Cに示すように、標的層140と中間層142とを備える複数の層を含む。標的層140は標的領域118を包含し、中間層142は絶縁体層110と標的層140の間に配設されている。中間層142の厚さ144は、突起104の先端部120と場反応性層116の標的領域118との間の距離146の一部である。距離146は100nm未満であり得る。いくつかの場合には、距離146は、標的領域118から20nm未満である。いくつかの場合には、距離146は、標的領域118から15nm未満である。いくつかの場合には、距離146は、標的領域118から10nm未満である。いくつかの場合には、距離146は、標的領域118から5nm未満である。いくつかの場合には、距離146は、標的領域118から1nm未満である。
【0033】
いくつかの実装形態では、絶縁体層110は、基材表面106の上にある第1の絶縁体層と、第1の絶縁体層と場反応性層116の間の第2の絶縁体層と、を含む。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、場反応性層116の上にある第2の絶縁体層を含む。第2の絶縁体層は、空洞108の開口部114に対向する正孔(hole)を含み得る。更なる実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、第2の絶縁体層の上にある導電層を含む。第2の絶縁体層の正孔は、導電層を通って伝播し得る。
【0034】
例示の量子制御デバイス100は、電場を生成するまたは生成を補助するために、突起104の光学的刺激を利用し得る。いくつかの実装形態では、基材表面106は第1の基材表面であり、基材102は、第1の基材表面の反対側にある第2の基材表面を含む。第1の基材表面、第2の基材表面、および絶縁体表面(または第1の絶縁体表面)は平面状の表面である。基材はまた、突起104の基部132の反対側にある、第2の基材表面上に形成された集光構造体も含む。集光構造体は、光を突起104へと案内するように構成されている。集光構造体の例としては、第2の基材上に形成された回折パターン、および基材表面上に形成されたレンズが挙げられる。これらの構造体は第2の基材表面によって画成され得るか、または別法として、第2の基材表面に結合された別体の構造体によって画成され得る。
【0035】
例示の量子制御デバイス100はまた、突起104が電場を生成するのを補助するために、標的領域118の光学的刺激も利用し得る。いくつかの実装形態では、場反応性層116の標的領域118は、その上に配設されたナノ粒子を含む。ナノ粒子は、標的領域118に衝突する光線(例えば、レーザ光)と関連付けられる電場成分を強化するように作用可能であり得る。強化された電場成分によって、突起104によって生成される電場の大きさを大きくすることができる。ナノ粒子は、場反応性層116の内側表面または外側表面上に配設され得る。いくつかの場合には、標的領域118は、ナノ粒子と一緒に場反応性層116内に埋め込まれる。これらの場合には、ナノ粒子および標的領域118は、場反応性層116における侵入部を画成し得る。
【0036】
いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、光線を標的領域118上へと導くように構成されているレーザを含む。光線は、1つまたは複数のタイプのレーザビームを含み得る。光線はまた、1つまたは複数の周波数の電磁放射(例えば、紫外光の周波数)も含み得る。レーザは、光電子放出のプロセスによって、標的領域118から1つまたは複数の電子を放出するように作用可能であり得る。例示の量子制御デバイス100はまた、光線を受けることに反応して標的領域118から放射された電子を受け取るように構成されている、電子分光計も含む。電子分光計は、電子の特徴(例えば、電子のエネルギー)を測定することによって、標的領域118の1つまたは複数の量子状態の特性を決定可能であり得る。更なる実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、光子の特性を測定することによって標的領域118の1つまたは複数の量子状態の特徴を決定するように構成されている、光学分光計を含み得る。
【0037】
いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、極低温環境において動作するように構成されている。例えば、例示の量子制御デバイス100は、クライオスタット内に配設され得る。極低温環境は、約123K未満(例えば、77K、4K、1K未満、等)の任意の温度を有し得る。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、真空環境において動作するように構成されている。例えば、例示の量子制御デバイス100は、1つまたは複数の真空ポンプ(例えば、回転ベーンポンプ、ターボ分子ポンプ、低温ポンプ、等)に連結された、密封可能な真空チャンバ内に配設され得る。真空環境は、10-1トール未満(例えば、10-3トール、10-6トール、10-9トール、等)の、気体の任意の分圧であり得る。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、磁場(すなわち、
【0038】
【数1】
)内で動作するように構成されている。例えば、例示の量子制御デバイスは、超電導コイルの磁場内に配設され得る。磁場は10mTよりも大きい印加される磁場であり得る。いくつかの変形形態では、印加される磁場は100mTよりも大きい(例えば、300mT)。いくつかの変形形態では、印加される磁場は500mTよりも大きい(例えば、1T、3T、4T、等)。
【0039】
図2Aには、理論上の境界を有する例示の200nmグラフェンフレークに対する電場のシミュレーション上の影響を示す、4つの等高線図200、202、204、206が提示されている。4つの等高線図は、Pybindingライブラリを使用した例示の200nmグラフェンフレーク上の電場のコンピュータシミュレーションから生成される。等高線図200から等高線図206へと順次増加する電場に反応する例示の200nmグラフェンフレークの状態密度が示されている。電場の大きさはβによって表されるが、これは、等高線図200から等高線図202へと、等高線図204へと、および等高線図206へと移るにつれ、0.0からそれぞれ0.4へと、0.8へと、および1.2へと増加する。状態密度は図2Aでは、各等高線図の等高線の基礎を成す、グレーの濃淡で表されている。図2Aの右手のグレースケールの凡例によって、グレーの各濃淡が対応する状態密度の大きさと照合される。グレースケールの凡例における状態密度は、10-3から10-1eV-1・nm-2の範囲にわたる。
【0040】
各等高線図の横座標は、例示の200nmグラフェンフレークの中心(すなわち、r=0nm)からの距離をナノメートルで示す。例示の200nmグラフェンフレークは、場反応性層、例えば図1A図1Cに関連して記載されている場反応性層116を画成し得る。例示の200nmグラフェンフレークの、中心にあるまたは中心に直接隣接した部分もまた、図1A図1Cに関連して記載されている標的領域118などの標的領域を画成し得る。各等高線図の縦座標は、状態密度のエネルギーと関連付けることのできるエネルギー準位を、電子ボルト(eV)で示す。点線208は、電場の存在に反応する電子に関するバンドプロファイルを示す。非ゼロ電場(すなわち、β>0)の場合、バンドプロファイルによって200nmグラフェンフレーク(またはその標的領域)の中心の周囲に静電ポテンシャル井戸が定まり得るが、このことについては後で等高線図200、202、204、206に関連して説明する。
【0041】
等高線図200が示すように、r=-30nmからr=30nmまでの水平距離を移動するとき、β=0における状態密度は一定である。低い状態密度(例えば、約10-3eV-1・nm-2以下)を有するバンド間隔が、r=-30nmからr=30nmまで、0eVのエネルギー準位の両側に広がっている。等高線図200では電場は存在せず(すなわち、β=0)、点線208はほぼ0eVのエネルギー準位に沿った水平線である。しかしながら、電場の存在(すなわち、β>0)によってこのバンド間隔のプロファイルが変更し、静電ポテンシャル井戸を形成することができる。電場は1つまたは複数の発生源によって生成され得る。例えば、突起(またはその先端部)は、例示の200nmグラフェンフレークの中心に近接して定置され得る。突起(またはその先端部)に印加される電圧は、例示の200nmグラフェンフレークに対する電圧ポテンシャルを確立する。この電圧ポテンシャルによって、突起(またはその先端部)から例示の200nmグラフェンフレークの中心に向けて電場を発生させることができる。発生源の他の例としては、例示の200nmグラフェンフレークの原子構造における侵入部、例示の200nmグラフェンフレークの原子構造における置換部、例示の200nmグラフェンフレークの原子構造における空所、および例示の200nmグラフェンフレークの表面上の原子または分子が挙げられる。
【0042】
β=0.4では、電場(または電圧)によって、バンド間隔のプロファイルが変更され、等高線図202によって示すような静電ポテンシャル井戸の形成が誘起される。電場によってまた、ほぼr=0nmにおける状態密度が高くなるが、これは0eV以上のエネルギー準位に集中している。ほぼr=0nmにおける状態密度は、局所的な状態密度に対応している。等高線図204が示すように、電場をβ=0.8に高めると静電ポテンシャル井戸が広くなり、その湾曲が大きくなる。局所的な状態密度の大きさは高まり続け、0eV未満のエネルギー準位まで延びる。等高線図206が示すように、β=1.2では、局所的な状態密度は、特に0eV未満のエネルギー準位において顕著な大きさに達している。電場(または電圧)は、静電ポテンシャル井戸の形成を誘起することおよび局所的な状態密度を高めることによって、1つまたは複数の電子を、例示の200nmグラフェンフレークの標的領域内に閉じ込めることのできることが、諒解されるであろう。そのような電子の局所化は、標的領域が、電場および磁場の一方または両方によって制御可能な量子状態を有することを可能にし得る。
【0043】
例えば、磁場の存在によって、局所的な状態密度を、1つまたは複数の量子状態を定めることのできる複数の離散的エネルギー準位(またはランダウ準位)へと分割させることができる。1つまたは複数の量子状態は、200nmグラフェンフレークの標的領域と関連付けることができる。図2Bには、理論上の境界を有する例示の200nmグラフェンフレーク上の電場および12T磁場のシミュレーションされた影響を示す、4つの等高線図210、212、214、216が提示されている。4つの等高線図は、Pybindingライブラリを使用した例示の200nmグラフェンフレーク上の電場および12T磁場のコンピュータシミュレーションから生成される。等高線図210、212、214、216は図2Aの等高線図200、202、204、206と類似しているが、12T磁場が更に存在する中で例示の200nmグラフェンフレークがシミュレーションされている点が異なる。β=0の場合、r=-30nmからr=30nmまでの水平距離を移動するときの状態密度はやはり一定である。ただし、12T磁場の存在によって2つのバンド間隔が現れており、これは磁場のない場合にはただ1つしか存在しなかった(図2Aの等高線図200と比較されたい)。特に、第1のバンド間隔は0eV未満に存在し、第2のバンド間隔は0eV超に存在する。第1および第2のバンド間隔は、約10-2eV-1・nm-2の状態密度を有する、ほぼ0eVにある狭いバンド間隔によって分離されている。点線208は約0eVのエネルギー準位に沿って水平であり、この狭いバンド間隔内に位置している。
【0044】
β=0.4では、電場(または電圧)によって、第1のバンド間隔、第2のバンド間隔、および上記の狭いバンド間隔のプロファイルが変更され、等高線図212が示すような静電ポテンシャル井戸の形成が誘起される。電場によってまた、局所的な状態密度(すなわち、ほぼr=0nmにおける)の大きさが高くなるが、これは第2のバンド間隔を超えるエネルギー準位に集中している。電場をβ=0.8まで高めることによって、上記の狭いバンド間隔が、等高線図214が示すように、第1のバンド間隔内の1つの部分および第2のバンド間隔内の1つの部分の2つの部分へと分割される。電場を高めることによりまた、静電ポテンシャル井戸が広くなり、その湾曲が大きくなる。局所的な状態密度の大きさは高まり続け、0eV未満のエネルギー準位まで延びる。また更に、局所的な状態密度は複数の離散的エネルギー準位218へと分割されるが、これはランダウ準位に相当し得る。複数の離散的エネルギー準位218は、1つまたは複数の量子状態を定め得る。電場を更にβ=1.2まで強くすることによって、複数の離散的エネルギー準位218の更なる分割が引き起こされ得る。しかしながら、等高線図216が示すように、電場を強めると、特に0eV未満のエネルギー準位において、局所的な状態密度の大きさも高まる。局所的な状態密度を高めることによって、1つまたは複数の電子を、例示の200nmグラフェンフレークの標的領域に、ますます強く閉じ込めることが可能になり得る。
【0045】
等高線図210、212、214、および216が示すように、電場の制御によって、例示の200nmグラフェンフレークの標的領域内での電子の局所化が可能になる。しかし12T磁場の存在に起因して、そのような制御によって、局所化された電子を複数の離散的エネルギー準位218にわたって分散させることも可能になる。電子および複数の離散的エネルギー準位218のそれぞれの量子状態を操作することのできる電場の大きさを変更することによって、電子、複数の離散的エネルギー準位218、または両方を操作することができる。そのような操作によって、標的領域(または例示の200nmグラフェンフレーク)の特性の生起または変更が可能になり得る。そのような操作によって、量子状態によって表される情報の保存および操作も可能になり得る。等高線図210、212、214、216は一定の磁場の文脈でのシミュレーションを提示しているが、電子および複数の離散的エネルギー準位218の一方または両方を操作するために、磁場の大きさを変更してもよい。
【0046】
ここで図1A図1Cを再び参照すると、いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス100は、標的領域118と関連付けられた光導波路を含む。光導波路は、絶縁体層110(もしくはその一部)、場反応性層116(もしくはその一部)、空洞108(もしくはその一部)、またはこれらの任意の組合せによって画成され得る。いくつかの場合には、光導波路は、絶縁体層110の1つまたは複数の下位層、場反応性層116の1つまたは複数の下位層、あるいは両方を含み得る。光導波路は、絶縁体層110および場反応性層116の一方または両方の面内で光子を伝播させるように構成され得る。光導波路はまた、絶縁体層110または場反応性層116の面外で光子を伝播させるようにも構成され得る。例えば、光導波路は、突起104(または複数の突起)の長手軸線に沿った光子の反射を可能にする、空洞108と関連付けられた表面-例えば、端面、側壁表面など-を含み得る。
【0047】
光導波路は、中で光子を伝播させる(または共振させる)ための活性容積(active volume)を有し得る。これらの光子は、所望の離散的量子状態の性質および純度が最適化されるように、周波数によって形成され得るか、またはパルスによって形成され得る。光子は、マイクロ波波長、赤外波長、可視光波長、または紫外波長に相当する波長を有し得る。他の波長が可能である。動作中、活性容積内の光子は、光導波路と関連付けられた標的領域118の量子状態に結合し得る。光導波路はこの場合、標的領域118の量子状態を選択または制御するために使用され得る。光導波路はまた、標的領域118の新しい量子状態を誘起するためにも使用され得る。光子と量子状態の間の結合によって、量子状態のエネルギーを修正することができる。そのような結合はまた、その挙動が空洞量子電気力学によって支配される量子系も確立し得る。
【0048】
例示的な例によれば、図1A図1Cに関連して記載されている量子制御デバイス100を動作させるために、量子制御方法が使用され得る。量子制御方法は、基材上の突起から電場を生成することを含む。突起は、基材の基材表面から絶縁体層によって画成される空洞内へと延在する。また更に、絶縁体層は基材表面の上に配設されており、空洞への開口部を画成する絶縁体表面を備える。量子制御方法はまた、場反応性層の標的領域において電場を受けることも含む。場反応性層は絶縁層の上に配設され、標的領域は空洞の開口部の上に定置される。量子制御方法は、場反応性層の標的領域の量子状態と相互作用するように電場を制御することを更に含む。いくつかの場合には、量子制御方法は、電場を生成している間に突起から場反応性層の標的領域へと電子を伝達しないことを含む。いくつかの場合には、量子制御方法は、電場を生成している間に突起から場反応性層の標的領域へと電子を伝達することを含む。
【0049】
いくつかの実装形態では、突起において電場を生成することは、突起の先端部を用いて電場を集中させることを含む。これらの実装形態では、標的領域において電場を受けることは、標的領域において集中させた電場を受けることを含む。集中させた電場は、少なくとも1×105V/mの大きさを有し得る。いくつかの場合には、集中させた電場は、少なくとも1×109V/mの大きさを有する。いくつかの場合には、集中させた電場は、少なくとも1×1010V/mの大きさを有する。いくつかの場合には、集中させた電場は、少なくとも1×1011V/mの大きさを有する。いくつかの場合には、集中させた電場は、少なくとも1×1012V/mの大きさを有する。
【0050】
いくつかの実装形態では、突起から電場を生成することは、基材の下にあり突起の基部の反対側にある電気コンタクトに電圧を印加することを含む。突起から電場を生成することはまた、基材を通して突起へと電圧を伝達することも含む。いくつかの実装形態では、量子制御方法は、突起から、基材の下にあり突起の基部の反対側にある電気コンタクトへと電気信号を伝達することを含む。電気信号は、標的領域の量子状態を特徴付けるために使用され得る。
【0051】
いくつかの実装形態では、基材表面は第1の基材表面であり、基材は、第1の基材表面の反対側にある第2の基材表面を含む。これらの実装形態では、突起から電場を生成することは、突起の基部の反対側にある集光構造体において光線を受けることを含む。集光構造体は、第2の基材表面上に形成される。突起から電場を生成することはまた、集光構造体を用いて光を突起へと案内することも含む。
【0052】
いくつかの実装形態では、量子制御方法は、場反応性層の標的領域において光線を受けることを含む。例えば、光線を、場反応性層の金属表面上に配設されたナノ粒子によって受けることができる。ナノ粒子および金属表面は、場反応性層の標的領域における侵入部を画成し得る。別の例では、光線は、光電子放出のプロセスによって、標的領域から1つまたは複数の電子を放出することができる。更なる実装形態では、量子制御方法は、光線に反応して標的領域から放射された電子を電子分光計において受けることを含む。
【0053】
いくつかの実装形態では、量子状態と相互作用するように電場を制御することは、場反応性層の標的領域の量子状態を変更するために電場の大きさを変更することを含む。
【0054】
いくつかの実装形態では、先端部は、空洞内で標的領域から100nm未満に定置される。いくつかの実装形態では、先端部は、空洞内で標的領域から20nm未満に定置される。いくつかの実装形態では、先端部は、空洞内で標的領域から15nm未満に定置される。いくつかの実装形態では、先端部は、空洞内で標的領域から10nm未満に定置される。いくつかの実装形態では、先端部は、空洞内で標的領域から5nm未満に定置される。いくつかの実装形態では、先端部は、空洞内で標的領域から1nm未満に定置される。
【0055】
いくつかの実装形態では、突起は、少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起は、少なくとも4.2eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起は、少なくとも4.4eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起は、少なくとも4.6eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起は、少なくとも4.8eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起は、少なくとも5.0eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起は、2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する。いくつかの実装形態では、突起は、20:1~200:1の範囲内の高さ対幅比を有する。
【0056】
いくつかの実装形態では、標的領域は、場反応性層の原子構造における侵入部を含む。いくつかの実装形態では、標的領域は、場反応性層の原子構造における置換部を含む。いくつかの実装形態では、標的領域は、場反応性層の原子構造における空所を含む。いくつかの実装形態では、標的領域は、場反応性層の表面上の原子または分子を含む。原子または分子は、複数の原子または分子を含んでもよく、したがって、個々の原子、原子のクラスター、化学官能基、ナノ粒子、1つまたは複数の分子、原子または分子の2次元の島状部、原子の規則的な配置に基づく積層ヘテロ構造、原子のパターン化された被覆層、などであり得る。原子または分子は、場反応性層の外側表面上に配設され得る。原子または分子はまた、場反応性層の内側表面上にも配設され得る。いくつかの場合には、場反応性層の外側表面および内側表面の両方の上に、原子または分子が配設されている。
【0057】
ここで図3Aを参照すると、基材304上に配設された複数の突起302を含む例示の量子制御デバイス300の概略斜視図が提示されている。図3Aでは、他の特徴が見えるように、例示の量子制御デバイス300の特定の特徴が省略された部分がある。図3Bには、図3Aの例示の量子制御デバイス300の概略断面図が提示されている。図3Aおよび図3Bにおける複数の突起のうちの1つまたは複数を、図1A図1Cに関連して記載した例示の量子制御デバイス100の個々の実例と関連付けることができる。
【0058】
例示の量子制御デバイス300は、基材304と、空洞308のアレイを画成する絶縁体層306とを含む。例示の量子制御デバイス300はまた、絶縁体表面306の上に配設されており標的領域312のアレイを含む、場反応性層310も含む。図3Aおよび図3Bでは、場反応性層310は2つの層を有するものとして描かれている。しかしながら、場反応性層310として他の数の層が可能である(例えば、1つ、5つ、等)。各標的領域312は、対応する空洞308と位置合わせされている。突起302は、基材304から対応する空洞308内へと延在し、各々が電場を生むように構成されている。電場は、突起に近接した標的領域の量子状態と相互作用し、標的領域の量子状態と隣り合う標的領域の量子状態との間の量子結合を制御する。
【0059】
多くの実装形態では、複数の突起302は2次元アレイを画成する。例えば、図4Aに示すように、複数の突起400は、基材402から延在して矩形のアレイ404を画成し得る。1つの突起400は、絶縁体層408の対応する各空洞406と関連付けられる。別の例では、図4Bに示すように、複数の突起420は、基材422から延在して六角形のアレイ424を画成し得る。1つの突起420は、絶縁体層428の対応する各空洞426と関連付けられる。
【0060】
複数の突起302はまた、空洞308のアレイによって画成されるものとは異なる2次元アレイも画成し得る。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの突起302は、電場の一部を画成する対応する電場を各々生む突起302のサブセットを含む。例えば、図4Cに示すように、複数の突起サブセット440は、矩形のアレイ442を画成し得る。各突起サブセット440は、絶縁体層446の対応する空洞444と関連付けられ、基材450から対応する空洞444内へと延在する5つの突起448を有する。しかしながら、突起サブセット440ごとに突起の他の数および配置が可能である。また更に、突起サブセット440は、矩形のアレイ以外の2次元アレイを画成し得る。
【0061】
複数の突起302は規則的に並べられて、隣り合う標的領域312の間の距離を決定してもよい。いくつかの実装形態では、距離は10μm以下であり得る。距離は、全ての隣り合う標的領域312について同じであり得る。例えば、隣り合う標的領域312の間の距離は、全ての隣り合う標的領域312について1000nm以下であり得る。距離はまた、隣り合う標的領域312の部分によって異なっていてもよい。例えば、隣り合う標的領域312は、700nm以下の距離を有する第1の部分と300nm以下の距離を有する第2の部分とを含み得る。部分および距離の他の組合せが可能である。
【0062】
いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は1000nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は900nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は800nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は700nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は600nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は500nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は400nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は300nm以下である。いくつかの場合には、隣り合う標的領域312の間の距離は200nm以下である。
【0063】
各突起302は、2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有し得る。いくつかの場合には、各突起302は、20:1~200:1の範囲内の高さ対幅比を有する。各突起302はまた、少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成され得る。いくつかの場合には、各突起302は、少なくとも4.2eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、各突起302は、少なくとも4.4eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、各突起302は、少なくとも4.6eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、各突起302は、少なくとも4.8eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの場合には、各突起302は、少なくとも5.0eVの仕事関数を有する材料で形成される。
【0064】
各突起302はまた、対応する空洞308内に定置される先端部314において終端し得る。先端部314は、突起302に近接した標的領域312からある距離において終了し得る。多くの変形形態では、距離は、複数の突起302と関連付けられた全ての先端部314について同じである。いくつかの場合には、先端部314は、対応する空洞308内で近接した標的領域312から100nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部314は、対応する空洞308内で近接した標的領域312から20nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部314は、対応する空洞308内で近接した標的領域312から15nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部314は、対応する空洞308内で近接した標的領域312から10nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部314は、対応する空洞308内で近接した標的領域312から5nm未満に定置される。いくつかの場合には、先端部314は、対応する空洞308内で近接した標的領域312から1nm未満に定置される。
【0065】
いくつかの実装形態では、各突起302は、突起が生む電場を集中させるように構成されている先端部において終端する。先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×105V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×109V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×1010V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×1011V/mの大きさまで集中させるように構成されている。いくつかの場合には、先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×1012V/mの大きさまで集中させるように構成されている。
【0066】
いくつかの実装形態では、基材304、絶縁体層306、および場反応性層310は、各空洞308内に密閉空間を画成する。密閉空間は、対応する突起302と絶縁体層306の間に第1のクリアランス容積を含む。いくつかの変形形態では、密閉空間はまた、対応する突起302の先端部と場反応性層310の間に第2のクリアランス容積も含み得る。密閉空間は10-5トール以下の真空圧を閉じ込めることができる。いくつかの場合には、密閉空間は10-8トール以下の真空圧を閉じ込めている。いくつかの場合には、密閉空間は、誘電体材料で少なくとも部分的に充填される。
【0067】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域312は、場反応性層310の原子構造における侵入部を含む。いくつかの実装形態では、各標的領域312は、場反応性層310の原子構造における侵入部を含む。侵入部は集合的に、標的領域312のアレイと位置合わせされた侵入部のアレイを画成する。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域312は、場反応性層310の原子構造における置換部を含む。いくつかの実装形態では、各標的領域312は、場反応性層310の原子構造における置換部を含む。置換部は集合的に、標的領域312のアレイと位置合わせされた侵入部のアレイを画成する。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域312は、場反応性層310の原子構造における空所を含む。いくつかの実装形態では、各標的領域312は、場反応性層310の原子構造における空所を含む。空所は集合的に、標的領域312のアレイと位置合わせされた空所のアレイを画成する。
【0068】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域312は、場反応性層310の表面上の原子または分子を含む。原子または分子は、場反応性層310の外側表面上に配設され得る。原子または分子はまた、場反応性層310の内側表面上にも配設され得る。いくつかの場合には、場反応性層310の外側表面および内側表面の両方の上に、原子または分子が配設されている。いくつかの実装形態では、各標的領域312は、場反応性層310の表面上の原子または分子を含む。原子または分子は集合的に、標的領域312のアレイと位置合わせされた原子または分子のアレイを画成する。図2Aおよび図2Bには、例示の量子制御デバイス300が、場反応性層310の外側表面上に原子または分子316のアレイを有するものとして描かれている。特に、各標的領域312は、場反応性層310の外側表面上の原子または分子を含む。原子または分子としては、個々の原子、原子のクラスター、化学官能基、ナノ粒子、1つまたは複数の分子、原子または分子の2次元の島状部、原子の規則的な配置に基づく積層ヘテロ構造、原子のパターン化された被覆層、などを挙げることができる。
【0069】
いくつかの実装形態では、図3Bに示すように、例示の量子制御デバイス300は、電圧信号を受け取るように構成されている電気コンタクト320を含む、基材304の下にあるアドレッシング層318を含む。各電気コンタクト320は、対応する突起302と位置合わせされている。いくつかの変形形態では、各電気コンタクト320は、その他の電気コンタクトから独立して、対応する電圧信号を基材304に送達するように構成されている。基材304は、対応する電場を生むために、対応する電圧信号を、電気コンタクト320と位置合わせされた突起に伝達するように構成されている。いくつかの変形形態では、各電気コンタクト320は、その他の電気コンタクトから独立して、基材304から電気信号を受け取るように構成されている。電気信号は、電気コンタクトと位置合わせされた突起に近接した標的領域の量子状態を特徴付けるために使用され得る。基材304は、位置合わせされた突起から電気コンタクトへと電気信号を伝達するように構成されている。
【0070】
いくつかの実装形態では、突起302は突起のサブセットを含み、例示の量子制御デバイス300は、複数の電気コンタクト320を含む、基材304の下にあるアドレッシング層318を含む。各電気コンタクト320は対応する突起のサブセットと位置合わせされており、対応する突起のサブセットに関する電圧信号を受け取るように構成されている。いくつかの変形形態では、各電気コンタクト320は、その他の電気コンタクトから独立して、対応する電圧信号を基材304に送達するように構成されている。基材304は、対応する電場を生むために、対応する電圧信号を、電気コンタクトと位置合わせされた突起のサブセットに伝達するように構成されている。いくつかの変形形態では、各電気コンタクト320は、その他の電気コンタクトから独立して、基材304から電気信号を受け取るように構成されている。電気信号は、電気コンタクトと位置合わせされた突起に近接した標的領域の量子状態を特徴付けるために使用され得る。基材304は、位置合わせされた突起から電気コンタクトへと電気信号を伝達するように構成されている。
【0071】
動作中、例示の量子制御デバイス300は、1つまたは複数の電気コンタクト320において電圧信号を受け取る。基材304は、静電電圧ポテンシャルであり得る電圧ポテンシャルを確立するための電圧信号を、1つまたは複数の対応する突起302(または突起のサブセット)へと伝達する。電圧ポテンシャルは、1つまたは複数の対応する突起302(または突起のサブセット)とそれらの対応する標的領域312との間に存在し得る。電圧信号は連続的に適用してもまたは電圧パルスを介して適用してもよい。電圧パルスは、1ミリ秒以下の持続時間を有し得る。いくつかの場合には、持続時間は1ピコ秒以下である。いくつかの場合には、持続時間は100フェムト秒以下(例えば、10~40フェムト秒)である。
【0072】
電圧ポテンシャルを確立するために、1つまたは複数の電気コンタクトからの電圧信号を、レーザによって補足してもよい。例えば、レーザは、1つまたは複数の標的領域312、1つまたは複数の突起302(またはサブセットもしくは突起)、あるいは両方によって受けられる、電磁放射のコヒーレントなビームを生成し得る。受けられると、電磁放射のコヒーレントなビームの電場成分は、1つまたは複数の対応する突起302(またはそれらのサブセット)とそれらの対応する標的領域312との間の電圧ポテンシャルを変更する(例えば、電圧ポテンシャルを高める)ことができる。電圧ポテンシャルは、ある持続時間を有するパルスを含み得る。いくつかの場合には、パルスの持続時間は1ピコ秒以下である。いくつかの場合には、パルスの持続時間は100フェムト秒以下(例えば、10~40フェムト秒)である。
【0073】
これに反応して、1つまたは複数の対応する突起302(または突起のサブセット)の各々によって電場が生成され、このとき、電場は、1つまたは複数の対応する突起302の対応する先端部314から延びて、対応する標的領域312に浸透する。先端部314は部分的に、電場を高い大きさへと集中させるのを補助し、その場合対応する標的領域312は、少なくとも1×105V/mの大きさを有する電場を受けることができる。多くの例では、大きさは1×109V/mよりも大きい。電場を受けると、各標的領域312と関連付けられる量子状態が現れ得るか、またはその特性(例えば、数、占有率、スピン、エネルギー、サイズ、空間分布、他の量子状態への結合、等)が変更され得る。例えば、1つまたは複数の電気コンタクト320が受け取る電圧信号を変えることによって、電場を変化させて、隣り合う標的領域の量子状態間の量子結合を制御することができる。
【0074】
動作中、電気コンタクト320はまた、対応する突起302から、対応する突起302に近接した各標的領域312の1つまたは複数の量子状態を特徴付けるために使用される電気信号を受け取ることができる。電気信号は、対応する突起302から基材304を通して伝達される。アドレッシング層318は、電気コンタクト320が、1つの標的領域312から、その他の標的領域312から独立して電気信号を受け取ることができるように構成されている。同様に、電気コンタクトはまた、ある標的領域312についての電場が他の標的領域312から独立して生成される(または変化する)ように、電圧を印加することができる。アドレッシング層318のそのような構成によって、例示の量子制御デバイス300が標的領域312の任意の組合せの量子状態を操作すること、および、標的領域312の任意の組合せの間の量子結合を制御することが可能になる。
【0075】
いくつかの実装形態では、各標的領域312と関連付けられる量子状態は、離散的な局所化された量子状態である。これらの実装形態では、突起302の先端部314は、離散的な局所化された量子状態が重なり合うのに十分な近さに位置付けられ得る。突起302(または突起のサブセット)によって生成される電場のうちの1つまたは複数を変えることによって、重なり合いの程度を更に変更することができる。そのような重なり合いは、場反応性層における標的領域312のアレイによって維持される新しい集合的な量子状態を誘起し得る。この集合的な量子状態は、それ自体が1つまたは複数の離散的な状態を有してもよく、いくつかの場合にはバンド構造を有してもよい。突起302(または突起のサブセット)によって生成される電場は、先端部314とそれらの対応する標的領域312の間の静電電圧ポテンシャルを含んでもよく、これらの集合的な量子状態の特性を制御および修正するために使用され得る。
【0076】
いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、標的領域312のアレイの少なくとも1つの標的領域312と関連付けられる光導波路を含む。光導波路は、絶縁体層306(またはその一部)、場反応性層310(またはその一部)、1つもしくは複数の空洞308(またはその一部)、あるいはこれらの任意の組合せによって画成され得る。いくつかの場合には、光導波路は、絶縁体層306の1つもしくは複数の下位層、場反応性層310の1つもしくは複数の下位層、または両方を含み得る。光導波路は、絶縁体層306および場反応性層310の一方または両方の面内で光子を伝播させるように構成され得る。光導波路はまた、絶縁体層306または場反応性層310の面外で光子を伝播させるようにも構成され得る。例えば、光導波路は、突起302(または突起のサブセット)の長手軸線に沿った光子の反射を可能にする、空洞308と関連付けられた表面-例えば、端面、側壁表面など-を含み得る。
【0077】
光導波路は、中で光子を伝播させる(または共振させる)ための活性容積を有し得る。これらの光子は、所望の離散的量子状態の性質および純度が最適化されるように、周波数によって形成され得るか、またはパルスによって形成され得る。光子は、マイクロ波波長、赤外波長、可視光波長、または紫外波長に相当する波長を有し得る。他の波長が可能である。動作中、活性容積内の光子は、光導波路と関連付けられた少なくとも1つの標的領域312の量子状態に結合し得る。光導波路はこの場合、少なくとも1つの標的領域312の量子状態を選択または制御するために使用され得る。量子状態は単一の標的領域と関連付けることができる。複数の標的領域312が光導波路と関連付けられる場合、量子状態は2つ以上の標的領域と関連付けることができる。光導波路はまた、少なくとも1つの標的領域312の新しい量子状態を誘起するためにも使用され得る。新しい量子状態は単一の標的領域と関連付けることができる。複数の標的領域312が光導波路と関連付けられる場合、新しい量子状態は2つ以上の標的領域と関連付けることができる。光子と量子状態の間の結合によって、量子状態のエネルギーを修正することができる。そのような結合はまた、その挙動が空洞量子電気力学によって支配される量子系も確立し得る。
【0078】
例示の量子制御デバイス300は、そのような量子系を複数含み得る。アドレッシング層318は、量子系が個々に操作されることを可能にし得るか、または量子系が下位グループ(例えば、隣り合うグループ)において操作されることを可能にし得る。複数の量子系を有する実装形態では、対応する光導波路は、量子制御デバイス300全体にわたって標的領域312のアレイと相互作用するように動作する、複雑なフォトニック導波路として機能し得る。
【0079】
いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、レーザ信号を標的領域312のアレイへと導くように構成されているレーザ系を含む。レーザは、光電子放出のプロセスによって、1つまたは複数の標的領域312から1つまたは複数の電子を放出するように作用可能であり得る。例示の量子制御デバイス300はまた、レーザ系に反応して標的領域312のアレイから放射された電子を受け取るように構成されている、電子分光計も含む。電子分光計は、各標的領域312から放射された対応する電子の特性(例えば、対応する電子のエネルギー)を測定することによって、それらと関連付けられた1つまたは複数の量子状態の特徴を決定可能であり得る。更なる実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、光子の特性を測定することによって各標的領域312と関連付けられた1つまたは複数の量子状態の特徴を決定するように構成されている、光学分光計を含み得る。
【0080】
例示の量子制御デバイス300は、対応する電場を生成するまたは生成を補助するために、複数の突起302の光学的刺激を利用し得る。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、各々が対応する空洞308の反対側に来るように位置合わせされておりかつ対応する空洞308と関連付けられた突起へと光を案内するように構成されている、基材の下にある集光構造体のアレイを含む。集光構造体は、回折パターン、レンズ、またはミラーを含み得る。他の集光構造体が可能である。
【0081】
例えば、図5Aには、基材504に回折パターン502のアレイが形成されている、例示の量子制御デバイス500の概略断面図が提示されている。図5Bには、図5Aの例示の量子制御デバイス500の概略底面図が提示されている。回折パターン502のアレイは、基材504から絶縁層510の対応する空洞508のアレイ内へと延在する突起506のアレイと位置合わせされる。別の例では、図6Aには、基材604上にレンズ602のアレイが形成されている、例示の量子制御デバイス600の概略断面図が提示されている。図6Bには、図6Aの例示の量子制御デバイス600の概略底面図が提示されている。レンズは基材604の一部であってもよく、または別法として、基材604に結合(例えば、基材604上にマイクロエレクトロニクス製造工程によって製作)されてもよい。レンズ602のアレイは、基材604から絶縁層610の対応する空洞608のアレイ内へと延在する突起606のアレイと位置合わせされる。
【0082】
例示の量子制御デバイス300はまた、対応する電場を生成するまたは生成を補助するよう複数の突起302を誘導するために、光学的刺激によるプラズモン作用を使用し得る。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、周期格子に沿って配置された空孔を備える導電層を含む。周期格子は、空孔によって占有される第1の部位、および空孔によって占有されない第2の部位を有する。第2の部位は空洞308のアレイの反対側に来るように位置合わせされており、いくつかの変形形態では、第2の部位は、空洞308のアレイにおける空洞のサブセットの反対側に来るように位置合わせされている。導電層は基材304の下にあってもよく、または別法として、場反応性層310の上にあってもよい。いくつかの変形形態では、基材304の下に第1の場合の導電層があってもよく、場反応性層310の下方にこれを覆って第2の場合導電層があってもよい。
【0083】
図7Aには、複数の空孔704を含む導電層700を有する例示の量子制御デバイス700の概略断面図が提示されている。図7Bには、図7Aの例示の量子制御デバイス700の概略底面図が提示されている。導電層702は、例示の量子制御デバイス700の基材706の下に配設される。複数の空孔704は、空孔が存在する第1の部位706と空孔が存在しない第2の部位708とを有する周期格子上に配置される。第2の部位708は、基材706から絶縁層714の対応する空洞712のアレイ内へと延在する突起710のアレイと位置合わせされる。動作中、導電層702によって光が受けられ、プラズモン作用を介した第2の部位708への電荷の移動が誘起される。第2の部位708における電荷の集中によって、基材706および対応する突起710を通して伝播しその後対応する突起710の先端部から現れる高電場が作り出される。高電場は、複数の突起710によって(例えば、印加電圧に反応して)生成される電場に追加されるものであってもよい。
【0084】
いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、基材304に形成されており、基材304から延在する個々の突起302を隔離するように配置されている、複数のトレンチを含む。そのような隔離は電気的な隔離であり得る。いくつかの実装形態では、基材304に複数のトレンチが形成され、基材304から延在する突起302のサブセットを隔離するように配置される。そのような隔離は電気的な隔離であり得る。突起302の各サブセットは、単一の空洞308と関連付けられる。
【0085】
本明細書に記載する量子制御デバイスは、各標的領域が2つの対向する突起から電場を受けるように構成され得る。そのような構成は、各標的領域が経験する電場の大きさを改善することができ、また、各標的領域内の(例えば面内での)電場の均一性を改善することもできる。図8には、図3Aの例示の量子制御デバイスの2つの実例800、802のものであって、これらの実例が互いに面して場反応性層804を共有している、概略図が提示されている。突起806、808の対向する対が、共有されている標的領域810によって各々受けられる対応する電場を生成するように位置合わせされる。
【0086】
いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、極低温環境において動作するように構成されている。例えば、例示の量子制御デバイス300は、クライオスタット内に配設され得る。極低温環境は、約123K未満(例えば、77K、4K、1K未満、等)の任意の温度を有し得る。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、真空環境において動作するように構成されている。例えば、例示の量子制御デバイス300は、1つまたは複数の真空ポンプ(例えば、回転ベーンポンプ、ターボ分子ポンプ、低温ポンプ、等)に連結された、密封可能な真空チャンバ内に配設され得る。真空環境は、10-1トール未満(例えば、10-3トール、10-6トール、10-9トール、等)の、気体の任意の分圧であり得る。いくつかの実装形態では、例示の量子制御デバイス300は、磁場(すなわち、
【0087】
【数2】
)内で動作するように構成されている。例えば、例示の量子制御デバイスは、超電導コイルの磁場内に配設され得る。磁場は10mTよりも大きい印加される磁場であり得る。いくつかの変形形態では、印加される磁場は100mTよりも大きい(例えば、300mT)。いくつかの変形形態では、印加される磁場は500mTよりも大きい(例えば、1T、3T、4T、等)。
【0088】
図3A図8に関連して記載されている量子制御デバイス300を動作させるために、量子制御方法が使用され得る。量子制御方法は、基材上の突起のアレイから1つまたは複数の電場を生成することを含む。各電場は、基材から絶縁体層の対応する空洞内へと延在する1つまたは複数の突起によって生成される。対応する空洞は絶縁体層によって画成される空洞のアレイの一部であり、絶縁体層は基材の上かつ場反応性層の下に配設されている。
【0089】
量子制御方法はまた、場反応性層における対応する標的領域において1つまたは複数の電場を受けることも含む。対応する標的領域は場反応性層における標的領域のアレイの一部であり、その各標的領域はある量子状態を有し、空洞のアレイにおける対応する空洞と位置合わせされている。方法は、第1の標的領域の第1の量子状態を少なくとも第2の標的領域の第2の量子状態と相互作用させるように、1つまたは複数の電場を制御することを更に含む。
【0090】
いくつかの実装形態では、1つまたは複数の電場を生成することは、各電場と関連付けられた1つまたは複数の突起の対応する先端部を用いて、1つまたは複数の電場を集中させることを含む。これらの実装形態では、対応する標的領域において1つまたは複数の電場を受けることは、それらの集中後の対応する標的領域において、1つまたは複数の電場を受けることを含む。集中後の1つまたは複数の電場は各々、少なくとも1×105V/mの大きさを有し得る。いくつかの場合には、集中後の1つまたは複数の電場は各々、少なくとも1×109V/mの大きさを有し得る。いくつかの場合には、集中後の1つまたは複数の電場は各々、少なくとも1×1010V/mの大きさを有し得る。いくつかの場合には、集中後の1つまたは複数の電場は各々、少なくとも1×1011V/mの大きさを有し得る。いくつかの場合には、集中後の1つまたは複数の電場は各々、少なくとも1×1012V/mの大きさを有し得る。
【0091】
いくつかの実装形態では、1つまたは複数の電場を受けることは、対応する標的領域のうちの少なくとも1つについての量子状態の離散的エネルギー準位を確立することを含む。いくつかの場合には、対応する標的領域の全てが離散的エネルギー準位を有する量子状態を有する。いくつかの場合には、離散的エネルギー準位は、電子エネルギー準位を含む。いくつかの場合には、離散的エネルギー準位は、光子エネルギー準位を含む。
【0092】
いくつかの実装形態では、1つまたは複数の電場を制御することは、第1の標的領域の第1の量子状態と第2の標的領域の第2の量子状態との間の量子結合を変更することを含む。いくつかの実装形態では、第1の標的領域は第2の標的領域と隣り合っている。いくつかの実装形態では、隣り合う標的領域の間の距離は700nm以下である。
【0093】
いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から100nm未満に定置される先端部において終端する。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から20nm未満に定置される先端部において終端する。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から15nm未満に定置される先端部において終端する。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から10nm未満に定置される先端部において終端する。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から5nm未満に定置される先端部において終端する。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から1nm未満に定置される先端部において終端する。
【0094】
いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、少なくとも4.2eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、少なくとも4.4eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、少なくとも4.6eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、少なくとも4.8eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、少なくとも5.0eVの仕事関数を有する材料で形成される。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する。いくつかの実装形態では、突起のアレイの各突起は、20:1~200:1の範囲内の高さ対幅比を有する。
【0095】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域は、場反応性層の原子構造における侵入部を含む。いくつかの実装形態では、各標的領域は、場反応性層の原子構造における侵入部を含む。これらの実装形態では、侵入部は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた侵入部のアレイを画成する。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域は、場反応性層の原子構造における置換部を含む。いくつかの実装形態では、各標的領域は、場反応性層の原子構造における置換部を含む。これらの実装形態では、置換部は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた置換部のアレイを画成する。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域は、場反応性層の原子構造における空所を備える。いくつかの実装形態では、各標的領域は、場反応性層の原子構造における空所を備える。これらの実装形態では、空所は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた空所のアレイを画成する。
【0096】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの標的領域は、場反応性層の表面上の原子または分子を備える。原子または分子は、場反応性層の外側表面上に配設され得る。原子または分子はまた、場反応性層の内側表面上にも配設され得る。いくつかの場合には、場反応性層の外側表面および内側表面の両方の上に、原子または分子が配設されている。いくつかの実装形態では、各標的領域は、場反応性層の表面上の原子または分子を備える。これらの実装形態では、原子または分子は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた原子または分子のアレイを画成する。
【0097】
量子制御デバイスはまた、以下の例によって説明することもできる:
例1.基材表面を備える基材と、
基材表面の上にあり空洞を画成する絶縁体層であって、空洞への開口部を画成する絶縁体表面を備える、絶縁体層と、
絶縁体表面の上にあり空洞への開口部の上に定置される標的領域を備える、場反応性層と、
基材から空洞内へと延在し先端部において終端する突起であって、突起は標的領域の量子状態と相互作用する電場を生むように構成されており、先端部は空洞内に定置され、突起が生む電場を集中させるように構成されている、突起と、
を備える、量子制御デバイス。
例2.先端部は空洞内で標的領域から100nm未満に定置される、例1に記載の量子制御デバイス。
例3.先端部は空洞内で標的領域から20nm未満に定置される、例1に記載の量子制御デバイス。
例4.突起は少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成されている、例1または例2もしくは3に記載の量子制御デバイス。
例5.突起は2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する、例1または例2~4のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例6.突起の先端部は、電場を標的領域において少なくとも1×105V/mの大きさまで集中させるように構成されている、例1または例2~5のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例7.突起の先端部は、電場を標的領域において少なくとも1×109V/mの大きさまで集中させるように構成されている、例1または例2~5のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例8.基材、絶縁体層、および場反応性層は空洞内に密閉空間を画成し、密閉空間は突起と絶縁体層の間に第1のクリアランス容積を備える、例1または例2~7のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例9.密閉空間は突起と場反応性層の間に第2のクリアランス容積を備える、例8に記載の量子制御デバイス。
例10.密閉空間は10-5トール以下の真空圧を閉じ込めている、例8または9に記載の量子制御デバイス。
例11.密閉空間は誘電体材料で少なくとも部分的に充填されている、例8または例9もしくは10に記載の量子制御デバイス。
例12.基材表面および絶縁体表面は平面状の表面である、例1または例2~11のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例13.突起の先端部は円錐形状を有する、例1または例2~12のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例14.突起の先端部はテクスチャ化表面を備える、例1または例2~13のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例15.突起の先端部はナノ粒子を備える、例1または例2~14のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例16.突起の先端部はコーティングされた外面を備える、例1または例2~15のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例17.標的領域は場反応性層の原子構造における侵入部を備える、例1または例2~16のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例18.標的領域は場反応性層の原子構造における置換部を備える、例1または例2~17のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例19.標的領域は場反応性層の原子構造における空所を備える、例1または例2~18のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例20.標的領域は場反応性層の表面上の原子または分子を含む、例1または例2~19のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例21.原子または分子は場反応性層の外側表面上に配設されている、例20に記載の量子制御デバイス。
例22.原子または分子は場反応性層の内側表面上に配設されている、例20に記載の量子制御デバイス。
例23.場反応性層はパターン化された層である、例1または例2~22のいずれか1項に記載の量子制御デバイス。
例24.パターン化された層は2つ以上の材料で形成されている、例23に記載の量子制御デバイス。
例25.場反応性層は複数の層を備える、例1または例2~22のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例26.複数の層はパターン化された層を含む、例25に記載の量子制御デバイス。
例27.複数の層は、
標的領域を包含している標的層と、
絶縁体層と標的層の間に配設されている中間層と、を備え、
中間層の厚さは、突起の先端部と場反応性層の標的領域の間の距離の一部である、例25または26に記載の量子制御デバイス。
例28.距離は100nm未満である、例27に記載の量子制御デバイス。
例29.距離は20nm未満である、例27に記載の量子制御デバイス。
例30.場反応性層はグラフェンの層を備える、例1または例2~29のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例31.各々が基材から空洞内へと延在し先端部で終端する、複数の突起を備える、例1または例2~30のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例32.基材と突起(または複数の突起)は異なる材料で形成されている、例1または例2~31のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例33.基材と突起(または複数の突起)は基材の一部である、例1または例2~31のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例34.絶縁体層は
基材表面の上にある第1の絶縁体層と、
第1の絶縁体層と場反応性層の間の第2の絶縁体層と、を備える、例1または例2~33のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例35.場反応性層の上にある第2の絶縁体層を備える、例1または例2~34のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例36.第2の絶縁体層は空洞の開口部に対向する正孔を備える、例35に記載の量子制御デバイス。
例37.第2の絶縁体層の上にある導電層を備える、例35または36に記載の量子制御デバイス。
例38.突起の基部の反対側にある電気コンタクトを備える、基材の下にあるアドレッシング層を備える、例1または例2~37のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例39.電気コンタクトは基材に電圧を送達するように構成されており、基材は電場を生むために突起に電圧を伝達するように構成されている、例38に記載の量子制御デバイス。
例40.電気コンタクトは基材から電気信号を受け取るように構成されており、電気信号は標的領域の量子状態を特徴付けるものであり、基材は突起から電気コンタクトへと電気信号を伝達するように構成されている、例38または39に記載の量子制御デバイス。
例41.絶縁体層は、空洞の少なくとも一部を画成する突起を取り囲む内側側壁を備える、例1または例2~40のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例42.内側側壁は空洞への開口部において絶縁体表面に接している、例41に記載の量子制御デバイス。
例43.開口部は空洞の第1の開口部であり、絶縁体表面は絶縁体層の第1の絶縁体表面であり、
絶縁体層は、基材表面に結合されており第1の絶縁体表面の反対側にある第2の絶縁体表面を備え、
内側側壁は絶縁体層の厚さの中に延在し、空洞の第2の開口部において第2の絶縁体表面に接しており、
突起は基材から空洞の第2の開口部を通って延在し、
突起は基材から絶縁体層の厚さ未満の高さまで延在する、
例41または例42に記載の量子制御デバイス。
例44.基材表面、第1の絶縁体表面、および第2の絶縁体表面は平面状の表面である、例43に記載の量子制御デバイス。
例45.基材表面は第1の基材表面であり、基材は、
第1の基材表面の反対側にある第2の基材表面と、
突起の基部の反対側にある第2の基材表面上に形成された集光構造体であって、突起へと光を案内するように構成されている、集光構造体と、を備える、
例1または例2~44のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例46.集光構造体は第2の基材表面上に形成された回折パターンである、例45に記載の量子制御デバイス。
例47.集光構造体は第2の基材表面上に形成されたレンズである、例45に記載の量子制御デバイス。
例48.第1の基材表面、2の基材表面、および絶縁体表面は平面状の表面である、例45に記載の量子制御デバイス。
例49.標的領域上へと光線を導くように構成されているレーザと、
光線を受けることに反応して標的領域から放射される電子を受け取るように構成されている、電子分光計と、
を備える、例1または例2~48のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例50.標的領域から光子を受け取るように構成されている光学分光計を備える、例49に記載の量子制御デバイス。
例51.絶縁体層、場反応性層、空洞、またはこれらの任意の組合せによって画成される光導波路を備え、
光導波路は、標的領域の量子状態に結合する光子を伝播させるように構成されている、
例1または例2~50のいずれかに記載の量子制御デバイス。
【0098】
量子制御方法はまた、以下の例によって説明することもできる:
例52.基材上の突起から電場を生成することであって、突起は、基材の基材表面から絶縁体層によって画成される空洞内へと延在し、絶縁体層は基材表面の上に配設されており、空洞への開口部を画成する絶縁体表面を備える、生成することと、
場反応性層の標的領域において電場を受けることであって、場反応性層は絶縁層の上に配設されており、標的領域は空洞の開口部の上に定置されている、受けることと、
場反応性層の標的領域の量子状態と相互作用するように電場を制御することと、
を含む、量子制御方法。
例53.突起において電場を生成することは、突起の先端部を用いて電場を集中させることを含み、
標的領域において電場を受けることは、標的領域において集中させた電場を受けることを含む、
例52に記載の量子制御方法。
例54.集中させた電場は少なくとも1×105V/mの大きさを有する、例53に記載の量子制御方法。
例55.集中させた電場は標的領域において少なくとも1×109V/mの大きさを有する、例53に記載の量子制御方法。
例56.突起から電場を生成することは、
基材の下にあり突起の基部の反対側にある電気コンタクトに電圧を印加することと、
電圧を基材を通して突起に伝達することと、を含む、
例52または例53~55のいずれかに記載の量子制御方法。
例57.突起から基材の下にあり突起の基部の反対側にある電気コンタクトへと電気信号を伝達することであって、電気信号は標的領域の量子状態を特徴付けるものである、伝達すること、
を含む、例52または例53~56のいずれかに記載の量子制御方法。
例58.基材表面は第1の基材表面であり、基材は第1の基材表面の反対側にある第2の基材表面を含み、
突起から電場を生成することは、
突起の基部の反対側にある集光構造体において光線を受けることであって、集光構造体は第2の基材表面上に形成されている、受けることと、
集光構造体を用いて突起へと光を案内することと、を含む、
例52または例53~57のいずれかに記載の量子制御方法。
例59.場反応性層の標的領域において光線を受けること
を含む、例52または例53~58のいずれかに記載の量子制御方法。
例60.光線に反応して標的領域から放射された電子を電子分光計において受けること
を含む、例59に記載の量子制御方法。
例61.量子状態と相互作用するように電場を制御することは、場反応性層の標的領域の量子状態を変更するために電場の大きさを変更することを含む、例52または例53~60のいずれかに記載の量子制御方法。
例62.電場を生成している間に、突起から場反応性層の標的領域へと電子を伝達すること
を含む、例52または例53~61のいずれかに記載の量子制御方法。
例63.先端部は空洞内で標的領域から100nm未満に定置される、例52または例53~62のいずれかに記載の量子制御方法。
例64.先端部は空洞内で標的領域から20nm未満に定置される、例52または例53~62のいずれかに記載の量子制御方法。
例65.突起は少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成されている、例52または例53~例64のいずれかに記載の量子制御方法。
例66.突起は2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する、例52または例53~65のいずれかに記載の量子制御方法。
例67.標的領域は場反応性層の原子構造における侵入部を備える、例52または例53~66のいずれかに記載の量子制御方法。
例68.標的領域は場反応性層の原子構造における置換部を備える、例52または例53~67のいずれかに記載の量子制御方法。
例69.標的領域は場反応性層の原子構造における空所を備える、例52または例53~68のいずれかに記載の量子制御方法。
例70.標的領域は場反応性層の表面上の原子または分子を含む、例52または例53~69のいずれかに記載の量子制御方法。
例71.原子または分子は場反応性層の外側表面上に配設されている、例70に記載の量子制御方法。
例72.原子または分子は場反応性層の内側表面上に配設されている、例70に記載の量子制御方法。
例73.絶縁体層、場反応性層、空洞、またはこれらの任意の組合せによって画成される光導波路内で、光子を伝播させることと、
光子を標的領域の量子状態に結合することと、
を含む、例52または例53~79のいずれかに記載の量子制御方法。
【0099】
突起のアレイを含む量子制御デバイスはまた、以下の例によって説明することもできる:
例74.基材と、
空洞のアレイを画成する絶縁体層と、
対応する空洞と各々位置合わせされている標的領域のアレイを備える、絶縁体層の上にある場反応性層と、
基材から対応する空洞内へと延在する突起であって、各々が
突起に近接した標的領域の量子状態と相互作用し、
標的領域の量子状態と隣り合う標的領域の量子状態との間の量子結合を制御する、電場を生むように構成されている、突起と、
を備える、量子制御デバイス。
例75.隣り合う標的領域の間の距離は700nm以下である、例74に記載の量子制御デバイス。
例76.少なくとも1つの突起は、電場の一部を画成する対応する電場を各々生む突起のサブセットを備える、例74または75に記載の量子制御デバイス。
例77.各突起は、対応する空洞内で近接した標的領域から100nm未満に定置される先端部において終端する、例74または例75もしくは76に記載の量子制御デバイス。
例78.各突起は、対応する空洞内で近接した標的領域から20nm未満に定置される先端部において終端する、例74または例75もしくは76に記載の量子制御デバイス。
例79.各突起は少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成されている、例74または例75~例78のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例80.各突起は2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する、例74または例75~79のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例81.各突起は、突起が生む電場を集中させるように構成されている先端部において終端する、例74または例75~80のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例82.先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×105V/mの大きさまで集中させる、例81に記載の量子制御デバイス。
例83.先端部は、電場を突起に近接した標的領域において少なくとも1×109V/mの大きさまで集中させる、例81に記載の量子制御デバイス。
例84.基材、絶縁体層、および場反応性層は各空洞内に密閉空間を画成し、密閉空間は、対応する突起と絶縁体層の間に第1のクリアランス容積を備える、例74または例75~83のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例85.密閉空間は、対応する突起の先端部と場反応性層の間に第2のクリアランス容積を備える、例84に記載の量子制御デバイス。
例86.密閉空間は10-5トール以下の真空圧を閉じ込めている、例84または85に記載の量子制御デバイス。
例87.密閉空間は誘電体材料で少なくとも部分的に充填されている、例84または例85もしくは86に記載の量子制御デバイス。
例88.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の原子構造における侵入部を備える、例74または例75~87のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例89.各標的領域は場反応性層の原子構造における侵入部を備え、侵入部は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた侵入部のアレイを画成する、例74または例75~87のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例90.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の原子構造における置換部を備える、例74または例75~89のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例91.各標的領域は場反応性層の原子構造における置換部を備え、置換部は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた置換部のアレイを画成する、例74または例75~89のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例92.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の原子構造における空所を備える、例74または例75~91のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例93.各標的領域は場反応性層の原子構造における空所を備え、空所は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた空所のアレイを画成する、例74または例75~91のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例94.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の表面上の原子または分子を含む、例74または例75~93のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例95.原子または分子は場反応性層の外側表面上に配設されている、例94に記載の量子制御デバイス。
例96.原子または分子は場反応性層の内側表面上に配設されている、例94に記載の量子制御デバイス。
例97.各標的領域は場反応性層の表面上の原子または分子を含み、原子または分子は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた原子または分子のアレイを画成する、例74または例75~93のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例98.場反応性層はグラフェンの層を備える、例74または例75~97のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例99.電圧信号を受け取るように構成されている電気コンタクトを備える、基材の下にあるアドレッシング層を備え、各電気コンタクトは対応する突起と位置合わせされている、
例74または例75~98のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例100.各電気コンタクトは、他の電気コンタクトから独立して対応する電圧信号を基材に送達するように構成されており、基材は、対応する電場を生むために、対応する電圧信号を、電気コンタクトと位置合わせされた突起に伝達するように構成されている、例99に記載の量子制御デバイス。
例101.各電気コンタクトは、その他の電気コンタクトから独立して基材から電気信号を受け取るように構成されており、電気信号は、電気コンタクトと位置合わせされた突起に近接した標的領域の量子状態を特徴付けるものであり、基材は、位置合わせされた突起から電気コンタクトへと電気信号を伝達するように構成されている、例99または98に記載の量子制御デバイス。
例102.少なくとも1つの突起は突起のサブセット(または例76の突起のサブセット)を備え、
量子制御デバイスは、各々が対応する突起のサブセットと位置合わせされており対応する突起のサブセットに関する電圧信号を受け取るように構成されている複数の電気コンタクトを備える、基材の下にあるアドレッシング層を備える、
例74または例75~101のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例103.各電気コンタクトは、その他の電気コンタクトから独立して、対応する電圧信号を基材に送達するように構成されており、基材は、対応する電場(または例76の対応する電場)を生むために、対応する電圧信号を、電気コンタクトと位置合わせされた突起のサブセットに伝達するように構成されている、例102に記載の量子制御デバイス。
例104.
レーザ信号を標的領域のアレイへと導くように構成されているレーザ系と、
レーザ信号に反応して標的領域のアレイから放射される電子を受け取るように構成されている電子分光計と、
を備える、例74または例75~103のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例105.各々が対応する空洞の反対側に来るように位置合わせされておりかつ対応する空洞と関連付けられた突起へと光を案内するように構成されている、基材の下にある集光構造体のアレイ
を備える、例74または例75~104のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例106.周期格子に沿って配置されている空孔を備える導電層を備え、周期格子は空孔によって占有されている第1の部位と空孔によって占有されていない第2の部位とを有し、第2の部位は空洞のアレイの反対側に来るように位置合わせされている、
例74または例75~105のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例107.導電層は基材の下にある、例106に記載の量子制御デバイス。
例108.導電層は場反応性層の上にある、例106に記載の量子制御デバイス。
例109.基材に形成されており基材から延在する個々の突起を隔離するように配置されている複数のトレンチを備える、例74または例75~108のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例110.基材に形成されており基材から延在する突起のサブセット(または例76もしくは102の突起のサブセット)を隔離するように配置されている複数のトレンチを備え、各サブセットは単一の空洞と関連付けられている、例74または例75~108のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例111.絶縁体層、場反応性層、1つもしくは複数の空洞、またはこれらの任意の組合せによって画成される光導波路を備え、
光導波路は少なくとも1つの標的領域と関連付けられており、少なくとも1つの標的領域の量子状態に結合する光子を伝播させるように構成されている、
例74または例75~110のいずれかに記載の量子制御デバイス。
【0100】
突起のアレイに基づく量子制御方法はまた、以下の例によって説明することもできる:
例112.量子制御方法であって、
基材上の突起のアレイから1つまたは複数の電場を生成することであって、各電場は、基材から絶縁体層の対応する空洞内へと延在する1つまたは複数の突起によって生成され、対応する空洞は絶縁体層によって画成される空洞のアレイの一部であり、絶縁体層は基材の上かつ場反応性層の下に配設されている、生成することと、
場反応性層における対応する標的領域において1つまたは複数の電場を受けることであって、対応する標的領域は場反応性層における標的領域のアレイの一部であり、その各標的領域はある量子状態を有し、空洞のアレイにおける対応する空洞と位置合わせされている、受けることと、
第1の標的領域の第1の量子状態を少なくとも第2の標的領域の第2の量子状態と相互作用させるように、1つまたは複数の電場を制御することと、を含む、方法。
例113.1つまたは複数の電場を受けることは、対応する標的領域のうちの少なくとも1つについての量子状態の離散的エネルギー準位を確立することを含む、例112に記載の量子制御方法。
例114.対応する標的領域の全てが離散的エネルギー準位を有する量子状態を有する、例113に記載の量子制御方法。
例115.離散的エネルギー準位は電子エネルギー準位を含む、例113または114に記載の量子制御方法。
例116.離散的エネルギー準位は光子エネルギー準位を含む、例113または例114もしくは115に記載の量子制御方法。
例117.1つまたは複数の電場を制御することは、第1の標的領域の第1の量子状態と第2の標的領域の第2の量子状態との間の量子結合を変更することを含む、例112に記載の量子制御方法。
例118.第1の標的領域は第2の標的領域と隣り合っている、例112または例113~117のいずれかに記載の量子制御方法。
例119.隣り合う標的領域の間の距離は700nm以下である、例112または例113~118のいずれかに記載の量子制御方法。
例120.突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から100nm未満に定置される先端部において終端する、例112または例113~119のいずれかに記載の量子制御方法。
例121.突起のアレイの各突起は、空洞内で空洞と関連付けられる標的領域から20nm未満に定置される先端部において終端する、例112または例113~119のいずれかに記載の量子制御方法。
例122.突起のアレイの各突起は少なくとも4.0eVの仕事関数を有する材料で形成されている、例112または例113~121のいずれかに記載の量子制御方法。
例123.突起のアレイの各突起は2:1~10000:1の範囲内の高さ対幅比を有する、例112または例113~122のいずれかに記載の量子制御方法。
例124.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の原子構造における侵入部を備える、例112または例113~123のいずれかに記載の量子制御方法。
例125.各標的領域は場反応性層の原子構造における侵入部を備え、侵入部は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた侵入部のアレイを画成する、例112または例113~123のいずれかに記載の量子制御方法。
例126.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の原子構造における置換部を備える、例112または例113~125のいずれかに記載の量子制御方法。
例127.各標的領域は場反応性層の原子構造における置換部を備え、置換部は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた置換部のアレイを画成する、例112または例113~125のいずれかに記載の量子制御方法。
例128.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の原子構造における空所を備える、例112または例113~127のいずれかに記載の量子制御方法。
例129.各標的領域は場反応性層の原子構造における空所を備え、空所は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた空所のアレイを画成する、例112または例113~127のいずれかに記載の量子制御方法。
例130.少なくとも1つの標的領域は場反応性層の表面上の原子または分子を含む、例112または例113~129のいずれかに記載の量子制御デバイス。
例131.原子または分子は場反応性層の外側表面上に配設されている、例130に記載の量子制御方法。
例132.原子または分子は場反応性層の内側表面上に配設されている、例130に記載の量子制御方法。
例133.各標的領域は場反応性層の表面上の原子または分子を含み、原子または分子は集合的に、標的領域のアレイと位置合わせされた原子または分子のアレイを画成する、例112または例113~130のいずれかに記載の量子制御方法。
例134.絶縁体層、場反応性層、空洞のアレイのうちの空洞、またはこれらの任意の組合せによって画成される光導波路内で、光子を伝播させることと、
光子を標的領域のアレイの少なくとも1つの標的領域の量子状態に結合することと、
を含む、例112または例113~133のいずれかに記載の量子制御方法。
【0101】
本明細書は多くの詳細を包含しているが、それらは特許請求され得る内容の範囲を限定するものとしてではなく、特定の例に特有の特徴の記載として理解されるべきである。別個の実装形態の文脈で本明細書に記載されているかまたは図面に示されている特定の特徴を、組み合わせることもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で記載されているかまたは示されている様々な特徴を、複数の実施形態において別々に、または任意の好適な下位組合せで、実施することもできる。
【0102】
同様に、図面では操作が特定の順序で描かれているが、このことは、望ましい全ての結果を達成するために、そのような操作をその示された特定の順序でもしくは連続的に行うこと、または示されている全ての操作を行うことを要求するものと解釈されるべきではない。特定の状況では、マルチタスク処理および並列処理が有利であり得る。また更に、上記した実装形態における様々なシステム構成要素の分離は、そのような分離が全ての実装形態において必要であるものと理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素およびシステムを、全体的に単一の製品において1つに統合できるか、または複数の製品へとパッケージングできることが理解されるべきである。
【0103】
いくつかの実施形態を記載した。ただし、様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。したがって、以下の特許請求の範囲の範囲内には他の実施形態が含まれる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8