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特許7384032印刷装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20231114BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H04N1/00 912
B41J5/30 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019238691
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108418
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196111(JP,A)
【文献】特開2016-163108(JP,A)
【文献】特開2018-185652(JP,A)
【文献】特開2004-106282(JP,A)
【文献】特開平11-098332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/21
B41J 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を記録媒体に印刷する印刷部と、
外部端末から、ページ記述言語で記述された第1データを受信する通信部と、
ユーザの操作を受け付ける操作パネルと、
前記操作パネルによる入力に応じて原稿の画像を読み取る画像読取部と、
記憶部と、
制御部と、
を備え、
前記記憶部には、前記通信部により受信される第1データを記憶する受信バッファ領域、RIP処理において用いられるワーク領域、及び、前記RIP処理により生成されるラスターデータを記憶するページメモリ領域が設けられ、
前記制御部は、
前記受信バッファ領域に記憶されている前記第1データを解析し、前記ワーク領域を用いてラスターデータを生成するRIP処理と、
前記RIP処理により生成された前記ラスターデータに基づく画像を、前記印刷部を用いて印刷する第1印刷処理と、
前記画像読取部によって読み取られた原稿の画像である第2データを、前記印刷部を用いて印刷する第2印刷処理と、
前記第1印刷処理の実行中に、前記第2印刷処理を実行する割込印刷の指示を前記操作パネルにより受け付ける割込受付処理と、
前記割込受付処理により前記割込印刷の指示が受け付けられると、前記ページメモリ領域を前記ワーク領域に拡張し、前記第1印刷処理を停止させるとともに、前記RIP処理を継続し、継続される前記RIP処理により生成される前記ラスターデータを、拡張された前記ページメモリ領域に記憶していく、RIP継続処理と、
を実行する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記RIP継続処理において、前記RIP処理のタスク優先順位を前記第2印刷処理のタスク優先順位よりも下げる処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2印刷処理が完了した後、前記RIP処理のタスク優先順位を元に戻す処理を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2印刷処理を開始してから完了するまでの一部の期間において、前記RIP処理のタスクをスリープさせる処理を実行する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記RIP継続処理において、ページ単位での前記RIP処理が開始される毎に、1ページ分のラスターデータを記憶可能な領域を拡張領域として前記ページメモリ領域に加える、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2印刷処理が完了した後、前記第1印刷処理を再開し、前記ワーク領域において前記ページメモリ領域として拡張された領域を解放する処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記RIP継続処理において、前記ワーク領域の空き領域が閾値以上である場合に、当該空き領域の一部を拡張領域として前記ページメモリ領域を拡張する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
画像を記録媒体に印刷する印刷部と、
外部端末から、ページ記述言語で記述された第1データを受信する通信部と、
ユーザの操作を受け付ける操作パネルと、前記操作パネルによる入力に応じて原稿の画像を読み取る画像読取部と、
記憶部と、
を備えた印刷装置を制御する制御方法であって、
前記記憶部には、前記通信部により受信される第1データを記憶する受信バッファ領域、RIP処理工程において用いられるワーク領域、及び、前記RIP処理工程により生成されるラスターデータを記憶するページメモリ領域が設けられ、
前記受信バッファ領域に記憶されている前記第1データを解析し、前記ワーク領域を用いてラスターデータを生成するRIP処理工程と、
前記RIP処理工程により生成された前記ラスターデータに基づく画像を、前記印刷部を用いて印刷する第1印刷処理工程と、
前記画像読取部によって読み取られた原稿の画像である第2データを、前記印刷部を用いて印刷する第2印刷処理工程と、
前記第1印刷処理工程の実行中に、前記第2印刷処理工程を実行する割込印刷の指示を前記操作パネルにより受け付ける割込受付処理工程と、
前記割込受付処理工程により前記割込印刷の指示が受け付けられると、前記ページメモリ領域を前記ワーク領域に拡張し、前記第1印刷処理工程を停止させるとともに、前記RIP処理工程を継続し、継続される前記RIP処理工程により生成される前記ラスターデータを、拡張された前記ページメモリ領域に記憶していく、RIP継続処理工程と、
を実行する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項1に記載の印刷装置における制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙等の媒体に印刷処理を行う印刷装置として、割込印刷機能を有するものが知られている。割込印刷機能は、印刷装置が印刷処理を実行している途中で、その印刷処理とは別の印刷処理を実行する機能である。
【0003】
特許文献1には、実行中の印刷処理に対する割込予告を受け付けた際に、割込ボタンが操作されてから実行ボタンが操作されるまでの間を利用して、RIP(Raster Image Processor)処理を継続して実行する画像記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-193514号公報(2016年11月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、先に印刷処理が実行されている際に割込印刷処理が実行された場合でも、実行されていた印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されなかった場合と比較して遅くなってしまうことを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る印刷装置は、画像を記録媒体に印刷する印刷部と、外部端末から、ページ記述言語で記述された第1データを受信する通信部と、ユーザの操作を受け付ける操作パネルと、前記操作パネルによる入力に応じて原稿の画像を読み取る画像読取部と、記憶部と、制御部と、を備え、前記記憶部には、前記通信部により受信される第1データを記憶する受信バッファ領域、RIP処理において用いられるワーク領域、及び、前記RIP処理により生成されるラスターデータを記憶するページメモリ領域が設けられ、前記制御部は、前記受信バッファ領域に記憶されている前記第1データを解析し、前記ワーク領域を用いてラスターデータを生成するRIP処理と、前記RIP処理により生成された前記ラスターデータに基づく画像を、前記印刷部を用いて印刷する第1印刷処理と、前記画像読取部によって読み取られた原稿の画像である第2データを、前記印刷部を用いて印刷する第2印刷処理と、前記第1印刷処理の実行中に、前記第2印刷処理を実行する割込印刷の指示を前記操作パネルにより受け付ける割込受付処理と、前記割込受付処理により前記割込印刷の指示が受け付けられると、前記ページメモリ領域を前記ワーク領域に拡張し、前記第1印刷処理を停止させるとともに、前記RIP処理を継続し、継続される前記RIP処理により生成される前記ラスターデータを、拡張された前記ページメモリ領域に記憶していく、RIP継続処理と、を実行する。
【0007】
上述した構成によれば、第2印刷処理の割込を受け付けた場合、実行中であった(割り込まれた側の)第1印刷処理は停止するが、RIP処理は継続して実行される。このとき、RIP処理のワーク領域の一部が、ラスターデータを記憶するページメモリ領域として用いられる。そのため、ラスターデータを記憶するページメモリ領域が大きくなり、第1印刷処理を停止している状態であってもRIP処理を続行することができる。したがって、先に印刷処理が実行されている際に割込印刷処理が実行された場合でも、実行されていた印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されなかった場合と比較して遅くなってしまうことを低減させることができる。
【0008】
上述の印刷装置において、前記制御部は、前記RIP継続処理において、前記RIP処理のタスク優先順位を前記第2印刷処理のタスク優先順位よりも下げる処理を実行してもよい。
【0009】
上述した構成によれば、印刷装置が第2印刷処理を実行する割込印刷の指示を受け付けた場合、第2印刷処理はRIP処理よりも優先して実行される。これにより、第1印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されない場合と比較して遅くなってしまうことを防ぎつつ、第2印刷処理の完了がRIP処理が継続して実行されない場合と比較して遅くなってしまうことを低減することができる。
【0010】
上述の印刷装置において、前記制御部は、前記第2印刷処理が完了した後、前記RIP処理のタスク優先順位を元に戻す処理を実行してもよい。
【0011】
上述した構成によれば、第2印刷処理が完了した後、元の優先順位でRIP処理が実行される。これにより、第1印刷処理の完了が、タスクの優先順位が元に戻されない場合と比較して遅くなってしまうことを低減することができる。
【0012】
上述の印刷装置において、前記制御部は、前記第2印刷処理を開始してから完了するまでの一部の期間において、前記RIP処理のタスクをスリープさせる処理を実行してもよい。
【0013】
上述した構成によれば、印刷装置が割込印刷の指示を受け付けた場合、第2印刷処理が完了するまで、RIP処理においてタスクスリープ処理が行われる。これにより、割込印刷が発生しない場合と比較して第1印刷処理の完了が遅くなってしまうことを防ぎつつ、RIP処理が継続して実行されない場合と比較して第2印刷処理の完了が遅くなってしまうことを低減することができる。
【0014】
上述の印刷装置において、前記制御部は、前記RIP継続処理において、ページ単位での前記RIP処理が開始される毎に、1ページ分のラスターデータを記憶可能な領域を拡張領域として前記ページメモリ領域に加えてもよい。
【0015】
上述した構成によれば、ページ単位でのRIP処理が開始される毎に、1ページ分のラスターデータを記憶可能な領域の分、ページメモリ領域が拡張される。これにより、ワーク領域が不要に小さくなってしまうことが防止される。
【0016】
上述の印刷装置において、前記制御部は、前記第2印刷処理が完了した後、前記第1印刷処理を再開し、前記ワーク領域において前記ページメモリ領域として拡張された領域を解放する処理を実行してもよい。
【0017】
上述した構成によれば、印刷装置は、割込印刷が完了した後、ページメモリ領域として拡張された領域を解放する。これにより、割込印刷終了後、ワーク領域全体を本来の用途に用いることができる。
【0018】
上述の印刷装置において、前記制御部は、前記RIP継続処理において、前記ワーク領域の空き領域が閾値以上である場合に、当該空き領域の一部を拡張領域として前記ページメモリ領域を拡張してもよい。
【0019】
上述した構成によれば、RIP処理において用いられるワーク領域132が不足してしまうことが防止される。
【0020】
本発明の一態様に係る制御方法は、画像を記録媒体に印刷する印刷部と、外部端末から、ページ記述言語で記述された第1データを受信する通信部と、ユーザの操作を受け付ける操作パネルと、前記操作パネルによる入力に応じて原稿の画像を読み取る画像読取部と、記憶部と、を備えた印刷装置を制御する制御方法であって、前記記憶部には、前記通信部により受信される第1データを記憶する受信バッファ領域、RIP処理工程において用いられるワーク領域、及び、前記RIP処理工程により生成されるラスターデータを記憶するページメモリ領域が設けられ、前記受信バッファ領域に記憶されている前記第1データを解析し、前記ワーク領域を用いてラスターデータを生成するRIP処理工程と、前記RIP処理工程により生成された前記ラスターデータに基づく画像を、前記印刷部を用いて印刷する第1印刷処理工程と、前記画像読取部によって読み取られた原稿の画像である第2データを、前記印刷部を用いて印刷する第2印刷処理工程と、前記第1印刷処理工程の実行中に、前記第2印刷処理工程を実行する割込印刷の指示を前記操作パネルにより受け付ける割込受付処理工程と、前記割込受付処理工程により前記割込印刷の指示が受け付けられると、前記ページメモリ領域を前記ワーク領域に拡張し、前記第1印刷処理工程を停止させるとともに、前記RIP処理工程を継続し、継続される前記RIP処理工程により生成される前記ラスターデータを、拡張された前記ページメモリ領域に記憶していく、RIP継続処理工程と、を実行する。
【0021】
上述した構成によれば、第2印刷処理の割込を受け付けた場合、実行中であった(割り込まれた側の)第1印刷処理は停止するが、RIP処理は継続して実行される。このとき、RIP処理のワーク領域の一部が、ラスターデータを記憶するページメモリ領域として用いられる。そのため、ラスターデータを記憶するページメモリ領域が大きくなり、第1印刷処理を停止している状態であってもRIP処理を続行することができる。したがって、先に印刷処理が実行されている際に割込印刷処理が実行された場合でも、実行されていた印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されなかった場合と比較して遅くなってしまうことを低減させることができる。
【0022】
本発明の一態様に係る制御プログラムは、上述の印刷装置における制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであることを特徴とする。
【0023】
上述した構成によれば、第2印刷処理の割込を受け付けた場合、実行中であった(割り込まれた側の)第1印刷処理は停止するが、RIP処理は継続して実行される。このとき、RIP処理のワーク領域の一部が、ラスターデータを記憶するページメモリ領域として用いられる。そのため、ラスターデータを記憶するページメモリ領域が大きくなり、第1印刷処理を停止している状態であってもRIP処理を続行することができる。したがって、先に印刷処理が実行されている際に割込印刷処理が実行された場合でも、実行されていた印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されなかった場合と比較して遅くなってしまうことを低減させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、先に印刷処理が実行されている際に割込印刷処理が実行された場合でも、実行されていた印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されなかった場合と比較して遅くなってしまうことを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態1に係る印刷システムの構成を概略的に示す図である。
図2】印刷装置の構成を示すブロック図である。
図3】印刷装置の機能構成を例示するブロック図である。
図4】RIP処理の詳細を説明する模式図である。
図5】ページメモリ領域を拡張する拡張処理を説明するための図である。
図6】印刷装置が行うPCプリント処理の流れを例示するフローチャートである。
図7】印刷装置が行うPCプリント処理の流れを例示するフローチャートである。
図8】印刷装置が行う割込みコピーからの復帰処理の流れを例示するフローチャートである。
図9】印刷装置が行うPCプリント処理の流れを例示するフローチャートである。
図10】印刷装置が行うRIP処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態1〕
<システム構成>
図1は、本発明の実施形態1に係る印刷システム100の構成を概略的に示す図である。印刷システム100は、印刷装置1及びPC(Personal Computer)9を備える。印刷装置1は、PCプリント処理及びコピー処理等の印刷処理を実行する。PCプリント処理は、PC9から受信されるデータを用いて記録媒体に画像を印刷する処理である。コピー処理は、印刷装置1が読み取った原稿の画像を記録媒体に印刷する処理である。記録媒体は画像が印刷される媒体であり、例えば用紙である。PC9は、印刷装置1にデータを送信する装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はタブレット端末である。ユーザU1は印刷装置1に対し、コピー処理の指示等の各種の操作を行う。
【0027】
<印刷装置1の構成>
図2は、印刷装置1の構成を示すブロック図である。印刷装置1は、図2に示すように、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、印刷部14と、読取部15と、通信インタフェース16と、操作パネル17とを含む。
【0028】
(ASIC11)
ASIC11は、制御部111を含む。ASIC11は、ROM12、RAM13、印刷部14、読取部15、通信インタフェース16、及び操作パネル17と、それぞれ通信可能に接続される。なお、ASIC11は、ROM12及びRAM13の一方又は両方を含んでいてもよい。ASIC11は、制御部111の制御の基に、接続される各部との間で信号を送受信する。制御部111は例えばCPU(Central Processing Unit)であり、ROM12に記憶された制御プログラムを読み込んでRAM13に展開し、展開されたプログラムにしたがって各種の処理を実行する。
【0029】
(ROM12)
ROM12は、例えば、フラッシュメモリ等といった書き換え可能な不揮発性メモリによって構成される。ROM12は、制御部111を、本発明における制御部又はコンピュータとして機能させるための制御プログラムを記憶している。ROM12に記憶される制御プログラムは、本発明における制御プログラムの一例である。
【0030】
(RAM13)
RAM13は、本発明における記憶部の一例である。RAM13は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等といった揮発性メモリによって構成される。RAM13は、制御部111が制御プログラムを実行する際の作業領域として用いられる。制御部111がPCプリント処理及びコピー処理を実行する際、RAM13には、受信バッファ領域131、ワーク領域132、ページメモリ領域133、及び登録バッファ領域134が確保される。すなわち、RAM13は、受信バッファ領域131、ワーク領域132、ページメモリ領域133、及び登録バッファ領域134を含む。
【0031】
受信バッファ領域131は、PC9から受信される第1データを記憶する。第1データは、PC9によって生成されたデータである。本実施形態では、第1データは、PCL(登録商標)、Postscript(登録商標)、LIPS(登録商標)、PDF(Portable Document Format)等のページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたデータである。第1データが受信される毎に、受信された第1データが受信バッファ領域131に記憶される。
【0032】
ワーク領域132は、後述するRIP処理においてワーク領域として用いられる領域である。ページメモリ領域133は、RIP処理により生成されるラスターデータを記憶する領域である。登録バッファ領域134には、印刷部14が記録媒体に画像を印刷する際に用いる画像データ(以下「印刷データ」という)が記憶される。登録バッファ領域134に記憶される印刷データは、例えば、ページメモリ領域133に記憶されたラスターデータに対し色変換処理が行われたラスターデータである。また、印刷データは例えば、第2データから得られる、読取部15により読み取られた原稿の画像を表す画像データである。
【0033】
(印刷部14)
印刷部14は、本発明における印刷部の一例である。印刷部14は、RAM13の登録バッファ領域134に記憶された印刷データの表す画像を記録媒体に印刷する印刷機構である。印刷部14は、搬送経路を搬送される記録媒体の印刷面に画像を印刷する。印刷の方式は、電子写真方式であってもよいし、インクジェット方式であってもよいし、サーマル方式であってもよい。印刷部14は、両面印刷可能であってもよいし、片面印刷専用であってもよい。
【0034】
(読取部15)
読取部15は、本発明における画像読取部の一例である。読取部15は、操作パネル17による入力に応じて原稿の画像を読み取り、読み取った画像を表す第2データを生成する。第2データは、例えば、ビットマップデータである。読取部15は、載置台に載置された原稿からの反射光を、イメージセンサを用いて検出することにより、原稿に記録された情報を示す第2データを生成する。読取部15は、第2データを読取バッファ(図示せず)に記憶する。
【0035】
(通信インタフェース16)
通信インタフェース16は、本発明における通信部の一例である。通信インタフェース16は、PC9から第1データを受信する。PC9は、本発明における外部端末の一例である。通信インタフェース16は、受信した第1データを受信バッファ領域131に記憶する。例えば、通信インタフェース16は、有線又は無線LAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)インタフェース、RS-232Cなどのシリアル通信インタフェース、赤外線、Bluetooth(登録商標)等の近距離通信インタフェース、又はこれらの組み合わせにより構成される。
【0036】
(操作パネル17)
操作パネル17は、本発明における操作パネルの一例である。操作パネル17は、ユーザの操作を受け付ける。例えば、操作パネル17は、タッチパッド及びディスプレイが一体として形成されたタッチパネルを含む。例えば、操作パネル17は、操作領域を含むユーザインタフェース画面をタッチパネルに表示するとともに、操作領域に対するユーザの接触操作を検出する。
【0037】
<印刷装置1の機能構成>
図3は、印刷装置1の機能構成を例示するブロック図である。図3において、RIP処理部101、第1印刷処理部102、第2印刷処理部103、割込受付部104、及びRIP継続処理部105は、制御部111がROM12に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより印刷装置1に実装される。RIP処理部101、第1印刷処理部102、第2印刷処理部103、割込受付部104、及びRIP継続処理部105は、マルチタスクOS(オペレーションシステム)により別タスクとして実装される。これら複数のタスクは、OSの制御の下、並行して処理を実行可能である。
【0038】
RIP処理部101は、受信バッファ領域131に記憶されている第1データを解析し、ワーク領域132を作業領域として用いながらラスターデータを生成するRIP処理を実行する。この実施形態では、RIP処理部101は、第1データを第1データに含まれるオブジェクト毎に展開してオブジェクト毎の中間データを生成し、生成した中間データからページ毎のラスターデータを生成する。RIP処理においては、ワーク領域132が作業領域として用いられ、中間データはワーク領域132に記憶される。
【0039】
図4は、RIP処理の内容を説明する模式図である。図4に示すように、第1データP1は、テキスト、形状、ビットマップなどをそれぞれ示すオブジェクトOBJ1~OBJ3の記述を含む。RIP処理部101は、各オブジェクトの記述をそれぞれ解析することにより、オブジェクト毎に中間データを生成し、生成した中間データをワーク領域132に記憶する。図4の例では、中間データD1は、オブジェクトOBJ1の記述を解析することにより生成されたものである。中間データD2は、オブジェクトOBJ2の記述を解析することにより生成されたものである。中間データD3は、オブジェクトOBJ3の記述を解析することにより生成されたものである。RIP処理部101は、第1データの解析がRIP処理の処理単位(以下「ページ単位」という)で終了すると、中間データD1~D3を参照してラスターデータLASを生成する。
【0040】
また、RIP処理部101は、ページ単位での第1データのラスターデータへの展開が完了すると、受信バッファ領域131から当該第1データを削除する。また、RIP処理部101は、ページ単位で第1データのラスターデータへの展開が完了すると、当該第1データを展開する過程でワーク領域132に記憶した中間データを、ワーク領域132から削除する。
【0041】
図3の説明に戻る。第1印刷処理部102は、RIP処理により生成されたラスターデータの表す画像を、印刷部14を用いて印刷する第1印刷処理を実行する。この実施形態では、第1印刷処理部102は、ページメモリ領域133に記憶されたラスターデータ(すなわちRIP処理により生成されたラスターデータ)に対し色変換処理を実行し、色変換処理が行われたラスターデータを登録バッファ領域134に記憶する。登録バッファ領域134に記憶されたラスターデータは、印刷部14が記録媒体に画像を印刷する際に用いられる。以下の説明では、説明の便宜上、ページメモリ領域133に記憶された、色変換処理が行われる前のラスターデータを「色変換前ラスターデータ」と称する。なお、第1印刷処理部102は、色変換処理を実行することなく、ページメモリ領域133に記憶されたラスターデータをそのまま登録バッファ領域134に記憶してもよい。
【0042】
第2印刷処理部103は、読取部15によって読み取られた原稿の画像である第2データを、印刷部14を用いて印刷する第2印刷処理を実行する。本実施形態において、第2印刷処理はコピー処理である。割込受付部104は、第1印刷処理の実行中に、第2印刷処理を実行する割込印刷の指示を、操作パネル17により受け付ける割込受付処理を実行する。例えば、操作パネル17に表示されたユーザインタフェース画面に、コピーを指示するコピーボタン領域が含まれているとする。この場合、第1印刷処理を実行中にコピーボタン領域に対するユーザの接触操作が検出されると、制御部111は、第2印刷処理の指示が受け付けられたと判断する。
【0043】
RIP継続処理部105は、割込受付処理により割込印刷の指示が受け付けられると、第1印刷処理を停止させるとともに、RIP処理を継続する、RIP継続処理を実行する。RIP継続処理において、RIP継続処理部105は、ページメモリ領域133をワーク領域132に拡張し、継続されるRIP処理により生成される色変換前ラスターデータを、拡張されたページメモリ領域133に記憶していく。
【0044】
図5は、ページメモリ領域133を拡張する処理(以下「拡張処理」という)を説明するための図である。図において、記憶部130Aは、拡張処理が行われる前における各領域(受信バッファ領域131、ワーク領域132、ページメモリ領域133、及び登録バッファ領域134)を例示したものである。記憶部130Bは、拡張処理が行われた後の各領域(受信バッファ領域131、ワーク領域132、ページメモリ領域133、及び登録バッファ領域134)を例示したものである。記憶部130A及び記憶部130BはRAM13の一部である。
【0045】
RIP継続処理部105は、ワーク領域132の一部の領域132aをページメモリ領域133に加えることにより、ページメモリ領域133を拡張する。図5の例では、記憶部130Aにおいて1ページ分のページメモリ領域133が確保されている。それに対し記憶部130Bでは、3ページ分のページメモリ領域133が確保されている。すなわち、ワーク領域132のうち、2ページ分の色変換前ラスターデータが記憶可能な領域132aが拡張領域としてページメモリ領域133に加えられている。
【0046】
<動作>
(動作例1)
図6は、制御部111が実行するPCプリント処理の流れを例示するフローチャートである。図6に示すフローチャートは、制御部111が、受信バッファ領域131に記憶された第1データをラスターデータに変換して登録バッファ領域134に登録するまでの処理の流れを示す。なお、図6に示すフローチャートは、割込印刷を考慮しない場合の制御部111の動作の流れを例示したものである。図6に示す処理は、受信バッファ領域131に記憶された第1データ毎に実行される。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行してもよい。
【0047】
ステップS101において、制御部111は、RAM13においてページメモリ領域133を取得する。ステップS101において取得されるページメモリ領域133は、1ページ分の色変換前ラスターデータを記憶可能なサイズの記憶領域である。この例で、第1データのページとは、第1データにより画像が印刷される記録媒体の印刷面をいう。
【0048】
ステップS102において、制御部111は、処理対象である第1データのRIP処理を開始する。RIP処理においては、上述したように、ワーク領域132が作業領域として用いられて第1データがページ単位で解析される。RIP処理において生成される中間データはワーク領域132に記憶される。
【0049】
ステップS103において、制御部111は、1ページ分のRIP処理が完了したかを判定する。1ページ分のRIP処理が完了した場合(ステップS103;YES)、制御部111はステップS104の処理に進む。一方、1ページ分のRIP処理が完了していない場合(ステップS103;NO)、制御部111は、1ページ分のRIP処理が完了するまで待機する。
【0050】
ステップS104において、制御部111は、1ページ分の色変換前ラスターデータをページメモリ領域133に登録する。このとき、その色変換前ラスターデータの生成のために用いられた中間データは、ワーク領域132から削除される。
【0051】
ステップS105において、制御部111は、色変換前ラスターデータに対し色変換処理を実行し、色変換処理が行われたラスターデータを登録バッファ領域134に登録する。登録バッファ領域134にラスターデータが登録されると、ページメモリ領域133から色変換前ラスターデータは削除される。また、ステップS105において、制御部111は、登録バッファ領域134に登録されたラスターデータを用いた印刷を印刷部14に行わせる。印刷部14は、登録バッファ領域134に登録されたラスターデータを用いて記録媒体に画像を印刷する。印刷部14による印刷が完了すると、印刷が完了した画像のラスターデータは登録バッファ領域134から削除される。
【0052】
ステップS106において、制御部111は、処理対象である第1データに次のページのデータが含まれるか(次ページのデータが有るか)を判定する。次のページのデータが有る場合(ステップS106;YES)、制御部111は、ステップS103の処理に戻り、次のページの第1データについてのRIP処理の完了を待機する。一方、次のページのデータがない場合(ステップS106;NO)、制御部111は処理を終了する。
【0053】
すなわち、この動作例では、制御部111は、PC9から受信された第1データに対しページ単位でRIP処理を実行し、RIP処理により生成された色変換前ラスターデータをページメモリ領域133に記憶する。色変換前ラスターデータがページメモリ領域133に記憶されると、その色変換前ラスターデータに対応する第1データは受信バッファ領域131から削除される。
【0054】
また、制御部111は、ページメモリ領域133に記憶した色変換前ラスターデータに対し色変換処理を行い、色変換処理を行ったラスターデータを登録バッファ領域134に記憶する。登録バッファ領域134にラスターデータが記憶されると、そのラスターデータに対応する色変換前ラスターデータはページメモリ領域133から削除される。ページメモリ領域133から色変換前ラスターデータが削除されると、制御部111は、次のページについてのRIP処理を開始する。そのため、ページメモリ領域133は、1ページ分のラスターデータを記憶可能な記憶領域を有していればよい。
【0055】
また、印刷部14は、登録バッファ領域134に記憶されたラスターデータを用いて記録媒体に画像を印刷する。印刷部14による記録媒体への画像の印刷が完了すると、その画像のラスターデータは登録バッファ領域134から削除される。このように、この動作例では、色変換処理が完了する毎に、ラスターデータが登録バッファ領域134に記憶されるとともに、ページメモリ領域133から色変換前ラスターデータが削除される。
【0056】
(動作例2)
図7は、制御部111が実行するPCプリント処理及び割込印刷処理(制御方法)の流れを例示するフローチャートである。図7に示すフローチャートは、制御部111が、受信バッファ領域131に記憶された第1データをラスターデータに変換して登録バッファ領域134に登録するまでの処理の流れを示す。また、図7に示すフローチャートは、PCプリント処理の実行中に発生し得るコピー処理等の割込処理の指示を考慮した動作を例示したものである。図7に示す処理は、受信バッファ領域131に記憶された第1データ毎に実行される。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行してもよい。
【0057】
ステップS201において、制御部111は、まず、変数Nの値を1とし、1番目のページメモリ領域133をRAM13において取得する。ステップS201において取得されるページメモリ領域133は、1ページ分のラスターデータを記憶可能なサイズの記憶領域である。
【0058】
ステップS202において、制御部111は、処理対象である第1データのRIP処理を開始する。本ステップS202における処理はRIP処理工程の一例である。RIP処理においては、上述したように、ワーク領域132が作業領域として用いられて第1データがページ単位で解析される。RIP処理において生成される中間データはワーク領域132に記憶される。
【0059】
ステップS203において、制御部111は、1ページ分のRIP処理が完了したかを判定する。1ページ分のRIP処理が完了した場合(ステップS203;YES)、制御部111はステップS204の処理に進む。一方、1ページ分のRIP処理が完了していない場合(ステップS203;NO)、制御部111はステップS203の処理に戻り、1ページ分のRIP処理が完了するまで待機する。
【0060】
ステップS204において、制御部111は、RIPにより生成された色変換前ラスターデータをページメモリ領域133に登録する。このとき、その色変換前ラスターデータの生成のために用いられた中間データは、ワーク領域132から削除される。
【0061】
ステップS205において、制御部111は、割込みコピー命令(割込印刷の指示)を受けたかを判定する。割込みコピー命令を受けた場合(ステップS205;YES)、制御部111は、ステップS206の処理に進む。一方、割込みコピー命令を受けていない場合(ステップS205;NO)、制御部111は、ステップS207の処理に進む。
【0062】
この実施形態において、制御部111は、PCコピー処理の実行中に割込印刷の指示を操作パネル17により受け付ける割込受付処理を実行する。本処理は割込受付処理工程の一例である。割込印刷の指示は例えば、印刷装置1がPCプリント処理を実行中に、ユーザが、操作パネル17で割込みコピーキーを押下することにより行われる。この場合、制御部111は、実行中のPCプリント処理を中断可能かを判定し、中断可能である場合に、操作パネル17に「OK」キーを表示させる。ユーザが「OK」キーを押下することにより、印刷装置1は割込み指示を受け付ける。
【0063】
ステップS205において、割込みコピー命令を受けていない場合(ステップS205;NO)、ステップS207において、制御部111は、色変換前ラスターデータに対し色変換処理を実行し、処理が行われたラスターデータを登録バッファ領域134に登録する。登録バッファ領域134にラスターデータが登録されると、ページメモリ領域133から色変換前ラスターデータは削除される。ラスターデータが登録バッファ領域134に登録されることにより、ラスターデータを用いた印刷が印刷部14により行われる。すなわち、制御部111は、RIP処理により生成されたラスターデータの表す画像を、印刷部14を用いて印刷する第1印刷処理を実行する。本処理は第1印刷処理工程の一例である。印刷部14による印刷が完了すると、印刷が完了した画像のラスターデータは登録バッファ領域134から削除される。
【0064】
ステップS208において、制御部111は、処理対象である第1データに次のページのデータが有るかを判定する。次のページのデータが有る場合(ステップS208;YES)、制御部111はステップS203の処理に進み、次のページのデータに対するRIP処理の完了を待機する。一方、次のページのデータがない場合(ステップS208;NO)、制御部111は処理を終了する。
【0065】
ステップS206において、制御部111は、指示された割込印刷の実行を開始する。すなわち、制御部111は、読取部15によって読み取られた原稿の画像を表す第2データを用いて、原稿の表す画像を印刷部14を用いて印刷する第2印刷処理を実行する。本処理は第2印刷処理工程の一例である。印刷部14による印刷は、指示された割込印刷が完了するまで継続される。
【0066】
ステップS209において、制御部111は、処理対象である第1データに次のページのデータが有るかを判定する。次のページのデータがある場合(ステップS209;YES)、制御部111はステップS210の処理に進む。一方、次のページのデータがない場合(ステップS209;NO)、制御部111は、ステップS210~S214の処理をスキップし、ステップS215の処理に進む。
【0067】
ステップS210において、制御部111は、ワーク領域132において、次のページのページメモリを取得可能であるかを判定する。この判定は例えば、ワーク領域132の空き領域が閾値以上であるかを判定することによって行われる。この場合、空き領域が閾値以上である場合、次のページ分のページメモリを取得可能(拡張可能)であると判定される。一方、空き領域が閾値未満である場合、次のページ分のページメモリが取得できないと判定される。取得可能である場合(ステップS210;YES)、制御部111はステップS211の処理に進む。一方、取得できない場合(ステップS210;NO)、制御部111は、ステップS211~S214の処理をスキップし、ステップS215の処理に進む。
【0068】
ステップS211において、制御部111は、変数Nの値をインクリメントし、N番目のページのラスターデータを格納するためのページメモリ領域(以下「ページメモリ領域133N」とする)をワーク領域132から取得する。すなわち、制御部111は、PCプリント処理の実行中に、コピー処理の実行の指示を受け付けた場合、ワーク領域132の一部を拡張領域としてページメモリ領域133に加えることにより、ページメモリ領域133を拡張する拡張処理を実行する。また、この拡張処理において、制御部111は、ページ単位でのRIP処理を開始する毎に、1ページ分のラスターデータを記憶可能な記憶領域を拡張領域としてページメモリ領域133に加える。
【0069】
ステップS212において、制御部111は、RIP処理を続行する。本ステップS212における処理は、RIP継続処理工程の一例である。ステップS213において、制御部111は、1ページ分のRIP処理が完了したかを判定する。完了した場合(ステップS213;YES)、制御部111は、ステップS214の処理に進む。一方、まだ完了していない場合(ステップS213;NO)、制御部111は、ステップS213の処理に戻り、1ページ分のRIP処理が完了するまで待機する。
【0070】
ステップS214において、制御部111は、RIP処理により生成されたラスターデータをN番目のページメモリ領域133Nに登録する。以下の説明では、ページメモリ領域133に登録される、色変換処理が行われる前のラスターデータを「色変換前ラスターデータ」と称する。
【0071】
ステップS215において、制御部111は、割込みコピーの終了命令を受けたかを判定する。この終了命令は、割込みで実行されていたコピー処理が完了した場合に、コピー処理を実行していたタスクにより発行される。終了命令を受けた場合(ステップS215;YES)、制御部111は、ステップS216の処理に進む。一方、終了命令を受けていない場合(ステップS215;NO)、制御部111は、ステップS209の処理に戻り、次のページについてのRIP処理を継続する。
【0072】
図5の例では、ページメモリ領域133の拡張処理が行われる前のタイミングにおいては、記憶部130Aに示されるように、登録バッファ領域134には、PCプリント処理の1~4ページのラスターデータR1~R4が記憶されている。その後、割込印刷の指示を受け付けると、制御部111は、ワーク領域132の一部の領域132aを拡張領域としてページメモリ領域133を拡張し、この拡張領域に、割込印刷の指示を受け付けてから生成した色変換前ラスターデータを格納する。図5の例では、拡張領域である領域132aには、PCプリント処理の5~6ページの色変換前ラスターデータR5~R6が記憶さる。
【0073】
また、割込印刷の指示が受け付けられた場合、PCプリント処理に係る印刷処理は中断されるため、登録バッファ領域134に記憶されていたPCプリント処理の1~4ページのラスターデータR1~R4は、登録バッファ領域134から読み出されることなく、登録されたままとなる。一方、このとき、割込印刷は実行されるため、コピー処理の処理対象である、原稿の読取画像を表す画像データR11~R12が、登録バッファ領域134に登録される。登録バッファ領域134に登録された画像データR11~R12を用いて、印刷部14による印刷が行われる。
【0074】
以上説明したように、この動作例では、制御部111は、PCプリント処理のRIP処理と、指示された割込印刷処理とを別タスクにより並行して実行する。このとき、割込印刷の指示を受け付けた後は(ステップS205;YES)、制御部111は、PCプリント処理に係るRIP処理を継続する(ステップS209~S215)一方、RIP処理により生成されたラスターデータに対する色変換処理及び登録バッファ領域134への登録処理を中断する。すなわち、受け付けられた割込印刷が完了するまで、(割り込まれた側の)PCプリント処理についての印刷部14による印刷はサスペンドされる。すなわち、印刷装置1が割込印刷の指示を受け付けた場合、印刷部14のハードウェアリソースは割込印刷により占用される。
【0075】
ステップS216において、制御部111は、割込印刷からの復帰処理を実行する。この復帰処理により、PCプリント処理の処理対象であるラスターデータの色変換処理、及び、登録バッファ領域134へのラスターデータの登録処理が再開される。ステップS216の処理を終えると、制御部111は、ステップS208の処理に戻り、処理対象である第1データに次のページのデータが含まれるかを判定する。
【0076】
図8は、印刷装置1が行う、割込印刷からの復帰処理の流れを例示するフローチャートである。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行してもよい。
【0077】
ステップS301において、制御部111は、変数Xの値をゼロとする。ステップS302において、制御部111は、変数Xをインクリメントする。ステップS303において、制御部111は、変数Xの値が変数N以下であるかを判定する。変数Xの値が変数N以下である場合(ステップS303;YES)、制御部111は、ステップS304の処理に進む。一方、変数Xの値が変数Nより大きい場合(ステップS303;NO)、制御部111はステップS308の処理に進む。
【0078】
ステップS304において、制御部111は、X番目に拡張領域としてページメモリ領域133に追加された領域(以下「ページメモリ領域133X」という)に記憶されている色変換前ラスターデータに対し色変換処理を行い、処理を行ったラスターデータを登録バッファ領域134に登録する。登録バッファ領域134へのラスターデータの登録が再開されることにより、印刷部14によるPCプリント処理に係る印刷が再開される。印刷部14は、登録バッファ領域134に登録されたラスターデータを用いて記録媒体に画像を印刷する。印刷部14による印刷が完了すると、印刷が完了した画像のラスターデータは登録バッファ領域134から削除される。
【0079】
ステップS306において、制御部111は、変数Xが1より大きいかを判定する。変数Xが1より大きい場合(すなわち2以上である場合)(ステップS306;YES)、制御部111はステップS307の処理に進む。一方、変数Xが1以下である場合(ステップS306;NO)、制御部111はステップS302の処理に戻る。
【0080】
ステップS307において、制御部111は、X番目のページメモリ領域であるページメモリ領域133Xを解放する。すなわち、制御部111は、割込印刷が完了した後(図6のステップS215;YES)、PCプリント処理に係る印刷部14による印刷を再開するとともに、ページメモリ領域133として拡張した拡張領域を、1ページ分ずつ解放する処理を実行する(図8のステップS304~S307)。ステップS307の処理を終えると、制御部111は、ステップS302の処理に戻る。
【0081】
ステップS308において、制御部111は、変数Nの値を初期値(1)に戻す。ステップS308の処理を終えると、制御部111は割込印刷からの復帰処理を終了する。
【0082】
本実施形態では、割込印刷の指示を受け付けた場合、実行中であった(割り込まれた側の)第1印刷処理は停止するが、RIP処理は継続して実行される。このとき、RIP処理で用いられるワーク領域132が減らされ、RIP処理後のラスターデータ(色変換前ラスターデータ)は、ワーク領域132の一部であった領域に記憶される。このように、ワーク領域132の一部がページメモリ領域133として用いられることで、印刷装置1は、RIP処理を中断することなく、継続することができる。そのため、先にPCプリント処理が実行されている際に割込印刷処理が実行された場合でも、実行されていた印刷処理の完了が割込印刷処理が実行されなかった場合と比較して遅くなってしまうことを低減させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、ページ単位でのRIP処理が開始される毎に、1ページ分のラスターデータを記憶可能な領域の分、ページメモリ領域133が拡張される。これにより、ワーク領域132が不要に小さくなってしまうことが防止される。
【0084】
また、本実施形態では、割込印刷が完了した後、制御部111が拡張領域を解放する。これにより、割込印刷終了後、ワーク領域132全体を本来の用途に用いることができる。
【0085】
また、本実施形態では、制御部111は、ページメモリ領域133の拡張処理において、ワーク領域132の空き領域が閾値以上である場合、空き領域の一部を拡張領域としてページメモリ領域133を拡張する。これにより、RIP処理において用いられるワーク領域132が不足してしまうことが防止される。
【0086】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0087】
本実施形態が上述した実施形態1と異なる点は、印刷装置1の制御部111が行うRIP継続処理の内容である。本実施形態では、制御部111は、RIP継続処理において、RIP処理のタスク優先順位を第2印刷処理のタスク優先順位よりも下げる処理を実行する。
【0088】
図9は、印刷装置1が行う処理の流れを例示するフローチャートである。図9に示す処理は、上述の実施形態1における図7の処理に対応するものである。図9に示す処理が、図7に示す処理と異なる点は、制御部111が、ステップS206の後にステップ251の処理を実行する点、及び、ステップS215の後にステップS252の処理を実行する点である。
【0089】
ステップ251において、制御部111は、RIP処理を実行するタスクの優先順位を、第2印刷処理を実行するタスクの優先順位よりも下げる処理を行う。このとき、RIP処理部101の優先順位が第2印刷処理部103の優先順位よりも既に低かった場合は、制御部111は、RIP処理部101の優先順位を更に下げる制御を行ってもよい。このように、この実施形態では、割込印刷が指示された場合、割込印刷処理がRIP処理よりも優先的に実行される。
【0090】
ステップS252において、制御部111は、RIP処理のタスク優先順位を元に戻す処理を実行する。すなわち、制御部111は、割込印刷処理が完了した後、RIP処理のタスク優先順位を元に戻す。ステップS252の処理を終えると、制御部111は、ステップS216の処理に進む。
【0091】
この実施形態では、印刷装置1が割込印刷の指示を受け付けた場合、割込印刷処理はRIP処理よりも優先して実行される。これにより、PCプリント処理の完了が割込印刷処理が実行されない場合と比較して遅くなってしまうことを防ぎつつ、割込印刷処理の完了がRIP処理が継続して実行されない場合と比較して遅くなってしまうことを低減することができる。
【0092】
また、本実施形態では、割込印刷処理が完了した後、元の優先順位でRIP処理が実行される。これにより、PCプリント処理の完了が、タスクの優先順位が元に戻されない場合と比較して遅くなってしまうことを低減することができる。
【0093】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0094】
本実施形態が上述の実施形態1と異なる点は、印刷装置1の制御部111が行う割込印刷処理の内容が異なる点である。本実施形態では、制御部111は、第2印刷処理を開始してから完了するまでの一部の期間において、RIP処理のタスクをスリープさせるスリープ制御処理を実行する。
【0095】
図10は、印刷装置1が行うスリープ制御処理の流れを例示するフローチャートである。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行してもよい。図10に示す処理は例えば、RIP処理の実行中において、割込印刷の指示を受け付けたことをトリガとして開始される。また、図10に示す処理は例えば、割込印刷処理が完了した場合に終了される。
【0096】
ステップS401において、制御部111は、1つの中間データの作成が完了したかを判定する。1つの中間データの作成を完了した場合(ステップS401;YES)、制御部111はステップS402の処理に進む。一方、1つの中間データの作成が完了していない場合(ステップS401;NO)、制御部111は、中間データの作成が完了するまで待機する。すなわち、ステップS402の処理は、中間データの作成が完了する毎に実行される。
【0097】
ステップS402において、制御部111は、RIP処理を実行するタスク(RIP処理部101)をスリープさせる処理を行う。ステップS403において、制御部111は、1ページ分のRIP処理が完了したかを判定する。1ページ分のRIP処理が完了した場合(ステップS403;YES)、制御部111は処理を終了する。一方、1ページ分のRIP処理が完了していない場合(ステップS403;NO)、制御部111はステップS401の処理に戻り、次の中間データが完成するまで待機する。
【0098】
本実施形態では、印刷装置1が割込印刷の指示を受け付けた場合、割込印刷処理が完了するまで、RIP処理においてタスクスリープ処理が行われる。これにより、PCプリント処理の完了が割込印刷が発生しない場合と比較して遅くなってしまうことを防ぎつつ、割込印刷処理の完了がRIP処理が継続して実行されない場合と比較して遅くなってしまうことを低減することができる。
【0099】
(変形例)
上述の各実施形態では、印刷装置1がPCプリント処理を実行中に、割込印刷としてコピー処理が指示される場合の動作を説明した。印刷装置1が実行する処理は上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、印刷装置1が実行する処理(第1印刷処理に係る処理)は、ストレージサーバに保存されたデータをユーザが印刷装置1の操作パネル17を操作することにより指定し、指定したデータの表す画像を印刷する処理、いわゆるプルプリント処理であってもよい。
【0100】
上述の実施形態1では、ワーク領域132の空き領域が閾値以上である場合、制御部111が、ワーク領域132の一部を拡張領域としてページメモリ領域133を拡張する処理を実行した。ページメモリ領域133を拡張するかどうかの判定方法は、上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、制御部111は、ワーク領域132の空き領域の全体に対する割合が閾値以上である場合に、ページメモリ領域133を拡張すると判定してもよい。
【0101】
上述の実施形態1では、登録バッファ領域134にラスターデータをページ単位で登録する毎に、そのラスターデータに対応するページメモリ領域133の拡張領域を解放する処理をページ単位で実行した(図8のステップS304~S307)。拡張領域を解放するタイミングは上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、ページメモリ領域133に記憶された全ての色変換前ラスターデータに対する色変換処理が完了した後に、拡張領域が解放されてもよい。
【0102】
〔ソフトウェアによる実現例〕
印刷装置1の制御ブロック(特にRIP処理部101、第1印刷処理部102、第2印刷処理部103、割込受付部104、及びRIP継続処理部105)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0103】
後者の場合、印刷装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0104】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 印刷装置
9 PC
11 ASIC
111 制御部
12 ROM
13 RAM
14 印刷部
15 読取部
16 通信インタフェース
17 操作パネル
100 印刷システム
101 RIP処理部
102 第1印刷処理部
103 第2印刷処理部
104 割込受付部
105 RIP継続処理部
131 受信バッファ領域
132 ワーク領域
133 ページメモリ領域
134 登録バッファ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10