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特許7380682組成物、および、セルロース繊維の製造方法
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  • 特許-組成物、および、セルロース繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】組成物、および、セルロース繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20231108BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20231108BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C08L1/02
C08K5/3445
D01F2/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021516125
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017162
(87)【国際公開番号】W WO2020218280
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019082016
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】青山 公洋
(72)【発明者】
【氏名】水阪 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】中安 康善
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康夫
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/000197(WO,A1)
【文献】特開2019-053979(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170745(WO,A1)
【文献】特表2017-514025(JP,A)
【文献】特表2009-520846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08K、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースと、下記式(1)で表される化合物とを含む組成物であって、
組成物中における、前記式(1)で表される化合物の含有量が80質量%以上であり、
1-メチルイミダゾリウムクロリドの濃度が質量基準で、前記式(1)で表される化合物に対し300ppm以下であり、
前記組成物を100℃で、5時間の熱処理後の組成物のせん断粘度維持率、すなわち、(せん断粘度/熱処理前の組成物のせん断粘度)×100(単位:%)は、60%以上であり、
前記組成物の100℃、せん断速度0.1(s -1 )におけるせん断粘度が2800Pa・s以上である、組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
【請求項2】
前記組成物中の式(1)で表される化合物の含有量が組成物中に含まれる溶媒の90質量%以上を占める、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物において、1-メチルイミダゾリウムクロリドの含有量が、前記式(1)で表される化合物に対し、1ppb以上である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、Rがブチル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
セルロースと、下記式(1)で表される化合物とを含む組成物であって、
組成物中における、前記式(1)で表される化合物の含有量が80質量%以上であり、
1-メチルイミダゾリウムクロリドの濃度が質量基準で、前記式(1)で表される化合物に対し300ppm以下である組成物であり、
前記組成物を100℃で、5時間の熱処理後の組成物のせん断粘度維持率、すなわち、(せん断粘度/熱処理前の組成物のせん断粘度)×100(単位:%)は、60%以上であり、前記組成物の100℃、せん断速度0.1(s -1 )におけるせん断粘度が2800Pa・s以上である、
る組成物を紡糸することを含む、セルロース繊維の製造方法。
【化2】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
【請求項6】
前記組成物中の式(1)で表される化合物の含有量が組成物中に含まれる溶媒の90質量%以上を占める、請求項5に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項7】
前記組成物において、1-メチルイミダゾリウムクロリドの含有量が、前記式(1)で表される化合物に対し、1ppb以上である、請求項5または6に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項8】
前記式(1)において、Rがブチル基である、請求項5~7のいずれか1項に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項9】
前記式(1)で表される化合物が、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物を、イオン吸着能を有する処理剤により処理して得られたものである、請求項5~8のいずれか1項に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項10】
前記イオン吸着能を有する処理剤がイオン交換樹脂、活性炭、ゼオライト、ハイドロタルサイト、および、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項11】
前記式(1)で表される化合物が、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物をアルカリ処理して得られたものである、請求項5~8のいずれか1項に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項12】
前記アルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、および、水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項13】
前記紡糸したセルロース繊維を凝固液に浸漬して、セルロース繊維に含まれる式(1)で表される化合物を前記凝固液中に溶出させることを含む、請求項5~12のいずれか1項に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項14】
前記凝固液中に溶出した式(1)で表される化合物をリサイクルすることを含む、請求項13に記載のセルロース繊維の製造方法。
【請求項15】
前記凝固液が水を含む、請求項13または14に記載のセルロース繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、および、セルロース繊維の製造方法に関する。
特に、FRP(Fiber Reinforced Plastics)等の繊維強化樹脂材料用のセルロース繊維を製造するための、組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの強度と剛性を高めるために、ガラス繊維のような高強度かつ高弾性繊維を配合した繊維複合材料が自動車部品、スポーツ用品、建材、雑貨等、様々な分野で使用されている。
【0003】
軽量高強度材料として用いられてきたガラス繊維強化樹脂材料は、使用中は優れた特性を発揮する。しかしながら、強化繊維としてガラス繊維を用いると、廃棄時に残渣が生じることから環境への負荷が大きいことが問題となっている。
【0004】
また、プリント配線板にも絶縁性、剛性を向上させるために、基材としてガラス繊維が用いられている。しかしながら、こちらもガラス繊維を用いると、廃棄時に残渣が生じることから環境への負荷が大きいことが問題となっている。
【0005】
そこで、繊維強化樹脂材料用の強化繊維やプリント配線板の基材として、高い機械的特性、寸法安定性、低熱膨張、電気絶縁性、低比重等の優れた特性を備えたセルロース繊維を用いることが検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、引張弾性率が35GPa以上である高強度かつ高弾性セルロース長繊維を紡糸する方法であって、セルロース原料をイオン液体に平均重合度が3000以下になるように溶解し、平均繊維径が30μm以下になるように紡糸することを特徴とする高強度かつ高弾性セルロース長繊維を紡糸する方法が開示されている。また、同文献には、イミダゾリウム化合物からなるイオン液体として、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチル-ホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネート、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロライドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/053226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が検討したところ、セルロース繊維を製造するために、セルロースを、イオン液体を含む溶媒に溶解すると溶解後のセルロースを分解してしまう場合があることが分かった。特に、加熱するとセルロースの分解が進行しやすいことが分かった。さらに、セルロースが分解して分子量が低下すると、得られる繊維の強度が低下してしまう。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、加熱してもセルロースの分解が進行しにくい組成物を提供することを目的とする。さらに、機械的強度に優れたセルロース繊維を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、セルロースを溶解する溶媒として、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドを用いた場合、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(溶媒)に必然的に含まれる不純物である、1-メチルイミダゾリウムクロリド(以下、「MIC」ということがある)が多いと、セルロースの分解が進行しやすいことを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1> セルロースと、下記式(1)で表される化合物とを含む組成物であって、
1-メチルイミダゾリウムクロリドの濃度が質量基準で、前記式(1)で表される化合物に対し300ppm以下である、組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
<2> 前記組成物中の式(1)で表される化合物の含有量が組成物中に含まれる溶媒の90質量%以上を占める、<1>に記載の組成物。
<3> 前記組成物において、1-メチルイミダゾリウムクロリドの含有量が、前記式(1)で表される化合物に対し、1ppb以上である、<1>または<2>に記載の組成物。
<4> 前記式(1)において、Rがブチル基である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5> セルロースと、下記式(1)で表される化合物とを含む組成物であって、1-メチルイミダゾリウムクロリドの濃度が質量基準で、前記式(1)で表される化合物に対し300ppm以下である組成物を紡糸することを含む、セルロース繊維の製造方法。
【化2】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
<6> 前記組成物中の式(1)で表される化合物の含有量が組成物中に含まれる溶媒の90質量%以上を占める、<5>に記載のセルロース繊維の製造方法。
<7> 前記組成物において、1-メチルイミダゾリウムクロリドの含有量が、前記式(1)で表される化合物に対し、1ppb以上である、<5>または<6>に記載のセルロース繊維の製造方法。
<8> 前記式(1)において、Rがブチル基である、<5>~<7>のいずれか1つに記載のセルロース繊維の製造方法。
<9> 前記式(1)で表される化合物が、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物を、イオン吸着能を有する処理剤により処理して得られたものである、<5>~<8>のいずれか1つに記載のセルロース繊維の製造方法。
<10> 前記イオン吸着能を有する処理剤がイオン交換樹脂、活性炭、ゼオライト、ハイドロタルサイト、および、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種である、<9>に記載のセルロース繊維の製造方法。
<11> 前記式(1)で表される化合物が、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物をアルカリ処理して得られたものである、<5>~<8>のいずれか1つに記載のセルロース繊維の製造方法。
<12> 前記アルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、および、水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、<11>に記載のセルロース繊維の製造方法。
<13> 前記紡糸したセルロース繊維を凝固液に浸漬して、セルロース繊維に含まれる式(1)で表される化合物を前記凝固液中に溶出させることを含む、<5>~<12>のいずれか1つに記載のセルロース繊維の製造方法。
<14> 前記凝固液中に溶出した式(1)で表される化合物をリサイクルすることを含む、<13>に記載のセルロース繊維の製造方法。
<15>前記凝固液が水を含む、<13>または<14>に記載のセルロース繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、加熱してもセルロースの分解が進行しにくいセルロース溶液(組成物)の提供が可能になった。さらに、機械的強度に優れたセルロース繊維を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、セルロース繊維を製造するための装置および工程を示す概略図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、ppmは質量ppmを意味する。
本明細書において、Meはメチル基を、Buはブチル基を示す。
【0013】
[組成物]
本発明の組成物は、セルロースと、式(1)で表される化合物とを含む組成物であって、1-メチルイミダゾリウムクロリドの濃度が質量基準で、式(1)で表される化合物に対し300ppm以下であることを特徴とする。
【化3】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
このようにMIC濃度を式(1)で表される化合物に対し300ppm以下とすることにより、組成物中のセルロースの分解を効果的に抑制することができる。
式(1)で表される化合物、特に、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドは、その製造の際に、副生成物として、MICが製造されてしまう。そして、MICの含有量が多くなると、セルロースが分解されやすくなると推定された。
ここで、MICは、1-メチルイミダゾールと塩酸との平衡状態となり、塩酸が発生すると考えられる。本発明では、MICの濃度を質量基準で、式(1)で表される化合物に対し300ppm以下とすることにより、式(1)で表される化合物に必然的に含まれてしまう塩酸の発生量を抑えることができたと推測される。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0014】
<組成物>
本発明の組成物は、セルロースと式(1)で表される化合物を含む。また、MICの濃度が質量基準で、式(1)で表される化合物に対し300ppm以下である。
以下これらの詳細について説明する。
【0015】
<<セルロース>>
セルロースとしては、特に定めるものではなく、木材パルプ、コットン、コットンリンター、麻、竹、アバカ等の天然セルロース原料や、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生セルロース繊維、ならびに、これらから構成される紙や衣服等の再生セルロースであってもよい。
本発明の一実施形態として、セルロースが、再生セルロースであることが挙げられる。
本発明の組成物におけるセルロースの含有量(セルロース濃度)は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、7質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、紡糸時の分子配向が起こりやすい組成物粘度となり、より機械的強度の優れた繊維を得られる傾向にある。また、本発明の組成物におけるセルロースの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましく、14質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、組成物の粘度が高すぎず、紡糸の際に装置等への負担をより軽減することが可能になる。
また、セルロースは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
<<式(1)で表される化合物>>
本発明の組成物は、式(1)で表される化合物を含む。式(1)で表される化合物は、通常、セルロースを溶解する溶媒として働く。また、式(1)で表される化合物は、通常、イオン液体である。
【化4】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
【0017】
式(1)において、Rは、炭素数2~5のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましく、炭素数2または4のアルキル基がさらに好ましく、ブチル基が一層好ましい。アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。ブチル基は、t-ブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基のいずれであってもよいが、n-ブチル基が好ましい。
本発明の組成物における式(1)で表される化合物の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、83質量%以上であることがより好ましく、86質量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の組成物における式(1)で表される化合物の含有量は、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることがさらに好ましく、93質量%以下であることが一層好ましい。このような範囲とすることにより、紡糸時の分子配向が起こりやすい組成物粘度となり、より機械的強度の優れた繊維を得られる傾向にある。
また、式(1)で表される化合物は、組成物中に含まれる溶媒の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。このような範囲とすることにより、組成物の粘度が高すぎず、紡糸の際に装置等への負担をより軽減することが可能になる。
式(1)で表される化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0018】
本発明において、式(1)で表される化合物を得る方法は特に定めるものではなく、公知の技術を利用できる。
式(1)で表される化合物は、例えば、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物から得ることができる。具体的には、式(1)で表される化合物は、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物を、イオン吸着能を有する処理剤により処理して得ることができる。Rは、式(1)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記イオン吸着能を有する処理剤は、イオン交換樹脂、活性炭、ゼオライト、ハイドロタルサイト、および、金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、イオン交換樹脂およびハイドロタルサイトがより好ましく、イオン交換樹脂がさらに好ましい。金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、および、酸化ケイ素が例示される。
また、式(1)で表される化合物は、1-メチルイミダゾールとRCl(Rは炭素数2~6のアルキル基)の反応生成物をアルカリ処理して得ることもできる。Rは、式(1)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、および、水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、および、水酸化テトラエチルアンモニウムであることがより好ましく、水酸化ナトリウムであることがさらに好ましい。
【0019】
<<1-メチルイミダゾリウムクロリド(MIC)>>
本発明の組成物におけるMICの濃度は、質量基準で、式(1)で表される化合物に対し300ppm以下である。このような構成とすることにより、組成物中のセルロースが分解して低分子量化するのを効果的に抑制できる。
本発明の組成物におけるMICの濃度は、質量基準で、式(1)で表される化合物に対し、250ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることがさらに好ましく、120ppm以下であることが一層好ましく、90ppm以下であることがより一層好ましく、50ppm以下であることがさらに一層好ましく、40ppm以下であることが特に一層好ましく、25ppm以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、組成物中のセルロースが分解して低分子量化するのをより効果的に抑制できる。
また、本発明の組成物におけるMICの含有量は、前記式(1)で表される化合物に対し、0であってもよいが、1ppb以上であることが好ましい。1ppb以上とすることにより、セルロールの粘度がやや下がり、ノズルから吐出するときの歩留まりを高くすることができる。さらには、本発明の組成物におけるMICの含有量は、前記式(1)で表される化合物に対し、5ppm以上、さらには10ppm以上であってもよい。
【0020】
<その他の成分>
本発明の組成物は、式(1)で表される化合物およびMIC以外の他の溶媒(通常、イオン液体)を含んでいてもよい。前記他の溶媒としては、上記以外のイミダゾリウム化合物が例示され、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジエチル-ホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1,3-ジメチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロライド等を挙げることができる。
また、本発明の組成物は、上記の他、非プロトン性の極性溶媒および/または安定化剤を含んでいてもよい。非プロトン性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ピリジン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が例示される。安定化剤としては、ピロカテキン、ピロガロール、没食子酸、没食子酸メチルエステル、没食子酸エチルエステル、没食子酸プロピルエステル、没食子酸イソプロピルエステル、エラグ酸、シュウ酸、リン酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、タンニン、タンニン酸等が例示される。
本発明の組成物は、セルロースおよび式(1)で表される化合物、さらには、任意成分としての、MIC並びに他の成分の合計が100質量%となる。本発明の組成物は、セルロースおよび式(1)で表される化合物が合計で98質量%以上を占めることが好ましく、99質量%以上を占めることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、セルロースの溶解が阻害されることなく、および、紡糸時の分子配向が起こりやすい組成物粘度となり、より機械的強度の優れた繊維を得られる傾向にある。
【0021】
<組成物の物性>
本発明の組成物は、100℃、せん断速度0.1(s-1)におけるせん断粘度が1000Pa・s(パスカス・秒)以上であることが好ましく、1500Pa・s以上であることがより好ましく、2000Pa・s以上であることがさらに好ましく、2500Pa・s以上であることが一層好ましく、2800Pa・s以上であることがより一層好ましい。1000Pa・s以上、特には、2000Pa・s以上であると、組成物中のセルロース分子の分子量が相対的に高くなり、より強度が高いセルロース繊維が得られる。また、本発明の組成物は、100℃、せん断速度0.1(s-1)におけるせん断粘度が4500Pa・s以下であることが好ましく、4000Pa・s以下であることがより好ましく、3800Pa・s以下であることがさらに好ましく、3500Pa・s以下であることが一層好ましい。4500Pa・s以下とすることにより、ノズルからの吐出性をより向上させることができる。
本発明の組成物は、また、ノズルから吐出されるまでの、タンクにおける加熱状態での待機時間を考慮した一例として、100℃で5時間保持した後、100℃、せん断速度0.1(s-1)におけるせん断粘度が1500Pa・s以上であることが好ましく、1800Pa・s以上であることがより好ましく、2000Pa・s以上であることがさらに好ましく、2200Pa・s以上であることが一層好ましい。1500Pa・s以上であることは、組成物中のセルロース分子の分解が相対的に進行していないことを意味し、より強度が高いセルロース繊維が得られる。また、本発明の組成物は、100℃で5時間保持した後、100℃、せん断速度0.1(s-1)におけるせん断粘度が4000Pa・s以下であることが好ましく、3500Pa・s以下であることがより好ましく、3200Pa・s以下であることがさらに好ましい。4000Pa・s以下とすることにより、組成物のノズルからの吐出性をより向上させることができる。
本発明の組成物におけるせん断粘度維持率(100℃で、5時間の熱処理後の組成物のせん断粘度/熱処理前の組成物のせん断粘度)×100(単位:%)は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることがより好ましい。
【0022】
<組成物の調製方法>
本発明では、前記組成物を、セルロースに溶媒(式(1)で表される化合物およびMIC)、さらに選択的に添加される他の成分を混合して調製することが好ましい。セルロースの平均重合度に応じて、溶解時間や溶解温度を調整し、セルロースが均質な溶液(セルロース溶液)となるまで溶解することが好ましい。
【0023】
セルロースを溶媒に溶解させる際に加熱することが好ましい。加熱する場合、オーブンによる加熱、水浴や油浴による加熱、マイクロウェーブによる加熱などの一般的な加熱手段を用いればよい。また、加熱にあたっては、セルロース原料の溶解を促進するために、撹拌を行うことが好ましい。撹拌手段も任意であり、撹拌子や撹拌羽根による機械的撹拌、容器の振盪による撹拌、超音波照射による撹拌などに代表される公知の撹拌法の中から、スケール等に応じて適切な手段を採用すればよい。加熱温度としては、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。また、加熱温度の上限としては、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
さらに、加熱溶解時において、セルロースの酸化・分解を抑制するために、窒素などの不活性ガス雰囲気下で溶解させることが好ましい。
セルロース原料を溶媒に溶解させて得られた組成物は、そのまま後の工程に用いてもよいが、溶液中に未溶解分や不溶解分が残存している場合、これらをろ過してから用いてもよい。
【0024】
[セルロース繊維の製造方法]
本発明のセルロース繊維の製造方法は、セルロースと、式(1)で表される化合物とを含む組成物であって、MICの濃度が質量基準で、式(1)で表される化合物に対し300ppm以下である組成物を紡糸することを含むことを特徴とする。
【化5】
(式(1)中、Rは、炭素数2~6のアルキル基であり、Meは、メチル基である。)
このような構成とすることにより、機械的強度に優れたセルロース繊維が得られる。
本発明のセルロース繊維の製造方法は、より好ましくは、前記紡糸したセルロース繊維を凝固液に浸漬して、セルロース繊維に含まれる式(1)で表される化合物を前記凝固液中に溶出させることを含む。
さらに、本発明のセルロース繊維の製造方法は、前記凝固液中に溶出した式(1)で表される化合物をリサイクルすることを含んでいてもよい。
以下、図1に従って本発明のセルロース繊維の製造方法を説明する。本発明の方法がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0025】
図1は、セルロース繊維を製造するための装置および工程を示す概略図の一例であって、1は組成物(セルロース溶液)を、2はノズルを、3はセルロース繊維を、4は凝固液を、5は巻取機を示す。
本発明では、組成物1をノズル2から吐出する。本発明の組成物1は、ノズルから吐出するに際し、粘度が高く、流動性が悪い傾向にある。そのため、流動性を向上させるため、加熱して吐出することが好ましい。吐出時の組成物の温度としては、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。70℃以上とすることにより、組成物の流動性がより向上する傾向にある。また、吐出時の組成物の温度の上限としては、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。130℃以下とすることにより、セルロースの分解をより効果的に抑制することができる。
また、吐出の際のノズル径は、例えば、0.1~0.5mmとすることができる。組成物は、上述の組成物と同義であり、好ましい範囲も同様である。
ノズル2から吐出された繊維状の組成物は、凝固液4に浸漬される。凝固液に浸漬することにより、繊維状の組成物は、紡糸される。凝固液は、0℃以上100℃以下の範囲の温度の水、または-40℃以上100℃以下の範囲の温度の低級アルコール、極性溶媒、無極性溶媒等を用いることができる。経済性および作業環境性を考えると、水を含む溶媒が好ましい。凝固液には、組成物1中の式(1)で表される化合物を含む溶媒が溶け出すため、連続してセルロース繊維を製造する場合、製造中の凝固液には、上記凝固液に加え、式(1)で表される化合物を含む溶媒も含まれている。また、低級アルコールとは炭素数1以上5以下のアルコールをいう。
また、凝固液に浸漬した後、洗浄を行ってもよい。洗浄は水を含む液で行うことが好ましい。
凝固液に浸漬している間に、あるいは、その後の洗浄によって、溶媒は、紡糸した組成物から放出され、セルロース繊維が得られる。セルロース繊維中の溶媒量は、得られたセルロース繊維の元素分析によって検出される窒素量から溶媒量に換算すると10000ppm以下となっていることが好ましい。
上記凝固液中に溶解した溶媒(特に、イオン液体である式(1)で表される化合物)は、回収して、再度、セルロース繊維の製造にリサイクルしてもよい。本発明の組成物は、溶媒中の不純物(MIC)が少ないため、リサイクルをより効果的に行うことができる。リサイクルに際し、溶媒を含む凝固液は、分留によって、溶媒(特に、イオン液体である式(1)で表される化合物)を分離することができる。
【0026】
上記溶媒を放出したセルロース繊維は、その後、巻取機5に巻き取られる。巻取機の巻取速度を調整することによって、得られるセルロース繊維を延伸して、セルロース繊維の繊維径を調整することができる。また、巻取機以外に延伸ロール等を設けて延伸してもよい。
また、セルロース繊維の延伸倍率は、1~30倍が好ましく、3~20倍がより好ましい。
セルロース繊維をノズルからの吐出速度に対する巻取速度を調整して延伸する場合、その比(巻取速度/吐出速度)は、10~100倍が好ましく、30~70倍がより好ましい。
また、セルロース繊維の引張強度は、ノズルから吐出されるまでの、タンクにおける加熱状態での待機時間を経た後でも、800MPa以上とすることができる。タンクにおける加熱状態での待機時間を考慮した一例として、本発明の組成物は、100℃で5時間加熱した組成物を用いて成形しても、引張強度を800MPa以上とすることができる点で価値が高い。
また、得られるセルロース繊維の数平均繊維径は、1~30μmが好ましく、3~20μmがより好ましい。
【0027】
本発明の組成物から形成されるセルロース繊維および本発明のセルロース繊維の製造方法で得られるセルロース繊維は、FRP等の繊維強化樹脂材料として好ましく用いられる。
繊維強化樹脂材料を製造する際、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂とセルロース繊維とを混合することが好ましい。繊維強化樹脂材料における熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂が例示でき、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が例示できる。また、繊維強化樹脂材料が熱硬化性樹脂を含む場合は、繊維強化樹脂材料には熱硬化性樹脂が完全硬化した繊維強化樹脂材料の他、熱硬化性樹脂を半硬化の状態にしたプリプレグをも含むものとする。なお、繊維強化樹脂材料は、必要に応じて、低収縮剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。
【実施例
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
<イオン液体(溶媒)の調製>
市販品の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(Sigma-Aldrich製、品番:94128)に水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬製、品番:192-02175)を添加して、MIC濃度が12ppmであるイオン液体(溶媒)を得た。
得られたイオン液体について、イオンクロマトグラフィーで分析し、クロリドアニオン以外のアニオンが含まれないこと、カチオンは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドと水酸化ナトリウム由来の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムとナトリウム以外は、1-メチルイミダゾリウムカチオンのみであることを確認した。得られたイオン液体中のMIC濃度は、水酸化ナトリウムを用いた中和滴定によって測定した。単位は、ppmで示した。
【0030】
<セルロース溶液(組成物)の調製>
上記で調製したイオン液体に、溶解パルプ(Georgia-Pacific Cellulose製、品番:V-81)を添加して、100℃で撹拌し、9質量%の濃度のセルロース溶液(組成物)を調製した。
得られたセルロース溶液について、調製直後、および、100℃で5時間保持後(熱処理後)について、それぞれ、100℃、せん断速度0.1(s-1)におけるせん断粘度を測定した。単位は、Pa・sで示した。また、調製直後のセルロース溶液に対する、100℃で5時間保持後のセルロース溶液のせん断粘度維持率(熱処理後のせん断粘度/調製直後のせん断粘度)×100(単位:%)について算出した。せん断粘度変化が低いほど、セルロースが分解していないことを意味する。結果を表1に示した。
せん断粘度の測定方法は、回転型レオメーターを用い、100℃、せん断速度0.1(s-1)における値を測定した。
回転型レオメーターは、Malvern Panalytical社製、Kinexus Pro+を用いた。
【0031】
<セルロース繊維の製造>
上記で調製したセルロース溶液(調製直後、100℃で5時間保持後)について、それぞれ、図1に示すようなシリンジに投入し、ノズル径が0.27mmであるノズルから吐出し、水中で凝固させたセルロース繊維を巻取機で巻き取った。このとき、セルロース繊維を吐出速度に対して50倍の巻取速度で巻き取ることにより、繊維長方向に延伸させた。得られたセルロース繊維の数平均繊維径は10μmであった。数平均繊維径は、セルロース繊維の繊維長に直交する断面20か所において測定した平均値とした。
得られたセルロース繊維についてJIS L 1013の規定に従い、引張強度を測定した。
引張試験機は、島津製作所社製、EZ-SXを用いた。
引張強度の単位は、MPaで示した。
【0032】
実施例2~5、比較例1、2
<イオン液体(溶媒)の調製>
市販品の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドに水酸化ナトリウムを添加して、MIC濃度が12ppmのイオン液体を得た。これに、表1に示す1-メチルイミダゾリウムクロリド濃度(MIC濃度)となるように、MICを添加して調整し、所望のイオン液体を得た。
【0033】
<セルロース溶液(組成物)の調製>
実施例1において、イオン液体を上記で得られたイオン液体に変更し、他は同様に行った。
【0034】
<セルロース繊維の製造>
実施例4、5および比較例1について、上記で調製したセルロース溶液を100℃で5時間保持し、実施例1と同様に行ってセルロース繊維を得た。
【0035】
比較例3
<イオン液体(溶媒)の調製>
市販品の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドをそのままイオン液体として用いた。
【0036】
<セルロース溶液(組成物)の調製>
実施例1において、イオン液体を上記イオン液体に変更し、他は同様に行った。
【0037】
実施例6
<イオン液体(溶媒)の調製>
市販品の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(Sigma-Aldrich製、品番:94128)に弱塩基性イオン交換樹脂(オルガノ製、品名:アンバーライトIRA-67)を添加して撹拌、濾過後、MIC濃度が10ppm未満であるイオン液体(溶媒)を得た。得られたイオン液体中のMIC濃度は、実施例1と同様にして測定した。
【0038】
<セルロース溶液(組成物)の調製>
実施例1において、イオン液体を上記で得られたイオン液体に変更し、他は同様に行った。
【0039】
【表1】
【0040】
表1におけるMIC濃度は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドに対するMICの濃度(単位:ppm)を示している。
表1におけるせん断粘度の単位は、Pa・sである。
表1における維持率は、せん断粘度維持率(熱処理後のせん断粘度/調製直後のせん断粘度)×100(単位:%)を示している。
表1における引張強度の単位は、MPaである。
【0041】
本発明の組成物においては、加熱してもセルロース溶液(組成物)のセルロースの分解を効果的に抑制できた。また、引張強度の高いセルロース繊維が得られた。
【符号の説明】
【0042】
1 組成物(セルロース溶液)
2 ノズル
3 セルロース繊維
4 凝固液
5 巻取機
図1