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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】栽培容器および水耕栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20231113BHJP
【FI】
A01G31/00 601Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019067508
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162507
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】521547611
【氏名又は名称】サンパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 久和
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-151543(JP,A)
【文献】実開平02-073948(JP,U)
【文献】登録実用新案第3202903(JP,U)
【文献】特表2017-522042(JP,A)
【文献】実公昭48-040525(JP,Y1)
【文献】実開昭54-101132(JP,U)
【文献】実開昭58-062847(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の水位に栽培液を行き渡らせて複数の植物を栽培するための栽培容器であって、
樋型容器と、
前記樋型容器の開口を閉じるように設けられる長手方向に延びる蓋とを備え、前記蓋は、天面から下方に延び、かつ、前記長手方向に延びる一対の溝壁から構成される溝と、前記溝の底に長手方向に沿って設けられる複数の定植穴とを備えており、
前記蓋の幅方向の両側端に、前記天面より上方に延びる段部が前記長手方向に沿って形成され、
前記定植穴が前記栽培容器の開口端より下方に位置する、
栽培容器。
【請求項2】
前記蓋は、前記天面および前記溝を備えた蓋本体と、その溝内に配置され、前記複数の定植穴が前記長手方向に設けられた定植板とを有し、
前記定植板の下面に、前記定植穴に挿入される植物を保持する爪を備えている、
請求項1記載の栽培容器。
【請求項3】
前記樋型容器は、両側壁に保持部を有し、
前記蓋本体は、前記天面と、前記天面に設けられる前記溝と、前記溝の下端に設けられる前記定植板を支持する定植板係止部と、前記天面の両側端に前記保持部と係合する容器係止部とを有し、
それぞれ一対の前記容器係止部と前記保持部とが連結することにより段部が形成される、
請求項2記載の栽培容器。
【請求項4】
前記保持部は、上方に延びる立上壁を有し、
前記容器係止部は、前記樋型容器の前記立上壁を受け入れる下方に開口する溝を有する、
請求項記載の栽培容器。
【請求項5】
前記蓋本体は、一対の蓋割体からなり、
前記蓋割体は、天面部と、前記天面部の内端から下方に延びる一方の溝壁と、前記溝壁の下端に設けられる一方の前記定植板係止部と、前記天面部の外側端に設けられた一方の前記容器係止部とを有し、
一対の天面部によって前記天面が形成され、
一対の前記溝壁によって前記溝が形成され、
一対の前記定植板係止部によって前記定植板が支持される、
請求項3または4に記載の栽培容器。
【請求項6】
前記樋型容器が、前記所定の水位以上となったとき、その増加分だけ排水するオーバーフロー排水機構を有する、
請求項1~5のいずれかに記載の栽培容器。
【請求項7】
前記複数の定植穴が一列に形成されている、
請求項1~6のいずれかに記載の栽培容器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか記載の栽培容器へ栽培液を供給する水耕栽培方法。
【請求項9】
植物の育苗段階において、複数の栽培容器を所定の間隔で並列させ、
植物の生長に応じて、前記間隔を広げる、
請求項8記載の水耕栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培容器および水耕栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1に示すように、多数の種苗を植えつけて栽培するための複数個のトレイと、そのトレイを入り口側から出口側まで搬送するコンベアと、トレイに水および栄養を供給する手段と、トレイの植物に光を照射する手段とを備えた植物栽培装置であって、トレイをトレイの進行方向に対して横方向に並べているものを提案している。
この植物栽培装置は、入り口側から出口側に向かって育苗ステージの植物から収穫ステージの植物となるように、各トレイに同じ成長段階の植物を栽培することにより、大規模な植物栽培が可能となる。
【0003】
また特許文献2には、並列して並べられた複数の長尺の水槽と、複数の水槽の上部に、複数の水槽を渡すようにして載置される複数のスライド式蓋体とを備えた水耕栽培装置が開示されている。このスライド蓋体は、各水槽の略中央上に位置するように、植物を保持する挿通穴が一定の間隔をあけて複数設けられた板状体である。そして、この水耕栽培装置も、各スライド式蓋体に同じ生長段階の植物を定植させ、植物の生長と共にスライド式蓋体を水槽に沿ってスライドさせることにより、水槽の一端から他端に向かって、育苗ステージの植物から収穫ステージの植物まで栽培することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4279379号
【文献】特開2017-118837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1や特許文献2のように一方向に長い樋型容器は、植物栽培装置において省スペース化ができ、生産性は高い。
しかし、特許文献1の植物栽培装置は、トレイの幅が狭いため、植物がある程度生長すると植物の根が大きくなり、その根がトレイの長手方向に流す栽培液を堰きとめてしまうことがある。特に、トレイに同じ成長段階の植物を栽培した場合、顕著にあらわれる。このように栽培液の循環が悪くなったり、栽培液が樋容器の開口から溢れたりといった問題がある。
一方、特許文献2の水耕栽培装置は、水槽の一端から他端に向かって育苗段階の植物から収穫段階の植物が並ぶため、特許文献1のように栽培液の循環は悪くならないが、収穫段階近くになると他端側で同様の問題が起こりうる。また複数の水槽が蓋体によって固定されているため、水槽の間隔を変えることができず、生長段階に応じて省スペース化ができるものではない。
本発明は、植物が生長しても栽培液の循環が良好であり、かつ、効率よく配列が可能な栽培容器および水耕栽培方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の栽培容器は、複数の植物を栽培するための栽培容器であって、樋型容器と、前記樋型容器の開口を閉じるように設けられる長手方向に延びる蓋とを備え、前記蓋は、長手方向に沿って設けられる複数の定植穴を備えており、前記定植穴が前記栽培容器の開口端より下方に位置することを特徴としている。
ここで栽培容器の開口端とは、栽培容器に液体が注がれる開口の端部であって、一番高いところをいう。
本発明の栽培容器は、定植穴が栽培容器の開口端より下方に位置しているため、たとえ、植物が生長して植物の根が樋型容器の全体に伸びて、栽培液等の水面が上昇しても、栽培容器から栽培液等がこぼれるおそれが小さい。また、栽培容器に栽培液を供給する場合、栽培液が行き渡らなかったり、詰まったり、循環が滞るおそれも小さい。特に、生長段階が同じ複数の植物を栽培するのに好ましい。
【0007】
本発明の栽培容器であって、前記蓋が、長手方向に延びる溝を備え、前記定植穴が、前記溝の底に設けられているものが好ましい。そのような溝を備えている栽培容器であって、前記蓋が、長手方向に延びる溝を備えた蓋本体と、その溝内に配置され、複数の定植穴が設けられた定植板とを有するものが好ましい。さらに、前記定植板の下面に、前記定植穴に挿入される植物を保持する爪を備えているものが好ましい。
【0008】
本発明の栽培容器であって、前記樋型容器の両側面の内面であって、前記樋型容器の開口端より下方に、前記蓋を係止する係止部が設けられているものが好ましい。
本発明の栽培容器であって、前記樋型容器が両側壁から内側に向かって延びる一対の天面と、それぞれの天面の内端から下方に延びる一対の内壁と、内壁の下端に設けられた前記蓋を係止する一対の係止部とを備えているものが好ましい。
このように本発明の栽培容器は、種々の形状を呈することができる。
本発明の水耕栽培方法は、本発明の栽培容器へ栽培液を供給することを特徴としている。
このような水耕栽培方法であって、植物の育苗段階において、複数の栽培容器を所定の間隔で並列させ、植物の生長に応じて、前記間隔を広げるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1aは本発明の栽培容器の一実施形態の一部を示す斜視図であり、図1bはそのX1-X1線断面図であり、図1cはそのX2-X2線断面図である。
図2図2a、bはそれぞれ本発明の栽培容器に生長した植物が定植されている状態を示す概略図である。
図3図3a、図3b、図3cはそれぞれ本発明の水耕栽培方法の各工程における栽培容器の配置図である。
図4図4aは本発明の栽培容器の第2の実施形態を示す断面図であり、図4bは樋型容器への蓋体の取り付け工程を示す概略図であり、図4cは樋型容器から蓋体の取り外し工程を示す概略図である。
図5図5aは本発明の栽培容器の第3の実施形態を示す断面図であり、図5bは樋型容器から蓋体の脱着工程を示す概略図である。
図6図6a、図6bはそれぞれ本発明の栽培容器の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1a~図1cの水耕栽培用の栽培容器10は、一方向に延びる樋型容器20と、一方向に延びる蓋30とを備えている。樋型容器20に蓋30を取り付けたとき、蓋30の定植穴35が栽培容器10の開口端10aより下方に位置するものである。
【0011】
樋型容器20は、断面が上方が開口しているコ字状で直方体のものである。詳しくは、一方向に延びる底21と、底21の前端から上方に立ち上がる前壁22と、底21の後端から上方に立ち上がる後壁(図示せず)と、底21の両側端から上方に立ち上がる2つの側壁24とを備えている。なお、各壁は同じ高さである。
樋型容器20の幅の下限は30mm以上、好ましくは50mm以上、特に好ましくは70mm以上である。30mmより小さい場合、生長段階の植物の根を十分に収容することができなくなり、植物の生長を阻害するおそれや、蓋30を押し上げるおそれがある。一方、上限は300mm以下、好ましくは200mm以下、特に好ましくは100mm以下である。300mmより大きい場合、育苗段階において、無駄なスペースが大きくなりすぎて、効率が悪い。なお、長さに対する幅の比率は、1/50~1/3、好ましくは1/30~1/4、特に好ましくは1/20~1/5である。
樋型容器20の深さの下限は10mm以上、好ましくは20mm以上、特に好ましくは25mm以上である。10mmより小さい場合、生長段階の植物の根を十分に収容することができなくなり、植物の生長を阻害するおそれや、蓋30を押し上げるおそれがある。一方、上限は150mm以下、好ましくは100mm以下、特に好ましくは70mm以下である。150mmより大きい場合、循環する栽培液の無駄が多くなる。
このような樋型容器11は、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂や、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属から成形される。特に、アルミニウムやアルミニウム合金が好ましい。
【0012】
蓋30は、板状のものであり、蓋30の両側端に設けられる容器係止部31と、蓋30の幅方向の中心に形成される溝32と、その溝32に設けられた定植穴35とを備えている。
容器係止部31は、蓋30の両側端が下方に折り曲げることにより形成される。この蓋30を樋型容器20に取り付けるときは、容器係止部31を樋型容器20の両側壁24の外側に位置させ、容器係止部31の内側を両側壁24の上端に引っ掛け、樋型容器20の前端から後端まで両側壁24を橋渡すように取り付ける。しかし、その構造は、蓋30を樋型容器20に取り付けることができれば、特に限定されるものではない。
溝32は、蓋30の幅方向の中心に長手方向に延び、溝底32aと、その両側から立ち上がる溝壁32bとを備えている。
【0013】
溝底32aの幅の下限は、5mm以上、好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上である。5mmより小さいと、植物の根が生長したとき、定植穴35から溢れる栽培液を十分に保持できず、溝32を越えて栽培容器10から流れ出るおそれがある。その上限は、100mm以下、好ましくは50mm以下、特に好ましくは40mm以下である。100mmより大きいと、また省スペース化に向かない。溝底32aの幅は、樋型容器20の幅に対して0.1~0.7、好ましくは0.2~0.6、特に好ましくは0.3~0.5である。
溝32の深さの下限は、5mm以上、好ましくは8mm以上、特に好ましくは10mm以上である。5mmより小さいと、植物の根が生長したとき、定植穴35から溢れる栽培液を十分に保持できず、樋型容器20から流れ出るおそれがある。その上限は、100mm以下、好ましくは50mm以下、特に好ましくは30mm以下である。100mmより大きいと、溝内に収容される植物の部分は溝壁32bによって照明等が遮られるため、植物の生長に好ましくない。
定植穴35は、長手方向に所定の間隔で複数設けられている。その間隔の下限は、30mm以上、好ましくは50mm以上、特に好ましくは60mm以上である。30mmより小さいと、植物が生長したとき、隣接した植物の葉や茎同士が絡まるおそれが大きくなる。その上限は、200mm以下、好ましくは150mm以下、特に好ましくは100mm以下である。200mmより大きいと、省スペース化に向かない。定植穴の径の下限は、5mm以上、好ましくは8mm以上、特に好ましくは10mm以上である。5mmより小さいと、生長した植物の根または茎を締め付けることになり、生育不良の原因となりうる。一方、その上限は、70mm以下、好ましくは50mm以下、特に好ましくは30mm以下である。70mmより大きいと省スペース化の効果が小さくなる。
【0014】
このように構成されているため、蓋30を樋型容器20に取り付けたとき、溝壁32bの高さ分だけ定植穴35が栽培容器10の開口端10a(溝32の開口である溝32の溝壁32bの上端および樋型容器20の前壁22および後壁の上端)より下方に位置する。また蓋30の溝底32aと樋型容器20の側壁24との間に樋型容器20の上部の左右に空間Zが形成される。そのため、例えば、図2aに示すように、植物Pが生長し、植物の根Rが樋型容器20内を埋めるように伸びたとき、栽培液の水面Sが上昇し、栽培液が定植穴35から溢れても、栽培液は溝32および空間Zで保持されて栽培容器10からこぼれることがない。そのため、栽培液を溝32および空間Zを介して栽培容器10の全体に行きとどろかせることができる。また植物Pの根Rが空間Zに伸びることができるため、蓋30が押し上げられて外れるおそれも小さい。
【0015】
つまり、図2aのように、栽培容器10に栽培液を供給したとき、水面Sが上昇し、溝32および空間Zを通じて栽培容器10の全体に栽培液を行き渡らせることができる。例えば、対象植物に栽培液を消化させ、栽培液が少なくなってきたら栽培液を供給する場合でも、栽培液を栽培容器10の全体に行き渡らせることができる。
一方、図2bに示すように、栽培液を循環する水耕栽培方法であって、栽培液を栽培容器10の一端の供給部15aから供給し、他端の排出部15bから排出しながら循環する場合、上述したように、水面Sが上昇した場合、栽培液は、溝32および空間Zを流れて、栽培容器10の前端から後端まで通るため、栽培液がこぼれるのを防止するだけでなく、栽培液の循環が滞ることを防止する。
図2bにおいて、栽培容器10からの栽培液の排出部15bを、樋型容器20の底21に設けられた孔21aに嵌合される円筒状の排出筒21bを備えたオーバーフロー排水機構としている。しかし、排水機構について、例えば、孔21aから直接排水するようにしてもよく、特に限定するものではない。しかし、一定の水面以上となったとき、その増加分だけ排水するオーバーフロー排水機構とするのが好ましい。
【0016】
次に、栽培空間Tにおける栽培容器10を用いた植物の水耕栽培方法について説明する。栽培空間Tは、縦長の空間である。栽培空間Tとしては、多段式の植物棚の棚板と棚板の間の空間などが挙げられる。栽培空間Tの面積は、特に限定されるものではないが、栽培空間Tの幅が栽培容器10の長さに対して1倍~1.5倍、好ましくは1.1倍~1.3倍とし、栽培空間Tの長さが栽培容器10の長さに対して2倍~10倍、特に、3倍~6倍とするのが好ましい。栽培空間Tの高さは、栽培容器10を配置でき、栽培する植物の生長を妨げないように適宜設定される。
【0017】
初めに、ウレタンまたはスチレンの直方体状または正方体状の発泡体に対象植物の種を発芽させて苗を育成する(工程1)。
次に、育成した苗を栽培容器10に定植する(工程2)。このとき、発泡体を定植穴35に嵌めるようにして固定する。
そして、図3aに示すように、栽培容器10を縦長の栽培空間Tに対して横向きに並べる(工程3)。
工程3による栽培は、植物にもよるが10日から4週間、好ましくは2週間から3週間くらいとする。この段階において、植物の葉や茎は育っていないため、栽培している植物が、栽培容器10の幅方向に隣接した他の栽培容器10の植物と絡まったりすることがない。そのため、並列に並べられる栽培容器10の間隔を小さくすることにより、効率よく多くの植物を栽培することができる。
【0018】
次いで、植物が生長してきたら、図3bに示すように、縦長の栽培空間Tに対して縦向きにして直列し、そのような直列群100を複数(栽培容器10と栽培空間Tの大きさに応じて2~15列、好ましくは5~10列)つくり、直列群100を所定の間隔で並列に並べる(工程4)。なお直列群100は、栽培容器10を直列に固定してもよく、固定しなくてもよい。
工程4による栽培は、植物にもよるが20から60日、好ましくは40日から50日くらいとする。また植物にもよるが、直列群100の間隔を、植物の生長に応じて拡げてもよい。例えば、図3cのように直列群100の列を減少させてもよい。このように植物の生長に応じて栽培容器10の間隔を調整することにより、隣接する植物同士の接触を防止でき、健康で大きな植物の栽培が可能となる。
【0019】
このように栽培容器10を用いた水耕栽培方法は、隣接した植物が接触して植物に障害が発生しないように各生長段階に応じて最も効率良く配列させることができる。また栽培液を滞らせることなく各植物に供給させることができ、かつ、栽培液等のロスを極力減らすことができる。
【0020】
図4aの栽培容器10Aは、一方向に延びる樋型容器20Aと、一方向に延びる蓋30Aとを備え、蓋30Aが蓋本体41と、定植穴35が形成された定植板42とからなるものである。樋型容器20Aに蓋30Aを取り付けたとき、定植穴35が栽培容器10Aの開口端10aより下方に位置する。また蓋30Aの両側端に、天面部46より上方する段部(保持部25)が設けられている。
【0021】
樋型容器20Aは、上端に蓋30Aを保持する保持部25が形成されている。その他の構成は、図1の樋型容器20と実質的に同じものである。
保持部25は、側壁の上端から内側に延びる上面部25a、その上面部25aの最内端から下方に延びる側面部25bと、その側面部25bの下端から外側に延びる下面部25cとを有し、上面部25aの下面が湾曲しており、下面部25cと側壁24とは隙間S図4b参照)が形成されているJ字状または鉤爪状のものである。
この保持部25が、天面部46から外側に向かって上方する段部となり、栽培容器10Aの開口端10aとなる。
【0022】
蓋30Aの蓋本体41は、樋型容器20Aに取り付けたとき、蓋30Aの幅方向の中心に溝32が形成されるように、一対の蓋割体41aからなる。一対の蓋割体41aは左右対称となっている。
蓋割体41aは、天面部46と、天面部の内端から下方に延びる溝壁47と、溝壁の下端に設けられた定植板係止部48と、天面部の外端に設けられた容器係止部49とを有する。
定植板係止部48は、溝壁47の下端から内側に延びる突条である。
容器係止部49は、天面部の外端から上方に延びる爪部49aと、天面部の外端から下方に延びる支持面49bとを有する。爪部49aは、湾曲しながら上方かつ内側に延びる鉤爪状のものである。
【0023】
蓋体30Aの樋型容器20Aへの取付は、図4bに示すように、蓋割体41aの容器係止部49の爪部49aの先端を、樋型容器20Aの保持部25の下面部25cと側壁24との間の隙間Sに挿入し、爪部49aを保持部25の湾曲した上面部25aの下面を滑らせながら、蓋割体41aの天面部46が水平となるように、容器係止部49を中心にして蓋割体41aを半時計方向(右側の蓋割体は時計方向)に回転させることにより固定される。蓋割体41aの天面部46が水平となると同時に、蓋割体41aの支持面49bが樋型容器20Aの側壁24と当接する。そのため、蓋割体41aは安定して固定される。
一方、蓋体30Aの取り外しは、図4cに示すように、容器係止部49を中心にして蓋割体41aを時計方向(右側の蓋割体は半時計方向)に回転させることにより、取り外せる。
【0024】
定植板42は、一方向に延びる長方形状の板本体42aと、その板本体42aに一定の間隔で形成された定植穴35と、板本体42aの下面に形成された保持爪42bとを有する。
保持爪42bは、定植穴35に挿入される植物を保持するものであり、板本体42aの両側端より若干内側から下方に延びる一対の保持壁42b1と、それぞれの先端から斜め内側に延びる斜面部42b2とを有する。
定植板42は、板本体42aの両端の下面を一対の蓋割体41aの定植板係止部48と係合させて、蓋体30Aに支持させる。
【0025】
このように定植板42を蓋本体41と別体としているため、育成した苗を定植板42に定植し、定植板42だけを並べることにより、省スペース化を一層すすめることができる。
植物がある程度生育したら、定植板42を栽培容器10Aに取り付けて、図1の栽培容器10の工程3(図3a)、工程4(図3b)のように生育した植物に応じて栽培容器10Aを並べる。
その後、複数の栽培容器10Aの間隔をあけながら栽培する。
【0026】
このように構成されているため、図1の栽培容器10と同様に、栽培容器10Aは、段部(保持部25)の高さおよび溝32の深さだけ定植穴35が栽培容器10Aの開口端10aより下方に位置する。そのため、植物の根が生長し、栽培液の水面が上昇して栽培液が定植穴35から溢れても、栽培容器10Aからこぼれることがない。そして、栽培液を栽培容器10Aの全体に行きとどろかせることができる。
また蓋本体41を2つに分けて、それぞれを固定しているため、蓋体30Aをより強固に固定でき、かつ、取り外しが簡単である。また取り外した後の洗浄も簡単である。
【0027】
図5aの栽培容器10Bは、樋型容器20Bと蓋30Bの連結構造が異なる点で図4の栽培容器10Aと異なる。詳しくは、一方向に延びる樋型容器20Bと、一方向に延びる蓋30Bとを備え、蓋30Bが蓋本体51と、定植穴35が形成された定植板42とからなる。また蓋30Bの両側端に、天面部46より上方する段部(容器係止部59)が設けられており、この段部(容器係止部59)が開口端10aを構成している。そのため、樋型容器20Bに蓋30Bを取り付けたとき、定植穴35が栽培容器10Bの開口端10aより段部(容器係止部59)および溝32の高さだけ下方に位置する。
定植板42は、図4の栽培容器10Aの定植板42と実質的に同じものである。
【0028】
樋型容器20Bは、側壁24の上端に保持部25Bが設けられている。保持部25Bは、側壁24の上端から上方に向かって幅が縮むように延びる斜面部24aと、その端部から上方に延びる立上壁24bとを有する。その他の構成は、図1の樋型容器20と実質的に同じものである。
【0029】
蓋30Bの蓋本体51は、樋型容器20Bに取り付けたとき、蓋30Bの幅方向の中心に溝32が形成されるように、一対の蓋割体51aからなる。一対の蓋割体51aは左右対称となっている。
蓋割体51aは、天面部56と、天面部の内端から下方に延びる溝壁57と、溝壁の下端に設けられた定植板係止部58と、天面部の外端に設けられた容器係止部59とを有する。
定植板係止部58は、溝壁57の下端から内側に延びる突条である。
容器係止部59は、下方に開口する溝である。詳しくは、外壁部59aと、内壁部59bと、その上端を繋ぐ上底部59cとを有し、内壁部59b中部近辺で天面部56と連結している。そのため、容器係止部59は、天面部46から外側に向かって上方する段部となる。
【0030】
蓋体30Bの樋型容器20Bへの取付は、図5bに示すように、蓋割体51aの下側に開口する容器係止部59に、樋型容器20Bの保持部25の立上壁24bを挿入する。
一方、蓋体30Bの取り外しは、逆に、蓋割体51aを上方に移動させることにより、取り外せる。
【0031】
このように構成されているため、図4の栽培容器10Aと実質的に同じ効果を奏する。
【0032】
図6aの栽培容器10Cは、樋型容器20の両側壁24の内面24aの上部に内側に突出する突条61が形成されており、平板状の蓋30Cが突条61に支持されている。突条61は、樋型容器20Cの前端から後端に向かって延びている。しかし、一定の間隔をあけて複数の突部が設けられていてもよい。その他の構成は、図1の栽培容器10と実質的に同じである。また突条61の位置は、図1の栽培容器10の溝32の深さと実質的に同じである。
このように構成されているため、蓋30Cを樋型容器20Cに取り付けたとき、定植穴35が栽培容器10Cの開口端(樋型容器20Cの前後壁(図示せず)、側壁24の上端)より下方に位置する。そのため、図1の栽培容器10と同様に、栽培容器10から栽培液がこぼれたり、栽培液の循環が滞ったりするおそれが小さい。
【0033】
図6bの栽培容器10Dは、樋型容器20Dが、両側壁24から内側に向かって延びる2つの天面66と、それぞれの天面66の内端から下方に延びる2つの内壁67と、内壁67の下端に設けられた内側に突出する突条68とを有し、平板状の蓋30Dが突条68に支持されている。そのため、樋型容器20の側壁24と内壁67との間に空間Zが設けられている。
このように構成されているため、蓋30Dを樋型容器20Dに取り付けたとき、定植穴35が栽培容器10Dの開口端(樋型容器20Dの内壁67の上端)より下方に位置するため、図1の栽培容器10と同様に、栽培容器10から栽培液がこぼれたり、栽培液の循環が滞ったりするおそれが小さい。
【0034】
このように図6aの栽培容器10Cおよび図6bの栽培容器10Dも、定植穴35が栽培容器の開口端10aより下方に位置するため、栽培液の水面Sが上昇して栽培液が定植穴35から溢れても、栽培容器10からこぼれたり、栽培液の循環が滞ったりするおそれが小さい。
【符号の説明】
【0035】
10、10A、10B 栽培容器
10a 開口端
11 樋型容器
15a 供給部
15b 排出部
20、20A、20B 樋型容器
21 底
21a 孔
21b 排出筒
22 前壁
24 側壁
24a 内面
30、30A、30B 蓋
31 容器係止部
32 溝
32a 溝底
32b 溝壁
35 定植穴
41 突条
46 天面
47 内壁
48 突条
100 直列群
P 植物
R 根
水面
T 栽培空間
Z 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6