(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】改善された生分解性をもつ合成流体
(51)【国際特許分類】
C08F 8/04 20060101AFI20231114BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20231114BHJP
C10G 50/02 20060101ALI20231114BHJP
C10G 45/32 20060101ALI20231114BHJP
C08F 110/14 20060101ALI20231114BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231114BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20231114BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/26 20060101ALN20231114BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/16 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/32 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20231114BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C08F8/04 ZBP
C10M107/02
C10G50/02
C10G45/32
C08F110/14
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N30:10
C10N40:26
C10N50:10
C10N40:08
C10N40:06
C10N40:16
C10N40:32
C10N40:04
C10N40:30
C10N40:02
(21)【出願番号】P 2020559361
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 US2019025456
(87)【国際公開番号】W WO2019212674
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-01
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520409279
【氏名又は名称】イネオス オリゴマース ユーエスエイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】バーゲリー ヴァヒド
(72)【発明者】
【氏名】ムーア ライオネル ディー
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス-リバス ミシェル
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-226511(JP,A)
【文献】特表2011-517702(JP,A)
【文献】特開昭55-005998(JP,A)
【文献】特表2009-531517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C10M101/00-177/00
C10G 1/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の特性を有するポリアルファオレフィン流体を製造するプロセスであって、
a.アルコールアルコキシレート促進剤と組み合わせたBF
3からなる触媒系の存在下で、約30~約100%の1-テトラデセン(C
14)を含有する少なくとも1種のアルファオレフィンを含むアルファオレフィン成分を反応させて、反応した塔底生成物および未反応の残留モノマーを生成するステップ;
b.蒸留によって未反応の残留モノマーを塔頂留分として除去するステップ;ならびに
c.前記塔底生成物の少なくとも一部分を水素化して、
2.5~
4.6センチストークスの
ASTM D-445に従って測定される100℃動粘度を有する水素化流体を得るステップ
を含
み、前記ポリアルファオレフィン流体が70%を超える二量体C
28
含有量を有する、プロセス。
【請求項2】
アルファオレフィン成分が、90%超のC
14アルファオレフィンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
アルファオレフィン成分が、第1のアルファオレフィンおよび第2のアルファオレフィンを含み、第1のアルファオレフィンが、C
14アルファオレフィンであり、第2のオレフィンが、C
12アルファオレフィンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
アルファオレフィン成分が、第1のアルファオレフィンおよび第2のアルファオレフィンを含み、第1のアルファオレフィンが、C
14アルファオレフィンであり、第2のオレフィンが、C
8アルファオレフィンの二量体である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(a)のアルコールアルコキシレート促進剤が、2-メトキシエタノールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(a)のアルコールアルコキシレート促進剤が、1-メトキシ-2-プロパノールである、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高生分解性、低流動点、高酸化安定性、および低スラッジ形成傾向を特徴とする低粘度ポリアルファオレフィン(PAO)組成物に関する。より詳細には、本発明は、100℃における改善された動粘度を有するPAO組成物および改善された組成物の選択的な製造のための改善されたプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
アルファオレフィン(別名直鎖アルファオレフィンまたはビニルオレフィン)のオリゴマー、それらの製造のためのプロセスならびに合成および半合成潤滑剤の調合におけるそれらの使用は、当技術分野で公知である。PAOオリゴマーを作製するためのいくつかの代表的な方法には、次の米国特許番号:第3,682,823号;第3,763,244号;第3,769,363号;第3,780,123号;第3,798,284号;第3,884,988号;第3,097,924号;第3,997,621号;第4,045,507号;および第4,045,508号が含まれる。
【0003】
従来、合成ベース流体として有用であることがわかっているアルファオレフィンオリゴマーは、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよびその混合物などの約8~14個の炭素原子を含有する直鎖末端オレフィンから主に調製される。最も広く使用されているアルファオレフィンの1つは、単独または他のアルファオレフィンとの混合物で使用できる1-デセンである。直鎖アルファオレフィンが使用される場合、オリゴマー生成物は、様々な量の二量体、三量体、四量体、五量体以上のオリゴマーを含む混合物を含む。オリゴマー生成物は、通常、熱および酸化安定性を改善するために水素化され、特定の用途に有用となるようにさらに分別されなければならない。このような水素化および分別されたオリゴマー生成物は、それらの優れた性能、長い使用寿命、低揮発性、低流動点、および高粘度指数で知られている。望ましくは、生分解性を含む改善された特性を有し、より単純な製造プロセスを必要とするベース流体組成物があるはずである。
従来のポリアルファオレフィンプロセスでは、より高級またはより低級のオリゴマーを除去するか付加するかのいずれかによって生成物の動粘度を調節して、特定の用途に望ましい粘度を有する組成物を生成することができる。100℃における2~150センチストークス(cSt)の範囲での粘度が一般に必要であり、好ましい粘度は、2~10cStの範囲である。
これらの低粘度流体は、特に、摩擦を最小限に抑え、それによって燃料節約を改善するために、エンジン潤滑油などの省エネ用途に有用である。単独または鉱油とのブレンドのいずれかで使用されると、それらは、例えば、SAE 0W-XXまたはSAE 5W-XXクランクケース油として認められる粘度をもつ潤滑油をもたらし得る。
【0004】
100℃における2.5~4.5cStの動粘度を有する合成潤滑剤基原料油には、特にこの特性を低ノアック(Noack)揮発性、低流動点、有用な低温粘度、および高粘度指数と組み合わせる場合、とりわけ大きな市場が存在する。4cSt PAOは、BF3などのフリーデルクラフツ触媒をアルコールなどの促進剤と用いる1-デセンのデセンオリゴマー化によって作製することができる。
しかしながら、1-デセンは、広範囲の他のアルファオレフィンと一緒に作製される副生成物であるので、供給が制限されている。実質的に同様の粘度特性を有するオリゴマーを製造しながら、より広範囲のアルファオレフィンを使用して合成基原料油を作製するのにより柔軟性をもたらすことが望ましいだろう。
1-デセンまたは他のアルファオレフィンからオリゴマー油を作製するのに関連した追加の問題は、オリゴマー生成物ミックスが、通常、所与の粘度(例えば100℃において2、4、6、または8cSt)の油を得るために異なる部分に分別しなければならないことである。上記の商業生産方法は、オリゴマー生成物ミックスをもたらし、それは、分別するときに、市場の要求に対応する相対量の各粘度生成物を製造する。その結果、過剰量の一方の生成物が、もう一方の必要量を得るために多くの場合製造される。
【0005】
その上、市販されているPAO生成物が特性の有用なバランスをもたらす一方、狭い範囲の比粘度を必要とする用途、例えば、4cSt材料(主にデセン三量体またはC30)は、複合オリゴマー混合物から蒸留しなければならない。蒸留プロセスでは、言い換えると、より重い副生成物が作成される。このため、4~5.5cStの粘度をもつデセン由来のPAOは、4cSt PAOおよびより高粘度PAOからポストブレンドしなければならない。
【0006】
したがって、デセン供給が制限されるために、デセン以外の供給原料からデセンベース油と比較して同様またはより良好な特性を有する2.5~4.5cSt組成物を製造することが望ましい。前述の2.5~4.5cSt組成物を選択的にかつ任意の副生成物を含まずにまたはポストブレンディングを必要としないで生成することも望ましい。
他の直鎖αオレフィン由来のポリアルファオレフィンは、当技術分野で公知である。純粋なテトラデセン由来のポリアルファオレフィンは、特に高い流動点および-40℃粘度特性を有することが知られている。
【0007】
同一条件下で調製されたポリアルファオレフィン三量体では、出発アルファオレフィンの鎖長の増加と共に粘度指数が増加することが実証されている。逆に、出発アルファオレフィンの鎖長の増加と共に揮発性は減少する。高粘度指数および低揮発性が潤滑剤にとって望ましい特性であることを考えれば、ポリアルファオレフィンの製造時に長い炭素数のアルファオレフィンを使用する方法が、長い間求められている。
【0008】
残念なことに、出発アルファオレフィンの鎖長の増加と共に流動点および低温粘度も増加することが理解されている。例えば、デセン(C
10)ポリアルファオレフィン三量体は、-65摂氏度未満流体まで流体である。その一方、テトラデセン(C
14)ポリアルファオレフィン三量体は、1つの出典("Synthetic Lubricant Base Stock Processes and Products" Margaret M. Wu, Suzzy C. Ho, and T. Rig Forbus)によると対照的に-20摂氏度で冷凍固体である。
【表1】
Shubkinは、かなりの量のテトラデセン二量体を含有するテトラデセンオリゴマーでさえ、組成物が-18~-20摂氏度で凍結固体であることを示している(Shubkin et. Al., "Tailor Making Polyalphaolefins" in Engine oils and Automotive Lubrication; ed. Wilfred Bartz, 1993, pub Verlag)。
【表2】
【0009】
基原料油がSAE 5Wモーター油で使用するのに適するようにするためには、油は、コールドクランキング要件を満たすために-30摂氏度で流体でなければならないことが知られている。SAE 0W油の要件は、さらに厳しい-基原料油はコールドクランキング要件を満たすために-35摂氏度で流体でなければならない。
多くの工業用油も、低温流動性が低い任意の基原料油の使用を除外することになる-40摂氏度ブルックフィールド粘度要件を有している。
【0010】
ベース流体組成物として使用するのに適したPAOを製造する先行技術の方法は、多くの欠陥があるため、より改善されたPAO組成物および前記ポリアルファオレフィンを作製するための改善された方法が依然として必要とされている。本発明は、単一ステップの低粘度ポリアルファオレフィン製造プロセスならびに低流動点、良好な低温粘度、高粘度指数、および良好な生分解性を特徴とする組成物を提供することによってこれらの要求に取り組んでいる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、高生分解性、低流動点、高酸化安定性、および低スラッジ形成傾向を特徴とする低粘度ポリアルファオレフィン(PAO)組成物を特許請求し、より詳細には、約2.5~4.5cStの範囲の100℃における動粘度を有するPAO組成物を提供する。
本発明はまた、BF3およびアルコールアルコキシレート促進剤を含む触媒系を使用した第2のコモノマーの不在または存在下での1-テトラデセンのオリゴマー化による前述の組成物の選択的な製造のための改善されたプロセスを特許請求する。本発明のプロセスは、70%を超えるC28二量体(または共二量体)選択性を有しており、好ましい生成物を選択的に製造するためにさらなる分別を必要としない(残留未反応モノマーの除去後)。特許請求した発明はまた、超低粘度エンジン油用途(例えば、0W-16)に有用な組成物、そのような調合物の低温特性を改善するGroup III油およびGTLとのブレンドされた組成物に関する。
【0012】
特許請求した発明は、船舶潤滑などの環境に敏感な用途の潤滑剤として有用な著しく生分解性の低粘度油を製造するプロセスをさらに含む。前記低粘度油の特性は、約35質量パーセント以下、好ましくは0.1~30質量パーセントの合計量の従来の潤滑剤添加剤の使用によってさらに促進され得る。そのような添加剤には、例えば、分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤および粘度指数向上剤が含まれる。これらの種類の添加剤は、当技術分野で周知である。そのような添加剤は、それら自体が実質的に生分解性であり得るが、これは要件ではない。
【0013】
上述の低粘度油添加剤の好ましい実施形態には、ジアルキル-ジチオリン酸亜鉛、アリールスルホン酸カルシウム、過塩基性アリールスルホン酸カルシウム、バリウムフェネート、五硫化リンと高分子量オレフィンのテルペンの酸化バリウムで中和された反応生成物、ヒンダードアルキルフェノール、メチレン-ビス-ジアルキルフェノール、硫化ジブチルスズ、リン酸水素ジブチル、リン酸トリクレジル、テトラエチレン-ポリアミンなどのエチレン-ポリアミンの高分子量アルキルスクシンイミド、硫黄架橋アルキルフェノール、硫化脂肪酸エステルおよびアミド、シリコーンおよびジアルキルエステルが含まれる。特定の基油および用途に合わせた、そのような添加剤の独自の組合せ、「添加剤パッケージ」は、アフトン社(Afton Corporation)、ルーブリゾール(Lubrizol)またはインフィニアム(Infineum)を含めたいくつかの供給元から市販されている。
粘度指数(VI)向上剤は、別個に入手可能である。
本発明の流体は、他の基油または添加油と使用することができる。これらの基油には、C6-C10 1-オレフィン系PAO、鉱油、または合成エステルが含まれるが、それだけには限定されない。
【0014】
本発明の流体を含有する調合物の全体的な生分解性は、機能性流体または潤滑添加剤を含む潤滑剤ブレンドの全体に依存する。最後に、本発明は、SAE 0W-8、SAE 0W-12、およびSAE 0W-16の粘度グレードのエンジン油または船舶用潤滑剤における、対象のポリアルファオレフィン流体をベース流体とした、単独で、または他の潤滑油(例えばGroup I、Group II、Group III、Group III+鉱油、GTL)と一緒での使用を特許請求する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1種または複数のアルファオレフィン成分のオリゴマー化から調製されたオリゴマーを含むポリアルファオレフィン流体が特許請求されている。好ましい実施形態では、アルファオレフィン成分には、C14アルファオレフィンを含む第1のオレフィンと、C12-C20の偶数の炭素数を有する、0質量パーセント~約70質量パーセントの第2のオレフィンが含まれる。第2のオレフィンの構造は、以下に示されており、R’は、水素(H)であり、R’’は、C10-C18ヒドロカルビルであり、またはR’およびR’’は、それぞれ独立に異なっており、両方ヒドロカルビルであり、R’およびR’’の合計は、C10-C18である。
R’
□
R’’□C=CH2
【0016】
本発明の流体は、三フッ化ホウ素触媒およびアルコールアルコキシレート(Ra-O-CHRb-CHRc-O-)n-H助触媒または「促進剤」を使用した、上記の1つもしくは複数のオレフィンまたはオレフィンのカチオン性オリゴマー化によって生成されて、水素化に続いて、100℃で約2.5~約4.6mm2/sの動粘度を有し、OECD 301B試験で決定された少なくとも約50パーセントの生分解性を有する流体を得る。OECD 301B生分解試験(修正スツルム試験)は、水性環境における有機薬品の生分解性を決定するために、分解に関するOECD専門家グループ(OECD Expert Group on Degradation)によって推奨されている。試験は、可溶性および不溶性の不揮発性有機化合物に適しており、発生するCO2の量を測定し、それによって「完全な」生分解の指標が得られる。試験材料は、ミネラル基質および細菌接種物を含有するフラスコに導入される。超音波振動後、フラスコ内容物は、CO2-自由空気で曝気される。対照(例えば安息香酸ナトリウム20mgC/L)が、同時に実行される。EPAは、対照物質としてアニリン(新たに蒸留された)の使用を推奨する。放出された任意のCO2は、水酸化バリウムの溶液を含有するフラスコに吸収され、その濃度は、塩酸を用いた滴定によって定期的に決定される。生分解は、試験材料が生成するかもしれない理論的CO2に対して、試験中に発生したCO2の合計量のパーセント値として表される(対照に対して補正)。通常、試験は28日続くが、もっと早く、すなわち少なくとも3回の測定で生分解曲線がプラトーに達したらすぐ、終了してもよい。これに対して、生分解が最初の28日以内に開始されるが、28日目までにプラトーに達していないことを曲線が示す場合、試験は、28日を超えて延長することができる。
【0017】
アルコールアルコキシレート(Ra-O-CHRb-CHRc-O-)n-Hでは、Raは、その混合物を含めた、1~24個の炭素を含有するヒドロカルビルであり、RbおよびRcは、それぞれ独立に水素、メチル、またはエチルであり、nは、1~15の平均である。好ましいアルコールアルコキシレート促進剤には、2-メトキシエタノールおよび1-メトキシ-2-プロパノールが含まれる。
1-テトラデセンを含む第1のオレフィンと0~70質量パーセントの第2のオレフィン(上記のR’R’’C=CH2)からポリアルファオレフィン流体を作製するプロセスであって、前記オレフィンモノマーの少なくとも約70質量パーセントの二量体(または共二量体)を含有し、二量体と三量体の比が約1を超えるオリゴマー反応生成物を生成するために、オレフィンを三フッ化ホウ素およびアルコールアルコキシレート(上記のRa-O-CHRb-CHRc-O-)n-H)からなる触媒と接触させることを含む、プロセスも特許請求されている。好ましい実施形態では、本実施形態の1-テトラデセンは、90%超のポリアルファオレフィン混合物を含む。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、第2のオレフィンは、C8アルファオレフィンの二量体、すなわち2-n-ヘキシル-1-デセンを含み、それは、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,455,416号に記載されているように、C8アルファオレフィンをトリエチルアルミニウムなどのアルミニウムアルキル触媒と接触させることによって調製される。あるいは、二量体は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,548,723号に記載されているように、C8アルファオレフィンを有機アルミニウム化合物で活性させた周期表第IVB族のメタロセン触媒およびヒドロカルビルホウ素化合物と接触させることによって調製される。
本発明のポリアルファオレフィン流体は、副生成物なしで、かつ未反応モノマー以外の任意の成分のポストブレンディングまたは塔頂蒸留なしで調製される。
【0019】
本発明のポリアルファオレフィン流体は、SAE 0W-8、0W-12、およびSAE 0W-16の粘度グレードのエンジン油または船舶一般許可(Vessel General Permit)(VGP)要件を満たす船舶用潤滑剤における、単独で、または他の石油由来の鉱物潤滑油(すなわちGroup I、Group II、Group III、Group III+鉱油)、フィッシャートロプシュ触媒(すなわち例えばガス液化(Gas to Liquids)流体または石炭液化(Coal to Liquids)流体)を使用してメタンから導出した合成油と一緒での、ベース流体としての使用に適している。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、約4cStの100℃における粘度、19%未満のノアック250℃揮発減量および4%未満のノアック200℃揮発性、125を超える粘度指数、-35℃未満の流動点、ならびに1,500cP未満の-35℃におけるコールドクランクシミュレーター(Cold Crank Simulator)粘度を有する水素化組成物を提供する。本発明のより好ましい実施形態は、約4cStの100℃における粘度、13.9%の250℃ノアック揮発減量、約-59℃の流動点、および1,700cP未満の-35℃におけるコールドクランクシミュレーター粘度を有する水素化組成物を提供する。
本発明の別の実施形態は、約3.4cStの100℃における粘度、4%のノアック200℃揮発減量、約-50℃の流動点、および1,750cP未満の-40℃におけるブルックフィールド粘度を有する水素化組成物を提供する。
【0021】
本発明のポリアルファオレフィンは、優れた低温特徴と例外的な高温安定性、加えて著しい生分解性を併せ持っている。これらのポリアルファオレフィンは、単独のベース流体としてまたは植物もしくは合成エステル、他のポリアルファオレフィン(PAO)、鉱油、ガス液化流体、添加剤などと併せて、多種多様な環境にやさしい潤滑剤のベース流体としての使用に適している。
【0022】
本発明の流体が有利に使用できる環境にやさしい油には、以下のものが挙げられるが、それだけには限定されない:
2-サイクルエンジン油
エアツール潤滑剤
チェーンとケーブル用潤滑剤
エレベーター潤滑剤
コンクリートとアスファルト離型剤
鉄道用グリース
多目的グリース
文房具またはモバイル機器用油圧油
機械油
金属鋳造用金型離型剤
ロックドリル油
変圧器と送電線冷却液
スライドウェイ潤滑剤
全損潤滑剤
ワイヤーロープ潤滑剤
船尾管潤滑剤
林業用油
【0023】
必ずしも環境にやさしいと考えられていないが、本発明の流体も有利に使用できる油には、以下のものが挙げられるが、それだけには限定されない:
工業用ギア潤滑剤
輸送用ギア潤滑剤
圧縮機油
ガソリンエンジンクランクケース潤滑剤
ディーゼルエンジンクランクケース潤滑剤
トランスミッション油
タービン油
特に、本発明のポリアルファオレフィンは、0W-8、0W-12、および0W-16エンジン油のベース流体として使用するために自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)(SAE)によって定義された粘度要件を満たしている。
【0024】
その上、本発明のポリアルファオレフィンは、植物エステル、エストリド、または天然/合成エステル誘導体の用途を見出す任意の潤滑剤タイプで使用することもできる。船舶用船尾管潤滑剤、オープンギア油、ワイヤーロープ油、林業用油、および油圧油は、本発明のポリアルファオレフィンの添加によって益を得ることができる全ての用途である。この分類の油は、添加剤および増粘剤の適切な選択によって、著しく生分解性にすることができる。
前述に基づいて調合された流体の好ましい一実施形態は、全体の組成物がSAE 0W-XXグレード(ここでXXは、16以下である)の粘度要件を満たすように、a)1~97%の本発明のポリアルファオレフィン流体を、b)合成エステル、合成炭化水素流体、鉱油、天然エステル、または天然および石油を供給源とする原料由来の炭化水素油からなる群から選択される0~60%の流体と、c)0.1~30%の添加剤、例えば分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤、粘度向上剤およびその組合せと混合した混合物を含む。
【0025】
前記機能性流体または潤滑剤組成物の別の好ましい実施形態は、全体の組成物がCEC L-33 A94試験(または同等物)によって決定された少なくとも50%の生分解性を示し、ここで前記組成物が意図的または偶発的に環境に放出され得るように、a)1~97%の本発明のポリアルファオレフィン流体を、b)合成エステル、合成炭化水素流体、鉱油、天然エステル、または天然および石油を供給源とする原料由来の炭化水素油からなる群から選択される0~60%の流体と、c)0.1~70%の添加剤、例えば分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤、粘度向上剤と混合して含む混合物を含む。
【0026】
別の好ましい実施形態では、機能性流体または潤滑剤組成物が提供され、ここで、組成物は、a)1~98%の本発明のポリアルファオレフィン流体を、b)天然もしくは合成エステル、天然もしくは合成炭化水素流体、または天然および石油を供給源とする原料由来の炭化水素油から選択される0~60%の1種もしくは複数の成分と混合して含み、c)0.1~70%の添加剤、例えば分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤および粘度向上剤を含有する。本実施形態は、チェーンソー、船外機、農機具、土工機械、または船舶用もしくは潜水艦用流体の操作を含む用途で特に好ましいかもしれない。船舶固有の用途では、全体の組成物は、〆EPA船舶一般許可証の要件を満たすように調整することができる。
【実施例】
【0027】
INEOS Oligomersから商業的に製造された1-テトラデセン(C14)をそのまま使用した;他の供給業者からの1-テトラデセンで置換されてもよい。全てのプロセスステップは、バッチ、半バッチ、または連続様式で実施することができる。反応は、直列もしくは並列またはそれらの組合せで2~5つの連続撹拌槽型反応器(CST)を使用する連続モードで実行することができる。
【0028】
比較例1:
ジャケット付加熱および内部冷却を備えた1ガロンのParr反応器に、1-テトラデセン1,200gおよび1-ブタノール(1-BuOH)3.0gを注入し、撹拌しながら50℃まで加熱した。三フッ化ホウ素(BF
3)を気体として導入し、それを40psigの定常状態圧力に調整した。反応物を90分間撹拌した。反応混合物を8%NaOH 400mlで急冷し、次いで蒸留水で洗浄した。減圧(220℃、0.1mmHg)下に残留未反応モノマーを揮発性塔頂留分として除去することにより、塔底留分として透明流体837.1gが単離され、これを一組の標準水素化条件(170℃、400psi水素、Ni on Kieselguhr触媒を使用)下に水素化して、以下の特性を有する合成基原料油を得た:
【表3】
【0029】
本発明例2:
ジャケット付加熱および内部冷却を備えた1ガロンのParr反応器に、1-テトラデセン1,400gおよび1-メトキシ-2-プロパノール(1-MOP)4.2gを注入し、撹拌しながら50℃まで加熱した。三フッ化ホウ素(BF3)を気体として導入し、それを20psigの定常状態圧力に調整した。反応物を120分間撹拌した。反応混合物を8%NaOH 400mlで急冷し、次いで蒸留水で洗浄した。減圧(220℃、0.1mmHg)下に残留未反応モノマーを揮発性塔頂留分として除去することにより、塔底留分として透明流体1,063.1gが単離され、これを一組の標準水素化条件(170℃、400psi水素、Ni on Kieselguhr触媒を使用)下に水素化して、以下の特性を有する本発明の合成基原料油を得た:
【0030】
【0031】
上の表は、残留未反応モノマーが除去されると、得られたPAOが本発明の粘度特性バランスを有し、それは、さらに蒸留せずに生成される直留単一製法の4cSt流体であることを示している。また、高粘度指数、良好なノアック揮発性をもつ4cSt流体であり、1-ブタノール(1-BuOH)のような従来のアルコールによって促進されるBF3触媒系で作製された従来のC14オリゴマーと比較して、流動点特性が著しく改善している:
【表5】
【0032】
GCによる実施例2からの本発明のPAOのオリゴマー組成物は、以下の組成を示した:
C
28(二量体):88.0面積%
C
42+(三量体以上):12.0面積%
本発明例3:
実施例2に示された手順はパイロット規模で実行された。生成物は、以下の特性を有していた:
【表6】
【0033】
本発明例4:
ジャケット付加熱および内部冷却を備えた1ガロンのParr反応器に、1-テトラデセン1,200gおよび2-メトキシエタノール(2-MOE)3.1gを注入し、撹拌しながら50℃まで加熱した。三フッ化ホウ素(BF3)を気体として導入し、それを40psigの定常状態圧力に調整した。反応物を90分間撹拌した。反応混合物を8%NaOH 400mlで急冷し、次いで蒸留水で洗浄した。減圧(220℃、0.1mmHg)下に残留未反応モノマーを揮発性塔頂留分として除去することにより、塔底留分として透明流体737.3gが単離され、これを一組の標準水素化条件(170℃、400psi水素、Ni on Kieselguhr触媒を使用)下に水素化して、以下の特性を有する合成基原料油を得た:
【0034】
【0035】
本発明例5:
ジャケット付加熱および内部冷却を備えた1ガロンのParr反応器に、1-テトラデセン476g、1-ドデセン924g、および1-メトキシ-2-プロパノール(1-MOP)4.2gを注入し、撹拌しながら50℃まで加熱した。三フッ化ホウ素(BF3)を気体として導入し、それを20psigの定常状態圧力に調整した。反応物を120分間撹拌した。反応混合物を8%NaOH 400mlで急冷し、次いで蒸留水で洗浄した。減圧(220℃、0.1mmHg)下に残留未反応モノマー留分を揮発性塔頂留分として除去することにより、塔底留分として透明流体993.9gが単離され、これを一組の標準水素化条件(170℃、400psi水素、Ni on Kieselguhr触媒を使用)下に水素化して、以下の特性を有する合成基原料油を得た:
【0036】
【0037】
本発明例6:
助触媒として2-メトキシエタノール(2-MOE)を使用して実施例4を繰り返した。生成物は、表6に示す特性を有していた。
【表9】
【0038】
本発明例7:
ジャケット付加熱および内部冷却を備えた1ガロンのParr反応器に、1-テトラデセン515.0g、2-n-ヘキシル-1-デセン(米国特許第8,455,416号による1-オクテンの二量化生成物)885.0g、および1-メトキシ-2-プロパノール(1-MOP)1.4gを注入した。混合物を撹拌しながら30℃まで加熱した。三フッ化ホウ素(BF3)を気体として導入し、それを20psigの定常状態圧力に調整した。反応物を90分間撹拌した。反応混合物を8%NaOH 400mlで急冷し、次いで蒸留水で洗浄した。減圧(220℃、0.1mmHg)下に残留未反応モノマーを揮発性塔頂留分として除去することにより、塔底留分として透明流体1,162.0gが単離され、これを一組の標準水素化条件(170℃、400psi水素、Ni on Kieselguhr触媒を使用)下に水素化して、以下の特性を有する合成基原料油を得た:
【0039】
【0040】
本発明のポリアルファオレフィンの生分解性
物質は、それらが微生物によって効率的に分解され得る場合、生分解性であると考えられている。生分解性を評価するために使用できる、かつ使用されてきたいくつかの手順がある。OECDによって承認されており、パラフィン系炭化水素の研究に十分に適している1つの試験プロトコルは、301B「易生分解性(Ready Biodegradability)」試験(別名正スツルム試験)である。
【0041】
(実施例8)
OECD 301B試験では、試験試料は、21℃に保持された密封管内の活性化した下水スラッジと培地に曝される。試験材料の分解は、28日間にわたって生成した二酸化炭素を測定することによって評価される。下水微生物および標準材料を含有する対照溶液も実行される。
この試験を使用すると、実施例7のポリアルファオレフィンは、28日後に100%分解、10日後に60%分解を達成した。
【0042】
対照的に、等粘性1-デセン由来のPAOは、28日後に28%分解しか達成されなかった。他の比較は、以下の表8に見ることができる:
【表11】
【0043】
(実施例9)
本発明例3の生成物である、1-テトラデセンから完全に導出されたポリアルファオレフィンは、28日後のOECD 301B生分解試験で54%の分解を達成した。
(実施例10)
本発明例5の生成物である、1-テトラデセンと1-ドデセンから導出されたポリアルファオレフィンは、28日後のOECD 301B生分解試験で87.3%の分解を達成した。
【0044】
本発明を含有する調合油
本発明の流体は、一般にクランクケース潤滑剤、工業用および自動車用ギア油、トランスミッション油など、実質的に生分解性であるように設計されていないが、環境への偶発的放出が可能である調合潤滑剤製品に使用することができる。
生分解性、低温特性、および熱酸化安定性の特有のバランスのため、本発明の流体は、環境への放出が偶然に(例えば船舶用潤滑剤)または意図的に(例えば林業用潤滑剤)予想され得る場合、潤滑剤での使用に特に十分適している。これらの潤滑剤クラスでは、本発明の流体の著しい生分解性は、利点である。
【0045】
油圧油、製紙工場油、チェーンソー潤滑剤、船外機潤滑剤、タービン油、圧縮機油、グリースなど、実質的に生分解性であるように調合された潤滑剤製品では、本発明の流体は、単独のベース流体としてまたは他のベース流体と併せて使用することができる。理想的には、これらの他の流体は、それ自体が適正から良好な固有の生分解性を有するだろう。本発明の流体と一緒に使用される可能性がある例示的な流体には、植物油(例えば菜種油、カノーラ油など)、植物油誘導体(例えばエストリドエステル)、またはさらには高生分解性および良好な粘度特性を有する合成ジカルボン酸エステルが含まれる。
高い全体的な生分解性が要件ではない用途では、本発明の生成物は、全調合の微量成分として使用する場合に従来のポリアルファオレフィン(すなわち水素化1-アルケン炭化水素液体オリゴマー)、鉱油、またはガス液化流体と一緒に使用することができる。
【0046】
添加剤は多くの場合、本発明の流体を組み込む可能性のある調合油の特定の性能属性を高めるために必要である。これらの添加剤は、それ自体が生分解性であってもなくてもよく、摩耗防止剤、清浄剤、粘度指数向上剤、摩擦改質剤、燃料節約添加剤、酸化防止剤または熱安定剤、分散剤、極圧剤、粘着性添加剤、防錆剤、ワックス改質剤、発砲防止剤、銅不動態化剤、硫黄捕捉剤、シール膨潤剤、色安定剤などの材料を含む。
本発明の流体は、それら自体が生分解性であるように設計されている添加剤と一緒に使用してもよい。
可能であれば、添加剤は、少なくとも組成物全体の生分解性に実質的に干渉しないように選択するべきである。
【0047】
(実施例11)
本発明の3.9cSt流体を組み込んだトラクター流体の実証
【表12】
【0048】
(実施例12)
本発明の3.9cSt流体を組み込んだ環境にやさしいチェーン油の実証
【表13】
【0049】
(実施例13)
本発明の流体を組み込んだ2サイクル船舶用油の実証
【表14】
【0050】
(実施例14)
生分解性船舶用マルチグレードギア油/船尾管油の実証
【表15】
【0051】
従来の潤滑剤
本発明の合成流体は、同様の粘度の水素化1-デセンオリゴマーが使用される場合はいつでも使用されることが予想される。用途には、自動車のクランクケース油、ヘビーデューティーディーゼル油、オートマチックトランスミッション流体、連続可変トランスミッション流体、ならびに工業用および自動車用ギア油、コンプレッサー/タービン油、特に、Xが16以下の低および超低粘度0W-XXエンジン油などの低粘度流体において固有のエネルギー節約特徴から利益を得る用途が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの0W-XX調合物のための本発明の流体の適合性を例示するために、いくつかの実証調合が考案された。
【0052】
乗用車のモーター油
本発明によって作製される合成流体は、理想的には、内燃エンジンに使用される完全な合成および/または半合成の潤滑油の成分として使用するのに適している。本発明の流体は、全ベース潤滑剤として使用することができ、またはGroup I、II、もしくはIII鉱油、GTL(ガス液化)油、合成エステル油(例えば、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリペラルゴネートなど)、アルキルナフタレン油(例えば、ジ-ドデシルナフタレン、ジ-テトラデシルナフタレンなど)などを含む他の潤滑油とブレンドすることができる。内燃エンジンに使用される潤滑油は、通常、従来の潤滑油添加剤、例えばアリールスルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸カルシウム、カルシウムもしくはバリウムフェネート、過塩基性アルキルベンゼンスルホン酸マグネシウム、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、VI向上剤(例えば、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリアルキルメタクリレートなど)、無灰分散剤(例えば、テトラエチレンペンタミンのポリイソブチレンスクシンイミド、ポリイソブチレンフェノール-ホルムアルデヒド-テトラエチレンペンタミンマンニッヒ縮合物など)、流動点降下剤、摩擦改質剤、防錆剤、解乳化剤、油溶性酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノールまたはアルキル化ジフェニルアミン)、種々の硫化成分、および発砲防止剤(消泡剤)を含有するように調合される。
【0053】
本明細書では、合成油または基原料油は、人工的に作製された化合物から導出された潤滑剤である。合成潤滑剤は、アルファ-オレフィンが導出される出発原料であるエチレンなどの化学修飾された石油成分を使用して製造することができ、または他の非石油原料から合成することができる。合成基原料油は、人造であり、通常、天然に存在する炭化水素1の複雑な混合物である鉱物基油とは異なり、予測可能な特性をもつ制御された分子構造を有する。鉱油または石油精製油は、API Group I、II、II+、III、およびIII+基油ストックと定義される。
【0054】
API Group III基油は、時々完全に合成されていると考えられているが、本明細書ではGroup III/Group III+基油は鉱物-基原料油に分類される。合成潤滑剤を含有し、API Group I、II、II+、IIIおよびIII+鉱物-基原料油を含有しない潤滑剤は、完全に合成されていると考えられている。API Group I、II、II+、IIIおよびIII+基原料油と組み合わせて使用される合成潤滑剤を含有する潤滑剤は、「半合成」または「部分合成」であると考えられている。部分合成および完全合成油の両方において、基原料油は、添加剤パッケージ、個々の性能添加剤、およびエステル(通常API Group V)または他の溶解度向上剤と組み合わされる。
【0055】
添加剤パッケージと呼ばれるそのような添加剤の独自の組合せは、特定の基油および用途に合わせられており、ルーブリゾール、インフィニアム、およびアフトン社を含むいくつかの供給元から市販されている。粘度指数(VI)向上剤は、これらおよび他の供給業者から入手可能である。
本発明の流体は、それらの省エネルギー品質が望ましい0W-XX粘度グレードの乗用車モーター油を調合するために使用することができる。
(実施例15)
乗用車実証油
本発明の流体を含有する以下の0W-16完全および部分合成乗用車モーター油を調合した。
【表16】
【0056】
(実施例16)
4cSt Group III鉱油を、6cSt Group III油および流動点降下剤とブレンドした本発明の4cSt流体で置き換えると、得られたブレンドは、流動点がより低く、-30℃および-35℃でのコールドクランキング粘度がより低く、引火点がより高くなった。
【0057】
【0058】
(実施例17)
部分合成0W-16 PCMO
【表18】
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕所定の特性を有するポリアルファオレフィン流体を製造するプロセスであって、
a.アルコールアルコキシレート促進剤と組み合わせたBF
3
からなる触媒系の存在下で、約30~約100%の1-テトラデセン(C
14
)を含有する少なくとも1種のアルファオレフィンを含むアルファオレフィン成分を反応させて、反応した塔底生成物および未反応の残留モノマーを生成するステップ;
b.蒸留によって未反応の残留モノマーを塔頂留分として除去するステップ;ならびに
c.前記塔底生成物の少なくとも一部分を水素化して、100℃粘度が約2.5~約4.6センチストークスの水素化流体を得るステップ
を含む、プロセス。
〔2〕アルファオレフィン成分が、90%超のC
14
アルファオレフィンを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕ポリアルファオレフィン流体の二量体C
28
含有量が、70%を超える、前記〔2〕に記載のプロセス。
〔4〕アルファオレフィン成分が、第1のアルファオレフィンおよび第2のアルファオレフィンを含み、第1のアルファオレフィンが、C
14
アルファオレフィンであり、第2のオレフィンが、C
12
アルファオレフィンである、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔5〕ポリアルファオレフィン流体のC
14
/C
12
共二量体含有量が、80%を超える、前記〔4〕に記載のプロセス。
〔6〕アルファオレフィン成分が、第1のアルファオレフィンおよび第2のアルファオレフィンを含み、第1のアルファオレフィンが、C
14
アルファオレフィンであり、第2のオレフィンが、C
8
アルファオレフィンの二量体である、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔7〕ポリアルファオレフィン流体のC
14
/C
16
共二量体含有量が、80%を超える、前記〔6〕に記載のプロセス。
〔8〕約4cStの100℃粘度、19%未満の250℃ノアック揮発減量および4%未満の200℃ノアック揮発減量、125を超える粘度指数、-35℃未満の流動点、ならびに1,500cP未満の-35℃におけるコールドクランクシミュレーター粘度を有する、潤滑剤組成物。
〔9〕約3.4cStの100℃における粘度、4%の200℃ノアック揮発減量、約-50℃の流動点、および1,750cP未満の-40℃におけるブルックフィールド粘度を有する、潤滑剤組成物。
〔10〕約4cStの100℃における粘度、13.9%の250℃ノアック揮発減量、約-59℃の流動点、および1,700cP未満の-35℃におけるコールドクランクシミュレーター粘度を有する、潤滑剤組成物。
〔11〕ステップ(a)のアルコールアルコキシレート促進剤が、2-メトキシエタノールである、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔12〕ステップ(a)のアルコールアルコキシレート促進剤が、1-メトキシ-2-プロパノールである、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔13〕約2.5~約4.6センチストークスの100℃粘度を有する水素化流体を含む、調合された完全または部分合成潤滑油。
〔14〕 a.約2.5~約4.6センチストークスの100℃粘度を有する1~97パーセントの前記水素化流体;ならびに
b.合成エステル、合成炭化水素流体、鉱油、天然エステル、または天然および石油を供給源とする原料由来の炭化水素油、およびその組合せからなる群から選択される0~60パーセントの流体;ならびに
c.分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤、粘度向上剤およびその組合せからなる群から選択される0.1~30パーセントの添加剤
の混合物を含む、前記〔13〕に記載の調合された潤滑油。
〔15〕 a.約2.5~約4.6センチストークスの100℃粘度を有する1~97パーセントの前記水素化流体;ならびに
b.天然もしくは合成エステル、天然もしくは合成炭化水素流体、または天然および石油を供給源とする原料由来の炭化水素油、およびその組合せからなる群から選択される0~60パーセントの成分;ならびに
c.分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤、粘度向上剤およびその組合せからなる群から選択される0.1~70パーセントの添加剤
の混合物を含む、前記〔13〕に記載の調合された潤滑油。
〔16〕 a.約2.5~約4.6センチストークスの100℃粘度を有する1~98パーセントの前記水素化流体;ならびに
b.天然もしくは合成エステル、天然もしくは合成炭化水素流体、または天然および石油を供給源とする原料由来の炭化水素油、およびその組合せからなる群から選択される0~60パーセントの成分;ならびに
c.分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、消泡剤、腐食防止剤、清浄剤、シール膨潤剤、粘度向上剤およびその組合せからなる群から選択される0.1~70パーセントの添加剤
の混合物を含む、前記〔13〕に記載の調合された潤滑油。