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特許7387899細胞外基質及び抗ガン剤からなる接合体及びその医学的用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】細胞外基質及び抗ガン剤からなる接合体及びその医学的用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20231120BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231120BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
C07K14/78 ZNA
C07K19/00
A61K47/64
A61P35/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022537781
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2020015525
(87)【国際公開番号】W WO2021145543
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0005659
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0144881
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522345423
【氏名又は名称】エクセラモール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウォンべ
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525984(JP,A)
【文献】特表2009-525946(JP,A)
【文献】Saxena R., et al.,Elastin-like polypeptides and their applications in anticancer drug delivery systems: a review,Drug Delivery,米国,2015年,Vol.22, No.2,P.156-167
【文献】Jeon W. B., et al.,Journal of biomedical materials research A,2011年,Vol.97A, No.2,P.152-157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外基質(REP)及びドキソルビシンからなる接合体を有効成分として含有する、癌疾患治療用薬学組成物において、
前記細胞外基質は、エラスチン類似ポリペプチドとインテグリン受容体リガンドとからなり、配列番号3で表されるアミノ酸配列である[VGRGD(VGVPG) (前記nは、配列番号3の反復回数であって、5~20の整数である)で構成されるか、配列番号2で表されるアミノ酸配列であるTGPG[VGRGD(VGVPG) WPC(前記nは、[VGRGD(VGVPG) ]の反復回数であって、5、10、12、15または20の整数である)で構成され、
前記細胞外基質及びドキソルビシンは、リンカーによって互いに連結され、前記リンカーは、OH-、NH -及びSH-からなる群からそれぞれ異なる2個の官能基を有するC2~C5の化合物であり、
前記癌疾患は、肝癌、大腸癌、及び膵臓癌からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、癌疾患治療用薬学組成物
【請求項2】
前記接合体は、細胞外基質とリンカーのSH-官能基とが結合し、ドキソルビシンとリンカーのOH-またはNH-官能基とが結合して、接合体を成すことを特徴とする、請求項1に記載の癌疾患治療用薬学組成物
【請求項3】
前記薬学組成物は、腫瘍細胞の細胞死を増加させることを特徴とする、請求項に記載の癌疾患治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラスチン類似ポリペプチドとインテグリン受容体リガンドとからなる細胞外基質と抗ガン剤接合体及びその医学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
癌とは、一般的に人体組織を成している細胞周期に異常が生じて細胞が正常に分化せず、細胞分裂を続ける疾患であって、開始(initiation)、促進(promotion)及び進行(progression)の3つの段階を経て発生する。癌の原因は、環境や食べ物内に含まれた発ガン物質によって、正常な細胞の遺伝子や癌抑制遺伝子に突然変異が起こり、このような細胞が発ガン物質の継続的な刺激を受けながら非正常に増殖して、癌組織を形成すると知られているが、癌の発生原因については、まだ明確に明らかになっていない。
【0003】
癌は、良性腫瘍(benign tumor)と悪性腫瘍(malignant tumor)とに区分されるが、良性腫瘍は、比較的成長速度が遅く、腫瘍の原発生部位から他の組織に移動する転移(metastasis)が表われないことに対して、悪性腫瘍は、原発部を離れて他の組織に浸潤されて迅速に成長する特徴を有することにより、生命を脅かし、死亡に至る非常に重要な原因となる。
【0004】
このような癌の治療のためには、手術療法、放射線治療療法及び化学療法などが使われているが、多くの研究にも拘らず、癌患者全体の50%以上が結局癒されず、死亡すると報告されている。それによる理由は、外科的に切除したとしても、微細に転移した癌細胞を除去することができず、癌が再発するか、多様な抗ガン剤の開発にも拘らず、抗ガン剤を利用した癌治療時に、抗ガン剤に対する癌の細胞死が誘導されないか、初期には反応を示して腫瘍が減るように示すが、治療途中や治療が終わった後、抗ガン剤に対する耐性が生じた癌細胞が急激に増殖するためである。
【0005】
化学療法である低分子量抗ガン剤の治療は、多様な類型の癌治療に広く使われてきたが、癌細胞と正常細胞との間の差異点を区別することができない抗ガン剤の非特異性によって、化学療法の臨床的効能は制限的である。
【0006】
また、抗ガン剤の臨床的効果のために、副作用を誘発させる最大許容量で投与されるが、化学療法の長期的な副作用の1つは、多剤耐性であって、P糖タンパク質が癌細胞で抗ガン剤をポンピングさせて、多剤耐性を誘導すると知られている。
【0007】
このような問題点を解決するために、P糖タンパク質媒介薬物流出メカニズムを克服したり、抗ガン剤を変形させて癌細胞に特異的に薬物を伝達する治療戦略が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、腫瘍組織に対する抗ガン剤の接近性を大きく高めて、正常組織に対する副作用を最小化し、癌細胞に対する抗ガン治療の効果を向上させるために、エラスチン類似ポリペプチドとインテグリン受容体リガンドとからなる細胞外基質と抗ガン剤からなる接合体とを抗ガン治療用薬学組成物または薬剤耐性抑制用薬学組成物として提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、細胞外基質(REP)及び抗ガン剤からなる接合体において、
【0010】
前記細胞外基質は、エラスチン類似ポリペプチドとインテグリン受容体リガンドとからなり、
【0011】
前記細胞外基質及び抗ガン剤は、リンカーによって互いに連結されることを特徴とする抗ガン治療用細胞外基質及び抗ガン剤接合体を提供する。
【0012】
本発明は、前記細胞外基質及び抗ガン剤接合体を有効成分として含有する癌疾患治療用薬学組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記細胞外基質及び抗ガン剤接合体を有効成分として含有する薬剤耐性抑制用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エラスチン類似ポリペプチドとインテグリン受容体リガンドとからなる細胞外基質(REP)-ドキソルビシン接合体が、ドキソルビシンまたはREP及びドキソルビシン混合物と比較して、非常に向上した抗ガン活性を示し、ドキソルビシン抵抗性を示す癌細胞の薬物抵抗性を抑制させる効果が確認されることによって、前記細胞外基質(REP)-ドキソルビシン接合体は、癌疾患の治療のための効果的な抗ガン治療剤及び抗ガン剤に対する薬物耐性を示す癌細胞の薬剤耐性抑制用薬学組成物として提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】非共役薬物/非接合的薬物(an unconjugated drug)の非特異的内在化とREP-薬物接合体の収容体媒介エンドサイトーシス(endocytosis)とを比較する模式図であって、REP-薬物接合体は、癌細胞外にポンプアウトされないので、多重薬物耐性は回避される。
図2】REP遺伝子のヌクレオチド配列である。
図3】REPタンパク質のアミノ酸配列である。
図4】REP-薬物接合体の一般的な構造である。
図5】温度によって誘導された転移によるREP-ドキソルビシンの精製結果を確認した図面である。
図6】490nmで最大吸光度を有するREP-ドキソルビシンのUV-可視スペクトル(UV-visible spectra)を示した結果である。
図7】REP-ドキソルビシンの逆温度転移を確認した結果であって、PBS内のタンパク質濃度は、20μM(ドキソルビシン接合体の比率は、0.867)であり、冷却速度は、1℃/mimである。
図8】24時間培養後、PANC-1細胞でREP-ドキソルビシンの濃度依存的蓄積を確認した結果である。
図9】REP-ドキソルビシン5μMとPANC-1細胞とを1及び3時間培養した後、時間依存的にPANC-1細胞内のREP-ドキソルビシン蓄積を確認した結果である。
図10】REP-ドキソルビシン5μMとPANC-1細胞とを3時間培養し、REP-ドキソルビシンの内在化位置を確認した結果であって、REP-ドキソルビシンは、細胞質(黄色矢印)、核(緑色矢印)及び細胞質と核(青色矢印)いずれもに内在化されることを確認した結果である。
図11】PANC-1細胞でREP-ドキソルビシンの内在化に対するエンドサイトーシス(endocytosis)の抑制効果を確認した結果であって、REP-ドキソルビシンは、インテグリン収容体媒介メカニズムを通じて癌細胞に内在化されることを確認した結果である。
図12】PANC-1細胞でREP-ドキソルビシンとLysoTracker Green DND-26の同一位置(localization)を確認した結果である。
図13】PANC-1細胞でMitoTracker Green FMでREP-ドキソルビシンの同一位置を確認した結果である。
図14】PANC-1細胞でドキソルビシン、REP及びドキソルビシン混合物及びREP-ドキソルビシン接合体の細胞毒性を比較した結果であって、ドキソルビシンの抗ガン効果は、REP併用処理時に、4倍増加した一方、REP-ドキソルビシン接合体をドキソルビシンと比較して20倍以上高い抗ガン活性を示したことを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、細胞表面のインテグリン受容体リガンドを通じて癌細胞内に効率的に内在化されて癌細胞の死滅を誘導し、癌細胞のP糖タンパク質媒介多剤耐性を克服するために、熱反応性ペプチド配列からなる細胞外基質タンパク質-薬物接合体を確認することによって、本発明を完成した。
【0017】
本発明は、細胞外基質(RGD-containing Elastin-Like Polypeptide、REP)及び抗ガン剤からなる接合体において、
【0018】
前記細胞外基質は、エラスチン類似ポリペプチドとインテグリン受容体リガンドとからなるポリペプチドであり、前記細胞外基質及び抗ガン剤は、リンカーによって互いに連結されることを特徴とするガン治療用細胞外基質及び抗ガン剤接合体を提供することができる。
【0019】
前記細胞外基質は、バリン(valine)-グリシン(glycine)-バリン-プロリン(proline)-グリシン(VGVPG)ポリペプチドであり、前記インテグリン受容体リガンドは、アルギニン(arginine)-グリシン-アスパルテート(aspartate)(RGD)である。
【0020】
より詳細には、前記細胞外基質は、配列番号3で表されるアミノ酸配列である[VGRGD(VGVPG)で構成され、前記nは、配列番号3の反復回数であって、5~20の整数であることを特徴とする抗ガン治療用細胞外基質及び抗ガン剤接合体である。
【0021】
より望ましくは、前記細胞外基質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列であるTGPG[VGRGD(VGVPG)WPCで構成され、前記nは、[VGRGD(VGVPG)]の反復回数であって、5、10、12、15または20の整数である。
【0022】
前記リンカーは、OH-、NH-及びSH-からなる群からそれぞれ異なる2個以上の官能基を有するC2~C5の化合物でもある。
【0023】
より詳細には、前記リンカーは、3-スルホニルプロパンヒドラジド(3-Sulfanylpropanehydrazide)及び3-メルカプトプロピオン酸(3-Mercaptopropionic acid)からなる群から選択されるものである。
【0024】
前記接合体は、細胞外基質とリンカーのSH-官能基とが結合し、抗ガン剤とリンカーのOH-またはNH-官能基とが結合して、接合体を成すものである。
【0025】
前記抗ガン剤は、パクリタキセル(paclitaxel)、ドキソルビシン(doxorubicin)、シスプラチン(cisplatin)、ドセタキセル(docetaxel)、タモキシフェン(tamoxifen)、カンプトテシン(camptothecin)、アナストロゾール(anastrozole)、カルボプラチン(carboplatin)、トポテカン(topotecan)、ベロテカン(belotecan)、イリノテカン(irinotecan)、グリベック(gleevec)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、メイタンシン(DM1)、ソラブタンシン(DM4)、及びビンクリスチン(vincristine)からなる群から選択されるものである。
【0026】
本発明は、前記細胞外基質及び抗ガン剤接合体を有効成分として含有する癌疾患治療用薬学組成物を提供することができる。
【0027】
前記癌疾患は、肝癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、大腸癌、膵臓癌、前立腺癌、脳癌、胃癌、卵巣癌、及び子宮癌からなる群から選択されるものである。
【0028】
前記薬学組成物は、腫瘍細胞の細胞死を増加させ、抗ガン剤の薬剤耐性を阻害するものである。
【0029】
本発明は、前記細胞外基質及び抗ガン剤接合体を有効成分として含有する薬剤耐性抑制用薬学組成物を提供することができる。
【0030】
前記薬剤耐性は、腫瘍細胞の抗ガン剤耐性である。
【0031】
本発明の一具体例において、前記薬学組成物は、通常の方法によって注射剤、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ゲル、懸濁剤、乳剤、点滴剤または液剤からなる群から選択された何れか1つの剤型を使用することができる。
【0032】
本発明の他の具体例において、前記薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使う適切な担体、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、被覆剤、膨張剤、滑沢剤、香味剤、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、及び潤滑剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含みうる。
【0033】
具体的に、担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を使用し、経口投与のための固型製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固型製剤は、前記組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調剤することができる。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などがあり、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に、さまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれうる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、トウイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使われる。
【0034】
本発明の一実施例によれば、前記薬学組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、胸骨内、経皮、鼻側内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内または皮内経路を通じて通常の方式で対象体に投与することができる。
【0035】
前記細胞外基質及び抗ガン剤接合体の望ましい投与量は、対象体の状態及び体重、疾患の種類及び程度、薬物形態、投与経路及び期間によって変わり、当業者によって適切に選択されうる。本発明の一実施例によれば、これに制限されるものではないが、1日投与量が0.01~200mg/kg、具体的には、0.1~200mg/kg、より具体的には、0.1~100mg/kgである。投与は、一日一回投与することもでき、数回に分けて投与することもでき、これにより、本発明の範囲が制限されるものではない。
【0036】
本発明において、前記「対象体」は、ヒトを含む哺乳動物であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0038】
<実施例1>REP(RGD-containing Elastin-Like Polypeptide)タンパク質の準備
1.REP遺伝子クローニング及び発現
【0039】
単位遺伝子に対するオリゴヌクレオチド(5’-aattcatatgggccacggcgtgggtcgtggcgatgtaggtgtcccaggtgtgggcgtaccgggcgttggtgttcctggtgtcggcgtgccgggcgtaggtgtcccaggtgtgggcgtgccgggctggca-3’)を化学的に合成して、pUC19ベクターのEcoRI及びHidIII部位に挿入した。REP遺伝子の生成のために、RDL(recursive directional ligation)方式で単位遺伝子のオリゴマー化を行った。発現ベクターpET-25b(+)をNdeI及びHinDIIIに分解し、CIPで脱リン酸化させた。
【0040】
オリゴヌクレオチド(5’-tatgaccgggccgggctggccgtgctgata-3’)と線形pET-25b(+)とを連結して新規な発現ベクターpET-25b(+)-1を生成した。REP遺伝子をpET-25b(+)-1プラスミドベクターにクローニングし、熱衝撃方法でE.coli BLR(DE3)に形質転換させた。
【0041】
スターター培養液(250mL flasks containing 50mL of medium supplemented with 100μg/mL ampicillin)に-80℃で保管した形質転換されたE.coli細胞を接種し、37℃で一晩撹拌し、培養した。スターター培養液を3,000gで4℃で15分間遠心分離し、新鮮な培地10mLで再懸濁させた。発現培養液(4L flasks containing 1L of medium with 100μg/mL ampicillin)に懸濁されたスターター培養液5mLを接種し、37℃で撹拌して培養した。
【0042】
OD600が約0.8に到達すれば、IPTG(最終濃度1mM)を添加して発現を誘導した。誘導3時間後、3,000gで4℃で20分間遠心分離して細胞を収集した。
【0043】
2.REPタンパク質の精製
収集されたE.coli細胞を冷たいPBS緩衝液(pH7.4)35mLに再懸濁させ、4℃で音波破壊した。細胞溶解物を15,000gで4℃で15分間遠心分離し、溶解されていない細胞の残骸を除去した。細胞溶解物にNaCl(0.5M)を添加した後、42℃に加熱してREPを凝集させた。
【0044】
凝集されたタンパク質を10,000gで40℃で15分間遠心分離して溶液から分離した。上澄み液を除去し、ペレットを冷たいPBS緩衝液に溶解させ、高純度のREPタンパク質を得るために、追加的にITC(inverse transition cycling)を行った。
【0045】
<実施例2>REPタンパク質-薬物接合体の製造
1.ドキソルビシンヒドラゾン(Doxorubicin hydrazone)の合成
【0046】
ドキソルビシン塩酸塩(58.0mg、0.1mmol)を丸底フラスコ内の無水メタノール(10mL)に溶解させた。無水メタノール(2mL)に溶解させた3-(2-ピリジルジチオ)プロパン酸ヒドラジド[3-(2-pyridinyldithio)propanoic acid hydrazide、27.5mg、0.12mmole]をドキソルビシン溶液に添加した。トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)3滴を前記反応混合物に添加し、室温で一晩反応物を撹拌した。
【0047】
回転蒸発濃縮機を用いて過量のMeOHを除去し、無水アセトニトリルで溶媒沈殿させて試料を精製した。
【0048】
2.REPタンパク質-ドキソルビシン接合体の合成及び精製
図4のような構造のREPタンパク質-ドキソルビシン接合体を製造した。
【0049】
まず、20mM PBS緩衝液(pH7.4)にREPを最終濃度10mg/mlになるように溶解させた。15倍モルの過量のドキソルビシンヒドラゾンをジメチルホルムアミドに溶解させ、REPタンパク質溶液を添加した後、室温で一晩反応させた。
【0050】
結合後、反応溶液を42℃に加熱し、3,000rpmで35℃で10分間遠心分離して、REP-ドキソルビシン接合体を他の反応物から分離し、温度によって可逆的に相変化が表われる特徴を用いてITCを1回行って、図5のように、REP-ドキソルビシン接合体を精製した。
【0051】
また、PBSで平衡化されたPD-10カラムを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーで追加精製し、該精製されたREP-ドキソルビシン接合体の最終濃度を100μMで濃縮させ、-80℃に保管した。
【0052】
3.2’-[3-(2-ピリジルジチオ)プロパンオイル]-パクリタキセル{2’-[3-(2-pyridinyldithio)propanoyl]-Paclitaxel}の合成
パクリタキセル(1.28g、1.5mmol)、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸[3-(2-pyridinyldithio)propanoic acid、64.6mg、3.0mmol]及びDMAP(cat.)をジクロロメタンに溶解させた溶液に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド[1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide、41.6mg、3.3mmol]を処理し、前記混合物を室温で12時間撹拌させた。
【0053】
有機層を水で洗浄し、無水MgSOを用いて乾燥させた後、生産物を得るために真空濃縮した。
【0054】
4.REPタンパク質-パクリタキセル接合体の合成及び精製
図4のような構造のREPタンパク質-パクリタキセル接合体を製造した。
【0055】
まず、最終濃度が10mg/mlになるようにREP(60mg、0.001mmol)を1mM EDTAと共に100mM PBS緩衝液(pH7.4)に溶解させた。15倍モル過量の2’-[3-(2-ピリジルジチオ)プロパンオイル]-パクリタキセルをジメチルホルムアミド(2mL)に溶解させ、REP溶液を添加して室温で一晩反応させた。PBS-EDTAが含まれた除塩カラムをPBS-EDTA溶液で平衡化させ、REP-パクリタキセル接合体の反応緩衝液に交換して副産物と過量の未反応試薬とを除去した。
【0056】
REP-パクリタキセル接合体を1回ITC行って、精製した後、PBSで平衡化されたPD-10カラムを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーで追加精製した。
【0057】
精製されたREP-パクリタキセル接合体を最終100μMの濃度で濃縮し、-80℃に保管した。
【0058】
<実施例3>ドキソルビシン接合体の比率確認
REPのモル吸光係数5,690Lmol-1cm-1を用いてREP濃度を決定し、ドキソルビシンの濃度は、495nmでドキソルビシンの吸光度及び吸光係数9,250Lmol-1cm-1を用いて決定した。
【0059】
REP-ドキソルビシン接合体のREP濃度を決定するために、280nmでのドキソルビシンの吸光度を除き、下記式によって280nmの吸光度を用いてREP濃度を計算した。
【0060】
[REP]=[Abs280-(0.9xAbs495)]/5,690Lmol-1cm-1・cm
【0061】
[REP]は、REP-ドキソルビシン接合体内のREPの濃度である。
【0062】
ドキソルビシン接合体の比率は、ドキソルビシンの濃度をREP濃度で割って計算した。
【0063】
<実施例4>REP-薬物接合体の分光学的特性の確認
実施例3で合成したREP-ドキソルビシン接合体の分光学的特性を確認するために、Cary 100 UV-visible spectrophotometerを用いて15℃で800nmから200nmまでREP-ドキソルビシン接合体のUV-visスペクトルを確認した。
【0064】
その結果、図6のように、UV-可視スペクトルでREPは、可視領域で吸収ピークが表われない一方、最大吸収である280nmでUV吸収光線が確認された。
【0065】
<実施例5>REP-薬物接合体の熱的特性の確認
REP-薬物接合体の熱転移特性は、温度勾配が1℃/minであるCary 100 UV-visible spectrophotometerを用いて温度関数で350nmでの接合体溶液の濁度を観察して確認した。転移温度(T)を最大濁度の50%地点と定義し、REP-薬物転移温度は、下記方程式に適した。
【0066】
=a・Ln([REP-Drug])+b
【0067】
前記式において、[REP-Drug]は、REP-薬物濃度であり、aは、勾配、bは、REP-薬物1μMのTである。
【0068】
その結果、図7のように、REP-ドキソルビシン接合体の逆温度転移が確認された。PBS内のタンパク質濃度は、20μM(ドキソルビシン接合体の比率は、0.867)であり、冷却速度は、1℃/mimであった。
【0069】
<実施例6>REP-薬物接合体内在化の確認
PCNA-1ヒト膵臓癌細胞を96ウェルプレート内の10% FBSが含まれたDMEM培地にウェル当たり2×10細胞密度で分注し、37℃及び5% CO条件下で24時間培養した。24時間付着させた後、培養培地を多様な濃度のREP-ドキソルビシンが含まれたDMEM(100μL、without FBS)培地に交換した。
【0070】
指定された時間ごとに細胞を冷たいPBS(pH7.4)で2回洗浄し、細胞を4’,6-diamidine-2’-phenylindole dihydrochlorideで1時間染色した後、REP-ドキソルビシンの内在化をLeica DMI3000B fluorescence microscopeで確認した。
【0071】
前記過程で0.5、1、2.5、5及び10μMの濃度のREP-ドキソルビシン接合体をPCNA-1細胞に処理した結果、図8のように、濃度依存的にREP-ドキソルビシン接合体の細胞内蓄積が増加したことを確認することができた。
【0072】
また、前記過程でREP-ドキソルビシン5μMをPANC-1細胞に処理し、1及び3時間培養した後、PANC-1細胞内のREP-ドキソルビシン蓄積を確認した結果、図9のように、時間依存的にPANC-1細胞内のREP-ドキソルビシン蓄積が増加することが確認された。
【0073】
REP-ドキソルビシン5μMとPANC-1細胞とを3時間培養し、REP-ドキソルビシンの内在化位置を確認した。
【0074】
その結果、図10のように、REP-ドキソルビシンは、細胞質(黄色矢印)、核(緑色矢印)及び細胞質と核(青色矢印)いずれもに内在化されることを確認することができた。
【0075】
REP-ドキソルビシンエンドサイトーシスを測定するために、REP-ドキソルビシン処理前、GRGDNP(100μM)、アミロライド塩酸塩(amiloride hydrochloride、1mM)、クロルプロマジン(chlorpromazine、50μM)、dynasore(80μM)及びゲニステイン(genistein、200μM)を30分間PANC-1細胞に前処理し、PANC-1細胞でREP-ドキソルビシン接合体の内在化に対するエンドサイトーシスの抑制効果を確認した。
【0076】
その結果、図11のように、REP-ドキソルビシン接合体は、インテグリン収容体媒介メカニズムを通じて癌細胞に内在化されることを確認することができた。
【0077】
一方、対照染色法を用いて細胞内の特定小器官を染色してREP-ドキソルビシンの内在化機転、細胞内の移動過程及び作用位置を確認した。
【0078】
インテグリン収容体媒介メカニズムを通じてREP-ドキソルビシンを捕集した小胞体が腫瘍細胞の内部に移動した後、REP-ドキソルビシンをリソソームに運ぶことを確認するために、REP-ドキソルビシンを処理した細胞にリソゾームのみに特異的に反応するリソトラッカー(LysoTracker Green)を処理して蛍光顕微鏡で観察した。
【0079】
その結果、図12のように、REP-ドキソルビシンが染色された赤色蛍光と膵臓癌細胞のリソゾームの内部を染色したリソトラッカー(LysoTracker Green)の緑色蛍光、膵臓癌細胞核を染色した青色蛍光が五番目のイメージでいずれも合わせられて黄色蛍光と確認されることによって、内在化されたREP-ドキソルビシンがリソソームの内部に存在することを確認することができた。
【0080】
また、内在化されたREP-ドキソルビシンが腫瘍細胞内の特定小器官に存在することを確認するために、REP-ドキソルビシンを処理した腫瘍細胞にミトコンドリアのみに特異的に反応するミトトラッカー(MitoTracker Green)を処理して蛍光顕微鏡で観察した。
【0081】
その結果、図13のように、REP-ドキソルビシンが染色された赤色蛍光と膵臓癌細胞の細胞質を染色したミトトラッカー(MitoTracker Green)の緑色蛍光、膵臓癌細胞核を染色した青色蛍光を確認し、五番目のイメージで赤色蛍光と緑色蛍光とが合わせられて黄色生蛍光と紫色蛍光とで表われることが確認されることによって、内在化されたREP-ドキソルビシンは、ミトコンドリアと核内部に存在することを確認することができた。
【0082】
前記結果から、インテグリン収容体媒介メカニズムを通じてREP-ドキソルビシンを捕集した小胞体が膵臓癌細胞の内部に移動した後、リソソームと融合してREP-ドキソルビシンをリソソームに運び、リソソームの内部のタンパク質分解酵素は、REP-ドキソルビシンを小分子のペプチド-ドキソルビシンで加水分解してペプチド-ドキソルビシンを細胞質で排出し、該排出された小分子ペプチド-ドキソルビシン接合体が核とミトコンドリアとに浸透して抗ガン効果を表わすことが確認された。
【0083】
<実施例7>ヒト癌細胞に対するREP-薬物接合体の細胞毒性の効果確認
A549ヒト肺癌細胞、Hep G2ヒト肝癌細胞、HT-29ヒト大腸癌細胞、MDA-MB-231ヒト乳癌細胞及びPANC-1ヒト膵臓癌細胞を用いて多様なタイプのヒト癌に対するREP-ドキソルビシンの細胞毒性を確認した。
【0084】
癌細胞に対するIC50値を確認するために、PANC-1細胞を10% FBS、2mM L-グルタミン(glutamine)、50μg/mL ストレプトマイシン(streptomycin)及び50U/mL ペニシリン(penicillin)が含まれたDMEM培地で培養した。
【0085】
細胞を37℃、95%相対湿度及び5% CO条件の培養チャンバで培養した。PANC-1細胞を96ウェルプレート内の1% FBSが含まれた培地にウェル当たり2×10細胞を分注し、24時間培養した。24時間細胞を付着させた後、培養培地を新鮮なDMEM培地(100μL、no FBS)に取り替えた。
【0086】
REP-ドキソルビシンをドキソルビシンの濃度が0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、2.5、5及び10μMになるようにウェルに添加するか、パクリタキセルの濃度が0.1、0.25、0.5、1、2.5、5、7.5、10、50及び100nmになるようにREP-パクリタキセルをウェルに添加した。
【0087】
48時間培養した後、培養培地を除去し、細胞を冷たいDMEM培地100μLで2回洗浄した。各ウェルにCCK-8[2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium]10μLを添加し、37℃、95%相対湿度及び5% CO条件下で1時間培養した。
【0088】
培養後、450nmでmicroplate readerを用いて吸光度(OD)を測定した。細胞生存曲線は、GraphPad Prism 8.3.1を利用したsigmoidal four PL-Sigmoidal functionに適した。
【0089】
その結果、表1及び表2のように、各癌細胞に対するREP-ドキソルビシン接合体(μM)とREP-パクリタキセル接合体(nM)とのIC50値を確認することができた。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
<実施例8>ドキソルビシン、REP及びドキソルビシン混合物及びREP-ドキソルビシン接合体の細胞毒性の確認
ドキソルビシン、REP及びドキソルビシン混合物及びREP-ドキソルビシン接合体の細胞毒性を比較するために、実施例7のような方法でドキソルビシン、REP及びドキソルビシン混合物及びREP-ドキソルビシン接合体をPANC-1細胞で処理してIC50値を確認した。
【0093】
その結果、図14のように、ドキソルビシンと比較して、REP及びドキソルビシン混合物の抗ガン効果が4倍増加した一方、REP-ドキソルビシン接合体を20倍以上増加した抗ガン活性を示すことを確認することができた。
【0094】
また、ドキソルビシン敏感性MDA-MB-231細胞及びドキソルビシン抵抗性MDA-MB-231細胞でドキソルビシン、REP及びドキソルビシン混合物及びREP-ドキソルビシン接合体のIC50(μM)値とドキソルビシンの薬物抵抗性指数とを確認した。
【0095】
その結果、表3のように、REP-ドキソルビシン接合体が処理されたドキソルビシン抵抗性MDA-MB-231細胞で薬物抵抗性の克服効果が表われることが確認された。
【0096】
【表3】
【0097】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
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【配列表】
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