(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】車両用ガーニッシュ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20231114BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20231114BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20231114BHJP
【FI】
G01S7/03 246
B60R13/04 Z
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2020091130
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2022-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(72)【発明者】
【氏名】飯村 公浩
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 幸蔵
(72)【発明者】
【氏名】西岡 圭祐
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036953(JP,A)
【文献】特開2015-104707(JP,A)
【文献】特開2017-020048(JP,A)
【文献】特開2014-091819(JP,A)
【文献】特開2020-067291(JP,A)
【文献】特開2007-013722(JP,A)
【文献】特開2011-112596(JP,A)
【文献】“自動車用実部品のグラベロ(チッピング)試験”,JFEテクノリサーチ株式会社,2018年,1 Page,<URL: https://www.jfe-tec.co.jp/download/pdf/3E1J-008-00.pdf >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外の物体を検出するための電磁波の送受信を行う車載センサにおける電磁波の送信方向の前方に設けられるものであって、電磁波を透過させることが可能とされており、且つ、車外から見える加飾層を備えている車両用ガーニッシュにおいて、
前記加飾層は、金属粒子を顔料として含む樹脂によって形成されている模様領域、及び、その模様領域の背景となる色の顔料を含む樹脂によって形成されている背景領域を有しており、
車両に取り付けられる樹脂製の基材を備えており、
前記加飾層は、前記基材における前記車載センサの電磁波の送信方向の前方側に形成されており、
前記加飾層における前記電磁波の送信方向の前方側には、樹脂製の透明層が形成されており、
前記加飾層の模様領域は前記透明層における前記電磁波の送信方向の前方側に向けてへこむ凹部に対応して位置している一方、同加飾層の背景領域は前記透明層における前記凹部以外の部分に対応して位置しており、
前記加飾層の模様領域において前記基材と対向する面と前記加飾層の背景領域において前記基材と対向する面とは段差のない面一に形成されている車両用ガーニッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ガーニッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、車外の物体を検出するための電磁波の送受信を行う車載センサが設けられる一方、そうした車載センサを車外から見えにくくするため、同センサにおける電磁波の送信方向の前方に、電磁波を透過させることが可能なエンブレム等の車両用ガーニッシュが設けられている。
【0003】
特許文献1に示されるように、車両用ガーニッシュには、車両に取り付けられる基材、意匠性を有する部分である加飾層、及び、その加飾層を覆いつつ車外から見えるようにする透明層が、車載センサからの電磁波の送信方向の後方側から前方側に向けて順に設けられている。
【0004】
車両用ガーニッシュの加飾層は、車外からの見栄えの点で重要な部分であり、高級感や質感を高めるために金属のような光輝性を有するものとすることが望まれている。このため、上記加飾層については、インジウム(In)等の金属材料を用いたスパッタリング等の方法によって、島構造を有する金属皮膜となるよう形成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年は車両用ガーニッシュに多様な意匠性が求められる傾向があり、そうした実情から電磁波の透過性を持たせつつ加飾層の質感等を従来とは異なるものにすることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、質感等が従来とは異なる加飾層を実現することができる車両用ガーニッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用ガーニッシュは、車外の物体を検出するための電磁波の送受信を行う車載センサにおける電磁波の送信方向の前方に設けられるものであって、電磁波を透過させることが可能とされており、且つ、車外から見える加飾層を備えている。そして、上記加飾層は、金属粒子を顔料として含む樹脂によって形成されている模様領域、及び、その模様領域の背景となる色の顔料を含む樹脂によって形成されている背景領域を有している。
【0009】
上記構成によれば、形成の仕方が従来とは異なる加飾層を備えているため、車両用ガーニッシュにおける加飾層の質感等が従来とは異なるものとなる。すなわち、上記加飾層においては、模様領域が金属粒子を顔料として含む樹脂によって形成されている一方、背景領域が背景となる色の顔料を含む樹脂によって形成されている。このように従来とは異なる仕方で加飾層が形成されているため、同加飾層の質感等を従来とは異なるものとすることができ、そのことが車両用ガーニッシュの意匠性を多様なものとするうえで有効となる。
【0010】
上記車両用ガーニッシュは、車両に取り付けられる樹脂製の基材を備えており、その基材における車載センサの電磁波の送信方向の前方側に上記加飾層が形成されるものとする一方、同加飾層における前記電磁波の送信方向の前方側には、樹脂製の透明層を形成することが考えられる。
【0011】
車両用ガーニッシュにおける加飾層の模様領域に金属のような光輝性を持たせるため、仮に塗装、フィルムインサート、及びスパッタリングといった方法を用いて、加飾層の模様領域を形成したとすると、その加飾層については樹脂により形成される基材及び透明層とは別の方法で形成しなければならない。このため、車両用ガーニッシュを製造する際、加飾層を形成する分の作業工程の数が多くなることは避けられず、車両用ガーニッシュの製造に手間とコストがかかるようになる。上記構成によれば、加飾層の模様領域が金属粒子を顔料として含む樹脂により形成され、且つ、加飾層の背景領域が模様領域の背景となる色の顔料を含む樹脂により形成されるため、加飾層を基材及び透明層と同種類の方法で形成することができる。その結果、加飾層を形成する分の作業工程の数が多くなることを抑制でき、ひいては車両用ガーニッシュの製造に手間とコストがかかることを抑制できるようになる。
【0012】
なお、上記車両用ガーニッシュにおいて、上記加飾層の模様領域は透明層における電磁波の送信方向の前方側に向けてへこむ凹部に対応して位置している一方、同加飾層の背景領域は透明層における上記凹部以外の部分に対応して位置しているものとすることが考えられる。
【0013】
車両用ガーニッシュを製造する際には、その車両用ガーニッシュにおける各部が透明層、加飾層、及び基材の順で形成される。この場合、仮に加飾層の模様領域を塗装、フィルムインサート、及びスパッタリングといった方法を用いて形成したとすると、形成された加飾層における透明層の凹部に対応する部分(模様領域)と同凹部に対応する部分以外の部分(背景領域)との間に段差が生じる。こうした状態のもとで基材が形成されると、同基材における透明層の凹部に対応する部分(模様領域に対応する部分)の厚さが、透明層の凹部以外の部分に対応する部分(背景領域に対応する部分)の厚さよりも厚くなる。このため、基材における透明層の凹部に対応する部分において、形成後の熱収縮が上記凹部以外の部分に対応する部分よりも大きくなり、窪み(いわゆるヒケ)が生じるようになる。
【0014】
上記構成によれば、加飾層の模様領域と背景領域とが共に樹脂によって形成されるため、形成された加飾層における透明層の凹部に対応する部分(模様領域)と同凹部に対応する部分以外の部分(背景領域)との間に段差が生じないよう、それら模様領域と背景領域とを形成することができる。このため、基材における透明層の凹部に対応する部分(模様領域に対応する部分)の厚さが、透明層の凹部以外の部分に対応する部分(背景領域に対応する部分)の厚さよりも厚くなることはない。従って、基材における透明層の凹部に対応する部分において、上述したように形成後の熱収縮に伴う窪み(いわゆるヒケ)が生じることを抑制できる。
【0015】
上記車両用ガーニッシュにおいて、上記加飾層の上記電磁波の送信方向の前方側には、樹脂製の透明層が形成されており、上記加飾層の背景領域を形成する樹脂は、車両に対する取り付けに必要な剛性を有するものとすることが考えられる。
【0016】
この構成によれば、加飾層の背景領域に車両用ガーニッシュを車両に取り付けるための爪等を形成することができ、それによって加飾層における車載センサからの電磁波の送信方向の後方側に、車両用ガーニッシュを車両に取り付けるための基材を設けなくてもよくなる。そして、車両用ガーニッシュに基材を設けない分、車両用ガーニッシュにおける電磁波の送信方向についての厚みを薄くすることができ、ひいては車両用ガーニッシュの電磁波透過性を向上させることができる。
【0017】
上記車両用ガーニッシュにおいて、上記加飾層の模様領域を形成する樹脂は、車両走行中の飛び石に対するチッピング耐性、及び、太陽光に対する耐光性を有するものとすることが考えられる。更に、上記加飾層の背景領域を形成する樹脂は、車両走行中の飛び石に対するチッピング耐性、太陽光に対する耐光性、及び車両に対する取り付けに必要な剛性を有するものとすることが考えられる。
【0018】
この構成によれば、加飾層の模様領域及び背景領域にチッピング耐性及び耐光性を持たせることができるため、加飾層における車載センサからの電磁波の送信方向の前方側に、チッピング耐性や耐光性を有する透明層を形成しなくてもよくなる。更に、加飾層の背景領域に車両用ガーニッシュを車両に取り付けるための爪等を形成することができるため、加飾層における車載センサからの電磁波の送信方向の後方側に、車両用ガーニッシュを車両に取り付けるための基材を設けなくてもよくなる。そして、車両用ガーニッシュに透明層及び基材を設けない分、車両用ガーニッシュにおける電磁波の送信方向についての厚みを薄くすることができ、ひいては車両用ガーニッシュの電磁波透過性を向上させることができる。
【0019】
なお、車載センサとして電波を送受信するものが用いられる場合、加飾層の模様領域を形成する樹脂の誘電率が3.0ファラド毎メートル以下、且つ誘電正接が0.01以下となるよう、同樹脂に上記金属粒子が含まれるようにすることが考えられる。
【0020】
上記樹脂に含まれる金属粒子の量を多くするほど、模様領域における金属のような光輝性が良好にはなるものの、模様領域における電波透過性は低下する。上記構成によれば、模様領域を形成する上記樹脂の誘電率が3.0ファラド毎メートル以下、且つ誘電正接が0.01以下となるように、上記金属粒子が上記樹脂に含まれるようにすることで、その樹脂(模様領域)における必要な電波透過性を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、質感等が従来とは異なる加飾層を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】車両用ガーニッシュにおける
図2の二点鎖線で囲んだ部分を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、車両用ガーニッシュの第1実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1に示す車両用ガーニッシュ1は、車両のエンブレムであって、同車両の前部に設けられている。また、車両の前部には、
図2に示すように、車外の物体を検出するための電磁波の送受信を行う車載センサとして、例えばミリ波レーダ2が搭載されている。ミリ波レーダ2は、電波(ミリ波)を車外(
図2の左側)に向けて送信する一方、車外の物体に当たって反射した上記ミリ波を受信し、そうしたミリ波の送受信を通じて車外の物体を検知する。
【0024】
車両用ガーニッシュ1は、ミリ波レーダ2を車外から見えにくくするため、同ミリ波レーダ2におけるミリ波の送信方向の前方側(
図2の左方側)に位置している。車両用ガーニッシュ1は、上記ミリ波を透過させることが可能となっている。
【0025】
図3は、車両用ガーニッシュ1における
図2の二点鎖線で囲んだ部分を拡大して示している。
図3から分かるように、車両用ガーニッシュ1には、車両に取り付けられる基材3、意匠性を有する部分である加飾層4、及び、その加飾層4を覆いつつ車外から見えるようにする透明層5が、ミリ波レーダ2からのミリ波の送信方向の後方側(
図3の右方側)から前方側(
図3の左方側)に向けて順に設けられている。
【0026】
次に、車両用ガーニッシュ1における基材3、加飾層4、及び透明層5について、個別に詳しく説明する。
[基材3]
基材3は、車両用ガーニッシュ1を車両に取り付けるための爪等が形成されており、そうした取り付けを実現することが可能な剛性を確保することができ、且つミリ波を透過させることができる材料によって形成されている。このような材料としては、例えばアクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)や、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム(ASA)等があげられる。
【0027】
[加飾層4]
加飾層4は、金属粒子を顔料として含む樹脂によって形成されている模様領域6、及び、その模様領域6の背景となる色の顔料を含む樹脂によって形成されている背景領域7を有している。模様領域6を形成する樹脂には上述したように金属粒子が顔料として含まれているため、その金属粒子によって模様領域6には従来とは異なる金属のような光輝性が付与される。加飾層4の模様領域6及び背景領域7はそれぞれ、車両用ガーニッシュ1において例えば
図1に示すように位置しており、それによって車両用ガーニッシュ1に意匠性を持たせている。これら模様領域6及び背景領域7も、ミリ波を透過させることが可能となっている。
【0028】
上記模様領域6を形成する樹脂に含まれる金属粒子としては、金属酸化物粒子や金属化合物粒子を採用することも可能である。ちなみに、この例では上記金属粒子として酸化チタン粒子が用いられている。そして、この金属粒子が、加飾層4の模様領域6を形成する樹脂に対し、その樹脂の誘電率が3.0ファラド毎メートル以下、且つ誘電正接が0.01以下となるように含まれている。加飾層4の模様領域6及び背景領域7を形成する樹脂としては、ポリカーボネート(PC)等を採用することが考えられる。
【0029】
[透明層5]
透明層5(
図3)は、無色透明もしくは有色透明であってミリ波を透過させることが可能な樹脂によって形成されている。こうした樹脂としては、例えばポリカーボネートがあげられる。透明層5における車外側の面、すなわちミリ波レーダ2におけるミリ波の送信方向の前方側の面(
図3の左方側の面)には、車両走行中の飛び石に対するチッピング耐性、及び、太陽光に対する耐光性を持たせるためのハードコート層8が形成されている。ハードコート層8は、透明層5における上記ミリ波の送信方向の前方側の面に対し、例えば上記チッピング耐性及び耐光性を付与する表面処理剤を塗布することによって形成されている。
【0030】
透明層5における車内側の面、すなわちミリ波レーダ2におけるミリ波の送信方向の後方側の面(
図3の右方側の面)において、加飾層4の模様領域6に対応する部分には、ミリ波レーダ2からのミリ波の送信方向の前方側に向けてへこむ凹部9が形成されている。言い換えれば、加飾層4の模様領域6は、透明層5の凹部9に対応して位置しており、その凹部9内を埋めるように形成されている。このように透明層5に加飾層4の模様領域6で埋められる凹部9を形成することにより、車外側から模様領域6(凹部9)を立体的に見せつつ、同模様領域6に光輝性を持たせることが可能となる。一方、加飾層4の背景領域7は、透明層5における上記ミリ波の送信方向の後方側の面において、凹部9以外の部分に対応して位置している。
【0031】
次に、車両用ガーニッシュ1の形成手順について説明する。
車両用ガーニッシュ1を形成する際には、透明層5、加飾層4、及び基材3が、射出成形等の樹脂成形法により、透明層5、加飾層4、基材3の順に形成される。透明層5が形成された後に加飾層4が形成される際には、同加飾層4の模様領域6と背景領域7とのうち、一方が形成されてから他方が形成される。
【0032】
加飾層4の模様領域6は、透明層5の凹部9に対応する部分に、同凹部9を埋めるように形成される。また、加飾層4の背景領域7は、透明層5の凹部9に対応する部分以外の部分に形成される。このように形成される加飾層4においては、透明層5の凹部9に対応する部分(模様領域6)と同凹部9に対応する部分以外の部分(背景領域7)との間に段差が生じないよう、それら模様領域6及び背景領域7が形成される。
【0033】
透明層5、加飾層4、及び基材3が順に形成された後、透明層5における上記ミリ波の送信方向の前方側の面(
図3の左方側の面)には、チッピング耐性及び耐光性を付与する表面処理剤を塗布することによってハードコート層8が形成される。
【0034】
なお、表面処理剤の塗布によってハードコート層8を形成する代わりに、チッピング耐性及び耐光性を有するフィルム(シート)を用いて次のようにハードコート層を形成することも可能である。
【0035】
すなわち、上記フィルムの厚さ方向の片側面に対し透明層5、加飾層4、基材3を射出成形等の樹脂成形法を通じて順に形成し、それによって透明層5における上記ミリ波の送信方向の前方側の面に上記フィルムからなるハードコート層を形成する。このようにハードコート層を形成する場合、表面処理材の塗布を通じてハードコート層8を形成する場合と比較して、ハードコート層の形成にかかる手間を小さく抑えることができる。
【0036】
次に、本実施形態の車両用ガーニッシュ1の作用効果について説明する。
(1)車両用ガーニッシュ1は、形成の仕方が従来とは異なる加飾層4を備えているため、車両用ガーニッシュ1における加飾層4の質感等、詳しくは加飾層4における模様領域6の光輝性等が従来とは異なるものとなる。すなわち、上記加飾層4においては、模様領域6が金属粒子を顔料として含む樹脂によって形成されている一方、背景領域7が背景となる色の顔料を含む樹脂によって形成されている。このように従来とは異なる仕方で加飾層4が形成されているため、同加飾層4の質感(光輝性)等を従来とは異なるものとすることができ、そのことが車両用ガーニッシュ1の意匠性を多様なものとするうえで有効となる。
【0037】
(2)車両用ガーニッシュ1における加飾層4の模様領域6に金属のような光輝性を持たせるため、仮に塗装、フィルムインサート、及びスパッタリングといった方法を用いて、加飾層4の模様領域6を形成したとすると、その加飾層4については樹脂により形成される基材3及び透明層5とは別の方法で形成しなければならない。このため、車両用ガーニッシュ1を製造する際、加飾層4を形成する分の作業工程の数が多くなることは避けられず、車両用ガーニッシュ1の製造に手間とコストがかかるようになる。しかし、車両用ガーニッシュ1では、加飾層4の模様領域6が金属粒子を顔料として含む樹脂により形成され、且つ、加飾層4の背景領域7が模様領域6の背景となる色の顔料を含む樹脂によって形成されるため、加飾層4を基材3及び透明層5と同種類の方法(この例では射出成形)で形成することができる。その結果、加飾層4を形成する分の作業工程の数が多くなることを抑制でき、ひいては車両用ガーニッシュ1の製造に手間とコストがかかることを抑制できるようになる。
【0038】
(3)透明層5に形成された凹部9を加飾層4の模様領域6で埋めることにより、車外側から模様領域6(凹部9)を立体的に見せつつ、同模様領域6に光輝性を持たせることができる。
【0039】
ここで、加飾層4の模様領域6を仮に塗装、フィルムインサート、及びスパッタリングといった方法を用いて形成したとすると、
図4に示すように模様領域6が透明層5の凹部9の内面に沿って模様領域6が薄く形成される。このため、形成された加飾層4における透明層5の凹部9に対応する部分(模様領域6)と、同凹部9に対応する部分以外の部分(背景領域7)との間に段差が生じる。その結果、加飾層4の後に形成される基材3において、透明層5の凹部9に対応する部分(模様領域6に対応する部分)の厚さが、透明層5の凹部9以外の部分に対応する部分(背景領域7に対応する部分)の厚さよりも厚くなる。このように基材3の厚さが透明層5の凹部9に対応する部分で同凹部9に対応する部分以外の部分よりも厚くなるため、基材3における透明層5の凹部9に対応する部分において、形成後の熱収縮が上記凹部9以外の部分に対応する部分よりも大きくなり、
図4に二点鎖線で示すように窪み(いわゆるヒケ)が生じるようになる。
【0040】
しかし、加飾層4の模様領域6と背景領域7とは共に樹脂によって形成されているため、形成された加飾層4における透明層5の凹部9に対応する部分と同凹部9に対応する部分以外の部分との間に段差が生じないよう、それら模様領域6と背景領域7とを形成することができる(
図3)。このため、基材3における透明層5の凹部9に対応する部分の厚さが、透明層5の凹部9以外の部分に対応する部分の厚さよりも厚くなることはない。従って、基材3における透明層5の凹部9に対応する部分において、上述したように形成後の熱収縮に伴う窪み(
図4の二点鎖線)が生じることを抑制できる。
【0041】
(4)加飾層4の模様領域6を形成する樹脂に含まれる金属粒子の量を多くするほど、模様領域6における金属のような光輝性が良好にはなるものの、模様領域6における電波透過性は低下する。この点、模様領域6を形成する上記樹脂の誘電率が3.0ファラド毎メートル以下、且つ誘電正接が0.01以下となるように、上記金属粒子が上記樹脂に含まれるようにすることで、その樹脂(模様領域6)における必要な電波透過性を確保することができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、車両用ガーニッシュの第2実施形態について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、この実施形態の車両用ガーニッシュ1では、第1実施形態のもの(
図3)に対し、基材3及びハードコート層8が省略されている。
【0043】
図5に示す車両用ガーニッシュ1では、加飾層4の背景領域7を形成する樹脂が車両に対する取り付けに必要な剛性を有するものとされており、その背景領域7を形成する樹脂に車両用ガーニッシュ1を車両に取り付けるための爪等が形成されている。こうした樹脂としては、例えば共重合ポリカーボネートを採用したり、PC/ABS系ポリマーアロイといったPCとABSとの両方の特徴を持った樹脂を採用したりすることが考えられる。
【0044】
また、透明層5を形成する樹脂は、車両走行中の飛び石に対するチッピング耐性、及び、太陽光に対する耐光性を有するものとされている。こうした樹脂で透明層5を形成することにより、上記ミリ波の送信方向における透明層5の前方側の面に第1実施形態のようなハードコート層8(
図3)を形成する必要がなくなる。なお、透明層5を形成するための上記樹脂としては、例えば共重合ポリカーボネートを採用することが考えられる。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(4)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(5)加飾層4の背景領域7に車両用ガーニッシュを車両に取り付けるための爪等を形成することができ、それによって上記ミリ波の送信方向における加飾層4の後方側に、車両用ガーニッシュ1を車両に取り付けるための基材3を設けなくてもよくなる。そして、車両用ガーニッシュ1に基材3を設けない分、上記ミリ波の送信方向についての車両用ガーニッシュ1の厚みを薄くすることができ、その分車両用ガーニッシュ1の電磁波透過性を向上させることができる。
【0046】
(6)上記ミリ波の送信方向における透明層5の前方側の面にハードコート層8を形成しなくてもよい分、上記ミリ波の送信方向についての車両用ガーニッシュ1の厚みを更に薄くすることができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、車両用ガーニッシュの第3実施形態について、
図6を参照して説明する。
図6に示すように、この実施形態の車両用ガーニッシュ1では、第2実施形態のもの(
図5)に対し透明層5が省略されている。
【0048】
図6に示す車両用ガーニッシュ1では、加飾層4の模様領域6を形成する樹脂が、車両走行中の飛び石に対するチッピング耐性、及び、太陽光に対する耐光性を有するものとされている。こうした樹脂としては、例えば共重合ポリカーボネートを採用することが考えられる。
【0049】
更に、加飾層4の背景領域7を形成する樹脂は、車両走行中の飛び石に対するチッピング耐性、太陽光に対する耐光性、及び車両に対する取り付けに必要な剛性を有するものとされている。こうした樹脂としては、例えば共重合ポリカーボネートを採用することが考えられる。
【0050】
上記車両用ガーニッシュ1を形成する際には、加飾層4の模様領域6と背景領域7とのうち、一方が射出成形等を通じて形成された後に他方が射出成形等を通じて形成される。こうして形成された加飾層4における上記ミリ波の送信方向の前方側の面は、模様領域6と背景領域7との間で段差が生じないようにされている。
【0051】
本実施形態によれば、第2実施形態の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(7)加飾層4の模様領域6及び背景領域7にチッピング耐性及び耐光性を持たせることができるため、加飾層4における上記ミリ波の送信方向の前方側に、チッピング耐性や耐光性を有する透明層5(
図5)を形成しなくてもよくなる。従って、車両用ガーニッシュ1に透明層5及び基材3を設けない分、車両用ガーニッシュ1における上記ミリ波の送信方向についての厚みを更に薄くすることができ、ひいては車両用ガーニッシュの電磁波透過性を更に向上させることができる。
【0052】
[第4実施形態]
次に、車両用ガーニッシュの第4実施形態について、
図7を参照して説明する。
図7に示すように、この実施形態の車両用ガーニッシュ1は、第1実施形態のもの(
図3)に対し、加飾層4の模様領域6が透明層5によって覆われていない構造となっている点が異なっている。詳しくは、透明層5には上記ミリ波の送信方向に同透明層5を貫通する孔5aが形成されており、加飾層4の模様領域6が上記孔5aを貫通して透明層5における上記送信方向の前側の面まで延びている。
【0053】
本実施形態によれば、第1実施形態の(1)、(2)、及び(4)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(8)加飾層4の模様領域6と背景領域7との間の段差が大きくなるため、その段差によって上記ミリ波の送信方向についてのより奥行きのある表現が可能となる。
【0054】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・加飾層4の模様領域6を形成する樹脂に対する金属粒子の含有量については適宜変更することが可能である。
・上記金属粒子として、酸化チタン粒子を例示したが、それ以外の金属粒子を採用してもよい。
【0056】
・第1実施形態における基材3(
図3)に相当する部分を、
図8に示すように加飾層4の模様領域6と同じ材料で形成するようにしてもよい。この場合、模様領域6を形成する樹脂として、車両に対する取り付けに必要な剛性を有するもの、例えば共重合ポリカーボネートを採用することが考えられる。
【0057】
・第1実施形態及び第2実施形態において、必ずしも透明層5に凹部9を形成する必要はない。例えば、透明層5における上記ミリ波の送信方向の後方側の面を段差のない平面状とし、加飾層4の模様領域6及び背景領域7を第3実施形態(
図6)のように形成してもよい。
【0058】
・第2実施形態において、透明層5を形成する樹脂を例えばポリカーボネートとし、その透明層5に第1実施形態のようなハードコート層8を形成してもよい。
・電磁波を送受信する車載センサとして、ミリ波レーダ2を用いる代わりに、電磁波として赤外線を送受信する赤外線センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…車両用ガーニッシュ
2…ミリ波レーダ
3…基材
4…加飾層
5…透明層
5a…孔
6…模様領域
7…背景領域
8…ハードコート層
9…凹部